相沢委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年10月27日(金)於:金融再生委員会会見室】
  

【閣議案件等】

 今日の閣議では、当委員会に直接関係のある案件はありませんでした。ただ、経済企画庁長官から93SNAに基づく平成7年基準改定国民経済計算についてということで、発言がありました。これは我々としても関心を持っている事項であります。と言うのは、国民経済計算の体系、いわゆるSNA(System of National Account)は、1968年に国際連合が定めた基準に準拠して1978年以来策定をしてきた。ところが経済社会の成熟化、複雑化、経済構造の変化、他の統計との整合性の向上等に配慮した、新たな国民経済計算体系(SNA)の基準が1993年に国際連合より勧告されておりましたので、その勧告を受け我が国でも国民経済計算調査会議を中心に経済社会の実体を体したものを表す観点からの検討を行ってきた結果、この度平成7年の基準改定に併せて、新たな国民経済計算体系、いわゆる93SNAと呼ばれる体系へ移行したのであります。丁度5年毎に産業連関表の基礎統計の基準改定をしてきました。それは物価のバスケットの中味を入れ替えたり、雇用指数の見直し等をするものです。それと今度の基準改定とが一緒になったものですからかなり動きました。平成2年度から10年度までの名目国内総生産の水準は、旧水準に比べて平均2.5%上方に改定をされました。どういう点が主な要因かと言うと、社会資本の固定資本を新規に政府最終消費支出に計上しました。従来、社会資本は、そのままで減耗を計算していないし、減耗を控除していない状態であったので、今度はそれらを政府の最終消費支出に計上し、その減耗分だけ減るということになります。それから受注型のコンピューター・ソフトウェアの購入を新たに企業設備等の設備投資として計上しました。こういうことでGDPの数値が変わってきました。平成10年度の成長率は、今までマイナス1.9%という発表でありましたが、それがマイナス0.7%ということで、1.2%の上方改訂になりました。また、従来2年連続マイナスであったものが、平成9年度がプラスになったので、2年連続マイナスという事態ではなくなったという説明でありました。ただし、国富が3102兆円ということで、104兆円3.2%従前よりも減になった。これは先程言いました社会資本の減耗を政府最終消費支出に計上したという変更に伴うものであります。

 それから、一番の問題は、物価が0.8%下がったことだと、特に堺屋長官が言っておりました。他の国はどこも物価が下がっているところがないのに、日本だけが物価が0.8%も下がっているということは、やはり注目に値する問題であると。堺屋長官の話は、0.5%くらいならいいが、やはり0.8%下がったということは、注目を要するのではないかということです。景気情勢について楽観を許さないという趣旨での発言だと、これは私が付け加えました。

 最後に中川官房長官から、いろいろご迷惑をおかけする事になりました。今後ともどうぞよろしくお願いします。というご挨拶がありました。

  

質疑応答】

 問:中川官房長官が更迭の見通しとなりましたが、同じ内閣の一員としてどのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。
 

員長:私は、中川さんとも親しくしておりましたし、中川さんはいわゆる森派・清和会の事務総長をしておったのではないかと思います。そういうこともあり我々とも親しくしておりました。あのように個人的なことが色々出まして、これ以上その職責に留まることは森内閣、或いは自民党に大変迷惑をかけるということで、数日前から身を引かれるということを森総理にお話をしていたと、これは私は皆さん方の報道でお聞きしているのですが。大変に残念だと思います。ただ、事は専ら個人的な事情によるものでありますから、これが森内閣全体の政策その他、あり方に大きく関係するところではないと承知をしております。ただ、こういうことは森内閣にとっては、一つの問題として取り上げられておったことは事実でありますから、そういった点でこれから一層そういうことによるマイナスを回復して、一層国民の信頼を得られるような努力を内閣としても、私も閣僚の一員でございますから特にそう思いますが、内閣としても自民党としても更に精進を続けることは必要ではないかと思っております。

  

 問:信用組合についてお伺いしたいのですが、先だって、業界との懇談もあったようですが、公的資金の申請といった動きもあるようです。そういうことも含めましてどのようにご覧になられていますでしょうか。
 

