相沢委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年12月1日(金)於:金融再生委員会 会見室】
  

【閣議案件等】

 今日の閣議で行革大綱を決定しました。これは閣議の前に行われた行政改革本部の会合で了承されたものを決定したわけでございます。行革大綱は、政府与党で8月から策定を進めていたものに、与党の行財政改革推進協議会における検討結果も盛込んで、行政各分野にわたる積極的な改革を取りまとめ、大綱として決定を下したということです。

 もう一つ、「経済構造の変革と創造のための行動計画」の第3回のフォローアップについても決定いたした。その中に金融分野という項目がありまして、そこで、CPの無券面化、これは企業にとって重要な資金調達手段であるCPのペーパーレス化のための法案を次の通常国会に提出をするということ。

 各種有価証券の決済迅速化については、「株式、社債等各種有価証券について、決済の迅速化、現在はTプラス3で3日目決済になっておりましたが、今度はTプラス1で翌日決済すると、の早期実現を図るとともに、社債等登録法、株券等の保管及び振替に関する法律の見直し等統一的なシステムでの決済を可能とするための法的整備を行なう。」ということ。

 会計基準の整備というところでは、「国際的な会計基準等の動向を踏まえつつ、引き続き会計基準の着実な整備を図るとともに、民間がより主体的な役割を果たし得るような常設の新たな枠組みを構築をする。なお、時価評価の導入については、株式においては単に販売目的で保有するもののみならず、長期保有の持合株等についても評価替えする。また、土地を含む固定資産については、我が国の地価事情や国際調和の観点も踏まえつつ、時価を考慮した評価方法を用いることを評価する。なお、事業用土地については、まず、貸借対照表に注記することについても検討をする。」と。必ずしもよく分らないのですが、制度の改正を考えていくことの方向を明かにしております。

 銀行法等の整備では、「銀行の健全性を確保しつつ、我が国金融の活性化や利用者利便の向上を図る観点から、異業種参入に伴う銀行法等の整備や他業禁止の緩和等に付いて検討を進め、所要の制度改正を行う。また業態間の相互参入については、現行の持株会社方式・子会社方式のほか、ユニバーサルバンク方式も検討の視野におくこととし、生保・損保については、さらなる相互参入を進めていくこととする。業態間のファイヤーウォールについては、必要最小限のものとなるようにする。」ということ。

 変化の激しい金融市場への対応等では、「変化の激しい金融市場における新たな金融方式・金融商品に対応していくために、原則自由とするとともに、他法令との均衡等とも配慮しつつ罰則の強化を検討する。また証券取引等監視委員会について、必要な増員を確保し、早急に体制の充実強化を図ることとする。証券取引の電子化を促進し、24時間取引等投資家の多様なニーズに対応していくこととする。さらに、財政投融資改革に伴う郵便貯金、簡易保険、年金の自主運営について、広く国際的視野に立った運用体制を充実していくこととする。」ということ。

 皆さん既にご承知のことでますが、これが「経済構造の変革と創造のための行動計画」の第3回のフォローアップについてということで、閣議決定されたということです。色々とこれは問題点がないわけではなく、これらを進めていく上においてそれらの問題点の解決を図りながら、折角こういう方向にあるわけですから、進めていかなければならないという気持ちはあります。

 それから労働力調査について、10月の完全失業率は4.7、男が4.9で前月に対して0.1プラス。女が4.3で前月に対し0.2のマイナス。結果的に4.7ということになりました。完全失業者数は、前年同月に比べると、3万人増加して314万人となり、2ヶ月連続で前年同月の水準を上回りました。

 消費者物価指数は、11月の東京都区部中旬速報値が、平成7年を100として、100.4となり、前月に比べ0.4%の下落。前年同月に比べ1.1%の下落。10月の全国確報値では101.7となり、前月に比べ0.1%の上昇。前年同月に比べ0.9%の下落となりました。従って、物価は依然として、スピードはともかく、低落傾向にあるということです。

 それから閉会中の定例閣議は10時になります。

 閣僚懇談会におきまして、扇大臣から三宅島について、2000世帯が長期避難世帯となりまして、その2000世帯の約8割に対し災害の支援金100万円を支給するということになったという報告がございました。この災害の支援金の制度は、昨年我々が中心になって作った議員立法によるもので、早速これが役に立ったことについては、いささか感慨がございます。

  

質疑応答】

 問:昨日の再生委員会で、基本合意していた東京相和銀行の譲渡先を白紙に戻すことを了承なさったわけなのですが、資産判定の時期がずれることで、国民負担が増えるのは間違いないという見通しになっております。それにもかかわらず白紙を了承された理由を改めてお聞かせ願えますでしょうか。
 

