相沢委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年10月17日(火)於:参議院議員食堂】
  

【閣議案件等】

 今朝は月例経済報告の会がありまして、引続いて閣議がありました。月例経済報告の関係が長引いたのは、亀井政調会長が口火を切ったわけですが、一つは金融問題、もう一つが株価の問題でした。金融問題については、野中幹事長からも発言がありまして、現実の金融の検査・監督が、特に末端においてはかなり厳しいと。従って、企業がせっかくある程度の見通しを持って立ち直ろうというものに対しても、融資が伴わない。特に金融機関が合併した場合、被合併金融機関のお客さんに対しては、どうも協力をしてくれないという問題もあるようだし、金融検査のやり方についても一考を要するのではないか、という発言がありました。私も、その点は4月に信用組合の検査・監督権限が県から国へ移管したのに伴って、検査自体としても厳しくなっていますが、大銀行から中小金融機関まで同じ検査マニュアルで厳しくやるという事は、確かに問題があると。ダブルスタンダードを作れという議論があるが、そこは問題があるのでそこまでは考えていないけれども、金融検査マニュアルの運用については、私も検討をしなければならないと思っており、金融庁にもそのことは話をしたいと言っておきました。

 株価につきましては、政調会長からも株を金融機関が相当売っているという現状等々の指摘がありまして、株価の対策についての話が出ましたので、私からとにかく一つはアメリカ・ニューヨークのダウ、ナスダックの値下がり等、経済企画庁長官の説明によればパラレルではないが、関連して動いていることは事実で、そういう原因が一つある。もう一つは、やはり譲渡益課税の問題も原因になっていると私は思うので、これは年末の税制調査会において解決するということではなく、早めに結論を出してもらいたいと、選択制を延長するなり何なりの検討を早急に進める必要があるということを、大蔵大臣もお考え置き願いたいと言っておきました。それについては、特に大蔵大臣から発言はありませんでした。

 建設大臣から、発言がありまして、住宅に関する課税等の特例措置を是非延長していただきたいと、最近これから着工する件数があまり増えない、ないしは減るという予想があるが、これは特例措置が来年6月末までに入居する条件であるものだから、どうも減りそうなので、特例措置を延長してほしいという要望が出ておりました。

 閣議には、当委員会に直接関係のある案件はありませんでした。農林大臣及び国土庁長官から鳥取西部地震についての視察並びに対策についての報告及び要請がありました。公共並びに農地・農業用施設の災害復旧についての基準を見直さなければならないのではないかという農林大臣の発言がありました。建設大臣も基準の見直しについて同じ様な発言をしていました。私からは、地元ですから扇大臣、谷大臣が入って視察をしていただきましたし、色々と対策についても考えてくださっているので、お礼とともに、農地・農業用施設の災害復旧等については、昭和34年伊勢湾台風、35年紀伊津波、36年第2室戸台風という引続き大災害があった時に、農林担当の主計官をしていましてその頃に作った基準なので、既に40年も経っていますから検討することは必要ではないか思うので、是非検討していただきたいと申し上げました。もう一つは、個人災害に関しては全く手当てをされないのが建前ですが、全壊の場合に100万円まで支給するという生活支援金については、昨年議員立法で措置したわけですが、住宅再建に対する支援措置は懸案のまま残されております。これは谷農林大臣と私と原田予算委員長の3人が中心になって、生活支援法も作ったのですが、その際残された課題として個人の住宅災害の復旧について国県市町村も補助をするという制度を議員立法で作ることを準備をしているので、関係閣僚においてもご協力をお願い申し上げたいということを閣議の後の懇談会で発言をいたしました。

