柳澤委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年12月8日(金)於:金融再生委員会 会見室】
  

【閣議案件等

 本日の閣議には当委員会に直接関係のある案件はありませんでした。所謂ルーティンワークとしての閣議という意味で、実質的に最初の閣議のような感じでございました。

 閣僚懇におきまして、行革絡みの発言が関係大臣からありまして、特に内閣府に置かれる経済財政、科学技術の会議の運営は、当初の構想の精神を崩すことなく実現すべきだという趣旨の発言がありました。

  

質疑応答】

 問:昨日の金融審議会で、異業種参入に関係する銀行業法の改正で、草案が出まして、21日に最終答申がなされるとのことですが、昨日の原案でかなり異業種参入の指針のようなものが出てきて、異業種参入の環境作りは整ってきたと思いますが、最初に異業種参入に対して、大臣はどのような基本姿勢で臨まれるのか、既に予備申請が一つ出ておりますけれども、これから幾つか申請が出てくると思いますが、金融業界に与える影響も含めて、異業種参入の申請があった場合に、どのような姿勢で対応されるかをお聞かせ頂けますか。
 

員長:就任の際の色々なインタビューでも尋ねられました。その際にも申し上げたと思いますが、基本的に消費者と言うか、利用者の方々の利便が増すということ。それから特別の色々な工夫された、或いは現に関係者が持っているシステムを活用してバンキング業務をやるということですので、既存の銀行業、金融機関にも良い刺激になることが期待されると思います。こうした2点から言って、私は全体として積極的な気持ちを持っております。
 しかし、この前も言ったことですが、既存の金融業界はこれから色々工夫を凝らして選択と集中で必要なところにはしっかりした投資を行って、顧客に充実したサービスを提供していく姿勢で臨むことを期待したいと思っております。異業種から特別なシステムを使って参入してくる人に、既存の金融業界が席巻されてしまう事はあり得ないし、そんなことでは既存の業界の皆さんは駄目だと思います。従って、刺激を受けながら既存の業界は頑張らなければならないと先般申したわけです。
 加えて、金融審議会の動きに関して、当然のところが議論されていると思います。今、ワーキングチームから、この問題を専門に扱う第一部会に対してリポートが上がったということで、第一部会でまた良く練って、総会で決定の運びとなるのでしょう。今、審議のプロセスの中にあるので、この点について私が色々コメントをすることは差し控えたいと思います。しかし、関心のありかは、出資者等が金融機関の健全性の為に、関心を持たざるを得ない局面があって、そのルールをどうしておくかということは、誠に当然のことだと思っております。それらについて、我々にきちっとしたルール作りについてのアイディアを頂くことは、非常に結構だと思っております。

 

 問:異業種参入の第一号がいつ出てくるか、かなり国民的な関心もあるわけですが、今、イトーヨーカ堂グループが、予備申請の第一号ということで審査されている段階かと思いますが、その点に関して金融庁の日野長官が、先日の会見で「再生委員会のあるうちに予備認可を」という期待を表現されていましたが、予備認可の目途について、長官の期待に応えられるかどうかも含めてお聞きしたいのですが。
 

員長:長官がどういうご趣旨でそういう発言をされたかちょっと分からないなと思いながらお聞きしました。再生委員会はご案内のように、設立認可等についてもこれまで所掌ということでありました。一般論ですが、再生委員会は非常に上手く機能してきたので、言わば権威のあるところと言うか、評判の良かったところと言うか、そういうところで第一号が出ることが望ましいという趣旨かなと思ったりします。そこのところをあまり重要に考えてしまうと、「何故三条委員会で存置しておかないか」という話にもなりかねないので、そこのところはもう少し柔軟に考えたら良いのではないかと思います。ただ、一般的に言えば、こういうことは一般の行政処分と同じように早くやった方が良いとは言えようかと思いますが、時期はここで申し上げる準備がありません。

  

 問:先日の報道各社とのインタビューで、預金保険機構がそごうのケースで債権放棄することについて、「そういったケースもあり得る」というご発言をされていましたが、このご発言は、これまでの再生委員会のスタンスである「慎重の上にも慎重に対応していく」と違うのかどうかをお聞きしたいのですが。
 

員長:債権放棄については、「慎重の上にも慎重…」という表現だったかはともかく、私が委員長であったときにも、その点について何らかのルールを作った記憶がございます。そういうルールに従って粛々として考えるのがまず基本でありますが、私が申したのは、「債権放棄はどんな場合にもないのだ」という固定的な考え方は取らないということを申したわけです。「法的処理が、私的処理よりも常に良いのだ」と考えるよりも、要は再建計画が本当に信頼をおけるものかどうかということだと思うのです。寧ろそういう思いを申したわけで、その再建計画の確度を上げる努力は、全く司法に丸投げしてしまうということで行政機関としての使命が果たされているのだろうかと、ちょっと考えるところがありました。例えば、ある特定の会社が破綻をしたという時に、マーケットその他を見て、他の会社と何か提携をしたりして再建計画が出来るといったような方が、再建計画の確度が上がるということがあり得るかもしれない。そういうことは司法では出来ないのです。司法では俎上に乗ったことだけについてどうするかという問題になるわけです。行政の場合は、もう少し視野を広げて色々と考えることが出来るというメリットもあるので、そういったことも頭から排除するということは適切でないのではないかという私の思いを申し上げたのです。

