相沢委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年8月25日(金)於:金融再生委員会会見室】
  

【閣議案件等】

 今日は閣議の前に、第15回沖縄政策協議会が開かれまして、そこで沖縄経済振興21世紀プランの最終報告について了承が行われました。あわせて、12年度予算において、金融関係につきましても、「沖縄の現状、内外の金融関連業務の動向等を踏まえた幅広い観点から、沖縄県における金融関連業務の誘致可能性について基礎的な調査を行う」ということが沖縄振興のための特別の調整費の配分の中で2000万円割り当てられることになりました。何をやるかという問題ですが、沖縄にコールセンターを設置する等色んなことの考え方はあるようです。具体的な問題としては、挙げられておりませんでした。

 閣議に関しては、特に申し上げることはありませんが、消費者物価指数につきまして、総務庁長官が発言をしました。平成7年を100として100.3で前月比0.1%下落。前年同月比1.3%の下落。生鮮食品を除く総合指数は、前年同月比0.8%下落。7月の全国確報値は101.3で、前月比0.2%の下落。前年同月比0.5%下落となりました。物価の下落は関心があり、例えば、主要国における7月の消費者物価の対前年同月上昇率は、ロシアの20.1は別として、アメリカ3.5、イギリス3.3、カナダ3.0、韓国2.9、イタリア2.7、ドイツ1.9、フランス1.7、中国0.5、日本がマイナス0.5となっています。これをどう見るかですが、6月が0.3下落していたと思いますが、景気が確実に回復の基調にあるということは、このような物価指数の下落で判断をされるのでしょうかということです。特にこれについては、総務庁長官の発言に関連して、経済企画庁長官からも発言があり、この事については我々としては注意をしていなければならない、警戒を要する問題ではないかということでした。私も全く同感であります。

   

【質疑応答】

 問:この後、金融再生委員会が開かれて、日債銀の9月1日の譲渡が正式に決定されると思いますが、改めて確認させて頂きます。譲渡の契約内容は、瑕疵担保特約を含めてまったく見直しがないということでよいでしょうか。
  

員長:よろしいです。

  

 問:一昨日、ソフトバンクの孫さんを始め、譲渡先のグループの方々と色々お話をされたかと思いますが、実際どんな要望があり、どんなお話があったのでしょうか。
  

員長:私は、就任してひと月足らずですから、その間にソフトバンク等3社を中心とする日債銀の買い手側のみなさんとお会いする機会はなかったのです。そこで、是非会いたいという話もありましたし、私も会って色々話を聞きたいと思いましたので、一昨日会ったわけです。孫さんとオリックスの宮内さんと東京海上は岩下常務が来られて、色々話をしました。話が一時間余り続いたわけですが、3分の2以上は孫さんが喋っていまして、色々な話も聞かせてもらいました。私共に対する要望としては、とにかく色々と世間に瑕疵担保条項を中心として、この日債銀の譲渡に関して問題が提起されているようであるが、買い手側として6月30日に締結をした契約に基づいて行われることを期待しているので、瑕疵担保条項等を始めとして色々と後に問題になるようなことにならないことを期待もし、希望もしているという話でございました。私は、とにかく、契約というのは既に結ばれているわけでありまして、その契約書を修正するとか、見直すとかは考えていない。これは国会でも答弁した通りです。ただ、8月1日の譲渡実行の期日を1カ月延期したのは、そごう問題等もありまして、色々と世間の論議もありましたから、やはり瑕疵担保条項を始めとして日債銀の譲渡に関してマスコミ、世間一般の方々の理解を深める期間を置くために、これはソフトバンク側3社の要請もあり、8月1日から一月延期をしたということであります。十分に理解を得られたということは、この問題の中味に関してはなかなか難しいです。そういうこともあるものですから、必ずしも十分に理解を得られたとは思いませんが、かなりの理解を得られたと私共は受け止めておりますし、また6月に結んだこの譲渡契約の内容を見直す必要はないという判断で、9月1日の譲渡に向けて、今は粛々として実務的な作業を進めているということを3社側に説明をして、3社側もこれを了としたということであります。

  

