1.総論
(1)全般
- 最終的なマニュアルを策定するに当っては、総論の原則を再確認の上、各論に反映するとともに、最終的に確定された際には、その運用にあたり、チェック項目の機械的、形式的な適用に陥らぬよう、充分に留意することを希望。(全国銀行協会連合会)
- 検査の実施に当たっては、金融機関の規模、特性等により、ある程度基準にアローアンスがあることが求められ、画一的な対応がとられるべきではない。(第二地方銀行協会)
(同様の趣旨の意見:全国信用金庫協会、全国農業協同組合中央会・全国信連協会、農林中央金庫、農林水産省大臣官房協同組合検査部)
- 法人の執行機関の責任等のチェック項目、一部法律(商法)上当然に要求される取締役会の役割等についても、点検項目等が盛り込まれており、大変良い。(個人・会社員)
(同様の趣旨の意見:個人・弁護士、個人・自由業、個人・公認会計士)
- 「基本的な考え方」の「金融検査と監督上の措置との関係」において、段階的な措置の整理がなされているが、ここで情報公開が最大限に行われることが望ましい。(個人・公務員)
- 銀行破綻が与える経済社会への悪影響、公的資金を導入している現状を考えれば、銀行に健全性を強く求めるのは当然。経営健全性に対する「規制」については、銀行自ら当局より厳しく行うべき。それが自己管理型行政時代の銀行経営である。(個人・銀行員)
- 業界団体が、都合の悪い個別の銀行を代弁して、弾力的な運用をと主張しているが、「ルール」は、原理・原則を、透明に設定すべき。不透明な運用の余地を残せば、行政をゆがめ、「モラル・ハザード」をまた助長してしまうのではないかと懸念。不透明な妥協をすることなく、21世紀にも通用するルールの確立を期待。(個人・自由業)
(2)マニュアルの位置付けについて
- マニュアル等案については、私企業の自主的判断、創意工夫、並びに機動的な経営を大きく制約する要素を含むものであり、その基本的考え方と内容の両面について見直しを求める。また、本マニュアル等が検査官の手引書にとどまり、金融機関を法的に拘束するものではない旨を明記することが適当。(全国銀行協会連合会)
- 「基本的考え方」を反映させるため、ミニマム・スタンダードとしている項目について、字義通りの対応でない場合でも、○合理的に説明可能で、○記述されているものと同等またはそれ以上の効果があり、○金融機関の規模や業務内容等に応じた必要十分な対応が行われていると判断できれば、その対応は適切・妥当であることを明示することが適当。
なお、「ねばならない」という表現は、字義通りの対応のみが求められているとの考え方につながる懸念があるため、別の表現に変更してもよいのではないか。(全国地方銀行協会)
(同様の趣旨の意見:全国信用組合中央協会、全国農業協同組合中央会・全国信連協会、全国漁業協同組合連合会、生命保険協会、日本損害保険協会)
- 検査官は字義通りの解釈にこだわらず、「基本的考え方」の趣旨を踏まえ、金融機関や外部監査人との間で十分に意見交換を行い、相互理解を深めたうえで、最終的な判断を行う必要があることから、金融機関の主張が受け入れられない場合の調整機関を別途設置すべき。(全国地方銀行協会)
- ミニマム・スタンダードとされている全項目の適用を求められた場合、銀行経営に及ぼす影響は甚大であり、項目毎に経過期間を設けるなど相応の準備期間が必要。(第二地方銀行協会)
(3)信用収縮について
- 金融検査マニュアルについては、景気変動等に配慮した弾力的な運用を可能にしないと、景気が悪くなるほど貸し渋りがスパイラル的に進み、日本経済にとってマイナスに作用することを懸念。したがって、金融検査マニュアルは、一定の幅を持たせた基準であることを望む。(全国信用金庫協会)
- マニュアルの公表は、わが国の金融システムに対する内外の信頼度を高めるものと評価。但し、わが国経済の現状に鑑み、金融検査マニュアルの運用にあたっては、大規模な経済対策や一連の信用収縮対策などとの整合性を図るよう充分な配慮が必要。(経済団体連合会)
(同様の趣旨の意見:日本商工会議所、個人・会社役員他)
- 当局の検査の基準を、そのまま「貸し渋り」をする判断根拠とすべきではない。銀行の資産査定基準を甘くしても、問題の先送りどころか、銀行・企業双方のさらなる経営体質の悪化を招く危険がある。(個人・銀行員)
(4)取締役会等の役割について
- 企業の意思決定に関する組織構造をいかに構築し運営するかは経営判断そのものであり、企業経営における責任と権限の分担・委譲の主体に関して、経営管理上の組織や機関を排除し、経営判断の自由度を大幅に低下させるものは、再考が必要。(全国銀行協会連合会)
