破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告

平成11年6月

 

 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第5条の規定に基づき、この報告を国会に提出する。
 


目  次
 

I  はじめに

 

II  金融再生法に基づく関係規則等の整備及び「金融再生委員会の運営の基本方針」の策定
 
.金融再生法に基づく関係規則等の整備
 
.金融再生委員会の運営の基本方針

 

III  日本長期信用銀行の破綻処理について
 
.日本長期信用銀行に係る特別公的管理開始決定
 
.長銀の特別公的管理開始決定以降の諸措置
 
.長銀の特別公的管理終了に向けての現状

 

IV  日本債券信用銀行の破綻処理について
 
.日本債券信用銀行に係る特別公的管理開始決定
 
.日債銀の特別公的管理開始決定以降の諸措置
 
.日債銀の特別公的管理終了に向けての現状

 

V  国民銀行の破綻処理について
 
 国民銀行に対する金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分

 

VI  幸福銀行の破綻処理について
 
 幸福銀行に対する金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分

 

VII  その他金融再生法を適用した金融機関の破綻処理について

 

VIII  預金保険法に基づく破綻金融機関の処理について
 
.預金保険制度を活用した処理案件
 
.今後の処理予定案件

 

IX  預金保険機構の各勘定の使用状況について
 
.金融再生勘定
 
.一般勘定
 
.特例業務勘定
 

参考

 公的資本増強に係る取組について
 
.資本増強の方針、基準等の策定等
 
.予備審査等
 
.正式申請・承認
 
.資本増強の原資等
 

破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告
 

平成11年6月
 

I  はじめに

 昨年夏の第143回臨時国会を取り巻く状況は、金融機関の破綻が相次いで発生し、我が国の金融の機能が大きく低下するとともに、我が国の金融システムに対する内外の信頼が失われつつあるものとなっており、金融システムの安定及びその再生は我が国の喫緊の課題であった。そのような状況の中で、国会における昼夜を徹した真剣な討議の結果、いわゆる金融再生関連法として、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(以下「金融再生法」という。)、預金保険法の一部を改正する法律、金融再生委員会設置法等が平成10年10月12日に成立し、10月23日に施行され、金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律(以下「早期健全化法」という。)が10月16日に成立し、10月23日に施行された。

 金融再生法においては、金融整理管財人制度、ブリッジバンク制度、特別公的管理制度及び金融機関の資産買取制度の創設等により、金融機関の破綻処理制度が整備されたが、他方、12月15日には金融再生委員会が発足し、これらの制度・体制の下で金融機関の破綻処理に係る対応が図られてきたところである。また、同日、株価算定委員会が発足し、特別公的管理銀行に係る取得株式の対価の決定のための体制が整備されたところである。

(注 )平成10年2月に施行されたいわゆる金融安定化2法により、破綻金融機関の処理のための資金として預金保険機構に対する7兆円の国債交付及び預金保険機構が行う借入れに対する10兆円の政府保証の付与が措置されていたところであるが、金融再生法により、ブリッジバンクの設立、特別公的管理、金融機関の資産買取り等の金融再生業務を行う金融再生勘定の資金の借入れ等について政府保証を付することができることとされ、平成10年度第2次補正予算により18兆円の保証枠が設定された。

 本報告は、金融再生法等が施行されて以降平成11年5月31日までの間に政府が破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容その他金融機関の破綻の処理の状況に関して取りまとめたものであり、金融再生法第5条の規定に基づき、国会に提出するものである。

 金融機関の破綻処理に関しては、これまでも適時・適切に所要の措置を講じることに努めてきたところであるが、今後とも、我が国の金融システムの一層の安定化に向けて万全を期してまいる所存である。

(注1 )金融再生法等においては、これらの法律が施行されてから金融再生委員会が設置されるまでの間、内閣総理大臣が同委員会の権限を代行することとされていたが、この間の事務処理体制としては、平成10年10月23日に、金融機能の再生及び早期健全化のための施策等を円滑に推進し、金融再生委員会の設立準備に資するため、行政各部の所管する事務の調整を担当する国務大臣として柳沢伯夫国土庁長官(当時)が指名されるとともに、内閣総理大臣が代行する事務の処理を行うため総理府に臨時金融再生等担当室(室長は内政審議室長)が設けられ、金融監督庁の協力を得てその事務を処理することとなった。また、金融再生委員会の設立の準備及び代行期間中の総理府令の作成等に係る事務を執り行うため金融再生委員会設立準備室が設けられ、柳沢担当大臣及び臨時金融再生等担当室が行う事務を補佐することとなった。
 
(注2 )金融再生委員会及び株価算定委員会の委員の構成については〔参考 I −1〕参照。

 

II  金融再生法に基づく関係規則等の整備及び「金融再生委員会の運営の基本方針」の策定
 
.金融再生法に基づく関係規則等の整備
 
 金融再生委員会においては、金融再生法の円滑な運用を図るため、平成10年12月15日の委員会発足以降、順次関係規則等の整備が図られ、その都度公表が行われている。
 
(1)  平成10年12月15日、内閣総理大臣による代行期間中に策定、公表されていた次の規則及び告示について追認の議決が行われ、公表された。
 
 「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律施行規則」
 
 金融再生法第28条第3項に基づく「被管理金融機関の貸出債権その他の資産の内容を審査し、承継銀行が保有する資産として適当であるか否かの判定を行うための基準」
 
(2)  平成11年2月25日には、金融再生法第56条第2項に基づく「資産を買い取る場合の価格を定めるための基準及び資産の買取りの決定に係る承認を行うための基準」の議決が行われ、3月4日、告示された。
 
