柳澤委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年12月22日(金)於:金融再生委員会 会見室】
  

【閣議案件等

 本日の閣議ですが、環境基本計画、それから国政調査の確報的なものでしょうか、人口は1億2千692万人。世帯数は4千703万世帯というようなことを内容とする報告がありました。もう一つは、同じ環境関連ですが、平成11年度の水質測定の結果が出たというお話でした。

 閣僚懇にいきまして、官房長官のイニシアチブにより、総理、外務大臣も了解の下で、閣僚による戦略的な外国出張を年明けに積極的にやりたいので、閣僚の協力を求めるという趣旨の発言がありました。趣旨は戦略的と言ってますが、各地域の駐在の大使会議等で、かつては閣僚の出張の多かったところでも、最近そういうものが非常に希薄になっている地域があるようで現地の大使から問題提起があったこともこれあり、日本のプレゼンスというものをやはり引き続いて各地域に示していくことが大事だという観点からのようであります。それから、中央省庁の再編のスタートが1月6日に切られるわけですが、スタッフであるとか、審議会であるとかというものをそこまで、審議会は特にどうやってつないでいくのだと、従来の審議会と新審議会をどうやってつないでいくかというようなこと。それからスタッフ、特に大臣の秘書官等が特命大臣の場合どのように任命されるのか、と言ったようなことについて至急調整を必要とするのではないか等々の発言がありました。

  

質疑応答】

 問:平均株価が低迷していることからなのですが、バブル崩壊後、最安値にかなり迫る水準まで下落しておりまして、今日は横バイのようですが、低迷状況には変わりはないということで、この原因としては色々なことが言われているのですが、海外だけでなく、国内の目も日本経済もしっかり立ち直ってない、日本経済の信認が得られていないというのが一つの原因ではないかと言われているのですが、大臣が今、これだけ株価が低迷している現状をどのように見ていらっしゃますでしょうか。
 

員長:今、申したような面が否めない、そういう心配がマーケットにあるということも一因かと思うのです。私はそれに対しては、もっと日本の経済運営というものが、つい先般閣議で決まって、1.7%成長を狙っていくのだ。名目は1.0%ですが、少なくともそのような前年よりも、つまり今年よりも高いレベルの成長を目指していくのだということを閣議で決定しているわけでありますから、そのことをもっと市場関係者がしっかり受け止めるということが大事だと思います。それにはもう少し、私を含めて閣僚がその姿勢、そういうものを何としても実現するんだという姿勢をあらゆる機会にアピールしていくということが必要だと考えております。
 もう一つは、需給関係というものがあるのではないかというふうに私は思っております。いつでも12月というのは色々な、例えばファンドというようなものも、一つの締めくくりというような時期でございますので、従ってそういう時期に、益なり損なりを確定するというようなことで、需給関係から言うと、やや緩みがちだというようなことも背景にあるのだろうというように見ておりますが、いずれにしても、現在の株価の水準は全く望ましいものではないと思っておりまして、私としても強い関心を持っております。

 

 問:全く望ましいものではないということは、日本経済の現状を反映しているとは言い難いという解釈でしょうか。
 

員長:レベルそのものが望ましくないと思っているわけです。勿論今、申したファンダメンタルス、或いは我々の来年度における経済運営とはおよそちぐはぐで、決して私共が考えている経済の見通しとは相反するような動きで、その意味で「望ましくない」と申しているわけです。
 もう一つ私のところの所管のことで敢えて言うと、率直に言ってリストラによって体質を強くする、もっと収益力の高い、損益分岐点の低い金融機関というものを目指すということを我々は共通の理解として持っていたはずなのですが、どうも大手銀行については枠組みが出来たと思うのですが、その成果を現実のものとするということについての実態的、内容的な改革のテンポがどうも遅いのではないかというように思います。そうした収益力がないのではないか、弱いのではないかというようなことが個々の企業についてのそういうようなことも、もし今回の株価、株式市場での株価の下落というものにあるとするなら、もっと私の所管の金融機関も、その辺り、眦を決した取り組みが強く求められているんだということを申し上げたいと思います。

  

