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金融審議会 金融分科会第二部会

リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキングループ

地方懇談会(仙台)




平成15年2月26日

金融庁総務企画局




司会 ただいまから、金融審議会リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ地方懇談会を開催いたします。皆様今日は大変ご多用のところご参集いただきましてありがとうございます。本日の司会進行を務めさせていただきます、東北財務局理財部長の相澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 初めに、東北財務局長の清水より開会のごあいさつを申し上げます。


清水局長 東北財務局長の清水でございます。本日はご多忙のところご参集いただきましてまことにありがとうございます。また、日ごろから金融行政を初めとする財務局の業務運営に格別のご協力をいただいておりますことをこの場をお借りしまして厚く御礼を申し上げます。
 本日の金融審議会リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ地方懇談会の開催に当たりまして、開催地である東北財務局を代表しまして一言ごあいさつを申し上げます。
 日本経済全体がデフレ化にありまして、とくに東北経済は全国的に見ても深刻な状況でございます。こうした中にあって、地元企業の方々は必死に努力されていることを私自身各界、各層の方からお話を伺っております。他方、こうした努力をされております地元の企業を支える金融機関の役割の重要性もますます高まってきているのではないかと思っております。日本経済を再生するために不良債権処理を進め、一方で企業、産業の再生を進めていくという流れの中で、地域のあり方を改めて問われているところでございます。
 この懇談会は、仙台と大阪の2カ所で行われるということでございます。本日お願いしておりますパネリストの方々は、それぞれ東北の地域経済を真剣に考えていただける方ばかりでございます。忌憚のない、自由闊達な意見交換が行われ、ワーキンググループ、金融審議会の議論に大きく寄与できることを期待しております。
 簡単でございますけれども、私からの開会のあいさつとさせていただきます。


司会 続きまして、本日ご参集いただきましたパネリストの方々のご紹介をいたします。
 宮城県仙台市に本社を置きます、電気機械製造業を営む東北電子産業株式会社代表取締役社長の佐伯昭雄さんでございます。
 秋田県由利郡に本社を置きます、電子部品製造業を営む由利工業株式会社代表取締役社長で、由利工業グループの代表、須田精一さんでございます。
 宮城県名取市に本社を置きます、運輸業を営む株式会社宮城運輸代表取締役専務の高田登志江さんでございます。
 仙台商工会議所会頭の村松巖さんでございます。
 福島県郡山市に本社を置きます、貴金属の回収、精製を営むアサカ理研工業株式会社代表取締役社長の山田慶太さんでございます。
 元仙台青年会議所理事長で、株式会社横山芳夫建築設計管理事務所専務取締役の横山英子さんでございます。
 株式会社東邦銀行代表取締役頭取の瀬谷俊雄さんでございます。
 株式会社仙台銀行代表取締役会長の日下睦男さんでございます。
 宮古信金理事長の齋藤有司さんでございます。
 福島県商工信用組合理事長の須佐喜夫さんでございます。
 続きまして、ワーキンググループの委員をご紹介いたします。
 本ワーキンググループの座長で、東京大学大学院経済学研究科教授の堀内昭義委員でございます。
 ブラクストン株式会社プリンシパルの多胡秀人委員でございます。
 PWCフィナンシャル・アドバイザリー・サービス株式会社取締役パートナーの田作朋雄さんでございます。
 野村総合研究所資本市場研究部長の淵田康之委員でございます。
 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授の三井逸友委員でございます。
 それでは、最初に堀内座長より、これまでのワーキンググループでの検討状況などについて発表をしていただきたいと思います。
 堀内座長、お願いいたします。


堀内座長 堀内でございます。プレゼンテーションに先立ちまして、このように立派な懇談会を準備いただきました清水局長を初め、東北財務局の皆様にまずお礼を申し上げたいと思います。それから、本日ご多用のところお集まりいただきましたパネリストの皆さん、それから会場にご参集の皆様にも厚く御礼申し上げたいと思います。
 パワーポイントで簡単にご説明します。
 金融再生プログラムというのが昨年10月30日に金融庁から発表されまして、これは現在の停滞している日本経済を活性化していくための金融的手法をどういうふうに考えるかという、そういうプログラムになるわけですが、その中に公的資金の注入の問題とか、あるいは銀行の自己資本をどういうふうに評価するかという、そういう問題と並んで、中小・地域金融機関の不良債権処理については主要行とは異なる特性を有するリレーションシップバンキングのあり方を多面的な尺度から検討した上で、平成14年度内に、つまり今年の3月までにアクションプログラムを策定するという、そういう一応大きな指針が出たわけでございます。
 続きまして11月29日にその具体的な作業工程表というのが出まして、これはいくつかのかなり具体的なアクションの手続が示されたわけですが、その中にリレーションシップバンキングのあり方を金融審議会で検討の上、やはり年度内をめどにアクションプログラムを策定するということで、この作業工程表に基づきまして私どもリレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループというものをつくってきたわけでございます。そして、既にここにありますように、本年の1月15日から始められまして、既に都合4回このワーキンググループのミーティングを開催いたしました。それに加えまして、一昨日は今日と同じような地方の懇談会を大阪において行いまして、地域の経済金融情勢というようなものをよりつぶさに見ようということになっているわけでございます。
 我々のワーキンググループの論点といいましょうか、大きな課題は、おおざっぱに3つぐらいここに掲げてありますけれども、1つはやや概念的なことなんですが、そのリレーションシップバンキングという言葉自身が余りなじみがないわけなんですけれども、そういう状況を踏まえまして、中小・地域金融機関の業務の特性とは一体どういうものかというのをいうことをきちんと整理したいと。
 それから2番目は、そういう特性を踏まえた上で、現状としてそういう中小・地域金融機関の機能、役割はどうなっているか、あるいはどういう点に問題がありそうかということを見極めるというのが2番目の課題であります。
 それから3番目は、これは今後の政策的な問題ということでございますけれども、中小・地域金融機関の機能、役割の強化に向けた取り組みとしてはどういうものが必要であるかという政策的な対応についての課題です。こういう概念的整理、それから現状についての認識、さらには政策的な課題、そういうものを我々のミッションとして掲げまして検討を続けてきておるところであります。
 それで、もう少し今のミッションの中身をブレークダウンしてみますと、まず中小・地域金融機関の業務の特性としましては、よく言われているわけなんですけれども、非常に規模の小さな債務者といいますか、企業を中心とした融資活動を展開していて、それはいわゆるメガバンクとは相当違った行動原理を有しているのではないか。とりわけ長期的な取引関係を通じて、企業の経営を支援していくという機能がかなり重要な部分になっているのではないか。そういう認識を既に我々としては議論しております。
 さらには、ワーキンググループの中では、今申しましたような長期的なリレーションシップの特性を強調する議論が出てきておりますし、さらには業務の範囲がそれぞれ地域に限定されているという傾向がある。この地域密着型のビジネスモデルということにまたさらに特徴があって、これはメリットもあれば、デメリットといいましょうか、限界もあるかもしれないというような点が議論されています。
 それから、これも言わずもがなでございますけれども、中小零細企業、あるいは個人を主たる顧客として業務展開していると。こういう点は既にワーキンググループの議論の中で示されたところであります。
 そして、さらに検討すべき論点としては、そういう信頼関係から得られる情報をきちんと活用するということがうまく展開されているかどうかですね。債務者企業に対する経営支援等にそうした長期取引関係を踏まえた情報が積極的に利用されているかどうか。そういうことが大きな問題になっていて、例えば現在の状況においてはそういう情報収集の活動、審査能力と書いてありますが、あるいは債権の管理能力が必ずしも十分には発揮されていないのではないかというような疑問点がないわけではない。
 それから、現在の業務展開の中には必ずしも借り手企業に十分高い付加価値を提供できるような業務を展開しているとはいえないかもしれない。そうしますと、そういう付加価値をつけるような新しいビジネスを展開することによって、その対価として、例えばその銀行、金融機関が金利の引き上げを求めることも可能かもしれない。こういうことは一方で顧客の業務内容をより高めるということと同時に、銀行、金融機関の経営体力といいましょうか、そういうものを強化するという点で言えば非常に重要なポイントになるのではないか。そういうご議論もありました。
 それで、さらに、今までのところはかなり伝統的な金融業務に近いお話だったわけですけれども、それに加えて日本の経済全体を活性化していく上では、ベンチャービジネスといいましょうか、新規に立ち上げる企業の育成、あるいは地域のエンジンになるといいますか、そういう産業分野を育成していくというためにそういうリレーションシップバンキングというものがどの程度貢献できるかという点、これも非常に重要なポイントになるのではないか。
 今までのワーキンググループの議論の中では、そういう地域の企業活性化のためにリレーションシップバンキングが果たすべき機能はかなり大きいというような論点も提示されております。
 最後の政策的な課題ということになるわけですが、要するに中小・地域金融機関の機能、役割の強化に向けた取り組みがどういうものであるべきであろうかということであります。今まで既に私の簡単な説明の中に出てきましたが、金融機関の収益力をどうやったら強化できるか。これはリレーションシップバンキングを支えるに担い手としての金融機関の今後を占う上でも非常に重要なポイントになります。
 それから、同じようにリスク管理能力をどうやって高めるか。現在でもかなり深刻なレベルに達しているかもしれない不良債権をどう処理するか。そういう処理を進めていく段取りはどういうものであるべきか。
 それから、一番最後は、今日もご臨席いただいています金融庁に対する課題として、監督上このリレーションシップバンキングを支えていく金融機関、銀行を監督していくその監督のあり方は一体どうあるべきか。これを大きな課題にしていきたいというのが政策的な論点の部分でございます。
 今まで申しましたようなポイントを先ほど最初に申しましたように、本年の3月末までに報告書にまとめなければいけないというのが我々の課題なんですけれども、そこで今日お集まりいただきました皆様に少し具体的にこういう点を少しお話を伺いたいというのを勝手ながら少しまとめさせていただいたわけですが、1つは、中小・地域金融機関はどのような存在として皆さんの目に映っているか。大きな銀行、メガバンクと比較した場合の相違点というようなものがあるかどうか。そういう点を少し伺えたらありがたい。
 それから、少し小さく書いてありますけれども、エンドユーザーの立場から見た中小・地域金融機関のあり方として、どういう点で問題点あるいは評価すべき点があるかということで、かなり具体的に申しますと、融資業務としては中小企業貸し出しに対する取り組み、あるいは地域経済の活性化に向けた取り組み、信用リスクに応じた貸出金利の設定に向けた取り組みの状況、あるいは無担保融資への取り組み、このような融資業務に関して皆さんはどういう点を感じておられるか。あるいはどういう不満を持っておられるかという点をお聞きできればと思います。
 それから、今のは融資業務ですけれども、その他の金融関連のサービスとして、資産運用面のサービス、口座振替、あるいは地域貢献の事業などについてのサービスの面ではどうだろうかと。
 それから、経営内容について皆さんも個々の銀行、金融機関の経営については大変高い関心をお持ちだと思いますけれども、そういうものを銀行、金融機関の側はどの程度積極的に開示しているか。あるいは開示のあり方に注文はないだろうかということであります。
 それから、経営の健全性を確保するという側面から見て、銀行、金融機関のご努力はどういうふうに評価されるかということですね。ということなどを伺いたいと。
 それから、さらには今後の課題として、中小・地域金融機関はどのような存在であってほしいだろうかということですね。
 それから、自分たちの経営活動や地域の活性化のためにどうういう役割を期待するか。やや具体的に申しますと、金利が高くても無担保の融資を求めたいというふうにお考えでしょうかとか、それから、何か従来の伝統的な金融サービスとは違った何か新たなサービスの提供を期待していらっしゃるかどうか。
 それから、最近は手数料、フィービジネス、これが非常に注目を浴びていますけれども、こういう領域でフィーを、手数料を負担してもいいと、そのかわりこういうサービスをしてほしいというようなものがあるかどうか。
 それから、最後ですけれども、地域貢献としてどのような活動をリレーションシップバンキングの担い手に対して求めるか。こういう点をぜひ、もちろんこういう点以外のものもぜひお聞きしたいわけですけれども、とりわけこういう点がもしあればぜひ積極的にお話しいただきたいということでございます。
 以上、簡単に触れましたけれども……もう少しありました。最後の部分ですけれども、今後の中小・地域金融機関にとってどのような取り組みが必要と考えるか。これはエンドユーザーの立場からですね。それから、これは行政に対する注文ということになりますけれども、中小・地域金融機関に対する検査監督についてどう考えるか。これは、一番最後は行政に対する注文ということですが、これらの点についてお聞きしたい。
 今私が申し上げましたように、今日の懇談会の主たるねらいは、エンドユーザーといいますか、銀行、金融機関からサービスをいろいろ受けておられる方々の立場に立ってご発言いただくと。それがどういうものであるか、どういうご不満をお持ちか、あるいはどういう点で今後に期待されておられるか、そういう点をできるだけ集中的にお話ししていただきたいということであります。
 大変手短なプレゼンテーションでございますけれども、以上のような問題意識を踏まえて、これから余りたくさんの時間ではございませんけれども、皆さんの忌憚のないご意見を伺いたいというふうに存じます。よろしくお願いいたします。


