相沢委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年11月7日(火)於:参議院 議員食堂】
  

【閣議案件等】

 今日の閣議は、当委員会に直接関係のあるものはありません。外務大臣からロシアのプーチン大統領とイワノフ外務大臣等々と平和条約について話をした報告がありました。11月15日に日露首脳会談を開催する予定になっていますので、その会談に向けての両国間の話合いの発展に位置付けが出来、年内にイワノフ外相と再度会談をする可能性も視野に入れながら、引続きあらゆる分野で日露関係を強化し平和条約の締結に全力を尽くしていく考えですという話がありました。

 農水大臣から、韓国を訪問して、ズワイガニの刺網を止めること等について話合いを行ったが話合いがつかなかった。ただWTOについては、日本と完全に同調してやっていこうということになったという報告がありました。

 通産大臣から、日韓官民合同投資促進協議会を主催するために韓国を訪問したことの報告がありました。

 運輸大臣から、中国訪問についての話がありまして、北京上海高速鉄道について当方として協力の用意がある旨を表明したことの報告がありました。

 郵政大臣から、東京で開催されたアジア太平洋情報社会サミットについての報告がありました。

 大蔵大臣から、財政演説の案についての説明がありました。

  

質疑応答】

 問:一部報道で、預金保険機構が、そごうの再生計画の5年延長を申し入れ、国民負担の最小化をするということですが。
 

員長:私は聞いていなかったので、説明を聞いてみます。あれは何年になっていたでしたか。
 

 問:10年を15年と申し入れたと聞いておりますが。
 

員長:まだ聞いてないです。今朝の新聞を見て知りました。

  

 問:昨日、イトーヨーカ堂が銀行の予備免許の申請をしましたが、再生委員会としてその審査に当たってどの辺を見たいかということと、自己資本比率が特殊な銀行ということで異常に高いのですが、この辺は決済専門銀行に関しての自己資本比率の規制を考えたいというお考えはございますでしょうか。
 

員長:後の点に関しては、そういう考えは今はないです。それはちょっと検討をしてみます。今、イトーヨーカ堂が、銀行としての免許申請を出して来るという話は、皆さんご承知のように随分前から聞いているわけで、一部にはもう出して来ないのではないかとか、来年送りだという話もありましたが、やはり出すという話はその作業で聞いておりました。いよいよ具体的な事業計画を付けて持ってきたわけです。色々と他の銀行との手数料問題とか、採算性の問題とか色々な点について検討を重ねておったようですが、目途がついたから持ってきたのだと思います。私も早急にその話は良く聞いて結論を出したいと思っております。

  

 問:免許の時期、営業開始の時期を年内という見通しもかなり強いようなのですが、審査は迅速になさるのでしょうか。
 

員長:それはそうだと思います。ただ、どこに問題点があるのか、具体的な提案の中身を私はまだ聞いておりませんから、良く話を聞いてやりたいと思っています。

  

 問:昨日、日野長官は「実質債務超過に陥っている保険会社はない」という話をされましたが。
 

員長:本来ならば、今月の下旬に提出してくるものについて、千代田生命、協栄生命の破綻がありましたから、他の生保についてもどういう状況なのか承知しておきたい、粗々の数字を報告してもらいたいという事を言っていたわけです。というのも、協栄生命の破綻は、千代田生命の破綻が一つ引き金となったという話も出ていますし、どうも生保は危ないぞという話も出てきているので…。本当なら何かあるといけないから保険を掛けるのに、保険会社が潰れるということでは保険にならない。そういうことで、次は一体どこでしょうか、という話を皆さんが聞いて来られる状態ですから、一体どういう状態かということを承知しておくという意味において聞いたわけです。結果は、すぐ皆さんに報告申し上げるような形にはならないかと思ってますが、とにかく「今の粗々の段階では、ソルベンシーマージン比率200%を割るようなものとか、或いは実質債務超過に陥っているようなものは無いから、一つその点はご安心頂きたい」という趣旨の日野長官の話だと理解しています。

  

 問:予定利率の引き下げ問題について、結論が決まっている話ではないのですが、事務当局の方はなかなか難しいという見解のようです。先週末も生保業界と懇談をなさって、現時点のお考えは如何でしょうか。
 

