(仮訳)
銀行と証券会社のトレーディングおよびデリバティブ取引のパブリック・ディスクロージャーに関する提言 |
バーゼル銀行監督委員会と証券監督者国際機構(IOSCO)専門委員会による市中協議ペーパー
コメント期限:5月31日
1999年2月
バーゼル銀行監督委員会の透明性小委員会
議長:Ms. Susan Krause
Office of the Comptroller of the Currency,Washington,D.C.
Commission Bancaire et Financiere, Brussels | Mr. Luc van Cauter |
Office of the Superintendent of Financial Institutions Canada, Ottawa | Mr. Nancy Sinclair |
Commission Bancaire, Paris | Mr. Christian Delhomme |
Deutsche Bundesbank, Frankfurt am Main | Mr. Karl-Heinz Hillen |
Bundesaufsichtsamt fur das Kreditwesen, Berlin | Mr. Michael Wendt |
Banca d’Italia, Rome | Mr. Antonio Renzi |
日本銀行、東京 | 米 山 正 夫 |
金融監督庁、東京 | 石 村 幸 三 |
Commission de Surveillance du Secteur
Financier, Luxembourg |
Ms. Isabelle Goubin |
De Nederlandsche Bank, Amsterdam | Mr. Alfred Verhoeven |
Finansinspektionen, Stockholm | Ms. Brita Aberg |
Eidgenossische Bankenkommission, Bern | Mr. Rolf Gertsch |
Financial Services Authority, London | Ms. Jane Blackburn |
Board of Governors of the Federal Reserve System, Washington, D.C. | Mr. Gerald Edwards |
Federal Reserve Bank of New York | Ms. Sarah Dahlgren |
Office of the Comptroller of the Currency, Washington, D.C. | Mr. Tom Rees Ms. Inga Swanner |
Federal Deposit Insurance Corporation, Washington, D.C. | Mr. Michael J. Zamorski Mr. William A. Stark |
European Commission, Brussels | Mr. Patrick Brady |
Secretariat of the Basle Committee on Banking Supervison, Bank for International Settlements | Mr. Magnus Orrell |
IOSCO専門委員会の金融仲介機関の規制に関するワーキング・パーティ
議 長 : Ms. Richard Britton
Financial Services Authority, London
Australian Securities and Investment Commission, Sydney | Mr. Malcolm Rodgers |
Commission des Operations de Bourse, Paris | Mr. Francois Champarnaud |
Commission Bancaire, Paris | Mr. Michel Martino |
Bundesaufsichtsamt fur den Wertpapierhandel, Frankfurt am Main |
Dr. Horst Nottmeier |
Deutsche Bundesbank, Frankfurt am Main | Mr. Werner Gehring |
Bundesaufsichtsamt fur das Kreditwesen, Berlin | Mr. Uwe Neumann |
Securities and Futures Commission, Hong Kong | Mr. Richard Yin |
Commissione Nazionale per le Societa e la Borsa, Rome | Mr. Carlo Biancheri |
金融監督庁、東京 | 山 田 拓 史 |
Comision Nacional Bancaria y de Valores, Mexico City | Mr. Alfonso Orozco |
Stichting Toezicht Effectenverkeer, Amsterdam | Mr. Ge Overdevest |
Ontario Securities Commission, Toronto | Ms. Tanis Maclaren |