司会 ありがとうございました。
 それでは、これからパネルディスカッションを始めたいと思います。ディスカッションの進行は堀内座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。


堀内座長 それでは、不肖私がディスカッションの進行の役目を仰せつかりましたので、ご協力をお願いしたいと思います。
 本日お招きいたしましたパネリストの皆さんから、今私が説明しましたような趣旨で、中小・地域金融機関の利用者の立場に立ってご意見を発表していただきたいというふうに思います。順番は五十音順ということでございまして、まず佐伯様からお願いしたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。


佐伯社長 じゃあ五十音順で、トップバッターを仰せつかりました、東北電子産業の佐伯です。立場上、私の会社と同時に、私宮城県の中小企業団体中央会の会長をしておりまして、約660の協同組合が、参加約8万社くらいの中小企業の集まりであります。
 先ほども中央会に行ってきたんですけれども、名前は伏せておきますけれども、だれだれの協同組合のだれだれさんが今日は自殺したとか、非常に暗い話が生々しく入ってくるわけです。そのくらいに地方の経済というのはもう大変な時代になってきているということをまず委員の先生方に認識をしていただけないかなというふうに思います。
 それと、リレーションシップバンキングって、私何だかよくわからないんですよ。何で日本語で書いていただけないのかなとか思うんですけれども、それでこれを見てぱっと直感的に思ったのは、アメリカの派閥じゃないですけれども、そのグループの英語をそのまま持ってきて、日本の金融界は米国のあれになってしまうのではないかというような極端な、ひがみですよ、若干そんな感じを受けると。もうちょっと極端なことを言いますと、私は地方銀行さん、名前は言いませんけれども、非常にお世話になっております。地方銀行がなかったら我々の会社もないし、あるいは中央会の各企業も存在しないと見ます。そういう意味で、地元の金融機関というのが一番地元を知っているし、そういう意味の存在価値というのはものすごい重要なことだろうというふうに私は思っております。
 ただ、最近の傾向を見ますと、ちょっと辛口で言いますと、我々銀行に期待するのは、企業を見てほしいんですけれども、極端な言い方を言いますと、どうも全部金融庁の方だけ見ているのではないかというふうな感じがするんですね、企業を見ていないで。金融庁の検査とか。ですから、金融庁宮城県支部とか、石巻支部とかという、何かそんな感じになっているのではないかなという感じをしているので、ちょっと変な意味を言いましたけれども、ただ非常に地方銀行あるいは地方の信用組合も我々の中央会の協同組合の仲間でございますので、そういう意味で我々としても一緒になって、ちょっと最後に言おうと思ったんですが、銀行がある会社を助けてやるんだよと、金貸して。我々は助けられているんですかね。そういう立場じゃなくて、お互いに共生して地域をよくするんだと、そういう原理原則といいますか、視点を持つと、もっともっとよくなるんじゃないかなと。そこに横やりが入ってくるのが金融庁だろうというふうに思っていますので、ぜひそこら辺を委員の方々がうまくコントロールをしていただきたいなと。銀行の方は言いにくいだろうから私言っているんで。
 それと、大と中と小はみんな違うんですね。信用組合私よく我々の中央会の仲間ですからよく知っているんですけれども、同じ検査マニュアルでメガバンクと同じようにやられたらこれは大変なことだろうと思います。ですから、そこら辺は違うんだと、多分金融庁では言うだろうと思うんですが、実際問題はそうでなくて、やっぱり金融庁のあれに倣ってしまいますよ、大企業のマニュアルはちょっとよくわかりませんけれども。
 そういうことで、あちこち私飛びながら話しますけれども、大銀行やメガバンクと違う、非常に地域の金融機関というのは私必要だと思うんですが、最近大銀行が、都市銀行の人がいらしたらごめんなさい、非常に超低金利で、中小企業には今貸し出さないとだめだとかいう枠があるもので、改善計画が来ると、地方銀行のお得意様も全部奪っていってしまう。例えば我々が中央会で見ていると、大きなスーパーができて、地元の商店街がみんなつぶれるのと同じような現象を起こされては困るんですよ。それでちょっと調子悪くなるとぱっと引き上げるわね、地方。そういうようにメガバンクというのは、非常にいいところもあるけれども非常に薄情なところもありますので、あまり中小企業がそれを当てにしてはいかんというふうに思って、その分地域の金融機関に本当にがんばっていただきたいというふうに思っております。
 あと、もう1つ、今公的資金云々という話があるんですけれども、多分公的資金が銀行に入っても、我々中小企業の中には多分すぐに回ってこないと思うんです、お金が。日銀もどんどんとお金をやっているんだけれども、全然どこかでとまっているかどうかよくわからないんですが、みんな国債買うか何にするかわからないので、みんなとまって、流れる血として来ていないという現実があるんじゃないかなというふうなことがあるので、そこら辺をぜひご検討いただきたいなというふうに思っています。
 先ほど委員長がいろいろなエンドユーザーから見た地域の取り組み方ということいっぱいありましたけれども、要するに、やっぱり厳しくはなっていますよ、地域の銀行も。それは当然だと思います。でも、我々が思うのは、やっぱり担保とか、コンピュータがばっと審査するんだったら銀行要らないんじゃないかと私思うくらいなんですよね。コンピュータは非常にランキングつけやすいですから。決算書見ればじゃなくて、もうちょっと親身になった何か別な見方があるのかなというふうなことを、ぜひ事業の将来性とか、それは非常に難しいところがあるんです。ただ、多少のリスクはあっても地域経済の再生のためと。再生といいますか、活性化するために必要なことが結構あるんじゃないかなというふうに思っております。
 それで、私今いろんな銀行の方を見ていて、かわいそうというか、夜、我々の会社もそうですけれども、9時、10時までみんな働いていますよ、銀行員というのは。私の知っている銀行ではですね。そうしますと、ほとんど金融庁のために何かこうやっているんだろうと思うんですが、自分の勉強する時間を私はつくってあげたいんですよ。地域の現場に行って、各企業の現場に行って指導をしてあげる。指導というか、ああ、現場がこうなって、じゃあこの企業が別なことをやっていて、それこそリレーションをそこでしてもらえれば、かなりいろんな意味の地域の活性化になるかなというふうに思っております。
 わあわあと言っていますけれども、さっき言ったようにそういう新しいサービスというのは、私は自己負担をしてもいいんですけれども、ある意味ではこれ成功報酬にすればいいと思うんですよ。簡単な話だと思うんですが、成功したら報酬しますということでやればいいのかなというふうに思っております。
 最後に、実は余り金融庁の悪口ばかり言っているとまずいんですけれども、もう1つ知的財産を担保として認める、これは前からいろんな人が言われている。ただ非常にこれは難しい問題があると思います。ここら辺を銀行の方を我々と、みんな一緒になってもうちょっと考える必要があるのかなという気はするんですね。
 それと、もう1つ最後に、これは実際できないと思うんですが、極論を言いますと、メガバンクだけ金融庁検査して、地方の信用組合とか、金融検査は3年間凍結したらいいと思うんです。どうでしょうか。そうすればかなり、それで日銀の考査で十分だと思うんですよ。何で金融庁がもう1回やるんでしょうか。
 私金融庁に利害関係ないからバンバン言いましたけれども、ぜひそういう極論もあるということを、中小企業のたわごとかどうかわかりませんけれどもお聞きいただければと思います。


堀内座長 大変率直なご意見、どうもありがとうございました。ほかの皆さんもこのような率直なご意見いただきたいと思います。
 それでは、続きまして、ディスカッションはこの後、皆さんのご意見を伺った後でまとめて行うということにしまして。続きまして須田さんにお願いいたします。


