電子マネー及び電子決済の環境整備に向けた
懇談会第10回会合の模様(概要)

 

1.日  時  平成10年3月31日(火)10時00分〜12時00分                    

                                                                                

2.場  所  大蔵省第1特別会議室(本庁舎3階)                                  

                                                                                

3.議  題  電子マネー・電子決済を支える情報セキュリティ技術について(松本委員)

            電子マネー・電子決済に係る犯罪・不正利用対策について(小谷委員)    

                                                                                

4.議事経緯                                                                    

    電子マネー及び電子決済の環境整備に向けた懇談会第10回会合が開催された。会合の

  模様は概ね以下の通り。                                                      

                                                                                

                                                                                

(1) 松本委員、小谷委員から上記の議題に沿ったプレゼンテーションが行われた。      

                                                                                

  ・松本委員からは、暗号技術、耐タンパー技術等の電子マネー・電子決済のセキュリティ

    を支える要素技術とその安全性評価及び電子マネー・電子決済に関する技術情報の開示

    の在り方について、○安全な電子マネー・電子決済を実現するための技術は暗号技術等

    のセキュリティ技術を統合した「総合技術」として評価すべきであること、○暗号は計

    算量的安全性に支えられた技術であり、したがって、電子マネー・電子決済も絶対的に

    安全であることはあり得ず、常に新しい技術革新に対応し最新の安全対策を講じていく

    必要があること、○電子マネーの安全性を評価するに当たっては、その形態によって脅

    威となる攻撃方法や有効な安全対策が異なるため、画一的な基準やガイドラインは必ず

    しも有効ではないこと、○技術情報の開示については、一般の利用者の理解が十分でな

    い段階では分かりやすい形での情報開示が必要だが、賢明な利用者が安全な電子マネー

    を選択するという仮説にのみ依存するには心配な面もあることから、安全性を正確に評

    価するための「外部の目」を介在させることが重要であり、外部の専門家が正確に安全

    性を評価するために必要かつ十分な情報を中心に据えるべきであること、等が説明され

    た。                    

                                                                                

  ・小谷委員からは、犯罪・不正使用防止の観点から電子マネー・電子決済に係る諸問題に

    ついて説明が行われ、○ネットワーク社会は、匿名性、時間的・場所的無限定性、超高

    速性、無痕跡性、超分散性等の特徴を有していることから、犯罪者等に大変都合のよい

    社会となり得ること、○ネットワーク社会自体は否定されるべきものではないが、暗号・

    認証技術を適切に利用することでネットワーク上での本人確認や情報保護を確保するこ

    とで犯罪等の防止が図られることが必要不可欠であること、○電子マネー・電子決済に

    ついては偽変造、マネロン等の問題があるが、その対応としてはトレーサビリティの確

    保、利用限度額の設定等が考えられること、○こうした対策は後追いの対応では社会的

    なコストが大きく、本格的なネットワーク社会の到来を控えたこの時期に適切な事前的

    対応策が必要であること、等が指摘された。                                      

                                                                                

                                                                                

(2) その後、自由討議が行われた。主な内容は以下のとおり。                        

                                                                                

  ・技術的安全性においては、カード型電子マネーとネットワーク型電子マネーとで差があ

    ると考えることはできない。従って、両者を区別して議論することにはあまり意味がな

    いのではないか。                                                                  

                                                                                

  ・ネットワーク上では本人が気がつかないうちにクラッキング行為が行われることがあり

    それがなりすまし等による犯罪等を誘発することとなっていると考えられることから、

    そうした行為に対する対応を早急に図ることが必要ではないか。                        

                                                                                

  ・電子マネー・電子決済が広く普及した段階でシステムに重大な欠陥が生じた場合に決済

    システムに深刻な影響が出る虞があることを考えれば、技術的安全性の向上のインセン

    ティブを利用者の選択にのみ委ねるのは適切ではなく、何らかの政策的な配慮が必要で

    はないか。                                                                          

                                                                                

  ・安全性に関する外部からの評価については、評価機関自体が独善的、硬直的な評価に陥

    る危険にも留意する必要があるのではないか。その意味では、競争原理が有効に働くよ

    うな民間主導の評価機関によることとすべきではないか。                              

                                                                                

  ・評価の在り方については、公的な関与、中立的な複数の評価機関による評価、司法的救

    済といった重層的な制度整備が必要ではないか。                                    

                                                                                

  ・安全な電子マネー・電子決済を実現するためには、提供者のみならず利用者のサイドで

    も偽変造や安全性評価に対するチェックが機能するシステムとなっていることが重要で

    はないか。                                                                        

                                                                                

  ・電子マネーのようにデジタル・データ自体が価値を持つことがあり得るとの社会的な信

    認が確立された場合には刑事罰もそれに対応した制度となることが必要であろう。ただ

    し現状においては、電子マネーがどのように発展していくのか見極めができておらず、

    そうした状況で制度面での対応を考えるといっても難しい面があるのではないか。          

                                                                                

  ・刑事罰の強化も必要であろうが、まずは、事業者側の負担等を考慮しつつ、トレーサビ

    リティ等をいかに確保していくかということを議論すべきではないか。                

                                                                                

  ・電子マネーの中には、完全にプライバシーが確保されるもの、プライバシーを確保しや

    すいもの、プライバシーを犠牲にしなければ技術的な安全性を図れないもの等様々なス

    キームがある。完全に匿名で利用できる電子マネーを社会的にどこまで認めてよいかと

    いうのは、プライバシー保護と不正利用防止とのバランスで議論のあるところではない

    か。  

                                                                                

  ・偽変造、マネロン等が行われた場合に限りその行為者をトレースすることが可能な、い

    わば制御された(限定された)プライバシーが確保される電子マネーも開発が進んでお

    り、今後が期待されるのではないか。                                                  

                                                                                

  ・プライバシーについては、必ずしも電子マネーだけの問題でなくこの懇談会で議論する

    ことが適当であるとは限らないが、重要な課題であろう。特に金融・保険に係る個人情

    報は保護されるべきだと一般に考えられており、何をどこまで保護すべきかについては

    整理することがいずれ必要となってくるのではないか。                                  

                                                                                

  ・個人情報は、通常、基本情報(氏名、年齢、住所等)、センシティブ情報(資産・信用・

    預金情報等)、ハイリーセンシティブ情報(政治信条等)に整理される。現状等を踏ま

    えれば、基本情報やセンシティブ情報は共有化と法規制による厳格管理を同時に進める

    べきという議論があるようである。                                            

                                                                                

                                                                                

  第11回の会合は4月14日(火)に開催する予定。

 

大蔵省 TEL03-3581-4111(代) 銀行局 総務課金融市場室(内線5657)
本議事概要は、暫定版であるため今後修正がありえます。