相沢委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年9月8日(金)於:金融再生委員会会見室】
  

【閣議案件等】

 本日の閣議において、私共に直接関係のある案件はありませんでした。外務大臣、防衛庁長官の海外出張時不在の臨時代理について、外務大臣が官房長官、防衛庁長官が文部大臣という話がありました。

 閣僚懇において、昨日のみずほホールディングスの設立認可と、ジャパンネット銀行の予備免許の付与について報告をしました。みずほについては、銀行持株会社の第一号であり、これにより国際的に見ても総資産第一位約140兆円の総合金融グループが誕生することとなったということ。ジャパンネット銀行については、日本で初めての店舗を持たないインターネット・オンライン専業銀行として、新しい形態の銀行として業務を展開する。その2点について報告をいたしておきました。

   

【質疑応答】

 問:ジャパンネット銀行ですが、今後の期待或いは課題についてお聞かせ頂けますか。
 

員長:各銀行がオンライン業務を拡大して、そういう意味においてはインターネットの形での事業をしているわけですが、インターネットの専業銀行としてスタートしたというところに意味があると思っています。ではなぜ従来の銀行が、自分たちもやっているのだから特別に専業銀行を作らなくてもいいではないかという問題点があるわけです。それについては次のような理由を挙げていました。一つは、従来のお客の層とは違う客の層に業務を広げていきたいということ。預金金利についても、多少従来と違う事を考える。貸出についても、従来のいわゆるクレジットカードの金利よりも低い、ジャパンネット銀行では、短プラ1.5%プラス10%で、11.5%の金利にすることを考えている。つまりクレジットカードよりは安いわけです。クレジットカードの場合は、商工ローンの利下げの時に、色々と検討をしましたが、20%台のかなり上の方にあるところもありまして、1年単位の決済ということがないので、割と気がつかないのですが、月2%程度ですから、結構高いのです。ですから11.5%ということであれば、月1%ですから、それほどの負担感はないのかもしれません。そういう形で、従来の銀行とは違う形で利用者にも便利になるように、或いは銀行から言うと新しい層が開拓できるという事をねらって、こういうことを始めたのだと思います。
 特色としては、店舗を持ちませんし、とにかくセンターの施設が50億円くらいと言っていましたが、その程度の話で、インフラの面でもお金がかからないし、コストも安い、手数料も安くするということで、特色を持ってスタートできるのではないかと思っています。ただ、他の銀行が続々としてやるかどうかは私にはまだ分かりません。

  

 問:一方のみずほグループですが、持株会社の設立認可ということですが、これに当っての所感をお願いします。
 

員長:都市銀行についても、系列化が非常な勢いで進んできて、みずほホールディングスもまさにその一つになるわけです。しかも3行統合しての総資産では、世界で第一位約140兆円、そういう形でできあがるということは、グローバルな観点から見て世界の金融機関に対抗しうる力を持った銀行が誕生するということは、今の日本にとっては意義のあることだと思っています。ただ、しいて言えばこれはワンステップでいくわけではなく、ご承知のようにフェーズ1、フェーズ2ということで、簡単に言うと最初に3つの銀行を持株会社の下に統合して、それからリシャッフルして振り分けていく形になっているのです。それが2年間くらいでまた再編成するということになっているわけで、それが予定通り上手くいくということを願っています。私は「一遍にやれないのか。2度もやるのは面倒だから。」と思うのですが、やはり3行それぞれ長い歴史と伝統を持っておりますし、人的な構成もありますから、一遍そういう恰好で集めて、例えば法人向け、個人を中心とするものとか、証券とか、主たる機能に応じて再編成をするという過程としては、2ステップは必要なのかという気もしています。

  

 問:直接、所管とは関係ありませんが、自衛官がロシアに秘密漏洩したという事件がありましたが、それについては閣議で防衛庁長官や官房長官から話はありませんでしたか。
 

員長:閣僚懇談会で話がありました。防衛庁長官は、今日9時に幹部を緊急召集して、今後絶対にこういうことがないように、厳重に指示をしておいたということでした。防衛庁に関しては、前にもそういうことがありましたから、特に機密を大事にしなければならない防衛庁としては、そういうことはあってはならないことですし、繰り返されないように当然のこととして、予防策というものも私は必要だと思います。防衛庁長官からそういう報告がありました。

