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第9回金融審議会第二部会議事要旨
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1.日 時 : |
平成11年8月5日(木) 10時00分〜12時15分 |
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2.場 所 : |
大蔵省第四特別会議室 |
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3.議 題 : |
「預金保険制度に関する論点・意見の中間的な整理」に基づく金融機関からのヒアリング |
4.議事内容 |
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○ | はじめに、今回から新たに第二部会委員となった八木良樹[やぎ よしき]委員、坪井孚夫[つぼい たかお]委員の紹介が行われた。 |
○ |
次に、預金保険制度加入6団体(全国銀行協会、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、全国労働金庫協会)からの「預金保険制度に関する論点・意見の中間的な整理」に対する意見陳述、及び質疑応答が行われた。 |
<各業界団体から発表された意見の概要> 全国銀行協会・野田企画委員長(第二部会オブザーバー) |
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▼ | 以下、都・長銀・信託、いわゆる大手行の立場で発言する。 |
▼ | 2001年4月のペイオフ解禁は、96年の預金保険法改正時に政府が示した既定方針であると理解している。 |
▼ | 預金保険制度の役割・機能を拡張することは、モラルハザードの増大と社会的なコスト負担の増大につながる。恒久的制度としては基本的には「小さな預金保険制度」を目指すべき。 |
▼ | 破綻処理コストを最小限に抑え、実務的にもワーカブルな破綻処理手法として、米国のP&A方式の導入は検討に値する。但し、我が国へのP&Aの導入には、受け皿金融機関が資産譲受け後に蒙る損失を補填する制度の導入等、法制面や実務面での工夫が必要である。 |
▼ | 一連の処理が円滑かつ迅速になされれば、金融機関の破綻に直面しても一定の金融機能が維持され、預金者の流動性についても連続的に確保される。 決済性預金の全額保護については、預金保険制度で考えるのかという点も含めて、今後更なる議論が必要となるのではないか。 |
▼ | 名寄せを平時から一律に行えば、業界全体のシステム投資負担額は莫大になる。むしろ、保険金支払人たる預金保険機構の名寄せを前提として、預金保険機構と金融機関の間のデータのやりとりをスムーズに行う体制作り等について、実務面から検討を行うことが必要ではないか。 |
▼ | 可変保険料率については、導入の是非、保険料率の算定法、個別行の適用料率の公表の可否等、政策的判断を要する論点は多いが、平時の制度として検討に値するという意見もある。 |
全国地方銀行協会・松崎一般委員長(第二部会オブザーバー) |
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▼ | 預金者全体として見れば、現時点でペイオフの意味を正確に理解している預金者は、多いとは言えない現状であり、個別機関だけでなく、より幅広い主体によるさらなる周知努力が必要ではないか。 |
▼ | 民間金融機関と郵便貯金との競争条件の公平化は、ペイオフ解禁の環境整備として必須である。国家信用力の故に優位性を持つ郵貯に手を付けずにペイオフを実施すれば、預金の郵貯シフトが加速し、地域経済に悪影響を及ぼすのではないか。 |
▼ | 預金保険制度が大衆預金保護を超えて拡大した場合、モラルハザードや保険料負担増大を引き起こしかねない。決済機能や借手の保護については、預金保険制度で対応すべき問題なのか、経済システム全体の仕組みで対応すべき問題なのかは議論を重ねるべきではないか。 |
▼ | 地方銀行64行の平成8〜10年度の預金保険料の対業務純益比率は、8%超で高止まっている。 |
▼ | 時限的措置である各種セーフティネットの適用が2001年で終了するのであれば、それに代わる何らかのスキーム等を幅広く導入すべきではないか。 |
▼ | 金融機関の破綻処理は、自己責任原則が基本だが、実際の手続きについては、破綻の規模等に応じて多様な選択が出来るよう、制度的手当てがされるべきである。例えば米国のP&A方式の導入も検討に値するのではないか。 |
▼ | 金融機関が、オンライン・リアルタイムの名寄せを全店規模で行うと、巨額の新規投資が必要となる。むしろ、預金保険機構の名寄せシステムに対し、各行からの情報提供をスムーズにする等、コスト面も含む実務的な検討が必要ではないか。 |
▼ | 破綻処理の長期化に伴う破綻金融機関の資産劣化を回避するため、預金者の自己申告により一旦保険金を支払い、後日名寄せにより過払いが判明した時点で返還請求を行う方式での保険金支払いも検討すべきではないか。 |
▼ | 破綻処理コストの最小化のポイントは、当局による早期是正措置の厳格かつ木目細かな運用ではないか。 |
第二地方銀行協会・吉本副会長専務理事 |
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▼ | 21世紀初頭、金融システム不安を惹起しやすい状態が治まっているとしても、ペイオフに止まらない多様な破綻処理手法を用意しておくことが肝要である。 |
▼ | 破綻処理制度のあり方を論ずる際には、地域経済と地域金融の安定という視点が極めて重要である。 |
▼ | 中小零細企業にとって、預金は信用力の証であり、事業活動遂行の基盤となるものであるから、そうした預金には、特別な配慮が必要なのではないか。 |
▼ | ペイオフは、迅速性やコスト面で問題も多く、借り手保護の点でも必ずしも望ましいものではない。破綻金融機関の資産継承を何らかの形で可能とする処理手法を、恒常的な形で導入すべきではないか。 |
▼ | 事業活動を行う個人や中小零細企業の決済性預金については全額保護し、優先して円滑な決済処理を行えるようにすべきではないか。 |
