実施時期等

  1. 実施時期

(1)

 金融商品に係る会計基準は、平成12年4月1日以後開始する事業年度から実施されるよう措置することが適当である。


(2)


 その他有価証券については、平成12年4月1日以後開始する事業年度は帳簿価額と期末時価との差額について税効果を適用した場合の注記を行うこととし、財務諸表における時価評価は平成13年4月1日以後開始する事業年度から実施することが適当である。ただし、平成12年4月1日以後開始する事業年度から財務諸表において時価評価を行うことも妨げないこととする。


(3)


 本基準のうち、金融商品の評価基準に関係しない金融資産及び金融負債の発生又は消滅の認識、貸倒見積高の算定方法については、実施に関する実務上の対応が可能となった場合には、平成12年4月1日前に開始する事業年度から適用することを妨げないこととする。


(4)


 本基準の実施に際し、「外貨建取引等会計処理基準」との調整が必要となるため、当審議会において、今後早急に検討する必要がある。また、時価情報の注記方法についても所要の見直しが必要となる。 
  1. 経過措置

(1)

 いわゆるローン・パーティシペーションやデット・アサンプションは、本基準における金融資産及び金融負債の消滅の認識要件を充たさないこととなるが、当分の間、次のように取り扱うこととする。

(1)

 ローン・パーティシペーションは、我が国の商慣行上、債権譲渡に際して債務者の承諾を得ることが困難な場合、債権譲渡に代わる債権流動化の手法として広く利用されている。このような実情を考慮し、債権に係るリスクと経済的利益のほとんどすべてが譲渡人から譲受人に移転している場合等一定の要件を充たすものに限り、当該債権の消滅を認識することを認めることとする。

(2)

 デット・アサンプションは、我が国では社債の買入償還を行うための実務手続きが煩雑であることから、法的には債務が存在している状態のまま、社債の買入償還と同等の財務上の効果を得るための手法として広く利用されている。従って、改めて、オフバランスした債務の履行を求められることもあり得るが、このような手続上の実情を考慮し、取消不能の信託契約等により、社債の元利金の支払いに充てることのみを目的として、当該元利金の金額が保全される資産を預け入れた場合等、社債の発行者に対し遡求請求が行われる可能性が極めて低い場合に限り、当該社債の消滅を認識することを認めることとする。


(2)


 ヘッジ会計の適用に当たり、決済時における円貨額を確定させることにより為替相場の変動による損失の可能性を減殺するため、為替予約、通貨先物、通貨スワップ及び権利行使が確実に見込まれる買建通貨オプションを外貨建金銭債権債務等のヘッジ手段として利用している場合において、ヘッジ会計の要件が充たされているときは、「外貨建取引等会計処理基準」における振当処理も、ヘッジの効果を財務諸表に反映させる一つの手法と考えられるため、当分の間、振当処理を採用することも認めることとする。
 なお、これらの経過措置を必要とすることに関し実務上の制約がなくなったときは、本基準に従って会計処理される必要があるため、今後、適宜、当該経過措置の見直しを行うものとする。
  1. 実務指針等
     本基準を実務に適用する場合の具体的な指針等については、今後、関係省令を整備するとともに、日本公認会計士協会が関係者と協議のうえ適切に措置することが必要である。また、業種固有の問題についても実務的取扱いを定めることが必要と考える。


金融商品に係る会計基準


第一 金融資産及び金融負債の範囲等

一 金融資産及び金融負債の範囲
 金融資産とは、現金預金、受取手形、売掛金及び貸付金等の金銭債権、株式その他の出資証券及び公社債等の有価証券並びに先物取引、先渡取引、オプション取引、スワップ取引及びこれらに類似する取引(以下、「デリバティブ取引」という。)により生じる正味の債権等をいう。
 金融負債とは、支払手形、買掛金、借入金及び社債等の金銭債務並びにデリバティブ取引により生じる正味の債務等をいう。(注1)

二 時価
 時価とは公正な評価額をいい、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場(以下、「市場価格」という。)に基づく価額をいう。市場価格がない場合には合理的に算定された価額を公正な評価額とする。(注2)

第二 金融資産及び金融負債の発生及び消滅の認識

一 金融資産及び金融負債の発生の認識
 金融資産の契約上の権利又は金融負債の契約上の義務を生じさせる契約を締結したときは、原則として、当該金融資産又は金融負債の発生を認識しなければならない。(注3)

二 金融資産及び金融負債の消滅の認識

  1. 金融資産の消滅の認識要件
     金融資産の契約上の権利を行使したとき、権利を喪失したとき又は権利に対する支配が他に移転したときは、当該金融資産の消滅を認識しなければならない。
     金融資産の契約上の権利に対する支配が他に移転するのは、次の要件がすべて充たされた場合とする。