  

 問:金融庁で金融に関する税の内部的な研究会を発足させるということですが、税の問題はキャピタルゲインの問題もありますし、これについては何かございますか。
 

員長:研究会を作る事については、新聞で承知しました。前に、来年の税制改正に対する金融庁の要望としてこういう項目があるということは報告を聞いていました。色々ありますが、確かに税制が金融の再編に問題があるという点もあります。言っていいのか分かりませんが、例えば、昨日のみずほについても3行統合するに際しての登録免許税ですが、産業再生法によって軽減税率を適用される事になるわけです。0.7%が0.15%になるわけで、相当な軽減になっているわけですが、銀行サイドから言うと設立の時にそれぞれ払ってきているので、一緒になったからといって又取るというのはどんなもんだろうかと、統合の時に更に課税することは、ぜひこれは軽減制度の継続ではなく寧ろ廃止をしてもらいたいと、こういう要望が3行の頭取と話した時にありました。そういう問題とか、保険で言うと保険料の所得控除の問題があります。これはいつも税制審議の度に税調でその存廃を巡って議論がある。仮に存続するにしても控除金額を下げるとかという話もあります。諸外国もそのような方向にあるようですが、私は保険というのは、社会保障といういわゆる公的な社会保障に対して私的な社会保障と考えられる。むしろそういう面において、各人が努力をしてもらうことが大事なので、それを奨励する方向で税制を考えていかなければならないのではないかと、私は思っています。今の生保・損保の控除も、昭和49年の私が事務次官の時に10数年ぶりに金額を上げたのです。生保について言うと、控除額3万円を5万円に上げたのです。それから25〜6年も経っています。その時の議論は、私のような考え方でこの問題を捉えるのなら、所得控除の金額を生保・損保とも給与の水準に応じて引き上げるとか、当時は給与がかなり上がっていましたからそこまでいかないまでも、せめて物価スライドで引き上げていく方向で考えたらどうかとということを、昭和49年の改定をした時に私は考えを述べていました。その後の方向は、税制改正の度に縮小とか、廃止とかという議論が出て、大変残念に思っています。これも来年の税制改正の課題としては、存続は勿論要すれば控除金額を増やしてもらいたいということを言っています。
 ご承知のように、株式譲渡益課税の問題については前から申し上げているように、私が自民党の金融問題調査会の会長をしている時に、党として6月ころに要望を取りまとめたものに、源泉課税・申告分離の両制度についての選択制を今後も維持する、継続すると、つまり一本化は反対という結論を出して、政調会長にも報告し、当時の金融監督庁等にもこのことを党の意向として伝えてあるわけです。金融庁の方もこの問題については、そういう方向で税制改正の折衝に当るということになっています。ですから研究会では、相当検討項目があるようですが、それについてなお様々な面から詳細に検討してしっかりした主張の根拠を作って税制改正の折衝に臨みたいという考え方です。

  

 問:研究会の答申はいつまで出したいとお考えですか。
 

員長:それはまだ聞いていません。あまり時間をかけても、終わってしまうので、早くやらなければいけないと思います。

  

 問:それでは今月スタートして。
 

員長:あの研究会は、私の諮問機関ではなくて、金融庁長官がやるものですから、私がここでいつまでとはお答えし難いものです。しかし、税調の審議は普段でも11月の終りか12月に始まりますから、それに間に合うように意見を取りまとめるとすれば、10月一杯か遅れても11月の初めの頃には研究会としての方向を出しておかなければいけないとは思っています。なお、この点は日野長官と話してみます。

  

 問:金融庁の方では、必ずしも来年度の税制改正というよりは、中長期のことを考えたいという話ですが、やはり来年度の改正にも対応できるような形にした方がいいということですか。
 

員長:全部が来年の問題ではないかもしれません。しかしその中で今私が申し上げたような問題は、必ず来年の問題として出てくるわけですから、そういう問題については早く検討して方向を出しておかなければいけないのではないかということです。

