相沢委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年10月24日(火)於:参議院議員食堂】
  

【閣議案件等】

 今日は、私から閣僚懇において、協栄生命保険株式会社の会社更生手続きの申立てについて発言をしました。協栄生命保険株式会社は、ご案内の通り20日の午後3時に東京地裁に会社更生手続き開始の申立てを行いまして、その後、東京地裁で検討が行われておったわけですが、ご承知のように、昨夕7時に更生手続き開始の決定がされ、プルデンシャル社をスポンサーとして更生計画を策定する事になりました。プルデンシャル社につきましては、既に今年の6月1日に合意文書も作成されていたのでございますが、その後、協栄生命の経営内容が、非常に劣化、悪化してきて、この間の記者会見でも申し上げましたが、9月末における暫定値では、実質債務超過額45億円、ソルベンシー・マージン比率が203%というような事態になったわけであります。どうも先行きのことを色々考えたのでしょう、プルデンシャル社も6月1日の合意文書に基づくやり方では、やれないということになりましたので、結局協栄生命としても更生手続き開始の申立てを行ったということであります。その後の取扱いについては、プルデンシャル社の他に、皆さんも色々と書いておられるように、他のところも名前が挙がっていましたが、東京地裁、と言うよりも更生管財人のところで行われた検討の結果、プルデンシャル社の日本法人であるプルデンシャル生命保険の前田専務を更生管財人代理とし、更生管財人には保全管理者の高木弁護士が当るという形で、話が決着したわけであります。ご承知の通り、保険の契約者が一番問題でありますが、2001年3月末までの死亡保険等につきましては、満額保証されますし、それからその他についても責任準備金の9割が保護される、保証されるということになっております。なお、生保に関しましては、生保の契約者保護機構というものがあるわけでありますが、今回は協栄生命の方から今回の処理に伴う資金の援助要請というものはおそらくやらなくとも済むのではないかと、前回もそのことを申し上げましたが、そういうことになっています。これは更に今後の検討にもよりますけれど、現在のところではそういう状態になっているわけであります。

 それからもう一つ、これは閣議とは直接関係はないのでありますが、株の譲渡益課税に関する問題でありまして、この経緯については皆さんご承知のように、一昨年に党の税調であったと思いますが、有価証券取引税の廃止ということが決定された際に、株の譲渡益課税については、従来の源泉分離、申告分離の二本立てを廃止いたしまして、申告分離に一本化するということになったわけであります。昨年の税調でもこのことが問題に取り上げられましたが、その後株価の情勢等を見ますと、ご承知のように、1万5000円を一時的にも割るようなことになっているわけであります。これはアメリカの株価が1万ドルを割る、あるいはナスダック指数が特に落ちている事とも関連がありますが、いずれにしても株価がこういう状況にあることは、景気の先行きを示す指標としても、大変に懸念されるところでありますし、それから景気回復を最大の政治目標の一つとしている今の内閣に取りましても非常な問題であるわけであります。その原因は色々あるわけですけれども、一つにやはり株の譲渡益課税に対する制度の改正、これは予定されていることでありますけれども、今申しましたような源泉分離と申告分離の選択制の廃止、一本化という事がその原因の一つとして考えられていることはご承知の通りであります。この事については、既に私が選挙前の金融問題調査会の会長をしているときも、金問調として選択制を継続すべしという事を決議いたしておりますが、その後の情勢を見ますといよいよこれは明らかにしておかなければならないという情勢でありました。私は経済企画庁長官或いは大蔵大臣また政調調査会長、総理にもお話をしておりましたが、過日総理と政調会長、武藤党税制調査会長との間においても、この事についても話合いが持たれたようであります。この前の日本新生のための新発展政策においては、年度改正の中で早急に結論をと、何か色々書いてありますが何だか良く分からない。分からないけれども、あそこに書いてあることは、非常に意味があることで、何も書いてなければそのままで行くということなのです。あそこに書いてあるということは、つまり問題だと、そして検討しなければならないと、つまり今のままではないというふうに読んでいただきたいと思います。そこで我々としては、ベンチャー企業に対するいわゆるリスクマネーの円滑な供給を行うこと等のため、株式市場の活性化を図るということが重要な政策課題であります。間接金融から直接金融へということもありますが、いずれにいたしましても、株の譲渡益課税の問題については、それこそ年度改正の中で早急に結論を得るということが必要であると思っております。今後、党あるいは政府税調等において本格的な税制改正論議が開始されるわけでありますが、適切な措置が行われるように我々としても努力をしなければならないということで、事務方にも指示をしておいたのであります。財政当局辺りからは、これはどう転ぶか分かりませんが、やはり財源問題もあるからでしょうが、決めたことをまた変えるのは困るという意見があります。また財政上の理由でなくとも、今の政府与党は一度決定したことをしばしば変える、ひっくり返すということで、政策に対する信頼性を失わせることになるのではないかという批判もあるようです。私共としては、何と言っても当面この選択制の廃止という事が株価に大きな影響を持っているのではないか、殊に個人投資家の市場離れを促進するというおそれがありますから、何とか早く解決されるようにしたいと。現に色々なアンケート調査等では、もしこの選択制が廃止されるということになれば、もう株の取引は止めるとか、あるいは手控えるという答えが、3分の2を占めるということも言われておりすから、そういったことも当然我々としては考えていかなければならないと思っているのでございます。

