ポ イ ン ト

 

1. リスク管理債権の状況

 11年3月末の預金取扱金融機関全体のリスク管理債権の総額は、38.7兆円と、10年3 月末の38.0兆円と比較し微増(10年3月末について長銀・日債銀を除いたベースで比較すると、3.9 兆円の増加)。

これは、主に、
 
(1) 11年3月期に一部金融機関において未収利息を不計上とする貸出金の範囲を拡大したこと(注1)による増加(約5.6 兆円)、
 
(2) 昨年の集中検査の結果を踏まえた計上基準の統一等による貸出条件緩和債権額の増加(約4.1 兆円)、
 
といった要因があるなかで、
 
(3) 景気の低迷等を背景に破綻先債権及び延滞債権が増加(約1.0 兆円)した反面、
 
(4) 一部金融機関において、部分直接償却(注2)により約6.2 兆円のリスク管理債権をバランスシートから落とす処理を行ったことによる。

 

2. 個別貸倒引当金の状況

 11年3月末の預金取扱金融機関全体の個別貸倒引当金の残高は、10年3月末の17.6兆円(長銀・日債銀を除く)から14.8兆円に減少したが、部分直接償却考慮後の残高は、21.0兆円と、3.4 兆円(19.3% )の増加となっている。

 

3. 自己査定の状況

 11年3月末の預金取扱金融機関全体の自己査定の結果(償却・引当後)をみると、 II 〜 IV 分類の額は、10年3月末の81.2兆円(長銀・日債銀を除く)から80.6兆円に減少した。特に、 III 分類については、不良債権処理の進捗等により、5.8 兆円から3.9 兆円に減少した。

 

4. 全国銀行の不良債権の処分損の推移

 昨年の集中検査の結果や、主要行においては金融再生委員会の定めた公的資本増強の審査にあたっての償却・引当基準を踏まえ、積極的な不良債権処理が行われた結果、10年度の全国銀行の不良債権の処理額は、13.6兆円と、過去最大規模となった。
 また、平成4年度からの累計の処理額は、58.8兆円にのぼるが、このうち直接償却等による処分損の累計は、その4割強に相当する24.6兆円となった。
 

(注1) 「未収利息を不計上とする貸出金の範囲の拡大」とは、破綻懸念先以下の債務者に対する貸出債権について、元本等の回収可能性に問題がある債権として未収利息の計上を行わないこととし、リスク管理債権(延滞債権等)とすることをいう。
 
(注2) 「部分直接償却」とは、破綻先及び実質破綻先に対する担保・保証付債権について、担保等による回収が不可能な額( IV 分類)に対し、個別貸倒引当金の計上ではなく、直接償却することをいう。

 


(参考)リスク管理債権、金融再生法に基づく資産査定、自己査定の違い

 

  リスク管理債権 金融再生法に基づく資産査定

自己査定

目  的

ディスクロージャー ディスクロージャー 適正な償却・引当を行うための準備作業

対象資産

貸出金 総与信(貸付有価証券、貸出金、外国為替、未収利息、仮払金、支払承諾見返) 総資産(ただし、当局による集計結果は、総与信ベース)

区分方法

債権の客観的な状況による区分
(=債権ベース、但し、一部金融機関においては、金融再生法と同様の債務者ベースによる区分を実施)

(破綻先債権、延滞債権、3か月以上延滞債権、貸出条件緩和債権)

債務者の状況に基づく区分(=債務者ベース)

 

(破産更生等債権、危険債権、要管理債権、正常債権)

債務者の状況に基づき区分(破綻先、実質破綻先、破綻懸念先、要注意先、正常先)した上で担保による保全状況を勘案して、実質的な回収可能性に基づき分類
( I 〜 IV 分類)
担保・引当カバー
部分の扱い
担保・引当カバー部分も含まれている。 担保・引当カバー部分も含まれている。 引当カバー部分は I 分類。担保のカバー状況は分類において勘案される。

 


自己査定、再生法開示及びリスク管理債権の関係

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