Commission des Valeurs Mobilieres du Quebec, Montreal | Mr. Alain Gelinas |
Financial Services Board, Pretoria | Mr. Gerry Anderson |
Comision Nacional del Mercado de Valores, Madrid | Mr. Ramiro Martinez-Pardo del Valle |
Finansinspektionen, Stockholm | Mr. Lennart Torstensson |
Eidgenossische Bankenkommission, Bern | Mr. Christopher McHale |
Financial Services Authority, London | Ms. Sarah Varney |
United States Securities and Exchange Commission, Washington, D.C. | Mr. Michael Macchiaroli |
Commodities Futures Trading Commission, Washington, D.C. | Mr. I. Michael Greenberger |
目 次
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銀行と証券会社のトレーディングおよびデリバティブ取引のパブリック・ディスクロージャーに関する提言
本ペーパーは、バーゼル銀行監督委員会とIOSCO専門委員会が共同で公表し、銀行と証券会社のトレーディングおよびデリバティブ取引のパブリック・ディスクロージャーに関する提言を行うものである。これらの提言は、国際的に活動する大規模な銀行および証券会社によるトレーディングおよびデリバティブ取引のディスクロージャーにつき、両委員会が毎年行っているサーベイを補完するものである。最新のサーベイは1998年11月に公表されている。いずれの提言も、両委員会が継続的に行ってきた努力の一環を成すものであり、銀行と証券会社が、市場参加者に対し、自らのトレーディングおよびデリバティブ取引に固有のリスクを理解してもらうために十分な情報を提供するように促すことを狙っている。
両委員会は、銀行と証券会社の業務およびリスクの透明性は、金融システムを有効に監督するうえで、鍵となる要素であると考えている。タイムリーに提供される意味のある正確な情報は、市場参加者の重要な意思決定の基盤となる。十分な情報を持った投資家、預金者、顧客、および債権者は、強い市場規律を働かせることにより、金融機関に対し、注意深くかつ定められた事業目的に適った方法で業務およびリスク・エクスポージャーを管理するよう促すことができる。
本ペーパーの提言は、以下の二つの点に沿ったものとなっている。
第一に、金融機関は財務諸表の利用者に対し、自らのトレーディングおよびデリバティブ取引の実態を正確に伝えるべきである。金融機関は、こうした取引の範囲と性質に関し、定性・定量双方の面において、意味のある概略情報を提供するとともに、それらの取引が収益構造にどのように寄与しているかを明らかにすべきである。金融機関はまた、こうした取引に伴う主要なリスク、およびそれらのリスク管理の実績に関する情報を開示すべきである。
第二に、金融機関は、自らのリスク・エクスポージャーおよびその管理実績に関し、内部的なリスク測定・管理システムから生成される情報を開示すべきである。パブリック・ディスクロージャーを内部リスク管理プロセスと結び付けることにより、ディスクロージャーがリスク測定・管理技術の革新に遅れをとらないようにすることができる。
バーゼル委員会およびIOSCO専門委員会は、銀行と証券会社が本ペーパーに示されている定量・定性双方の面においてディスクロージャーのガイダンスを実行に移すことを提言する。また、銀行と証券会社は、ディスクロージャーに係る他の国内および国際団体の提案、および国際的なレベルで同格に当たる金融機関が行っているディスクロージャーの方法も参考にすべきである。
ディスクロージャーの提言は、大規模にトレーディングおよびデリバティブ取引を行うその他の金融・非金融機関にとっても有用かもしれない。会計基準設定者、規制当局、およびその他のディスクロージャー基準設定に責任を有する機関にとっても、より良い、調和のとれたパブリック・ディスクロージャー基準を開発していく際に、本ペーパーが役に立つかもしれない。本ペーパーは、他のより広範な報告の枠組を代替ないし無効にすることを意図してはいない。
本ペーパーに掲げる提言は、両委員会が、銀行と証券会社のトレーディングおよびデリバティブ取引に係る初回の調査報告書に基づいて、1995年に発表した提言に代わるものである。前回の提言以降、金融機関によるデリバティブの利用の拡大、リスク管理技術の利用と手法の変化、およびディスクロージャーの水準や実務の継続的な向上等、様々な進展がみられた。
コメントの募集
本ペーパーは市中協議のために発表されるものである。両委員会は、規制監督機関、銀行、証券会社、業界団体、および会計基準設定者を含め、関心を有する全ての関係者に対してコメントを求める。コメントは1999年5月31日をもって受付けが締め切られ、ガイダンスの最終版を策定する際に考慮される。両委員会は、1999年後半に本ペーパーの最終版を公表する所存である。
コメントの宛先:
バーゼル銀行監督委員会事務局Mr. Magnus Orrell
