1.日 時 平成9年5月6日(火)14時00分~16時00分 2.場 所 大蔵省第一特別会議室(4号館12階) 3.議 題 短期金融市場について 4.議事概要 本会合においては、まず、金融市場室長より短期金融市場の現状と課題について説 明が行われ、続いての安藤(三和銀行専務取締役)参考人より市場参加者の立場か ら短期金融市場に関する意見陳述がなされた。 安藤参考人の意見陳述の概要は以下の通り。 ・ 市場金利の自由化・取引慣行の見直しなどの努力の結果、短期金融市場は順調に 拡大。特に、80年代後半以降は、TBやCPなど新たな市場が創設され品揃えと いう面でも厚みを増している。 ・ 近年オープン市場のウエートが着実に上昇しており、今後もインターバンク市場 のウエートの低下、オープン市場のウエートの上昇が基調として続くものと考えら れる。 ・ インターバンク市場で大きく拡大してきた無担保コール市場について、期間別の 出来高残高を見てみると、オーバーナイトに取引が集中しているが、もう少し、取 引期間が多様化してもよいのではないかと考える。 ・ 日本銀行の金融調節手段については、オープン市場の拡大を背景として、貸出か ら債券現先やTBといった新しい調節手段にシフトしている。今後、さらにオペレ ーション手段の多様化を図っていく必要がある。この点については、例えばFBの 市中公募による流通量の拡大や、現金担保付債券貸借(債券レポ)のオペ実施等に より、大きく改善するものと考えている。 ・ ビックバンへ向けた短期金融市場の課題としては、(1).決済リスクを内包した制 度の是正、(2).指標性の高いマーケットの育成、(3).市場慣行・税制等の再検討が 考えられる。 ・ 決済リスクを内包した制度の是正のためには、日銀当座預金決済のRTGS化が 考えられる。RTGSは我が国金融市場の国際競争力の確保と金融機関の破綻時の システミックリスク回避という観点から、必要不可欠なインフラである。ただし、 これまで時点決済の枠組みを活用し、日中流動性がなくとも巨額の売買が行われて いた様々な現物市場が、RTGSによりまずは先立つ流動性もしくは担保を用意し なければ回らなくなることになる。よって、RTGS化への移行に際しては、(1). 決済額の圧縮、(2).担保の確保、(3).市場慣行の見直し、(4).資金偏在解消努力、 (5).決済コストを勘案したALM運営の5点の課題について検討する必要がある。 ・ 指標性の高いマーケットの育成のためには、日本においても、流動性が高く、信 用力のある均質な商品である短期国債が指標性を持つ必要があり、その流通残高を 増やす工夫により、より市場の中心商品になるべきであると考える。 また、日本円TIBORの指標性の向上のためには、無担保コール市場における ターム取引の活性化が重要である。 ・ 市場慣行・税制等の再検討については、まず、税制面については、利子所得や割 引債の償還益に対する源泉徴収税、国債等の譲渡に対する有価証券取引税、手形へ の印紙税等の問題がある。 制度面の問題としては、CDの譲渡手続は指名債券譲渡方式となっているため、 譲渡にあたって手間やコストがかかるという問題があり、譲渡手続の簡素化につい て検討すべきであると考える。 市場慣行については、コール取引に伴う約束手形の作成やCD取引に関わる証書 と日銀小切手の搬送等について見直しを検討する必要があるのではないか。 その後、自由討議が行われた。各委員の主な意見は概ね以下の通り。 ・ 短期金融市場に関し、指標性のあるマーケットづくりが重要であるとの意見があ った。 ・ RTGS化することにより資金管理面から言えば効率性が落ちる等のコストがか かることになるが、これは決済の安全性を確保するための対価と考えるべきではな いかとの意見があった。また、RTGS化により東京の金融市場の安全性が高まれ ば、海外からの信認も高まり、東京市場全体にとっては活性化に繋がることが十分 考えられるとの意見もあった。 ・ 税制について、現在オープン市場には色々な商品があるが、様々な形で有取税、 源泉徴収税が歪みをもたらしているので、是正する方向を打ち出すべきである。ま た、RTGSへスムーズに移行していくためにも、現在のコール市場は無担保オー バーナイトが殆どであるが、これを担物に移していくという方向感を出す必要があ る。FBは短期金融市場育成の面からも公募入札を行っていく方向が望ましいと考 えるとの意見があった。 ・ ビックバンの進展の中で信用リスクが増大してくると、資金の出し手はクレジッ トラインを引き、運用は厳しくなる。そこで無担と有担を適切に組み合わせていく 必要があり、無担・有担の双方で厚みを増していく必要があると考える。また、金 利の面で信用リスクを無担コール市場でどう反映していくのかといった問題もある との意見があった。 ・ RTGS化を考えてみてもレポ取引は今後ますます重要になってくると考えられ、 日本版のレポ市場を育成することには依存はないが、グローバルスタンダードとい う観点からすれば、日本版レポ市場は弾力性に欠けるものとなっている。具体的に は、仮に有取税が無くなる場合、現先とレポ取引がどのような位置づけになるかが 問題となるとの意見があった。 ・ 短期金融市場については、税制をどう変えていくのかということが本質的な問題 であるとの意見があった。 ・ 短期金融市場に関しては、マーケット原理で利率や価格が決まっているかどうか ということが重要な問題である。今後の短期金融市場においてはTBやFBを核と したいのなら、流通市場の効率化だけではなく、発行市場で形成される価格につい て市場原理に基づいて決定される透明な制度にすべきであるとの意見があった。 ・ 決済リスクの軽減策を検討する際には、与信リスクのみならず、コンピューター システムのダウンによるシステミックリスクを含めたリスク・マネージメントが大 切であるとの意見があった。 ・ 日本では、ネッティング契約があまり利用されていないが、RTGSの導入が市 場活性化を抑制しないという観点から、担保を少なくするためにネッティング契約 等を用いることも必要であるとの意見があった。 ・ 市場の使いやすさの指標として、短期資金を容易に調達できるかということがあ り、東京市場の地位を向上させるという観点からも短期金融市場の改善は重要であ る。日本の短期金融市場は当初に比べればかなり進展してきたと思うが、まだまだ 使いにくい部分もある。例えば、CDの譲渡方式の問題やFBが価格メカニズム外 に置かれていること等である。いっぺんにやれとは言わないが、短期金融市場の改 善について時間をかけて検討してほしいとの意見があった。 ┌─────────────────────────────────┐ │ 担当者: 大蔵省 銀行局 調査課 松 村、阿久澤 │ │ 連絡先: TEL 03-3581-4111 (内線2801) │ │ │ │ 本議事概要は暫定版であるため今後修正があり得ます。 │ └─────────────────────────────────┘