(1)

 譲渡された金融資産に対する譲受人の契約上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に保全されていること


(2)


 譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できること(注4)


(3)


 譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していないこと
  1. 金融負債の消滅の認識要件
     金融負債の契約上の義務を履行したとき、義務が消滅したとき又は第一次債務者の地位から免責されたときは、当該金融負債の消滅を認識しなければならない。

  2. 金融資産及び金融負債の消滅の認識に係る会計処理
     金融資産又は金融負債がその消滅の認識要件を充たした場合には、当該金融資産又は金融負債の消滅を認識するとともに、帳簿価額とその対価としての受払額との差額を当期の損益として処理する。
     金融資産又は金融負債の一部がその消滅の認識要件を充たした場合には、当該部分の消滅を認識するとともに、消滅部分の帳簿価額とその対価としての受払額との差額を当期の損益として処理する。消滅部分の帳簿価額は、当該金融資産又は金融負債全体の時価に対する消滅部分と残存部分の時価の比率により、当該金融資産又は金融負債全体の帳簿価額を按分して計算する。
     金融資産又は金融負債の消滅に伴って新たな金融資産又は金融負債が発生した場合には、当該金融資産又は金融負債は時価により計上する。

第三 金融資産及び金融負債の貸借対照表価額等

一 債権
 受取手形、売掛金、貸付金その他の債権の貸借対照表価額は、取得価額から貸倒見積高に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額とする。ただし、債権を債権金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債権金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額から貸倒見積高に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額としなければならない。(注5)

二 有価証券

  1. 売買目的有価証券
     時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券(以下、「売買目的有価証券」という。)は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として処理する。

  2. 満期保有目的の債券
     満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券(以下、「満期保有目的の債券」という。)は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない。(注5)(注6)

  3. 子会社株式及び関連会社株式
     子会社株式及び関連会社株式は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。

  4. その他有価証券
     売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券(以下、「その他有価証券」という。)は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は洗い替え方式に基づき、次のいずれかの方法により処理する。

(1)

 評価差額の合計額を資本の部に計上する。


(2)


 時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価差額は資本の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額は当期の損失として処理する。
 なお、資本の部に計上されるその他有価証券の評価差額については、税効果会計を適用し、資本の部において他の剰余金と区分して記載しなければならない。(注7)
  1. 市場価格のない有価証券
     市場価格のない有価証券の貸借対照表価額は、それぞれ次の方法による。

(1)

 社債その他の債券の貸借対照表価額は、債権の貸借対照表価額に準ずる。


(2)


 社債その他の債券以外の有価証券は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。
  1. 時価が著しく下落した場合
     満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式並びにその他有価証券のうち市場価格のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない。
     市場価格のない株式については、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額をなし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない。
     なお、これらの場合には、当該時価及び実質価額を翌期首の取得原価とする。

  2. 有価証券の表示区分
     売買目的有価証券及び一年内に満期の到来する社債その他の債券は流動資産に属するものとし、それ以外の有価証券は投資その他の資産に属するものとする。

三 運用目的の金銭の信託
 運用を目的とする金銭の信託(合同運用を除く。)は、当該信託財産の構成物である金融資産及び金融負債について、本基準により付されるべき評価額を合計した額をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として処理する。(注8)

四 デリバティブ取引
 デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は、原則として、当期の損益として処理する。

五 金銭債務
 支払手形、買掛金、借入金その他の債務は、債務額をもって貸借対照表価額とする。
 社債は、社債金額をもって貸借対照表価額とする。社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合には、当該差額に相当する金額を資産又は負債として計上し、償還期に至るまで毎期一定の方法で償却しなければならない。

第四 貸倒見積高の算定

一 債権の区分
 貸倒見積高の算定にあたっては、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて、債権を次のように区分する。

  1. 経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権(以下、「一般債権」という。)

  2. 経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権(以下、「貸倒懸念債権」という。)

  3. 経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権(以下、「破産更生債権等」という。)

二 貸倒見積高の算定方法
 債権の貸倒見積高は、その区分に応じてそれぞれ次の方法による。(注9)

  1. 一般債権については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する。

  2. 貸倒懸念債権については、債権の状況に応じて、次のいずれかの方法により貸倒見積高を算定する。ただし、同一の債権については、債務者の財政状態及び経営成績の状況等が変化しない限り、同一の方法を継続して適用する。

(1)

 債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法


(2)


