相沢委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年9月12日(火)於:金融再生委員会会見室】
  

【閣議案件等】

 本日の閣議において、当委員会関係のものは特別ありませんでした。総理から中部地方を中心とする大雨で、現在でも22万人が避難しているという話があり、まだこれからも雨が続くという予報もあるので、関係方面では十分対策を考えてもらいたいという事でした。建設省・国土庁では、対策本部を設置したという報告がありました。次に三宅島に対しての報告も関係省庁からありました。中小企業に対する金利を2%にするほか、更に、災害関係で既に融資を受けているものについても、政府系金融機関が中小企業に行う災害融資の金利を引き下げることにしました。特に、著しい被害を受けている中小企業者に対しては、国と自治体が協力をして結果的に無利子とするようです。これは特別交付税の繰上げを活用して、自治体が利子補給を出来るようにということを考えていると思います。農林水産大臣から、三宅島を放棄するのではないかという噂が流れているが、そう簡単に島を離れてどうこうという訳ではなく、農水大臣は阪神・淡路の時には地元ということもあり深い関心を持ってやってきており、その経験に鑑みても短兵急にことを処するのではなく、やはり三宅島に対しては十分な対策を考えて、島民の復帰を支援する体制を明らかにしてもらいたいという話がありました。総理も三宅島に行くことになっているようです。

 大蔵大臣から、ブルネイで開催されたAPECの蔵相会議に出席したことの報告がありました。アジア太平洋地域の経済がいずれも成長回復過程にある中、域内の金融安定と持続的な経済成長を確実なものとするため、国際金融システムの強化、域内の金融資本市場の整備といった課題について、参加国・地域が引き続き共同して取組むことの重要性が改めて認識されたということ。アジアにおける経済金融市場の安定に向けて、中国、韓国、我が国の連携強化のため初めての試みとして、参加国の大蔵大臣が一堂に会して非公式の意見交換を行うことにしましたということ。そういったことの報告がありました。

   

【質疑応答】

 問:昨日、4−6月のGDPが出ました。それを受けての補正予算論議も活発化していますが、大臣は規模も含めてどのように考えておられますか。
 

員長:補正予算を組むか組まないかという議論がまずあると思います。GDPの前期比1%というのは、前年同期比でも1%プラスということですからその限りにおいては平成12年度の予算の前提となる経済見通しと大体同じということになっています。前にも申し上げましたが、昨年の平成11年度の第2四半期、第3四半期のマイナス、第4四半期、1-3月のプラス2.5%、4―6月期1%ということですから、この辺をどう見るかということですが、今朝閣議が始まる前に大蔵大臣に「昨日テレビを見ていたら、大臣が「秋来ぬと 目にはさやかに見えねども 風の音にぞ驚かれぬる」と言っていましたが、あれはどういうふうに聞く人が見ますか、両方取れますよ」と言ったら笑っていました。新聞の報道ですが、大蔵大臣も補正を組むということには前向きの姿勢を見せていると受け取られています。私は、昨日いわゆるお国入りを行って、経済界の代表或いは金融界の頭取、各支店長クラスと会いました。山陰では山陰合同銀行と鳥取銀行と島根銀行が地方銀行で、県内には信用金庫が3金庫、信用組合は鳥取県はありません。それに証券、保険関係の方々にお集まり頂きまして、色々話も聞いたのですが、やはり一般的に景気がよくなっているという認識は乏しいようです。特に、商店街が寂れている、寂れつつあるということについては、非常に強い危機感を持っていました。これは主として大型スーパーとか、量販店が進出をして、郊外に大きな店を作ると、それでお客がそこに取られてしまう。全体としての消費需要の額は変わらないということですから、私はよく言うのですが、「貧乏人が布団に寝て、引っ張り合いで誰か強いものが引っ張ると端にいる者が風邪をひく」という話で、なかなか一般の中小企業としては景気浮揚感というのは沸いてこない。金融機関からの貸出については、中小企業に対する特別融資保証制度というのがありまして、ご承知のようにあれは20兆円の枠を10兆円プラスして、実績は23兆円くらいです。これは相当活用されている様です。ただ、期限が2年間ですから、それが来ると今度は償還の問題が起きてくる。これがなかなか厄介で、これをあと2年くらい延ばしてもらえないかという要望も出ていました。設備投資も大きなものはないし、住宅建設も一巡りしたという感じです。そういうことで即効薬としては、公共投資その他の補正事業というものを期待したいと、特に、山陰は社会資本の整備が遅れているということがあり、その整備を促進するという意味も併せ持って、補正については考えてもらいたいというのが、一地域ということにはなりますが要請がありました。私は、ITを中心として相当な増収、増益が出ている企業も全国にはあるということで、その点も聞きましたが確かに鳥取県内にもその関連の企業は大きいものではないのですが、注文が殺到して手一杯で人手が足りなくて困っているという程度に賑わっている、仕事に恵まれているところもあります。しかしそれは一部だということです。それは私は日本全国の縮図であるという感じがするので、公共事業については確かに一律に増やして良いかどうか、この点については思い切った事業の中止も含んで見直しが行われておりますが、それはそれとして進めつつ、必要な事業については補正予算で対処することは必要ではないか。補正の規模をどうこうするということは、これからの検討問題だと思っております。ただ、多少気になるのは、ゼロ金利の解除と関係がないとは思いませんが、日本の国債に対するムーディーズの格付が下げられた。政調会長は、ムーディーズが何を言っても関係ないという話でしたが、いずれにしても関係が出てくるのはそれによって国債の価格が下がるということ、逆に言うと利率が上がるということです。それは財政負担につながっていく。ですから大幅の国債発行というものが、追加されることになれば、金利に対する影響も全く無視するわけには行かないのではないかという気もします。しかしまだまだどの程度の規模の補正を組むかということは、これからの検討課題だと思っています。

