相沢委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年11月10日(金)於:参議院 議員食堂】
  

【閣議案件等】

 今日の閣議は、補正予算その他いくつか案件はありましたが、直接私共に関係がある案件はありませんでした。財政演説それから外務、通産、文部、総理大臣の出張の件。

 閣僚懇では、ハーグでのCOP6のことについて、環境庁、外務大臣、農林大臣、通産大臣から発言がありまして、京都議定書の成功に向けてご協力を願いたいと。通産大臣から、GDP2%というのでは財政再建も含めて非常に財政・経済の運営は難しいから3%台が望ましいのではないかという発言があり、厚生大臣からも社会保障制度を考える場合も2%か3%かということは、非常に重要な問題になるから、ぜひそれはひとつ望ましい方向にお願いしたいという発言がありました。経済企画長官から、アメリカではITでGDPプラス0.8という結果が出ているので、ITについては是非日本でも効果を期待したい、ただ物価が異常に下落していることが問題になっているという発言がありました。閣議前の月例報告でも物価の問題が出ています。消費が弱いということに一つ注意しているということでした。

  

質疑応答】

 問:今日の閣議で、補正予算が決定されたということですが、改めてこの補正で政府が描いている年度後半から景気が回復に向かうというシナリオが実現出来るかどうかを含めて、改めて補正予算についてのお考えをお願いします。
 

員長:昨年の補正予算も念頭に入れ、規模としてはかなりのものになっていると受け止めております。財政再建という大きな懸案もありますが、やはり当面は何と言っても景気回復を重点に政策を進めていくことが、我が党、我々政府の考え方ですから、そういう線に沿っての補正予算だと受け止めております。ただ、これがやったらびっくりするぐらい良くなるかと言われると、かなりの効果は期待できるにしても、私はなかなかそれだけでは景気の回復というのは難しいと思っております。やはり金融サイドが、大きな役割を果たすことになるのではないかと思っております。ですから金融の量的緩和は、是非年末の資金繰りの関係も勿論ありますが、日銀には是非考えてもらいたいと思っております。

 

 問:今日の月例報告では、金融のそういった話は出たのでしょうか。
 

員長:格別に出ていませんでした。

  

 問:生保の予定利率の問題ですが、自民党の金問調が正式に大臣が問題提起された予定利率問題を協議することにしました。今後の議論の推移ですが、政治主導でこの問題の決着を図っていくという方向になるのでしょうか。
 

員長:政治主導という言葉は何か引っかかるのですが、なかなかこういう問題というのは事務的には取り上げにくい面もあろうかと思います。ただ、再々私が申し上げているように、既に生保が6つも破綻し、最近でも千代田生命、協栄生命が続けて破綻した。「次ぎはどこか」という話を、具体的な名前を挙げて私もよく聞かれます。そういう状態を放っておいてよいのかということです。ポロポロ生保が潰れて、更生手続きに入ったら何とかなるだろうと、予定利率も変えられるだろうと、生保の契約者保護機構の援助も期待出来るだろうと、そういうことで良いのかという気持ちです。勿論予定利率を変更することになれば、生保全体に対して信頼感が薄らぎ影響するという点が無いとは申しません。しかし、次々に生保が潰れていくことに比較してどうかと私は思うのです。実際問題一つの生保が潰れると、死亡保険金は100%保護とか、責任準備金の9割保証とか、生保の契約者保護機構もありますから、救済措置は一応出来てはいます。出来ていますけれど、それで良いということにはならない。これは会社の職員の問題、社会的な問題等色々あるわけです。ですから今のような逆ざやを放置しておけば、こういう現在の運用利回りが続くということが前提で単純な計算をしている某雑誌社の計算によれば、一番体力のあるところで20年だそうです。
 事実としては、以前の予定利回りの高いものが減って、新しいものは利率が下がってきている。年が経てば、予定利回りの平均的なところは下がってきます。そういう意味では逆ざやも小さくなってくるということは当然ありますから、非常に機械的な計算は如何かと思いますが、そういうことで潰れていくかもしれないということを、見す見す座して見ているということは政治ではないという気がするので、そういう意味において是非検討してもらいたいと思います。これは法律の改正がいることですから金問調、財政部会の合同会議で検討してもらいたいし、連立内閣ですから他の2党の協力も得られなければいけませんから、3党の金融プロジェクトチームでも検討して頂くという話を林さんにしましたら、早速会合で取り上げる事を決めてくれました。
 ただ、今国会は期間があまりありません。事務的、法律的に言うと非常に簡単な話です。つまり平成8年に削った条文は3行なのです。だから3行足せば良いという話もあります。法制局的に言えば、そんなのはたいした手間ではありません。ただ、そのままの形で良いのかどうかという点についても問題があります。つまりあれは行政側が生保の状態を見て一方的に引き下げを指示することも出来るし、各会社自体が自発的に言ってそれを認めるということもあることを想定しているのです。それらについて、どういう形で考えるのかということもあろうかと思います。
 ただ、非常に残念なのは、生保会社を助けるために一般の契約者を犠牲にするという受け止め方をされると非常に心外なのです。私としては、金融機関に対する色々なセーフティネットというのは、これは何も保険に限りませんが、あくまでも銀行の場合では預金者であり、同時に銀行のお金を借りて経営をやっている人達のことなのです。それを考えて、そこに公共的な意義を、重要性を認めるからこそやっているわけですから、何も生保会社を助けようということではないのです。生保全体に対しての信頼感の問題を何とかして解決出来ないだろうかと、そうしないと「生保は危ないぞ」ということになる。どこかが破綻したらまたそういう心配が出てくるのです。一層加速する。それを私は心配しているのです。

