平成12年6月29日

公認会計士試験制度のあり方に関する論点整理

 

1. はじめに
(1)  経緯

現行の公認会計士試験制度は、昭和23年の公認会計士法の制定により 創設されている。第1次、第2次、第3次の各試験があり、第2次試験の合格者には会計士補となる資格が与えられ、以後3年間のインターン (実務補習及び業務補助又は実務従事)履修後に、第3次試験の受験資 格を取得する。更に、第3次試験の合格者には公認会計士となる資格が 与えられる。
 現行試験制度においては、試験の種類、科目、方法等は公認会計士法 に規定されており、直近では、平成4年に公認会計士法が改正され、第 2次試験への短答式試験の導入、第2次試験論文式試験への選択科目の 導入、試験委員数の法定の廃止等が行われたところである。

 近年、我が国企業の活動の複雑化や資本市場の国際的な一体化等を背 景として、公認会計士監査による適正なディスクロジャーの確保ととも に公認会計士監査に対する国際的な信頼の向上が、一層重要になってきている。更に、最近の企業の経営破綻等を契機として、公認会計士監査 は果たして有効に機能していたのか等厳しい指摘や批判がなされている。

 このような状況を背景として、公認会計士審査会は、平成11年4月に、 公認会計士審査会委員や企業会計審議会委員を中心に「会計士監査に関 するワーキンググループ」を設置し、同年7月に「会計士監査の在り方 についての主要な論点」をとりまとめた。この主要な論点の一つとして 「公認会計士の質及び数の充実」が掲げられており、具体的には、 

[1]  今後の公認会計士監査には、高い資質を持った公認会計士が十分 な規模で存在することが必要であり、このためには、試験制度の在 り方や研修制度の在り方について一層の改善策を講じるよう検討す る必要がある。 
[2]  公認会計士試験については、社会人を含めた多様な人材に受験し 易くすることで、公認会計士間での競争を促進し、公認会計士全体 としての水準の向上が図られるような制度の在り方を検討すべきで ある。その際、単に試験の水準を下げ、合格者の質を下げることとは異なることに留意すべきである。
[3]  また、試験及び研修に共通する課題として、最新の企業実務に則 した内容をより重視していくべきではないか。 
との考え方が示されたところである。

 以上のことから、公認会計士審査会では、「試験制度の見直しに当たっては、まず、現行試験制度全般にわたる問題整理が必要」との観点から同審査会に「試験制度に関する検討小グループ」を設置し、検討を行 うこととしたものである。

 

(2)  公認会計士試験制度見直しの必要性

 ワーキンググループの主要な論点として「公認会計士の質及び数の充実」が掲げられているが、公認会計士の数については、公認会計士監査に対するニーズが量的に拡大する中で、質的にもより深度ある監査が求められていること、公認会計士の監査以外の業務に対する社会の要請の拡大・多様化により、監査法人や公認会計士事務所に所属する公認会計士ばかりでなく、企業内等においても、公認会計士資格を持った会計専門家に対する需要が増大していることなどから、現在の公認会計士数では著しく不足しており、その大幅な増加を図る必要があるとの指摘が各方面からなされている。
 また、公認会計士の質については、連結中心のディスクロージャー、退職給付会計、金融商品の時価評価等、国際的な会計基準との調和を踏まえつつ、会計基準の抜本的な改革が進められてきており、公認会計士のより実質的でかつ高度な判断を求められる局面が多くなってきている ことから、従来にも増して、深い専門的知識、幅広い識見が必要とされるなど、その充実がより一層求められている。

 こうした社会の要請に応えていくためには、公認会計士として引き続 き多くの優秀な人材を確保していく必要があるが、現行の公認会計士試 験制度については、例えば、

[1]  現在の制度においては、著しく受験者の負担が大きくなっていると 指摘されており、社会人等を含む多くの多様な人材が受験し易くするとの観点から試験科目、出題範囲等やインターン制度について見直す必要があるのではないか、 
[2]  受験者の勉強方法が、ややもすれば、暗記中心となっているとの指 摘があるが、公認会計士業務に不可欠な資質である思考能力や判断力を有しているかをより的確に判定できるよう、出題内容、試験実施方法を検討すべきではないか、
といった指摘がなされており、試験制度全般について見直しをする必要がある。