 

 問:インタビューの中で、「他省庁とも連携して産業再生に向けて政府として何かしていけないか」というご発言もございましたが、そういう大企業の再建計画が出てきて、国による債権放棄を求めなくてはいけないような状況が出てきて、そういう場合に単に放棄するかどうかだけの判断ではなく、計画そのものが妥当かどうかとか、提携などで打開策はないかとかそういった事を、他省庁と連携して国としてコミットしていくというお考えがあるということでしょうか。
 

員長:非常に不用意を承知で言えば、そういう考え方が私の中にはあります。ただ、それを今枠組みとしてそういうことを発言して、予め他省庁の皆さんに準備をしてくれという考え方ではないです。そこは、行政の個別判断の問題として全くケース毎に、或いはそういう努力があった方が良いかもしれない。その場合には、私は国務大臣としてそういうこともやるべきではないかということを申したということに尽きます。

  

 問:在日韓国人系信用組合の件で、韓国政府が受け皿銀行の構想と言いますか、400億預金している分を出資に振替えてもいいということまで考えているようですが、この点については日本の金融当局はどの程度承知されているのか、或いはどう受け取られているのか教えて頂けますでしょうか。
 

員長:現段階では、この点は全く承知致していないというのが現状です。事柄として2面あるかと思うのです。形の上では、我々は、あくまで顧客、或いは組合の出資分を持っている人達が韓国の籍を持つ人達であるということはあるにせよ、日本の法律に基づいて成立され、日本の色々な法令のルールに従って今日まで運営をされてきた金融機関であるわけです。その意味では、あくまでも日本国内の金融機関ということで、全く他のものと変わりはないということであります。我々としては今まで同様に日本の法令を粛々と適用していくことが基本だということが一つあります。
 もう一つは、現実に今申し上げたように組合の出資分を持っている人とか、或いはお客さんとかという人達がそういう在日韓国人の方々であるということから、仮に韓国の政府の方々や、当局の方々が、色々な意味での心配をされる。例えば、在日韓国人の人達の経済事情がどうなるだろうか等、心配をされることがあるとしても、それはそれで理解できます。そういう実態という面もあると捉えております。
 今のは全くの一般論で、私も全く情報を受けておりません。一部報道があったような事実を全く承知しておりませんが、一般論として申し上げれば、今申したような受け止め方と言えようかと思います。

 

 問:金融庁が、規制緩和の関係で色々検討しているわけですが、例えば昨日も金融審議会のブリーフィングで、金融庁の方から説明があったのですが、来年4月に保険の銀行での窓販が一部解禁をされるということで、解禁範囲を巡って色々と業界調整をされているようですが、金融庁はどちらかというと少し広めにしようということを検討しているようですが、当然の如く業界から反対があるということで、どうなるか見通しが立たないわけです。一方で、今日の新聞等一部で報道されていましたが、東京三菱と明治生命と東京海上が保険代理店を共同で作るというように、民間の方がどんどん進んでいる時代に、何となく行政の動きが鈍い感じがするのですが、具体的に保険の窓販も含めて規制緩和について、大臣はどうお考えかをお聞かせ願います。
 

員長:原則論としては、規制緩和については私は党において行政改革を進めてきた経験もあり、やはり積極的であります。率直に言って、これからの日本経済の推進力は、市場における競争にあると考えていまして、その面では全ての分野についての規制緩和について積極的な考え方を持っていることは否定しません。
 但し、具体の保険業の問題について、2年程前になりますか、アメリカで金融機関のそうした動きについての話を聞いたことがあるのですが、そのときの記憶がちょっと頭に残っております。その後どうなっているかについての詳細を正確に情報を質したわけではないのですが、アメリカにおいても、「生保については他の銀行、証券と一緒にしていません。そこまで行っていません。」という話も聞いた記憶が残っていて、これはどういう理由かと思って考えたこともあります。何か保険についてはアメリカのようなディレギュレーションの先進国においても、少し他の問題と違う取り扱いになっていたという記憶があって、この問題を具体的な問題として答えるだけ、事務当局の話も聞いていませんので、ここは自分自身の意見を言うには情報不足です。
 しかし、一般論として言うと、そういう規制緩和には前向きに考えている。生命保険では、アメリカでもそういうことを聞いたことがあるものですから、何かあるのかもう1回聞いてみようという気持ちを、今ご質問を受けて持ちました。

 

 問:答えを急くようですが、予定利率についてはその後何か気持ちが固まったようなところはありませんでしょうか。実際どのスピードで出てくるか分かりませんが、一応相沢委員長時代に投げた弾を、自民党の金問調は勉強会を作ると言って、年内に結論を出すと言っているのです。次期通常国会も睨んでいるという中ではそんなに時間はないと思うのですが。
 

員長:それは良く承知しております。ただ、党がそういう姿勢にありますから、我が方で何か党の審議に先立って、何か具体的な方針を決めて党を引っ張っていくことにはならないのではないかと思います。党と一緒に、歩みを平行的にやって、良い結論になるように我が方の考え方も固めていければ良いと思っております。

  

(以上)


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