相沢委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年11月2日(木)於:金融再生委員会 会見室】
  

【閣議案件等】

 今日の閣議では、特別に当委員会関係の案件はございませんでした。9月8日から17日までの豪雨及び暴風雨によって被害を受けた中小企業者に対する災害融資に関する特別措置が決定になりました。これは融資の面で関連がございます。それから同災害に対する激甚災の指定、農地等の災害復旧事業に係る補助の特別措置等がありました。

 森総理から、平沼通産大臣及び森田運輸大臣の海外出張に伴う臨時代理についての発言がありました。

 扇建設大臣・国土庁長官から中央省庁間のインターネットを結ぶために機種の統一をする。容量を上げる事について発言があり、その関係で関係大臣の意見交換がありました。結局、堺屋IT担当国務大臣のところでとりまとめをするということになりました。

  

質疑応答】

 問:今日の朝刊で、みずほ系の3つの損保の統合と、住友生命と住友海上の提携の話が報じられていますが、これに対する見解と、大臣は何時頃これをお知りになったのでしょうか。
 

員長:そういう話があるということは聞いておりましたが、具体的な話としてはまだ報告を受けていませんでした。今朝もぶら下りの人に聞かれたのですが、銀行等の統合が進んでいる中において、保険関係、特に損保関係が比較的そういう動きがなかったので、それでいいのか、上手く乗りきれるのかという懸念は持っておりました。ただ、生保と違って、損保の場合は短期間の保険、いわゆる短期保険が中心になっておりますから、生保のように長期の運用予定利回りというのを前提として保険の設計をしなくてもいい。つまり、その時々の金利や経済情勢に合わせて設計し得るという点が生保と違いますので、比較的損保については、破綻のケースも少ないし、問題は少なかったのではないかと思います。しかし、やはり生き残りをかけて、損害保険業としての効率を上げていくためには、そういった形での統合が必要ではないかと思っておりました。生損保それぞれの分野においての統合だけでなく、生保・損保間における統合や提携も、今後も進めていかなければならないと思っております。ただし、これは役所があれとこれとが一緒になったらいいとか言う問題では、本質的にないと思っております。ただ、出来るだけそういう形で、つまり破綻に至らない形で業務の提携が行われ、国の財政負担も無しに、或いは少なくてやれる方向は当然望ましいものだと考えております。

  

 問:昨日の国会で大臣からも答弁があったのですが、保険会社の健全性の指標、ソルベンシーマージン比率の見直し、或いは別な案とか、具体的に特に今の段階ではないかもしれませんが、腹案と言いますか、大臣のお考えがあればごお聞かせ頂けますか。
 