 問:各閣僚の経済回復に取り組む姿勢を更にアピールすることが必要ということですが、これまで株式市場に対しても、色々な対策を取られてきて、源泉分離の存続ですとか、持ち合い株解消については意見、配慮を求められ、こういったものは実際的な効果よりも心理的な効果も狙われた部分もあるかと思いますが、現実として株価は下落していて、今のところは効果が見えていないということですが、今後、更に政府として何か具体的な対策をとるべきなのか、それとも市場のことは市場に任せるような本来の態度に戻るべきなのか、その辺りはどのようにお考えでしょうか。
 

員長:ここで、私の発言が市場にある種の影響を与えることは好みません。好みませんので、その問題については、何と言うか、頭の中に全てあるということです。もう少しこの問題をきちっと捉えて、私としては基本的に市場原理というものを尊重していきたいというふうにその基本は変えませんが、ありとあらゆることを考えていかなければならない。証券を含めて、我々金融危機対応の色々な措置をとっている体験からも、必要なことをやらなければならないということで、株式市場というもっとマーケット的なところでどう考えるべきか、今、この段階で申し上げられることは率直に言ってありませんが、ただ、この私の発言が、市場への影響を与えることは全く好みません。
 もう一つは、先般の税制改正についても、もっと良く皆さんに読んでもらいたいと思うのです。私が就任しまして、率直に言って、もっと日本の個人株主の人達も、株式市場というものにしっかり目を向けてもらいたい、厚みのある資本市場を作りたいということで、とにかく永続性のある、或いはここ10年ぐらい、言わば、資本市場へ個人の貯蓄を差し向けるためのかなり永続的な税制確立を図りたいということを、着任後すぐに言ったわけです。そうして、そういうやや永続的な資本市場に個人株主を誘うようなものをはっきりつくって、それを市場の経済動向から言って今すぐやって良いのか、いや、それに対しては移行期というか、それへの移行期というものが必要なのではないか、そういう仕組みの税制にすべきだということを強く主張していたわけです。ところがとても時間的に間に合わないということで、私は今回の自民党税調の大綱、或いは3党税調の大綱の末尾に検討事項としてうたわれていると思うのですが、あそこにはかなりのことを書いているわけです。「個人の貯蓄を資本市場に向けさせるためには、どういうことが必要なのか」。一番求められているのが損失の将来年度への繰り越しというようなことが必要なのですが、そういうことがきちっとうたわれているわけです。あのようなところにもうちょっと着目して頂くと、いずれそういう税制が出来あがるということでありまして、そういうところを一つ良くご覧頂いて、もっとこのマーケットにそういう資金が流れてくるようなことを政府としても考えているのだということについて理解を頂きたいなあと思っております。

 

 問:2点目ですが金融審議会が昨日最終答申を出しまして、異業種参入のルールについていろんな論点からご意見が最終的に発表されたわけですけれども、細かい部分で抽象的な表現が残っておりまして、銀行業の緩和、業務範囲の緩和についてもこれから不断の見なおしを行なっていきますということで、あいまいなまま残った部分がいくつか見られるんですけれども、そういった点について銀行業界からももう少しはっきりさせてほしいというような声も聞かれるんですが、今後そういう抽象的にとどまった部分というのは、具体化されていくのでしょうか。
 

員長:そうですね。これは現在段階は審議会の答申という段階ですから、これはこれで文字通り読んでいただくほかないと思います。しかしながら、これを法律化していく、あるいはもうちょっと具体的な問題については、政令その他に下していくという場合には、これはルールに基づく行政という趣旨から言って、できるだけ詳細かつ明確にこれを規定するということが、もう単にこの問題だけではなくてすべてに求められているというのが行政改革の下での行政のあり方、あるいはビックバンのルールに基づく行政という建て前の下でのあり方ということですから、今おっしゃったあるいは私が言ったこと、そういう方向ではっきりさせていくということでございます。
 委員会の方針としては、それを受けとめて我々はそれを参考にしながら、尊重しながらこれをブレイクダウンしていく時に、あるいは法制化していく時に明確にやる、こういうことだと思います。

  