 債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積もることができる債権については、債権の元本及び利息について元本の回収及び利息の受取りが見込まれるときから当期末までの期間にわたり当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法
  1. 破産更生債権等については、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とする。(注10)

第五 ヘッジ会計

一 ヘッジ会計の意義
 ヘッジ会計とは、ヘッジ取引のうち一定の要件を充たすものについて、ヘッジ対象に係る損益とヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジの効果を会計に反映させるための特殊な会計処理をいう。(注11)

二 ヘッジ対象
 ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象は、相場変動等による損失の可能性がある資産又は負債で、当該資産又は負債に係る相場変動等が評価に反映されていないもの、相場変動等が評価に反映されているが評価差額が損益として処理されないもの若しくは当該資産又は負債に係るキャッシュ・フローが固定されその変動が回避されるものである。なお、ヘッジ対象には、予定取引により発生が見込まれる資産又は負債も含まれる。(注12)

三 ヘッジ会計の要件
 ヘッジ取引にヘッジ会計が適用されるのは、次の要件がすべて充たされた場合とする。

  1. ヘッジ取引時の要件
     ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、取引時に、次のいずれかによって客観的に認められること

(1)

 当該取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、文書により確認できること


(2)


 企業のリスク管理方針に関して明確な内部規定及び内部統制組織が存在し、当該取引がこれに従って処理されることが期待されること
  1. ヘッジ取引時以降の要件
     ヘッジ取引時以降において、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が高い程度で相殺される状態又はヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される状態が引き続き認められることによって、ヘッジ手段の効果が定期的に確認されていること

四 ヘッジ会計の方法

  1. ヘッジ取引に係る損益認識時点
     ヘッジ会計は、原則として、時価評価されているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで資産又は負債として繰り延べる方法による。
     ただし、ヘッジ対象である資産又は負債に係る相場変動等を損益に反映させることにより、その損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識することもできる。(注13)(注14)

  2. ヘッジ会計の要件が充たされなくなったときの会計処理
     ヘッジ会計の要件が充たされなくなったときには、ヘッジ会計の要件が充たされていた間のヘッジ手段に係る損益又は評価差額は、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで引き続き繰り延べる。
     ただし、繰り延べられたヘッジ手段に係る損益又は評価差額について、ヘッジ対象に係る含み益が減少することによりヘッジ会計の終了時点で重要な損失が生じるおそれがあるときは、当該損失部分を見積もり当期の損失として処理しなければならない。

  3. ヘッジ会計の終了
     ヘッジ会計は、ヘッジ対象が消滅したときに終了し、繰り延べられているヘッジ手段に係る損益又は評価差額は当期の損益として処理しなければならない。また、ヘッジ対象である予定取引が実行されないことが明らかになったときにおいても同様に処理する。

第六 複合金融商品

一 払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品の会計処理
 契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品である新株引受権付社債及び転換社債の発行又は取得については、それぞれ次のように処理する。(注1)

  1. 新株引受権付社債の会計処理

(1)

 発行者側の会計処理
 新株引受権付社債の発行価額は、社債の対価部分と新株引受権の対価部分とに区分する。
 社債の対価部分は、普通社債の発行に準じて処理する。
 新株引受権の対価部分は負債の部に計上し、権利が行使されたときは資本準備金に振り替え、権利が行使されずに権利行使期限が到来したときは利益として処理する。(注15)


(2)


 取得者側の会計処理
 新株引受権付社債の取得価額は、社債の対価部分と新株引受権の対価部分とに区分する。
 社債の対価部分は、普通社債の取得に準じて処理する。
 新株引受権の対価部分は、新株引受権として資産に計上し、権利を行使したときは株式に振り替え、権利を行使せずに権利行使期限が到来したときは損失として処理する。(注15)
  1. 転換社債の会計処理

(1)

 発行者側の会計処理
 転換社債の発行価額は、社債の対価部分と株式転換権の対価部分とに区分せず普通社債の発行に準じて処理する又は新株引受権付社債に準じて処理する。


(2)


 取得者側の会計処理
 転換社債の取得価額は、社債の対価部分と株式転換権の対価部分とに区分せず普通社債の取得に準じて処理し、権利を行使したときは株式に振り替える。

二 その他の複合金融商品の会計処理
 契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品は、原則として、それを構成する個々の金融資産又は金融負債とに区分せず一体として処理する。(注1)


金融商品に係る会計基準注解


(注1)

 金融資産及び金融負債の範囲について
 金融資産及び金融負債の範囲には、複数種類の金融資産又は金融負債が組み合わされている複合金融商品も含まれる。
 また、現物商品(コモディティ)に係るデリバティブ取引のうち、通常差金決済により取引されるものから生じる正味の債権又は債務についても、本基準に従って処理する。

