相沢委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年11月21日(火)於:参議院 議員食堂】
  

【閣議案件等】

 今日の閣議では当委員会の直接の案件はございませんでした。総理から、不信任案は否決になりましたが、不信任案の提出に至った点についてお詫びを申し上げるとともに、同時に皆さん方に感謝を申し上げるほか国政は一刻も停滞を許せないので、予算、法律案等の成立を目指して、各閣僚ご精励をお願い申し上げたいという発言がございました。東海地方の豪雨災害の被害を受けた中小企業者に対しては、既に政府系の中小企業金融機関の災害融資についての金利を2.1%に引き下げておりますが、その後現地の状況等を踏まえ、特に被害の大きかった愛知県内の中小企業者のうち、特に著しい被害を受けているものについて、国と地方自治体が協力して利子補給を行うことにより災害融資を実質無利子にすることにいたしたいと通産大臣から発言があり、関連して自治大臣から、その財源対策については特別交付税などによって措置をしたいという話がありました。

 閣僚懇で、大島大臣から科技庁の総括政務次官の辞表の取り扱いをいかがいたしますかという話がありました。これには総理から、党の方の考え方もあろうし、相談をして今日の午前中に結論を出したいと思っておりますという話がありました。大島大臣からは、法案の審議も始まるので、できればこのまま政務次官は辞めないでもらいたいという話でがありました。そういう方向かなということでした。

  

質疑応答】

 問:政局の話ですが、昨日から今日にかけての動きで、加藤派と山崎派の最終的な決断も含めて、大臣のご感想をお聞きかせ願えますか。
 

員長:結果的に見れば、あれで良かったのかなという気もします。昨日の加藤、山崎ご両氏の記者会見を、本会議が終わってからテレビで見ていましたが、加藤さんの発言もなかなか苦渋に満ちたもののように受け取って見ておりました。それはそうだろうと思うのです。色々と情勢を判断し、票を見ても勝てる見込みがない。その状態の下に、両派の若手も含めて大勢の議員の除名ということになれば、それは大変に大きな問題であり、その人達にも気の毒だということから自分と山崎さんの二人が出席をして反対をして、他の人は欠席ということにしてくれと、本当に苦渋の決断を諮ったわけですが、両派の他の人達も、二人だけでそういうことをしないでくれということで、結局二人も欠席をすることになったわけです。
 幹事長からは「欠席者については処分は考えない」という発言があったと思います。前の発言では、「賛成者だけではなくて、欠席者も病欠以外は除名する」という固い決意の表明のから比べると、考え方が転換しているわけです。その辺が一つの収まりなのでしょう。
 とにかく我々としては、会期の残り少ないこの時期に、補正予算とか重要な法案を抱えているわけで、一刻も早くこれを通さないといけない。そうすることが内閣というより国会の役目だと思っていますから、それを果たせない形になるのは大変残念なこと、と言うより申し訳ないことであると思っていました。ですから清々粛々と不信任案が否決され、それらの課題が円滑に果たされることを期待していたわけですから、結論的には姿は変わりましたが、それはそれで大変結構なことだと評価しております。
 ただ、自民党の中の加藤派、山崎派という二つの大きな派閥のかなりの人達が欠席をしたという事実については、問題がなくなったというのではないので、大きな流れがあった又はあるということが、今後も当然問題になってくるだろうと思っております。加藤さんの話を聞いても、これで我々はギブアップしたわけではなく、要するに戦略その他において不十分なところがあったので、こういう選択をしたのだと言っているわけですから。

 

 問:日債銀の社長が、2カ月ぶりにオリックスの子会社の会長の丸山さんに決まったわけですが、機関銀行化の防止という観点も含めて大臣のご所感をお願いします。
 

員長:ソフトバンク、オリックス、並びに東京海上の3社が一番大きな株主で、特に孫さんのところのソフトバンクが殆ど過半数に達すると思っているのですが、やはり経営責任を明らかにしていく意味では、その3社から言うなればそれぞれをバックにして、執行の責任者が出されるということは、それなりに妥当なことではないかと思っております。一頃、孫さんのところから出るという話がありました、皆さんもそういうことを書かれたこともあるかと思うのですが、一番大きな株主から執行の責任者が出るというのもいかがなものかという考え方もあったようです。ですからソフトバンクの笠井さんが非常勤の会長になって、副社長が東京海上から出て、社長がオリックスから出るという形になったのだと思います。それが一番良いかどうかよく分かりませんが、とにかくそういう形で収まったことは良いのではないでしょうか。
 私の方からは今まで、何時まで経っても日債銀の社長と言うか、執行責任体制が決まらないということであっては、新生日債銀に対する評価を下げることになる恐れがあるから、早く話し合って決めてもらいたいということを、3社に対しましても話をしておりました。新聞の方に先に出たようですが、それぞれ私のところに「こういう事情でこうなりました」という連絡はございました。

