広報コーナー 第2号
 
<金融審議会について>


.金融庁における金融審議会の開催
 
(1)  金融審議会は、大蔵大臣の諮問機関として平成10年夏に設置され、安心で活力ある金融システムの構築に向けて、金融制度及び証券取引制度の改善に関する事項について、審議を行ってきたが、12年7月の金融庁の発足に伴い、金融審議会は金融庁に移管され、金融再生委員会、金融庁長官及び大蔵大臣の諮問機関となった。
 
(注 )なお、平成13年1月の中央省庁等再編に伴い、金融審議会に、金利調整審議会と、自動車損害賠償責任保険審議会及び公認会計士審査会の政策審議機能が統合され、金融審議会は内閣総理大臣、金融庁長官及び財務大臣の諮問機関となる。
(2)  去る8月4日、金融庁移管後初回(通算第8回)の金融審議会総会が開催され、その場において、委員の互選により、貝塚啓明委員が会長に選任された。また、金融再生委員会、金融庁長官及び大蔵大臣による、以下の諮問がなされた。(三者を代表して、相沢金融再生委員長から貝塚会長に諮問文の手交がなされた。)
 「経済・金融を取り巻く環境の変化を見据え、安定的で活力ある金融システムの構築及び金融市場の効率性・公正性の確保に向けて、金融に関する制度の改善に関する事項について、審議を求める。」


.審議事項及び今後の審議の進め方

 今般の金融審議会については、8月4日の総会において、今後の運営方針として、審議事項及び今後の審議の進め方について以下のように了承された。
 
 
(1)  次期通常国会での法制化等を目指した事項を中心とする審議
 第一部会及び第二部会を設置し、以下のように、次期通常国会での法制化等を目指した事項を中心に、本年末までを一つの目処として審議を行う。
 
<第一部会:異業種参入に伴う銀行法等の整備、他業禁止の緩和等>
 最近、事業会社等の異業種による銀行業参入の動き等が見受けられるが、こうした新たな形態の銀行業については、我が国金融の活性化や利用者利便の向上等に寄与する可能性がある一方、子銀行の事業親会社等からの独立性確保の観点、事業親会社等の事業リスクの遮断の観点等、従来の伝統的な銀行業においては想定していなかった様々な観点からの問題が考えられる。このため、こうした新たな形態の銀行業に対する基本的な考え方として、平成12年5月30日、金融再生委員会・金融監督庁より、「異業種による銀行業等新たな形態の銀行業に対する基本的な考え方」及び「異業種による銀行業等新たな形態の銀行業に対する免許審査・監督上の対応(運用上の指針)(案)」を公表し、これをパブリックコメントに付し、去る8月3日、最終的に取りまとめを行ったところである。同「運用上の指針」は、新たな形態の銀行業に対し、現行法令の下での免許審査・監督を的確に行うための運用上の指針であるが、例えば、免許付与後、銀行の主要株主の変更を事前に把握し、不適格な株主を排除する権限が監督当局に付与されていない等、制度面からの所要の検討が求められる問題があり、いわゆるバーゼル・コア・プリンシプルの要請や主要先進国の制度等を踏まえ、異業種参入に伴う銀行法等の整備について、早急に検討する必要がある。一方、銀行の他業禁止の緩和等業務範囲の拡大等、異業種の銀行業参入問題とは裏腹の関係にある規制緩和の問題についても、本年3月末に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画(再改定)」などを勘案し検討を行う必要がある。このため、今般、第一部会において、異業種参入に伴う銀行法等の整備や、他業禁止の緩和等について、ご審議いただくこととなった。

<第二部会:個人信用情報保護・利用に関する制度整備>

 個人信用情報については、従来から、金融審議会第二部会において、「個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会」を通産省の産業構造審議会及び割賦販売審議会と合同で設置し、法的整備を含めた望ましい制度整備の在り方について検討を進めてきており、平成11年7月6日には「論点・意見の中間的な整理」を公表したところである。
 他方、政府の高度情報通信社会推進本部(現在は「情報通信技術(IT)戦略本部」に改組)においては、個人情報一般について、我が国における個人情報保護システムの中核となる基本法制の確立に向けて検討が進められているところであり、こうした政府・情報通信技術(IT)戦略本部における個人情報保護基本法制の検討状況を踏まえつつ、個人信用情報保護・利用に関する制度整備についてさらに検討を深めていくとの考え方の下、引き続き第二部会においてご審議いただくこととなった。

 なお、これらの部会においては、実務的な検討の要に応じさらにワーキンググループを設置することとしており、上記の「個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会」は引き続き設置することが決定されている。
 
(2)  今後の我が国の金融システムの方向性を展望するための新たな取り組み
 近年、我が国においては、金融システム改革及び金融危機への制度面での対応等を喫緊の課題として取り組んできたところである。こうした中で、グローバルなレベルでは、あらゆる面でのボーダーレス化が進展する一方、97・98年の国際金融危機と安定化の過程を契機に金融システム安定化の方策に関する議論も行われるなど、経済・金融を巡る情勢はかつてないほど激変している状況にある。
 このような情勢変化を踏まえ、金融庁においては、緊急性の高い政策課題に積極的に対応していくほか、中長期的な展望の下、時代のニーズを先取りした制度整備等にも取り組むことが求められており、このため、今後の我が国の金融システムの方向性について、基本的な考え方の整理が進められる必要がある。
 こうした観点から、今般、金融審議会において、金融に造詣の深い有識者をメンバーとした「金融の基本問題に関するスタディグループ」を新たに設置し、今後の我が国の金融システムの方向性を展望するため、まずは、どのような事項をどのような視点から検討すべきか等、論点整理に向け、自由なブレーンストーミングを行うこととされた。スタディグループにおいては、中長期的な展望に立って自由に議論する観点から、時期的な目処を付けて検討の成果を取りまとめることを前提としない柔軟な運営とし、その成果については、議論の状況について適宜総会に報告する他、議論の進展に応じ論点を整理・公表することとされている。