須田代表 あり方を云々しろと、あるいは不満をお話ししろと言われても、私みたいに35年間地域の金融機関と密接な関係を、善隣友好関係をつくってきた者としては、銀行がどうだということは僭越だなと思っております。
 ただし、このリレーションシップバンキングというのは、言葉から判断すると、リレーション即ち関係深い・・・と、私なりの認識なんですけれども、つまり個人的な関係、例えば社長を信じて会社に金を貸すということだと思うんです。しかし、これからやっぱり事業を信じて金を貸すということになると、いわゆるトランズアクションバンキングなのかなと。場合によっては腐れ縁のことをリレーションシップというのではないかなと。もともと日本の中小企業というのは人縁とか地縁とか血縁とか、そういう縁でできておりまして、あの社長のためには金を貸すと。大企業では何か不祥事を起こしたり変な発言、舌禍事件を起こすとそこの社長や役員はすぐに首になるわけでしょう。中小企業はそういうわけにいかない。私みたいに35年間も経営者やっているわけですよ。親もない、財産も資産もない、山もない、田んぼも畑もないと。また保証人もいない、担保もないと。そういうときから始まって延々と構築してきたこの善隣友好関係というのがあるわけです。
 しかし、だからといって今日のようなグローバルスタンダードといいましょうか、そういう時代に入りますと、日本の金融庁のマニュアルがいいか悪いかは別にして、世界的なグローバルな展開が必要だということになると思うんです。その場合に、地域金融機関もそういう危機感があったから今日のようなこういう座談会を持つと思うんですよ。単なる答申のためのヒアリングではないと思うんですよね。それでこれだけ来てくれた。皆さんが熱心に聞いているということは、やはり金融機関も危機感を持っていると。来年郵貯が民営化になるし、外資の例えばシティバンクなんか3万8,000店あるんですね、ATMが。どんどんそういうグローバル化が進むと、金融機関がこのままでいいか、このような状態の延長線でいいか、手数料もこんなにとっていいか、たとえば為替の手数料だってシティバンクの方がいらっしゃると喜ぶと思いますけれども、1円しかとっていないんですよ。日本の銀行では3円取ります。あるいは、自分の口座があればそのまますぐにドルに預金できるわけです。定期預金なんかも、あれだけのインセンティブつけているわけです。月別、期間別、額別。シティバンクの支店に行った事のないクライアント(顧客)も3割もいると。だから、こういうことを考えたときにもう競争に負けてしまうと。
 とりわけ我々は銀行を選ぶことはできないし、銀行もマーケットを選ぶことはできないが、我々企業を選ぶことはできる。企業は選べても、即ちエンドユーザーは選べても、マーケットは選べない。例えば、秋田銀行がいきなり九州で開業するなんていうことはできない。ニューヨークで開業することができるかといったらできない。そういった意味では、お互いにそういう利害といいましょうか、危機感が一致したからこういう座談会があるんじゃないのかなと私なりに今考えているわけです。
 35年もこういうことをやっているという裏には、やはり銀行は生殺与奪といいましょうか、我々を生かすも殺すも、そういう権利を持っているのかなという気がいたします。ただし、現行の金融マニュアルがそのまま地方銀行、金融機関に入ってきたときの弊害というのはあまりにも大きいなと。今までは、金融マニュアルがないときは現場の支店長が大きい権限を持って検査査定をしておったわけです。しかし、金融マニュアルが入ってきたことによって地方銀行までもその金融マニュアルに沿って取引先の査定、経営実態を査定して、自己査定して、それをさらに金融庁に委ねるというシステムになっているわけです。こういう手間暇というか、これは日本にとっては非常にもったいないなと。我々製造業ではいかにリードタイムを少なくして、単位時間当たりの質も量も高めようとレベルアップを図っているさなかに、こういう回りくどいことを何でやらなくてはいけないのかと思うわけです。日銀の考査だけでいいよと。それは信用組合とか信用金庫も含めてあらゆる地方の金融機関はそうあるべきかなという感じがいたします。今のままだと現場の支店長の仕事がなくなりますよ。
 あえて申し上げますと、金融マニュアルはマニュアルで、新しく中小企業の融資編という部分もできて進むと思いますけれども、やはり地方の金融機関に必要なのは、総合的判断ができるという目利きといいましょうか、目利きがいなくてはいけないと思うんですね、これからの時代。会社にも目利きというのは必ずいまして、総合的判断が必ず必要なんです。お互いの例えばスタッフ、ラインがお互いの主張をし合えば必ずうまくいくはずがないわけです。そういった意味では目利きがいてバランスをとるということが必要だと思います。
 そういったことで、支店長の権限が極端に少なくなっている現状を見ると、先ほど9時まで、10時まで残業をしているのはかわいそうだという話が出ましたけれども、本当は仕事がなくていることが一番つらいわけです。何か仕事があるなら9時でも10時でもいいと思うんです。そういった意味では、ぜひ勉強もしていただきたいし、やはりグローバリゼーションですから、新しいそういう手法とか技法とか、そういうものを取り入れることも必要だろうし、ぜひそういうレベルアップを図っていただきたい。
 日本の中小企業というのは、立ち直りが早いんです。これは1つの特徴なんです。立ち直りが早いという、浮き沈みの中で、紆余曲折の中で来ていますから、1回、2回の決算が悪いからといって銀行が見放すなんていうことはとんでもない話です。ですから、富士山だって山が高ければ谷も深し、裾野も広いんですよ。日本の中小企業というのは裾野と同じで、いっぱいあるわけです。それが昔は多産多消といいますか、いっぱいできていっぱい潰れたと。しかし、今の時代はなかなか出てこない。少産多消といいましょうか、だからベンチャーにも支障があるわけで、だからこれからの時代というのは、逆にいうと貸した金だから是が非でも返してということではなくて、貸した金だけれどもそれは出資に切り替えようと。又その出資額の半分は損金処理が出来ると。スワップ法といいましょうか、そういう制度も今度はできると思うんです。これも全部アメリカのスタンダードです。チャプター11に全部書かれている。あるいはデッター・イン・ポゼッションといいましょうか、そういうスワップに匹敵するような制度、すべてアメリカから入ってきているわけです。それが嫌だ、日本だけの制度で我慢しなくてはいけない、日本の制度をどこまで守るとか、そういうことをいったって始まらないわけです。やっぱり着実にアメリカのスタンダードは入ってきている。だったらそれを逆手にとって、どういう延長線でプラスアルファができるかということを考えていくことがこれからの時代ではないのかなというふうに思います。
 いずれにしても、総合的判断ができる地域金融機関になっていただきたいということがまず1つ。
 それから、中小企業がいくらどうとか言ったって、中小企業の裾野は広いし、リスク分散ができるわけです。大企業とか、中小企業でも比較的大きい会社にばかり金貸してそれがおかしくなった、破綻したといったってリスクとしてはその方の責任、度合いの方が大きいわけです。だから母集団の広い零細中小企業を何とか面倒を見ていただきたい。会場の皆さんにもぜひお願いいたしまして、一言コメントといたします。
 どうもありがとうございました。


堀内座長 それでは、続きまして高田さんにお願いいたします。


高田専務 地域中小金融機関というのは、私は物流業なんですが、東北地方と北海道の物流業者みたいなところがあります。というのは、実に原価がかかって、説明がちょっと悪かったんですけれども、東北地方とか北海道というのは物量が極端に少ないんです。近畿とか首都圏から比べて。そのかわり、走る距離というのは2倍とか3倍とかあるわけです。そうすると、それだけ原価がかかりますから、我々は生き残るためにどうしていくかというと、多機能で勝負みたいなことになっているわけです。多機能で勝負ということは、お客様のお仕事を私らが代行して、例えば営業所機能を代行してやってあげますよと。250万かかるでしょ、うちでやると150万ですからうちに任せてください。こうなると地域の経済の疲弊とかというものにももしかしたら結びつくかもしれないんですが、そんなことは言っていられない。自分たちが生きていくためにはそういうふうにしていかなくてはならない。地域金融機関もきっとそうだと思うんです。
 それを見て、主要行なんていうのは、我々の業者でいうと、日通さんとか佐川急便さんとかヤマト運輸さんみたいなもので、何ぼでも活躍の場所があるわけです。海外に出ていってポートフォリオうんたらかんたらっていうものをいっぱい持って、そしてずっと金融戦争みたいなもので勝っていくとかっていうことはできると思うんですけれども、地域金融機関の方はここにしかいられないんですとおっしゃるから、多分ここで生きていかなくてはいけないと思うんです。そうすると、結局は多機能で生きていかなくてはいけない。果たして多機能で生きていくいろんな機能を発揮できるんですかというふうに私なりに素人なりに考えると、金融機関って基本的にどこが収益源なんですかと聞くと、貸出利益というか差益というか、そんなところなんですよとおっしゃる。1つしかないんですかと伺うと、1つではないけれども大きいものはそれだとおっしゃるんです。じゃあもっとたくさんやったらいいじゃないですかというと、佐伯さんもおっしゃったように、金融庁とか財務省とかの縛りとかみたいなのもあってなかなかできないんですとおっしゃるんです。だから、もうこうなったら、特に東北地方なんていうのはかなり経済的にも沈滞しちゃっているみたいなところがありますよね。だからこうなったらもう地域金融機関に関しては、財務省さんとか金融庁さんが、もう定義概念みたいなものを、金融の定義概念みたいなものも、ぶっ飛んだものにしてもらうとかって。
 例えば、自己資本比率がどうのこうのと言っているけれども、それもきっと大切なことだと思うんだけれども、資本は平民だったり地域市民であったりとかというような、そんなとにかく私の平気な言葉で言うとぶっ飛んだ理論ですね。そういう概念みたいなものをつくり出していただいて、絶対に主要行と地域金融機関というふうに、通常だと主要行があって地域金融機関が下にあるみたいに私も思っていますが、そうじゃない。地域の産業の活性化とか支援とか、中小企業支援とかというものをきっちりと標榜して、真の地域貢献を目指すのだったら当然そういうところ、全然違うよ、主要行と全然違うよというような概念とか定説を持ってもらいたいなと思います。
 何か私は素人ながら見ていますと、明治維新のときの金融概念とか、それから太平洋戦争後、今は太平洋戦争と言わないんですかね。戦後復興期金融概念みたいなのがいまだに尾を引いて、それをもとに仕事をさせられているという言い方はおかしいですけれどもしていらっしゃるんじゃないのかなと。地域活性化みたいなものも、何かもっとすごいことをやらないと何となくだめなんじゃないの。荒唐無稽と言われるかもしれないし、大いなる時代錯誤と言われるかもしれないけれども、リージョナルマネーみたいなものを地域金融機関が発行権を持たせてもらっちゃって、それで東京のお金より仙台のお金の方が5円使いでがあるんだとかって、要するに外為で勝負できないんだから、内為で勝負だみたいな、私はこういうふうにぶっちゃけた人間なのでついついわけのわからないことを言っちゃうんですけれども、そのわけのわからないハリー・ポッターの世界とか千と千尋の世界みたいな、そんなものをどんどんやっていっていただきたいなと。これはもうお役所さんにもお願いしなきゃいけないし、金融機関にもお願いしなきゃいけない。私が非常にお世話になっている金融機関が今回売上金管理か何かの新しいサービスを打ち出していたんですけれども、それなんかを見ると大変申し訳ないんですけれども、金融機関の理屈でつくったサービスじゃないの。支払の方の管理をしてくれるというんだったらわかるよ。でも入金の管理何でするの。我々中小企業は、入金と支払と言う部分をしっかりととらえていないと確実に弱くなりますよね。特に昨今の金融情勢の中では、ハラハラドキドキしながら、あそこから入るかな、あっちからも入るかなというのをハラハラドキドキして二、三日前からもう大丈夫かね、大丈夫かねとやっているわけです。そういうふうに大丈夫かね、大丈夫かねとものすごくハラハラドキドキしているところに、私みたいなばかな経営者でも、何となく次の戦略これだよねって、ああいうところと付き合わないためにはどうしたらいいのみたいな、それはちょっと今乱暴な意見ですが、そういうところともうまく付き合っていくためにはどうしたらいいのと考えなくてはいけないんですが、そういうふうなそういうハラハラドキドキのところでかなり自分に力がついているというか、企業に力がついている。そういうところをアウトソーシングしちゃったら、当然入らなかったので終わりになっちゃって、話にも何にもならないのではないかなと。本当に金融機関さんもユーザーをしっかり見てお仕事というか新サービスを構築してくれているのかなと思います。
 それと、これもまた荒唐無稽な話になるかもしれませんが、我々中小企業のために地域の金融機関が例えば地域証券取引所業務みたいなことをしていただいて、これはお客さんは国、国の中小企業対策費用みたいなのを使ってもらって、あとは地方自治体。それから大企業、大企業は我々の暮らしがなければ、グローバルに海外で戦っていけないということもあるわけです。今中国にシフトしているからそうじゃないんだよなんて言われちゃうかもしれないけれども、それでもまだまだ私たち中小企業の力というのは大企業さんには多分かなりあると思いますね。だからそういう人たちにその投資をしてもらう。それも最近よく言われているわけのわからない不動産、金融工学とかそれから企業価値、創造能力とか、そういうもののコンペ形式にして、それで投資をしてもらう。当然これは配当なんかは本当に安くしてもらわないと困るんですけれども、そうなってくると我々中小企業も、高いところを望むという、皆が標榜しているとは思うんですけれども、最近は1億でいいやと思う人もいらっしゃるかもしれないんですけれども。中小企業育成みたいなものが同時にできて、それで金融機関さんもそのためにはもうスペシャリストの養成をしなきゃいけないわけです。そのスペシャリストの養成をするためにはどうするのというと、お客さんの中にスペシャリストはごまんといるわけで、そういう人たちのネットワークをつくっていくと、おのずと金融機関の中にもスペシャリストができてくるのかなと思います。
 余りにもちょっと稚拙というか、そんなのできないよという話ばかりで恐縮ですが、以上です。