  

 問:生保の予定利率問題ですが、先日、生保協会の宇野会長とお会いになったと思いますが、その際のやり取りについてお聞かせ願えますでしょうか。
 

員長:生保協会の会長、副会長が言った話と、私が後でぶら下がりで言った話が、少し食い違っている印象を与えているように書かれた新聞も拝見しました。しかし、そう大きな食い違いはなかったのでして、情勢の認識については一致していると思います。つまり、今の情勢で放置をしておけば、やはり逆ざやの大きなところは、破綻する恐れがある。従って、この際抜本的な対策を考えておかなければならない、ということについては意見は食い違っていなかったです。
 ただ、保険業界と一口に言っても、各会社によっては、例えば保険料率の引き下げというものを当面必要としない、協会長の会社はそういう状態だと言っていました。要するに、予定利回りの引き下げが唯一無二の解決方法であるかのごとく受け取られると、それ「生保の利率は下がるぞ」「予定利率は下がるぞ」ということは、保険金をカットすることはおそらく難しいでしょうから、保険料率の引き上げになる。そういうことになると、そうでなくても生保離れが起きつつある現状において、一層それが加速される恐れがある。それから保険は生保業界だけではなく、簡保も、JAの系統の保険もある。従って、それらの保険との関係がどのようになるのかということも、我々は関心を持たざるを得ない。つまり、生保だけがそういうことになって、簡保にシフトするとことが心配されるものですから、その辺の調整をどのように考えるかという問題もあります。
 同時に、生保の運営を改善する方法として、利下げ以外にも色々と考えられるのではないか。例えば、費差益を出していく。出来るだけ経営の合理化を図って、事務経費をカットする。そういう問題もありますし、これは一般的なことですが、死差益もあるわけです。死差益をどの程度織込むかということもあるでしょう。要するに「早期健全化の方策の中の一環として、予定利率の変更を考えるという形にならないものでしょうか」こういう言葉を使っていました。つまり、生保業界としても予定利率の引き下げは抜本的、且つ有効な対策であるということは認めるけれども、それだけを強調されたような形で生保の運営改善が果たさせるという印象を与えることは、我々としては大変警戒しなければならないことです。破綻に至らないように、つまり早期に健全化対策を考える一環としてということであるならば、私共はそれは有力な手段だと思っておりますということでした。私もそう思うのです。
 予定利率を引き下げることについて、色々と雑誌等で賑やかに書いていますが、要するに一斉に下げるか、或いは特に経営が苦しいところについてやるかの問題があると思います。冒頭申し上げた通り、生保業界も一本ではないのです。長期の保険を多く取っているところ、古い保険を多く抱えているところは、予定利率が6%を上回るところもあったりしますから、大変な逆ざやになる。逆に短期の保険が多いところは、予定利率も下がっていますから、逆ざやもそれほどではない。それは各会社によって違っております。そういう事情もありますし、無論過去の蓄積と言いますか、体力があるところとないところとありますから、一律にやらなくても良いのではないかという考え方もあるわけです。逆に、あるところがやれば「それ、あそこは危ないぞ」ということになって、その会社にとって非常な不利益の原因になる恐れもある。そういうところだけ引き下げをやったのでは、また問題が出てくる。色々な意見が当然考えられるわけです。その辺のところは、これから十分検討をしていかなければならないところだと思っているわけです。ですから私は「今日は、一応生保業界として、私共がお会いして以降、協会内において検討された話の中間的な報告を承ったということにしておきましょう」ということを言いました。というのは、私は出来れば今国会中において結論を出して、立法化を急ぎたいと思っていたのですが、今回のような問題もあったり、会期の残りも短くなってきました。また党に検討をお願いしていますから、林さんとも相談しましたが、どうも今国会中において完了するということも難しいのではないかという意見で、引き続き検討をしていこうではないかということでした。林さんも、方向としては結構だと思っておるという話でした。なお、ご案内のように3党連立政権ですから、公明党、保守党の方にも話をしなければならない。それぞれ私は一応お話はしてあります。

  