員長:国民負担が増えることになるかどうかについては、まだ決まったことではないのです。資産判定の時点がずれることによって、資産の劣化が進むのではなかろうかという話なのです。話がまとまらなかったのは、東京相和銀行を引き取るについての条件が、当方と折り合いがつかなかったということです。ロスさんの方の要求を丸呑みにすれば話がつくのですが、そうは参らない。そこで、最後はかなり徹宵の折衝を続けたようですが、事既にここに至ってはこれ以上お互いに譲歩できないということになれば、合意の解除ということもありますから、それに従って解除したのであります。これに関しては、他に手を上げているところもありますから、改めて引き取る希望のある所と話を進めて、最も売り手の側にとって有利な条件で話を取りまとめていきたいと思っています。但し、来年6月がまとめる終期でありますから、そうのんびりしているわけにもいかないので、出来るだけ速やかに話を進めていきたいと考えております。

 

 問:今、お話あったように、速やかに話を進めるということですが、交渉の経緯を見ていますと相当難航して、また同じことが繰り返されるのではないかという見方もあると思いますが、大臣としては何時頃を目途に話をまとめたいとお考えですか。目指す時期はございますか。
 

員長:相手があることですから、私の方で一方的に何時までというわけには参らないでしょう。ただ、今申し上げましたように、終わりが切られていますし、色々な手続きのことを考えれば、4月、5月までというようなことにはならない。もっと前に当然話しをつけておかなければならないと思っています。

  

 問:昨日、自民党の亀井政調会長が都内で講演をして、株価対策に対して「かなり強く政治家として何かやらなきゃいけない」ということを強調されました。それに先だって亀井政調会長は、相沢大臣ともお話になったということも触れたのですが、亀井政調会長との昨日のやり取りはどういう内容で、今後どういった形で株価対策をまとめていきたいのかについてお聞かせ願えますでしょうか。
 

員長:昨日は、本会議場で余り時間がありませんでしたが少し話をしました。仰ったのは恐らくそのことでしょう。一昨日は、色々と話をしました。それは一昨昨日、党3役が関係省庁の局長クラスを集めて、株価対策について名案なきやということで話があったわけです。そのことについては報告も聞きましたし、私も株価がこういう状況でいるということは大変問題だと思っておりました。特に、一般の企業についてもそうでしょうが、金融機関は、自己資本比率とか、ソルベンシーマージンとか、株価が直接に物を言うというところがあります。それに生保は、何とかこの窮状を打開しなければならないという時期に、株価が下がることは、一層ソルベンシーマージン比率にも響くことでもあります。ですから何とか少しでも株価が回復することを考えなければならないことについては、政調会長とは意見が合っているわけです。ただ、具体的な方法はいうことについては、非常に難しい点があるわけです。
 そこで一昨日、堺屋長官と、関係するのは私のところと経企庁、大蔵省、それから通産省なので、「4省庁で何か具体的なアクションがとれないか話し合ってみようではないか」ということを話をしました。それから大蔵大臣にも、大蔵委員会で隣り合わせだったので話をしていました。そこで一昨日、局長レベルで、かなり時間をかけて検討をしたということです。ただ、難しいのは、色々ドラスティックな案もないわけではないのですが、仮にそういうことをやる、或いは匂わすこと自身が「そういうような危機的な状態なのか」と受け取られて、返って株価に悪影響を与える。まして先月は、外国人の委託売買が東証の半分を占めているという状態ですから、外国のリアクションも考えなければならない。そういうことなので、色々と案としては検討しましたが、なかなか「これ」という案はないのです。
 やはり一番大きいのは、とにかく買う資金が動くということなので、それには資金供給を緩める。それは一つ、日銀に考えてもらいたいということです。日銀がゼロ金利解除を言って、あの時に政府側はご承知のように「時期早尚ではないか」ということで、大蔵、経企庁の大臣の各代理が政策決定会合の決定を延期することを言ったにもかかわらず、これが否決されたということがあるわけです。別にそれを恨みに思うわけではないですが、ゼロ金利解除後の趨勢を見ると、例えば長期金利は解除前の状態に戻っているわけです。つい先立っての日銀の政策決定会合の決定では、やはり無担保翌日物コールのレートを、0.25%の水準を維持すると書いてありました。そのようにゼロ金利解除後の経済情勢を見ると、長期金利が逆へ戻ってしまったことでも分かる通り、経済の情勢、実勢は言われる程良くなってはいないのではないか。失業率を見ても物価を見てもそういう状況なので、12月の中旬に出る短観がどうなるか、これを見たいと思っています。
 いずれにしても、資金供給については、私はもっと緩めてもらいたい。昨年は、Y2Kでとにかく企業も手元資金を相当豊富に持っていなければならないということもあったと思いますが、日銀が相当思い切って出したのです。そのことが株価にも影響を及ぼした。株高になった。年末の資金対策ということで、毎年やっていますが、金融機関にお集まり願って、今回は政府関係の金融機関も願って、年末資金対策には万事遺漏なきようお願いしたいということを、来週の月曜日に申し上げます。そういうことも併せて、とにかくお金がなければ買えませんから、そこを緩めてもらうようにしてもらいたい。持ち合い株の解消も何とか考え直してくれませんか、ということについて外国新聞を見ましたけれど、ボロくそに言われて憤慨しているのですが、とにかく株を売るなということを我々が直接言う立場にはないのです。ですから持ち合いの解消は、今までは推進するという考え方だったわけですから、それと逆さまなことを、流れに逆に棹差すような事は言いたくはないのですが、それにしても売る時期というのがあるでしょうと。今、この株価が安い時期に、更に売っていくことはないのではないか。株価が下がることは、金融機関にとっても当然マイナスの影響があるわけですから、それを一緒になって売っていくことはおかしいので、その辺については良く考えて行動してもらいたいということを私の方は言っているわけです。
 株を売ってはいるけれど、同時に買ってもいるということですが、公認会計士協会が「5営業日以前の買戻し、クロス取引はしてはいけない」ということを言ったことも響いているのかと思います。あれをもう一遍見直してもらえないかという気持ちもあるのですが、公認会計士協会が言っていることなので、私達が命令するわけにもいかない。そういう問題もあるのです。いずれにしても、今ここで売り急ぐことはないのではないかと、その辺はお考え置き願いたいということです。
 もう一つは税制ですが、これは前から申し上げていることなので繰り返しません。この間の衆議院大蔵委員会でも私から答弁しております。是非、我々が言っているように選択性を存続するということ。一年先延ばしという話がありますが、これはまずい妥協案でして、そのような形での解決なら私共は反対です。やるならこれから先、継続的に延長する、延長すると言うか続けるということです。期限を切らないことにしてもらいたいと思います。申告分離についても、現在の制度ではなく、26%を20%にするとか、諸外国にもありますが、損失の繰り越しを無制限に認めるとか、1年を超えて長期保有の株式の売却益について所得控除を行うとか、例えば200万を認めるというようなことを案として出しています。
 これは私の私見ですが、本当は地価対策で、思い切った税制を考えてもらえれば一番良いと思っております。短期的な処置でも良いのですが、土地の流動化が促進されるように、地価が下げ止まるように、例えば譲渡所得税の税率を下げる。不動産登録税、不動産取得税などについて限時的でも良いですが軽減が図られる。税制問題として、住宅対策は取り上げられていますが、やはり地価対策の点でそういうことを考えてもらいたい。
 そういうことを、色々話をしていたということです。だからこの後どうするのかということですが、今朝も堺屋長官と立ち話で話をしまして、事務当局の間では色々と意見交換をして、一応ペーパーも出来ていますが、もう少しピリッとわさびの効いたような形にどうしてもならない。何かもう少し効果のある手段が考えられないか。なかなか難しい問題だと思いますが、少なくとも私共が株価に対して、非常に株価水準について関心を持っていることを、何らか株価の回復についての努力をしたいと思っていることについて、認識をしてもらいたいと思っております。