(同様の趣旨の意見:第二地方銀行協会、生命保険協会)
- 役員に対する経営全般への関与を義務づけ、その役割と責任を明らかにするという内容については当然賛成できるが、本会のように法律により理事の半数超が非常勤理事となる金融機関においては、本マニュアル上は理事会で決めなければならないとされている事項であっても常勤役員による会議で代替できるなどの措置が必要。(全国信用金庫連合会)
(同様の趣旨の意見:全国信用協同組合連合会)
- 自己責任原則に基づく自主的な経営を基本としつつ、取締役会の役割などについては、商法等の法律の解釈ならびに自民党における「企業統治に関する商法等の改正」に向けての検討状況に十分配慮することが必要。(経済団体連合会)
- 取締役会におけるリスク管理に関する意思決定は実務的に難しいとの銀行側の反論があるが、リスク管理といった根幹をなす事項について、経営責任者が意思決定に関わらず経営を行うことは不可能ではないか。(個人・銀行員)
(5)役員及び会計監査人の役割について
- 「基本的考え方」で監査役及び会計監査人の役割について記述されているが、監査役及び会計監査人は、商法及び商法特例法等によって要求されている任務を果たすために設置されている機関であり、銀行法に基づき銀行検査を行う検査官とは、自ずと任務が違う。(個人・銀行常任監査役)
(6)監査役の役割について
- 内部管理体制は、取締役会及び代表取締役を頂点とする業務の執行及び監督の一部であり、日本の商法では、その監督を取締役に行わせている。監査役に対しては、取締役や使用人と兼務してはいけないとして、監査役が内部管理体制の一部に入ることを厳しく禁止する規定となっており、監査役を内部管理体制の一部に組み込むことを求めるかの如き記述は誤解を招く。(個人・銀行常任監査役)
(7)会計監査人の役割について
- 会計監査人の役割は計算書類が適法に作成されているか否かの意見表明にあり、本マニュアル全体を通じて記載のある「会計監査人」本来の役割と異なる機能を期待する記述は、会計監査人に徒に過重な責任を負わせるものである。このような役割を会計監査人が新たに負うのであれば、別途法令上の手当が必要。(太田昭和監査法人・金融・ノンバンク審査専門委員会)
(同様の趣旨の意見:監査法人トーマツ・銀行業部会、日本公認会計士協会)
(8)その他
- 中小零細企業金融に専念する信用金庫向けのマニュアルの作成を要望。また、それが当面困難であれば、「基本的考え方」に、「検査マニュアルを形式的に適用するのではなく、金融検査の目的やマニュアル策定の趣旨等に鑑み、中小企業の財務特性や被検査金融機関の規模等に応じた実務的な対応が必要である」旨を盛り込むことを要望。(全国信用金庫協会)
- 個別企業情報については、万一これらが金融機関の外部に漏れるようなことがあれば、中小企業の信用不安ばかりでなく取引不安やそれによる倒産の多発など大きな社会不安を引き起こすことになりかねないので、情報管理の徹底についても本マニュアルの中で明確化するとともに、指導を徹底することが必要。(全国中小企業団体中央会)
2.法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト
(1)全般
- 個別経営体単体での法令等遵守態勢整備状況の検査だけでなく、連合会も含めた都道府県内漁協系組織全体としての態勢整備状況を踏まえた検査とすべき。(全国漁業協同組合連合会)
(2)取締役会の役割について
- 個社によって経営意思決定システムやその運営はまちまちであり、取締役会に準じた経営意思決定機関による決議も認めるべき。(日本損害保険協会)
- 商法260条は取締役会の権限として意思決定の他に、監督権限を定めている。本チェックリストにおいては、決定通り執行されているか否かを監督する監督権限を明確に記述するべきである。通常監督権限の中には指揮命令権・人事権が含まれており、こうした強い権限を持った機関が有効に機能しない限り、全てがうまく機能しない。(個人・銀行常任監査役)
(3)監査役の役割について
- 監事の補佐体制の整備に当たっては、金融機関の規模、コスト等を勘案し着実に進める必要があり、このため、当面の措置として検査部門による監事補佐のスタッフの代替を考慮することが必要。(全国信用協同組合連合会)
(4)反社会的勢力への対応について
- 反社会的勢力への対応については、金融機関の信用を損ねる恐れがあること等を理由に対決姿勢を緩めてはいけないこと、その対応に当たっても、組織的に対応し警察・弁護士と連携する必要があること等について明示すべき。(警察庁金融・不良債権関連事犯対策室)