国際決済銀行
CH-4002バーゼル、スイス
Fax: +41(61)2809100
E-mail: magnus.orrell@bis.org
銀行と証券会社のトレーディングおよびデリバティブ取引のパブリック・ディスクロージャーに関する提言
1999年2月
1. | 本ペーパーは、バーゼル銀行監督委員会1(以下、バーゼル委員会)と、証券監督者国際機構2(同、IOSCO)の専門委員会が共同で公表し、銀行と証券会社のトレーディングおよびデリバティブ取引3のパブリック・ディスクロージャーに関する提言を行うものである。これらの提言は、両委員会が1995年以来毎年公表してきている銀行と証券会社のトレーディングおよびデリバティブ取引のディスクロージャーに関するサーベイを補完するものである4。何れの提言も、両委員会が継続的に行ってきた努力の一環を成すものであり、銀行と証券会社が、市場参加者に対し、自らのトレーディングおよびデリバティブ取引に固有のリスクを理解してもらうために十分な情報を提供するように促すことを狙っている。 |
2. | 両委員会の行ってきた努力は、金融の安定を促進するうえで透明性が重要であることを記したG7諸国首脳および蔵相の声明と整合的であり、その支持を受けている。これらの声明においては、金融機関の財務状況、業況、業務活動、リスク構造、およびリスク管理実務の透明性が向上すれば、市場規律の有効性が高まり、金融市場が健全かつ効率的に機能することが認められている。このように、透明性の向上は、個別金融機関および金融システム全体の安全性と健全性の促進を狙った監督当局の努力を補完するものである。本提案は、各国の様々な会計およびディスクロージャーの枠組の中で求められる報告およびディスクロージャーの要件を補完するものとなろう。本ペーパーは、他のより広範な報告の枠組を代替ないし無効にすることを意図してはいない。 |
3. | 本ペーパーは、バーゼル委員会の透明性小委員会5とIOSCOの「金融仲介機関の規制に関するワーキング・パーティ」6の協力の下に作成された。本ペーパーに示されている提言は、両委員会が1995年に発表した提言に代わるものである7。 |
4. | 本ペーパーの目的は、ディスクロージャーの適切なあり方に関するガイダンスを示すことにより、大規模な銀行・証券会社のトレーディングおよびデリバティブ取引の透明性を高めることにある。本提言は、その他のトレーディングおよびデリバティブ取引を行う金融・非金融機関にとっても有用かもしれない。会計基準設定者、規制当局、およびその他のディスクロージャー基準設定に責任を有する機関にとっても、より良い、調和のとれたパブリック・ディスクロージャー基準を開発する際に、本ペーパーが役に立つかもしれない。 |
5. | バーゼル委員会およびIOSCO専門委員会は、意味のあるパブリック・ディスクロージャーに基づく透明性は、健全なリスク管理実務を促進し、金融市場の安定性向上を狙った監督当局の努力を補強するという重要な役割を果たすものと確信している8。透明性が向上すれば、銀行や証券会社自身も、取引相手に対する自らのエクスポージャーを評価・管理する能力が高まり、さらには、金融システムにストレスが発生した時に市場の噂や誤解により被害を被る可能性が低下するというかたちで利益を受ける筈である。 |
6. | 総論に続く第 II 部では、トレーディングおよびデリバティブ取引の透明性を高めることの重要性を論じる。また、この分野におけるディスクロージャーについて、規制当局、基準設定者、および業界団体が近年とってきた対応に言及する。 |
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7. | 第 III 部では、トレーディングおよびデリバティブ取引に深く関わっている大規模な銀行および証券会社に対し、同取引の適切なディスクロージャーに係るガイダンスが示されている。それらの提言は、以下の二つの点に沿ったものとなっている9。
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8. | バーゼル委員会およびIOSCO専門委員会は、銀行と証券会社が、本ペーパーに示されている定量・定性双方のディスクロージャーに向けた提言を実行に移すことを奨励する。また、銀行と証券会社は、第 II 部に言及されているものを含め、会計基準設定者や規制当局等、他の国内および国際団体のディスクロージャーに関する提言も考慮すべきである。さらに銀行と証券会社は、両委員会が1998年11月に発表したトレーディングおよびデリバティブのディスクロージャーに関するサーベイに概説されているとおり10、国際的なレベルで同格に当たる金融機関が行っているディスクロージャーの方法も参考にすべきである。 |
(1)トレーディングおよびデリバティブ取引を透明化することの重要性
9. | クラウス・レポートに論じられているとおり、市場規律は、リスクを効果的に管理する金融機関に報酬を与え、一方、リスク管理が脆弱ないし効果的ではない金融機関にペナルティーを課すことによって監督目的を補完する。タイムリーに報告される意味のある正確な情報は、市場参加者の意思決定の重要な基盤となる。十分な情報を持った投資家、預金者、顧客、債権者、およびその他の取引相手は、強い市場規律を働かせることにより、金融機関に対し、注意深くかつ定められた事業目的に適った方法で、業務およびリスク・エクスポージャーを管理するよう促すことができる。 |
