1.会計基準の整備の必要性 研究開発費の総額や研究開発活動の内容等の情報は、企業の経営方針や将来の収益予測に関する 重要な投資情報と位置付けられている。しかしながら、現在の企業会計上の会計処理は、研究開発 の範囲が不明確であり、かつ、国際的な会計処理とは異なり処理方法の選択が認められていること 等から、内外企業間の比較可能性が阻害されているとの指摘がなされている。 こうしたことから、企業の研究開発に関する適切な情報提供を通じ、企業間の比較可能性を担保 するとともに会計処理の国際的調和を図るため、研究開発費に係る会計基準を整備する必要がある。 2.包括的会計基準の設定 企業活動におけるソフトウェアの果たす役割が急速に重要性を増しているが、現在、ソフトウェ アについては明確な会計基準が存在しない。 ソフトウェアの制作過程には研究開発に当たる活動が含まれているため、本基準において、研究 開発費に係る会計基準の設定と併せてソフトウェアに関する会計基準を設定することとした。 3.会計基準の要点 (1) 研究・開発の定義、構成原価要素の明確化 ○ 内企業間の比較が可能となるよう、国際的にも整合性のある研究・開発の定義を定める。 ○ 人件費、原材料費等、研究開発のために費消されたすべての原価を研究開発費とする。 (2) 研究開発費の発生時費用処理 研究開発費は将来の収益獲得が不確実であり、また、実務上客観的に判断可能な一定の資産計 上要件を定めることは困難であるため、すべて発生時に費用処理する。 (3) ソフトウェアに係る会計基準の設定 ○ 受注制作 : 請負工事の会計処理に準じた処理(進行基準又は完成基準)を行う。 ○ 市場販売目的: 最初に製品化された製品マスターの完成までの制作費等は研究開発費とし て費用処理する。完成後の機能の改良・強化に係る制作費は、無形固定資産 として計上する。 ○ 自社利用 : 外部へサービス提供する契約が締結されている場合や完成品を購入した場 合のように、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合に 限り、無形固定資産として計上する。 (4) 研究開発費の総額の注記 研究開発費の総額を財務諸表に注記する。 4.実施時期 本基準は、平成11年4月1日以後開始する事業年度から実施されるよう措置することが適当で ある。