 閣議とは関係ないのですが、また某誌が変なことを書きまして腹が立ったので言いますが、3行の頭取と私が会うのを私用ですっぽかして地元に行ったということを書いています。千代田生命の問題が相談されることになっていたのをすっぽかしたから、そのことも原因で潰れたと言わんばかりの書き方をしていたので、何をふざけたことを書いているかと思いまして、一応広報を通じて抗議をしておきました。あれはそうではなく、3行が統合するということになった、そのことについての報告方々挨拶があるということになっていたわけです。それで時間がなかなか取れなかったので、3行の頭取がそろう時期がなかったもので、それでは金曜日の夕方でもということだったのです。しかしその日の1時半に大地震が起って、直ぐ国土庁の総括政務次官も現地に飛ぶという状態で、当時マグニチュード7.3でどのような被害かわかりませんが、地元で大被害があるということですから、何も私は使用で行った訳ではなく、そういう県選出の国会議員として現地を視察する、また見舞いをするという事は当然のことだと思ったので、3行には丁重にお断りをして現地に行ったわけです。その後帰ってきてから水曜日に3行の頭取の方々にお会いしてお話はお聞きいたしました。という事情なのです。どうも千代田生命が更生手続きを取るということは、今日行って明日裁判所がウンという話ではそもそもないです。私共も本当に知りませんでしたが、1週間くらい前から話をしていたようです。ですから私が3行の頭取方にお会いするという時期には、既に千代田生命としてはかなり話を進めていたという状態でありました。私も後で聞いたら、東海銀行もそういう話が進んでいるということを、発表の、つまり朝の7時に東京地裁に更生手続きについて千代田生命が申請をしたわけですが、その後に初めて知ったという話でありました。そういう状態でありましたので、ああいう週刊誌の書き方をされると、いかにも私が私用ですっぽかして行ったために、千代田生命の救済の論議がなされなかったというあまりにも実情にかけ離れた事を書かれて非常に迷惑していますので、まずもって話を申し上げておきます。

          

質疑応答】

 問:先程の譲渡益課税の話ですが、今朝某紙が見送りを政府与党が方針を決めたという書き方をしましたが、実際にその方針が固まったということはあるのでしょうか。
 

員長:それはないでしょう。税制の問題ですから、当然、党税調、或いは3党のPT、そういう過程も必要ですし、それから政府税調もあります。ですから税法として提出されるのは、当然通常国会になると思うのです。ただ、方針を決めておく必要があるということです。無論、税制の改正法案を今国会で出せれば良いのですが、そこまでいけるかどうか。政調会長からも、党税調も9月から検討を始めてもらうようにお願いしていると一言ありました。ただ、この問題だけを先に取り上げて法案として出せるかどうか、それは私も確かなことを申し上げられませんけれども、このことがはっきりしませんので、株価に対する影響もある、つまり前から持っている個人株主がそれ売りに出す。つまり源泉分離課税の制度が存続している間に売ろうという考え方を持っているところもかなりあると聞いていますから、やはり今のうちに方針を決めておくことは大事だと思います。今日の某紙によると、お昼に総理と武藤税調会長と、政調会長と3人で食事をして相談するという話が書いてありましたが、それは知りませんが、先週政調会長と私と話をした時も、とにかく早く結論を出すようにしてもらいたいと私からもそのことを話して、彼もそういうつもりでいました。というのも、株価がこのような状態で低迷以上に下がっていますと、当然、金融機関としての含み益も減ってきますし、これがまた貸し渋りにつながる心配もあるし、金融機関としての財務の健全性にも影響してくるわけですから、折角2万2千円までいって、いくらか息をついたのが、またぺしゃんこになるということでは大変まずいわけなので、譲渡益課税の問題を処理するだけで株価がどうこうとは思いませんが、少なくとも関係があると思われるだけに、私の立場から言っても早く解決をしてもらいたいと思います。これは景気回復にも多いに関連があるわけです。堺屋経済企画庁長官からも是非早くやってもらいたいという話がありました。

  

 問:早くというのはどれぐらいのタイミングで…。
 

員長:それは私がやるのでないので…。私に決めろと言うなら今日でも決めますが。ただ、選択制の延長だけで良いのかどうか。つまり今、申告分離26%で、利子配当が20%です。あの6%は高いから削ったらどうかという意見もある。単純延長ということではなくて、この際、そのことも含めて、株の譲渡益課税全体について検討する必要があるのではないかという意見もあるのです。しかし、出来れば良いですが、そういうことがなかなか難しければ、差し当たり単純延長をするということで、そういう利子配当等々も含めて全体的なそういうものに対する課税問題として検討するということが必要であろうと思います。それがすぐ出来なければ、取りあえずは延長するということが良いと思います。

  

