1.日 時 平成10年3月6日(金)10時00分〜12時00分 2.場 所 大蔵省第1特別会議室(本庁舎3階) 3.議 題 発行体の破綻時の対応について 4.議事経緯 電子マネー及び電子決済の環境整備に向けた懇談会第8回会合が開催された。会合の模 様は概ね以下の通り。 (1) 菅野委員、長政特別委員から上記の議題に沿ったプレゼンテーションが行われた。 ・菅野委員からは、電子マネーが顧客の信頼を得て普及するためには、万一発行体が破 綻した場合にも利用者の権利が保護されることが必要であることが述べられた上で、○ 実体的権利保護の程度として100%の保護か、一定の保護かという考え方があるが、シス テム全体への過重な負担に配慮する必要があること、○保護の範囲として一般の利用者 のみか、商店まで含めるかという考え方があるが、普及の観点及び電子マネーのスキー ムによっては両者の区別が曖昧であることを考慮すれば、商店もある程度の保護が必要 ではないかということ、○権利の実体的保護のスキームとしては、包括的(相互扶助 的)な保険の仕組みと個別保証・優先弁済の仕組みが考えられるが、前者は厳格な参入 要件等がなければ成立し得ないであろうこと、また、後者では金融機関等による保証、 信託、供託等の仕組みが考えられるが、機動的な資金運用が制限される場合には機会利 益が逸失される可能性があることに配慮する必要があること、等が説明された。 ・長政特別委員からは、損害保険を提供する側の立場から、○電子マネーを通貨と一般 債権の間のどこに位置づけるか、一人当りの利用額としてどの程度を想定するか、電子 マネーが現金・預金等の決済手段をどの程度代替するか、によって権利の実体的な保護 をすべき程度は異なり、したがって、保証制度の必要性やその形態が違ってくるのでは ないかということ、○金融機関等が保証を行う場合には個々の判断により引受停止の可 能性があることや引受能力に限界があることなどがあり、保証以外にも実体的な保護が 確保されるための仕組みが用意されている必要があること、○保証の仕組みが有効に利 用されるためには、破綻の予防的措置として適切な参入基準、財務の健全性、技術面で の適正性が確保されることが必要で実体的権利保護と予防的措置は相互に補完的関係で あるべきであり、また、利用約款等により利用者、発行体等の権利関係が明確にされる 必要があること、○利用者の権利の実行手続の整備は必要であるが、そのためには膨大 な事務処理コストがかかることに留意が必要であること、等が説明された。 (2) その後、事務局から「発行体の破綻時の対応について」の論点メモについて説明が行 われ、討議が行われた。主な内容は以下のとおり。 ・発行体破綻の予防的措置も破綻時の対応も重要であるが、一般の利用者の視点からは、 大量の偽変造が発生して破綻した場合等には利用者一人当りの返還額が事前に確定しない ことを考えると、予防的措置に重点が置かれるべきではないか。 ・しかしながら、予防的措置は決済サービス提供者側の不断の経営努力によって当然に取 り組まれるべき課題であり、制度の検討としては、破綻時の対応に重点が置かれることと なるのではないか。 ・金融機関等による保証が行われる場合には、一般の利用者に保証の料率等が情報開示さ れるべきではないか。一方、保証料率が保証する側の引受能力や保証される側の様々な意 味での信用力を反映していることを考えれば、必ずしも情報開示が行われることが適当で あると言えない場合もあるのではないか。 ・個別保証で破綻時における利用者一人当りの保証額が確定している仕組みが可能であれ ば、その額を利用約款等に明示しておくべきではないか。 ・いわゆる電子マネーには多様な形態があり、商店街振興の目的で限定された地域で利用 されるものもそれに含まれるであろう。そのような地域限定の電子マネーに100%の権利保 護のための措置を求めることは事業者にとって過大な負担であり、現実的な配慮が必要で はないか。 ・現行のプリカ法の証票所有者の権利実行手続では、数千円の配当受取に一年近くの歳月 を要する現状となっているが、権利実行手続の整備に当たっては簡易・迅速な手続実施の 確保を図ることが重要ではないか。 ・電子マネーが、通常、発行体に対する少額の債権であること、多数にわたる債権者の代 行事務者を置くにしても裁判所ではすべてのチェックが前提であり膨大な事務処理が生じ ること、法貨ではないものの電子「マネー」として利用者に認知されるのであればそれ相 応の保護が必要であること、を考慮すれば、いずれの保証・優先弁済の仕組みを採用する にしても、100%の権利保護が確保されることが必要ではないか。 ・発行体破綻の場合において、利用者サイドに見合資金の損失の責任を負わせるのは疑問 であり、100%の権利保護が確保されることを原則とすべきでないか。 ・利用者が少額の電子マネーしか保有しない場合には、むしろ保証をしないというのも一 つの考え方としてあるのではないか。 ・電子マネーは現在揺籃期にあり、それが将来において現金・預金同様の決済手段として の役割を担うことになるのか否かが明らかになっておらず、また、普及・発展のためには サービス提供者側の技術開発や創意工夫が求められるのではないか。そのような現状では 100%の権利保護のための措置を講ずることをすべての電子マネーに求めるべきとの考え方 は行き過ぎではないか。 ・100%の権利保護を確保することのコストは、結局、利用者あるいは納税者が負うことに なるが、前者は利用者の選択の幅を狭めることになり、また、後者には国民的コンセンサ スが必要となるのではないか。 ・一定の権利保護を行うとしても、決済システムの役割を担う電子マネーと商店街振興の ための決済サービスの提供とでは、当然に保護の程度は違ってくるのではないか。 ・電子マネー・プロジェクトの中には、一のプロジェクト参加者が破綻した場合にも他の 参加者が共同で破綻した参加者の電子マネーの換金に共同で応ずることにより実質的に保 証を行う場合もあり得るが、そのような場合に保証・優先弁済のための措置をさらに義務 づける必要はなく、その点に配慮した制度とすべきではないか。 ・権利の実体的保護や権利実行手続の整備が必要であるという方向性は異論のないところ であろうが、それらを現実にどのように制度として仕組むかについてはさらに議論してい く必要があるのではないか。 第9、10回の会合はそれぞれ3月17日(火)、31日(火)に開催する予定。
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総務課金融市場室(内線5657) 本議事概要は、暫定版であるため今後修正がありえます。 |