 問:株価なんですけれども、いまの低い株価が金融機関の経営に与える影響、特に不良債権の処理のペースについて、かねがね気にされているかと思うんですが、それについてはどうお考えでしょうか。
 

員長:これはどう考えるかということで、考えるまでもなく、相当のものを金融機関が抱えているわけですから、これの資産価値が減少するということは決してプラスの影響をもたらすというようなことはなくて、マイナスの影響をもたらすということにならざるを得ません。だからということでは別にないんですけれども、先程冒頭のご質問に答えたように、私としてはそれぞれの、基本はやはりもっと金融機関がリストラをやって、そういう色々な外的な、客観的な衝撃というようなものに耐えられるような体質を早く構築することが大事だと、そういうふうに思っております。

 

 問:今おしゃった金融機関のリストラという中で、当然人とかの面であるんですけれども、資産の方も水ぶくれしている部分というのは非常にあると思うんですけれども、それを圧縮していく中で事業会社に対する影響というのは出てくると思うんですけれども、金融機関がリストラを進めることによってさらに悪影響が及ぶという場合もありうるかと思うんですけれども、その辺についてどうお考えでしょうか。
 

員長:それは悪影響と考えるかどうかだと思うんですね。つまり不良資産とか、あるいは今のお言葉で言えば水ぶくれした貸出金債権というようなものは、あってはならないわけですよね。そうすると当然貸出先の事業会社の方に影響がでるということでございますので、結局金融機関の再生というものは事業会社というか、貸出先の企業の再生というものと両輪ですね、平行して行なわれざるを得ないんですよね。これは片一方だけ行なうと言うようなことは考えられないわけでありまして、そういう意味でそのことは当然だというふうに思うんですね。その時に一体金融機関の側も再生の為にそういうことをやっていくという時に事業会社の側に金融機関とは違った色んな姿勢というか思いというものがあったんではこれはうまくいかないわけで、お互いここは日本経済全体の立て直しの為に、互いにリストラしていくんだと、こういう共通の理解というような、そういうものが私は必要だというように、その認識が必要だというように思っています。

  

 問:リストラという言葉ですが、テンポとか人はさておき、大臣が仰るように改革のスピードが鈍っているのではないかと仰っているように理解してよろしいのでしょうか。
 

員長:例えば合併する、或いは持ち株会社の下で統合するという場合にも、このぐらいのテンポでリストラしてますよ、ということで、まずまず世の中で「おう、そうか、それなりに減っているね」というような言わば外観、そういうようなことであるとか、本当に企業経営者には大変恐縮な物言いかもしれませんが、例えば、この人ここまできたのをとにかく処遇をしてやらないと気の毒ではないかというようなことで色々な形でそれを継続するような、そういうことではなくて、私が言うのは、合併・統合して、どういう機能を新しく打ち出していくのか、その為の人材配置はどういうようなものなのかというようなことです。ですから、少し減っているように見えればそれで良いではないかとか、処遇を中心に考えればこの程度にならざるを得ないではないかとか、そういうような考え方、つまりどっちかというと今日の金融危機以前の合併とか統合というようなものの場合ではそういうことがあり得たと思うのですが、今度の金融危機の下で金融二法が施行されて、それで公的資金の注入をさせて頂いた。そういうものの中で行われる合併だとか統合というような場合にはそういう外見がどうだとか、処遇がどうなんだという観点はとても容認できないということです。もっと機能本位、その金融機関なら金融機関が今後どういう戦略をとっていくか、というような業務本位の人的配置、或いは報酬のあり方、こういうようなもので、改革を貫徹してもらいたいということを申し上げたいと思う次第です。

 

 問:金融再生委員会は経営健全化計画をフォローアップしているわけですから、それをその場でやってこれたのですよね。それが足りなかったということでしょうか。
 

員長:これまではこれまででやってこられたと思いますが、私が就任後は、就任後で私の考え方、私が今言ったようなことでやらせてもらいたいということを申し上げるにつきます。

 

 問:今後のフォローアップでは、単に人数が減って、報酬が減っているだけではなく、機能本位、業務本位でのチェックというものを重視していくということでしょうか。
 

員長:当然です。

 

(以上)


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