(3)  同年3月31日には、金融再生法第29条第3項に基づく「金融再生委員会が承継銀行に対する預金保険機構の出資の承認を行うための基準」の議決が行われ、4月5日、告示された。
 
(注 )上記諸基準については〔参考 II −1〕参照。

 

.金融再生委員会の運営の基本方針
 
 金融再生委員会においては、平成11年1月7日以降金融再生委員会の活動方針の基本問題について検討が行われ、1月20日には、金融再生法や早期健全化法の今後の運用の方針等をできるだけ分かりやすく説明するものとして「金融再生委員会の運営の基本方針」が取りまとめられ、公表された。同方針の中では、金融機関の破綻処理について、経営の健全性の確保が困難な金融機関は存続させない旨及び透明性の高い処理を行う旨が述べられているところである。
 
(注 )上記「金融再生委員会の運営の基本方針」については〔参考 II −2〕参照。

 

III  日本長期信用銀行の破綻処理について
 
.日本長期信用銀行に係る特別公的管理開始決定
 
(1)  平成10年7月13日に金融監督庁により主要19行に対する検査の一環として日本長期信用銀行(以下「長銀」という。)に対する立入検査が開始され、同年3月期の自己査定結果に基づき、その資産内容等について実態把握が行われ、同年10月19日に長銀に対し検査結果が通知された。
 
 同検査結果においては、同年3月末の資産査定結果として I 分類が21兆8,926億円、 II 分類が3兆347億円、 III 分類が1兆1,254億円、 IV 分類が1,373億円となることが示されている。
 
 また、同検査結果においては、同年6月末の資産査定を基準として、同年9月末までに生じた後発事象を加味した同年9月末見込みの資産査定結果の概要として、 I 分類は19兆5,200億円、 II 分類は3兆3,000億円、 III 分類は8,000億円、 IV 分類は5,200億円となることが示されるとともに、検査結果を踏まえた平成10年9月期の長銀の自己資本額は1,600億円であり、また、マイナス5,000億円の有価証券等の含み損益を有していたことが示されたところである。
(注 )金融監督庁の長銀に係る検査結果については〔参考 III −1〕参照。
 
(2)  平成10年10月23日に金融再生法が施行されたが、同日、長銀より同法第68条第2項に基づき、内閣総理大臣に対して、「その業務及び財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれが生ずると認められる」旨の申出がなされた。
 
 当該申出及び長銀の財務状況を踏まえ、同日、内閣総理大臣により、同法第36条第1項に基づき、特別公的管理の開始の決定が行われ、同時に、同法第38条第1項に基づき、預金保険機構が長銀の株式を取得する決定が行われた。
 
 また、併せて、資産劣化防止の観点から、同日、金融監督庁より長銀に対し業務改善命令が出された。
 
(注1 )長銀に係る特別公的管理開始決定に際し、同日、長銀に対し弁明の機会が付与されている。
 
(注2 )長銀に係る特別公的管理開始決定の際の内閣総理大臣等の談話については〔参考 III −2〕参照。
 
(3)  当該特別公的管理の開始決定に伴う手続として、内閣総理大臣により、平成10年10月23日、金融再生法第69条に基づき、長銀について特別公的管理開始決定をした旨が東京地方裁判所に通知されるとともに、東京法務局等にその登記が嘱託された。
 
 また、10月28日には、金融再生法第36条第2項に基づき、内閣総理大臣により、長銀について特別公的管理開始決定をした旨が官報により公告されるとともに、同法第38条第2項に基づき、預金保険機構が特別公的管理銀行である長銀の株式を取得することを決定した旨が官報により公告された。また、10月29日には、同法第44条の規定に基づき、預金保険機構により日刊紙による旧株主等への周知措置が講じられた。
 
 金融再生法第39条の規定により、同法第38条第2項に係る当該公告時において長銀の株式は預金保険機構により取得され、当該株式に係る株券は当該公告時において無効とされた。

 

.長銀の特別公的管理開始決定以降の諸措置
 
(1)  新経営陣の指名及び選任
 
 平成10年11月4日、金融再生法第45条に基づき、内閣総理大臣により長銀の取締役及び監査役の指名が行われ、同日、預金保険機構により同指名に基づき選任が行われ、同行の新経営陣は以下のとおりとなった。

〔長銀の新経営陣〕

・頭取  安斎 隆 (日本銀行理事)
 
・副頭取  森 秀文 (長銀総合企画部長)
 
・ 〃  吉川 實 (日本興業銀行取締役管理部長)
 
・専務  小幡 文雄 (東京三菱銀行理事商品開発部長)
 
・取締役  中川 隆 (長銀法人業務部長)
 
・ 〃  西田 俊二 (長銀金融開発部長)
 
・ 〃  溝田 泰夫 (日本銀行考査役)
 
・監査役  大坪 啓 (長銀外国営業部長)
 
・ 〃  小川 信明 (弁護士)
 
・ 〃  須藤 章 (公認会計士)

