平成11年11月26日
金 融 監 督 庁
 
第6回自動車損害賠償責任保険審議会懇談会議事概要について

 

 第6回自動車損害賠償責任保険審議会懇談会(平成11年11月4日(木)開催)の議事概要は、別紙のとおり。

 

担当者:金融監督庁監督部保険監督課 重藤、加藤

連絡先:電話(代表)3506−6000 内線3375、3431

 本議事概要は暫定版であるため、今後修正がありえます。


第6回自動車損害賠償責任保険審議会懇談会議事概要
 

.日  時   平成11年11月4日(木) 14時00分〜16時20分

 

.場  所   中央合同庁舎第四号館第三特別会議室

 

.議  題 
 
(1)  自賠責保険の保険料について
 
(2)  自賠責保険の保険金額について
 
(3)  無責事故等及び過失相殺の取扱について

 

.議事概要
 
 議事は、3つの議題それぞれについて、まず事務局が資料に沿って説明を行い、次いで議論を行うという形で行われた。
 各議題に関し、委員から出された意見等の概要は以下のとおり。
 
(1)  自賠責保険の保険料について
 
 前回の料率改定の際に累積運用益等を中期的に保険料に還元していく枠組みを決め、現在の保険料はその考え方に沿ったものとなっているが、その後の実際の損害率等の状況を踏まえ、そうした枠組み自体についても議論すべき。
 
 ノーロス・ノープロフィット原則を踏まえた社費のあり方について、損保業界としても問題意識をもって勉強中であり、今後、見直しの作業を進めて行きたい。
 
 保険料率の議論をするに当たっては、損害率の推移だけでなく、保険金限度額等のあり方も踏まえ検討する必要がある。
 
 損害率が改善した分については、ユーザーへの還元というのも一つの考え方だが、将来、積立金残高が枯渇すると急激な保険料の引上げが必要になるので、将来世代の保険料の引上げ抑制のために、ある程度はファンドを留保しておくべき。
 
 追加保険料については、事故車と無事故車の保険料負担の公平性の確保、事故抑制を目的とするものであるが、実際の追加保険料の設定の仕方や金額から考えてその効果には疑問があり、他方、追加保険料の徴収のために要する事務ロードが大きく、廃止すべき。
 
 もし追加保険料を廃止するとすれば、それに代わる方法を考える必要がある。
 
(2)  自賠責保険の保険金額について
 
 損害賠償責任を保障するという自賠法の目的に照らし、重度後遺障害者に対してだけ保険金額を引き上げるというのはいかがか。任意保険、社会保障全体、交通事故以外の原因による重度後遺障害者との関係なども十分考慮して判断すべき。
 
 従来は死亡の場合の保険金額を一番高く設定し、後遺障害については第1級を死亡と同額とする形となってきているが、近年は、救急救命医療の発達等により、命は長らえるが関係者の手厚い介護が必要というようなケースが増加してきている。賃金や物価の動向といった観点から保険金額見直すのがオーソドックスではあるが、それとは別に、理由を限定、特定しての見直しも必要ではないか。
 
 死亡の場合の保険金額については、任意保険の普及状況やカバー率の状況等を踏まえれば引上げる必要性は小さいのではないか。
 
 重度後遺障害の場合については、常時介護を要する被害者の経済的な負担を補う意味から、従来の後遺障害の保険金額とは別枠で、将来の介護料を支払う制度を施設すべき。
 
 介護に対して社会的な最低基準としてみるという姿勢を明らかにするためにも、常時介護を要する場合だけか随時介護も含めるかという問題はあるが、明確に別枠にして給付を厚くすべき。
 
 傷害の保険金額については、カバー率の状況、限度額を引き上げた場合の保険料への影響、診療報酬基準案の浸透状況等を踏まえ、慎重に検討すべき。
 
 傷害の保険金額については現行のままでいいのかとの問題意識がある。任意保険に切り替わると支払に差が出るという現状がある。
 
 保険金限度額の引上げの必要性と、賠償責任は本来的には加害者が個人の全責任を負うものという、相反する2つの要請を調整するための知恵としてカバー率という概念が出来てたのではないか。それであれば、カバー率が低い重度後遺障害の保険金額を引き上げることには、それなりに合理性がある。
 