堀内座長 どうもありがとうございました。大変貴重なご意見ありがとうございました。
 それでは続きまして、村松さんにお願いいたします。


村松会頭 仙台商工会議所の村松でございます。先ほど3人の方からいろいろお話が出ているわけですが、ワーキンググループの検討すべき論点と先ほどお示しいただいたように、中小金融機関と、それから中小企業あるいは個人との取引の関係というのは、まさしく家族ぐるみの取引ということですし、田舎の方に行きますと支店長がお嫁さんの世話までしているというのが実態でございます。非常にそういう意味では、本当の意味のリレーションシップが確立した取引ということがいえるんだろうと思います。
 ただ、昨今、先ほど金融庁の検査の話がちょっと出ているんですが、お客さんに聞きますと、昨今の金融機関の職員は大変まじめなんだけれども少し事務的になっていませんかねという話がございます。もう少し突っ込んでいくと、財務諸表をよく基準にしてものをしゃべってくれる。それはありがたいんだけれども、そこで止まっちゃっているんじゃないか。中小企業あるいはどちらかというと零細企業の皆さん方は、今の我々が赤字だとかあるいは不況だ、利益が出ないといっているのは我々の責任なのかねと。むしろ政策のミスじゃないですかと。こういう意見が非常に強い。非常にそれでかつ中小企業の皆さんというのは財務基盤あるいは収益力、これは非常に不安定でございまして、先ほどどなたかがおっしゃいましたように、1年や2年赤字が続くとすぐにこれは要注意債権だ、要管理債権だといって格下げになってしまう。格下げになれば当然金融機関の貸出に対する態度は厳しくなってくる。中小企業の場合は常にそういった不安定な収益状況に置かれているので、ぜひその辺の事情をよく理解してやってもらいたいというふうな意見が非常に強いわけです。
 昨夜もちょっと塗装工組合の人たち、数十人の人たちとある機会で話し合ったんですが、やっぱり昨今の銀行の人は少し事務的になっていますねと。もう少し親身になって話を聞いてもらいたい。こちらの経営条件が悪ければ借りられないのは当然かもしれないが、それじゃどうしたら借りられますかと。あるいはこういう方法なら貸してあげられる。あるいはこういうところに行って相談なさったらどうですかと。もう少し突っ込んだ話をして、相談相手になってもらいたい。こういうことは異口同音に出た言葉でございまして、金融機関の方はそれなりに努力をしておられると思うんですが、末端の方へ行くととかくそういうふうな問題も起こっているようでございます。
 中小企業云々という話があるんですが、これはちょっと宮城県の例を申し上げますと、宮城県の場合はこれは平成13年度なんですが、総事業所というのは企業統計によりますと11万5,000社ございます。このうち大企業というのは0.8%でございまして、98.7%、99%は中小企業という範疇に入るわけでございます。このうち、第3次産業、卸とか小売とか飲食店を含めたサービス、運輸、通信、不動産業といったようなところですが、この第3次産業がこの全事業所のうちの81%を占めておりまして、この81%のうち中小企業は80%ですから、大企業というのはもう0.3%程度しかいないと。
 それから、最近いろいろ話題になっております建設業ですね。建設業につきましては、全事業所のうちで10.9%を占めています。そのうち中小企業は10.9%、これは四捨五入がありますから10.9%にして、わずかに大企業といわれる建設業は3社しかいないということでございます。
 したがって、宮城県内の事業所というのは、事業所の数からいうともうほとんど全部中小企業。それから、この中小企業が雇用している従業者の数なんですが、これも平成13年、111万人の雇用がございます。大体宮城県が人口220万ぐらいですから、大体半分ぐらいが中小企業従業者。このうち、いわゆる話題になっている建設、卸、小売、サービス。この部門の従業者数の7割がここで雇用されているということでございます。
 それから、この従業員数の異動をちょっと調べてみたんですが、平成8年と13年、5年間の増減で見ますと、減っていますのは製造業です。これは10.9%減になりました。ご承知のように大手企業が引き上げていく、それから海外移転があって、下請企業が倒産してしまうというようなこともあって、製造業で大体10.9%、実数で1万9,000人の人が職を失っております。それから、公共投資云々でいろいろ話題になっている建設関係ですが、これは14.1%、この5年間で減りました。実数で1万8,300人という数字でございます。それから卸売業、これは中抜きというふうなことで、地方卸売業は成立しないというふうに言われているわけですが、これが14.9%減。実数で1万6,400人減りました。それから金融保険、これは4,080人で13.3%。大手都銀とか証券会社、あるいは保険会社がリストラ等で統廃合が行われました。4,000人ほど減ってしまいました。
 これらを合わせますと、この5年間で5万8,000人の従業員が減ったわけです。
 じゃあこれをどこで吸収したのかと言いますと、飲食業を含むサービス業が3万1,400人増えました。8.9%。それから、小売が8,545人。約5%増えた。この小売の増はおそらく大型量販店による雇用だろうというふうに思っております。これらを合わせまして大体4万人増えた。差し引きいたしますと、1万8,000人程度は雇用減というふうになっておりまして、先ほど申し上げましたように、事業所の規模からいうと大部分が中小企業ですから、中小企業が支えておったこの雇用につきましても大変大きな影響を受けているということでございます。
 先ほど論点整理の中でいろいろお示しいただいたのは全く妥当なご意見だと思います。ご承知のように、中小企業と地域の金融機関との取引の特色というのは、先ほどもちょっと申し上げましたように財務諸表といったような定型的なデータだけでの取引ではなくて、経営者の経験とか力量とか、あるいは社会的な信用だとか、あるいは家族を含めたトータルな取引関係、こういったもので蓄積されました、いわば定性的といったらいいんでしょうか、定性的な情報、こういうものがベースになって非常に長い間、端的にいうとおじいさんの時代から続いているんだよというふうな取引関係があるわけでございます。これはやはり地域密着型の地域金融機関でなければ得られない情報でございまして、大手銀行にはこれは望むべくもないということでございます。
 昨今こういう厳しい金融の中でいろんなお話を聞くわけでございますが、やはり大手行は主要行の中には最近収益改善というふうなことで、金利の利上げを厳しく言ってきているケースがあると。とても今の収益力、不安定な収益の状況の中ではとても応じられないという話をすると、じゃあ返してくださいという話になる。要するに貸しはがしというのはこういうことをいっているのかなと思うんですが、こういうことで何かどこか助けてくれる金融機関を世話してもらえないか、あるいは取り次いでもらえないかというような相談も参っております。そう数多くはないんですけれども、したがって、こういう場合の受け皿というのが地域金融機関しかないわけでございまして、中小企業にとりましてはやはり地域金融機関が非常に健全でこういった駆け込み寺といいますか、何かのときには救ってもらえる存在と。こういうふうになってほしいというのが実感でございます。
 この地域金融機関が仮に倒産あるいはいなくなっちゃった、撤退したというふうなことを考えますと、その地域の中小企業がメーンバンクを失うということになってしまうわけです。不幸なことに、当地域でも、かつて大きな金融機関の倒産がございました。そういったものの経過を見ますと、他にも金融機関あるじゃないかと言っても、やっぱり中小企業取引の形態が、先ほど申し上げたように、長い間蓄積された定性的な信頼関係、これをベースにして取引が続いていますので、一旦ある金融機関がなくなるということは、取引がなくなることは、他へ移るといってもそう簡単には移れない。やはりそこでまた信頼関係を築くためには相当の年数がいるわけでございます。
 したがって、地域の金融機関はやはり健全性というものをしっかりと受け止めていただいて、絶対につぶれないと。そういうことを基本に据えていただきたい。頼りにしているのは地元の中小企業でございまして、金融機関が倒産あるいは撤退されますと、これはその地域の中小企業の皆様方の死命を制することになるということでございまして、そういう点をひとつぜひ考えてやっていただきたいと思います。
 それから、これは私どもの宮城県内の6つの商工会議所が共同で、3カ月に一遍ずついろんな調査をやっているんですが、その中で商工会議所の経営革新支援事業へどういう期待をしますかという設問に対して、一番多かったのが、金融資金調達の支援と。お金を借りるとき何か考えてほしい、手伝ってくれと、こういうことでございました。これはある意味では政府系金融機関もございます。それからいろんなセーフティネットとか、いろんな貸出制度もございますので、そういったものに取り次ぐあるいはお手伝いしているということでございますが、それに次いで多いのが情報化支援というのがございます。これは昨今あれになっております、いわゆるIT技術を利用した情報化問題、これは程度はいろいろ差はあると思いますが、いずれにしても情報化の支援をお願いしたい。これが43.5%でございます。
 それから、新しい分野への進出あるいは多角化の支援、マーケティングの支援、業種・業態転換の支援と、こういったところが30%、25%、20%と。これは回答が3つまでですから重複がございますが、こういったものが比較的上位の方に回答が集まっております。これはやっぱり、これ宮城県内の商工会議所というのは、大体会議はほとんど中小企業でございますので、中小企業の経営者の皆さん方は金融と資金調達の支援というものを除きますと、情報化の問題、それから新しい分野への進出、多角化の支援、マーケティング、これは市場開発、開拓の問題、それから業種・業態をどうやったら転換できるだろう、どういう方向へ行ったらいいか。それから新規創業の支援、こういったものが上位にランクされているわけでございます。これがこの地域内の中小企業の皆さん方の強い期待でございます。会議所に対する期待であるわけですが、これらにつきましては、取引を通して地域の金融機関の皆さん方にもこういった面で的確な情報の提供あるいは経営改善、経営相談、こういったものをぜひお願いしたい。ある意味では中小・地域金融機関に対する取引者側の期待でもあるというふうに我々理解しているわけでございます。
 ちなみに、仙台市内では193ほどの店舗があるんですが、そのうち大きい大手銀行といわれるところ、それから信託銀行ですね。こういったものが13カ店だけでございまして、あとの180というのは全部地域金融機関でございます。したがって、地域金融機関に対する期待は非常に大きいということで、ここから見放されたら事業は成り立たないということでございます。そういった点を十分ひとつ考えて、地域金融機関の皆様には本当の意味のリレーションシップバンキングをやっていただきたい。こんなふうに思っております。私はとりあえずそういったことをお話ししておきます。