(注)カッコ内は前職。
 

(2)  経営合理化計画等の承認等
 
 平成10年11月30日、金融再生法第47条及び第48条に基づき、長銀より内閣総理大臣に対し経営合理化計画及び業務運営基準が提出され、12月11日、承認された。
 
 また、12月15日には、金融再生法第46条に基づき、長銀より金融再生委員会に対し特別公的管理開始決定が行われる状況に至った経緯及び特別公的管理銀行の業務及び財産の状況についての調査報告が行われた。
 
(注 )長銀の経営合理化計画については〔参考 III −3〕、長銀が特別公的管理開始決定が行われる状況に至った経緯等については〔参考 III −4〕参照。
 
(3)  長銀に対する預金保険機構からの資金の貸付け等
 
 平成10年10月23日、預金保険機構は、金融再生法第65条第1項の規定に基づき、内閣総理大臣により、特別公的管理銀行に対しその業務に必要な資金を貸し付けるための資金として平成11年3月31日までの間に係る上限6兆円の借入れの認可を受けた。これにより預金保険機構は順次資金を調達し、金融再生法第61条に基づき、内閣総理大臣の承認の下で、長銀に対しその業務に必要な資金として10月23日に3兆円、11月4日に4,000億円、11月30日に3,000億円の貸付けを行った。
 
 平成11年に入り長銀の資金繰り状況が安定してきたことを踏まえ、これらの貸付けについて長銀より預金保険機構に対し2月8日に2,000億円、3月15日に3,000億円、3月26日に5,000億円、4月23日に5,000億円の返済が行われ、5月31日現在で貸付残高は2兆2,000億円となっているところである。
 
(4)  旧経営陣等の責任追及
 
 旧経営陣等の責任追及に関しては、金融再生法第50条は特別公的管理銀行に対し旧経営陣に対する民事上の責任追及義務を課すとともに、特別公的管理銀行の取締役及び監査役に対し告発義務を課しているところである。
 
 長銀においては当該規定等を踏まえ、平成10年12月11日、旧経営陣等の職務上の義務違反等に基づく民事、刑事上の告訴、告発等の必要性や妥当性につき取締役会、監査役会に報告することを目的として、取締役会及び監査役会に直結した独立の組織として外部の弁護士から構成される「内部調査委員会」が設置された。現在、同委員会においては、極力早期に報告書を作成し、取締役会及び監査役会へ提出するべく、鋭意調査・検討が進められているところである。
 
(注 )長銀の内部調査委員会のメンバー構成については〔参考 III −5〕参照。
 
(5)  金融再生委員会による長銀の保有する資産として適当であるか否かの判定等
 
 平成10年11月18日、預金保険機構より内閣総理大臣に対して、金融再生法第72条第3項の規定に基づき、長銀の貸出債権その他の資産の内容を審査し、その保有する資産として適当であるか否かの判定(以下「資産判定」という。)を行うことが求められた。
 
 これを受けて、金融再生委員会においては、12月17日より資産判定に係る審議が開始され、計16回にわたる審議が行われ、平成11年2月19日にその結果が取りまとめられ、当該資産判定結果が預金保険機構に対して通知された。
 
 当該資産判定により、長銀の資産24兆6,026億円のうち総額19兆3,780億円の資産が長銀の保有する資産として適当であるとされた。
 
(注 )長銀に係る資産判定作業の結果(項目別)については〔参考 III −6〕参照。
 
(6)  長銀の取得株式の対価の決定
 
 金融再生法第40条第1項に基づき、預金保険機構が取得した長銀の株式の平成10年10月28日公告時における対価の額を算定するため、株価算定委員会において12月15日より検討が開始され、平成11年3月30日まで計13回にわたる審議が行われた。
 
 当該審議においては、金融再生法施行規則第17条第3項第1号に基づき、長銀を清算するものとして公告時のすべての資産及び負債の価額を評価するため、資産・負債の各項目に関して合理的と考えられる評価基準及びこれに基づく各項目の公告時における評価価額について検討が行われ、これに基づく純資産額が算出され、当該純資産より長銀の取得株式の対価の決定が行われた。
 
 当該決定においては、純資産の額に影響を与え得る事情はなお存するものの、公告時において長銀を清算するものとして評価した場合、公告時において長銀が有するすべての資産の評価額の合計は、20,309,873百万円であり、また、公告時において長銀が有するすべての負債の評価額の合計は、22,963,406百万円であるから、公告時において長銀が有する純資産額は、マイナス2,653,533百万円であるとされるとともに、上記のとおり純資産の額に影響を与え得る事情はなお存するものの、これらを考慮しても長銀が公告時に債務超過である事実には変わりがないことから、長銀に係る取得株式の対価について発行済普通株式及び発行済第二回優先株式の対価の額は0円であるとされた。
 
(注 )株価算定委員会による長銀に係る取得株式の対価についての検討結果「株式会社日本長期信用銀行に係る取得株式の対価について」については〔参考 III −7〕参照。
 
(7)  フィナンシャル・アドバイザーの活用
 
 金融再生委員会においては、金融再生法第3条に規定する費用最小化原則も十分踏まえ、長銀の資産劣化を防止し、国民負担を軽減する観点から、長銀を極力早期に処理することが重要であるとの認識の下、手続の透明性が高まること、グローバル・スタンダードにかなうこと等も勘案し、平成10年12月22日より長銀によるフィナンシャル・アドバイザーの活用につき長銀より報告を受けつつ計6回の審議が行われ、長銀によるフィナンシャル・アドバイザーの活用が了承された。
 