   

質疑応答】

 問:それは今日の閣僚懇なりで話題にはなったのでしょうか。
 

員長:閣僚懇には出ておりません。前の経済対策の際に言いましたので。

  

 問:大臣としては、一本化をやめて今の体制を存続するというお考えでしょうが、例えば何時まで今のシステムを継続した方がいいとお考えでしょうか。
 

員長:金融関係の課税問題については、色々と更に抜本的に検討をすべきだという意見もあります。そういうことが行われるまで、少なくとも現行の制度は継続すべきだと思っております。それが1年になるのか2年になるのか、そんなにいつまでも引っ張っていく問題ではないと思っております。いずれにしても、利子に対する課税問題や配当に対する課税問題とかもあるのです。また株の譲渡益課税についても、単に現行制度を延長するだけで良いのか。申告分離についても26%という率は利子配当の20%に比べて高いではないかとか。色々と単に継続するだけではなく、そういった点も考えなければならないという問題もあるわけです。ですから、今そのことも併せて根本的に検討をして、更に継続をするということに相成るのか、或いは当面、現行制度の延長でつないでいくということになるのか、それはこれから党や政府税調、或いは関係各省間の折衝を待たなければならないと思っております。

  

 問:協栄生命が、プルデンシャルというスポンサーに決まりましたが、千代田生命にしても、協栄生命にしても、破綻させてから外資が乗り出してくるという構図が浮き上がっているように見えますが、それについては大臣はどうお考えでしょうか。
 

員長:私は、結局今の時代に外資がどうとか、国内の会社がどうとかということの当否を判断する時代ではないと基本的には思っております。ただ、やはり折角やってくれるなら、国内の会社にも手を上げてほしいと思ってはいるのですが、現実問題として手が上がって来ないのです。これが一つ。とにかく仰るように、現状の姿で引き受けるより、言葉悪いですが潰してしまって、買った方が安いという考え方もあるかもしれません。とにかく協栄生命自体が、先程もちょっと申し上げましたが、債務超過がそれ程ではないとは思いますが、既に申立てを行った後の記者会見でも申し上げたように、逆ザヤが年間750億円にも達すると見込まれている。そういう状況ですから、早く処置をすることが何よりも必要だし、保険の契約者に対しても迷惑が掛からないのではないかという観点からいきますと、結局手を上げてくる会社の中で、一番適格だと、これは私共が判定するのではなく、保全管理人等の意見によって東京地裁が決定したことでありますから、それに対して、我々の方からとやかく言っても始まらないと思っています。これは雑談になりますが、私も「何で日本の会社は手を上げないのか」と言った事があるのですが。「プルデント」とは良い意味の「慎重」という意味があるようですが、その慎重な外資が色々と手を上げてくるということは、先行き損だという計算ではないと思うのです。何か上手くやれるだろうという計算があるのだと思うのです。ならばどうして、日本の会社も手を上げないのかということを、率直に日本の会社の人達に言ったこともあります。そうしたら、一緒になるメリットが、既に他の存在している生保会社にとっては少ないと言うのです。既に例えば、店舗網も持ち、お客さんも持っているので、ある意味では色々オーバーラップしているのです。新しくそういうものを引き受けることによってのメリットというのは、無くはない。一頃日本の会社も協栄生命に対し、小さい会社ですが名前を言ったら皆さんご承知でしょうが、それも手を上げるというのもありましたが、これは業域を広げると、エリアを広げるというようなことでの関心を持って手を上げようかという話だったと聞いております。そういうふうにメリットが考えられるところについてはあるのでしょうが、どうも既に大きな所帯を張っているところには、そういう点でのメリットはない。ところが、外資の場合は、新しくそういう分野に出て行くというような面において魅力もある。ここで一つの足掛りを作るという意味も無論あるでしょうが、そういった点で魅力を感じているということだろうと思うのです。