堀内座長 どうもありがとうございました。
 それでは続きまして、山田さんにお願いいたします。


山田社長 山田です。
 皆さんの活力あるお話を聞いていますと、私が考えていることはちょっと余りにも技術屋的かなと思ってこれからお話しするんですが、まず、金融といいましても我々企業から見ますと、企業のいろいろなフェーズによって金融のあり方、役割というのがいろいろあるはずだととらえていまして、今日の話題に入る前にまず創業時、これはベンチャービジネスの特性の強い場合は、これはやはりリスクマネーが投入できる仕組み。いわゆる1つはエンジェル税制、エンジェルが投資する。これにはやはり税制がバックアップすべきだろうと。創業でも既存のビジネス、リスクが少ないビジネスはそれに投資する方、それはオーナーが投資するかもしれませんし、その仲間が投資する場合もある。
 その次の段階になりますと、次の段階か貯金か知りませんが、融資という形で金融機関さんとの取引が始まる。
 その後に企業が、これは企業の考え方ですが、地域密着戦略をとれるところと、それこそグローバルの市場と戦わなくてはいけないところでは、金融戦略も変わってきますので、間接金融を主体に企業成長を図るか、直接金融の道も開くか、これもまた企業の戦略が変わってくるという形で、それぞれのフェーズが考えられると思うんですが、ここではまず直接金融の方になりますと、またトランズアクションバンキングというような形で今日の話題のリレーションシップバンキングから離れると思いますので、その以前で、間接金融を主体とする企業の金融機関とのあり方ということを考えていきたいと思っております。
 まず、第1の質問である大手銀行と地域銀行との差はいかにということでございますが、端的なことでこれは証明できると思うんですね。我が社、創業30数年でございます。当初の取引銀行は地銀さんの取引で、その銀行さんと30数年お付き合いしております。地銀さんは他に2行ございますが、どの銀行も少なくても20年、ですから30年から20年の間の取引がございます。ちょっと第2地銀さんがうちは遅かったので10数年ぐらいなんですが、2行、10年ぐらいなんですが、あと都市銀行は、一番新しいのは、直近ということになりますが、長くて10数年のお付き合いしかございません。ですから、企業が立ち上がるときには、やはりその地域の銀行さんとのお取引が必ずあったんじゃないか。そういうような仕組みで今まで動いてきたんじゃないかというのが、私の話だけでなく今までの話にも必ず出ていたような気がしております。
 では、その特性以外に地域銀行とメガバンクといわれるところの本質的な差はあるかというのは、業態の発展の仕方が違うのであって、私はやはり大手銀行にもリレーションシップバンクの要素がなければ本当に日本の経済を引っ張っていけるんだろうか、本当にトランズアクション的な考え方でいいのだろうかという疑問を持っています。
 これは論議があるところですが、私は韓国が急激に立ち直った状態を見ていると、非常に大企業に対しては相当プレッシャーをかけたというような印象を持っていますし、事実だったでしょう。ただ、立ち上がりは早かったわけです。
 これは韓国の実際の中小企業の方にお話を聞いたんですが、結局その立ち上がりが早かったために我々が3年後には活躍できる場が、マーケットができたんだと。あのまま大企業が立ち直りが悪かったら我々はしんどかったよね。プラス、これはちょっと確認できていないんで聞き間違いかもしれませんが、3年間は中小企業に対しては金融政策上大分恩典があったというふうに聞いております。これはちょっと確認ができていないので、後でお調べいただきたいと思うんですが、そういうセットで政策がなされた。大企業に頼るということではなくても、やはりこれだけのドラスティックな経済変化をリーディングするにはそれなりのパワーがあるところが活躍する政策というのは打つべきじゃないかというふうに思っています。
 ちょっと直近の方に、我々の身近な金融機関さんの取引でお話ししますと、これちょっと辛口になるかもしれませんが、金融改革以前の中には、銀行組織として特色を出すというんですか、業態では特色が必然的にできたかもしれませんが、ほとんどの銀行が監督官庁の護送船団方式の中で、本来組織として、いわゆる強豪と差別化する戦略を余りとっていらっしゃらなかったのではないか。ただ、金融機関ですから、花形の産業であるはずです。素晴らしいスキルを持った個人が集まっていらっしゃるので、その個人のスキルに頼った顧客対応が行われていたのではないか。責任者が変わりますと方針が変わるとか、そういう形で何かA銀行さんだったらA銀行さんの売りというんですか、それは先ほど言ったように業態、信用金庫さんがあり、第2地銀さんがあり、地銀さんがあり、都銀さんがあるという業態の中ではこれはあるのかもしれませんが、何かその特徴というのが出しきれていない。そういう競争を我々は余り感じなかった。
 その中でも、先ほどお話ししましたように、我々は30年来のお取引をしています。ということは、当初の地銀さんは、我々の会社の山谷すべての歴史を知っていらっしゃるわけです。ですから、我々は一番歴史を見てきた方とお取引を続けるというのは非常に安心できることで、それを続けてきているわけですが、何かそういうように特色ということでこれから競争というのがあるんじゃないかというふうに感じております。
 最後の方になりますが、あと2つなんですが、私は一時メインバンクシステムというのがなくなるような状況になってきた。これはもう大手銀行さんと大企業さんの付き合いが、これはBIS規制に始まって、そういう政策を国がとっていますからそうならざるを得ないというところが私は仕組み的にあるんじゃないかと思っておりますが、株の持ち合いもなくなったり、いろんな変化をしていますが、我々このいわゆる資本市場と直接取引ができない企業とすれば、なおかついわゆる間接主体で、なおかつオーナー経営の場合は、本来リレーションシップバンキングにのっとったメインバンクシステムというのをきっちりと構築すべきではないかというふうに考えています。そのメインバンクが企業のコーポレートガバナンスを一旦は担う。これは企業側が最低でも四半期ごとの状況開示と、徹底的な情報開示をそのメーンバンクさんに求められることはもちろんですが、経営計画、新規事業の計画のアカウンタビリティ、説明責任をきっちり果たしていくというのが重要で、メインバンク側にもこれに的確に対応し、企業の発展に寄与できるシステムの構築が必要である。もちろんこのシステムには経営者の暴走を阻止する、抑止するシステムが必要なことは間違いありません。
 という形に、やはり特色のある銀行が特色のある企業、ですからすべての例えば企業体を1つの銀行が掌握していくことが、本当にこれがコスト的に見合うのだろうかという問題もあると思うので、そういうような特徴を出していく。
 これからのメインバンクの金融サービスとしては、これに関係ありますが、リレーションシップバンキングで得られた情報を、他行との協調融資のとりまとめ、大きく言えばシンジケートローンということになるんでしょうが、と、もしくは投資会社の投資斡旋に活用したり、他金融機関にエージェンシーコストを転嫁するとともにリスクの分散を図るということで、銀行経営の合理化を図っていく。
 また、監督官庁にお願いしたいことは、そのリレーションシップバンキングにのっとったメインバンキングになることが、多くの企業のメインバンクになることにインセンティブが特に働くような監督官庁の方向づけが必要ではないかというふうに思っております。
 最後に、リレーションシップバンキングの基礎というのは、銀行と企業側がお互いに情報開示、対等というとおこがましいかもしれませんが、お互いに企業が発展することによって、それで収益をあげていく仕組みをつくろうということでございます。その中で私はどうしても、この流れの中で、経営者が無限責任を負わなくてはいけない状態になっている。これは私は非常に疑問でございます。これは直接市場に出ることになれば、その呪縛からは離れることになるんでしょうが、これの弊害というのは、例えば何がしらの最低限の生活基盤が残っているということになれば、業態を変更するときも非常にしやすいし、今の状態だとがむしゃらにもそれをやっていかないと裸になるわけですよね。そういう、いつも突きつけられていますから、撤退する状況、これはやはり逆インセンティブが働いているような気がします。
 逆に、無理をしてどんどん金融支援を受けていくと。最後に万歳。私は新しい民事再生法とか、これはどういうふうになっているのかというのはいろいろ調べてはみてみますが、やはりそこが何か調べると自分のところはつぶれるんじゃないかというような印象を受けられると非常に困るんですが、一経営者として何かアンフェアだなという気持ちがしているので見ているわけですが、そこがうまく働くようなことをしていかないと、無駄なコストというのは社会的に課しているんじゃないかという気がいたします。
 以上です。


