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第11回金融審議会第二部会議事要旨
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日 時 |
平成11年9月9日 14時00分〜16時00分 |
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場 所 |
大蔵省第三特別会議室 |
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議 題 |
タノウエFDIC議長によるスピーチ 「米国の預金保険制度と金融機関の破綻処理について」 |
タノウエFDIC議長のスピーチの概要 |
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本日のスピーチは、米国経験についてのものであり、経済や文化等の構造の異なる国に おいてそのまま当てはまるものではない。 |
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金融機関の破綻処理は、預金者にとってなんでもない出来事であるかのように処理する ことが重要である。また破綻処理には、様々な関係者の利害が絡む複雑なものがある。 |
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1980年から94年にかけて、米国においては3つの破綻処理手法が用いられた。それは(1)P&A方式、(2)ペイオフ、(3)オープンバンク・アシスタンスである。 |
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P&A方式は、最も多用される処理方式であり、改良が続いている。1980年までは受皿 銀行が破綻銀行の全預金と健全資産を継承する方式であったが、破綻件数の増加ととも にFDICの不良資産処理が困難になり、承継資産の一部を一定期間後に返却できるプ ットオプション付P&Aが導入された。しかしこの方式は受皿銀行によるチェリーピッ キング(いいとこどり)を招いた。代わって、破綻銀行の全資産・負債を一括承継させ るホールバンク方式が採用されたものの、入札銀行が減少したため、資産承継後に発生 した損失の80%をFDICが負担するロスシェア方式が導入された。91年の法改正にお いては、最小コスト原則が導入され、付保預金P&Aが採用された。 |
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ペイオフには2つの方式があり、1つは保険金直接支払方式であるが、手続き上の困難 がある。もう一つは付保預金移転方式であり、特定エージェント銀行に付保預金を移転 し、保険金支払いを委任するもので、処理コストも小さくてすむ。 |
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オープンバンク・アシスタンスは、経営困難となった銀行を閉鎖することなく存続,再 建させる方法であるが、適用例も少なく、最小コスト原則の導入により適用が困難にな った。 |
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大規模金融機関の破綻処理の際には、市場規律とシステミックリスク回避の間のバラン スをとらなければならない。 |
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破綻銀行からの買取り資産を、FDICが直接処理するのは破綻銀行が増加した80年代 から困難になり、入札方式で処理するようになった。 |
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不動産の市場売却については、市場に歪をもたらすとの懸念もあったが、景気回復もあ り、不動産市場の回復につながった。 |
続いて、以下のような質疑応答が行われた。 |
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(問) 1991年に最小コスト原則が導入され、P&Aの過程で付保預金のみを対象にすることになったが、その後のP&Aにおいてカバーされなかった投資家の反応はどうだったのか、また市場に混乱は生じたのか。さらに最小コスト原則の導入によってコストが抑えられたのか。 |
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(答) 最小コスト原則を導入した1991年度は幸運にも米国の経済が回復し始めた時期で、FDICが処理した銀行も規模が小さく、件数も多くなかったので、経済全体に大きな影響を与えることにはならなかった。最小コスト原則の導入前と後の費用の差については、導入後に大規模な銀行破綻処理がないこともあり、結論は出せない。 |
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(問) 日本の場合、P&Aによる処理において受皿銀行が見つかるかどうかに懸念がある。米国では1994年まで州際規制があったからこそ銀行のフランチャイズバリューが生じて、受皿銀行を見つけやすかったのではないか。一方で94年に州際規制が撤廃されたが、撤廃前の91年以降、銀行のフランチャイズバリューが上昇したのは景気の回復によるものではないのか。 |
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(答) 州際業務規制があったために、フランチャイズバリューが増したのは事実だが、規制撤廃後も、受皿候補の銀行は増加している。1991年以降のフランチャイズバリューの上昇の主たる理由は、景気回復によって銀行の健全性も高まり、銀行の経営が積極化したことだろう。またプットオプションやロスシェア方式の導入も、受皿となることを躊躇していた銀行が受皿候補となる効果を生んだといえる。 |
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(問) 米国の場合、金利を含めて10万ドルまで100%保護することになっているが、モラル ハザードを防ぐためにも、付保預金についても一部カットするなど預金者に負担を求めてもよいのではないか。 |
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(答) 預金者保護の仕方には保護対象、上限金額等の様々な選択肢がある。しかし、まったく知識がないような零細な預金者にまでりスクを負担させるのは、かえって市場を混乱させてしまうのではないかというのが米国の預金保険の考え方である。 |
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(問) 本の銀行は、企業の流動性預金を多量に抱えているが、米国の場合、金曜日に閉めて月曜日に開けるという週末に集中した破綻処理の過程で、企業の流動性預金に対して混乱が生じなかったのか。 |
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(答) 破綻処理の過程で、企業の流動性預金に対して、特に大きな影響はなかった。最小コスト原則の導入後、実際に破綻したのは小規模な銀行であり、地元である特定地域において多少の不便を被った中小企業はあったかもしれないが、マーケットへの大きな影響は報告されていない。 (以上) |
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