I 金融システム改革の必要性 |
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我が国経済が、21世紀の高齢化社会においても活力を保っていくためには、我が国の経済社会システムを構造的に変革することが必要であり、経済の動脈ともいうべき金融システムについても、21世紀の我が国経済を支える優れたものへと変革することが不可欠である。 |
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一方、グローバリゼーション、情報・通信の技術革新が進展し、欧米金融市場においては新たな金融商品の登場、さらには、1999年には新通貨ユーロの出現といった大きな変化が見られる中、我が国金融市場の空洞化を防ぐためにも、市場機能を活性化させることが急務である。また、これにより、通貨としての円の地位の向上が図られることにもなる。 |
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このためには、1200兆円にも上る個人金融資産が有利に運用され、次世代を担う成長産業への資金供給が円滑に行われ、また、海外との間でも活発な資金フローが実現するよう、市場の透明性・信頼性を確保しつつ、大胆な規制の撤廃・緩和を始めとする金融市場の改革を行うことにより、マーケットメカニズムが最大限活用され、資源の最適配分が実現される金融システムを構築することが喫緊の課題である。 |
II プラン策定の経緯 |
金融システム改革は、96年11月に橋本総理のイニシアティブにより開始され、証券取引審議会、企業会計審議会、金融制度調査会、保険審議会及び外国為替等審議会は、直ちに、2001年までに改革が完了するプランの検討を開始した。また、改革を一体的なものとして円滑に推進するため、各審議会代表者による「金融システム改革連絡協議会」を設置し、各審議会相互に関連する問題等について議論を行ってきた。このうち、改革のフロントランナーとしての「外国為替及び外国貿易管理法」改正については、外国為替等審議会における本年1月の答申を受け、3月には改正案が国会に提出され、5月に可決・成立したところである。
今回取りまとめられたプランは、昨年11月の橋本総理の指示に基づき、本改革を巡る国会での議論や「金融システム改革連絡協議会」での議論等をも踏まえて、関係審議会が検討を行い、策定したものである。
III プランの概要 |
(1) プラン策定に当たっての基本的考え方
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タイムスケジュールの明確化 改革を一体的に進めるためのタイムスケジュールを明確にする。 |
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明確な理念の下での広範な市場改革 本改革は、 |
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Free(市場原理が働く自由な市場に) |
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Fair(透明で信頼出来る市場に) |
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Global(国際的で時代を先取りする市場に) |
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の3原則に照らして必要と考えられる改革を全て実行する。 |
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利用者の視点に立った取組み 各審議会の報告書の主な内容は、利用者の立場に立った改革という観点から、 |
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投資家・資金調達者の選択肢の拡大 |
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仲介者サービスの質の向上及び競争の促進 |
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利用しやすい市場の整備 |
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信頼できる公正・透明な取引の枠組み・ルールの整備 |
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の4つの視点を網羅しているものである。 |
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金融システムの安定 本改革の実現に当たり、金融機関の不良債権問題の速やかな処理を促進するとともに、早期是正措置の導入やディスクロージャーの拡充などを通じて金融機関等仲介者の健全性確保に努め、金融システムの安定に万全を期すことが重要である。 |
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(2) 主な具体的事項と内容
事 項 |
措 置 内 容 |
スケジュール |
証券デリバティブの全面解禁 |
証券取引所における個別株式オプション取引を導入する。 |