堀内座長 大変専門的なお話、ありがとうございました。
 それでは、最後になりましたが、横山さんにお願いします。


横山専務取締役 ありがとうございます。
 私は本業は設計事務所でございまして、57年目になる、よく言えば老舗ですけれども、悪く言えば再生不良な会社なのかなというところがあって、非常に悩んで毎日過ごしております。
 今日お邪魔させていただいたのは、自分の会社の中というだけではなくて、青年会議所というところで全国に5万名、20歳から40歳までのいわゆる経済人が一緒に地域活動をそれぞれの地域でやっているところにずっといたものですから、そういったところで生々しい実態が幾つかございますので、そのお話も加えながらお話をさせていただきたいというふうに思います。
 私はその57年間会社をやりつづけてこられたのは、この地域に根ざしていて、その銀行の皆さんであるとかいろんな方が応援してくださったわけですけれども、考えてみると、地方銀行だけではなくて主要銀行ともお付き合いもございましたし、それから信用金庫さんともお付き合いもございましたし、第2地方銀行さんともお付き合いありましたし、一時は10行以上の口座も持っておりました。これはどうしてかというと、お客様の都合に合わせて口座をつくるということももちろんありますし、それから親戚がたまたま転勤で仙台に来たときに、主要銀行の方だとすると、ちょっと知り合いがいないので一口付き合ってくれないということでお付き合いをすると、地方銀行と主要銀行と一緒に付き合うことが今までなかった地元の企業としては、差がいろいろ見えてきたんです。
 その差は何かというと、例えば機械を1つ使うにしても、最新の機械が常に入っている。それからサービスが非常にいい、いいというのはスマートであるということで、一時は揺れるんですね。その方が簡単だし時間にも余裕ができるし、煩わしくないということで変えたりしました。それから、金利が安いということで、そのときだけの数字を見て借り換えということもしたこともありました。取引先が、自分のメインバンクがここの銀行なので、ぜひそこから振り込みたいので、ぜひ振り込み先の口座をつくってくれということで、設計業ですから一時数千万というお金が動きますので、それはお互いに大きいものでもありますので、ただお客様から言われたことですから、わかりましたということでつくったという経緯もあります。
 最終的には今地方銀行さんをメインバンクにさせていただいておりまして、いろいろとアドバイスもいただきながら来ているんですけれども、地方銀行さんのよさというのはやはりきめ細かさだというふうに思っていたんですね。先ほど村松会頭から、支店長さんが結婚相手まで見つけてくれると。これはまさにそういうことで、オーナーの家族構成や社員構成までも知っていて、お葬式があれば行ったりとか、婚礼があれば必ず祝電を打つとか、そういうことをその情報を差し上げなくてもきちっと自分で調べて、調べなくても、非常に狭いエリアで動いていれば自動的に入ってくるんだと思うんですけれども、そういったきめ細やかさがあって、いつでもどこでもどういう場面でも地方銀行さんの顔が見える安心感みたいなことがあったり、安心感と同時に、何か悪いことというか、例えば非常に業績が悪いということを言いにくいなと思っていてもわかってくれて、それで実はこういう制度融資があるんですけれども、担保はもうこれ以上要りませんからこういう融資を受けたらどうですかといった、やさしい声をかけてくださるという、そういうところがあったんだと思います。
 ところが、先ほど金融庁さんのお話も出ましたけれども、最近は封筒1枚に、金融庁の指導によりこうこうこういうことになりましたということで、例えば担保の問題であるとか、それから当座貸越の枠であるとか、いろいろやっていただいたものが急に打ち切りになるというようなことが、文書でくるわけですね。その金融庁の何とか、監督官署の何とかといわれると、その銀行さんが悪いんじゃないな、その銀行の方の責任じゃないなと。思うので、結局他の銀行さんも同じだろうということで、こちらが我慢をして何も言わずに従わざるを得ないということがあると思います。そうやってきっと我慢してきている中小企業、零細企業の方、たくさんいるんですね。それで我慢しきれなくなって倒産してしまったり自己破産をしてしまったり、それから、自殺をして、その保険金で会社やお客様、家族には迷惑をかけないで、何とかしようと、そういった最悪のケースに陥ってしまうことが非常に多くなっているのではないかと思います。
 余り悪いことばかりいうと非常にさびしくなるんですけれども、実際にその対策というのは実はあるんだと思うんです。地方銀行さんと中小企業、零細企業の関係というのは、実は非常にいいものではあったんですけれども、お互いに甘えがずっとあったんだと思うんです。例えば決算書を出したとしても、その決算書の中身は説明をせずにただもらうだけで終わりとか、それから事業計画といっても、今こういう仕事をしていていつこういうお金が入る予定というものを出しっぱなしであるわけです。それに対してのディスカッションというのをしないでもそのまま貸していただいたお金はそのまま借りたまま、もちろんきちっと返しながらですけれども、そういう状況があったわけですけれども、そういう緊張感がないと、個人経営者であればご自分の土地や建物を担保にしているわけですけれども、今までは土地の価値があるときにはそういったことを一言も言われなかったんですけれども、ある日突然、実は御社の担保は足りないですと。足りないですといわれても、突然自分の財産をふやすわけにもいきませんし、何だ、こんなに担保があるから幾ら貸すと約束していたのにそれはないだろうということで、これはもう現実でして、来月までに2,000万返してくださいとか、そういう現実があるわけです。
 そういう意味で、緊張感を持つためにはどうしたらいいかということは、山田さんがおっしゃっていましたけれども、常に情報開示ということもありますけれども、ずっと長くお付き合いしている銀行さんに対してのプレゼンテーションを常にしつづけていることは必要なんだと思うんです。そうすることによって、そういうことをやろうとしているんだったらあそこのお客さんとつなごうとか、あそこの方を紹介してあげようとか、可能性があるんだなとか、オーナーさんにはお子さんがいないけれども、スタッフで優秀な人がいるので、今はいわゆる創業者一族でなくても企業は続けていけるということは大企業でもあるわけですから、こういったものはこれから中小企業、零細企業でもあり得ると思うんです。そういった常にプレゼンテーションがお互いにできるような関係をつくっていくと、その最悪のケースをある日突然選ばなくてはいけないということはなくなってくるのではないかなというふうに思います。
 それから、地域性というのもございまして、私の会社があるのは仙台銀座というところ、それから朝市と非常に近いところなのですが、朝市の皆さんは朝が早くて夜は何もしていないように見えますけれども、いろいろな仕込みをして非常にいつも忙しくて、銀行に行けない。かといって常に現金の取引なので、手元に現金を置いているのは怖いということで、銀行の方が集金に来てくださらないと自分の財産を守れないということを聞いたことがあるんですけれども、やはりこれもある日銀行の方が、集金は危ないと。いろんな持ち逃げとか盗まれたりとかいろんな事故が多くてその集金をしている人が危ないので、集金はしませんということで集金はしなくなったそうなんです。そうするとその銀行さんと、その朝市の一商店主の方の関係というのは切れてしまうんです。それならもうあの銀行じゃなくてもいいやと。そういう方が金利や何かということよりも、とにかくこれを持っていってちゃんと預かってくれる人がほしいわけで、そういったことをすべてのマニュアル、どういう方と付き合うときもこうだというマニュアルの中で進めてしまうと縁が切れてしまう銀行があるということだと思うんです。そういう意味でそういった地域性を大切にするべきだと思います。
 それから、ベンチャー企業をやっているところだとすると、そのベンチャー企業を立ち上げた方が例えば病気で3カ月、5カ月入院をして仕事ができなくなったというときに、全く収入がなくなるわけです。その収入がなくなったときに、これを運転資金というか名目はわかりませんけれども、常日ごろお付き合いをしている、それからそこの企業は何たるかということをわかっていれば、物理的にしようがない、病気であるとか何かがあって働けないというのは。そういったリスクもその銀行がきちっととる。その3カ月、5カ月の短期のものをきちっと面倒を見てあげる。しかしベンチャー企業というのは土地、建物はありませんから、そういったものを普通はできないけれども、でもその人がきちっと社会復帰をして見えているものが何億というものがあるわけです。それが手に入るのが数カ月もしくは1年遅れるかもしれないけれども、そこの分もちゃんとそこから見るというような、育てることもそこの中でするということになってくると大分変わってくるのではないかなと思います。
 現に岩手県の北上というところは非常にベンチャー企業であるとか、それから地元ではない企業の方がたくさん集積されているところだと聞いていますが、ここの方のお話を聞きましたら、銀行員の方がそのベンチャー企業や外から来た方たちのパンフレットを持ち歩いてくれているというんです。営業をしているのではなくて、こういう企業が北上に来ました、こういう企業でこういう商品を開発しましたということを銀行員の方がご自分の営業のときに一緒に持っていかれて置いてくるだけで、その企業にとっては何千万という、広告だけではなくて信用を得ることができるというんですね。そういうことをやっていただいているおかげで、逆にそのベンチャー企業にしてみれば、もちろん何かあったらそこの銀行に頼みますし、非常に小さいことではあるんですけれども、クレジットカードというのは今皆さん5枚ぐらいお持ちですけれども、その方はその行員さんのために、そこの銀行で扱っているクレジットカード1つに絞ったそうです。それをまたいろんな人に言って、そうしてあげた方が彼のためだよということで、個人と個人のつながりでありながら、最後は銀行、それからその地域の産業の創出にまでずっとつながっていく例ではないかと思いますが、そういった地域性、地域の産業であるとか、そこの小さい町内会でもいいんですけれども、そこのそういった性格を知り得てずっとまたつなげていけるのが地方銀行であり、地域に根ざした金融機関ではないかなと思います。
 それから、財務諸表を読むだけではなく、事業計画書をきちっと読める人もつくるということだと思うんです。先ほど目利き役ということがありましたけれども、数字だけではなくて、その技術が一体どういう価値なのかというをわからなければ聞けばいいと思うのですが、そういった努力をして、目利き役というものをその中にたくさんつくっていくことも大事だと思います。
 それから銀行の中で、何とか会といういわゆる交流会が必ずおありになるかと思うのですが、これは定期的に新年会とか納涼会とか何とか会ということで年に4回ぐらい、講演会や交流会がおありになるとスピードが遅かったころは、年に4回、その銀行での取引をしている方たちがお会いになることによって、異業種交流で取引先が増えるとか、そういったことがあったかもしれませんが、このスピードの時代に3カ月に1回というのはスパンが長すぎるんです。それから、決められた日に、同じ時間、同じ場所に何百人の人が集まるということは、今はもう不可能だと、非常に難しくなっていると思うんです。それぞれが自分のペースで動かないと仕事ができない状態ですから、そういったときには、間に入った銀行の方、金融機関の方が、この人とこの人を会わせたいということで直接結ぶべきだと思うんです。一対一ではなくてもよろしいですけれども、そういったきめ細やかさで非常に効率の上がることを、サービスというよりも人を育てる、地域を育てるというような気持ちで、本当は自分の与えられた仕事以外のことになるかもしれないですけれども、そんなことをやり続けることが大事なのではないかなというふうに思います。
 もう時間がないので、もう1つだけ。主要銀行と、今もう地方銀行は機械化に関してはほとんど同じだというふうに思います。銀行に行かなくても振り込みも会社からできる、インターネットからできるということで、機械化、それからそういったプログラムが入れられたことのメリットは非常に多いんですけれども、でもデメリットというのがあって、会う必要があるときしか会わないということは逆に私はデメリットだと思うので、たまたま会って生まれるものというのを大事にするべきだというふうに思います。
 以上です。


堀内座長 どうもありがとうございました。
 エンドユーザーの方々から、大変貴重なご意見を賜りました。これから自由討議に移りたいと思います。ただいま皆さんからいただいたご意見につきまして、まずワーキンググループの委員で、今日ご列席いただいている方の中からもしご意見あるいはご質問がありましたら承りたいんですが、いかがでございましょうか。どなたかいかがですか。私が先に言ってよろしいですか。
 皆さんから非常に意義深いご意見をいただきましたが、特に皆さんに共通されておられるのは、中小・地域金融機関に対する非常にある意味で熱い期待と、さりながら地域金融機関にはまだまだ努力が足りないのではないかという、そういうかなり率直なご意見。その背景には金融庁があったかもしれませんけれども、それはちょっとここでは置いておいて、金融機関としてそういうご意見に対してどのようにお考えになっておられるかということを、今日ご列席の銀行、金融機関の代表の方々の方から、手短にお願いしたいんですけれども、リジョインダーといいましょうか、回答をいただければというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
 瀬谷さん、いかがでございますか。簡単にお願いしたいんですが。


瀬谷頭取 簡単にいきましょう。大変うれしく思いますね。それだけ期待されているということは。と同時に面倒見のよさという問題はあるんですけれども、これは程度問題といいますか、個別論になりますので、もちろんうちの銀行も一生懸命やれと言っていますけれども、末端にいったらばお客様からおしかりを被ることはあるかもしれないと。これは事実だろうと思うんです。
 ただ、私ここでぜひ申し上げておきたいのは、そういう期待があるからこそ、例えばこの問題の核心に入りますと、不良債権の比率を一定の間にこうしなくてはいけないと。これは私反対なんです。反対と言うと語弊がありますけれども、もちろんうちの方も少しでもそれを減らしていきたいんだけれども、逆にその地域がこれだけ実体経済が毀損していれば、それなりに地域に突っ込んでいる金融機関が傷むのは当たり前なんです。とすれば、もちろんゼロにはできないんだけれども、そのゼロの金融機関がベストバンクとは思わない。ある一定比率で不良債権といいますか、不良債権は一定の形ですから、それと共生するのも地銀のやっぱり真面目じゃないかと。だから、要するに債務者区分をどういうふうにするにしても構わないけれども、ちゃんと引き当てをとるから、結局それを我々としてはとことん面倒を見ているという、面倒見のよさ。この辺がやっぱり地銀の1つの原点になるのではないかなとおもっております。
 以上でございます。


堀内座長 他のお3方の中で。
 それでは、日下さん。


日下会長 仙台銀行の日下でございます。
 今皆さんのご意見をお聞きしていますと、やはり地域金融機関と不良債権の問題というのが大きなテーマなのではないのかなと考えております。今瀬谷頭取もお話しされたように、我々地域金融機関というのは、その地域からもう逃げられないんですね。地域の経済がおかしくなれば、我々地域金融機関も同じなんです。共同運命体なんです、これは。ですから、今瀬谷頭取話されたように、不良債権の比率だけを縮めるんだと、縮小させるんだと。そして大手行のように、何年後には何%というような目標が、もし万が一地域金融機関に課せられたとしたならば、おそらく地域金融機関は大変な時代に入ってくるだろうと私は思っております。
 地域金融機関と大手行はもう全然違うわけです。一貸出先のロットだって、これは仙台銀行1つをとってみたって600万ぐらいです。ところがおそらく大手行は100億でしょう、今特別検査を対象にしているのは。地域金融機関で100億なんてことあり得ないんですね、一先に。我々は600万ぐらいですから。ところが、その先を全部ゼロにしなさいよ、破綻したからゼロにしなさいよということになれば、どこかに売却する以外にないでしょう。RCCに売却。そんなことをやったら、その人たちと一緒になっている先もだめになる可能性があるわけなんです。もう少し地域金融機関と大手行に対する不良債権の見方なり、マニュアルのことを今私どうのこうの言う考えはありませんけれども、マニュアルも実は問題があるんだろうと思います。
 そういうことを考えると、地域金融機関が本当に皆さんの今ご意見述べられた方々のご要望にこたえるためにも、不良債権が余りにも今前面に出すぎていると。それで地域金融機関が萎縮してしまっていると。そういう側面もあるんじゃないのかなと思っております。
 以上です。