  

 問:今日から党税調が始まりますが、改めてキャピタルゲインその他金融税制について、どのような議論を期待されているのか教えていただけますか。
 

員長:地元のことを言って恐縮ですが、私も金融界の方々から要望を聞きました。やはり一つは、証券に関してはとにかく源泉課税方式はぜひ存続してもらいたい。証券界が二万人に対するアンケートを実施したら、もし源泉課税方式がなくなるのなら証券投資を止めると言った人が約3分の1位、少なくとも減らすという人が3分の1、合わせて3分の2位が、何らかの形で証券投資をしている人が、何らかの形で市場から離れるないしは遠くなるというアンケートの結果があり、ぜひ選択方式は継続してもらいたい。今日も株価が前場は下がっているようですが、やはり株式市場から離れないように、それから金融全体としては、間接金融から直接金融へという流れがあるわけですから、それを阻害することも問題がありますから、私はぜひ証券に対する源泉課税方式は継続することが出来るように、最大の努力をしたいと考えています。生損保の所得控除も是非継続ないし物価あるいは給与スライドが実現できればと思っていますが、少なくともこれを継続・維持する事に全力を注ぎたいと考えています。銀行だけではなく、企業の分割あるいは合併に伴うところの税制の問題。前にも言いましたが、みずほの誕生に際して、登録免許税が産業再生法の適用によって軽減されるということになっていますが、本来はそういう特別の目的を持つ法律によって軽減するのではなく、本来そのものに対して新たに課税をする事自体が問題ではないかという提案も金融界からありますから、これも一つ議題に乗せて行きたいと考えています。とにかく色んな意味で経済の活性化を進める上において、まだまだ私も不勉強ですが諸外国に比べて色んな面においての規制が障害になっている点があると思います。金融界においてもそうだと思います。それをできるだけ除去する、軽くするという形で金融の安定、経済の活性化を進めていくのは大きな21世紀に向けての課題であるし、その最初の年ですから努力をして行きたいと思っています。

  

 問:東京都の外形標準課税について、銀行側が来月にも提訴するということですが。
 

員長:私は全部の銀行が行うのかと思ったらそうではなくて、27行のうち6行を除いて21行がそれぞれ提訴するという形になっているようです。確かに外形標準課税というのは前にも申し上げましたが、昭和25年以来の課題なので、自治省としても50年に渡る長い宿題を抱えているわけですし、何らかの形で実現したいという考えはあるでしょう。地方自治体にもあると思います。ただ、長いこと法人事業税は所得課税という形できました。それだけに外形標準課税ということになって、6割以上もあると言われる赤字法人も負担をしなければならないということは、なかなか今の景気情勢を考えると難しいというより困難だと思っております。自治省はよく分かりませんが、できれば広く浅くかける方法がないだろうか、その場合の外形標準には何を考えたらいいかという検討もしているやに聞いていますが、これは問題が多い税金だと考えております。特に東京都の場合にように、実態が銀行税ということで、個別の企業が狙い打ちにされて課税されるというのは、私共としても反対せざるを得ないので、私は金融問題調査会の会長の時も調査会として、早々に反対の意思を表明しています。大阪府が東京都と違って外形標準課税に代えて、法人住民税について均等割を増やすということ検討しているようですが、個人を含めて上げるということについては、どういう職務の人であってもとにかく地方団体から何らかの形でサービスの提供を受けているという意味においては、多少の負担はしても良いではないかという考え方からいえば、法人に限らず均等割を上げるというのは一つの考え方ではないか。私は個人的にはそう思っています。

  

 問:補正予算ですが、大臣としてはGDPを受けてそんなに大きな補正は必要でないとお考えですか。
 

員長:私は個人的には、この段階ではこの程度のGDPの成長ということでは、とても景気の回復ということにはならないし、やるのなら思いきった補正を組む方が良いのではないかと思っています。

  

 問:思い切ったというと、やはり政調会長が言う規模までということですか。
 

員長:10兆円、5兆円という言い方はありますが、それでも去年よりは小さいです。

  

 問:まだあれでは思いきっていないということですか。
 

員長:情勢は去年とは違ってきているでしょうけれど、その部分を差し引いて見ればいいのかなという気はするのですけれど。この点は政調会長としめしあわせてはいません。

(以上)


メニューへ メニューへ
ホームへ ホームへ戻る