金 融 審 議 会 委 員 名 簿

平成12年9月現在
 
会  長 貝 塚 啓 明 中央大学法学部教授
会長代理 蝋 山 昌 一 高岡短期大学長
委  員 井 上 定 彦 連合総合生活開発研究所理事・
島根県立大学総合政策学部教授
  江 頭 憲治郎 東京大学法学部教授
大 塚 宗 春 早稲田大学商学部教授
翁   百 合 日本総合研究所主席研究員
神 田 秀 樹 東京大学法学部教授
倉 澤 康一郎 武蔵工業大学環境情報学部教授
杉 田 亮 毅 日本経済新聞社副社長
高 橋 伸 子 生活経済ジャーナリスト
田 島 優 子 さわやか法律事務所弁護士
田 中 直 毅 21世紀政策研究所理事長
原   早 苗 (財)消費科学センター事務局長・
消費科学連合会企画委員
福 間 年 勝 三井物産(株)取締役副社長
堀 内 昭 義 東京大学経済学部教授
八 木 良 樹 (株)日立製作所代表取締役副社長
吉 野 直 行 慶應義塾大学経済学部教授
〔計17名〕
オブザーバー 増 渕   稔 日本銀行理事
森   昭 治 金融再生委員会事務局長
(敬称略・五十音順)

金融審議会の部会等の構成イメージ
 


 

<平成13年度機構定員・予算要求の概要について>


.はじめに
 金融庁は、本年7月1日に金融監督庁を改組して設置された。金融庁は制度の企画立案から検査・監督・監視までを一貫して担当するとともに、銀行、保険、証券等の業態を横断的に所管することから、これらの特色を最大限に活かし、金融を取り巻く環境の変化に的確に対応して、機動的かつ整合的な政策の遂行に努めている。
 金融行政の実施に当たっては、市場規律と自己責任の原則を基軸とし、金融業務の高度化、国際化等の急速な進展を踏まえ、高い専門能力を保持するとともに、国際的な整合性の確保を図りつつ、預金者、保険契約者、投資者等の利便性の向上と保護に努めることが重要であると考えている。


.機構定員要求の内容
 金融庁では、上記のような考え方に基づき、平成13年度機構定員要求において、情報通信技術(IT)の急速な進展、金融システム改革、ペイオフ解禁等を踏まえつつ、検査・監督・監視体制の整備を行うとともに、金融行政の専門性、先見性向上のための体制整備等のため、205人の増員を図ることとしている。具体的な要求内容は以下のとおりである。
 

(1)

 検査・監督・監視体制の強化
 
 効率的で実効性の高い検査体制の整備−検査の頻度と深度の充実−
 金融庁検査局では、特に平成14年4月に予定されている、いわゆるペイオフ解禁を控え、より安定的な金融システムを構築するため、効率的な検査を実施するとともに、ITの急速な進展、金融商品についての時価会計の導入など、金融環境の変化に的確に対応した実効性の高い検査を実施するため、123人の増員を図り、検査の頻度及び深度の充実を図ることとしている。
 この結果、主要行については1年に1回、地銀、連合会、証券会社、保険会社等については概ね1.5年に1回、その他についても3年に1回程度の頻度による検査が可能になると考えている。


 金融環境の変化等に的確に対応し、透明かつ公正な金融行政を徹底するための監督・モニタリング体制の整備
 金融庁監督局では、業態の垣根を越えた金融コングロマリットの出現、インターネットバンキングや異業種参入による新たな形態の銀行等に対する監督・モニタリング体制を整備するとともに、改正預金保険法等の施行(13年4月)を踏まえ、我が国の金融システムに対する内外の信頼を確固たるものとするため、金融危機への的確な対応体制を整備し、更に、明確なルールに基づく透明かつ公正な金融監督行政の徹底を図る観点から、法令解釈等の照会に対して書面による回答(いわゆるノーアクションレター)を本格的・具体的に実施するための体制整備等のため、34人の増員を図ることとしている。


 新たな形態の証券取引等に対応した監視体制等の整備
 証券取引等監視委員会では、IT革命や金融システム改革の進展等により、デリバティブ等を利用したハイリスクな新商品が出現し、クロスボーダー取引やインターネットを利用した新たな形態の証券取引等が拡大している中、検査局による財務検査との連携を強化しつつ、これらに的確に対応し得る証券取引の検査体制を整備し、さらに、インターネットの急速な普及を踏まえ、インターネットを利用した風説の流布等に対する監視体制等を整備するため、
23人の増員を図ることとしている。

(2)