堀内座長 どうもありがとうございます。
 それでは、ご順番に、簡単に、手短にお願いします。


齋藤理事長 それでは、順番みたいになりますので。
 私今パネラーの方々のお話しをお聞きして、随分恵まれた素晴らしい優良な中小企業の方々だけがパネリストになっているのではないかなと。そんな感じがいたします。大分辛口でのお話でございましたので、特に金融庁関係は多いに共鳴するところはあったわけでございますが、私ども信用金庫の場合はリレーションバンキングという、先ほど英語でよくわからないというお話もあったんですが、これで地銀さん、第2地銀さん、あるいは信組さんと、ひとくくりでリレーションバンキングといわれていますが、我々の場合はもともとが相互扶助でございまして、私どもの金庫小さいですけれども、私の祖父がこれをつくったときには報徳会という、二宮尊徳さんの精神に基づいて、要するにいろんな精神修養、それから貯蓄の奨励ということで当時の青年たちがつくったのがもともとでございまして、相互扶助という中でできてきた協同組織金融機関でございます。
 そういうことで、常に地域との共生ということを念頭において、経営に当たっているわけでございます。
 今お隣りの仙台銀行さんからもそういうようなお話があったんですが、私のところの場合そういう相互扶助というようなことで、運命共同体というお話がございましたが、我々は地域との使命共同体というふうな形で現在経営しております。
 それで、不良債権の問題については私も言いたい面が若干あるんですが、それでは地方銀行と信用金庫、実際にどんなところで何が違うか。いろんな事例がございます。私からは私が実際に銀行の支店長と対話したお話をちょこっと申し上げます。
 地銀の支店長がたまたま私の同窓の後輩でございまして、それだから言いやすかったと思うんですが、信金さんのおかげで助かりますよと。何だよと。1,000万ほしいというお客さんが来ると、僕もそのお客さんには1,000万出したい、出さなきゃならないと思う。だけどうちの基準からいくと、審査基準だと、600万しか出せない。それを信金さんが出してくれる。だからその企業は動く。我々も助かります。だけど査定が大変ですよねというような会話をしたことがあります。
 ですから、我々の場合にはどうしてもそういう狭い地域の中で地銀さんと一緒に競合というよりも、そういう相互扶助という精神の中で地域との共生、使命共同体、そういう信念で常に私どもの力のできる範囲で健全性をキープしながらその地域の企業とともに生きていくということを常に念頭においているということを申し上げておきたいと思います。
 それから、地域貢献とかいろんなことございますが、ベンチャーにつきましても、35金庫地区内にございますが、その中で1金庫でそういうファンドを持っている金庫もございます。それから、ある金庫さんでは、商工会議所のTMO、あれに渾身の力をこめて一生懸命頑張っている理事長さんもいらっしゃいます。いろいろ地域地域で信用金庫の特性というものを発揮しながら頑張っておりますので、その辺だけお話ししておきたいと思いましたので、どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。


堀内座長 どうもありがとうございました。


須佐理事長 最後に残りました、信用組合の須佐でございます。簡単お話をさせていただきます。
 まず第1に、佐伯会長、まことにありがとうございます。検査は3年としていただく。これは素晴らしいご意見で、ぜひそうしていただくのがいいかなと。また、銀行と信用組合のマニュアルは違うんだと。まさにそのとおりであろうと。正論であると感じております。そして、金融機関は企業よりも金融庁を見ている。まさにこれもそのとおりでございます。
 我々はご存じのように信用組合、つい最近国の金融庁の監督官庁指導をいただいているわけですけれども、かつては県からの指導をいただきました。県と国の検査の違いというのを身近に感じています。金融マニュアル、そして中小企業貸付付属編、これらも見てみますと、まさに素晴らしいマニュアルができたなというのが、実は我々信用組合の、受検される側としての意見であろうかと思います。我々が今まで気がつかなかった多くのリスクヘッジを加えて、金融庁はそれをしていただくと。さまざまな我々の気がつかなかった、そしてこれ以上ないだろうというぐらい、先ほどアメリカの話が出てまいりましたけれども、アメリカから、これはだめだ、あれはだめだということをまさにそのとおり全部日本に当てはめようという感があって、まさにそれはいいなという感じを受けています。
 かつて融資について県から受けていた当時は、我々がそれほどまでに厳しい状況を報告しなくてもよかったと同時に、疎明書類というものがなくてもかなり地域というところで県の検査の方々は、企業がこの地域でどれだけの力があるか、保証力があるか、そして地域の中での親戚とか長期に居住していること、それらによる信用度合いというのがわかっていたので、疎明書類というのを求めなくてもいいような形での検査を受けていました。
 ところが、金融庁の検査を受けるようになってから疎明書類が必要になりました。弱小の八百屋さん、魚屋さんの方々は、疎明書類って何だと、そんなの売れるかと、こんな質問も出るくらいの疎明書類。そうすると、金融機関もこういうふうに書くんですよと言って書いて、一生懸命書く。書けないけれども、隣りの友達に書いてもらって、書いてサインをして持ってくるんですけれども、実際は中までわかっているかどうかわかりませんけれども、そういうのがあるとかなり通る部分もあるので、果たして県よりも国が厳しくなったかというと、その面では厳しくない面がございます。地域と非常に密接に関係があった県と違って、国はキャリアといわれる方々、その他の方々がどんどん何年かそう長くなく動いていかれます。3年になりますと、絶対に次に来る人は全部総取り替えになりますから、また初めからやり直しになるわけですから、新しいのをそろえておけばこれがいいと、こういうところでは非常にいいし、形式が整っていればいいという非常に利点がありますので、我々としてもやりやすい。これが第1でございます。
 第2に、明治5年、先ほど金融機関のお話がありましたが、国立銀行法が日本で発足することになりまして、伊藤博文がその原案を書いて国立銀行が設立される段取りとなり、6年には第1、第2、第4、第5銀行ができ上がります。しかし、既にそのときに協同組合金融機関の体をなした信用組合というか、協同組合機関は2つあったといわれています。品川弥二郎が法案を出しましたが、その法案は残念ながら国会の流会により協同組合が認められませんでした。明治30年代に入って国立銀行方式が中央銀行方式、セントラルバンキングシステムになります。それとときを同じように30年代にやっと信用組合と協同組合というのが認められ、明治から大正、昭和へと信用組合が金融機関としての役割、購買、販売等もありますけれども、協同組合が金融の一翼を担ってくるわけです。
 大きい流れの中で、昭和2年、恐慌のときに歴史を見ると、大銀行の一部と郵便局と、そして信用組合というのがその残高を伸ばしている。そういうふうに書いてありました。地域と信用組合、そして郵便局、そしてたよりになる大銀行ということでありましょうか。歴史はもっと深く調べればさまざまなことがあると思いますが、第一次世界大戦、第二次世界大戦、そしてその戦後の信用組合は昭和26年の信用金庫法というのができたときに、公益大型の信用組合と弱小、中小、そして職益、特殊なものについては信用組合として残り、中間の規模として1市1村をカバーできる信用組合が信用金庫へと移行していくような形態を降り返ってみればなるわけでございます。
 3番目に移らせていただきます。リレーションシップバンキングの件についてですけれども、リレーションシップバンキングについては、今金融機関とお客様という、借りられる、いわゆる経済関係にある、取引関係にある人だけの話かなとおもって聞いておりました。もっと大事なのは、リレーションシップバンキング、つい去年の暮れごろに聞いた言葉ですけれども、それよりも地域はリレーションシップよりも、求めているものは社会的な信頼、お客様と銀行のみならず、お互いの地域の中での社会とその機関、いわゆるソーシャルキャピタルではないかという気がします。
 先日、会合がございまして、信用金庫の長野会長からこういうお話がございました。年度末の融資について積極的にということで国からの要望があったときに、健全な企業は今借りにこないんだ。むしろ預金を崩しているのを整理していく状況にあるんだ。要は貸せばいいというのではなくて、貸さないことも親切、課すことも親切。貸すことのみが言われる金融になってしまったこと、これがやっぱり単なるリレーションシップというか、客と金融機関だけの話になってしまっている。もっと我々は地域の中ではソーシャルキャピタル、いわゆるその規範となるもの、そしてお互いが信頼できる、そういうのを築いていく金融機関でなければならないなと、そのように考えています。
 最後に、年間今30万を超す自己破産の方々がここ何年か出ています。その30万の人たちをどういうふうに金融機関の中に取り込める方法があるかということを考えていただかなくてはならないと。地域の中ではやっぱり弱小の我々の一番最後の貸し手としての役割を果たせるようなシステムを構築していただかなければならない。特に消費者金融等、顔を見ないで借りられるのではなくて、地域の中では顔を見て、最後の貸し手としての役割を果たせる信用組合が業界として新しい参入者を求めていきたいなというようなことを考えています。それが地域のためであろうというふうに思います。


堀内座長 それではどうですか。ワーキンググループの方で何かご質問等ございますか。
 三井先生、いかがですか。


三井委員 よろしいですか。
 大変貴重なお話を伺って、もうすごい今日は刺激を受けておりますが、時間がだんだん押していますので、ポイントだけ伺いたいと思います。
 特に、先ほどのユーザーサイドからという意味で、佐伯さん、須田さん、あるいは山田さん、あるいは場合によっては高田さんあたりに伺いたいと思っておりますが、3点ございます。1つは、これは大阪の場合でも伺ったんですが、今日の座長のまとめの中にもありましたように、いろんなサービスの提供、あるいは利便、さらには無担保融資の可能性といったことを進めていくという、これが地域金融にとってこれから大きな使命にはなるかもしれないが、またこれまでもやっているかもしれない。しかし、それはそれなりにコストがかかる。そのコストを手数料なり金利なりという形で負担していく。そういうことはやるべきなのか、またやりたいのか。いや、お金あんまり払いたくないというのが本音なのかと、そこら辺を率直にうかがいたいというのが1つです。
 それから、2番目には、お話の中にも出てきまして、シンジケートであるとかスワップ等といろいろむしろ逆にグローバリゼーションの中の欧米の方法をいろいろ取り入れて、新しい仕組みをつくっていくというのも地域金融の使命ではないか。具体的に融資、投資等といろいろ組み合わせていくとか、また、単に企業を支えるというだけはなくて、特定のプロジェクトに向けた企業のジョイントを支えるとか、いろんな形、そういう方法に対して何かご提案はないだろうかというのが2番目です。
 3番目には、今日は先ほどご指摘あったように、大変優良な企業が集まっておられるようですから、明日に困るというようなお話でなくて、そういう意味では心強いんですが、しかし現実にはいろいろ金融機関との間で悩んでいるというお話が多々報道されております。そういう中で、これもご指摘あったように、単に余り地域の企業にとって悪いことはしないということもありますが、もう1つはまさにリレーションシップバンキング化をどんどん進め、ご提案あったようにむしろ今の時代でこそメインバンク化を進めるとか、こういうことをせっかく努力されるというふうな、そうした金融機関に対して、その地域貢献といった意味を含めて評価をしていく、あるいはインセンティブの仕組みをつくっていく。これはまたお役所を増やすということになっても問題があると思いますので、例えば第三者的な評価として、地域金融に関するNPO的な評価組織をつくるとか、そういう評価を公表するとかいった考え方もあるかと。そういう発想もあり得るかと思います。
 ただし、もちろんその場合にむしろリレーションシップだから個別の問題ではないかと。それぞれがビジネスとしてやることに意味があるというお考えもあるでしょうし、それから最後に今須佐さんからご指摘あったように、個別に頼るということも問題だと。むしろ社会的な発想でいくほうが大事なんだという、そういうお考えがあれば、ある意味ではまさにそうした第三者評価的な形、それを公開していくということもひとつありかなと。市場というものはその収益性というものに対して、まさに市場が厳しく評価をしてくれるわけですが、それ以外の評価というものを考えていくことは可能なのかどうか。こんな点をできればお1人でもお2人でも、手短におっしゃっていただけるとありがたいと思います。
 以上です。


堀内座長 どうもありがとうございました。いかがでございましょうか。
 それでは、佐伯さん、お願いします。


佐伯社長 サービスの件は先ほど言ったように、私は成功報酬でいいと思うんです。それなりに成功すれば。ただのサービスというのはあんまり価値のないサービスだろうと思うので。むしろ有料で構わないと思いますけれども、中小企業の現状という意味では、成功報酬的なことを考えていただければいいというふうに思います。