(注2)

 市場について
 市場には、公設の取引所及びこれに類する市場のほか、随時、売買・換金等を行うことができる取引システム等も含まれる。

(注3)

 商品等の売買又は役務の提供の対価に係る金銭債権債務の発生の認識について
 商品等の売買又は役務の提供の対価に係る金銭債権債務は、原則として、当該商品等の受渡し又は役務提供の完了によりその発生を認識する。

(注4)

 譲受人が特別目的会社の場合について
 金融資産の譲受人が次の要件を充たす会社、信託又は組合等の特別目的会社の場合には、当該特別目的会社が発行する証券の保有者を当該金融資産の譲受人とみなして(2)の要件を適用する。


 特別目的会社が、適正な価額で譲り受けた金融資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の保有者に享受させることを目的として設立されていること


 特別目的会社の事業が、1の目的に従って適正に遂行されていると認められること

(注5)

 償却原価法について
 償却原価法とは、債権又は債券を債権金額又は債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、当該差額に相当する金額を弁済期又は償還期に至るまで毎期一定の方法で貸借対照表価額に加減する方法をいう。なお、この場合には、当該加減額を受取利息に含めて処理する。

(注6)

 満期保有目的の債券の保有目的を変更した場合について
 満期保有目的の債券の保有目的を変更した場合、当該債券は変更後の保有目的に係る評価基準に従って処理する。

(注7)

 その他有価証券の決算時の時価について
 その他有価証券の決算時の時価は、原則として、期末日の市場価格に基づいて算定された価額とする。ただし、継続して適用することを条件として、期末前一カ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることもできる。

(注8)

 運用目的の信託財産の構成物である有価証券の評価について
 運用目的の信託財産の構成物である有価証券は、売買目的有価証券とみなしてその評価基準に従って処理する。

(注9)

 債権の未収利息の処理について
 債務者から契約上の利払日を相当期間経過しても利息の支払を受けていない債権及び破産更生債権等については、すでに計上されている未収利息を当期の損失として処理するとともに、それ以後の期間に係る利息を計上してはならない。

(注10)

 破産更生債権等の貸倒見積高の処理について
 破産更生債権等の貸倒見積高は、原則として、貸倒引当金として処理する。ただし、債権金額又は取得価額から直接減額することもできる。

(注11)

 ヘッジ取引について
 ヘッジ取引についてヘッジ会計が適用されるためには、ヘッジ対象が相場変動等による損失の可能性にさらされており、ヘッジ対象とヘッジ手段とのそれぞれに生じる損益が互いに相殺されるか又はヘッジ手段によりヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される関係になければならない。
 なお、ヘッジ対象が複数の資産又は負債から構成されている場合は、個々の資産又は負債が共通の相場変動等による損失の可能性にさらされており、かつ、その相場変動等に対して同様に反応することが予想されるものでなければならない。

(注12)

 予定取引について
 予定取引とは、未履行の確定契約に係る取引及び契約は成立していないが、取引予定時期、取引予定物件、取引予定量、取引予定価格等の主要な取引条件が合理的に予測可能であり、かつ、それが実行される可能性が極めて高い取引をいう。

(注13)

 複数の資産又は負債から構成されているヘッジ対象に係るヘッジ会計の方法について
 複数の資産又は負債から構成されているヘッジ対象をヘッジしている場合には、ヘッジ手段に係る損益又は評価差額は、損益が認識された個々の資産又は負債に合理的な方法により配分する。

(注14)

 金利スワップについて
 資産又は負債に係る金利の受払条件を変換することを目的として利用されている金利スワップが金利変換の対象となる資産又は負債とヘッジ会計の要件を充たしており、かつ、その想定元本、利息の受払条件(利率、利息の受払日等)及び契約期間が当該資産又は負債とほぼ同一である場合には、金利スワップを時価評価せず、その金銭の受払の純額等を当該資産又は負債に係る利息に加減して処理することができる。

(注15)

新株引受権付社債を区分する方法について
 発行者側においては、次のいずれかの方法により、新株引受権付社債の発行価額を社債の対価部分と新株引受権の対価部分とに区分する。


(1)

 社債及び新株引受権の発行価格又はそれらの合理的な見積額の比率で配分する方法


(2)

 算定が容易な一方の対価を決定し、これを発行価額から差し引いて他方の対価を算定する方法
 取得者側においては、1の(1)又は(2)のいずれかの方法により、新株引受権付社債の取得価額を社債の対価部分と新株引受権の対価部分とに区分する。ただし、保有社債及び新株引受権に市場価格がある場合には、その比率により区分することもできる。