(注 )長銀のフィナンシャル・アドバイザー契約は、契約日が平成11年2月1日、サービス内容は、○長銀に対する第三者から見た公正な評価、○譲渡先の選定、○譲渡交渉、○譲渡スキーム・条件の検討、○譲渡契約書の作成に係わる、財務上の助言及び助力である。また、当該契約における報酬体系は、○月額の基本料、○基本合意契約が締結された場合の特別報酬(その金額は時期によって異なる)、○その他の実費からなる。

 

.長銀の特別公的管理終了に向けての現状
 
 長銀の特別公的管理の終了に係る受皿金融機関等の選定については、長銀及びフィナンシャル・アドバイザーの協力の下で、現在鋭意作業が進められており、長銀の営業譲渡等に関し、関心を示した複数の先と秘密保持契約を結んだ上で譲渡に関する説明等が行われているところである。

 

IV  日本債券信用銀行の破綻処理について
 
.日本債券信用銀行に係る特別公的管理開始決定
 
(1)  日本債券信用銀行(以下「日債銀」という。)については、金融監督庁により平成10年7月24日に立入検査が開始され、同年3月期の自己査定結果に基づき、その資産内容等について実態把握が行われ、11月16日に日債銀に対し検査結果が通知された。
 
 同検査結果においては、同年3月末の資産査定結果として I 分類が8兆9,125億円、 II 分類が2兆3,077億円、 III 分類が1兆3,110億円、 IV 分類が1,277億円となることが示されるとともに、同年3月末の自己資本額は4,671億円であり、同年3月末時点の検査結果を踏まえた追加償却・引当額を前提とすれば、貸借対照表の資産の部が負債の部を944億円下回る見込みであることが示されている。また、同年3月末時点でマイナス1,803億円の有価証券等の含み損益を有していたことが示されている。
 
(注 )金融監督庁の日債銀に係る検査結果については〔参考 IV −1〕参照。
 
(2)  このような状況の中で、金融監督庁から同行に対して、債務超過を解消するため採り得る資本充実策について逐次報告を求めたが、検査結果通知から1か月近くが経過しようとする中で、同行より実現性のある資本充実策が提示されなかった。
 
(3)  こうした状況を踏まえ、平成10年12月13日、内閣総理大臣により、同法第36条第1項に基づき、特別公的管理の開始の決定が行われ、同時に、同法第38条第1項に基づき、預金保険機構が日債銀の株式を取得する決定が行われた。
 
 また、併せて、資産劣化防止の観点から、同日、金融監督庁より日債銀に対し業務改善命令が出された。
 
(注1 )日債銀に係る特別公的管理開始決定に際し、12月12日に日債銀に対し弁明の機会が付与されている。
 
(注2 )日債銀に係る特別公的管理開始決定の際の内閣総理大臣等の談話については〔参考 IV −2〕参照。
 
(4)  当該特別公的管理の開始決定に伴う手続として、内閣総理大臣により、平成10年12月14日、金融再生法第69条に基づき、日債銀について特別公的管理開始決定をした旨が東京地方裁判所に通知されるとともに、東京法務局等にその登記が嘱託された。
 
 また、12月17日には、金融再生法第36条第2項に基づき、内閣総理大臣により、日債銀について特別公的管理開始決定をした旨が官報により公告されるとともに、同法第38条第2項に基づき、預金保険機構が特別公的管理銀行である日債銀の株式を取得することを決定した旨が官報により公告された。また、12月18日には、同法第44条の規定に基づき、預金保険機構により日刊紙による旧株主等への周知措置が講じられた。
 
 金融再生法第39条の規定により、同法第38条第2項に係る当該公告時において日債銀の株式は預金保険機構により取得され、当該株式に係る株券は当該公告時において無効とされた。

 

.日債銀の特別公的管理開始決定以降の諸措置
 
(1)  新経営陣の指名及び選任
 
 平成10年12月24日、金融再生法第45条の規定に基づき、金融再生委員会により日債銀の取締役及び監査役の指名が行われ、翌25日、預金保険機構により同指名に基づき選任が行われ、同行の新経営陣は以下のとおりとなった。

〔日債銀の新経営陣〕

・頭取  藤井 卓也 (日本銀行発券局長)
 
・副頭取  草野 元彦 (日債銀資金証券企画部長)
 
・ 〃  我妻 広繁 (日本興業銀行営業第三部長)
 
・専務  小寺 義信 (第一勧業銀行参与本店審議役)
 
・取締役  東海 直文 (日債銀金融法人第一部長)
 
・ 〃  稲垣 裕志 (日債銀執行役員国際営業企画部長)
 
・監査役  中西 良夫 (公認会計士)
 
・ 〃  濱田 邦夫 (弁護士)
 
・ 〃  鴫原 健 (日債銀総合システム部長)

(注)カッコ内は前職。
 

(2)  経営合理化計画等の承認等
 
 平成11年2月26日、金融再生法第46条、第47条及び第48条に基づき、日債銀より金融再生委員会に対し特別公的管理開始決定が行われる状況に至った経緯及び特別公的管理銀行の業務及び財産の状況についての調査報告、経営合理化計画並びに業務運営基準が提出され、3月1日、承認等が行われた。
 