員長:その時の質問が、「ソルベンシーマージン比率の安全度と言われている200を超えているのにもかかわらず、何故破綻が起きたのであろうか。それは物差しとして、ソルベンシーマージン比率だけを捉えているのはおかしいのではないか」という主旨のものが幾つかありましたので、それに答える意味で申し上げたのであります。前からそういう議論はありましたので、あの時の答弁でも申し上げましたが、ソルベンシーマージン比率の算定方式について、若干の修正も既に加えております。ただ更に、算定方式について、より実情に即して厳格に算定されるような方向での検討が必要ではないかということが一つ。ソルベンシーマージン比率は、バーを超してはいるにもかかわらず破綻したところが現にあったわけですから、それについて例えば、どういうような物差しがいいのか、それはこれからの検討なのですけれども、他の物差しも考えた方がいいのではないかと申し上げたわけであります。具体的な案があって言ったわけではないのですが、それは事務当局においても検討をしてもらいたいと思っております。そのことは私の方から指示をしたいと思っております。
 ただ、基本的に生保の場合、運用予定利率が高いです。最近は下がっていますが平均して4%にはなってないと思いますが、3.5%位から4%に近いところが多いのではないかと思います。これは会社により違います。ところが実際の運用利回りは、なかなか2%にも達しない。1%台のところが多い。そうすると少なくとも1%、多ければ2%の逆ざや現象があるわけです。仮に資産5兆円というと、2%で1000億円違うわけです。リストラ等によるところの経費の削減とか、その他プラス要因もありますから、それも控除して考えなければなりませんが、いずれにしても、逆ざや現象というのは基本的に大きな問題なのです。これは生保業界の努力によって経費等の面においてどうこうということもありましょう。しかし基本的には、やはり運用の実際の利回りが低いというところに問題があるわけであります。ですからこれを解消する方法としては2つになるわけです。つまり、運用予定利回りを下げるか、或いは実際の運用の利率を上がるように努力をするか。後の場合は、生保業界だけの力ではなかなかどうとかなるものではない。そうとすると、運用予定利回りを下げるかということになるわけです。ただ、これには昨日の答弁でも申し上げましたが、平成8年の保険業法の改正で、その既契約分についての予定利率の改定は、憲法上において疑義がある。財産権の侵害の恐れがあるということでもって、平成8年の保険業法の改正で、これは法制局の意見で削除されたという経緯があるわけです。従いまして、私がこれは法制局とも相談をして検討すべき問題だと答えたのはそういう意味でありまして、果たしてそれがその厳密な意味において憲法上の疑義があるのか。とにかく平成8年まではそれでやってきたわけですから、何とか方法はないのかということです。もう一度そこを直して既契約分についても、予定利率を変更するということが出来ればいいと思っております。金利が上昇して保険会社の実際の運用利率が上がってくれば、逆ざやが縮まってくる、そういうことが見通せればそれは一つの解決される面があるわけですが、そうでないとすると、何かその点について工夫がないと、じりじり逆ざやでやられてしまう。
 もう一つの手段としては、やはり2つのプラス要因があります。費差益と死差益です。費差益というのは、リストラ等により経費が予定よりも削減されることで差益が出るというもの。それからもう一つは、長寿社会になってきましたから、予定していた死亡率が変わってくる。その面において死亡保険金の支払いがそれだけ少なくなってくるわけです。それが死差益です。その点がプラスなのです。死差益に方は、生保業界で頑張ってみてもあれですが、費用の方は例えば、統合等によって店舗の統合や人員の削減によってこれを増やすことは可能でしょう。しかし、それにも限度があるわけです。確かに保険の外務員の数は減りました。しかし、逆に言えば人を減らせば経費の節減は出来るでしょうが、同時に保険契約もその割合に応じて減るということではないでしょうが、人を減らして契約を増やすというのもなかなか難しいという問題点もあると思っております。ですから、基本的には逆ざや現象をどうしてやっていくかについて真剣に取り組まないといけないという思いを深くしています。

  

 問:予定利率の変更ですが、大臣としては、今後この件について法制局と協議をしていくというお考えでよろしいのしょうか。
 

員長:憲法問題だと言われると、有権的な解釈は法制局ですから、我々が言うわけにいきません。しかし、何か考えていかないと、皆さんがお考えになってもそうだと思いますが、なかなか大変なことだと思います。その点については、国会でも答弁しましたから検討していきたいと思っています。

  

 問:一度法制局で下った法解釈が覆ることは非常に難しいと思うのですが、検討というのは法制局との協議以外にということでしょうか。
 

員長:法制局とは相談しないといけないでしょう。法制局の意見でそうなったのですから。法制局の意見だけかでそうなったのかは、当時の経緯はよく知りませんが。そういうことです。ただ、世の中にはとにかく一遍決めたことを、いつまでも変えられないことでもないと思いますし、廃止の際の経緯を良く検討してみなければいけないと思っています。戦前からずっと有効だったものが駄目になったわけです。そこのところを何とかしてやらないとなかなか難しいのではないかと…漠然とした言い方で恐縮ですが、そういう思いをしているものですから。法制局との問題もありますから、「そうします」ということを昨日の国会で約束しているわけではありません。しかし、その点についての検討をするということは、はっきりと申しました。

  

 問:今日、そごうの水島さんが東京地裁で話をされて、その後記者会見を予定されています。そごうを巡る問題では、その後の様々な報道で、民事上・刑事上の責任を追及されるような問題等が指摘されていますが、現段階で、改めて大臣の水島会長に対する責任ついてお考えをお聞かせ頂けますでしょうか。
 

員長:それはそれぞれの場面でもって、刑事責任、民事責任の追及は行われていますから、金融再生委員会として直接手を出す問題ではないと思っています。ただ、そごうがあのような破綻状態に陥った原因の中には、やはり当時水島ワンマン体制と言われていましたが、水島会長を中心とした経営陣が過去において、相当急激な膨張政策を取ってきたということ等々が考えられるわけであります。世の中がバブル崩壊によって変わったという、そごうにのみ帰すべき責任ではない部分もあるとは思うのですが、そういう点を除いても当然責任問題というのはあろうかと思います。ですから私共としては民事上・刑事上の責任を明らかにしてもらいたい。同時に、それに対する措置を取ってもらいたいと思っています。ただ、果して水島さんがその間どういう役割を果たしたか、経営陣の民事上・刑事上の責任はどうかということについては、やはり司法の問題でもありますし、私共が云々するところではないと思っております。
  