(5)人事ローテーションについて
- 地域金融機関等にあっては、業務スキルの蓄積や顧客サービス向上のための同一の職員が同一業務に長期間従事するケースも多く見られる。チェック項目の策定にあたっては、こういった場合の対処方法についても考慮が必要。(全国地方銀行協会)
(同様の趣旨の意見:全国信用金庫連合会)
(6)最低限年1回2週間以上の職場を離れる方策について
- 事故防止の具体的方策は、職務の性質等を踏まえて、各金融機関が独自に定めるべきもの。(全国銀行協会連合会)
- 事故防止等を図るためには、必ずしも2週間の連続休暇等だけが適切な方策とは考えられず、チェック項目の策定にあたっては、現状の基本通達で定められている1週間の連続休暇を前提とした方策が考慮されるべき。(全国地方銀行協会)
- 2週間以上連続して職場を離れる方策を講ずることは円滑な業務運営に支障が生じる懸念がある。従って当該箇所について、「最低限1週間以上」に改めることを要望。(全国信用金庫連合会)(同様の趣旨の意見:第二地方銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用協同組合連合会、)
3.リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト(共通編)
(1)取締役のリスク管理の理解及び認識について
- 各種リスクの管理に直接関与している取締役とその他の取締役とでは、求められる理解度が異なるはずである。「十分に」という抽象的な基準で全ての取締役に同一のレベルの理解を求めることは不適当。(全国銀行協会連合会)
(2)リスク管理のための規定の整備について
- リスク管理のための規定は、適正な権限委譲の手続きに沿って定められていれば、取締役会自身が決定する必要はない。寧ろリスク管理手法が高度化している現況に鑑みれば、例えば専門家による委員会による決定といった方法の方が実効性・機動性が高い場合がある。(全国銀行協会連合会)
(3)人事ローテーションについて
- 職員の業務のローテーションについては、専門家の育成等長期的従事が求められるケースもあることから、一律に規定することは不適当。(第二地方銀行協会)
(4)総合的なリスク管理について
- 連結対象子会社のリスクを総合的に管理するには、連結対象子会社との間で情報交換を双方向で行うことが不可欠であるが、それぞれの取引先に対する守秘義務上、そうした対応は難しい。また、海外拠点の場合は、現地法制により、守秘義務違反に対しては重い罰則が課される場合がある。(全国銀行協会連合会)
- 連結対象子会社等のリスク管理に当たっては、証券子会社や信託子会社については、ファイアウォールや守秘義務との整合性をとる必要がある。(全国信用金庫連合会)
- 連結対象子会社といえども個社としての取引先に対する守秘義務を有することから、法的手当てがなされなければ、連結対象子会社のリスクを総合的に管理することには困難な面も多い。本チェック項目については、この点を考慮して再考することが必要。(全国地方銀行協会)
(5)検査部門の独立性確保について
- 検査部門の完全独立について、その体制整備を求められた場合、現実問題として経営コスト面で対応が困難。(全国信用組合中央協会)
(6)検査部門の検査の手法及び内容について
- 同一の検査職員の同一店舗等の連続検査の回避については、特に、専門性の高い分野については人材が限られている場合があり、また、例えば市場関係の業務については、同一の職員が継続的に同一店舗等の検査に従事する方が効果的な場合がある。ミニマム・スタンダードと位置付けることは不適切。(全国銀行協会連合会)
(同様の趣旨の意見:第二地方銀行協会、農林水産省大臣官房協同組合検査部、生命保険協会)
(7)外部監査の活用について
- 外部監査の時期については、各金融機関が内部管理体制の見直しの規模や頻度を異にしている実態からして、一律に「年1回」を要求することは形式的にすぎる。(全国銀行協会連合会)
- 「外部監査」及び会計監査人の監査との関連が不明瞭である。「外部監査」の実施主体は、会計監査人を指すのか、会計監査人を含むが会計監査人に限らないのかも含めて明確にすべき。(日本公認会計士協会)
4.信用リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト
(1)新商品、新規業務に係る評価について
- 取締役会で承認を要するのは、既往リスクに比して大幅にリスクが増加する場合に限定されるべき。(第二地方銀行協会)