(注 )日債銀の経営合理化計画については〔参考 IV −3〕、日債銀が特別公的管理開始決定が行われる状況に至った経緯等については〔参考 IV −4〕参照。
 
(3)  日債銀に対する預金保険機構からの資金の貸付け等
 
 金融再生法第61条に基づき、金融再生委員会の承認の下で、預金保険機構から日債銀に対しその業務に必要な資金として平成10年12月25日に2,000億円、12月29日に3,000億円の貸付けが行われた。
 
 平成11年に入り、日債銀の資金繰り状況が安定してきたことを踏まえ、これらの貸付けについて日債銀より預金保険機構に対し3月26日に2,000億円、4月23日に3,000億円の返済が行われ、日債銀の預金保険機構からの資金の借入れは全額返済された。
 
(4)  旧経営陣等の責任追及
 
 日債銀においては金融再生法第50条の規定等を踏まえ、平成11年1月27日、旧経営陣等の職務上の義務違反等に基づく民事、刑事上の告訴、告発等の必要性や妥当性につき取締役会、監査役会に報告することを目的として、取締役会及び監査役会に直結した独立の組織として外部の弁護士及び公認会計士から構成される「内部調査委員会」が設置された。現在、同委員会においては、極力早期に報告書を作成し、取締役会及び監査役会へ提出するべく、鋭意調査・検討が進められているところである。
 
(注 )日債銀の内部調査委員会のメンバー構成については〔参考 IV −5〕参照。
 
(5)  金融再生委員会による日債銀の保有する資産として適当であるか否かの判定等
 
 平成10年12月18日、預金保険機構より金融再生委員会に対し金融再生法第72条第3項の規定に基づき、日債銀の資産判定を行うことが求められた。
 
 これを受けて、金融再生委員会においては、平成11年3月5日より資産判定に係る審議が開始され、計18回にわたる審議が行われ、5月24日にその結果が取りまとめられ、当該資産判定結果が預金保険機構に対して通知された。
 
 当該資産判定により、日債銀の資産11兆4,166億円のうち総額6兆5,772億円の資産が日債銀の保有する資産として適当であるとされた。
 
(注 )日債銀に係る資産判定作業の結果(項目別)については〔参考 IV −6〕参照。
 
(6)  日債銀の取得株式の対価の決定
 
 金融再生法第40条第1項に基づき、預金保険機構が取得した日債銀の株式の平成10年12月17日公告時における対価の額を算定するため、株価算定委員会において平成11年5月21日より検討が開始され、5月25日まで計3回にわたる審議が行われている。
 
(7)  フィナンシャル・アドバイザーの活用
 
 日債銀に関しても、長銀の場合と同様の考え方に立ち、金融再生委員会において、金融再生法第3条に規定する費用最小化原則も十分踏まえながら、平成11年3月1日より、日債銀によるフィナンシャル・アドバイザーの活用につき日債銀より報告を受けつつ計3回の審議が行われているところである。

 

.日債銀の特別公的管理終了に向けての現状
 
 日債銀の特別公的管理の終了に係る受皿金融機関等の選定については、今後、日債銀及び今後選定されるフィナンシャル・アドバイザーの協力の下で、作業が進められることとなる。

 

V  国民銀行の破綻処理について
 
 国民銀行に対する金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分
 
(1)  平成11年4月11日、国民銀行より、一連の財務内容等に係る報道により資金繰りが悪化したとして、金融再生法第68条第1項に基づき、「その業務及び財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれがある」旨の申出がなされた。これを受けて、同日、金融再生委員会により、当該申出及び同行の資金繰り状況等を踏まえ、国民銀行に対し金融再生法第8条第1項に基づき、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分(以下「管理を命ずる処分」という。)が行われた。
 
 また、併せて、資産劣化防止の観点から、同日、金融監督庁より国民銀行に対し業務改善命令が出された。
 
(注1 )当該管理を命ずる処分に際し、同日、国民銀行に対し弁明の機会が付与されている。
 
(注2 )国民銀行に対する管理を命ずる処分を行った際の金融再生委員会委員長等の談話については〔参考 V −1〕参照。
 
(2)  当該管理を命ずる処分と同時に、金融再生法第11条第2項に基づき、預金保険機構の意見を聴取した上で金融再生委員会により公認会計士の田知本章氏、弁護士の松嶋英機氏及び預金保険機構が同行の金融整理管財人として選任された。
 
(注 )併せて、金融再生委員会により金融整理管財人たる預金保険機構の申請に基づき、2名の金融整理管財人代理の選任についての承認が行われた。
 
(3)  また、同日、金融再生法第14条第1項の規定に基づき、金融再生委員会より金融整理管財人に対して、当該被管理金融機関の業務及び財産の管理に関する計画の作成が命じられた。
 
(4)  国民銀行に対する管理を命ずる処分に伴うその他の主な手続としては、平成11年4月12日、金融再生法第69条に基づき、金融再生委員会により国民銀行に対して管理を命ずる処分をした旨が東京地方裁判所に通知されるとともに、東京法務局等にその登記が嘱託された。
 
 また、4月15日、金融再生委員会により同法第8条第3項に基づく管理を命ずる処分に係る公告及び同法第11条第4項の規定に基づく金融整理管財人選任に係る公告が官報により行われた。
 