 金融行政の専門性、先見性の向上−金融大学校(仮称)の設立−
 デリバティブや証券化等の技術を利用した金融商品の出現、IT革命等による金融取引の多様化、更には業態の垣根を越えた金融コングロマリットの出現など金融を取り巻く環境は、近年、急激に専門化、複雑化している。このような金融環境の変化に的確に対応するためには、金融行政の専門性、先見性の向上を図っていくことが不可欠であり、金融庁における研究・研修体制の抜本的な整備を図るため、「金融大学校(仮称)」(各部局からの定員振替を含め16人体制で発足)を設立することとしている。
 金融大学校では、金融行政の専門性、先見性向上のため、金融行政実務(企画・検査・監督・監視)に直結した実践的な研究を行い、この成果を利用して効果的かつ効率的な検査・監督手法等を開発し、更に、これらの成果を踏まえ、職員研修を実施することにより、個々の職員の専門知識・能力の向上を図っていくことを基本的な考え方としている。

(3)

 金融行政を総合的に担うための企画・調整機能等の強化
 金融庁は、本年7月1日に金融監督庁を改組して設置され、制度の企画立案から検査・監督・監視までを一貫して担当することとなった。
 金融庁総務企画局では、金融庁が金融行政を総合的に担うための企画・調整機能等の強化を図るため、○企業会計基準・監査基準その他企業会計制度の整備改善及び会計士監査の充実・強化等のための体制整備、○行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行(13年4月)に向けた体制の整備、○金融環境の変化に的確に対応した制度の企画立案機能強化のため、法令審査体制の充実強化、○新興市場国に対する知的支援体制の強化等を図ることとし、20人の増員を図ることとしている。

(参考)平成13年度定員要求について
 
基礎定員 13年度増員要求 大学校振替増減 13年度定削 増員後定員
総務企画局 204  20 ▲ 6   218
検査局 319 123 ▲ 3 ▲ 2 437
監督局 131  34 ▲ 1 ▲ 1 163
監視委員会 112  23 ▲ 1 ▲ 1 133
金融大学校
(仮称)
  5 +11    16
合  計 766 205   ▲ 4 967
  (注)長官は総務企画局に計上。


.予算要求の内容
 上記の機構定員要求に伴う経費のほか、機動的な検査の実施、検査監督手法の改善、海外当局との連携強化等を図るための経費を折り込んで、平成13年度予算要求において、総額125億円の要求を行うこととしている。
 また、「日本新生特別枠(非公共)」において、総額21億円を要望している。
 
金融庁の組織(13年度要求後の姿)
 
 

(注

)内閣府に置かれる副大臣及び大臣政務官の職務の範囲は、内閣総理大臣が定めるところによる。
網掛け部分は、13年度要求機構


平成13年度金融庁概算要求の概要
 
区   分 平成12年度
予算額
(A)
平成13年度
概算要求額
(B)
対前年度
比増△減額
(B−A)
対前年度
伸率
  百万円 百万円 百万円
(項)金融庁 12,165 12,324 159 1.3
人件費 7,732 8,553 821 10.6
その他 4,434 3,771 △663 △14.9
  検査監督等実施経費 730 743 13 1.8
検査監督事務等電算化経費 879 954 74 8.5
検査監督手法等調査・研修経費 82 138 56 67.7
金融制度等調査経費 25 92 67 269
審議会等運営経費 90 96 6 7.2
国際会議等出席経費 161 185 24 14.8
中央省庁等再編成経費 671 308 △363 △54.1
その他 1,796 1,256 △540 △30.0
(項)経済協力費 61 190 129 210.6
合     計 12,227 12,514 288 2.4

(注)1

.上記のほか、「日本新生特別枠」(非公共)で2,128百万円を要望。

.各々の計数を百万円未満で四捨五入したため、計数が符合しない場合がある。



「日本新生特別枠」(非公共)の要望


.有価証券報告書等の開示書類の電子化「IT革命の推進」

1,153百万円
 有価証券報告書等の開示書類を電子化し、書類の提出、縦覧等をインターネットを通じて行うシステムの構築。


.国際会計基準事務委託「経済の新生に特に資する施策」

243百万円
   国際会計基準委員会における設定、改訂等に対し、我が国の意見・立場を積極的に発信するための調査分析、広報事務等を要件を満たす民間法人に委託する事業。


.財務局ネットワークシステム等の構築「IT革命の推進」

312百万円
 金融庁と地方財務局とを専用線でネットワークし、検査監督等各種システムを相互に利用するシステムの構築。併せて、テレビ会議システムの導入を図る。


.申請・届出等手続の電子化及び総合文書管理システムの構築「IT革命の推進」

197百万円
 金融庁に対する各種の申請・届出等の手続をインターネットを通じて行い、提出された文書等の決裁・通知・保存・廃棄までの文書のライフサイクルを電子的に管理するシステムの構築。


.インターネット証券情報分析システムの構築「IT革命の推進」

86百万円
 インターネット上において、証券市場の変動を意識した悪質な情報を流しているサイトを常時検索・抽出するシステムの構築。


.証券取引等に関する情報管理システムの構築「IT革命の推進」

85百万円
 一般から寄せられる各種の証券取引情報を迅速に処理するため、受付から担当係への回付を自動的に行い、事案の顛末結果をデータベースとして保存、活用するシステムの構築。


.ネットワークを利用した研修システムの構築「IT革命の推進」

51百万円
 検査監督に係る必要な知識を職員の机上のパソコンを利用し、研修を行えるシステムの構築。
合   計    2,128百万円

  
<平成13年度金融庁税制改正要望の主要項目について>


.株式等譲渡益課税に係る税制措置 (所得税・個人住民税)
 