員長:この間、信用組合の代表の方々と文字通り懇談をした席上色々話がありました。その時は、やはり信用組合が、今年の4月、実際は7月から都道府県の検査・監督から金融庁・国の方に移管になった。7月以降100幾つかでしたか組合の検査が始まっているわけです。従来の都道府県の検査がいい加減だとは申し上げません、怠けていたとも思いませんが、やはり国の金融検査マニュアルによる厳格な検査になりますと、かなり従来の都道府県の検査時代よりも、言うなれば債権分類においても変わってきますし、言うなれば不良債権が増えてくる。業況として悪くなってきているものが増えている。要するに検査マニュアルについて、大銀行も信用組合も同じマニュアルでやっていくのか、という問題があります。これについては再三申し上げましたが、ダブル・スタンダードを作るということはいささかどうかと思いますし、またその必要もないと思っております。ただやはり地域的な中小金融機関としては、それぞれの地域において特色も持っておりますし、地域の企業等とのつながりもあります。また単に担保一点張りではなくて、その企業の実態に即した判断のもとに融資が行われていたという実情もあります。ベンチャー企業に対する融資というようなことも当然あります。検査をするに当っての言うなれば検査官の心構えと言いますか、やり方について一つ良くご指導をお願いしたいという要望があったのです。でありますので、私の方もそのことは金融庁長官等にもお話をしまして、検査についてはマニュアルにも実情に即して弾力的に検査を行うということが書いてありますけれども、新しく検査官になった人も随分おります。従来都道府県で検査をしておった人もいます。それから財務局等でやっていた人もいます。或いは民間から来た人もいます。いずれに致しましても、新しい検査官等もいますので、そういう点については、もう一度研修等を実施して、特に中小の金融機関の検査に望むやり方についての研修を行おうということにしているわけです。
 同時に、やはり資本比率の低い所に対して、これはそれぞれ比率を引き上げる努力は協同組合系の金融機関も行ってきております。増資という形で、その地域において従来取引のあったところ等々、協力をお願いして増資をしてきているところもかなりあります。私も承知しております。これは信用金庫、信用組合に限らず、地銀・第二地銀等もそういう努力をしております。しかし、それだけでもなお不十分、ないしは更に充実をする必要があると思われる所については、折角資本増強について国から支援するという制度があるのですから、一つそれを活用されるように検討したら如何でしょうかということを私も申し上げました。今すぐ、どこがいつ出てくるということを申し上げる段階ではないのですが、いずれ、手を上げるところが出てくると思っております。そうなれば、我々としてもそれに応じる処置を考えていきたいと思っております。

  

 問:そごうが先だって、地裁に再生計画を提出しました。金融機関の問題もありましたが、改めて大臣ご自身のお考えをお聞かせ下さい。
 

員長:冒頭に申し上げたいのは、全て数字的には確定している話ではないです。ただ、当初のそごうの再建計画と少し様相が変わってきたということも事実です。当初は38店の内16店舗を除いた22店舗、そして16店についてはなかなか継続することも難しいような話でした。今回の出てきた計画、検討されているという計画は22店舗の内、9店舗を除く13店舗について、再建計画を検討していると聞いているわけです。ただ、伝えられるところと少し訂正をしておきたいと思うのは、9店舗はもうこれは望みがないから切り捨てたと、廃止するということではないようでして、その中の全部とは申しませんが、幾つかについては既に具体的な話し合いも出ているようです。つまり、よその店がこれを引き受ける等々の話し合いが出ているようですし、我々としても9店舗について廃止というようなことではなく、何とか事業の継続が出来るということが願わしいと思っております。13店舗については、最終的な確定ということではないと思いますが、一つのそごうとしての再建を考えていると聞いております。そこで、どれだけの負担になっていくかという問題については、これからの検討であります。まだ先方から数字が出てきているわけでもないですし、従って十分な検討が行われているということでもありませんから、伝えられている、皆さん方がお書きになっている数字について、今どうこうと申し上げる段階にはないと思っております。

  

 問:信用組合の資本増強ですが、全信組連が、資本不足4%を割っている所に補てんする、資本を支援するという制度を発足させるそうですが、4%クリアした上で公的資金を申請すると条件を満たすわけですから、公的資金の出る可能性が高いと思うのです。そうなると基本的には弱い信用組合も資本不足の信用組合も殆ど助けるというような状況になると思うのですが、それはそういう状況でよろしいのでしょうか。
 