 以上のような認識に基づき、当 小グループでは、8回の会合を開催し、学識経験者、他の資格試験関係者からヒアリングを行いつつ、精力的に審議を進めてきた。
 これまでの審議により、現行試験制度について一応の論点の整理がな されたことから、これを「公認会計士試験制度のあり方に関する論点整 理」として公表し、広く意見を求めたうえで当小グループの報告のとり まとめを行うことを予定している。

 

2. 基本的な考え方
(1)  公認会計士数の増加の必要性及びその具体数について

 現在の公認会計士等の数は約16,500名(公認会計士約13,000名、会計士補約3,500名)であるが、近年、
 第一に、公認会計士の行う本来業務である監査証明業務に関し、監査対象法人等が量的に増加するとともに、新会計諸基準の整備・導入などに伴い監査対象項目が増加している中で、監査の一層の質的向上が強く求められていること、 
 第二に、公認会計士に対する監査以外の業務に対するニーズが拡大・ 多様化する中で、監査証明業務に従事する者だけでなく、企業や官公庁に所属して会計専門家として実務に携わる者への需要が増大していること、 
等から公認会計士数の大幅な増加が必要とされている。

 公認会計士の増加の必要数については、公認会計士の行う業務等との 関係で、将来どれくらいの数の公認会計士が必要とされ、公認会計士の 数がどの程度不足しているかを見通す必要があるが、具体的な増加の必 要数を明確な根拠の下に算出することは、将来の社会・経済的な発展等 にも依拠していること等から困難な面がある。
 しかしながら、審議の過程において、公認会計士数の大幅な増加が必 要であるとの認識の下に、 例えば、

 公認会計士業務等の拡大と企業等における会計専門家としての有 資格者が十分存在することが望ましいとの観点から、ストックとしての資格取得者を現在の4倍程度になるようにする必要がある。
 監査時間を必要時間確保し、監査の充実を図る観点から、公認会 計士の数を5年間で6,000名程度増加させる必要がある。
等の意見が示されたとこ ろであり、今後、適正な公認会計士数等について議論を深めていく必要がある。

 

(2)  質の充実を図りながら、公認会計士の数を増加させるための方策について 

 公認会計士の質の充実を図りつつ、公認会計士の数の増加を図っていくためには、まず、試験制度の見直し等を通じて、社会人等の多様な人 材を含む受験者の大幅な増加を図ることが必要であると考えられる。
 試験制度の見直しに際しては、その大幅な見直しは受験者等に与える 影響が大きいことに留意しつつ、現行の試験体系を基本とし、十分な検 討を加えたうえで、試験科目等やインターン制度の見直しなど所要の改 正を行うことが必要である。
 更にこれに止まらず、公認会計士の裾野を広げることが、公認会計士 間の適正な競争や企業等と監査法人や公認会計士事務所との間の人材交 流を促進し、公認会計士の質の充実に資するとの観点から、例えば、社会人を含む多様な人材が公認会計士資格を取得しやすくなるよう、一定の実務経験を積んだ社会人や他の専門家に対し、一定の厳格な条件の下で、第3次試験を受験できるようにするなど公認会計士資格を取得する 途を拡げることについても検討する必要がある。
 また、現行の試験体系においては、インターン制度が第3次試験の受 験要件として位置づけられているが、この位置づけを見直し、米国にも 見られるように、公認会計士登録を資格登録と業務登録(ライセンス) に分け、インターン制度を公認会計士として業務を行う場合の登録要件 とすることについても検討する必要があるとの指摘がある。
 なお、将来の公認会計士にふさわしい人材を多数育成するために、弁 護士資格に関連して議論されている「ロースクール」に相当するような 会計に関する教育機関の設置が検討されるべきではないかとの意見もあり、今後十分に議論が深められていく必要がある。