 我が国経済の一層の発展を図るためには、金融資産のより多様な運用の途を開きつつ、次代を担う産業等への資金供給を行うことが必要であるが、このような要請に応えていく上で、株式市場の役割は重要である。
 個人投資家の幅広い参加を促進することにより、厚みのある株式市場を育成し、円滑なリスクマネーの供給等を実現するため、税制上の必要な措置を講ずる。
 
 株式等の譲渡所得等の課税については、平成11年度税制改正において、平成11年3月末をもって有価証券取引税等を廃止するとともに、上場株式等に係る譲渡所得等の源泉分離選択課税制度については、平成13年3月末までの経過措置とされたところであるが、我が国経済における株式市場の重要性の高まり、各種金融商品に係る課税の中立性の確保、申告分離課税への一本化が株式市場に与える影響等に鑑み、源泉分離選択課税制度を維持する。
 更に、源泉分離選択課税制度を維持した上で、株式市場の活性化や課税の中立性確保のため、どのような制度の改善がありうるかについては、欧米諸国における関連税制も参考としつつ、株式取引の実態を踏まえ、検討する。


.企業組織再編に係る税制措置
 
 我が国企業の生産力の向上と活力維持のため、合併や分割、持株会社化等柔軟な組織形態が求められている。金融機関についても、金融ビッグバンや国際競争力の激化など厳しい経営環境の中、企業組織再編制度の活用を促進し、金融の効率化を通じて金融システムの安定化及び利用者利便の向上を図ることが必要である。こうした企業の組織改革を阻害することにならない税制を整備する。
 

(1)

 会社分割・合併に係る税制の整備(所得税・法人税・登録免許税・消費税・不動産取得税・特別土地保有税)
 会社分割・合併等企業組織再編制度に係る税制について、企業経営の効率化や健全性の確保等のための組織改革を阻害することにならないよう、資産譲渡益課税の繰延べ、繰越欠損金・引当金等の引継ぎ、株主に対する課税の繰延べ及び流通課税の軽減・免除措置等、税制上の所要の措置を講ずる。
(2)  連結納税制度の早期導入(法人税)
 会社分割・合併に係る税制の整備を待って、金融持株会社等を一体としてみた連結納税制度についても、その早期導入を求める。
(3)  持株会社設立等に係る税制措置(登録免許税等)
 株式交換・移転制度による持株会社の設立等に係る税制について、産業活力再生特別措置法による会社設立に係る登録免許税の軽減措置(平成13年3月末までの時限措置)の期限延長(平成15年3月末まで2年間の延長)等、税制上の所要の措置を講ずる。


.市場基盤の整備等に資する税制措置
 
 安定的で活力ある金融システムの構築及び金融市場の効率性・公平性の確保に向け、証券決済システム改革、資産流動化、預金保険制度、レポ取引の各制度改革について、税制上の所要の措置を講ずる。
 

(1)

 証券決済システムの改革に伴う税制措置(所得税・個人住民税等)
 現在、検討を進めている証券決済システムの改革について、必要となる税制上の所要の措置を講ずる。
(2)  資産流動化関連税制の拡充(登録免許税・不動産取得税・特別土地保有税)
 第147回国会においてSPC法及び投信法の改正に伴い、一定の税制上の措置がなされたところであるが、さらに資産流動化を促進する観点から、SPC・投資ファンドに係る不動産流通税に係る特例措置の創設又は拡充等、税制上の所要の措置を講ずる。
(3)  預金保険法改正に伴う税制措置(道府県民税・不動産取得税・特別土地保有税)
 第147回国会において預金保険法の改正がなされたところであるが、これに伴い、承継銀行(ブリッジバンク)の不動産の取得に係る非課税措置の恒久化等、地方税制上の所要の措置を講ずる(国税については昨年度に措置済)。
(4)  非居住者等が受け取るレポ取引に係る貸付金等の利子に対する源泉徴収の免除(所得税)
 非居住者等とのレポ取引に係る貸付金等の利子については源泉徴収を行わないよう、税制上の所要の措置を講ずる。


.法人事業税の見直し (法人事業税)
 
 法人事業税制度については、公平・中立等の租税原則や他の政策目的との整合性等にも十分な配慮がなされるよう、その是正を図る。
 
 東京都等で導入された外形標準課税については、閣議において、種々の問題を孕むものと認識されており、本年7月に公表された税制調査会中期答申においても、税率設定については自由度を有する仕組みとしつつ、課税標準については全国共通のものとすることが適当であるとされていることから、特定の銀行だけを狙い撃ちで課税する根拠となっている地方税法第72条の19(法人事業税の課税標準の特例)の廃止を求める。
 なお、上記の是正が直ちに困難な場合には、公平・中立等の租税原則や他の政策目的との整合性等が確保されるよう、同条の規定の実施については、現行地方税法に規定されている法定外普通税及び法定外目的税と平仄を合わせて事前協議制を導入する等の是正を求める。


.金融商品に係る税制措置
 
 生命保険、損害保険、年金等の金融商品について、各々の金融商品の役割等を踏まえた上で、保険料控除制度の創設・拡充など適正な課税を定める税制措置を講ずる。
 

(1)