 問:瑕疵担保特約は見直さないということですが、今色々問題になっていますが、実際に新しい日債銀引き継がれる債権ですが、いわゆる適資産、不適資産もありますが、本来であれば、譲渡にあまり適してないのではないかと見なされるような債権、例えば破綻に等しいような企業への債権といったものが、実際譲渡されることになると思いますが、その場合に、今後、第2第3のそごうが生まれる可能性があるのではないでしょうか。
  

員長:去年の5月時点において、判定が行われたことでありますから、その後経済情勢も変化しているし、個々の債務者の状態についても情勢の変化による当然影響があるので変わることは変わるでしょう。しかし、最終的にはその査定が行われて、また今後その公的資金等の注入額等も決定されるわけでありますから、それは別に去年の5月に判定したから、それをまったく変えないということではありません。ただ、個々の債権につきましては、その都度毎月、毎日のように変わるものを追っかけていって、それでもって総体の金額を調整していくとうことは出来ない。ですからこそ、全体として、適、不適の判定は昨年の5月に致しました。その判定は判定として、変えることはないので、判定した状態が譲渡後において色々な事情でもって、言うなれば瑕疵が発生をする、それが2割以上になるという場合にはそれは瑕疵担保の責務を果たすということになっているわけです。全く2割以上の瑕疵が発生しないとは思いません。それはあり得ると思います。だからといって、瑕疵担保条項付きの日債銀の譲渡契約を見直す必要があるとは思っておりません。

  

 問:今後第2のそごう、第3のそごうみたいな形で同じような問題が生まれてくると思いますけれども。
  

員長:それは、予め今から想定してどんなことが起こるだろうということを申し上げるわけにはいかないので、そういう事態が発生した時にどのように措置するかということは、その時の状態において措置を考える必要がある。例えば、そごうにしても、ご案内のよう瑕疵担保条項で引き取りの要請がありましたけれども、これは諸般の情勢上そごう自ら、結局民事再生法によって措置を求めるというわけになったわけです。これからも、あれだけの多くの企業に対する債権でありますから、色々な状況は起こり得ると思いますけれども、それに対しては適切に対処するということだろうと思っております。

  

 問:瑕疵担保特約を見直す必要がないというお話でしたが、それは日債銀譲渡を急ぐ必要があるからやむを得ないということなのでしょうか。
  

員長:この前の臨時国会で、散々聞かれて答弁を致しましたが、当時の情勢としても今から考えてもそうだと思うのですが、長く特別公的管理を続けていくことは適当ではない。出来るだけ早くこれを引き取ってもらう、受け取ってもらう対象を見つける必要があったわけです。方法としては、国会でも議論がありましたように、一つは引当金を思いきって積んでやるという方式、もう一つはロス・シェアリングをするというような方法もあったわけです。ロス・シェアリングに関しては、住専の法律には規定があったし、また来年4月に施行される預保の法律にもそのことが書いてあります。ただ、金融再生法にはそのような規定がありません。法律がなくとも実行上、契約の上において、ロス・シェアリング条項を盛り込むことも可能ではないかという議論がありましたが、これは専門の法律家も交えて検討した結果、それは難しいという結論に達したのであります。達したのは私が来る前の結論ですが、私もそのように思います。そこで、結局方法としては、瑕疵担保条項付きで譲渡する。買い手とすれば、中身をいちいち全部細かく精査してその上で受け取るという形ではなくて、無論幾らかの内容は見ているでしょうが、全体として、適資産として判定したものを受け取るわけですから、その後の情勢によって変化するものも当然ありますし、また変わってくることもある。その場合に、もう一遍売ったのだから、何が何でもそれはそのままだよ、というわけには参らない。ですから2割以上の瑕疵が発生した場合にはこれは面倒を見ますよ、と簡単に言えばこういうことです。ですから2割に達しないものについては、当然買った側の負担になるわけです。ですから、こちらが国として相手に儲けさせるような形で譲ったではないかという批判は当らないと思っております。

  