(3)  公認会計士の質の充実について

 公認会計士に対しては、より深い専門的知識と幅広い識見が従来にも 増して必要とされてきており、公認会計士の数の増加要請を満たしつつ、公認会計士の質の充実が図られるよう留意する必要がある。
 資格取得者が増加することは、資格取得後において公認会計士間の適 正な競争が促進されることから、結果として全体の水準向上に資するも のと考えられる。
 公認会計士の質の充実を図りつつ、公認会計士の数の増加を図ってい くためには、まず、試験制度の見直し等を通じて、社会人等の多様な人 材を含む受験者の大幅な増加を図ることが必要であると考えられる。  
 なお、公認会計士として引き続き多くの優秀な人材を確保していくた めには、試験制度の見直しと併せて、関係者が受験者増加のための広報 活動等を更に積極的に行うとともに、公認会計士の職業を社会的・経済 的に真に魅力のあるものにする努力を重ねていくことが必要である。
 更に、公認会計士資格取得までの実務補習や業務補助等のインターン における研修等や資格取得後における日本公認会計士協会が実施してい る継続的専門教育を通じて、引き続き専門的知識などの習得に努めていくことが重要である。

3. 公認会計士試験制度のあり方
(1)  第1次試験について

 1次試験は、第2次試験を受けるのに相当な一般的学力を有するかどうかを判定するため、国語、数学、外国語(英語)及び論文について、筆記の方法により、年1回実施さ れている。受験資格については、特に制限はない。
  第1次試験については、受験者の高学歴化等を背景に試験免除者が多くなり受験申込者の大幅な減少が顕著に見られるところであり(平成12年141 名)、今後も同様の傾 向が見込まれている。このような状況を踏まえ、第2次試験によっても受験者が一般的学力を有していることを判定することは可能であるとも考えられることから、第1次試験 を廃止し、受験者全員が現在の第2次試験から受験できるようにすることが考えられる。
  他方、公認会計士として、これまでどおり、一般的学力として大学生 程度の国語・英語・数学等の知識を有していることが必要とされるべき であり、第1次試験の免除の対象 とならない者が第2次試験を受けることができるように、第1次試験を残しておくべきであるとの指摘があり、第1次試験の廃止の是非について検討を行う必要があると考えら れる。

(2)  第2次試験について

 第2次試験は、会計士補となるのに必要な専門的学識を有するかどう かを判定するため、短答式(択一式)試験及び短答式に合格した者に対 して行う論文式試験からなっている。試験科目は、短答式が会計学(簿記、財務諸表論、原価計算及び監査論)及び商法であり、論文式は必須 科目が会計学・商法であり、選択科目は、経営学・経済学・民法の3科 目から2科目を選択することとなっており、一括合格が条件となっている。
 第2次試験は、公認会計士試験の中心をなしているものであるが、前 述のように、受験者の負担、公認会計士の質の充実などの観点から、問題点が指摘されており、それらに対応するため、次の諸点について検討することが必要であると考えられる。

[1]  試験科目等の見直しについて

 受験者の負担軽減を図ることにより、社会人を含む多様な人材が受験し易いものとするとともに、公認会計士として必要とされる専門的学識を的確に判定するとの観点から、短答式試験と論文式試験、第2次試験と第3次試験、必須科目と選択科目について、試験科目数の見直しや科目の振り分けなどを検討する必要があると考えられる。 
 また、試験問題の内容の標準化や出題範囲の明確化をより一層図る 必要があると考えられる。
 具体的には、

 科目を集約して、試験科目数を減らしてはどうか。

 「簿記」「原価計算」については、基礎的な知識は最低必要であ るが、計算問題中心であり、理論問題中心の論文式から外して短答式試験のみの出題としてはどうか。また、問題量が過大とならないようにするとともに、出題範囲の明確化や出題内容の標準化を徹底することが必要ではないか。 

 「監査」については、第2次試験の出題範囲を基礎理論に限定し、実務的な内容は第3次試験の出題としてはどうか。 

 「経済学」は選択科目ではなく、必須科目とし、マクロ・ミクロの両方から出題してはどうか。

 「経営学」については、出題範囲が広く不明確であり、その範囲を、会計と関係の深い企業財務に関連した分野に限定してはどうか。

 「民法」については、出題範囲を明確にし、公認会計士の職務と 関連の薄い、親族編・相続編をはずしてはどうか。
などの意見が出されており、公認会計士に求められる学識等が変化していることを踏まえ、適切な試験科目、出題範囲や出題内容を検討していくことが必要である。 