 従来と異なり、今日では任意保険が普及し、実際の被害は任意保険で大部分がカバーされている。そうした中で、一般市民たるもの任意保険にも加入すべきという考え方をとるのか、任意保険は別の世界だから任意保険のことは考えずに決めるのか、という点を考える必要がある。
 
 介護に要する費用という、結果的な損害をどこまでカバーするかというのは、自賠責保険制度の基本的な性格に大きくかかわってくる問題。
 
 保険料の問題と保険金額の問題を含め、何らかの仮定計算のようなものを示してほしい。
 
(3)  無責事故等及び過失相殺の取扱について
 
 無責事故については、心情的には多少理解できる面もあるが、自賠責制度の性格はあくまでも賠償責任保険であり、無責事故までカバーすることとなると、責任の判定があいまいになることが危惧されるので、慎重に考えるべき。
 
 運輸大臣懇談会の報告書に書かれている制度例に関し、任意保険や労災保険などから保障を受ける者は除外するという条件がついているが、任意保険に入っているか否かは本人の意思に左右されるファクターであり、そうしたファクターに着目して、かつ、それでも同じ保険料を負担する保険集団を形成するというのは、保険技術上、問題があるのではないか。
 
 有責か無責かの判定が困難な場合が多いという問題と、無責事故まで保障をするというのは、別個の問題。責任保険である以上、その中に無責を入れるというのは理屈が合わない。無責事故の被害者を救済する方法は他にもある筈。
 
 無責となったことにより何らの保障も得られない被害者を救済できないかという考え方は一定の理解はできるが、以下の点に鑑みれば、慎重に検討すべき。
 加害者の賠償責任を保障するという自賠法の趣旨、目的にそぐわない。
 自己の過失によって生じた損害の回復は任意保険、傷害保険、生命保険等といった自助努力に委ねられるべきであり、現状では、こうした保険が普及している。
 新たに無責事故の被害者まで救済すると保険料の上昇要因になる。
 自己の過失が100%で損害賠償請求ができないというケースは、自動車事故のみで発生するものではなく、本来、社会保障制度等、他の枠組みで検討すべき。
 自己の過失が100%であり、かつこれだけ任意保険が普及している現状で、任意保険未加入のドライバー等に限定して保障を行うことに、自動車ユーザーや国民の多数の社会的納得感が得られるか疑問。
 
 無責事故の被害者に何らかの保障を行うことが、自賠法の法目的、趣旨に乖離しているというのは承知しており、これを導入しようと思えば、自賠法1条とか3条の改正、あるいは別法の必要があるのではないかという議論も必要。
 
 事故原因の究明が曖昧になるのではないかという指摘も無理からぬところであるが、運輸大臣懇談会の報告書の制度例では、給付額を、死亡事故で9割過失の場合の支払保険金額1,500万円の半分の750万円にして、そうした差を付けることにより事実関係の究明の努力が曖昧になることを回避しようとしている。
 
 死亡無責事故は、平成8年度までの年間700〜800件程度から9年度には373件に減少していることからみて、8年度までの被害者の中には本来は加害者にも過失があったのに無責事故と判定された者もいたのではないか。
 
 原因究明というのはケース・バイ・ケースであり、原因究明の科学的な手法の向上は図られているが、残念ながら、現時点でも一定の限界があると言わざるを得ないのではないか。
 
 死亡無責事故の件数が9年度に減少しているのは、ケース・バイ・ケースで判定した結果。また、9年度から調査の仕組みを変えたために調査に時間がかかるようになった等の要因もある。10年度には死亡無責事故の件数は増加しており、9年度の減少は一時的なずれではないか。

 

次回の自動車損害賠償責任保険審議会懇談会は、11月30日に開催予定。
 

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