(同様の趣旨の意見:全国銀行協会連合会、全国地方銀行協会)
(2)審査管理体制の整備について
- 画一的に審査と営業の分離を要求することは、金融機関の組織運営や経営管理手法の発展を妨げ、顧客サービスの機動性の観点からも寧ろマイナスの効果を生じさせる。(全国銀行協会連合会)
- 金融機関の規模が小さく、役員が少ない場合には、両部門を一人の役員が兼務することも考えられる。この部分については、金融機関の自己責任に委ねられる問題であり、審査部門と営業推進部門の相互牽制機能が実質的に確保されているのであれば、あえて兼務を禁止する必要はない。(全国地方銀行協会)
(同様の趣旨の意見:全国労働金庫協会)
5.信用リスク検査用マニュアル
(1)全般
- 債務者区分の検証に当たり、外形的・定量的基準に重きを置きすぎると、業績悪化に苦しんでいる多くの中小企業ひいては我が国産業全般に対する信用供与の円滑化に支障を来たしかねないという点に充分留意する必要がある。(全国銀行協会連合会)
- 自己査定に関する検査においては、各債権の個別事情も十分勘案すべき。(経済団体連合会)
(2)信用格付について
- 信用格付の対象は、財務データの入手可能性や信憑性を考慮し、信用供与額あるいは年商が一定額以上の債務者とし、それ以外の債務者については、簡易な格付で行なうことも適当。(全国信用金庫協会)
- 信用組合の場合、取引先の零細性等の特殊要因もあり、信用格付を導入しているところはごくわずかにとどまっている現状にあるため、信用組合については、早急にその導入を求めるのではなく、ベスト・プラクティスとして取り扱うことが適当。(全国信用組合中央協会)
(同様の趣旨の意見:第二地方銀行協会、個人・公認会計士)
- 農協では、農業者向等個人への信用供与が多く、個人の格付には必ずしもなじまないケースがあり、信連では貸出先数から格付しなくても自己査定上問題ないことから、義務付けしないことを要望。(全国農業協同組合中央会・全国信連協会)
(同様の趣旨の意見:全国労働金庫協会、全国漁業協同組合連合会)
(3)債務者区分の検証について
- 本基準案をそのまま適用し、自己査定、引当等を行なえば、現下の厳しい経済情勢のもとでは、破綻懸念先等に該当する中小企業が増加し、貸し渋りや資金の回収が拡大するおそれがあり、また今後わが国経済を支えることが期待されるベンチャー企業等創業間もない企業の成長の芽をつむことにもなりかねない。このため、債務者区分の検証にあたっては、このような非財務面の諸要素を取り入れた基準を設けるべき。(日本商工会議所)
(同様の趣旨の意見:全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、通商産業省)
- 債務者区分の検証にあたって、要注意先・破綻懸念先等の判断基準の一例が示されているが、現行の記述では、例示された基準が全てであるとの誤解を招きかねないことから、「債務者区分の検証」の項の記述の見直しを行なうとともに、現行マニュアルに記載されている基準以外にも、債務者区分の判断の考え方等を幅広く記述すべき。(全国漁業協同組合連合会)
- マニュアルの内容が厳しすぎると貸し渋りが酷くなるとの批判が見受けられるが、適切に分類を行い、またその結果に基づき適切に引当を行なうことは、貸し渋りの議論とは切り離すべき。(個人・公務員)
(4)要注意先について
- 基準を機械的に適用すると、2期連続で赤字が続くと見込まれる債務者は原則として要注意先に区分することになるが、これは現在の経済環境を勘案すると債務者にとって厳しすぎる。米国監督当局もこうした基準は明示しておらず、本基準は削除すべき。(全国銀行協会連合会)
- 基準に合致していない場合、直ちに要注意先になるものではないが、現下の中小零細企業の財務状況は極めて厳しく、銀行(特に地域金融機関)の融資姿勢に影響を与える基準と考えられ、こうしたことを踏まえて、本基準の緩和もしくは削除を要望。(第二地方銀行協会)
- 親会社の財務状況の評価による子会社の債務者区分の考え方については、企業のグループ経営の実態に則した合理的な判断を行なうことが適当。(農林中央金庫)
(同様の趣旨の意見:全国漁業協同組合連合会)
(5)破綻懸念先について:実質債務超過の期間
- 現時点では債務超過であっても、懸命な努力を続け、一定の成果を挙げている企業に対しては、地元金融機関として支援を行なう必要があり、そうした点からみると「2年」は極めて厳しい。「2年」を延長するとともに、その期間は文字どおり「原則」であって機械的に対応するものではないことをより明確にすべき。(全国地方銀行協会)