(5)  なお、国民銀行に対しては、かねて金融監督庁により平成11年1月19日に立入検査が開始されていたところ、4月12日に国民銀行に対し検査結果が通知された。
 
 同検査結果においては、平成10年9月末の資産査定結果として I 分類が4,213億円、 II 分類が1,166億円、 III 分類が247億円、 IV 分類は569億円となることが示されるとともに、同年9月末の自己資本額は50億円であり、同年9月末時点の検査結果を踏まえた追加償却・引当額を前提とすれば、貸借対照表の資産の部が負債の部を712億円下回る見込みであることが示されている。また、同年9月末時点でマイナス65億円の有価証券等の含み損益を有することが示されている。
 
(注 )金融監督庁の国民銀行に係る検査結果については〔参考 V −2〕参照。

 

VI  幸福銀行の破綻処理について
 
 幸福銀行に対する金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分
 
(1)  幸福銀行については、金融監督庁による平成10年9月末を基準日とする検査結果(後述)を踏まえた同行の11年3月期末の自己資本比率の水準にかんがみ、5月14日、銀行法第26条第1項及び早期健全化法第3条第3項の規定に基づき、金融監督庁により早期是正措置が出され、自己資本の充実、大幅な業務の縮小、合併又は銀行業の廃止等の措置のいずれかを選択した上、当該選択に係る措置を速やかに実施することが求められた。
 
(2)  これに対し、5月21日、幸福銀行から金融監督庁に対し銀行業の廃止等の措置を選択する旨の報告がなされた。また、同日、同行から、金融再生委員会に対して、金融再生法第68条第2項に基づき、「その業務又は財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれが生ずると認められる」旨の申出がなされた。
 
(3)  金融再生委員会においては、幸福銀行からの申出及び同行の財務状況を踏まえ、5月22日、幸福銀行に対し金融再生法第8条第1項に基づき、管理を命ずる処分が行われた。
 
 また、併せて、資産劣化防止の観点から、当該申出と同時に金融監督庁より幸福銀行に対し業務改善命令が出された。
 
(注1 )当該管理を命ずる処分に際し、5月21日、幸福銀行に対し弁明の機会が付与されている。
 
(注2 )幸福銀行に対する管理を命ずる処分を行った際の金融再生委員会委員長等の談話については〔参考 VI −1〕参照。
 
(4)  当該管理を命ずる処分と同時に、金融再生法第11条第2項に基づき、預金保険機構の意見を聴取した上で金融再生委員会により公認会計士の海原旦氏、弁護士の栗原良扶氏及び預金保険機構が同行の金融整理管財人として選任された。
 
(注 )併せて、金融再生委員会により金融整理管財人たる預金保険機構の申請に基づき、2名の金融整理管財人代理の選任についての承認が行われた。
 
(5)  また、5月22日、金融再生法第14条第1項の規定に基づき、金融再生委員会より金融整理管財人に対して、当該被管理金融機関の業務及び財産の管理に関する計画の作成が命じられた。
 
(6)  幸福銀行に対する管理を命ずる処分に伴うその他の主な手続としては、5月24日、金融再生法第69条に基づき、金融再生委員会により幸福銀行に対して管理を命ずる処分をした旨が大阪地方裁判所に通知されるとともに、大阪法務局等にその登記が嘱託された。
 
 また、5月26日、金融再生委員会により同法第8条第3項に基づく管理を命ずる処分に係る公告及び同法第11条第4項の規定に基づく金融整理管財人選任に係る公告が官報により行われた。
 
(7)  前述の幸福銀行に係る検査については、かねて平成11年1月20日に金融監督庁により立入検査が開始されていたところ、平成10年9月末の自己査定結果に基づき、その資産内容等について実態把握が行われ、平成11年4月13日に幸福銀行に対し検査結果が通知された。
 
 同検査結果においては、平成10年9月末の資産査定結果として、 I 分類が1兆3,794億円、 II 分類が3,961億円、 III 分類が1,030億円、 IV 分類が284億円となることが示されるとともに、同年9月末の自己資本額は131億円であり、同年9月末時点の検査結果を踏まえた追加償却・引当額を前提とすれば、貸借対照表の資産の部が負債の部を464億円下回る見込みであることが示されている。また、同年9月末時点でマイナス105億円の有価証券等の含み損益を有していたことが示されている。
 
(注 )金融監督庁の幸福銀行に係る検査結果については〔参考 VI −2〕参照。

 

VII  その他金融再生法を適用した金融機関の破綻処理について
 
 上記の金融機関のほか、平成11年5月14日に三重県知事により三重県信用組合に対し金融再生法第8条第1項に基づく管理を命ずる処分が行われるとともに、金融整理管財人として金融実務家の池田秀樹氏及び弁護士の楠井嘉行氏が選任され、同日、金融再生委員会に対して、金融再生法第8条第4項及び同法第11条第5項に基づき、これらの報告が行われた。
 
 また、同年5月21日に東京都知事により足立綜合信用組合及び日本信販信用組合に対し金融再生法第8条第1項に基づく管理を命ずる処分が行われるとともに、金融整理管財人として、足立綜合信用組合については、弁護士の中島真介氏及び金融実務家の笹生宏氏が、日本信販信用組合については、弁護士の小松勉氏及び金融実務家の森孝之氏がそれぞれ選任され、同日、金融再生委員会に対して、同法第8条第4項及び第11条第5項に基づき、これらの報告が行われた。

 

VIII  預金保険法に基づく破綻金融機関の処理について
 
.預金保険制度を活用した処理案件
 
 金融再生法施行以降、金融再生委員会(内閣総理大臣代行期間中は内閣総理大臣)及び大蔵大臣により、預金保険法第61条第1項に基づく適格性の認定又は同法附則第16条第2項に基づく必要性の認定が行われたものは、破綻金融機関数で見ると26金融機関(2銀行、24信用組合)である。
 