 

[2]  科目合格制の導入について

 論文式試験においては、7科目を一括して合格することが必要とされているが、特に社会人等の受験者にとって大きな負担となっており、税理士試験に見られるようなすべての試験科目についての科目合格制、あるいは必須科目(会計学・商法)については一括して合格することを条件に選択科目については科目合格を認めるような制度を導入すべきであるとの意見がある。
 科目合格制の導入により、受験者にとって勉強がし易くなり、特に 社会人等の受験者数は増加するものと考えられる。しかしながら、現 在の一括して合格する方式は、総合評価であるため得意科目で不得意 科目をカバーできるが、科目合格制ではこれができず、受験者にとっ て必ず合格しやすくなるとばかりはいえず、受験者数の増加に結びつ かないのではないか。また、一つ一つの科目の積み重ねであるため、 受験者の能力の総合的な判断に結びつきにくく公認会計士の質の低下につながるのではないかとの指摘もある。
 したがって、科目合格制の導入は、受験負担の軽減等を通じて受験 者や合格者を増加させ得る有効な選択肢であると考えられるが、上記 のような指摘を踏まえ、試験科目の見直しと併せ、科目合格制の導入 の是非及び導入するとした場合の方法などについて十分に検討していくことが必要である。

[3]  短答式試験の免除措置の導入について

 短答式試験は、平成4年の公認会計士法の改正により、基礎的な科目である会計学及び商法について試験を実施しこれに合格した者についてのみ論文式試験を実施することにより、論文式試験の答案採点の精度を確保するとともに、併せて広く一般的な知識を有しているか否かを判定することを目的として導入されたものである。
 これについては、受験者の負担を軽減する等の観点から、短答式試 験合格者に対しては、その後の一定期間(例えば、1年程度)について短答式試験を免除する措置を導入してはどうかとの意見がある。
 この点については、短答式試験の免除措置を導入した場合、論文式 試験の受験者の大幅な増加につながることになるが、短答式試験制度 を導入した目的である論文式試験答案の採点精度を保ちつつ、答案採 点枚数の増加に対応することが可能かどうか、答案採点の実施方法や論文式試験受験資格の有効期間等を含めて検討していく必要がある。

 

(3)  インターン制度(実務補習、業務補助等)について

 現行制度では、第3次試験の受験要件として、会計士補又は会計士補となる資格を有する者について、1年を超える実務補習と2年を超える 業務補助又は実務従事が義務付けられている。
 このうち、実務補習については、大多数の者が夜間に行われる日本公 認会計士協会の実務補習所で受講している。また、業務補助については、公認会計士又は監査法人の監査証明業務を補助し、実務従事は、会社等の法人において財務分析等の事務に従事することとされている。社会人等については、実質的に実務補習の受講や業務補助等の実施が困難であり公認会計士資格を取得する上で大きな障害になっているとの指摘がある。
 このような指摘を踏まえ、実務従事の対象となる業務の範囲を拡大し、社会人等の多様な人材が第3次試験の受験資格を得やすくできるように することが公認会計士数の増加や公認会計士の裾野の拡大につながると 考えられる。他方、範囲の拡大が監査証明業務を本来業務とする公認会 計士のインターン制度として適切かどうかといった指摘もあり慎重に検討する必要がある。
 また、実務補習や業務補助については、その内容のより一層の充実・強化が必要であり、インターンとしての期間やカリキュラムなどについて検討を行う必要があると考えられる。

 