  

 問:その論議に関しては、金融当局も様々な面で協力されているのでしょうが、基本的には金問調ですとか与党3党で議論を進めていくことが中心になるのでしょうか。
 

員長:そうですね。無論これについては、過去の経緯も良く見てみなければいけません。つまり削った経緯です。復活させるなら、何故削ったかということも良く考えていかなければなりません。ただ憲法問題というのは、そう大きなものではないと受け止めております。というのは、憲法論議が中心になって、削ったという経緯でもないようですから。寧ろ最高裁の判例では、昭和34年の判決は合憲だということなのです。違憲判決ではなく、合憲判決なのです。それでは何故削ったかということにもなってくるのですが、その時の保険審議会における論議でも憲法問題は一つの検討の課題としてあったでしょうが、ただそれが中心ではなかったと理解しております。

  

 問:昨日、森総理のところをお訪ねになったということですが、その時はどのようなお話をされましたでしょうか。
 

員長:数分立ち話をしました。新聞やテレビで生保の予定利率の問題について色々と報道があって、総理もご覧になっているでしょうが、私の考え方としてはこういうことだということをちょっと説明しておきました。いずれまたご説明する機会もあると思うけれど、とりあえずということで話をしました。

  

 問:国会の答弁でも内閣法制局の見解と仰っていましたが、今のお考えだと、特になかったという解釈でよろしいのでしょうか。
 

員長:それは財産権の侵害というような議論もあるものですから、そういう点については、立法するに際しては法制局の見解も得られないと。あの時は閣法を考えていましたから内閣法制局です。議員立法なら衆参の法制局ということになります。いずれにしても合憲・違憲という論議に関して言えば、最終的には最高裁の判断でしょうが、その前の段階としては法制局の見解を聞いておくべきだろうということを申し上げました。

  

 問:法制局は、違憲・合憲という見解も出していないということのようですが。
 

員長:私もそう思います。

  

 問:最高裁の判決について、大臣がそのように仰るというのは、大臣が想定されている保険業法改正は、行政命令で一斉に引き下げられるということを念頭においていらっしゃるのでしょうか。
 

員長:そこのところは両方の考え方があるわけです。決めているわけではないのです。前の制度では、行政命令で引き下げることも出来たし、各会社も自発的に申請してやることも出来たけれども、その両方の形をそのまま復活させるのかどうかという事です。仮に両方の形が出来るにした場合に、今度は行政当局としてどうそれをやっていくのか、という問題になると思います。その辺は何も固定的にこうしますとか、或いはこうしたいという考え方は決めていません。ここは一つご論議頂きたいと思います。両方あるのです。もし各会社の判断だとしたら手を上げたところがやられてしまう、「あそこが危ないぞ」と佐々波委員会の資本注入の時のように、資本注入に手を上げたところが危ないぞということになる。変な話です。手を上げなくてもいいという所まで上げさせた、変だと思うけれど、それでもやはり個別に手を上げたらば逆に叩かれるという心配がある。そこから言うとやるなら一斉にという議論もあるし、何もそうしなくても済むというところまで、利率を下げさせることもないではないかという議論もある。これは生保各社でも、意見が分かれるところだと思うのです。生保協会でも、考え方を良くまとめてほしいと言っております。