 また、これらに係る資金援助の総額は、金銭贈与額で1兆5,670億円、資産買取りで6,799億円である。なお豊和信用組合については、現在、適格性の認定のみ行われており、今後、資金援助の申込みが行われる見込みであることから、これに係る資金援助額は未定である。
 
(注1 )適格性の認定は、金融再生委員会が行い、必要性の認定は、金融再生委員会及び大蔵大臣が行うものである。
 
(注2 )資金援助額の決定は、預金保険機構の運営委員会において行われる。
 
(注3 )預金保険制度を活用した処理案件一覧については〔参考 VIII −1〕参照。

 

.今後の処理予定案件
 
 現時点(平成11年5月31日)において破綻公表を行い、預金保険法の適用を予定している金融機関は、3信用金庫、24信用組合である。
 
 これらについては、今後、適格性の認定等の手続を進めていくこととなり、現段階においては、具体的な手続の日程、資金援助等は確定していない。
 
(注 )今後の予定処理案件一覧については〔参考 VIII −2〕参照。

 

IX  預金保険機構の各勘定の使用状況について
 
 破綻金融機関の処理のため、預金保険機構が行う金融再生法に基づく特別公的管理銀行への資金の貸付け等や預金保険法に基づく資金援助等の業務は、それぞれ預金保険機構金融再生勘定並びに一般勘定及び特例業務勘定により経理されることとなっており、その状況は次のとおりである。
 
.金融再生勘定
 
(1)  資金の使用状況
 
 金融再生勘定の借入金は、特別公的管理銀行である長銀及び日債銀に対する貸付原資と、旧金融機能安定化法に基づく資本注入(10年3月に実施)の原資として整理回収機構に貸し付けられた資金に充当されている。
 
(2)  資金の調達方法
 
 金融再生勘定においては、必要な資金をすべて日本銀行等からの借入れによって賄っているところである。金融再生勘定の借入金残高は、10年度末で48,198億円(日本銀行から30,000億円、民間金融機関から18,198億円)、11年度(5月31日現在)で40,198億円(日本銀行から22,000億円、民間金融機関から18,198億円)となっている。
 
(3)  政府保証の活用の状況
 
 金融再生勘定の借入金に係る政府保証の使用状況は、10年度末で66,057億円(日本銀行からの借入れに対し47,859億円、民間金融機関からの借入れに対し18,198億円)、11年度(5月31日現在)で22,000億円(全額日本銀行からの借入れに対するもの)となっている。

 

.一般勘定
 
(1)  資金の使用状況
 
 一般勘定の借入金は、金融機関の破綻処理に係る一般資金援助及び特別資金援助(特別資金援助額のうちペイオフコストに相当する金額を特例業務勘定へ繰り入れることとなっている。)の原資に充当されている。
 
(2)  資金の調達方法
 
 一般勘定においては、一般保険料(現在の料率は0.048%)を金融機関から徴収しているほか、不足する資金を日本銀行等からの借入れで賄っているところである。一般勘定の借入金残高は、10年度末で7,605億円(日本銀行から6,338億円、民間金融機関から1,267億円)、11年度(5月31日現在)で12,741億円(日本銀行から9,474億円、民間金融機関から3,267億円)となっている。
 
(3)  政府保証の活用の状況
 
 一般勘定においては、政府保証に係る予算措置はされていない。

 

.特例業務勘定
 
(1)  資金の使用状況
 
 特例業務勘定の借入金は、金融機関の破綻処理に係る特別資金援助の原資に充当されているほか、破綻金融機関から資産の買取りを行う整理回収機構への貸付けの原資に充当されている。
 
(2)  資金の調達方法
 
 特例業務勘定においては、特別保険料(現在の料率は0.036%)を金融機関から徴収しているほか、不足する資金を日本銀行等からの借入れで賄っているところである。特例業務勘定の借入金残高は、10年度末で28,074億円(日本銀行から18,564億円、民間金融機関から9,510億円)、11年度(5月31日現在)で29,962億円(日本銀行から15,452億円、民間金融機関から14,510億円)となっている。
 
(3)  政府保証の活用の状況
 
 特例業務勘定の借入金に係る政府保証の使用状況は、10年度末で42,484億円(日本銀行からの借入れに対し32,974億円、民間金融機関からの借入れに対し9,510億円)、11年度(5月31日現在)で6,973億円(日本銀行からの借入れに対し1,973億円、民間金融機関からの借入れに対し5,000億円)となっている。
 
(4)  交付国債の償還状況
 
 特例業務勘定の特例業務基金に交付された7兆円の交付国債の償還状況は、10年度は11,992億円、11年度(5月31日現在)は3,034億円となっている。
 
(注 )預金保険機構の各勘定の使用状況については〔参考 IX −1〕参照。
 

[参考]

 公的資本増強に係る取組について
 
.資本増強の方針、基準等の策定等
 
(1)  金融再生委員会においては、平成10年12月15日の委員会発足以降平成11年3月12日までの間、早期健全化法に基づく公的な資本増強に関して、3か月にわたり検討が行われた。
 
