平成11年6月30日
金 融 監 督 庁

 

第2回自動車損害賠償責任保険審議会懇談会議事概要について

 

 自動車損害賠償責任保険審議会懇談会(平成11年6月14日(月)開催)の議事概要は、別紙のとおり。

 

担当者:金融監督庁監督部保険監督課 田内、中林

連絡先:電話(代表)3506−6000 内線3336、3340

 本議事概要は暫定版であるため、今後修正がありえます。


第2回自動車損害賠償責任保険審議会懇談会議事概要
 

1.日  時  平成11年6月14日(月)14時00分〜16時00分

 

2.場  所  中央合同庁舎第四号館第三特別会議室

 

3.議  題  参考人からの意見陳述及び質疑
 
・西崎哲郎氏  (経済評論家、中央省庁等改革推進本部顧問、運輸省「今後の自賠責保険のあり方に係る懇談会」座長)
 
・二木雄策氏  (姫路獨協大学経済情報学部教授、神戸大学名誉教授、「交通死〜命はあがなえるか」の著者)
 
・西島梅治氏  (法政大学法学部教授、日本交通法学会理事)

 

4.議事概要 
 
(1)  西崎参考人からの意見陳述及び質疑
 
 意見陳述
 「運輸省の『今後の自賠責保険のあり方に係る懇談会』の座長としての立場で同懇談会の検討状況を申し上げる。この懇談会は交通事故の被害者保護のあり方を見直せとの自民党行革本部の指示によってスタートしたものであるが、被害者保護の維持・改善を基軸に、政府再保険の廃止をはじめ、民営化の是非など関連する制度問題についても、一切の制約なしに議論を進めている。現在まで、強制保険制度、自賠責保険と任意保険の二本建て制度、ノーロス・ノープロフィットの原則については、業界代表も含め現状維持で合意ができている。手続の簡素化については、具体的な検討を開始している。政府再保険の廃止問題については、業界が廃止を要望し、被害者代表が反対していることから、論点整理では両論併記としている。また、政府再保険の廃止問題については、運輸省は被害者保護が後退しないような制度設計、政府保障事業の維持、安全対策や被害者救済対策に関わる政策支出に支障が生じないことなどが満たされれば、政府再保険の廃止は可能であるとの考え方を明らかにしている。同時に、強制保険という性格上、ユーザーの利益を考える必要がある。政府再保険の廃止には国会における法改正が前提となるわけで、これらの諸点を踏まえ業界委員に対し、政府再保険廃止の場合のメリットを明らかにするよう座長として要望しているところである。
 今後は、9月末を目途に検討を進め、懇談会の報告書がまとまったら、自民党及び自賠責審議会にも報告書を提出し、そこで審議していいただきたい。運輸省の懇談会の結論は自賠責審議会で変更しても構わないと運輸大臣も言っている。」との発言があった。
 
 質疑等
 委員から「政府再保険を廃止した場合等の具体的なイメージを、ユーザーに分かりやすい形で提示し、判断してもらう場面が必要だと思う。」との発言があり、これに対し参考人から「具体的なものをまとめて、パブリック・コメントに付し、そこで出た意見も参考にしながら、最終的な報告をまとめたい。」との発言があった。
 また、他の委員から「民間でできる部分は民間が行うのは当然であるが、何らかの公的な役割が入ってもいいのではないか。被害者保護を担保するためには、例えば保険金支払いに関する部分について、運輸省が運輸省的な考え方だけで行わずに、金融監督庁と運輸省との間で新たな枠組みが作れないものか。」との発言があり、これに対し参考人から「保険金支払いの適正性は運輸省の監督権限であり、保険契約については金融監督庁が監督している。今後、政府再保険を廃止した場合の監督をどうするか検討する必要がある。」との発言があった。
 このほか、他の委員から「自算会を中立化し、医療機関が直接保険会社と交渉しないですむ形にならないものか。」との意見もあった。

 

