1.日 時 平成8年11月22日(金)10時00分〜12時00分
2.場 所 大蔵省第一特別会議室(合同庁舎4号館12F)
3.議 題 邦銀の国際競争力、金融市場改革
4.議事概要
本会合においては、邦銀の国際競争力について、門多 丈参考人(三菱商事企業投
資部長代行)および行天豊雄委員より意見陳述があった。
門多参考人、行天委員の意見及びそれを踏まえた自由討議の概要は以下の通り。
(1) 門多参考人
・ イギリスでは70年代に金融危機が生じた。これがビックバンのきっかけとなっ
た。為替管理の廃止や市場原理の導入を主な内容とするビックバンの目指したもの
は、国際競争力をもった英国の金融機関(ビックプレーヤー)を作ることを目標と
していたと思われる。ただし、その結果は、国際化という面では成功したが、英国
の金融機関にとっては大変な試練となった。すなわち、英国の金融機関は国際的に
競争をするには資本が過少過ぎたため、欧米の金融機関が次々と英国のマーチャン
トバンクを買収されていくと結果となった。ただし、ナットウエスト銀行等の英国
のクリアリングバンクが国際的金融機関になろうとしている動きもある。
・ シティーにおいては規制上グレーなものであれば出来るという認識である。すな
わち、シティーでは明確な規制されているものでなければ、金融機関が弁護士と相
談しつつ、自らの判断で積極に行っていく。こういう前向きな姿勢がシティーの特
徴であると考える。
・ 現在、アグレッシブに運用しているファンドとしては、米国が中心であるが、ヘ
ッジファンド、ミューチュアルファンド、年金、大学ファンドがある。これらのフ
ァンドは株式に積極的に投資しているが、米国においても、こうした株式投資の妥
当性、リスクリターンの理解の深まりというのは、この10年くらいのことである。
・ 日本の今後の活性化策として、
(1) 手数料の自由化し、サービスの内容に応じ手数料が変わる成功報酬制度を導入
する。
(2) 投資信託の改革(ファンドを的確に評価し、アドバイスを与えるコンサルタン
トの育成。銀行の窓販等)
は是非実施すべきである。
(自由討議における主な意見)
・ 決済機能に関し、新たなサービスが出てきているが、それらにはクリアリングバ
ンクがサポートしている。すなわち、決済機能については、クリアリングバンクと
とその他の業態で棲み分けが出来ているように思う。また、クリアリングバンクは
手数料で儲けるようになってきており、既存のクリアリングバンクが投資銀行化し
てきており、銀行と証券業者は競合と協力の関係となっている。
(2) 行天委員
・ 最近の「国際競争力」という問題においては、邦銀の海外金融センターにおける
競争力と東京市場の空洞化という大きく分けて2つの問題がある。この2つの問題
は直接は関係しないが、これらが同時に起きている。こうした問題の国際的背景に
は、70年代以降の国際金融の世界における大きな変化がある。すなわち、
1).資金移動の自由化、企業の多国籍化、企業・個人の調達・運用の国際化等に見
られるグローバリゼーション、
2).ロンドにおけるビックバン、米国におけるグラス・スティーガル法の事実上の
撤廃等、世界規模での規制緩和の競争、
3).技術革新、コンピューター化の進展の結果としてのデリバティブ取引の拡大、
4).ディスインターミディエーション(間接金融のウェイトの低下及び様々なセキ
ュリタリゼーションの進展)
といった変化があり、日本の金融機関はこれら4つの変化においていずれも立ち遅
れている。
・ 邦銀の海外センターでの競争力の問題については、4つの点について考えること
が必要である。すなわち、
1).新しい金融商品・サービスの開発力、販売力
2).様々なリスクの管理能力
3).収益力
4).必要な経営資源の有無
まず、新しい金融商品・サービスの開発力、販売力については、邦銀の大きな弱
点になっている。この背景には、行政等による規制が大きすぎたこと、銀行側も創
意工夫意欲が欠如していたこと、顧客の方もニーズを主張し、プレッシャーをかけ
てこなかったこと、邦銀には「この商品はこの銀行」といった特定分野についての
ブランド力をもっていないことがある。
リスク管理についても邦銀は遅れており、この背景には、貸出優先だったために、
リスク管理手法として「審査」に重点をおきすぎていること、不倒神話があったた
め、格付が底上げされ、リスク管理を真剣に考えてこなかったことがある。
収益力についても問題があり、この原因としては、利鞘を重視し、貸出を拡大す
ることを経営の主たる目的としてきたため、株主に対する配慮を欠き、ROEとい
った観点がうすいことがある。
こうしたことが邦銀に国際競争力がついてこなかった原因となっている。
・ 更に、邦銀に国際競争力がついてこなかった背景としては、経営環境、制度上の
問題(規制、会計、税制等)、経営手法や企業文化(拠点主義、人事・給与制度)、
言語、国際戦略の欠如といったことも考えられる。
次に、総理から大蔵大臣に対し指示のあった金融市場改革について、調査課長より
説明があり、今後、活性化委員会での検討を要請。その後の自由討議において出され
た意見のうち主なものは以下の通り。
・ 資金は「公的」も「私的」も関係なく流れていくものであることを考えると、こ
れだけ大きな規模を有する公的金融を考えないことには、実効性のある金融改革は
実現できないのではないかとの意見があった。また、公的金融について、金制の場
で検討することはできないにしても、金制において何らかの形で検討する場を設け
るべきであるという提言を答申等に書くといったことはできないのかといった意見
があった。
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| 担当者: 大蔵省 銀行局 調査課 松 村、阿久澤 |
| 連絡先: TEL 03-3581-4111 (内線2801) |
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| 本議事概要は暫定版であるため今後修正があり得ます。 |
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