10. | トレーディングおよびデリバティブ取引に伴うリスクは、一般に、より伝統的な銀行・証券業務に関わるリスクと同様のものを含んでいる一方、こうした取引の金融リスク管理は、極めてダイナミックなプロセスになってきており、そこでは短期間に大規模な損益が発生する可能性が潜在していることが十分に実証されている。トレーディングおよびデリバティブ取引に関するタイムリーかつ信頼性のある情報は、金融機関の経営状態、業績、およびリスク構造を正確に評価するために不可欠であるが、これまで、こうした取引に纏わる透明性については、情報利用者の満足がいく水準まで達していないほか、取引増大や複雑化に対応していないとみなされることが多かった11。 |
11. | 銀行と証券会社に対し安全かつ健全な実務を促すことができるように市場参加者の能力を高めるためには、パブリック・ディスクロージャーによって、トレーディングおよびデリバティブ取引が金融機関全体のリスク構造および収益性にどのように寄与しているのか、また、同取引から生ずるリスクを当該金融機関がいかに巧く管理しているのかといった点について、包括的な情報が提供されることが重要である。当該金融機関の財務状況や業況見通しを意味のある形で伝えるためには、十分な頻度と適切なタイミングで情報提供が行われなければならない。トレーディングおよびデリバティブ取引の場合、銀行・証券会社はポジションやリスク構造を急速に変化させることができるので、ディスクロージャーがタイムリーかつ将来を見通した形で行われることは、特に重要である。会計期間中にトレーディングおよびデリバティブのポジションや戦略が変化した場合、次年度ないし次回半期報告まで当該情報のディスクロージャーを遅らせることは不適当である。実際、大多数の証券取引所は上場企業に対し、株価に影響を及ぼす新しい情報があれば直ちに市場に伝えるよう求めている。 |
12. | また、情報は比較可能でなければならない。市場参加者やその他の情報利用者は、異なる金融機関同士や国家間、あるいは時系列で比較が可能な情報を必要としている。銀行間、国家間の比較が可能であれば、情報利用者は、金融機関の相対的な財務状況や業績を他の金融機関との比較において評価することができる。時系列の比較可能性はトレンドを見極めるために必要である。 |
13. | ディスクロージャーは、重要性(materiality)の基準に従って12、各金融機関のトレーディングおよびデリバティブ取引の規模と性質に比例したものとすべきである。例えば、金融機関によっては、広範な現物およびデリバティブ商品についてマーケット・メーカーとなっている場合もあれば、主として自身のリスク管理目的でデリバティブを用いている場合もある。トレーディングおよびデリバティブ取引に関する情報をどの程度開示するかという判断は、それらの取引が当該金融機関の全体の業務、収益、およびリスク構造にどの程度重要であるかという観点から決定されるべきである。 |
14. | 銀行と証券会社は、自らのトレーディングおよびデリバティブ取引について意味のあるディスクロージャーを行うことに関心を払うべきである。自らのリスク構造について僅かな情報しか提供しない金融機関は、ストレス発生時に市場の噂や市場参加者の誤解に晒され易くなり、その結果として、取引相手が取引から手を引いたり、資本調達コストが上昇したり、資金調達が困難化したりすることもあり得る。さらに、こうしたディスクロージャーが行われれば、金融機関は取引相手のリスク構造をより明確に把握することが可能になり、リスク管理が向上するとともに、より充実した情報に基づいて経営判断を下すことができる。 |
15. | 銀行と証券会社のディスクロージャーの実務は、各々の金融機関におけるトレーディングおよびデリバティブ取引、ならびにこうした取引を管理するための内部システムの拡大と技術革新を反映するとともに、そこから遅れをとらないようにすることが重要である。理想的には、リスクを測定・管理するために各金融機関が内部的に用いているアプローチに則してパブリック・ディスクロージャーが行われ、その結果として、リスク管理実務の向上がパブリック・ディスクロージャーに反映されることが望まれる。既に内部的に作成されている情報をリスク管理のために用いれば、パブリック・ディスクロージャーの向上に伴うコストと事務負担が軽減されることにもなる。 |
16. | トレーディングおよびデリバティブ取引の透明性は、金融システムを有効に監督するための鍵となる要素である。金融革新が急速に進み、金融取引が複雑化する環境の下、銀行と証券会社の強固な内部リスク管理・コントロールは、健全性に関する監督やより高度なパブリック・ディスクロージャーの実務に補完されつつ、安定的な金融システムを育成するための枠組みを提供する。 |
17. | バーゼル委員会およびIOSCO専門委員会の他にも、幾つかの国内および国際機関がトレーディングおよびデリバティブ取引のディスクロージャーに係る基準、提案、ないしルールを発表している。こうした発案の多くは、既に現行のディスクロージャー実務に影響を与えているか、もしくは将来の慣行に影響を与えることが予想される。こうした提案が国内の強制的な規制を超える場合には、金融機関は、自らのトレーディングおよびデリバティブ取引のディスクロージャーの比較可能性と質の向上を図る目的で、それらを検討することが望ましい。
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