 生損保控除等(所得税・個人住民税)
 生命保険、個人年金及び損害保険について、 所得控除限度額の引き上げを講ずる。
 また、高齢化社会に対応した損害保険及び地震保険について、所得控除制度の創設を講ずる。
(2)  異常危険準備金制度の充実(法人税・法人住民税)
 火災保険等における異常危険準備金について、積立率及び洗替保証率を引き上げる等、税制上の所要の措置を講ずる。
(3)  企業年金の受給権保護を図る制度の創設等に伴う税制上の所要の措置(法人税・法人住民税等)
 企業年金の受給権保護を図る制度の創設に伴う所要の税制上の措置を講ずるとともに、企業年金及び確定拠出年金に係る特別法人税の凍結(平成13年3月末までの時限措置)については、現在の超低金利の状況等に鑑み、引き続き当面の措置として維持する。

現行の株式等譲渡益課税制度の仕組み
資料1
 
 平成11年度税制改正により、11年3月末をもって有価証券取引税及び取引所税を廃止するとともに、株式等の譲渡益課税に係る源泉分離選択課税制度については、平成13年3月末までの経過措置とし、平成13年4月以降、申告分離課税に一本化することとされた(法改正済)。
 

資料2
金融商品への課税制度の概要

 

区分 所得税 住民税 合計
総合・分離 税率 総合・分離 税率 税率
預金利子等 源泉分離課税 15% 源泉分離課税 5% 20%
証券投資信託等の配当 源泉分離課税 15% 源泉分離課税 5% 20%
株式等の譲渡益 源泉分離課税
(みなし所得)
20% 非課税 20%
申告分離課税 20% 申告分離課税 6% 26%

 
<新たな形態の銀行業に対する免許審査・監督上の対応(運用上の指針)について>


.指針策定の背景


 最近、事業会社等の異業種による銀行業への参入の動きや、店舗網を持たずインターネット上でのみサービスの提供を行う業務形態等、従来の伝統的な銀行業にはない新たな形態の銀行を設立する動きが見受けられる。
 このような動きは、金融技術の革新、競争の促進等を通じて、我が国金融の活性化や利用者利便の向上等に寄与する可能性があり評価し得るものであるが、反面、資本形態、業務形態、店舗形態の面において従来にない新たな動きであることから、銀行法上要請されている銀行業務の健全かつ適切な運営の確保の観点から、免許審査・監督上適切な対応が必要となる。
 よって、金融再生委員会・金融庁は、去る8月3日、現行銀行法の運用上の指針として「異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対する免許審査・監督上の対応(運用上の指針)」を、パブリックコメントも踏まえ策定・公表したところである。
 本指針は、最近の新たな形態の銀行に対する対応について、5つの問題点に整理し、それぞれにつき免許審査及び免許後の監督における留意点を整理したものである(なお、監督上の対応は同様の形態を持つ既存銀行にも適用されることとなる。)。以下、この5つの問題点毎に、本指針のポイントを説明する。

I

.子銀行の事業親会社等からの独立性の確保の観点
 

(1)

 事業親会社等の事業戦略上の要請によって子銀行の経営の独立性や健全性が損なわれないことを確保する。具体的には、
 
 事業親会社等の事業戦略における子銀行の位置付け(例えば、子銀行の経営健全性よりも事業親会社等のシナジー効果の追及を最優先するようなものとなっていれば問題。)、
 子銀行の経営陣が常に銀行経営の健全性を最優先として、独立して経営判断を行う経営体制が確保されているかどうか(子銀行の役員が事業親会社等の役職員等を兼務すること等により子銀行の経営の独立性が損なわれていないか)、
 事業親会社等の店舗を共有する場合等において、銀行業務の一部(預金の受入れ等)を事業親会社等に委託したり、事業親会社等の職員が銀行員を兼務すること等により、保安上ないしリスク管理上、銀行業務の健全かつ適切な運営が損なわれていないか、
等の点について、免許審査・監督の際チェックすることとしている。
 なお、上記の役職員の兼任等の例示については、これを一律に禁止するものではなく、個々のケースに応じて、銀行経営の健全性を最優先とする独立した経営判断を行う体制が確保されているか等を実質的に判断することになる。
(2)  本指針にいう「事業親会社等」とは、子銀行の主要株主である事業会社(金融当局の監督対象でない会社)であり、主要株主か否かは、企業会計上の実質影響力基準に基づく関連会社の基準等にしたがって判断することとなる(議決権の20%以上を自己の計算において所有する株主等)。
 また、免許付与後、事業親会社等に該当する主要株主に変動がある場合には、子銀行に対し、当局に速やかに報告することを免許の条件とすることとしている。

II

.事業親会社等の事業リスクの遮断の観点
 

(1)

 事業親会社等の経営悪化等、子銀行の意図しない事業親会社等のリスクが子銀行に及ぶ可能性があることから、免許審査・監督の際には、事業親会社等の事業リスクの遮断策が適切に講じられているかどうかをチェックするとともに、当該リスク遮断策によっても完全にリスクを遮断することは困難な場合もあり得ることから、事業親会社等の業況について必要な確認を行う(なお、事業親会社等の子銀行以外の子会社についても、そのリスクが子銀行に及ぶ可能性が高い場合があり得ることから、これに対する必要なリスク遮断策を併せ求めることとしている。)。
(2)  具体的には、先ず、免許審査の際、各申請者がそれぞれの実情を踏まえて策定するリスク遮断策を求め、これが適当なものかどうかをチェックする。その際、当該リスク遮断策には、最低限、以下の項目が含まれているかどうかをチェックする。
 