 問:検査マニュアルの話ですが、見直しというのは具体的にはどういったことを想定されているのでしょうか。
 

員長:まだそこは金融庁とも相談してみないといけませんが、マニュアルにも色々書いてあるのです。表現は忘れましたが、実情に即す面にはやはり事業をしている人、個人についてもそうでしょうが、単に、土地などの担保があるかどうかだけでなく、事業に対しての取り組みとか意欲、計画、保証とか色々あります。今、非常に有望なパテントを持っているとか。そういう通常担保となる不動産以外に考慮すべき要素が当然あるわけで、殊に地域金融機関についてはそういう点は多いと思います。財産は無いけれど信用があるとか、皆が助けてくれるだろうとか、協力してくれるとかいうことも含めてですよ。しかし、今の金融検査マニュアルでは、抽象的にはそういうことが考慮する要素に入っていても、なかなか現実問題として、そういうことに出先が十分な配慮をしないでやってしまうということも無いとは言えません。ですから、そういう点について、差し当たり考えられることは、金融検査マニュアルを機械的に振りまわすのではなく、実情に即して一つ考えるようにという事を、更に出先に指示するということも一つの方法だと思っています。ダブルスタンダードを作るということについては、これはなかなか問題がありますから、これは考えられなくもないけれど、更に検討を必要とすると思っております。

  

 問:先週、地銀の方と懇談をされたようですが、その折にも検査の話はあったのでしょうか。
 

員長:地銀の時は、検査の話はなかったけれど、信用金庫とやった時にはありました。今日はまた第二地銀の代表と会いますが、どういう話があるか…。

  

 問:貸し渋りが非常に懸念されているようですが、信組、信金の資本注入がなかなか進まないようですが、その辺改めて、検査が厳しいから、融資が進まないという面もあるし、融資を進めるために資本注入という考えも…。
 

員長:ただ信用組合は検査が始まって半分もいってないですから、ちょっと実情を十分に把握出来てないです。信用金庫、信用組合の協同組織金融機関に対して、資本注入が出来るようになった、という点については、私の方から「持ってこい、持ってこい」という話ではないですが、折角その制度が出来たのですから、早めに手を打つ必要があると思うところについては打つ必要があると思っております。

  

 問:まだ内々にも動きはないのでしょうか。
 

員長:私のところまではまだ来ていませんが。こういう問題があります。仮にそういうのを出すと、「それ危ないぞ」と言われる。大銀行でさえもあの時に申請するとかしないとか、佐々波委員会の時にあったでしょう。注入を要請したくないところまで付き合わされた。そこだけが外れたら、他の所が駄目だと思われるという理論でしょう。まして、地域金融機関についてあそこが資本注入の申請を出したというと、「危ないのではないか」と思われる。だからそういうことについて、良く制度というものをPRする必要もあるし、「資本注入を申請したら危ないぞ」と言われるようなことが無いように、何か考えておかないとなかなか出て来ないのではないでしょうか。

  

 問:株式譲渡益課税の選択制の単純延長の話ですが…。
 

員長:単純延長というのは、基本的に、利子とか配当とかそういうものに対する課税について抜本的な考え方をしなければいけないという意見もあるけれど、それにはまだ時間もかかるでしょうから、単純延長というのは、そういうものを先にやるという前提で、とにかく単純延長したら良いでしょうということです。

  

 問:1年とか2年とか、どれぐらいのスパンでお考えなのでしょうか。
 

員長:それは、抜本的な対策が出来るまで延ばしたら良いと思います。少なくとも1年ということを言う人もいますけれども。

  

 問:もう一度検査マニュアルのことを伺いたいのですが、検査マニュアルには、何十箇所と、機械的、画一的にやってはいけないと書いてあります。見直しと言っても、ダブルスタンダードが今のところ難しいというお考えだと、具体的には…。
 

 問:ダブルスタンダードは何故難しいのですか。逆に言えば、もう一つスタンダードを作らずに今のままでやると、現場の検査がすごく困るのではないかと思うのです。上からは大臣以下柔軟に頭を使えと言われますが、現場は保守的に引当てとか見るのが基本的な検査のこれまでの伝統ですから、逆にダブルスタンダードを作った方が…。一緒であること自体がおかしいという考え方も成り立つのではないでしょうか。
 

員長:そういう考え方も敢えて否定しません。しかし、どこで切るのか。協同組織金融機関、しいて言えば信金・信組で切るか。そうなると第二地銀とか、ペイオフの時と同じ議論が出てくる気もするのです。ですから信金・信組だけではないと思うのです均一的にこの金融検査マニュアルでやるべきではないというのは。どうも我々が弾力的に考えても出先になれば、とにかく照らし合わせてやってしまうというというのは、検査に限らずそうだと思うのです。しかし、運用に関してその辺のところの配慮が出来るようなことを、ダブルスタンダードを設けるということでなく、考えられないか、一つ検討したいと思っています。

  

(以上)


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