相沢委員長記者会見の概要

【平成12年10月20日(金)於:金融再生委員会記者会見室】
  

【協栄生命保険株式会社について】

員長:協栄生命保険株式会社が会社更生を目指して、本日東京地裁に申立てを行ったことに関しまして、私の談話を皆さんのお手元に差上げてございます。先ごろ、千代田生命が同じ様に更生手続きの申立てを行いまして、間もない今の時期に、また千代田生命とほぼ同規模、若干これよりも大きな、つまり業界で言うと第11位の協栄生命が言わば破綻に至ったという事については、私共といたしても大変残念に思います。ご承知のように、今年の6月1日に協栄生命とアメリカ生保の最大手のプルデンシャルとの間に置きまして、その業務並びに資本の提携についての基本的な合意が出来上がりました。その後両者の間において、更にその実現に向けての努力が行われて来たのでございます。しかし、協栄生命の実情に照らしまして、プルデンシャルとしてももはや合意の実行に至るという踏み切りがつかないという情勢になりました。協栄生命としても荏苒日を暮らしておったわけではなく、他の企業との提携も模索しておりましたし、その努力もしておったわけでありますけれども、それも実らず、このまま推移いたしますと、更に協栄生命保険会社の経営としては劣化を避けられないという情勢の下に、更生手続きの申立てに踏み切らざるを得なかったというふうに承知をいたしているのでございます。これからは裁判所の監督の下で更生計画が策定されるわけでございます。無論その間に置きまして、金融監督当局としてその計画の策定に関して意見を申し述べる機会もございますし、また最終的にはその更生計画自体を承認をするということになるわけでございますから、その更生計画が現状におきまして出来るだけ良い内容のものになりますよう私共としても努力を続けて行くつもりであります。
 協栄生命の保険契約の取扱いは、更生計画において定められることになるわけでございますが、ご承知のように生命保険契約については生命保険契約者保護機構による資金援助等を通じて、保険契約者の保護が図られることになっております。13年の3月末までの特例期間中に支払い事由の生じた死亡保険金等については、その全額が支払われることになりますし、また責任準備金の9割までが保障されることになりますので、その点については出きるだけ保険契約者のご迷惑にならないように、努力をされるものと思っております。私共としましては、引続き保険会社の経営の健全性の確保、保険契約者等の保護に万全を期し、保険業界の信用の維持に努めてまいりたいと思っておりますが、この協栄生命につきましては、私共としては予期しない大変残念な結果になりました。どうか保険契約者の方々におかれましても、冷静な判断の下に行動をとられることを希望いたしております。
 意外に早くこういうことになったことは、私共の予想を超えたことでございますが、いずれにいたしましても、この段階に至ってはやむを得ない処置であったと思っているのでございます。

  

質疑応答】

 問:今回の件を大臣がお聞きになったのは、どのような形で何時なのでしょうか。
 

員長:裁判所に保険会社としての更生手続き開始の申立てを行ったという事は、今日の午後に聞きました。午後というのは、会社が申し立てを行ったのが3時過ぎですので、3時頃です。

  

 問:事前にはなかったのですか。
 

員長:事前という意味は。

  

 問:3時前という意味です。
 

員長:申立てを行うだろうということは、聞きました。

  

 問:それは午後ですか、午前中ですか。
 

員長:今日の午後です。そういうようなことについての情報はお聞きいたしましたが、しかしこれは裁判所に申立てが行われて保全命令が出るという時まで、私共としてそれを事前に明かすという訳にはまいりませんでした。その点はご賢察を願いたいと思います。

  

 問:千代田生命が破綻してわずか10日あまりで、協栄生命が潰れたのですが、千代田生命の影響というのはどれくらいあったのでしょうか。
 

員長:それは直接の関係はないと思います。ただ、皆様方も、そう言っては大変何ですけれども、千代田生命と協栄生命とは言うなれば、その状態について注目をされておられた節もあるのではなかろうかと思っておりますが。

  

 問:数字に関してなんですが、直近の数字を簡単に教えていただけませんか。債務超過額とか。
 

員長:後程、金融庁長官が会見をいたしますから、そこでお聞きいただきたいと思いますが、私が承知していますのは、9月末現在の粗々の数字で、債務超過で45億円、ソルベンシ―マージン比率が203%というふうに聞いております。

  

