金融機能活性化委員会(第9回会合)議事概要
1.日 時 平成8年10月31日(木)14時00分〜16時00分
2.場 所 大蔵省第一特別会議室(合同庁舎4号館12F)
3.議 題 金融取引にかかる最新の実情、利用者ニーズとそれへの対応
4.議事概要
本会合においては、金融取引にかかる最新の実情、利用者ニーズとそれへの対応に
ついて、福間年勝参考人(三井物産専務取締役)および金児昭参考人(信越化学工業
常務取締役)より意見陳述があった。
各委員の意見及びそれを踏まえた自由討議の概要は以下の通り。
(1) 福間参考人
・ 企業金融を巡っては、1).成熟経済、低成長経済を背景とした資金需要の停滞並
びに大企業の手元流動性の積み上げ、2).資金調達手段の多様化の定着、3).企業
活動のグローバル化とそれに対応した国際財務戦略、等の環境変化が起きている。
これに対応して、1).キャッシュフロー重視とバランスシートのスリム化等財務
のリストラクチャリング、2).直接金融の定着の結果として、格付重視、ROA/
ROE重視、3).ALM重視並びに資金調達・運用のLIBOR化に伴う金融デリ
バティブ商品の活用、4).銀行の決済関連業務のアウトソーシングなど預貸業務以
外のサービスの活用、5).年金基金の運用委託先多様化等を図ってきている。
・ 金融機関に期待される役割として、金融機関の伝統的な業務である、預貸業務に
ついては、日本では個人金融資産のうち預貯金が占める割合は55%を占めるなど、
銀行業務の根幹たりえるだろうし、また、決済業務についても銀行が中心的な役割
を担っていくことには変わりはないのではないか。
また、金融仲介機能の新しい展開として、金融機関に期待される役割は、1).証
券関連業務、2).貿易金融やプロジェクトファイナンス等におけるリスクシェアリ
ング機能、3).アジアを中心とした海外でのジョイントベンチャーに対するファイ
ナンス、4).アドバイザリービジネス、5).リスクコントロールのためのデリバテ
ィブ関連業務等が挙げられる。
・ 企業と金融機関との取引態様においては、従来あったメインバンクから、コアバ
ンクスへの変化が見られる。これは、借入については、未だメインバンクという形
態が残っているが、新たな金融サービス分野に関しては、個々の金融機関の持つ専
門的な能力に応じ、適宜取引先を選んでいるということである。
・ 株式の持合いについては、一定の経済合理性があるものであると考えている。逆
に、経済合理性がないような持ち合いについては、既に解消されている。
(自由討議における主な意見)
・ 最近、米国銀行や英国銀行においては、コマーシャルバンクのトップが子会社の
証券業務に関する経営戦略上の問題についても発言するなど、近年、事実上の業務
の一体化が進んでいるのではないかと感じるとの意見があった。
・ 東京市場の空洞化について、シンガポールに移っている取引も見られるものの、
マーケット参加者の要望とすれば、資金も豊富に蓄積されており、資金に対する実
需もある東京で取引をしたいとの要望はあるし、地価が下がった現在は、実際に東
京を重視しようとする動きもある。ただし、税金や通信費用が高く、そのため取引
コストが高くなることがネックとなっているのではないかとの意見があった。
(1) 金児参考人
・ 欧米流に競争原理を究極まで押し進めることが、金融の場合にも適当であるのか
どうかについては、製造業の立場からは疑問に思う。
・ 自分は米国で銀行がどんどん倒産するのを目の当たりにしてきたが、これを踏ま
えて邦銀を取引相手にしてきた。銀行は信用が何より大事であり、「どんどん倒産
してもかまわない」というのではユーザーとしては困る。製造業ではモノを作るの
が経営の基本であり、その売上から得た大切な利益を銀行に預けている。多くの社
員が一生懸命稼いだお金を財務担当者の失敗で無にするのは許されない。
・ お互いに話し合った結果、友好的に行われるM&Aは我が国企業の活性化に役立
つであろうが、敵対的買収は本質的には日本人に馴染まないように思う。このよう
に、日本人に馴染むものと馴染まないものがあり、これを良く吟味した上で制度等
を考えてほしい。
・ 海外での資金調達を行おうとすれば、連結財務諸表は必ず求められる。これにつ
いては、制度の国際標準化が日本にも求められるであろう。ただしその際でも、日
本の会計制度のなかにある良い点を上手く生かし、それが損なわれないようにする
ことが重要である。
・ 企業価値を高めることは勿論大切なことであるが、企業の本当の価値を考えた場
合、本来的には重要な要素である社員の質だとか、研究開発力といったものはバラ
ンスシートには乗ってこない。
(自由討議における主な意見)
・ 銀行の信用の重要性や日本的なものの良さの尊重といったことはそのとおりだと
思う。銀行は大いに信用回復に努めてもらいたいと考えるが、問題は日本経済が今
までのような右肩上がりの経済ではなくなってきたということ。このように今まで
とは経済環境が異なっている中で、銀行がどのようにして信用を回復していくのか
ということが課題であるという意見があった。
次回(第10回)会合は、11月22日(金)14時から開催予定。
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| 担当者: 大蔵省 銀行局 調査課 松 村、阿久澤 |
| 連絡先: TEL 03-3581-4111 (内線2801) |
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| 本議事概要は暫定版であるため今後修正があり得ます。 |
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