 事業親会社等の業況が悪化した場合、当該事業親会社等に対し、支援、融資等を行わないこと(リングフェンス)
 事業親会社等の業況悪化や、事業親会社等による子銀行株の売却、預金の引出し等、事業親会社等に起因する種々のリスクをあらかじめ想定し、それによって子銀行の経営の健全性が損なわれないための方策(収益源及び資金調達源の確保、資本の充実等)を講じること
 子銀行が事業親会社等の営業基盤を共有しているような場合には、事業親会社等の破綻等に伴い、営業継続が困難とならないような措置を講じること
(3)  免許審査において適当と判断されたリスク遮断策については、その確実な履行を免許の条件とするとともに、その後の検査や報告徴求等によりこれを確認し、必要があれば業務改善命令で遮断策の履行乃至は更なる遮断策の策定を求めることとしている。
(4)  一方、事業親会社等の業況把握としては、免許審査の際、申請者に対し、免許審査のため参考となるべき書類(銀行法施行規則第1条の3第1項4号)として、
 
 事業親会社等の直近の決算期の財務諸表及び監査報告書、
 当該事業親会社等の継続企業(ゴーイング・コンサーン)としての存続可能性について問題がない旨の監査法人等の意見書、
 当該監査報告書の内容が適正であることを確認した他の監査法人による報告書(企業内容等の開示に関する省令により有価証券報告書の簡便な記載が認められる一定以上(シングルA以上)の格付を取得している者は省略可)、
  の提出を求めることとし、免許付与後も定期的に、子銀行に対し、事業親会社等の財務諸表、監査報告書等、事業親会社等の経営状況・財務状況を示す資料を求めることを免許の条件とし、これにより業況把握を行うこととしている。

III

.事業親会社等と総合的な事業展開を図る場合の顧客の個人情報の保護の観点

 事業親会社等と子銀行の間では、両者のシナジー効果を図る観点から、特に、顧客情報を相互に活用することが予想されることから、これについての免許審査・監督上の留意点を定めたものである。
 具体的には、顧客情報の相互利用を行う場合には、最低限、利用する業者の範囲、利用目的、利用方法等を明確にした上で、顧客本人の明示的な同意を得る等、子銀行において、顧客の個人情報の保護のための方策が十分講じられているかどうかについて、免許審査や免許後の報告徴求等により確認することとしている。

IV

.資産構成等が国債等の有価証券に偏っている場合のリスク管理や収益性の観点
 

(1)

 銀行の資産構成が国債等の有価証券に偏っている場合には、
 
 国債には信用リスクがないことから、現行の信用リスクを中心とした自己資本比率規制の下では、所要自己資本額は極めて小さくなるが、金利リスク、事務リスク等に見合った自己資本が必要、
 伝統的な銀行業に想定される信用リスクを取らない場合には、信用リスクに見合ったリターン(収益性)も期待できない、
といった問題がある。
(2)  そこで、資産構成が国債等の有価証券に偏っている形態の銀行の免許審査・監督にあたり、
 
 現行の自己資本比率規制をクリアするに止まらず、金利リスク、事務リスク等に見合った自己資本となっているかどうか、ALM管理等のリスク管理が適切に行われているか、
 具体的な収益源があり、それが確実かつ将来にわたり安定的と見込まれるか、収益の前提となる諸条件について見込みを下回った場合の対応策が講じられており、その場合でも経常経費を賄う程度の収益を見込めるか、等についてチェックすることとしている。
 
(注 )金融機関一般の金利リスク、事務リスクに見合った所要自己資本については、現在、バーゼル銀行監督委員会において検討中であり、これが具体化された際には、金融機関一般に対し適用されることとなる。

V

.有人店舗を持たずインターネット・ATM等非対面取引を専門に行う場合の顧客保護等の観点

 インターネット・ATM等非対面取引を専門に行う銀行は、基本的に有人店舗を持たないが、そのような店舗形態であっても、利用者保護等の観点から問題が生じないような体制を整備する必要がある。そのような観点から、
 
 ○  顧客からの苦情・相談の対応、
 ○  システムダウン等に対する顧客対応、
 ○  法令に基づく顧客への説明義務の履行、
 ○  ディスクロージャーの履行、
 ○  マネー・ローンダリング防止の観点からの本人確認義務の履行、
等の点について、無店舗営業であっても適切に対応し得るための態勢が整備されているかどうか、免許審査及び免許後の監督においてチェックすることとしている。

 
<「平成12検査事務年度検査基本方針及び基本計画」について>


.はじめに

 先般(7月28日)、「平成12検査事務年度検査基本方針及び基本計画」を公表した。この検査基本方針及び基本計画は、平成12検査事務年度(12年7月〜13年6月)における検査の実施方針や実施予定数を定めているものであり、昨事務年度から金融検査の透明性をより一層高めることを目的として、策定後直ちに公表しているところである。
  以下、金融検査のこれまでの実施状況や体制整備の状況について簡単に紹介したうえで、本事務年度の検査基本方針及び基本計画のポイントについて、順次説明を加えていくこととしたい〔平成12検査事務年度検査基本方針及び基本計画(原文)は、ホームページの「報道発表等」及び「金融庁ニューズレター」のコーナーに掲載している〕。