須田代表 2番目のスワップがらみの投融資の問題なんですけれども、やはり現在の資本市場というのはほとんどが間接金融でございまして、やっぱりオブリゲーションがどうしても伴うという意味では、これからの日本の金融というのは間接じゃなくて、直接にシフトしなくてはいけないという気持ちでございます。私自身もここ10年間で東北のベンチャー企業に17社投資しまして、残っているのは1社だけですけれども、ほとんど全部つぶれましたけれども、自分の会社は11ありますけれども、まだ生存しております。その中には、金利のランクがA、B、C、D、Gのランクもありまして、これも致し方ないなと。やはり通過点だなと。やはり歴史が検証する段階では、必ず我慢という時期があるわけでありまして、そういうことをやはり含めて、納得せえという中でお互いに金融機関と中小企業のエンドユーザーがタイアップを組んで生き延びていくような社会をつくっていくのかなと。ゲマインシャフトといいましょうか、そういう時代に是非してほしいなと思っております。


堀内座長 どうもありがとうございました。
 他にこの点、例えば三井先生からは第三者評価といいますか、地域金融がその地域なり経済なりにどの程度貢献しているかということを評価するような仕組みというようなもの、そういうような仕組みがあるということについてはどうお考えかというようなことを、エンドユーザーの方にお尋ねなんですけれども、それについて何か。
 村松さん、どうぞ。


村松会頭 それはあんまり意味が無いと思いますね。というのは、金融というのはある程度非常に専門性が高い分野であります。それとNPOの昨今の動きを見ていますと、めったやたらにいろんなところに首を突っ込んで、それで話を聞くと素人集団が集まって声を大きくしているという感じがしないわけでもございません。金融機関の特性から言って、むしろその評価は取引先にやらせるべきだと思います。預金者である、あるいは融資を受けている人、あるいは何らかの形で利用している人、こういう人たちに金融機関側が能動的に評価を求めるというスタンスをぜひ確立して、NPOといった第三者というのは私はあんまり賛成できないような気がいたします。


堀内座長 よくわかりました。
 ほかに。それでは、淵田さんどうぞ。


淵田委員 これはご質問というよりも、意見を2つ申しあげたいと思います。
 まず、ユーザーの声というのをお伺いしましたが、ユーザーという場合、資金を借りる側としてのユーザーという立場と、預金をする立場としてのユーザーの声というのがあると思います。預金者の立場に立った場合、果たして金融機関が3年に1回の検査しか受けていなくて、安心して預金を預けられるのかどうか、そこをやはり考えなくてはいけないと思います。
 2つ目は、先ほど佐伯さんからご指摘頂いた、メガバンクに対する中小企業向け貸出増加要請は、地元金融機関のためにならない、という点についてです。地元金融機関のためにならないことは、地元経済のためにならないはずです。この要請は、中小企業への配慮で導入されているものですので、もしも地域経済のためにならない、ということでしたら、それは是非そうじゃないということを地域から発信して頂くのがよろしいのではないかと思います。


堀内座長 どうもありがとうございます。
 ついでに多胡さん、ついでってすみません、ついでじゃなくて、多胡さんに。


多胡委員 わかりました。ついででちょっとお話をして。
 実は意見が1つと、ご質問させていただきたいことが1つあります。意見の方は、おそらく白川の関の北の金融機関をおそらく敵に回すようなことをいうかもしれませんけれども、この間の大阪の場合もそうだったんですが、それから他の地域でも中小企業の方と非常に接点が多い仕事をしているんですが、今日の感想、本当に企業の方が地域金融機関にこれほどやさしいところはないなと。非常にやさしいなと。逆に金融庁評判悪いなと思ったんですけれども、別に金融庁さんの肩を持つつもりはないんですが、ただそれで非常に思ったことと、その割にはお客様の声というのを例えば村松会頭の方からお話があったように、相談相手になかなかなってくれないとか、こうすれば貸せるのにというような反応がないとか、要するにまじめだけれども事務的と。要するに財務諸表を基準に話すけれども、その先がないと。実際企業の方々の声というのは情報化支援であったりマーケティング支援であったり、それから新規創業の支援であったり業態転換の支援だと。ここが対応できているのかなというのが実は、これは他の地域でも思ったんですけれども、やはり資金仲介が仕事だということですね。やはり銀行なんだみたいなところがまだあるんじゃないかと。それで、やはり銀行としては金融庁の指導に鑑みこういうことができなくなりましたみないな形で終わっているんじゃないかと。もっと踏み込みが足りないんじゃないかというのは実は思いました。
 これは他の地域でも全く同じことを思うんですが、それに対して企業の方々が結構やさしいなというのが、これは東北の方のやさしさかなと実は思いました。
 それで、ちょっと金融機関の方には非常にきついコメントかもしれませんけれども、その辺やはり考えていただかないと、単に不良資産の問題がどうだとかペイオフの問題がどうだという前に、やはりそういうところをやらないと、本当に企業と金融機関の共栄共存なんていうのは成り立たないのではないかという気が非常に強く思いました。他の地域に行きますと、そういう不満が実は企業の方からものすごく出るんです。今回、ポロポロぐらいしか出なかったので思った次第です。
 それから質問です。これは実は高田さんのお話がすごくおもしろかったので、実はぶっ飛んでいるとおっしゃったんですけれども、私全然ぶっ飛んでいると思わないんです。ぶっ飛んだ概念だと思わないんです。実は地域金融機関さんが非常に大変だというのはもう私なりにも分析しておりますし、非常に状況が厳しいと。だからそれなりにリスクを取れるための収益基盤がもっと必要だというのは思うのです。それで、まさにおっしゃった貸出だけが収入源というのはおかしいのではないかと。実は私も全く同じ意見を持っていまして、実は審議会のときにもそういうことを提案したことがあります。それで、要するにこれはおそらく高田さんのおっしゃったことというのは、地域限定の大手行に先行した地域金融機関の収益基盤拡大のための規制緩和のイメージかなと思っているんです。
 それで、ごめんなさい、ちょっと偉そうに言って申しわけないんですが、例えば農協さんなんかは銀行と同じ仕事があるんだけれども、葬儀もやっているし、保険もやっているし、いろんなことをやっていますよね。それでやらなくてもいいことまでやって損しているというのもあるのかもしれませんけれども、すみません、関係者いたらごめんなさい。その規制緩和で具体的にどういうイメージ、その地域のお客様にとって金融機関に貸出以外のものでこんなことを希望したいなというのを教えていただきたいんですが。


高田委員 規制がどういうのがあるかさえちょっとわかっていないので、実に抽象的な話になってしまうんですけれども、地域金融機関は金融全般すべてやれる金融商社みたいな、そういう存在であってほしいのかなと。保険はどうなのかわからないんですけれども、さっき言ったように証券取引所みたいな場の提供とか、それからあとは例えば我々中小の中途半端な規模になると、企業の売買とか、それからそういう業務提携とかというものを商品化していただいて、それに我々が買ったとか、金融機関が売ったとかというふうに。
 それで、本当に思うのは、何か商品化がなされていないと思うんですね。私がそば屋に行ったらせめて、そば屋だってアイテム結構ありますよね。最近はアイテムたくさんないと飽きられてしまうからって、いろんなアイテム出しているでしょう。そのアイテムを銀行さんが一生懸命考えていただきたいなと思うんです。すごく優秀な方たちたくさんいらっしゃるし、私なんか、わあ、こんな人たちがいっぱいいるんだって、この人たちの能力を何でもっと使わないのっていう部分がございます。だから、これは私は役所と金融機関の間の縛りがどうなっているかわからないから、能天気なことを言っているんですが、私もあんまり楽々と経営しているわけではなく、かなり薄氷を踏む思いでトントンとたたきながらやっているんですが、やっぱりそこら辺のちょっと銀行さんには、申しわけないんですが、足りないのかなと。


瀬谷頭取 今最初におっしゃったのは、銀行のビジネスモデルをどうするかという話なんですよ。やる気になれば、うちは優秀なやつはいっぱいいるんですよ。だから何でもできてしまうんですね。
 問題は銀行というのは免許業種なんです。やっぱりそれは信用というものを媒体にしているから、そう簡単にそば屋でメニュー1つつくるというわけにいかないということなんです。それでも徐々に投信を売ったり出てきているんだと。だからそういう意味においては、少しずつそれは行政としても何のための免許行政かということを考えながら少しずつ広げているから、それはだんだん広がっていくと思うんです、この点につきましては。だから余り心配しないでいいと。
 もう1つは、やさしいという話があった。なぜやさしいかと。大胆にいってしまえば、おれたちがよくやっているからだと。だから、リスクテイクしろなんて言ったって、うちらはもうどんどんリスクテイクしていますよ。リスクテイクした結果がうちの不良債権なんですね。だって、出したときは不良債権があるはずがないんですよ。皆正常債権ですよ。それがいろんな意味で毀損してきたんだ。それを泣き泣き抱えて、包帯したり薬打ったりしてやっているんですよ。だから、その点余り本当にこういうことなんだって、東北はいいところだと思ってください。


多胡委員 承知しました。


瀬谷頭取 それから、中小企業貸出、これはマジックでございまして、先週も金融庁あったんですけれども、必ずこう言うんですよ。健全な中小企業に資金が回らないようなことはしないでくださいって。冗談言っちゃいけない。健全な中小企業は全部資金が回りすぎるほど回っている。むしろ返されているんだと。だから、問題は、本質は、借入に困難をきたすような債務者区分で言うと、例えば破綻懸念先、あるいは要管理先と。こういうところがお金に困っているんです。それについては、今度、これは行政の問題になりますけれども、健全化という問題とバランスになるんです。だから、うちがもし自己資本比率が25%もあったらどんどん貸しちゃいますよ。
 ところが今、あんなふうに自己資本比率で痛めつけられていますと、やっぱりリスクテイクできないですよ、その問題先につきましては。そういうことを知っていながらそういうことを言っているんですから、二枚舌なんです。これはぜひ先生方も声を大にして言っていただきます。致し方ないと。
 一番最後に3年に一遍の検査ではどうこうと言っているけれども、では何のためにディスクローズしているんだと。どこに行ってもディスクローズとしては山積みです。
 そういうことですから、さっき村松さんおっしゃったように、株価であれ、それから地元の個人預金の集まり具合でいろいろ言動を見られていますから、十分ウォッチされていると。わざわざアセスメントやる必要は毛頭ないと。私はそう思っています。
 以上でございます。


堀内座長 どうもありがとうございました。
 私ごとで恐縮ですが、私の母は会津の近くで生まれまして、それで絶えず中央官庁に批判的だったということを記憶しておりまして、私の中にもそういう血が少しは流れているのかもしれないと思いまして、大変共感を持って感じはしましたが、ただ、金融の問題は非常に難しいということは事実でありまして、マクロ経済全体の状況はかなりこの金融機関の経営とか、皆さんのエンドユーザーの経営に大きな影響を与えているということは事実で、したがって、それだけで非常に機械的な対応が難しくなっているということは全くおっしゃるとおりだというふうに思います。
 しかし、そういうことは金融庁もよくわかって、こういうリレーションシップバンキングに関するワーキンググループをつくったということ自身が、ある意味ではそういうことはわかっているよというシグナルではないかというふうに私自身は勝手に思っております。
 それで、大変貴重なご意見をいただきまして、まことにありがとうございます。時間が参りましたので、時間が超過してしまいましたので、大変恐縮でございますけれども、まだ皆さんいろいろご意見があるとは思いますけれども、私としてはこれで本日の懇談会はお開きといいますか、にしたいと思います。
 どうも皆さん、ありがとうございました。


司会 パネリストの皆さん、それから委員の方々、大変お疲れさまでございました。本日の懇談会はこれにて終了させていただきます。