(仮訳)

プレス・リリース

1999年 7月27日

 

バーゼル委員会が信用リスクに関する指針を公表

 

 バーゼル銀行監督委員会は本日、銀行業務に付随する信用リスクの様々な側面について、銀行および銀行監督当局に指針を与える4つのペーパーを公表した。これらのペーパーは、銀行のリスク管理の手続を強化するために当委員会が継続的に行っている努力の一環を成すものである。バーゼル委員会の議長であり、ニューヨーク連邦準備銀行の総裁兼CEOであるWilliam J McDonough氏は、「過去の実例が示すとおり、脆弱な信用リスク管理体制や質の低い与信は、銀行および銀行システムの安定を脅かしかねない。バーゼル委員会は、全世界において安全かつ健全な銀行および銀行システムを育成する努力の一環として、信用リスクに関する指針を本パッケージとして公表する」と述べている。

 

最終版のペーパー

貸出金および貸倒損失金の会計処理

 「貸出金の会計処理および開示についての健全な実務のあり方」と題するペーパーにおいては、貸出金および貸倒損失金の会計処理に関し銀行および銀行監督当局が直面する一連の問題が取扱われている。オランダ中央銀行の理事であり、本指針を作成したバーゼル委員会の会計タスク・フォースにおいて議長を務めるArnold Schilder氏は、「貸出金の会計処理を健全かつ慎重に行うことは、銀行内部において信用リスクを適切に管理統制するための決定的要素であるにとどまらない。こうした健全な実務は、財務報告が正確かつ透明性のある形でなされることを確保するため、また銀行の自己資本を慎重に算出するためにも重要である」と述べている。

 貸出金の会計処理に関する本ペーパーは、1998年10月に公表された市中協議用ペーパーの改訂版である。Schilder氏は、「協議用ペーパーに対しては、世界中の銀行関係者、会計士、会計基準設定主体、規制監督当局をはじめ、広範な国々および組織からコメントが寄せられた。全般的な支持を表明する多数のコメントに加え、幾つかの重要な問題が提起された。既存の国際的指針がカバーしていない部分を埋めるため我々が行っている作業に、こうしたコメントを寄せることにより参加して下さった多くの人々の多大なる貢献に対して、この機会に謝意を表する」と述べている。

 

本年11月30日を期限としてコメントを募集するペーパー

1.信用リスクの管理

 「信用リスク管理の諸原則」と題する市中協議用ペーパーは、全世界の銀行監督当局に対し、信用リスク管理が健全に実行されるよう奨励するものである。本ペーパーにおいては、バンキング勘定とトレーディング勘定、あるいはオンバランスとオフバランスの別を問わず、銀行は全ての業務から発生する信用リスクを管理しなければならないことが強調されている。本ペーパーは、次の事柄に関係する17の原則を中心に構成されている:(1)信用リスクを取りまく適切な環境の確立、(2)健全な信用供与プロセスの下での業務運営、(3)適切な与信の管理、測定、モニタリングのプロセスの維持、(4)適切な信用リスク・コントロールの確保、および(5)監督当局の役割。

 リスク管理小委員会の共同議長であるRoger Cole氏は、「G10諸国、非G10諸国を問わず、銀行に発生する問題の多くは依然として信用リスク・エクスポージャーに起因する。近年の出来事が示すとおり、個々の銀行における健全な与信基盤は世界的な金融システムの安定の鍵である。本ペーパーに提示されている実務指針は、本日公表された健全な実務指針に関する他のペーパーと併せて適用されるべきである」と述べている。

 

2.信用リスクのディスクロージャー

 「信用リスクのディスクロージャーに関する最善の実務」と題する市中協議用ペーパーは、銀行に対して意味のある評価を行うため、市場参加者および監督当局が必要としている信用リスク情報のタイプを示すとともに、全ての国の銀行に対し、そうした情報を一般向けに提供することを促すものである。本ペーパーは、会計方針と実務、信用リスク管理、信用エクスポージャー、与信の質、および収益の5分野に大別してディスクロージャーに関する提言を行っている。本ペーパーに掲げる最善の実務の指針は、与信業務のみならず、全てのタイプの銀行業務における信用リスクのディスクロージャーについて論じた、包括的な提言となっている。