 問:実質債務超過額がこれからの過程で膨らむかもしれませんが、前回の千代田生命と併せて保護機構の財源についてはどの様にお考えでしょうか。
 

員長:この点は千代田生命の時にも申し上げましたが、割と早い時期に、つまり土壇場にならない前に会社更生の手続きをいたしており、そこで保全命令が出されております。そういうことがありますから責任準備金の1割カットというものと、債務超過額とのバランスということもありますが、先程千代田生命の時に私からそれほど大きな生命保険契約者保護機構の負担にはならないだろうと、場合によってはほとんどないのではないかということを申し上げましたけれども、この協栄生命の場合も同様なことになるのではないかと思っております。

  

 問:協栄生命を支援するスポンサーについて、大臣に報告があれば教えて頂きたいのですが。
 

員長:皆さんご承知のように、プルデンシャルと6月1日に基本合意を結んで以来、その間において協議が続けられてきたわけでありますが、それが実らずしてこういう形になったわけです。私共が承知している範囲では、プルデンシャルも協栄生命に対して依然として大きな関心を持っていると承知をしています。ただ、プルデンシャルだけかどうかは、それはこれからの裁判所における更生計画の成り行きというものとも関連をすると思っています。

  

 問:他の生保ですが、このように千代田生命、協栄生命と破綻が続いたのですが、財務状況が悪いところはかなりあると思うのですが、この辺の状況についてはどう把握されているのでしょうか。
 

員長:日産、東邦、第百、大正、千代田と続いて今回で6つ目ですが、大体この辺でしょう。もうそう皆さん方も問題だと思っておられるとお聞きしているところはそうないのではないでしょうか。そう言っては何ですが、千代田生命と協栄生命の話は前から時々話は出ていたと思うのですが、協栄生命が11番目で、千代田生命が12番目ということで、決して小さい生命保険会社ではないわけです。でありますだけに、何とかして更生計画を申し立てるということにならないようにいたしたいとは考えてはおりましたけれども、誠に遺憾ながらそういう結果にならなかったということです。

  

 問:ソルベンシ―マージン比率がいずれも200%、健全の目安とされている200%を超えているところがこうして破綻していることについてはどう思われますか。保険契約者の立場からすると、健全だと言われていても危ないのかなという意識が高まってしまって、冷静な行動ということに非常に危うい状況になるかもしれないのですが、その辺りはいかがですか。
 

員長:それはソルベンシ―マージン比率と言うのは一つの大きな保険としての健全性の目安になっていますが、203と言うと、言うなればスレスレのところだということ。それから協栄生命について言いますと、やはり他の会社に比べても保険の設計上の利回りが高いということ等々がありまして、とにかく逆ざや現象というものがかなり大きかったと、数字的には良くは分かりませんが逆ざやが700から800億円あったのではないかというふうに見られております。そういう状況でありますから、このまま継続をするということになっては、いよいよもう何ともならなくなるという状態になりますから、やはり更生手続きを申立て、更生計画が承認され、そしてその保険金の算定の基礎になる利回り等においても改定を行うという過程を通じて、バランスを回復すると。当然その間に置きましては、資本その他の面においての調整も行われていかなければならないと思いますが、その過程を通じて再生が図られると思っているのであります。ちょっと質問からはずれましたが、だから他にそんなところがあるかということに尽きるかと思うのですが、そういうところがあるとは承知をいたしてはおりません。他にはそんなにスレスレみたいなところはないようです。

  

 問:そういうところがないというのは、9月末時点で実質債務超過になっているのが、協栄生命と千代田生命の2社だけであって、他はないとそういうことでしょうか。
 

員長:他はないと聞いています。それからソルベンシ―マージン比率も200%に引っ付いているところはないようです。かなりそれよりは高い水準になると聞いています。ですからそうご心配をなさらないでもいいと思います。

  

 問:急に更生特例法の申請ということが、どれくらいのタームか分からないですが、今のところは考えてらっしゃらないということですか。
 

員長:いません。

  

 問:実質債務超過の会社が他にあるかという質問は、実は千代田生命の破綻の時に日野長官に聞いたのですが、日野長官の会見でも実質債務超過の会社は他にあるのではないかと出ていたので、そういう観点で協栄生命のこの数字というは何時の段階で金融当局で把握されていたのでしょうか。
 

員長:17日に報告を受けているそうです。ということは3日前です。

  

 問:では前の長官会見の時点では把握されていなかったということですか。
 

員長:そう思います。この後の長官会見で聞いてください。

  

 問:先程、プルデンシャルとの資本提携の関連で、プルデンシャルが実行に踏み切れない状況になったから、今回特例法の申請をしたということですが、プルデンシャルが資本提携を結べないと判断したのは、債務超過に陥っていたからということですか。プルデンシャルが提携交渉を打ち切ったのは何か理由があるのでしょうか。
 

