(1) 優れた金融システムは経済の基礎をなすものである。21世紀の高齢化 社会において、我が国経済が活力を保っていくためには、国民の資産がよ り有利に運用される場が必要であるとともに、次代を担う成長産業への資 金供給が重要。また、我が国として世界に相応の貢献を果たしていくため には、我が国から世界に、円滑な資金供給をしていくことが必要。 このためには、1,200兆円もの我が国個人貯蓄を十二分に活用して いくことが不可欠であり、経済の血液の流れを司る金融市場が、資源の最 適配分というその本来果すべき役割をフルに果たしていくことが必要。 (2) 欧米の金融市場はこの10年間に大きく変貌し、これからもダイナミッ クに動こうとしている。我が国においても、21世紀を迎える5年後の2 001年までに、不良債権処理を進めるとともに、我が国の金融市場がN Y・ロンドン並みの国際金融市場となって再生することを目指す。 これには、金融行政を市場原理を基軸とした透明なものに転換するだけ でなく、市場自体の構造改革をなし遂げ、東京市場の活性化を図ることが 必要。 (3) 上記の目標を実現するため、政府・与党を挙げて、次の課題について直 ちに検討を開始し、結論の得られたものから速やかに実施し、今後5年間 の内に完了することとする。 2.構造改革への取り組み~2つの課題(「改革」と「不良債権処理」) 目標達成に向けて、市場の活力を甦らせるためには、市場の改革と金融機 関の不良債権処理とを車の両輪として進めていく必要がある。 (1) 改革~3原則(Free、Fair、Global) 1 Free(市場原理が働く自由な市場に) ~参入・商品・価格等の自由化 2 Fair(透明で信頼できる市場に) ~ルールの明確化・透明化、投資家保護 3 Global(国際的で時代を先取りする市場に) ~グローバル化に対応した法制度、会計制度、監督体制の整備 (注) 以上のような抜本的な金融市場改革にあわせ、金融関係税制につい て、公平、中立、簡素の基本理念及び課税の適正化の観点をも踏まえ、 税制全体の中で所要の検討を行う。 (2) このような徹底した構造改革は、21世紀の日本経済に不可欠なものと は言え、反面様々な苦痛を伴うもの。金融機関の不良債権を速やかに処理 するとともにこうした改革を遂行していかなければならないので、金融シ ステムの安定には細心の注意を払いつつ進めていく必要がある。
[具体的検討項目の例]
1 Free(市場原理が働く自由な市場に) ○ 新しい活力の導入(銀行・証券・保険分野への参入促進) ○ 幅広いニーズに応える商品・サービス(長短分離などに基づく商品規 制の撤廃、証券・銀行の取扱業務の拡大) ○ 多様なサービスと多様な対価(各種手数料の自由化) ○ 自由な内外取引(為銀主義の撤廃) ○ 1,200兆円の個人貯蓄の効率的運用(資産運用業務規制の見直しと ディスクロージャーの充実・徹底) 2 Fair(透明で信頼できる市場に) ○ 自己責任原則の確立のために十分な情報提供とルールの明確化(ディ スクロージャーの充実・徹底) ○ ルール違反への処分の積極的発動 3 Global(国際的で時代を先取りする市場に) ○ デリバティブなどの展開に対応した法制度の整備・会計制度の国際標 準化 ○ グローバルな監督協力体制の確立(G7サミット・蔵相会議等で確認)