員長:私の方から一言言わせてもらいますが、株価がこういう状況だというのは非常に気になります。昨日も、「大体株価がどの程度の水準であれば含み損益が出るか」という質問がありました。よく分かりませんが、平均してみると水準としては15000円ぐらいでしょうか。今の状態は決して金融機関にとって願わしい株価ではないことは明かです。そこで株価を上げるためにということではないのですが、これからの財政・金融の運営の方針について、今のままで良いのかということについて、私は色々と考える点があるのではないかという気がしています。つまり総額11兆円という補正を組む。来年度予算の編成がこれから始まるということになる。そういう財政面からの手当てだけで十分なのかどうか。私はやはり財政面の手当てというのは、今の財政収支の状況から言いますと、そういつまでも続けられるものではない。つまり財政改革というものが他方で言われているわけです。国が500兆の赤字を抱えてどうするのか、垂流しでいいのかということを言われれば、やはり財政改革というものも念頭に置かなければならないわけです。ただ、今それを言う時期ではない。それはその通りですが、この両方を睨みながらどういうことをやっていくかということになると、やはり金融問題というものが出てくるだろうと思うのです。
 ゼロ金利是正については、敢えてここでその後における功罪について言いませんが、昨年いわゆる2000年問題というものがあって、金融を大いに緩めたことが株価に対しても、景気に対してもプラスの影響を与えたことは事実なんです。ですからこれから年末まで2ヶ月となったわけですが、中小企業に対する貸し渋り対策云々というような形ではなく、もっと思い切って金融を緩めてもらわないと、景気の回復の目がないのではないか、そういう思いを深くしているのです。ゼロ金利政策解除について、あの場では大蔵省ないし経済企画庁の代表が政策委員会の議決延期を言った主旨もそこにあるのでして、ゼロ金利政策の是正、つまり金利を上げるということは、条件としては緩めることではなく、締めるという方向になるということが思われるだけに、やはり今の段階で、そのゼロ金利政策を変えるということはおかしいのではないか、問題ではないかということで反対をしたということす。
 その事情は今も変わっていないのではないかという気がしてなりません。ですから日銀にも多いに検討してもらわなければならないと思いますが、これから年末にかけて、また来年にかけてこのような景気情勢が続く限り、ゼロ金利政策を元に戻せと言っているのではないのですが、量的な緩和について思いきった措置を取ってもらうことが必要なのではないかと思っております。とにかく、金融機関についても景気対策というものも考慮に入れた動きをしてもらいたいと思っておりますし、いたずらに厳しくやっていくことが、金融庁としての任務ではないと思っております。その辺をあまり言うとまた言い過ぎになるので気をつけてものを言っていますが。やはり量的な資金供給が十分に行われるようにするためには、ただ厳しくやるということではいけないのではないかと思っております。

  

 問:量的緩和というのは、ゼロ金利に引き戻すということではなければ、具体的には何を指していらっしゃるのでしょうか。
 

員長:具体的にどういうことをするかとなれば、日銀の問題になってきます。それは金利水準即量的な緩和には必ずしもならないのではないかと思っております。ですから去年の暮れの措置も、2000年問題を抱えての資金供給ということであったわけですけれど、方法としては日銀に色々と考えてもらいたいと思っていますが、そういう頭で一つ考えてもらいたいということを言っているのです。日銀の中でも、少数ですが、そういう強い意見があるわけです。

  

 問:国債の引き受けとかそういうことではないのでしょうか。
 

員長:具体的な手段としては色々あると思います。オペレーションの手段としては今仰ることもあるわけで、買い上げをするとか色々と方法はあるわけです。ですから、「超緩和」という言葉を使っていましたが、やはり金融緩和ということがどうしても必要だと思っております。

  

 問:それはやはり年末にかけて資金需要が相当必要になるということでしょうか。
 

員長:年末の資金というのは当然、越年資金も要ることは要るけれど、年末だからどうかということではなく、やはり景気対策というものを考えた場合に、金融面においてもそれに協力する体制がないとなかなか容易じゃないのではないかという気がしてなりません。日銀から言わせると、1%と見たのが1.5%となったではないかとか。来年は、それ以上の実質経済成長が見込まれるというようなことかもしれませんが、私は1%とか2%とかの経済成長で良いものかという気がします。

(以上)


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