員長:全信組連が4%未満のものについて、資本充実の協力をするということは、具体的な姿で決まったという報告は受けていないです。話は聞いてみます。やはり何でもかんでも助けるという護送船団方式とは考えておりませんが、ただ信用組合は規模は小さいと言えど地方の中小企業にとっては大変重要な存在ですから、出来ればパンクしないように助けていくことは、私は大変重要なことだと思っております。ただ、一本立ち出来ないところがやはりあるでしょう。今までもそういうことが行われておりましたが、そういうところは、一つで再建を図るということではなく、地域的に統合するとか、合併するというような形で少し大きくして力をつけていくという方向も十分考えていってもらいたいと思っております。

  

 問:中川官房長官に関連してなのですが、中川さんの問題は個人的な問題だと大臣は仰いましたが、他のスキャンダルの中には、スキャンダルと言って良いか分かりませんけれども、森総理の第三国発言のようなことで総理の資質みたいなものも問われて、これは個人的問題とは言えないわけです。そういう森内閣の置かれている状況については大臣はどのようにお考えでしょうか。
 

員長:一昨日、党首討論を聞いていましたが、その点は森総理の答弁に尽きると思うのです。あの行方不明問題と言うか、拉致問題と言うか、問題の解決方法として、ある日突然どこかで発見されるというような形は、前例も幾つかあるようですね。そういう形で解決をされるというのも、一つのやり方だとは思っておりますが、それは交渉事の中でお互いに検討すべきことなのであって、手の内を最初に明かしてしまうような話はどうかという気もします。ただ、森総理が答弁しているように、今回新しくここで発表されたというこでもないので、当時からそのことについては一般にも知らされていましたし、何も新しいことではないということも事実だと思います。ですから、やり方について野党としては批判する種にはしたいでしょうが、それ程これが外交面でも森内閣にとっても致命的な問題だとは私共は思っておりません。

  

 問:そごうの関係ですが、国に求められる負担がまだ確定していないということも、そういうことなのでしょうが、6月の債権放棄の段階での970億円よりも増えることは確実だと思いますが、そこから膨らむことについてはどのようにお考えでしょうか。つまり、法的枠組みに移った段階で仕方がないというふうにお考えでしょうか。
 

員長:あの段階、委員長になる前の話ですが、その段階では確かに債権放棄という形をとるのが一番国としての負担が少ないという判断がありました。結局、瑕疵担保条項の発動ということで預保が債権を引きとったということなのです。これは瑕疵担保条項の発動について言われれば、それが良いとか悪いとかいう問題ではなく、それは約定に基づいて戻ってきたわけです。そこで債権放棄の形をとるかどうかということについて、問題になっていました。債権放棄をすることについては、国民の税金で一企業の救済を図るということは、納得しがたい、けしからんという声があの頃は強かった。専ら民主党も政府を責めていた。そういう情勢の下に、そごうとしても、亀井政調会長がそごうに言ったとか言わないとかいうよりも前に、一つの解決策として民事再生法による手続きと取ることについて、裁判所側とかなり突っ込んだ話合いをしていたという形跡もあるわけです。そうでなければ急にスムーズにいくものではない。ですから、あなたか言われた債権放棄の方が一番負担が少なくて済むだろうというのは、その当時における一つの判断なのであって、債権放棄した場合、更生法によって処理をした場合、或いは破産法によって処理した場合の3つの中で、一番債権放棄の方が負担が少ないのではないかというのは、その当時における一つの判断にすぎなかったのではないかと思います。ですから、債権放棄をした場合でも、果たしてそごう38店がどのような情勢になっていくかということについては、なかなか読めるものではない。果たしてそれが一番良かったということについては、なかなか断言出来る問題ではなかったのではないかと思っております。つまりあなたの言いたいのは、あの時に債権放棄しておけばそれが一番安かったのではないか、民事再生法による手続きになったことで国の負担が増えたから、判断が間違っていたのではないかと言うことでしょう。

  

 問:違います。増えたことについてです。
 

員長:増えたことについてはまだ分からないです。これからの話ですから。

(以上)


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