  

 問:生保協会は、意見をまとめる時期は大臣に仰ってきているのでしょうか。来週生保協会の会長会見があると思いますが。
 

員長:話をしたのは先週の木曜ですね。「どうするんだ」と電話をしようと思っていたのですが。言いっぱなし、聞きっぱなしではしょうがないですから、こういう問題は。
  

 問:まだ時期的なものは、ご報告はないのでしょうか。
 

員長:ないです。どのようにするのか、あなた方の考え方をもう一遍聞きたいと言おうと思っていたのです。

  

 問:固定的に考えていないということなので今は頭の体操なのでしょうが、手上げ方式で一斉にというのは独禁法違反ではないのですか。手上げ方式で一斉に生保各社が引き下げるというのは、これは独禁法に抵触しないのでしょうか。
 

員長:そう言われるでしょうが、例えばタクシー料金がそうです。あれは運輸省が決めているのではないのです。1社が申請して、それでいいとなると他の社がそれを見て同じものを申請して認めるということになるのです。そういうやり方をやっているのですね。

  

 問:同じような方式を取れば良いということですか。
 

員長:そういう例もあるということです。これは申し合わせているのではないかという疑問があるのですが、そうではないのです。例えば、貴方が申請をする、よさそうならみんな同じことを申請する。相談はしてないが、一つがやったら皆が同じことをを真似してやる。これは別に談合でも何でもないということです。今は銀行の金利等にしても、大体似たようなことだけれど、あれは談合しているとも思えないが、大体似たようなところに来ているわけです。

  

 問:生保協会の意見を聞かれるということですが、寧ろそういう話になると契約者の方がより影響が大きい話ですから、業界だけの話というのは何となくバランスが取れないと思うのですが。
 

員長:そうですね。だからそこはどういう形で話を聞くか考えておかなければなりません。各生保会社から言えば、契約者の相互会社ですから総代会があるわけでしょ。総代会というものが機能していれば、当然総代会にかけてやるということもあり得るわけです。あり得るというより、かけなければならないことでしょう。ただ仰ることが、そういう法制度を作る前に、一般の契約者の意見も聞かなければならないという意味なら、それはマスコミの皆さん方も言われているし、金融審議会にもかけなければならない。金融審議会には当然そういう代表も入っているわけです。

  

 問:もう余り金融庁には期待はかけていらっしゃらないのでしょうか。
 

員長:やはり最終的に事務的な作業をするところは金融庁だし、大いに期待をかけています。

  

 問:一斉という話になってきますと、民間保険の話だけではなくて簡保も関係してくると思いますがその辺の整合性についてはどうお考えでしょうか。
 

員長:一般の貯金と預金の金利の時も色々とそうでした。そこは自ずから調整も考えていかなければならないと思いますが、実際には難しいところです。つまり一応は別になっていますから、簡保は郵政審議会でやっているし、生保は金融審議会です。しかし簡保にしたって同じような問題は当然抱えているはずです。簡保のみが逆ざや問題がないということではないと思っております。余計なことかもしれませんが、生保会社によっても、貯蓄型の長期の保険が多いところと、比較的短い短期の保険が多いところとでは随分違うのです。ですから短期の保険が多いところは、契約の段階で予定利率が下がっていますし、余り逆ざやを意識してないところもあるのです。だからそういうところは何もそんなことをしてくれなくてもいいという意見でもあるのです。

  

 問:全く別な話なのですが、来月からテラネットという民間会社がスタートして、様々な業種間の個人情報の交流を始めようとしているのですが、それに当って顧客のコンセンサスが十分得られていない状態にあって、このままスタートすれば混乱が起きるのではないかという指摘もあるのですが、これについては何か手立てというのはお考えでしょうか。
 

員長:そういうものがあるのですか。よく調べてみます。

  

(以上)


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