.金融検査〜これまでの実績


<検査実施状況>
 


.平成10年6月の金融監督庁発足以来の検査の実施状況についてご紹介する。
 金融監督庁発足直後の平成10年7月に政府・与党が取りまとめた「金融再生トータルプラン(第2次とりまとめ)」において、「緊急的対応として金融監督庁は日本銀行と連携しつつ主要19行に対し集中的な検査を実施する」との方針が示された。これを踏まえ、平成10検査事務年度において、日本銀行と連携し、都市銀行9行、長期信用銀行3行、信託銀行7行の主要19行に集中的な検査を実施した。また、地方銀行64行、第二地方銀行60行についても、順次、集中検査を実施し、一巡したところである。


.さらに、金融監督庁発足2年目に当たる平成11検査事務年度においては、前事務年度に主要行等の集中検査を実施したことから、十分な事務量を確保できなかった業態、例えば、保険会社について、資産内容等の実態把握のための集中検査を実施し、これまでのところ、生命保険会社については、概ね一巡の目処がついたものと考えている。さらに、信用金庫についても同様の観点から順次検査を実施しており、平成13年3月末までに立入検査を一巡できるものと見込んでいる。


.このほか、外国金融機関等についても、我が国への進出、我が国金融機関等との提携が増加していること等に鑑み、ルール遵守状況及びリスク管理状況等に重点を置いた検査を実施してきたところである。


<検査体制の整備について>
 金融監督庁検査部は164名体制からの立ち上げであったが、金融検査の重要性が高まるなかで、ここ2年の間に155名の検査部職員が増員された。これにより、金融庁検査部は319名体制となり、検査を業種・業態毎に担当する部門制も16部門体制となり、専門的・効果的な検査の実現に向けての基盤が徐々に整備されつつあるものと考えている。


.検査基本方針のポイント
 検査基本方針のポイントは、第一に、早期是正措置や金融検査マニュアルの導入などを背景に、金融検査に対して、これまで以上にその質的水準の向上や手続きの透明性が求められていることを踏まえ、公正で信頼性の高い検査を実施することである。
 第二に、平成14年4月に予定されているペイオフの解禁や、情報通信技術の発達等の金融環境の変化を踏まえ、効率的で実効性の高い検査を実施することである。
 以下、検査基本方針よりポイントととなる箇所を抜粋し、解説を加えることとしたい。

「平成12検査事務年度検査基本方針及び基本計画」(抜粋)
.公正で透明性の高い検査の実施
 
(1)  検査マニュアルの整備・充実
 金融検査マニュアル及び保険検査マニュアルの整備に続き、証券検査マニュアルの策定を含め、金融機関等を巡る環境変化に対応したマニュアルの整備・充実を図り、検査の透明性の向上に努める。
(2)  意見申出制度の本格的実施
 立入検査において、検査官と金融機関等との間で十分に議論を尽くすとともに、これを促すため、検査官と金融機関等との間に意見相違が生じた場合に、金融機関等から意見の申し出ができる制度を本格的に実施し、検査の公正性の向上に努める。
(3)  検査指導官の活用
 検査官の指導訓練及び検査実施状況の把握等を専門に行う検査指導官を配置し、指導の強化を図ることにより、検査マニュアルの的確な適用を含め、検査の質的向上に努める。
(4)  人材育成の充実・強化
 検査経験の少ない検査官に対して実地研修を実施するなど、研修の充実・強化を図るほか、金融技術や情報通信技術の発達、金融のグローバル化等に迅速かつ的確に対応するため、民間の専門家の登用や海外当局との人材交流等に努める。

(解説)
 検査マニュアルを整備・公表することは、監督当局の検査監督機能の向上及び透明な行政の確立に資するだけでなく、金融機関の自己責任に基づく経営を促し、もって金融行政全体に対する信頼の確立につながるものと考えられる。こうした観点から、これまで平成11年7月には預金等受入金融機関に対する「金融検査マニュアル」、平成12年6月には「保険検査マニュアル」を発出したところであるが、本事務年度は、証券取引等監視委員会と協調し、「証券検査マニュアル」の整備に取り組むこととした。
 こうした方針に基づき、先般(8月29日)、「証券検査マニュアル・ワーキンググループ」を設置し、検討を開始したところである。このワーキンググループは、証券業協会及び証券会社4社をはじめ、東京証券取引所、日本公認会計士協会等から実務家にオブザーバーとして参画を得て、当庁職員となっている商法学者や公認会計士を含む検査部、証券取引等監視委員会事務局、監督部及び総務企画部職員をメンバーとしている。
 今後、オブザーバーの方々から証券業に係る最近の状況等についてヒアリングを実施するなど、できる限り早期に策定作業を進め、本事務年度中に「証券検査マニュアル」を策定することを予定している。


  検査の質的水準の向上や手続きの透明性の向上を図るためには、検査監理機能を充実させることが不可欠であり、これまでも研修の充実、指導・審査態勢の強化等に努めてきたところである。
 こうした諸施策を補完するものとして、検査において検査官と被検査金融機関との間に意見相違が生じた場合に、立入検査終了後一定期間に限り、金融機関から本庁検査部長宛に意見申出ができる制度を、本年1月から「金融検査マニュアル」を適用した銀行等検査について試行的に導入したところである。
 本事務年度においては、12年3月期決算を対象とする信用組合集中検査や信用金庫検査についても金融検査マニュアルが適用されることから、意見申出制度の対象となる検査が大幅に増加することとなる。また、保険会社検査についても、保険検査マニュアルが適用され、意見申出制度の対象となるところである。
 こうした意見申出制度の本格的な実施を踏まえ、本年7月、当該事務処理を担う検査指導官が配置され、体制整備が図られているところである。