 米国通貨監督庁の国際関係担当副長官であり、本ペーパーを作成したバーゼル委員会の透明性小委員会において議長を務めるSusan Krause氏は、「十分な情報を得た投資家、取引相手、およびその他の市場参加者の存在は、銀行を巡る安定的で健全な環境の重要な一要素である。我々は、様々な国で、現在行われている信用リスクのディスクロージャーの実務を調査し、また広範な情報利用者と面談を行った。その結果、信用リスクについては、既存の情報以上に包括的かつ正確な情報がはっきりと求められていることが明らかになった。本ペーパーの公表は、不足している点を埋めるための努力である」と述べている。

 

3.外為決済リスクの管理

 「外為取引における決済リスクを管理するための監督上の指針」と題する市中協議ペーパーは、信用リスクに関する指針のパッケージの一部として公表される。何故なら、決済リスクは明らかに信用リスクとしての側面を有しているからである。本ペーパーに示された指針は、国際決済銀行の支払・決済システム委員会による作業の成果、特に、同委員会の報告書「外為取引における決済リスクについて」(1996年3月)および「外為決済リスクの削減について−経過報告−」(1998年7月)を踏まえたものである。本ペーパーにおいては、外為決済リスクの管理は、適切な方針、手続、およびエクスポージャー限度を含む正式なプロセスを通じ、かつ、経営陣の適切な監視の下で行われるべきである旨強調されている。また、本ペーパーには、監督当局がオンサイトの検証に際して銀行に提示する外為決済リスク関連の質問集が含まれている。

 バーゼル委員会のリスク管理小委員会において共同議長を務めるChristine Cumming氏は、「決済リスクはあらゆるトレーディング対象商品に存するが、外国為替市場の規模に照らせば、多くの銀行にとって外為取引は決済リスク・エクスポージャーの最大の発生源である。従って、銀行が外為決済リスクを適切な手法で管理していることを監督当局が確認することが重要である」と述べている。

 

コメントの募集

 リスク管理とディスクロージャーに関する3つのペーパーは、市中協議のために公表されるものである。バーゼル委員会は、銀行関係者、格付会社、アナリスト、業界団体、会計基準設定主体、および監督当局をはじめ、関心を有する全ての関係者に対してコメントを求める。コメントの受付は1999年11月30日迄とする。寄せられたコメントは、ペーパーの最終版を作成するに当って考慮される。

 


バーゼル銀行監督委員会

 バーゼル銀行監督委員会は、1975年にG10諸国の中央銀行総裁会議により設立された銀行監督当局の委員会である。同委員会は、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ルクセンブルグ、オランダ、スウェーデン、スイス、英国および米国の銀行監督当局ならびに中央銀行の上席代表により構成される。現在の議長は、ニューヨーク連邦準備銀行のWilliam J McDonough総裁兼CEOである。委員会は通常、常設事務局が設けられているバーゼルの国際決済銀行において開催される。

 

リスク管理小委員会

 バーゼル委員会のリスク管理小委員会は、リスク管理と内部管理の幅広い分野における、銀行監督者向けのガイダンスの作成や銀行業界における健全な業務促進を使命としている。同小委員会の共同議長を務めるのは、米国連邦準備制度理事会のアソシエイト・ディレクターであるRoger Cole氏と、ニューヨーク連邦準備銀行のシニア・ヴァイス・プレジデントであるChristine Cumming氏である。リスク管理小委員会の作成したレポートには以下のものが含まれる。

 

透明性小委員会

 バーゼル委員会の透明性小委員会は、委員会がパブリック・ディスクロージャーおよび監督当局への報告に関する諸問題を検討するに当って主たる責任を有する。同小委員会の議長は、米国通貨監督庁の国際関係担当副長官であるSusan Krause氏が務めている。透明性小委員会の作成したレポートには以下のものが含まれる。

 

会計タスク・フォース

 バーゼル委員会の会計タスク・フォースは、委員会が会計および監査に係る諸問題を検討するに当って主たる責任を有する。同タスク・フォースの議長は、カナダ金融監督庁の次長であるNick LePan氏の後を襲って、オランダ中央銀行の理事であるArnold Schilder氏が1999年1月以降務めている。

 

本レポートの全文をどこで入手できるか

 本日公表された4つのレポートのテキストは、1999年7月27日の中央ヨーロッパ標準時(CET)の12時半より、インターネット上のBIS website(http://www.bis.org)から入手することができる。また、バーゼル委員会の事務局やバーゼル委員会のメンバーである銀行監督当局や中央銀行からも入手可能である。

 

問い合わせ先

金融監督庁 国際室

 石村(内線3156)、近藤(内線3162)

 


外為取引における決済リスクを管理するための監督上の指針 信用リスクのディスクロジャーに関する最善の実務
信用リスク管理の諸原則 貸出金の会計処理および開示についての健全な実務のあり方

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