1.日 時 平成9年4月11日(金)14時00分〜16時05分 2.場 所 本庁舎第1特別会議室 3.議 題 (1) 参考人意見陳述(業態間の参入促進) (2) 持株会社制度の導入について (3) 業態間の参入促進について 4.議事概要 ・ 4月11日(月)に保険審議会第5回基本問題部会が開かれた。 ・ まず、業態間の参入促進について、参考人の三菱信託銀行の内海専務取締役よ り意見陳述があった後、質疑等が行われた。 ・ 次に、持株会社制度の導入ついて、事務局より説明が行われた後、自由討議が 行われた。 ・ 次いで、業態間の参入促進について、事務局より説明が行われた後、自由討議 が行われた。 意見陳述及び自由討議で出された意見は、おおむね以下のとおり。 (1) 参考人意見陳述(業態間の参入促進) (a) 三菱信託銀行内海専務取締役(参考人)の意見陳述(業態間の参入促進につい て) ○ 保険会社と他の金融業態間の参入促進については、単なる競争促進という観 点だけではなく、各業態がこれまで培ってきた専門性・ノウハウ等をそれぞれ の参入業務に活かし、利用者の多様なニーズに応えていくという観点が肝要で あり、銀行、信託、証券、保険間の相互参入の枠組みを作ることは必要である、 との意見があった。 ○ 参入の方式としては、リスク遮断の観点に加え、公平な競争条件の確保、専 業による専門性の発揮といった観点からも、現行法制のもとでは、業態別子会 社方式が適当であるが、金融持株会社が解禁された場合には、弊害防止措置等 につき現行の業態別子会社方式と整合性を保てる限り、持株会社方式を採用す ることも考えられる、との意見があった。 ○ 信託業務と保険業務との間では、なかでも生命保険業務については、長期貯 蓄機能、資産運用機能、金融仲介機能といった機能面で少なからず重なり合う 部分が多く、信託業務のノウハウ・スキルを、保険業務の中でも活かすことが できれば、利用者利便の向上に資することができる、との意見があった。 ○ 保険会社が信託銀行子会社を通じて信託業務に参入する場合も、利益相反の 防止、信託の受益者保護、競争条件の公平性等、といった観点から、銀行・証 券から信託への参入に係る弊害防止措置と同様の措置が設けられるべきである、 との意見があった。 ○ 生損保の相互参入では、経営資源の有効活用の観点から、親子間の販売チャ ネルの共有が認められているが、このような保険業態間でのクロス・マーケテ ィングの考え方と保険と金融他業態間の相互参入における考え方は異なるので はないか。業務の特性や公正な競争条件の確保等の観点からすれば、保険会社 と金融他業態間の相互参入における親子間の販売チャネルの在り方については、 慎重に検討する必要がある、との意見があった。 ○ 金融システム改革には、保険と銀行・信託・証券間の参入促進も含まれてお り、少なくとも、金融システム改革の終了時までには保険と金融他業態間の参 入の枠組みの整備は完了されるべきである、との意見があった。 ○ 保険業界における自由化の進行の中で、保険契約者の混乱の回避等のため、 ソフトランディングが必要であるとすれば、親会社の業務等の面で、互いに親 近性があるところから、段階的に参入を認めていく考え方もある、との意見が あった。 (b) 参考人の意見陳述に対する意見 ○ 信託から保険への参入については、業態別子会社方式が適当という考え方に は賛成する、との意見があった。 ○ 信託業は、保険業と同様、高い専門性を必要とする事業であり、各々の専門 家がそれぞれの高いスキルを十分に発揮する方が、利用者の真の利益につなが る、との意見があった。 ○ 銀行は多大の影響力を持っていること、信託銀行は信託業と銀行業をあわせ て行っているという実態があることを考慮すれば、信託が保険業に参入する場 合には、銀行が保険業に参入する場合と同様の弊害が懸念される、との意見が あった。 ○ 平成6年の保険審議会報告では、漸進的かつ段階的に制度改革を実施するこ ととされており、業態間の参入の時期については、金融システム改革終了時点 とは直ちに結びつくものではない、との意見があった。 (2) 持株会社制度の導入について ○ 保険に係る持株会社の規制の在り方については、(a)親会社は子会社である保 険会社の経営に何らかの影響を及ぼすことが考えられるので、契約者保護、保 険会社の健全性確保のためには、親会社にも何らかの規制が必要ではないか、 (b)ビッグバンの趣旨に沿って規制はできるだけ簡素とすることが望ましい、(c) グローバルの観点から、国際的整合性に配慮することが適当、といった視点に 立って、検討を進めるべきではないか、との意見があった。 ○ 現行の保険業法には親会社への規制はないが、それにより問題は生じていな いので、親会社への規制は保険会社の監督に必要な最小限の範囲に止めるべき である、との意見があった。 ○ ビッグバンと独禁法改正案の趣旨を考慮すれば、持株会社を利用した保険と 他業態との間の参入については、事業支配力が過度に集中することとならない 限り、原則として認められるべきである、との意見があった。 ○ 持株会社を利用した銀行の保険業への参入については、消費者保護や競争政 策等の面で弊害があり、かつ弊害防止措置を設けても克服できない面があるこ とから、米国のように禁止し、保険会社を子会社に持つ持株会社は、銀行業以 外の一般事業を営む会社を子会社として保有することができることとするのが 望ましい、との意見があった。 ○ 保険会社の子会社及び関連会社への出資比率、業務範囲、収入依存度等に係 る独禁法上の規制については、今後、緩和すべき、との意見があった。 ○ 金融事業から一般事業への参入については、事業支配力の過度の集中になら ない限り、原則自由にすべき、との意見があった。 ○ 持株会社の子会社の法人格が別であるからというだけで、リスク遮断ができ るということにはならず、アームズ・レングス・ルールに加え、例えば持株会 社・兄弟会社を経由した融資を認めないといった競争政策上の弊害防止や金融 機関の健全性確保の観点からのリスク遮断のためのしっかりとしたファイアー ・ウォールを設けるべきである、との意見があった。 ○ 保険相互会社と保険株式会社との間で公正な競争条件の確保を図るとの観点 から、川上持株会社と川下持株会社の業務範囲や資金調達等について、イコー ル・フッティングを確保すべきである、との意見があった。 ○ 保険持株会社の子会社の業務範囲には、子会社方式による業態間の相互参入 が実現した場合には、銀行等も含むこととし、その他、生損保子会社、投資顧 問会社、関連会社規制に基づく関連会社等も含むこととすることが適当である、 との意見があった。 ○ 経営選択肢の拡大を図るという持株会社制度導入の趣旨にかんがみれば、現 行の保険会社の関連会社規制については、出資比率の制限の見直しや業務範囲 の拡大といった見直しが必要である、との意見があった。 ○ 少なくとも、現在、保険会社の関連会社が行うことができることとされてい る投資顧問業やリース業などの金融関連業務及び健康・福祉関連業務等を行う 会社については、川上持株会社及び川下持株会社のどちらについても、50% 超の株式を保有することができるようにすべきである、との意見があった。 ○ 持株会社や兄弟会社に対しても、報告徴収権や立入検査権等の一般的監督権 を有するべきである、との意見があった。 ○ 保険会社の健全性確保の観点から、持株会社に対する弊害防止措置を設ける べきである、との意見があった。 ○ 免許制や監督の有効性を妨げない範囲において、持株会社を活用した幅広い 分社化が可能とすることが適当である、との意見があった。 ○ 従来、事業会社が保険会社を子会社に持つことに規制は設けられていないが、 今後、一層の参入促進が図られることとなれば、優良な会社だけが参入してく るという保証はないので、何らかの規制が必要となる。この場合、グローバル の観点から、欧米で提案されているような保険持株会社に係る規制を導入する ことが適当である、との意見があった。 ○ 諸外国の例を見れば、持株会社の傘下で一般事業会社と保険会社が並ぶこと について規制は設けられていないが、我が国においてそれが無制限でよいとは 言えない、との意見があった。 ○ 仮に、川下持株会社が認められるとしても、川下持株会社は保険会社の子会 社であり、保険会社の他業禁止の趣旨が及ぶこととなるので、業務範囲等につ いて、川上持株会社と川下持株会社が完全にイコールとすることはできないの ではないか、との意見があった。 ○ 川下持株会社の子会社に係る規制については、現行の保険会社の子会社に係 る規制よりも、より柔軟なものとしてよいのではないか、との意見があった。 ○ 弊害防止措置については、川上持株会社と川下持株会社とで同じものが必要 である、との意見があった。 ○ 金融持株会社に対する規制・監督はナショナル・ミニマムを守る最小限のも のとすべき、との意見があった。 ○ 仮に、銀行を傘下に持つ持株会社について、一般事業法人を持つことが認め られないこととなる場合、保険会社を子会社に持つ持株会社が銀行を子会社と して持った場合には、一般事業会社を傘下に持つことは認められないと考える のが自然である、との意見があった。 ○ リスク遮断の困難性については、川上持株会社と川下持株会社について同様 であり、業務範囲についてイコール・フッティングが図られるべき、との意見 があった。 ○ 親会社に対する規制は、保険会社自体に適用される規制と同じものとする必 要はなく、必要最少限の規制、例えば、監督当局が、実態的にみて弊害や問題 があると判断した場合にのみ、立入検査権、資料提出命令権、行為差止命令権、 株式売却命令権を有するといった規制とすることが適切である、との意見があ った。 ○ 持株会社制度の利用に当たっては、保険会社がこれまで蓄積してきたノウハ ウ等を役立たせるような環境整備が必要であり、保険持株会社の子会社の業務 範囲は、保険会社本体あるいは子会社が行うことが可能な業務の範囲よりも広 くするべきである、との意見があった。 ○ 無制限の自由化は弊害があることから、親会社に対する規制はある程度必要 であり、その際、市場支配力を一つの目安として考えたらどうか、との意見が あった。 ○ 規制に基づく業務範囲の制限についてイコール・フッティングを図るという のは理解できるが、市場経済の中で、各企業の経営努力により取得してきたも のまでイコール・フッティングを図るべきというのは問題がある、との意見が あった。 (3) 業態間の参入促進について ○ 前回の基本問題部会の議論において、銀行から保険への参入を除く、証券・ 信託から保険への参入、保険から銀行・証券・信託への参入の5類型について は、ファイアー・ウォールの確立等の条件を整備すれば、参入を認めること自 体に異論がなかった、との指摘があった。 ○ 決済機能を独占的に担い、特別な立場にある銀行の実態を踏まえれば、銀行 を傘下に収める持株会社については、管理・監督のあり方を含め、慎重に検討 する必要がある、との意見があった。 ○ 銀行、証券の相互参入の実態をみると、ファイアー・ウォールは必ずしも徹 底されておらず、ファイアー・ウォールの整備を前提とした議論には限界があ る、との意見があった。 ○ 相互参入の検討に当たっては、ファイアー・ウォールの信頼性がポイントに なるが、ファイアー・ウォールの効果については、実際に不正行為が行われた か否かで判断すべきである、との意見があった。 ○ 競争原理の導入が重要であり、仮に、急激に競争を導入することに問題があ るのならば、ある程度期限を切って、その間はある程度の制限をすることとす べきであり、最初から参入禁止というのは、ビッグバンの趣旨に反する、との 意見があった。 ○ 保険から他の金融業態への参入については、シナジー効果が見込まれ、契約 者利便に資するものと考えられるが、参入に当たっては、保険会社の経営の安 定性の回復、自己資本の充実、早期是正措置の充実、実効性のある破綻処理制 度の構築といった課題への対応が前提である、との意見があった。 ○ 弊害防止の実効性、銀行の影響力への懸念を踏まえると、参入は銀行本体に よる窓口販売でなく、子会社方式による相互参入とすることを前提にして、抱 き合わせ販売や情報流用の防止措置、アームズ・レングス・ルールの適用とい った弊害防止措置を講じた上で、実施するべきである、との意見があった。 ○ 消費者利便を考慮すると、シナジー効果が出る銀行本体による参入が最良で あるが、激変緩和のステップとして、まず、子会社方式から始めることも考え られる、との意見があった。 ○ 金融他業態との相互参入については、第3分野も含めた生・損保の相互参入 の完了、安全ネットの整備といった競争促進のための環境整備が先決である、 との意見があった。 ○ メインバンク制による影響力や情報力を踏まえると、銀行は公正な競争を行 う適格性を欠いており、銀行の保険業への参入については慎重かつ十分な検討 を行う必要がある、との意見があった。 ○ 銀行、保険間の相互参入については、米国の例にならって、消費者の利便も 踏まえ、問題のない商品から始めてはどうか、との意見があった。 ○ 銀行から保険への参入の問題は、(a)システミック・リスク、(b)利益相反、(c) 銀行の支配力、の3点に絞られるが、理論的に考えると、(a)システミック・リ スクについては、取り付けのような外部不経済が広がるというマイナスは、多 かれ少なかれ、保険会社も同様であり、(b)利益相反については、保険会社も貸 付を行っているので、これら2点を強調すると、保険会社から他業態への参入 も問題ということになる。また、(c)銀行の支配力は、実証が難しいが、銀行間 の競争があるため、単純な支配力の行使はしにくい、本当に銀行がプラスのア セットを持っているのであれば、他の業態が銀行を買収すれば良い、との意見 があった。 ○ 銀行の固有業務に係る部分、支配力が関係する部分については、もっと慎重 な検討を経て、結論を出すべきであるが、その他についてはビッグ・バンの時 期にできるだけ広範な相互参入を実現することが好ましい、との意見があった。 ○ 相互参入に当たって、クロス・セリングについては、弊害がない限り、でき るだけ広範に認めることにより、国民的コストを引き下げることが重要である、 との意見があった。 ○ 銀行の証券子会社の実例をみても、人的関係、持株関係、融資関係、情報等 の面で、銀行は優位な立場にあると考えられ、ファイアー・ウォールがあって も、本当に公正な競争を維持できるかについては疑問であり、銀行の他業態へ の進出には十分な検討が必要である、との意見があった。 ○ 生・損保の相互参入でさえ、消費者にあまりメリットはなく、むしろ、親生 保会社、親損保会社に与えたダメージの方が問題で、相互参入の必要性自体に 疑問を感じており、そういう点も踏まえて、議論を進めるべきである、との意 見があった。 ○ まず、相互参入によってもたらされる商品・サービスの具体的なメリットを 示すべきである、との意見があった。 ○ 参入促進により、仮に、商品の充実・多様化が図られたとしても、商品・料 率の認可制等の規制が残されたままでは、単に保険会社や保険の販売窓口が増 加しただけで、実態としては何ら変わらないこととなるのではないかと懸念し ている、との意見があった。 ○ 日米保険協議の決着に算定会制度の改革等が盛り込まれ、平成6年報告の時 の環境と現在の環境は大きく変化していることから、算定会制度の改革等の定 着度合いも制度改革に当たり見極めるべき要素に加えるべき、との意見があっ た。 ○ 平成4年の保険審議会答申等では、各金融業態の子会社方式による相互参入 を認めており、その基本的方向に沿って前向きに考えるべきである、との意見 があった。 ○ 銀行が消費者に与える圧力販売等の弊害がある場合には、監督当局の監督に 加えて、消費者自身がその不当性を訴えていくような機構を別途整備すること が適当である、との意見があった。
担 当:
大蔵省銀行局保険部保険第一課調査室 連絡先: 電話(代表) (3581)4111 内線 2812 本議事概要は暫定版であるため今後修正があり得ます。 |