(2)  平成10年12月15日には、内閣総理大臣による代行期間中に策定、公表されていた次の規則及び告示について、追認の議決が行われ、公表された。
 
 「金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律施行規則」
 
 「早期健全化法第3条第2項に基づき資産の査定等を行うための基本的な指針」
 
 早期健全化法第6条第1項第6号に基づく「議決権のある株式の引受けの要件に関して、経営の合理化、経営責任の明確化、株主責任の明確化及び資金の貸付けその他信用供与の円滑化のための方策に関する基準」
 
 早期健全化法第7条第1項第3号に基づく「議決権のある株式の引受け以外の株式等の引受け等の要件に関して、経営の合理化、経営責任の明確化、株主責任の明確化及び資金の貸付けその他信用供与の円滑化のための方策に関する基準」
 
 早期健全化法第8条第3号に基づく「合併等を行う金融機関及び銀行持株会社等に係る株式等の引受け等の要件に関して、合併等の円滑な実施のために必要な範囲を超えないものに関する基準」
 
(3)  同年12月17日には、優先株等の引受条件として、「優先株等の配当率等に関する基本方針」の議決が行われ、公表された。以後、この方針に沿って、優先株等の配当率の検討が行われることとなった。
 
(注 )本報告の本文で述べたとおり平成11年1月20日には「金融再生委員会の運営の基本方針」が議決され、公表されている。
 
(4)  その間、1月11日には、資本増強制度の詳細について検討するとともに、同月13日には、金融監督庁検査部から、大手17行の検査結果概要についての説明が行われた。また、同月14日には、早期健全化法第4条第6項に基づき預金保険機構から、同月20日には、同項に基づき日本銀行から、今回の資本増強に当たっての意見聴取が行われ、翌21日には、承認要件等について審議が行われた。
 
(5)  さらに、こうした説明や金融機関の実態等を踏まえ、大手行の不良債権処理を前倒しで進めるとともに、今後の不確実な金融環境に備えることで、我が国金融システムの国際的な信認を回復させるため、国際基準行について、資本増強額の審査に際しての引当等の定量的な目安を予め策定することが適当であるとの結論に達し、1月25日に議決が行われ、公表された。

 

.予備審査等
 
(1)  1月20日には、金融監督庁検査部から金融検査に係る書類の提出を受け、1月26日以降2月5日までの予備審査においては、申請が予定されていた15行(日本興業銀行、第一勧業銀行、さくら銀行、富士銀行、住友銀行、大和銀行、三和銀行、東海銀行、あさひ銀行、横浜銀行、三井信託銀行、三菱信託銀行、住友信託銀行、東洋信託銀行、中央信託銀行)について、検査部から検査結果あるいは日本銀行から日銀考査の結果についての説明を受けた。
 
 また、各申請行の「経営の健全化のための計画」(以下「経営健全化計画」という。)(素案)や引受けを行う優先株等の商品性の原案について書面審査が行われた。
 
(2)  さらに、1月31日、2月5日、同月7日には、各申請行の代表者から直接ヒアリングを行い、各申請行の経営健全化計画(素案)に対する基本的な考え方等について確認等を行うとともに、当委員会より同計画に対する評価が適宜指摘され、再考が促された。
 
(3)  その後、2月9日、同月10日、同月12日には、資本増強の可否を含め経営健全化計画等について慎重に審議を行った後、2月12日、各申請行に対して、「経営健全化計画や引受株式等の商品性については引き続き検討を行うが、公的資金による資本増強を前提として、今後の臨時株主総会等の手続を進めることとして差し支えない」旨の通知が行われた。

 

.正式申請・承認
 
(1)  2月16日以降3月4日にかけて、さらに、経営健全化計画や引受株式等の商品性について審議を行い議論を深めるとともに、申請予定行に対し当委員会の評価を適宜指摘した。3月4日には、予備審査を経た15行から正式な申請がなされた。
 
(2)  その後、3月8日には、再度、代表者からのヒアリングが行われ、これまでの指摘事項に対する変更点や公的資本増強を受ける決意を含め、総括的な考え方の説明が行われた。
 
(3)  これらを踏まえ、3月10日、翌11日には、これまでの審査における基本的考え方を最終的に文書としてとりまとめるとともに、さらに経営健全化計画の改善点の評価や引受条件の詰めの検討が行われた。
 
(4)  以上の審査の結果、3月12日には、申請のあった15行について、総額7兆4,592億円に及ぶ公的資本増強の申請の承認が行われ、併せて、「申請金融機関に対する資本増強の基本的考え方及び審査結果について」の公表により、金融再生委員会の考え方が総括的に明らかにされたところである。

 

.資本増強の原資等
 
(1)  これらの資本増強の原資は、預金保険機構が調達を行い、整理回収機構に貸し付けられている。
 
(2)  この資金の原資は、すべて日本銀行等からの借入れによって賄っているところであり、金融機能早期健全化勘定において経理されている。
 
 金融機能早期健全化勘定の借入金残高は、10年度末で74,625億円(日本銀行から11,625億円、民間金融機関から63,000億円)、11年度(5月31日現在)も同額となっている。
 
(注 )資本増強額との差額は、日銀への利息先払分である。
 
(3)  金融機能早期健全化勘定の借入金に係る政府保証の使用状況は、10年度末で74,625億円(日本銀行からの借入れに対し11,625億円、民間金融機関からの借入れに対し63,000億円)、11年度(5月31日現在)では実績はない。
 
(注 )公的資本増強に関する資料については〔参考 X −1〕参照。
 

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