  デリバティブ取引や電子金融取引の拡大など、金融環境の急速な変化に的確に対応するため、検査体制の強化策のひとつの核として、民間から専門家の登用を図っているところである。これまでに常勤職員として公認会計士を採用するほか、金融実務経験者等の非常勤職員を選抜により常勤職員として採用している。本事務年度においても、専門性の高い深度ある検査の実施を目指し、民間専門家の積極的な登用を方針として掲げている。
 
.効率的で実効性の高い検査の実施
 
(1)  濃淡ある検査の実施
 オフサイト・モニタリングを通じて得られた情報や検査結果等を踏まえ、検査頻度や検査内容について濃淡をつけた効率的・機動的な検査の実施に努める。
(2)  金融グループ・コングロマリットの一体的な実態把握
 連結ベースでの資産内容やグループ内の取引関係等を的確に把握するため、各業態を横断的に所管している当庁の特色を活かし、親金融機関等と金融機関等子会社、海外拠点の一体的な実態把握に努める。
(3)  部門制の充実・強化
 検査官の増員、部門の増設による検査体制の拡充に加え、部門毎の業務の継続性を高めることにより、各業態の特色に対応したより専門性の高い検査を実施する。また、市場関連リスク、システムリスクといった、専門性の高い分野に係るリスク管理態勢の確認にあたっては、必要に応じて専門班を編成し、深度ある検査の実施に努める。
(4)  内部監査・外部監査の活用
 金融機関等の内部監査の有効性を的確に評価し、実効性ある内部監査の実施を促すとともに、内部監査・外部監査を活用した効率的な実態把握に努める。
(5)  実効性の高い検査の実施
 制度の企画立案から検査・監督・監視までを一貫して担当することとなる金融庁の特色を踏まえ、検査において、経営の問題点を金融機関等に対して的確に指摘するとともに、それが適時適切な問題点の是正につながるよう、監督上の措置をとる監督部局や、証券取引等監視委員会等と緊密な連携を維持する。

(解説)
 検査の効率的な運営や被検査金融機関の負担の軽減を図る観点から、オフサイト・モニタリングを通じて得られた諸情報や検査結果等の整理・分析に努め、それらを踏まえ、検査頻度について弾力的に運用するとともに、検査内容についても、特定のリスクカテゴリーを重点的に検査するなど濃淡をつけた検査を実施することとしている。
 こうした方針に基づき、例えば、主要行、地方銀行、第二地方銀行については、金融監督庁発足後、二巡目の検査になることを踏まえ、前回検査における指摘事項の改善状況について、重点的に確認しているところである。
 また、本年4月に都道府県から検査監督事務の移管を受けた信用組合について、資産内容等の実態把握を速やかに行うため、平成13年3月末までに立入検査を一巡することを目途として、財務局を中心として集中検査を順次実施しているところである。
 平成10年12月に金融システム改革法が施行され、これにより連結自己資本比率規制や連結ベースでのディスクロージャーが導入されたところである。こうした流れを踏まえ、平成11検査事務年度に引き続き、金融グループ・コングロマリットの一体的な実態把握を方針として掲げているところである。
 こうした方針に基づき、平成10検査事務年度においては、外国金融機関等2グループ、平成11検査事務年度においては、本邦金融機関等3グループ、外国金融機関等4グループに対してグループ検査を実施したところである。
 本事務年度においても、既に、本邦金融機関等2グループ、外国金融機関等1グループに対して検査を実施しているところである。


.検査基本計画のポイント
 平成12検査事務年度の主な業態に対する検査実施予定数を定めた検査基本計画、及び10、11検査事務年度における検査基本計画と実績の対比は、別表のとおり。
 本事務年度の検査実施予定数を昨事務年度の実績と比較すると、信用組合集中検査に重点的に検査要員を投入するため、信用組合の検査実施予定数が大幅に増加している一方、その結果、他業態は概ね減少しており、合計では若干の増加となっている。
 なお、検査実施計画は、当初計画として設定しているものであり、金融機関等を取り巻く現下の厳しい経営環境下において適時の実態把握に的確に対応するため、弾力的な運用を行うこととしていることから、実施予定数は変動することがあり得る。


【別表】検査計画と実績の対比
 


(注


)年度は検査事務年度であり、7月〜翌年6月までをいう(ただし、10年度については、6月22日からである)。

 

<主な出来事>(8月)
     
3日(木) 「新たな形態の銀行業に対する免許審査・監督上の対応(運用上の指針)」発表
4日(金) 金融審議会総会開催
11日(金) 第一生命保険相互会社に対する行政処分
21日(月) 事務ガイドライン改正(災害時における金融に関する措置)
23日(水) 「金融庁における行政委託型法人等の総点検の実施結果」発表
事務ガイドライン改正(証券会社等…産業活力再生特別措置法関係)
28日(月) 「証券会社に係る検査マニュアルの整備に向けて」発表
「金融機関における実効性ある内部監査・外部監査態勢の確立に向けて」発表
大正生命保険株式会社に対する業務の一部停止命令(長官談話及び検査結果)
29日(火) 大正生命保険株式会社に対する保険管理人による業務及び財産の管理命令等
30日(水) 「金融庁の平成13年度機構・定員及び予算要求について」発表
「金融庁の平成13年度税制改正要望について」発表
31日(木) 「預金取扱金融機関の自己資本比率告示の改正について」発表