(4)  第3次試験について

 第3次試験は、公認会計士となるのに必要な高等の専門的応用能力を 有するかどうかを判定するため、「財務に関する監査、分析その他の実 務(税に関する実務を含む)及び論文」について、筆記及び口述の方法 により年1回行われている。このうち、口述試験は、筆記試験において 一定以上の成績を得た者について、「筆記試験だけでは判定できない公認会計士としての資質を見い出し、合格の判定度を高めるために筆記試験を補完する」ことを目的に行われている。             
 第3次試験は公認会計士となるための最終試験であり、第2次終了後3年間の実務経験等の成果を判定することが求められているが、次の諸点について検討することが必要であると考えられる。

[1]  口述試験について
 現行の口述試験は、筆記試験において公認会計士審査会が相当と認める成績を得た者に対して行われており、近年においては口述試験受験者の約90%弱(3次試験全体では、60%弱)が合格しているところである。
 公認会計士の業務においては、会計士補の場合と異なり、企業経営者等との交渉力等が非常に重要な要素を占めてくることから、口述試験において筆記試験では判定できない公認会計士としての資質を判定することが適当であるとして、口述試験の重要性を指摘する声は強い。また、第3次試験における口述試験の位置づけやその実施方法等について見直しを行っていく必要があるとの指摘があることから、口述試験制度の実効性を高めるよう試験委員数の増加やその実施方法等の改善について検討することが必要であると考えられる。 
[2]  験科目等について

 現行の第3次試験は、実務的な専門的応用能力を判定するとの観点から、「監査、分析その他の実務、税、論文」の4科目について実施されている。
 第3次試験が公認会計士資格取得の最終試験であると位置づけられていることから、現在行われている4つの科目は、概ね適当であると思われる。このうち、「論文」については、公認会計士として具有すべきいわゆる一般教養を有しているかを判定するものとされているが、内容が分かりにくいとの指摘があり、出題内容等を明確化する必要があるものと考えられる。
 また、会計士業務の多様化、国際化、高度情報化等の観点を踏まえ、各試験科目の出題範囲をより実務に即したものにするなど、検討を行う必要があると考えられる。

以上のような第1次〜第3次にわたる各試験及びインターン制度についての検討に加えて、現行の体系にとらわれずに、社会人を含む多様な人材 が公認会計士資格を取得しやすくなるよう途を拡げることや、いわゆる「ロースクール」に相当するような会計に関する教育機関の設置についても議論が深められていく必要がある。

 

4. 試験実施のあり方
(1)  試験問題の出題内容及び範囲について

現在、公認会計士試験問題の出題及び採点は、公認会計士審査会の推薦に基づき大蔵大臣が任命した試験委員が行っており、例えば、第2次 試験においては、各科目の試験委員が、会計士補となるのに必要な学識を有しているかを判定するにふさわしい問題を作成するよう努めているところである。
また、受験者の勉強方法が、ややもすると暗記中心となっており会計士業務に不可欠な思考能力、判断力の育成が阻害されつつあるのではないかとの指摘があり、より思考能力を試すということに重点を置いた基本的問題の出題が望ましいとの指摘がなされている。また、引き続き、出題範囲の明確化や試験問題の標準化を図っていくことが重要である。

(2)  答案の採点について

現在、択一式で行われている第2次試験の短答式試験を除き、各試験 委員が採点を実施しているところであるが、現在においても、大量の答案を短期間に採点する必要があることから、各試験委員の負担は重いものとなっているところである。 
 加えて、科目合格制の導入や短答式試験の免除措置の導入などの措置 を講じた場合には、答案採点対象者が大幅に増加することが予想される。
 このため、試験制度の在り方の見直しに併せて、答案採点の精度を維 持向上させていくことができるような方策を検討する必要がある。

(3)  合格判定基準・配点・模範解答等の公表について

 現在、公認会計士試験においては、合格判定基準、配点、模範解答については、その公表を行っていない。なお、第2次試験の論文式試験については、不合格者のうち希望者に対してはランクにより成績の通知を行っている。
合格判定基準、配点、模範解答等の公表に関しては、資格試験におけ る公平性・透明性を確保する観点等から、基本的には公表することが望 ましいと考えられるが、例えば、論文式問題などの考え方を問うような問題における模範解答の公表については、解答が必ずしも一つとはならないことにより却って受験者の混乱を招く可能性もあるなど、その方法 等については十分に検討を行う必要がある。