▼ | 流動性破綻防止のため、預金保険機構による緊急融資制度の整備等を行うべきではないか。 |
▼ | 預金保険料は「信用秩序維持保険」の保険料であり、受益者を広く対象とする強制保険と位置付けるべきもの。すなわち、預金概念を広く捉え、預金類似商品を販売する金融機関にも広く負担を求めるとともに、郵便貯金に対しても保険料相当額の負担を求めるべきではないか。 |
全国信用金庫協会・井須副会長 |
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▼ | ペイオフ解禁には、(1)金融システムの安定性確保、(2)郵便貯金との競争条件の公平性確保(郵貯シフトが生じない環境)、(3)ペイオフ手続の確立(実務的に迅速な処理が可能であること)、等の前提条件が満たされる必要がある。それが満たされない状況では、ペイオフ解禁はできないのではないか。 |
▼ | 信用金庫が全店ベースでの名寄せを実施するには現行システムの見直しが必要であり、プライバシーや事務コストの高騰等の問題を引き起こす可能性が高い。 |
▼ | 一般資金援助方式での破綻処理については、米国のP&A方式も参考に多様な手法を整備するとともに、現在時限的措置とされているブリッジバンク制度を恒久化するなどして充実を図る必要があるのではないか。 |
▼ | 中小企業保有口座について、決済性預金と貯蓄性預金を明確に区別することは極めて困難である。また、決済性預金だけを保護すれば、定期預金から普通預金へのシフトが起こり、いびつな金利競争やモラルハザードを引き起こす可能性がある。従来の一般的な預金商品については、当面は区別を設けることなく、全額保護の必要があるのではないか。 |
▼ | システミックリスク対応のため、米国のような緊急避難条項を設けるとともに、その条項を中小金融機関にも適用できるようにしておく必要がある。 |
▼ | 一般大衆向けの金融商品は幅広く付保対象とすることが望ましいが、金融債については転々流通性があることに鑑み、対象外にすべきではないか。 |
▼ | 預金保険料が金融システム維持のための共通費用であり、平等・公平・一律に負担すべきものであることに照らせば、可変保険料率は採用すべきでない。 |
▼ | 代替金融機関が存在しない地域でまで預金者に自己責任原則を貫徹し得るかは疑問である。預金保険制度の検討では、こうした実情にも配慮が必要である。 |
全国信用組合中央協会・坂本専務理事 |
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▼ | ペイオフ解禁の前提条件は、(1)預金者の金融システムに対する信頼感の確保、(2)郵便貯金との競争条件の平等性の確保、(3)新たなセーフティネットの構築、と考えているが、現状ではこうした条件が必ずしも十分に満たされていないことに鑑み、ペイオフ解禁の時期も含めた慎重な検討が行われるべきではないか。 |
▼ | 可変保険料率制度については、導入されれば経営の悪化した信組は一層の負担を強いられることとなり、その社会的使命たる中小零細企業の金融の円滑化を果たすことが困難となることから、導入には慎重であるべきではないか。 |
▼ | 中小零細企業の決済性預金は、その事業活動の基盤であることから、全額保護を図るか、少なくともペイオフの実施時にその速やかな払い戻しが確保されるように制度を整備することが必要ではないか。 |
全国労働金庫協会・千頭和常務理事 |
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▼ | ペイオフは、かねてより内外に公約されている通り、2001年4月に解禁されるものと認識している。 |
▼ | 金融システム安定化に向けての努力は、一義的には各業態により図られるべきで、預金保険制度は補完的な存在と考えている。従って、基本的には「小さな預金保険制度」を目指すべきではないか。 |
▼ | 預金保険制度自体の目的は預金者の保護に止め、決済機能の保護については、必要であれば別途の制度により対応すべきではないか。 |
▼ | 預金保険制度の保険料については、「小さな預金保険制度」の観点に立ち、個別金融機関の負担能力を考慮して決定されるべきである。 |
▼ | 仮払金額の20万円は、現在の実態に即して改正されるべきである。 |
▼ | 破綻の程度が著しい場合や、同一地域に金融機関が少ない場合には、破綻機関の承継先が見つからないことが予想される。こうした場合に備え、現行の破綻処理手法に加え、新たな手法の導入が必要ではないか。 |
▼ | 預金保険制度の付保対象は、基本的には現行制度のままでよく、保険金支払限度額についても、現行制度通り1000万円でよいと考える。 |
▼ | 預金保険制度の保険料については、保険料の対業務純益比率が業態平均で10%近い高水準となっていることに鑑み、引き下げを検討すべきではないか。 |
▼ | 可変保険料率制度については、金融機関相互の格差が過度に拡大することを通じて新たな問題を惹起する可能性もあり、導入は慎重に対応すべき。 |
○ |
続いて、各業界団体からの意見発表を踏まえ、自由質疑が行われた。 |
<自由質疑での委員からの主な意見>
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▼ | 既に導入された、あるいは今後導入される公的な番号制度(年金番号制度等)を利用すれば、名寄せにかかるコストが削減できるのではないか。 |
▼ | マル優制度が適用される預金についての名寄せシステムは全店ベースで構築されていることが通例であるから、このシステムを流用して全付保預金を対象とする名寄せシステムを構築すれば、名寄せの実施に伴う負担を軽減できるのではないか。 |
▼ | 預金保険を掛けるに当たり、今一度預金の本人確認を行い、本人確認を行った預金についてのみ付保対象とし、本人確認をしなかった預金については付保対象とせず、保険料も徴収しないという制度を導入することにより、名寄せの実施に伴う負担を軽減できるのではないか。 |
▼ | 地域金融機関は地域と極めて深いつながりを有するために、簡単には譲渡先があらわれないのではないか。 |
▼ | 決済性預金の全額保護を行えば、モラルハザードの発生は避けられないのではないか。 |
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