<金融庁発足に当たって> |
我が国は近年、深刻な金融不安を経験しました。これにより、安定的な金融システムの重要性が広く認識されるようになりました。安定的で活力ある金融システムを構築していくためには、民間金融機関と行政がそれぞれの課題に積極的に取り組んでいかなければなりません。各金融機関は不良債権の処理のほか、業務再構築を進めることで競争力を高める必要性に迫られています。その一方で、金融当局としては、実効性のあるセーフティネットの整備を行うとともに、市場規律と自己責任原則を基軸とした、明確なルールに基づく透明かつ公正な金融行政を徹底するため、専門性の高い検査・監督を実施していくこととしています。 日野金融庁長官
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<組織の変遷> |
大蔵省から金融監督庁を経て金融庁へ |
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.金融監督庁の発足 平成10年6月22日、自己責任原則と市場規律を基軸とした透明かつ公正な金融行政を実現するべく、民間金融機関等に対する検査・監督及び市場取引の監視を所掌する行政機関として、金び融監督庁が発足した(図1参照)。 それまでは、大蔵省の証券局・銀行局・保険部(銀行局)・金融検査部(大臣官房)・証券取引等監視委員会(審議会等)が金融行政を担ってきた。大蔵省においては、証券局・銀行局・保険部がそれぞれ分野別に制度の企画立案機能と監督機能を担い、平成4年に設置された金融検査部が分野横断的に検査機能を担い、証券取引等監視委員会が監視機能を担う体制であった。 金融監督庁の発足にあわせて、分野別の組織編成を改め、制度の企画立案機能は大蔵省の金融企画局が担い、検査・監督・監視の実施機能は金融監督庁が担うこととされた。さらに、金融監督庁の内部組織編成においても、厳正で専門性の高い金融検査と効率的で有効な監督行政を実現していく体制を確立するため、検査部局と監督部局を対等な部局として編成し、それぞれに銀行、証券、保険等の分野を横断的に所管させることとした。これにより、証券取引の監視を担う証券取引等監視委員会を含めて、各部局が相互に適度な緊張関係を確保しつつ、適切な連携を図る組織的基礎が作られた。この体制は、別の観点からみると、金融コングロマリットや複合的な金融商品の出現に対応して、金融行政当局が銀行、保険、証券等の各分野を一体として、効果的な制度整備、検査・監督を行うという国際的な潮流(いわゆるIntegrated Regulator)に沿ったものであった。 |
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.金融再生委員会の発足 その後、第143回国会(平成10年7月30日〜10月16日)(いわゆる金融国会)において、金融破綻処理制度の在り方等を巡る審議を経て、新設された「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」に基づく破綻処理等を実施させるための時限の行政機関として金融再生委員会及びその事務局を設置することとされた。金融再生委員会は、委員長を国務大臣とし、委員長のほか、両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命する委員4人で構成された。金融監督庁は、金融再生委員会に置かれ、通常の民間金融機関等の検査・監督及び市場取引の監視を金融再生委員会から法律委任を受けて担うこととされた。 |
3 |
.金融庁の発足 中央省庁等改革において、金融行政機構は二段階で再編を行うこととされた(図2参照)。 まず、12年7月1日、金融再生委員会に、金融監督庁を改組して、金融庁が設置された。これにより、金融庁は、Integrated Regulatorたる特徴を維持するとともに、金融監督庁が担ってきた検査・監督・監視の実施機能と、大蔵省金融企画局が担ってきた制度の企画立案機能を統合して、金融行政を一貫して担うことになる。金融再生委員会自体は、引き続き、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」に基づく破綻処理、「金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律」に基づく資本増強、金融破綻処理制度及び金融危機管理に関する企画立案等の事務を担う。他方、大蔵省(13年1月6日以降は財務省)においては、金融制度の企画立案機能のうち、国の財務等に関する事務を遂行する観点から、金融破綻処理制度及び金融危機管理に関する企画立案機能を担うこととなる。これにより、金融危機への対応に対して金融再生委員会・金融庁と大蔵省が共同で責任を担う体制になる。 さらに、13年1月6日、中央省庁全体の再編にあわせて、金融再生委員会は廃止され、内閣府の外局として金融庁が設置される。その際、中央省庁等改革において内閣機能強化の観点から内閣府に設置されることになった特命担当大臣が、金融庁所管事項について設置される。金融庁の主任の大臣は内閣総理大臣であるが、この特命担当大臣は、内閣総理大臣を補佐して、金融円滑化に関して各府省の施策の総合調整機能を担うとともに、金融庁が行う金融行政を指揮監督することとされている。 |
金融庁の組織 |