97年7月に、東京・大阪両証券取引所において取引開始予定。 |
有価証券関連の店頭デリバティブ取引の導入のための環境整備を行った上で、証券デリバティブを全面解禁する。 |
次期通常国会に法案提出予定。 |
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有価証券及び商品関連の店頭デリバティブ取引について、原資産の受渡しを伴わない範囲で、銀行等が行える業務とする。 |
次期通常国会に法案提出予定。 |
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「証券総合口座」の導入 |
「証券総合口座」を導入する。 |
97年度中に実施予定。 |
銀行等の投資信託、保険の窓口販売の導入 |
銀行等の本体による投資信託の販売を導入する。 |
次期通常国会に法案提出予定。 |
銀行の店舗貸しによる投資信託委託会社の直接販売を導入する。 |
97年度中に実施予定。 |
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保険については、弊害防止措置等を講じた上で、住宅ローン関連の長期火災保険及び信用生命保険の販売を認める。 |
2001年を目処に実施予定。 |
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ABS(資産担保証券)など債権等の流動化 |
ABSの発行体であるSPC(特別目的会社)についての法的整備を行う。 |
次期通常国会に法案提出予定。 |
金銭債権信託受益権について、有価証券の発行根拠を法定し、流通性を改善する。 |
次期通常国会に法案提出予定。 |
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内外資本取引等の自由化 |
クロスボーダーの証券取引、海外預金等の自由化により、企業や個人の資金運用、資金調達の選択肢を拡大する。 |
今国会で外為法の抜本的改正が成立し、98年4月1日より施行。 |
(2)仲介者サービスの質の向上及び競争の促進 |
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持株会社制度の活用 |
持株会社形態の利用を可能とするとともに、預金者、投資者、保険契約者の保護等金融上の観点から必要となる諸措置を講ずるため、所要の法整備等を行う。 |
改正独占禁止法の施行をにらみ、所要の法的整備を可及的速やかに行う。 |
証券会社の免許制の見直し |
現行の免許制を改め、登録制を原則とする。その上で例えば店頭デリバティブ業務や引受業務など、業務の専門性やより高度なリスク管理が求められる特定の分野については、認可制とする。 |
次期通常国会に法案提出予定。 |
業態別子会社の業務範囲等 |
証券子会社、信託銀行子会社に係る残余の業務制限を解禁する。 |
99年度下期中に解禁。 |
保険会社と金融他業態との間の参入について実現を図る。 |
2001年までに実現。 |
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普通銀行における長短分離制度に係る業務上の規制の撤廃等 |
普通銀行による普通社債等の発行等を認める。 |
99年度下期実施。 |
外国為替銀行法を廃止する。 |
次期通常国会に法案提出予定。 |
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証券会社の業務の多角化 |
専業義務を廃止し、業務の多様化・差別化を可能とする。 |
次期通常国会に法案提出予定。 |
株式売買委託手数料の自由化 |
株式売買委託手数料を完全自由化する。 |
99年末には完全自由化。その前段階として、98年4月に自由化部分を現行の売買代金10億円超から5千万円超まで引下げ。 |
電子マネー・電子決済 |
電子マネー・電子決済に関し、法律関係の明確化、新規参入の促進、個人利用者の保護等に関する検討を進め、所要の措置を講ずる。 |
速やかに具体的な施策に関する検討を進め、所要の措置を講ずる。 |
ノンバンクの資金調達の多様化 |
貸付資金調達に係る社債・CP発行を禁止する出資法等の制約について基本的に廃止する。 |
法改正を要する事項については次期通常国会に法案提出予定。 |
算定会の改革 |
火災保険、自動車保険等の料率につき、損害保険料率算出団体が算定する料率の使用義務を廃止する。 |
関係法令の改正を経て、98年7月までに実施予定。 |
外国為替業務の自由化 |
為銀制度、両替商制度、指定証券会社制度を廃止し、外為業務に着目した規制を撤廃することで、外為業務への自由な参入・退出を確保するとともに、外貨売買・通貨スワップ等顧客のニーズに合わせた多様な金融サービスを提供することを可能にする。 |
今国会で外為法の抜本的改正が成立し、98年4月1日より施行。 |
(3)利用しやすい市場の整備 |
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取引所集中義務の撤廃 |
取引所外における取引の公正性確保の観点から、証取法の改正を含め所要のルール整備を図った上で、取引所集中義務を撤廃する。 |
次期通常国会に法案提出予定。 |
店頭登録市場における流通面の改善 |
取引所市場の補完との位置付けを見直すとともに、流通面の改善策を実施することにより、その機能を強化する。 |