  

 問:日生が、三井、住友海上と業務提携していくことになりましたが、今後の保険業界と言いますか、その再編も含めてどのように見ておられますか。
 

員長:私は、結局、銀行、証券、保険にしても業界の壁というものを低くしていく。金融自由化の一つの成り行きでもありますし、世界的な観点から考えても日本の金融機関が、今のままでいくとまだまだ力不足な点がある。例えば、銀行にしても、概ね4系列になりそうですが、その一つ一つをとってみても、非常に大きな規模になっているところもありますけれども、そうでないところもある。従って、生損保にしても、やはり相助けて、体制を整えていくという考え方で進んで行く方が生きる道にもつながるのではないかと思っています。我々の方から、どれとどれとをくっつけるというようなことを、必要ならばやりますが、そうではなく仰るように各業態の中で話し合いが行われて、提携、統合が進んでいくということは、結構なことではないかと思っております。必要があれば無論お手伝いはします。

  

 問:森総理が、例の拉致問題で、第三国で行方不明者の発見としてしまえば良いというようなことを、過去に発言をしたということを今取りざたされていますが、党内からも森さんを代えるべきだという意見がまた出始めていますが、内閣の一人として、その点は森さんの発言も含めてどのようにお考えでしょうか。
 

員長:拉致問題は、私も詳しく承知していませんから、そのことについてコメントすることは避けます。聞いている範囲では、森さんが、訪朝団の団長として3年前に行ったときに、その時は無論超党派で行っているのですから、さきがけも社民党も皆それぞれ代表が行っておったということです。その場で中山正暉さんが、拉致とかを正式に認めるということになるとメンツ問題もあるだろうし、とにかく日本側としては、その行った人達がとにかく発見されて、帰って来れるようになれば良い。だからその場所がピョンヤンでなくても、どこでも良いではないかと、そこで行方不明者が発見されたという形にすることも一つのやり方ではないかということを発言したというのです。他の党の方たちも無論それを聞いていたし、中山さんはその後も色々な機会において、そういうことについての発言をしていたし、既に報道機関も書いているところもあるのです。ですから今更ここでどうこうと言ったという発言ではないのだということのようです。ただ、この前のソウルで、イギリスのブレア首相と会った時に、事が日朝間の問題に触れて、その時に問題の一つとして拉致問題が取り上げられた。その際にそのような話も当時出たという紹介をしたのだということです。首脳の間で、色々な話が率直に取り交わされることは当然のことだし、そのこと自体がいけないとは思いません。むしろ率直にそういうことを言えることが、正に首脳会談だと思うのです。ただ発表の仕方、その他においてもう少しプルデントであって良いのではないかという気がします。そこのことだけ捉まえて問題にするというのは…、私も所管外のことですから、余計なことを喋ってもいけませんのでこの辺にしておきますが。

  

 問:日債銀の後継問題も1カ月ぐらい経過しますが、今状況はどういう見通しなのでしょうか。
 

員長:よく聞かれるのですが、まだ決まってないというのが今の状態だと思います。色々な話はあるので、この前も申し上げましたが、暫く集団指導体制でいったら良いのではないかとか、取り急ぎ誰かを指名しておいて本格的なリーダーを考えるというようなつなぎ説とか、色々あるようです。とにかく私の方からは、余り長引くとろくなことは言われないから早く相談をして選んでいただきたいということを、お話するに留めているのです。また、誰が良いだとか、この人が良いだろうとか、こちらから言うと揉めるでしょうし、そういうことを言う立場にもないわけですけれど、ただ当然重大な関心を持っているから、早く決めて下さいということは言っています。

  

 問:昨日、経団連の講演で自民党の塩崎恭久先生が、不良債権処理のためにもう一回、大手銀行などへの資本注入を考えなければいけないかもしれないと仰っていました。どうやってそれが出来るか等については、具体的には仰っていませんが、不良債権問題の処理が非常に遅いから、処理を早くさせるために資本注入が必要だと言っています。もう一回、資本注入は何らかの形であり得ますでしょうか。
 

員長:今はそういうことは、大手については考えていません。それはまだ法律は期限があるわけですから、もしそういう申し出があれば、或いはそういうことが必要と認められれば資本注入を考えることはやぶさかではありませんが。ただ、今そんな必要があると思われるところはないですし、そういう申し出もなければ、考えてもおりません。塩崎君がどういうつもりで言ったのか良く知りませんが。

  

 問:申し出がないというのは、銀行からの申し出が今のところないということでしょうか。
 

員長:はい、全然聞いておりません。

(以上)


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