員長:このような話は、大体我々の方が先走るのです。役所の方が色々なことを言うのは普通のパターンです。ただ、私の気持ちとしては、要するに生保が去年から3つ破綻していて、「生保は大丈夫なのだろうか」ということを言われることを防がないと、一つ二つの問題ではなく全体の問題なのです。その最大の原因は何かと言えば逆ざやなのです。予定利率の変更は、破綻をしなければ、或いは再生計画に入らなければ出来ないというのはおかしいのではないかと思います。それは平成8年までは、現に出来たわけで、平成8年の制度改正の時に、保険審議会で役所等の意見もあってそうなったので、判例としては違憲ではないというのが一つあるだけなのです。
 私は、この問題は結論をどうするかということは、今から決めることでは無いにしても、やはり真剣に検討すべき問題だという認識は持っているわけです。ですからそのことについて金融庁も、「何か大臣がそんなことを言っているけれど、我々には何にも言ってないぞ」とか「聞いてないぞ」とかいうようなことは言わせないと言っておきました。現に、この間生保協会の人達と会った時も、日野長官も列席して話を聞いていて、私もそういうことを言っているわけですから、それは当然「聞いていない」といういうようなことは言えないわけです。早急に検討するようにと昨日も言っておきました。

  

 問:早急に検討するように、金融庁に指示を出されたということでしょうか。
 

員長:正確に言うと、昨日初めて言ったのではないです。この問題については、前から私はそういう意見だということを言っていましたし、それは長官以下並べてそういう話をしたということではありませんが、この間の生保協会の会合の前にもそういう意見は言っていましたし、生保協会との会合の際にもそのことは言いました。その時に協会長から「大変良い発言をして下さって、ありがとうございました」と感謝があった。ただ、業界の中では必ずしも意見が一致してないようです。これは、そういうことにならないように何とかしのげると思われる所もあるからです。これは具体的な会社は言いませんが、つまり比較的短期の保険に重点を置いている所もあり、そういう所は違いますし、体力があるところもあります。逆ざやが続いても体力が残っているところもあります。
 また別の理由で、そうでなくても生保業界に対して信頼感が揺らいでいる時に、予定利率を下げるということはどういうことかと言えば、保険金を下げることは難しいとなれば保険料を上げるということです。そうすると、いよいよ生保離れを起す恐れがある。これは全体の話です。だから、そういうことを言ってもらう方が良いという考え方の人と、これとは異論派と言ったらおかしいですが、そういう人もいるわけです。だから私が言ったときには、その場で会長はそういう発言をしましたし、それは全く話にならんという意見も出ませんでした。私は、とにかくこれは業界としても良く検討してもらって、意見の調整をしてもらいたいと思うし、ただ業界がこうだから、こうして欲しいと言うからこうするというのでもない。私どもの立場としては、あくまでも生保業界に対する国民の信頼がこのままでいったら薄らいでいくし、また次はどこ、次ぎはどこか、という心配をしなければならない、そういうことで良いのかということです。
 つまり破綻をさせなければ、保険料率の改定が出来ないという状態は良いのかどうか、破綻させたら会社としては利率を下げてやれることになるのだけれど、だけど保険の加入者としてはそうなった方がハッピーかというと、私はそうではないと思います。やはり多少保険料率の改定というものがあっても、保険会社として継続していく方が良いのではないかと思うのです。私はそういう考え方がどうなのか、ということについても業界としても一つ検討して、早急に業界としての意見の取りまとめをしてもらいたいということを言っているのです。

  

 問:予定利率の引き下げに関しては、政府が強制的にやるやり方と、定款変更で各社の自主判断ということがあると思いますが、改めて確認なのですが、大臣が想定されているのは後者の方だというイメージでよろしいのでしょうか。
 

員長:そのことも含めて検討問題だと思います。というのは、平成8年に規定が削除される前には、両方あったのです。政府が命令をしてやれるのと、総代会で申請があってやれる場合と両方あったのです。前の一方的に命令するということについて問題があったのだろうと言う気もするのです。いずれにしても、現行法では、保険業法による破綻処理、更生特例法による更生手続きと両方あるわけですが、いずれにしても破綻しなければ出来ないというのはどうも変だと思うのです。ですから、何とかそれが出来るようにしたい。
 ただし、仰るように、方法としては二つあるのです。こちらが保険会社の情勢を見て命令をするという形、或いは自主的に申請があったのに対して認可をするという形、両方考えられる。もう一つは、バラバラなのにやるのか、一斉にやるのかという問題もあるようです。つまりその辺が各社によって意見が分かれると思います。やるなら全部一緒にやってくれないと、自分の所だけでは言いにくい、言えば危ないだろうということになってしまう。かつての佐々波委員会の資本注入みたいに、手を上げたところは叩かれてしまうというようなことになる恐れがあるから、やるなら一斉にやったらどうかという意見と、やはりやれるところとやれないところがあるのだから、やれないところが自分の判断で申請する、それを認めるということで良いのではないか、と意見が分かれると思います。だから、今からどちらにするかということを予断を持って答えることは、私は危険だと思いますのでそこは避けます。いずれにしても全く考えないのか、考えるかということから問題になる。私としては、今の情勢では当然考えていかなけえばならないのだろうと思っています。