97年度以降推進。 |
未上場、未登録株の証券会社による取扱いの解禁 |
未上場・未登録株式の証券会社による取扱いを解禁する。 |
97年7月に実施予定。 |
金融先物取引のあり方 |
金融先物取引について、新商品の開発、取引手法の整備、投資者保護措置の整備に向けた検討等を進める。 |
日本円短期金利先物に係るスプレッド取引については98年中にも導入。 |
短期金融市場の整備 |
短期金融市場について、取引慣行の見直しや日本銀行当座預金決済の即時グロス決済(RTGS)化等の導入を図る。 |
RTGS化については今世紀中に導入。 |
内外資本取引等の自由化 |
対外決済や資本取引に係る事前の許可・届出制度を原則廃止する。 |
今国会で外為法の抜本的改正が成立し、98年4月1日より施行。 |
(4)信頼できる公正・透明な取引の枠組み・ルールの整備 |
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連結財務諸表制度の見直し |
連結ベース中心のディスクロージャーへの転換、連結手続の抜本的見直しを行う。 |
99年3月期から段階的に実施。 |
金融商品に関する会計基準の整備 |
有価証券・デリバティブ等の金融商品に関し、時価評価を導入する等、会計基準の整備を図る。 |
98年夏までに取りまとめる企業会計審議会の最終意見書を踏まえ、早急に実施。 |
会計士監査の充実 |
監査の事後的審査の実施等国際的に遜色のない水準の監査実務、監査体制の整備を進める。 |
公認会計士審査会提言に基づき早急に実施。 |
有価証券定義の拡大 |
新たな商品が出現するのに伴い、公正取引ルール等の投資家保護の措置の適用範囲を適切に定める観点から有価証券の定義を拡大する。 |
次期通常国会に法案提出予定。(一部政令で実施) |
証券取引法のルールの拡充等 |
有価証券関連の店頭デリバティブ導入等の取引形態の多様化等に対応して、公正取引ルールの拡充を図る。 |
次期通常国会に法案提出予定。 |
検査・監視・処分体制の充実 |
証券取引等監視委員会の機能強化を始めとした検査・監督・処分体制の充実を図る。 |
97年度以降、推進。 |
証券取引における紛争処理制度の整備 |
証券取引法に定める自主規制機関のあっせん等の制度を法制化する等により、紛争処理制度の整備・充実を行う。 |
次期通常国会に法案提出予定。 |
早期是正措置の導入 |
経営の健全性を確保していくための透明性の高い監督手法である早期是正措置を導入する。 |
98年4月より導入。 |
決済リスクの削減策の強化 |
決済システムに関して、リスク削減策の強化に向けた体制整備等を図る。 |
一括清算ネッティングについては次期通常国会に法案提出を目指す。 |
金融機関等の利用者の保護 |
消費者信用保護の諸施策については、統一的な消費者信用保護法の法制も視野に入れ検討を進め、所要の措置を講ずる。 |
97年度中に結論を得、速やかに所要の措置を講ずる。 |
非預金商品に係る説明ルール作り等を行う。 |
97年度中に実施。 |
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分別管理の徹底及び寄託証券補償基金制度の拡充 |
顧客資産の分別管理を徹底するとともに、寄託証券補償基金を証券取引法上の法人として位置づけ、その制度を整備・拡充する。 |
次期通常国会に法案提出予定。 |
経済制裁等の国際的要請への対応 |
国際的な要請に応じて、経済制裁等を機動的かつ効果的に実施し得るメカニズムを確保する。 |
今国会で外為法の抜本的改正が成立し、98年4月1日より施行。 |
マネーロンダリング防止等に対する国際的要請への対応 |
銀行等や両替業務を行う者に本人確認義務を法律上課すとともに、現金等の支払手段等の輸出入について税関に対する事前届出制度を導入する。 |
今国会で外為法の抜本的改正が成立し、98年4月1日より施行。 |
事後報告制度の整備 |
国際収支統計の作成、市場動向の的確な把握等のため、簡素化を図りつつ、内外資本取引等に関する効率的かつ実行性のある事後報告制度を整備する。 |
今国会で外為法の抜本的改正が成立し、98年4月1日より施行。 |
IV 今後の課題 |
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プランの実施、諸制度の整備 本プランの内容に沿って改革を実現すべく、所要の法令の改正等、制度の整備を早急に進める。 |
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金融関係税制の見直し 金融関係税制については、金融市場の抜本的改革にあわせて、公的サービスの財源である税の基本的性格、公平・中立・簡素といった租税原則、さらには国際的整合性の観点をも踏まえ、その望ましいあり方について検討を進める。 |
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金融サービス法等の検討 金融システム改革の進展に伴い、業態にとらわれない自由な市場参入や多種多様な金融商品・サービスの提供が予想されることから、改革の進展状況を踏まえつつ、利用者の視点に立って、市場参加者に共通に適用される横断的なルールの構築(いわゆる金融サービス法)も視野に入れて、中期的な視点で幅広く検討する。 |
連絡・問い合わせ先 大臣官房調査企画課
Tel 3581-4111 (代表) |