 問:不信任案の否決ですが、この結果で森政権は信任されたとお考えでしょうか。
 

員長:それはそうです。不信任案が否決されたのだから。

  

 問:国会で信任されたかどうかというよりも、一方で世論の支持率は十数%に最低になっているわけです。これをもって森内閣というのは、国民から信任されたとお考えでしょうか。
 

員長:竹下さんのときには10%を割ったこともあります。昨日も総理が答弁しましたが、私も支持率のみが物差しというわけではないと思います。少なくとも、不信任案は国会での問題ですから、その不信任案が否決されたということは、逆を言えば信任されたというふうに受け取って良いと思います。後はこれからどういうふうに推移するのかだと思います。色々なことを仰る人もいますが、政治の世界のことですし、今後どのようにこれが現れていくかは、これからではないでしょうか。ただ、第2次森内閣になってから短いでしょう。第2次森内閣としても半年経ってないのですから、そう度々内閣が替わって良いものではないのではないでしょうか。

  

 問:大臣の所属されているグループも含めて、形としては宏池会が3分されるわけです。これについてはご感想はありますでしょうか。
 

員長:やっぱりそうなったのかなあという感じがします。なかなかあそこの中も、加藤さんで一枚岩になるとところではないなと踏んでいましたから。今回そのことがはっきりしました。しかも二つに分かれた溝は決して浅くはないと見ております。

  

 問:金融問題、経済問題、少しは詰まったものがあったのでしょうか。だいぶ今後の議論の中で急いでやらなければならないということが多いと思いますが。加藤さんは相当色々言っていましたが…。
 

員長:今回、加藤さんが野党に同調して、不信任案に賛成するという気持ちは分からないでもないですが。一体何が本心なのかがよく分からないのです。政策が違うからと言うのであれば、まず加藤さんはどういう政策なのか。従来言われていたのは、サプライサイドはどうとか、財政再建を念頭においてやらなければならないとか、その程度のものはありますが、具体的にどういう点でどうしなければならないという政策の要綱というものがないです。加藤派として、手を上げてから政策を検討しようというのでは、逆さまだと思うのです。政策のグループと言うからには、政策が先にあるべきだと思うのです。それのどこが違うのか、そういう具体的なものが示されていないと思うのです。だからその辺について、一般の方も理解し難いところだと思います。元々、共産党まで含んだ野党の不信任案に同調するということですから、あまり政策らしいなものを立てたのでは、返っておかしくなると思ったのかもしれません。

  

 問:具体的な政策はないのかもしれませんが、為替市場とか、或いは株式市場も、今回の政局波乱もあるでしょうが、寧ろ森政権の続投ということに対して、若干日本売りみたいな形になっていますが…。
 

員長:そうは言っても加藤さんに投票するかどうかも分からない。仮に、不信任案が通ったとしても、次ぎの首班が加藤さんになるという保証は何もないからね。

  

 問:先程大臣からお話ありましたが「国会と世論は別だ」ということですが、不支持率が七十数%の内閣があり、世論がなかなか国会に反映されない国民の忸怩たる気持ちもあると思いますが、その辺は閣僚としてどうお感じですか。
 

員長:何故支持率が低く、且つ不支持率が高いのか、その原因について閣僚の一員ですからつらつら思うのですが、やはり景気が悪いということが最大の原因ではないでしょうか。そうなるとその責任は内閣にある。その責任は自民党にある。そういうふうに短絡しているということかもしれません。ですから例えば、株価のことを盛んに議論されていますが、森さんが就任したときは2万円くらいでしたか、それが今や1万5千円を割るということになったことも、森さんに対する支持が薄れてきている原因だと言われているわけですから。やはりそうなると景気回復について思いきった施策を取ることにならないと、なかなか支持率の回復というのは難しいのではないかという気もしてならないのです。
 もう一つは、自民党が割れてバラバラになっているのではないかということも、一般の支持率を高める要因ではないです。それから言うなれば、政局の不安定ということに、兜町も影響を受けているということも当然あると思います。一応ここでピリオドが打たれたわけですし、補正予算も通る、それも実行に移される。来年度予算の編成も始まるということになれば、その辺の流れも変わってくるだろうと期待をしています。

  

 問:この10日間、加藤さんが始めた騒動でもたらしたものは、何であったと思いますでしょうか。
 

員長:混乱だな。プラスのことはなかったね。自民党の評価を上げたことにはなりませんよね。「政権与党もだらしがないな」という印象を与えたでしょうね。残念ですね。

(以上)


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