  

 問:更生特例法の改正の際の議論で、まず経営者に責任をとってもらって、基金とか劣後ローン、劣後債で責任をとって、それから保険契約者にもちょっと割りをくってもらうという筋道の議論があったと思いますが、この場合ですと、経営者の責任とか基金とかいうより先に保険契約者に皺寄せがいくと思うのですが。
 

員長:ちょっと表現が適当かどうか分かりませんが、護送船団方式とか、指導行政とかよりも、寧ろ結果責任を取ってもらうという形で金融行政を考えていくのだという考え方でしょ。それはそれで良いのですが、とにかく破綻しなければ出来ないということは、他に無いでしょう。銀行の場合は、金利も自由化しているし、定期にしたって預金にしたって金利も変えられるし、貸出しの金利だって変えられる。しかし保険だけは、絶対に金利が動かせない、潰れるまでは駄目だ、ということで良いのかという気がします。

  

 問:その議論ですと、一斉引き上げというのはやはりおかしいのではないでしょうか。
 

員長:だから私は両方考え方があると言ったのです。ただし、それをやった場合には、先に手を上げたところが、「やはりあそこは危ないぞ」ということになって、かえってそれが原因で叩かれてしまうという心配があるのです。それがいいかどうかということだと思います。

  

 問:大臣のお話には、保険契約者保護というのをもう少し配慮することが大事なのではないでしょうか。つまり経営というのは、勿論破綻に至ることは、連鎖があるから防がなければいけないけれども、しかし同時に契約者保護というのももう少し配慮が必要なのではないでしょうか。
 

員長:そういうことを言われると思うから言っているので、それでは破綻した方が保険契約者にとってハッピーでしょうか。私はそうは思わない。だから契約者のことを考えて、破綻にもっていかない方が良いのではないかと思うのです。死亡保険金については、100%保護される。死なないと駄目なのです。だからといって早く死ぬわけにはいかない。後は責任準備金の9割保証ということです。責任準備金の9割についても、払った掛け金の9割が完全に返ってくるというわけでもない。とにかく破綻をすることによって、更生計画によって、その皺は当然保険契約者に寄るわけです。だから、そういう形で寄せた方が良いのか、事前に少しは保険料が上がっても、会社として潰れないでやっていった方が良いのか、保険契約者にとってのことを考えても私はその方がベターではないかと思うものですから、私共だけの考えではなくて、業界としても当然考えてもらわなければならないと思います。

  

 問:その場合、経営責任については、一切問わないというお考えでしょうか。
 

員長:別にそんなことは言っていません。経営責任というのは、貴方が聞きたいと思っているのは、破綻した場合は、当然民事上・刑事上の責任というものが追及される。今私が言っている方法をを取ると、そこのところがぼやけてしまうという意味で言っているのでしょう。私は、経営責任は無くなるものではないと思います。

  

 問:いつ頃までに結論を得たいとお考えでしょうか。
 

員長:早く出してもらいたいと思っております。この問題は避けて通れないと思っておりますので、いずれにしても早く結論を出したいと思っております。

  

 問:所管を離れてしまうのですが、発泡酒の増税をしようという論議がありますが、それについて何か感想はありますでしょうか。
 

員長:税収が増えると思えば「あいつが売れるから、そこにくっ付こうと」まあそういう気持ちになるでしょう。何だかいい気はしないですね。元々発泡酒と普通のビールとが、税率が相当違うということについて問題が無かったかというと、麦芽の差でもってグッと違うこと自身がどうかという議論があの時にあったと思うのです。だからあれだけ値段が違って味もそう違わない、同じことなら安い方が良いというのは選択ですから、折角そうなったのに、「待った」と捉まえるというのはどうでしょうか。税収を確保しようと思うところから言うとそういう気持ちが沸いてくるかもしれませんが。

  

 問:話題が飛ぶのですが、金融担当大臣というのは置くことになるのでしょうか。
 

員長:勿論置くのでしょう。今は再生委員会という事務局の組織がある。今度はそれが無くなるわけです。金融担当大臣がいて、金融庁があって、人事等に関しては総理の所管です。だから格好としては変なものです。それで良いのかという気もするのですけれど、とにかく金融担当大臣は置くということになっていると聞いています。そうなると、金融担当大臣は、金融庁の行政に関しても全面的に責任を持つ形になってないと、それこそ「そんな話は知らない」ということでは困ります。

  

 問:人事権を持っていないと…。
 

員長:やはり何かそこのところは、まだまだスタートしないうちにそのようなことを言ったと言うと問題になりますが、何かその辺のところの組織を考えておかないといけないと思います。

(以上)


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