- 現下の経済環境において、本基準は厳しすぎる。とりわけ、中小零細企業の財務状況は悪化傾向にあり、金融機関として支援が困難となるケースが発生することが予想されることから、本基準の緩和もしくは削除を要望。(第二地方銀行協会)
(同様の趣旨の意見:全国銀行協会連合会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、全国農業協同組合中央会・全国信連協会、農林中央金庫、日本公認会計士協会、太田昭和監査法人・金融ノンバンク審査専門委員会、生命保険協会)
- 一律の基準を設けるのではなく、個々の企業実態を反映した分類基準の策定を要望。具体的には、債務超過の解消期間を2年に限定せず、相当期間での解消が確実と判断される場合の措置を織り込むことを要望。(日本衛星放送株式会社)
(6)破綻懸念先について:金融支援先
- 経営改善計画を策定中の債務者や10年超の長期の改善計画に基づいて着実に経営を改善している債務者が破綻懸念先に追い込まれることのないよう、経営改善計画等については、当該債務者の事業の継続性が十分に認められる計画となっているかどうかなど、計画期間に係わらず総合的に判断すべき。(全国銀行協会連合会)
(同様の趣旨の意見:第二地方銀行協会、全国信用金庫協会、全国農業協同組合中央会・全国信連協会、農林中央金庫、日本公認会計士協会、日本損害保険協会)
- 農林水産業においては、経営改善資金(制度資金)の融資期間との関係もあり、経営改善計画が10年を超える場合があり、そのようなものを当該基準により「破綻懸念先」と定義することは困難。(農林水産省大臣官房協同組合検査部)
- 経営改善計画の計画期間を原則5年と画一的に決めてしまうのはいかがなものか。経営環境、景気情勢等もあり、債務者の事業内容、事業の性格により、計画期間はさまざまでケースバイケースの個別判断が適当。(個人・公認会計士)
(7)株式の分類方法
- 「過去1年間」という要件は、株価の回復可能性の判定基準としては短すぎると考えられ、再検討を要望。株価下落は発行体の信用状況の悪化以外にも株式市場の循環要因等によるケースがあり、正常先に係る株式については中期的な動向を見た上で対応することが重要。(第二地方銀行協会)
(同様の趣旨の意見:全国銀行協会連合会、生命保険協会、日本損害保険協会)
- 債権については破綻懸念先は III 分類とされているが、株式については特段の記載がない。また、償却についても IV 分類については記載があるが、それ以外についてはない。債務者区分が破綻懸念先である債務者の株式は、株式が債務より劣後であることから III 又は IV 分類とすべき。(日本公認会計士協会、監査法人トーマツ・銀行業部会)
- ベンチャー企業への投資のための新規の投資事業組合の設立勧誘に際し、従来の出資者である銀行・生損保等の金融機関は投資事業組合への出資に極めて消極的になってきている。その理由として、マニュアルの株式の分類の項目をあげる金融機関が複数あった。これはベンチャー企業振興の方向とはある意味でそぐわないものである。金融機関のリスク管理の適正化についての重要性は十分認識するが、上記のような金融機関の反応がベンチャー企業への資金供給にブレーキをかけてしまうことを憂慮。(個人・会社役員他)
(8)償却・引当に関する検査について:総論
- 本償却・引当については、本年7月以降の検査時より適用するものと解されるが、仮に原案どおり適用されるのであれば、新基準への対応のため経過期間を設けるなど計画的引当が可能となるような措置を要望。(第二地方銀行協会)
- 現状の記載では貸倒引当金に関する会計基準を金融監督庁が検査マニュアルで決定しているような記載となっている。会計基準の設定は、企業会計審議会等しかるべき機関に委ね、検査当局はその基準に準拠しているかを検査することとすべき。検査当局はできる限り会計基準の設定に踏み込まないようにすべき。(日本公認会計士協会)
(同様の趣旨の意見:個人・公認会計士)
- 破綻懸念先に対する債権について合理的に見積もられたキャッシュフローにより回収可能な部分を除いた残額を予想損失額とする方法によっている場合には、企業会計審議会より公表された基準を適用することが必要。(監査法人トーマツ・銀行業部会)
(9)要注意先に対する債権に係る貸倒引当金について
- 金融機関は、毎年の決算の中で、一般貸倒引当金の水準を見直している。このため、これについては、個別金融機関の実態を踏まえ、当該金融機関が監査法人と協議のうえ決定すべきであり、あえて一律に債権の平均残存期間または今後3年間の予想損失額を計上する必要はない。(全国地方銀行協会)