(2)  二木参考人からの意見陳述及び質疑
 
 意見陳述
 「交通事故被害者の一人として出席した。刑事、民事においていろいろな経験をしてきたが、それは心の痛手を癒すこととは反対の体験であった。
 自動車保険とその他の保険とでは基本的に違う点がある。火災保険や海上保険等においては、保険金は契約者が受け取るが、自動車保険の保険金は保険契約の当事者ではない第三者である被害者が受け取ることになる。保険契約は経済行為であり、効率性や利便性といった経済性がその基本となっているが、被害者の立場から要求するのは、経済性ではなく人間性である。すなわち、その根本の原理自体が違っている。
 我が国における金融ビッグバン、自由化によって最適な状態に達することができるのは、自由化等の競争に直接参加した者であって、第三者である被害者ではない。被害者には経済性や利便性を追求した結果のしわ寄せがくるのではないか。保険契約の当事者である契約者あるいは保険会社の経済性や利便性だけを考えていたのでは、保険の問題や交通事故の問題は解決しないと思う。」との発言があった。
 
 質疑等
 委員から「被害者救済の仕組みは、責任保険制度ではなく、その他のシステムにすべきということなのか、あるいは責任保険制度を改善した方が良いのか。」との発言があり、これに対し参考人から「これが一番いい保険システムであるという考えはないが、人間性を強調するのであれば、任意保険ではなく、自賠責保険を望ましい方向に持っていくことが必要ではないか。」との発言があった。また、他の委員から「被害者保護のための財源は、契約者の負担となる。強制保険である自賠責保険の保険料はできるだけ安くすることが大原則だと思う。被害者保護を拡大する場合は、社会的なコンセンサスが必要ではないか。」との発言があり、これに対し参考人から「強制保険の問題は、保険料が安いか高いかではなく、被害者を如何に救済するかであると思う。」との発言があった。

 

(3)  西島参考人からの意見陳述及び質疑
 
 意見陳述
 「結論から申し上げると、○被害者救済に必要な資金を誰から、どのように徴収すべきか、○救済資金を迅速、確実、公平に分配するシステムを構築すべき、○契約者保護と被害者保護の両方を達成すべき、○政府再保険については、過去の経験等を尊重しなければならないが、無批判に尊重するべきでなく、自賠責保険制度創設の原点に立ち返ってシステムの再構築を図るべき、ということである。
 自賠責保険の再保険については、法律的な意味での再保険ではなく、国と民間が6対4で共同保険をしているような感じがする。また、元受損保会社と再保険会社との関係は、再保険のボルドロを送って、元受保険者が再保険者から再保険金を受け取る取引であり、再保険が元受保険者をコントロールするという機能は契約上は出てこないのではないか。
 自賠法制定当時は損保業界のキャパシティーが非常に小さく、非常に貧弱であった。現在では国と民間の力関係が逆転しているのではないか。例えて言うと、当時の損保業界は幼児期であり、その後見人として再保険があったと思うが、一人前になった後も国が後見人的な役割を続ける必要があるのか。」との発言があった。
 
 質疑等
 委員から「保険制度では何をカバーすべきなのか。逸失利益まで含めると、無限に拡大していく可能性がでるのではないか。」との発言があり、これに対し参考人から「事故形態は変わってきており、同一人が被害者になることもあれば同時に加害者となることもある状況となっている。被害者、加害者という区分をする意味が薄れてきている。賠償額は、どの程度まで逸失利益、慰謝料、治療費を持つのが合理的であるかについて、どのようにコンセンサスが得られるのかで決まってくるのではないか。」との発言があった。
 また、他の委員から「被害者救済の制度について、具体的なアイデアはあるのか。」との発言に対し、参考人から「人身傷害保障という形で、ライアビリティー(責任)から遮断して、実際に被害を受けた方に保険金を給付する方向で考えるのが制度としては合理的ではないか。」との発言があった。
 このほか、他の委員から「一本化は責任保険の枠内での一本化ではなく、それを越えた自動車事故被害者制度といったような一本化を考えているのか。」との発言があり、参考人から「そのとおりである。」との発言があった。

 

(4)  その他
 参考人からの意見陳述のあとに行われた委員間の意見交換において、委員から「再保険を廃止した場合の新たなシステムについて、ユーザーにとって、できるだけ具体的、分かりやすいものにしていただきたい。」、「運用益の使途について、被害者救済の観点でいろいろな事業に拠出されているが、その是非についても検討すべきである。」との意見があった。
 

 最後に、会長から「次回の懇談会は、6月25日に開催したい。次回は、希望する委員からの意見発表又は説明を考えている。」との発言があった。

(以 上)

 


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