未定稿

第12回金融審議会第二部会議事要旨

 


1.日 時 :

平成11年9月29日(水) 10時00分〜12時00分

2.場 所 :

大蔵省第三特別会議室

3.議 題 :

「預金保険の特例措置の終了を前提とした検査・監督行政」
(金融監督庁報告)
預金保険制度に関する討議

4.議事内容


 はじめに、金融監督庁から資料12-1に基づいて「預金保険の特例措置の終了を前提とした検査・監督行政」と題する報告が行われるとともに、その報告に関しての自由質疑が行われた。

<自由質疑における委員等からの主な意見>


 金融当局は、ゴーイング・コンサーンベースの企業会計情報をそのまま企業の破綻判定に用いるのは大変難しいということを認識しておくべきである。


 監督目的の企業会計と、ゴーイング・コンサーン・バリューを測る通常の企業会計とは異なってしかるべきであり、例えば監督目的に用いる自己資本は、通常の企業会計基準により計測された自己資本に、監督当局による調整を加えたものとすべきではないか。


 銀行経営に関するオフサイトでのモニタリング結果に応じて、個別金融機関に対するオンサイト検査の実施頻度等にメリハリをつけるべきではないか。


 金融監督当局と公認会計士の連携は、今後重要性を増すのではないか。


 次に、事務局による預金保険制度に関する説明に続き、預金保険制度についての骨格となる基本的な考え方の取りまとめに向けた自由討議が行われた。

<自由討議における委員等からの主な意見>

(1)

総論的意見


 預金保険制度の問題は、金融行政のあり方全体の中で論じていくべき問題ではないか。


 預金保険制度について検討する際には、第一に“小さな預金保険制度”について国民を説得するための論理を打ち立てるとともに、そのための条件整備を行い、しかる後に技術的な論点について議論すべきではないか。


 銀行預金は当然に安全であるとする、現在の企業等の取引慣行や決済行動のパターンを前提にしたままで、預金保険制度だけを変更して決済の保護を図るのは、広義のモラルハザードをもたらすのではないか。例えば決済勘定には決済所要額ギリギリの残高しか置かないようにするシステムが生まれ、決済慣行に変化が生じれば、全く違った預金保険に関する議論が可能になるのではないか。

(2)

各論的意見


流動性預金の保護について


 “小さな預金保険制度”の理念に照らせば、流動性預金の全額保護を図ることは避けるべきではないか。決済の円滑という目的は、予め一定の払戻カット率を設定して、1,000万円を超える部分の預金についても迅速に払い戻す制度を構築することで達成できないか。


 流動性預金を過剰に保護すべきではないというのはもっともであるが、一方で流動性預金の全額保護を外すことには中小企業等から懸念が表明されている現状にある。したがって、流動性預金の扱いについては、何らかの暫定的措置を講じつつ、中長期的にそうした保護を外していく方向で議論すべきではないか。


公金預金の保護について


 現在、地方自治体をはじめ、多くの財団・社団法人が多額の預金を保有しているが、こうした団体は現実的には預金を小口分散化することができない。こうした実情を踏まえ、公金預金の扱いについて、十分な議論を行うべきではないか。


 多くの財団・社団法人は、預金にリスクがないということを前提とした慣行を見直そうとせず、本来は国債と比較して安全性に劣る定期預金によって資産運用をしているが、それでは今後の経済環境に対応していくのは難しいのではないか。


金融債の保護について


 個人保有の金融債の7割は保護預かりとなっており、名寄せが容易であることに照らせば、少額預金者保護と同様の観点から預金保険制度により保護することができるのではないか。


 長信銀各行が金融債と同じ満期の付保預金を発行すれば、投資家の金融債から預金へのシフトの動きをカバーできるのであるから、金融債を保護する必要はないのではないか。


名寄せについて


 金融機関の負担軽減のために、金融機関は破綻時に預金保険機構に預金者データを円滑に引継ぐシステムの対応まで行えばよいとの見解もあるが、そこまでシステム対応させるのであれば、金融機関に常時の名寄せを義務付ける場合とコスト的に大差ないはずである。技術的限界がない限り、金融機関には常時の名寄せを義務付けてよいのではないか。


 仮に納税者番号制度が導入されれば、預金口座を納税者番号で管理することで、名寄せにかかる作業負担や所要時間は大幅に軽減されるのではないか。


金融機関の早期処理について


 ペイオフを解禁するには、なるべく早く金融機関に対する国家管理的発想から脱却するとともに、預金者や貸し手・借り手に自己責任を問うことができるように、金融システムを健全な状態にしておくことが必要である。そのためには、破綻の未然の防止もさることながら、“早期発見・早期処理”を行うべき場合もあり得るのではないか。


 金融機関の迅速かつ早期の処理のためには名寄せや資産査定等の事前的作業に、出来る限り当局が関与することが望ましい。例えば一定以下の自己資本比率の金融機関については、資本再建を図りつつも、当局が早期処理を展望に入れた事前準備に着手するというのも一案ではないか。


 金融機関の早期処理を徹底し、早い段階で経営の悪化した金融機関を処理することが可能となれば、流動性預金保護のコストの問題等は相当小さくなるとともに、仮に債務超過の金融機関が出現した場合の預金額のカット率も小さくできるのではないか。


その他


 “小さな預金保険制度”を目指すには、企業の資金調達手段としてのCP・社債等の使い勝手の向上、決済機能付き投資信託商品の充実、あるいは現状の決済慣行の見直し、といった周辺的な環境整備を行い、「預金を何としても保護せねばならない」とのプレッシャーを軽減することも必要なのではないか。


 2001年4月から直ちに預金の保護を縮小することが難しいのであれば、例えば銀行に流動性預金に100%対応する額の健全資産(国債等)の保有を義務付けるとともに、預金債権に先取特権を付与し、破綻時の営業譲渡を円滑化する等の暫定的措置を実施するのも一案ではないか。


 ペイオフ解禁になれば、代替金融機関の少ない地域経済においては預金の郵貯シフトが発生し、ひいては地元企業への貸渋りが起きかねない。イコール・フッティングの観点からしても、郵貯に対してどのような対応をすべきかについて、十分な議論を行うべきである。
 
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