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.部局の編成 金融庁の内部部局の編成においては、金融庁のIntegrated Regulatorたる特徴を活かすとともに、市場規律と自己責任原則を基軸とした、明確なルールに基づく透明かつ公正な金融行政を遂行していくに相応しい組織編成を行うとの観点から、企画・検査・監督・監視といった機能別の組織編成を行うこととしている(図3参照)。これは、先に述べた金融監督庁の組織編成方針を引き継ぐものである。これにより、企画立案・検査・監督・監視の各部局が相互に適度な緊張関係を確保しつつ、適切な連携を図る組織的基礎が作られることになる。 具体的には、12年7月の金融庁への移行に伴い金融制度の企画立案機能を統合することにより、長官官房を改組して企画立案機能を果たす総務企画部を設置し、検査部、監督部及び証券取引等監視委員会と並立させることとしている。 13年1月に内閣府の外局となる段階では、金融行政の重要性等に鑑み、総務企画部、検査部及び監督部の3部体制は、総務企画局、検査局及び監督局の3局体制に強化されることとなっている。 |
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.課室の編成 次に、各部局の課室の編成をみると(図4参照)、新設される総務企画部(総務企画局)は、総務課、政策課、国際課、企画課、市場課、企業開示参事官室、信用課の6課1参事官室の体制をとることとしている。このうち、企画課、市場課、企業開示参事官室及び信用課が企画部局を構成し、総務課、政策課及び国際課の3課が総務部局(官房部局)として企画部局、検査部(検査局)、監督部(監督局)及び証券取引等監視委員会の金融庁全体を総合調整することとしている。 各課室を順に概観していくと、総務課は、庁内の総合調整事務や国会対応事務、人事、予算、会計等の内部管理事務を一元的に担う。また、各部局から独立してマネーロンダリング関係事務を担う特定金融情報管理室を置くこととしている。政策課は、基本的・総合的な政策の策定や金融税制に関する大蔵省(財務省)との調整といった事務を担うほか、政策評価、情報公開等の事務を担う。また、広報室や研修・研究を行う開発研修室を置くこととしている。国際課は、バーゼル委員会、IOSCO(証券監督者国際機構)、IAIS(保険監督者国際機構)等の金融関係の国際機関関係事務を総括する事務を担い、国際的なルール整備に積極的に参画するとともに、各国金融当局との協調体制の確立を図る。企画課は、企画部局の総括課として、金融制度の企画立案を総括し、金融審議会の運営や法令審査等を行うとともに、分野横断的な制度の企画立案機能を担う。市場課は、証券市場その他の金融市場に関する制度の企画立案機能及び証券取引所の監督といった市場運営機能を担う。企業開示参事官室は、証券取引市場のインフラである企業会計基準及び監査基準の整備、証券取引に係る開示制度や公認会計士制度の企画立案機能等を担う。そして、信用課は、銀行、保険等に関する制度の企画立案機能等を担う。 検査部(検査局)、監督部(監督局)及び証券取引等監視委員会は、基本的に金融監督庁の体制を引き継いでいる。まず、検査部(検査局)をみると、総務課は、金融検査の方針・検査計画の樹立のほか、金融検査マニュアルの策定等の事務を担う。審査課は、検査報告書の審査や金融検査結果の通知等の事務を担う。検査監理官は、金融検査の実施を総括する事務を担う。また、検査部では、12年7月より、総務課に検査指導官を設置して、金融検査の監理体制の強化を図るとともに、検査部門の拡充(14部門→16部門)を行うこととしている。 監督部(監督局)においては、総務課は、監督行政の総括・基本方針の策定、事務ガイドラインの整備等を行うほか、協同組織金融室において、信用金庫、信用組合、農林系統金融機関、労働金庫、信用保証協会等の監督を行う事務を担う。さらに、13年1月からは、金融再生委員会から金融危機管理事務を引き継ぐとともに内閣府に新設される金融危機対応会議の事務局機能を担うため、総務課に金融危機対応室を設けることとしている。銀行第1課は、都長銀信託、外国銀行等の監督を行う事務を担う。銀行第2課は、地銀・第二地銀の監督を行う事務を担うほか、金融会社室において、貸金業者等のノンバンクの監督を行う事務を担う。保険課は、保険会社等の監督を行う事務を担うほか、審査室において、保険商品の審査等を行う事務を担う。そして、証券課は、証券会社、証券投資信託委託会社等の監督を行う事務を担う。 証券取引等監視委員会においては、総務検査課が、証券取引審査、証券取引の公正に係る検査を行う事務を担い、特別調査課が、犯則事件の調査を行う事務を担う。 |
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.定員 金融監督庁は定員403人(うち検査官151人)でスタートしたが、検査・監督・監視体制の緊急整備を図る観点から、11年度に135人(うち検査官87人)、12年度に123人(うち検査官72人)の増員等の措置を講じた。12年度末時点では、金融庁として766人、地方財務局金融部門を含めて約2100人の体制となる。 |
<業務紹介> |
乾総務企画部長
西川検査部長
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1日(土) | ・ | 金融庁発足 | |
3日(月) | ・ | 「金融庁発足に当たって」発表(長官談話) | |
5日(水) | ・ | 農中投信投資顧問(株)及び農林中央金庫に対する処分 | |
12日(水) | ・ | 非常勤職員の募集(検査の補佐要員) | |
14日(金) | ・ | 全国財務局長会議 | |
18日(木) | ・ | 金融監督担当課長会議(〜19日) | |
28日(金) | ・ | 企業会計審議会総会 | |
・ | 「平成12検査事務年度検査基本方針及び基本計画」発表 | ||
・ | 「リスク管理債権等の状況」発表 |