員長:先程も申し上げたのですが、協栄生命自体の逆ざや現象が他の会社より大きくて、それから債務超過の恐れがあると、従って、このままあの時は300億円ですか、そういう程度ではなかなか再建が図れないというふうに判断をしたと思うのです。プルデントというのは、慎重なという意味ですから。

  

 問:外資系の保険会社が再建に向けて生きているうちに支援すると言っていて、結局こういう形で破綻してというのが続きましたが、それについてはどう思われますでしょうか。何か外資系は、もともと唾を付けるだけで、この後の買収と言いますか傘下に入れる際に自分達が一番有利に、例えば管財人に入ったりすることが出来る立場になるのではないかと思ってやっているのではないかとも思えるのですが、何か同じ様なケースが続いた点についてはどうですか。
 

員長:それは私もあなたと同じ様な疑問を当初持ちました。しかし結局、他のところで手を上げるところもなかったわけですし、プルデンシャルと6月1日に基本合意を行ったわけですが、そのこととこれから先プルデンシャルが手を上げてきて、またそういう方向で決定するかどうかという事は別問題なので、更生計画が進む過程におきましてその状態、条件その他というものを見て、また他の会社が手を上げるという事もありましょうし、その辺はまた裁判所の更生計画との関連において決定される事だと思っています。ですから何か知りませんが、会社を潰すような事にしておいて、外資が乗り込んでさらって行くというような、そういう感じがしないでもないですが、そういうふうには考えられない。やはりそれでは適当な日本の企業が、あるいは保険会社が手を上げてやってくれれば無論そのことも結構なことなのですが、そういうところが千代田生命の場合も出てこなかったということだと思います。

  

 問:千代田でも破綻してからAIGが管財人に決まるまでかなり早かったと思うのですが、つまり早さを優先して結局は破綻前に手を上げていたAIGにするという結果になっているわけですが、要するにコンテストをする時間がないわけです。そうすると今回も、おそらくプルデンシャルという事に早期処理の観点から言うとなって行くと思うのですが。
 

員長:それは今も申し上げた通り、まだ分からない問題です。そういう可能性もあるかと思いますけれど、決まったことではないと思います。

  

 問:17日に債務超過という報告があった時に、金融当局としては増資をしろとか、そういう要請をしたのでしょうか。
 

野保険課長:後程金融庁長官の記者会見の際にお答えした方がよろしかと思いますが、金融当局としては併せて経営改善のための取り組みがあるのかということについても、併せて報告を求めて、17日に出てまいりましたのは粗々の見込みの数値でございまして、9月末の数字でございます。正確なものはこの後出てくると、そういった段階のものでございます。

  

 問:その時に経営の継続を断念するとは言ってはいないのですね。
 

員長:そのときはまだ言っていないでしょう。6月1日に基本契約を結んで、そういう方向で来たわけで、我々としては当然その線でやってもらいたいという希望は持っておましたし、そのことは金融庁にも伝えました。またその時に他に、これ以外にも協栄生命に関して関心を持っているところもあって、それとの交渉も併せて進んでいるというふうにも聞いておりましたから、ですからあれも駄目、これも駄目ということになって、更生手続きを地裁に申請するということは、本当に昨日までは承知していなかったことなので、直前まで私も承知していなかったことなのです。

  

 問:これだけ生保の破綻が続いた年というのも歴史上なかったと思いますが、委員長はこれだけ生保の破綻が続いた理由というのはどの様にお考えになっていますか。
 

員長:一つは、景気情勢ということもあると思います。先程も申し上げましたように、日産生命に始まって、生保の破綻が続きましたが、そうすると保険が保険にならなくなってしまうのではないかという印象をみんなが持つでしょう。そうすると結局新しく保険に入る人、新規契約の方は減る。それから既契約の方も本当に保険金が貰えるのだろうかということから解除する。従って、正確には分かりませんが戦後おそらく契約残高が減るということはなかったのではないかと思うのです。ほんの一両年の情勢なんです。ですからそういうことで、保険としては、予定の利回りを考えて保険金の支出についての設定をしているはずが、現実には資金の運用利回りはそこに達していない。そこで逆ざや現象が生じて来るからといって、一方的に今までの保険契約を変えて、内容を落とすというわけにもいかない。ですからこのままいったら逆ざや現象というものが進行して、どうしても体力が持たないところも出てくるということだったと思うのです。ですけれど、先程申し上げたと思いますが、要注意と申しますか、問題であったところは大体千代田生命と協栄生命であったと思います。ですからそこがこういう形で、更生計画に乗るということになれば、他はそう心配する事はないと思っています。

(以上)


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