 

 問:朝銀ですが、13信組の検査については金融庁の方が、「もう都道府県がやっているからやらない」ということは大蔵委員会で明言したのですが、金融整理管財人を送ることについては明確な答弁はなかったかと思うのですが、それについてはどうされるのでしょうか。11月1日の衆議院大蔵委員会で、小池さん、上田さんの質問に対してです。相沢委員長、森事務局長のお二方が答えておられますが。
 

員長:あれは13信用組合ですかね。朝銀の13に対して検査をしたその後のことですけれど、「もう一度検査をしろ」という話があるのですが、そういう質問もありました。ご承知のように、受け皿としては5つ既に体制は出来ているわけです。既に朝銀近畿は出来ているわけですが、その他13の朝銀が4行に集約されるということで、受け皿についての検査というものもやっておるわけなのです。何故、13については検査をしないかというと…。

 

 問:検査のことは金融庁がやらないという答弁をしていたので分かるのですが、金融整理管財人の方は如何でしょうか。
 

員長:それは、要するに受け皿機関との関係でして、13行が4つの受け皿機関で受け取られる形になれば、その段階で考えれば良いのではないかという意見もあります。今、この段階で一つ一つについて、金融整理管財人を置くことが必要かどうかについては検討をしている段階です。

  

 問:金融再生法8条では、「受け皿がない場合」と「業務と運営が著しく不適切である場合」が書いてありまして、国会では与野党限らず、その業務が不適切でないかという指摘がある。或いは、報道でもある。或いは、名古高等裁判所では、外国へ送金しているというメモが認定されたりしている。そういう公の場で色々不適切なことを指摘されているわけですが、受け皿側があるから、金融整理管財人を送らないというのは、二つあるうちの一つであって、業務の運営が著しく不適切な場合は送ることが出来るというのが8条に書いてあるわけです。これは金融再生委員会の判断がそこには入る余地があると思うのですが、残り1カ月しかないわけですし、その辺は再生委員会があるうちに、例えば預金保険機構に対して金融整理管財人を送るように、言うのか言わないのか、或いはもう言ったのか、言って断わられたのか、この辺は如何でしょうか。
 

員長:金融整理管財人を置くということについては、私は事務方から、「そのことについての検討をしている」ということは聞いております。

  

 問:検討をしている主体は、預金保険機構ではないのでしょうか。
 

員長:金融整理管財人は、ご承知のように、金融に詳しい人とか、弁護士とか、或いはそれがない場合には、預金保険機構自体が金融整理管財人になることもあり得ます。そのいずれかの方法でしょうが、検討をしているという段階です。

(以上)


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