  

 問:答申の件ですが、金融庁の考えでは特に成果を発表されたりする予定はないと言っているのですが、せっかく有識者を呼んで話をするのですから、マスコミへの公表を含めて成果を発表した方が良いと思うのですが、その辺はどうお考えですか。
 

員長:少し気を使っているのかもしれませんが、ただ金融庁の中だけでやって、こういうことですというのでは、インパクトもないし、それは結論を出して方向を出すのなら、当然私は再生委員会としても金融庁としても取り上げて外部に対しても発表して出していくことが良いと思っています。ただ、研究会の事については、先ほども申し上げましたが具体的な話としては聞いていないものですから。

  

 問:税制の問題で、土地税制についてのご意見を伺いたいのですが、金融機関がなかなか不良債権問題を解決できないのは、地価が低迷していることも非常に大きいと思うのですが、今の地価の下落は止まらないという状況を税制面で何とかしていくというお考えはありますか。
 

員長:それは私は正直に言って大変言い難いのですが、再生委員長としての立場で言っているのではないということでお願いしたいと思いますが、私は前から金融不安も景気が悪くなったのも、最大の原因の一つは地価の下落だと思っています。バブルの崩壊というのは何かと言うと、私は正に地価の下落がその最たるものだと思っています。ですから地価をこれ以上下落させない、安定させると、そこから先を言うと差し障りがありますが、少しくらい地価が上昇するようなことにならなければ景気の回復につながらないだろうと思うのです。つまり土地が下がると思えば皆さん土地は買わないですよ。買おうという人にも、金融機関は金を貸せませんから。それから担保は色々ありますが、やはり土地資本主義のようなところがまだ日本はあります。殊に中小の金融機関が、金を貸すときにはまず不動産を担保に取っている。しかも建物ではなく、建物はあまり値打ちがあるようなないような、よほどしっかりしたコンクリートのビルでまだ新しいものは別として、やはり土地でやっているでしょう。ですから土地の価格を何とか安定化させるということは、これは不良債権の解消の問題にも当然役立つし、景気の回復にも役立つし、とにかく担保に軸がつけば、銀行も金を貸してくれる。そこは事業の拡大、設備投資、景気の回復につながっていくと思いますから、私は土地に対する対策は非常に大事だと思います。土地に対する対策で、例えばかつては地方公共団体に財投資金を融資して、公共用地の先行取得をさせたことがあります。これは私が昭和47年に理財局長の時に、減反政策の田んぼを主として公共用地として先行取得をさせたらどうかと、地方公共団体が学校用地とか、道路用地とかあるいは公園用地とか、そういう公共用地として取得するために地方債を発行する場合は、無条件で認めると、いくらでも認めてやると、そういうことをやったことがあります。相当その時に買いました。数字は不正確かと思いますが、6000億円か7000億円くらい地方債を出したと思います。それは地価対策としてやったのではなく、むしろ減反対策の一環として、また当時土地が値上がりするような情勢でしたから、先行取得させることは地方公団体の財政負担を軽減させることにもなるだろうということでやったのです。しかし、今財政資金でそういうものを先行取得させることは、難しいと思います。殊に地価が下がるという情勢の時は、やはり手を出しませんから、ですから私は税制面で土地の不動産取得税とか、登録免許税等を期間を限ってもいいから減免をする。あるいは固定資産税についても、まだまだ土地の値上がり部分というものが織込まれていて高いから少し軽減するとか、あるいは譲渡所得税がひところ39%に上がったものを26%(国税20%、地方税6%)まで下げたが、これは前に復したということです。言うなれば土地の対策としては、バブル前に戻したというだけなの話です。更に流通を促進させるという体制になっていないので、できれば期間を限っても下げるということも考えたらどうか。買い替えについても制限を全て外してしまう。何かそういうことをやって、土地の流通を促進させると、土地価格の回復を図るということは、党の政策としても、政府の政策としても是非私は取り上げてもらいたいと思っています。これは金融再生委員長という立場ではなく、経済に対して、景気に対して関心を特に持っている私としての個人的な意見としてそう思っています。

(以上)


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