 問:判定時において、適資産の中に実質破綻先とか破綻懸念先はなかったのですか。その後変わったというのは勿論あると思うのですが。
  

員長:判定の問題として、しっかりした保証すべき体制があるとか、或いは非常に有望な事業の計画があるとか、やはりその会社によってはただ現状がどうだということではなくて、将来も含めてこれがしっかりやれるかやれないかという判断は当然あるのですから、判定時において、ある状態だけでもってやるということではないのだと思っております。

  

 問:日債銀が再スタートする際に、貸倒引当金を幾ら積んでスタートするのかという点についてはご説明頂けるのでしょうか。
  

員長:引当金は、最終的には勿論譲渡をする時に確定します。

  

 問:今日、議決された後でご説明していただけるのでしょうか。
  

員長:致します。

  

 問:現状だけではなくて、将来も含めて判断をしなければならないということですが、実際、第2、第3のそごうが出てきた場合は、判定に甘さがあると指摘されてもしょうがないと思うのですが。
  

員長:甘かったか否かは、後の判断で批判はあり得るだろうと思います。ただ、判定時において、それが適か不適かということについて、これは昨年5月において再生委員会として事務当局も含めて検討したことでありますから、それはその中におかしいものが入っているじゃないかと言われたって、私が「そんなものが入っているかもしれませんよ」なんて言えるわけないじゃないですか。発言が不適当かもしれませんが、金融ですから、質屋じゃないのだから、担保があれば貸す、無ければ貸さないというものではない。やはり企業としてどう育っていくか、どうなっていくか、それは経営者にもよりますし、非常に将来性のあるパテントを握っているとか、或いは有力な金融機関等のバックアップがついているとか、あるとか、そのような状況によって判断が変わってきても当然だと思うのです。ですから判定時において、色々な要素を含めて適と判定したということが、これが将来また実際そうならなかったではないか、ということはあると思います。あると思うからこそ、やはり瑕疵担保を付けて中にそういうものが出来た場合にもそれは引き取りますよ、ということで買い手の方も納得をするということではないでしょうか。

 

員長:譲渡益課税の話ですが、日野長官の発言が数日前、数誌に出ていました。何も書かないところもおられましたが、私はこの点については、とにかく、一昨年の党税調において有取税が廃止されました際に、とにかく源泉分離と申告分離の選択制を廃止して、申告分離一本にすると取り決めたわけです。ただ、その後の情勢を見てみますと、株価も低迷をしている。しかも、この将来一本化されるということが株価に影響を与えている面もあるようであります。現状においては、源泉分離課税を存続させるということが、特に個人投資家の市場離れを防ぐことについて、大きな効果もあるのではないかと思います。これは党側、政調会長とも話をしております。税調会長とは直接話をしておりませんが、色々とこのことに関心のある皆さんのご意見を聞いても、やはりこの際、源泉分離の制度は残すべきではないかという意見が強いと思っております。私自身も残すべきだと考えております。この間、日野長官がそのことについて、金融庁サイドの考え方としてそういう意見を皆さんに申し上げたのだと思います。これは税制の問題でありますから、本来ならば、今年の暮れのいわゆる党税調、政府税調を経て決定されるべきことでありますが、来年の3月末に控えていますから、出来れば年末を待たずして、早くこの問題について決着をさせていくことが必要なのではないかと思っております。

 

 問:税制改正要望に、この点は金融庁として含めるということで意見が固まったということでよろしいでしょうか。
  

員長:よろしいです。

 

 問:それについては存続の期間等は盛り込むことになっているのでしょうか。
  

員長:それはまだ検討していません。

 

 問:当面存続という形でしょうか。
  

員長:そうお考えになって良いと思います。

 

 問:存続する代りに、源泉分離の税率を上げてバランスを取るという提案になる可能性はあるのですか。
  

員長:具体的なことは何も言っておりません。それは大蔵省もありますし、党税調もありますし、政府税調もありますから。そういう点については何も具体的な注文は付けておりません。

 

 問:年末を待たずして決着ということは、この臨時国会で法案化されるということですか。
  

員長:具体的なプロセスをどうということは、私は決定する立場にないわけです。ただ、やるのなら年末では遅いので、もう少し早い時期にやった方がいいのではないかと思いますし、党側もそういう考えを持っているようです。

(以上)


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