- 要注意先には、種々の債務者を包含しており、要管理債権については破綻懸念先と同様の基準で貸倒引当金を計上するとしても、正常先に近い要注意先に対する債権については、今後3年間の貸倒引当金の計上は過重であり、1年間分とするのが妥当。(第二地方銀行協会)
(同様の趣旨の意見:全国銀行協会連合会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、全国労働金庫協会、全国漁業協同組合連合会、生命保険協会、個人・銀行員)
- 貸倒実績を算定する一定期間については、貸出金等の平均残存期間が妥当。したがって、「要注意先に対する債権に係る貸倒引当金については、要注意先に対する債権の平均残存期間の予想損失額を貸倒引当金として計上しなければならない。ただし、少なくとも3年間を見込んでいる場合は、妥当と認める。」という表現が適当。(太田昭和監査法人・金融ノンバンク審査専門委員会)
(10)破綻懸念先に対する債権に係る貸倒引当金について
- 経営破綻に陥る可能性の大きい債務者であり、経営改善計画が合理的であり、かつ進捗状況が良好な債務者以外は、キャッシュフローを見込む期間として5年は長いものと思われる。「経営改善計画の実現可能性が高い場合には、今後5年程度、それ以外の場合は今後3年程度のキャッシュフローを見込む」とすべき。(日本公認会計士協会)
- キャッシュフローの見積もりに関しても合理的に見積もりのできるケースは、実務上ごく限られてくる。破綻懸念先債権の債権市場における売却可能額は、その殆どが担保の処分可能価額であると予想される。担保の処分可能価額以外の回収可能額を見積もることは事実上困難。(個人・公認会計士)
- 破綻懸念先債権について、貸倒引当金の引当率は破綻懸念先のリスクの程度に応じて3段階程度に区分し、全体の引当率が50%以上となることを条件として、それぞれの区分に応じた率を予め画一的に決めることも一つの方法として提案。(個人・公認会計士)
6.市場関連リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト
- 取締役会が他の機関(常務会、経営会議、委員会等)にポジション枠設定等の決議権限を委譲する場合が一般的であり、画一的に取締役会による決議を要求することは実態にそぐわないのみならず、専門性・機動性の観点から不適切。(全国銀行協会連合会)
- ポジション等の管理について、ポジション等のディーラー別管理は原則としてフロント部が行い、ミドル・オフィスはフロント部のグループ別管理等を行うという方式を否定される理由は見当たらない。(全国銀行協会連合会)
7.流動性リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト
- 資金繰り管理部門とリスク管理部門の組織、権限を明確に分離するにあたり、経営判断の結果、取締役会以外の機関(常務会、経営会議、委員会等)に決定権限を委譲することがある。(全国銀行協会連合会)
- 資金繰り管理部門とリスク管理部門の組織、権限の明確な分離を求められた場合、現実問題として経営コスト面で対応が困難。(全国信用組合中央協会)
8.事務リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト
- 顧客からの苦情・問い合わせについて、様々なジャンルのものやレベルの差異があり、必要と判断されるものだけを報告することとすれば充分。(第二地方銀行協会)
(同様の趣旨の意見:全国農業協同組合中央会・全国信連協会、日本損害保険協会)
- 法令においても、顧客自身がリスクを負っている商品の販売に当たって、「顧客からの説明を受けた旨の確認を行う」ことまで義務づけられておらず、ミニマムスタンダードとすることは不適当。(第二地方銀行協会)
- 「不祥事件については、監督当局への報告(刑罰法令に抵触している恐れがある事実については、金融機関の信用問題や関係役職員の身体の安全、生活の平穏等衝量することなく速やかに警察へ通報を行うなど関係機関への通報)を行い」に改めるべき。(警察庁金融・不良債権関連事犯対策室)
9.システムリスク管理態勢の確認検査用チェックリスト
- このチェックリストはコンピュータの運用・開発部署を念頭において作成されている印象がある。現実は一人一台の時代になりつつあり、セキュリティやデータ管理についても、もっと異なる視点でのアプローチも必要である。この点、時代に即した形で見直すべき。(個人・システム監査人)