未 定 稿

第17回金融審議会第一部会議事要旨


1.

日  時:

平成11年11月24日(水) 10時00分〜12時00分

2.

場  所:

大蔵省第三特別会議室

3.

議  題:

有価証券報告書等のディスクロージャーの電子化について

裁判外紛争処理制度のあり方等について

金融商品の販売・勧誘ルールのあり方について

4.

議事内容


 はじめに、事務局から、有価証券報告書等のディスクロージャーの電子化について、説明が行われた後、質疑が行われた。


 次に、原早苗(はら さなえ)委員より、消費者の視点に立った裁判外紛争処理制度のあり方について、また東京都足立区消費生活センター消費生活相談員の大内美喜子(おおうち みきこ)氏より、消費者からの金融関係の苦情・相談の実態について、それぞれ報告が行われるとともに、自由討議が行われた。


 
最後に、事務局から、金融商品の販売・勧誘ルールのあり方についての検討を行っている「ホールセール・リーテイルに関するワーキンググループ」における検討状況について報告が行われるとともに、自由討議が行われた。


 
上記自由討議の内容は、以下の通り。

 有価証券報告書等のディスクロージャーの電子化について


 有価証券報告書等のディスクロージャーの電子化により、投資家の利便性が増すことを歓迎したい。


 紙媒体のデータ以上に、電子媒体のデータは改ざんがしやすく、いわゆる"なりすまし"も容易であることに照らし、セキュリティ面や情報の認証手段については、十分な対策を講じることが必要ではないか。


 有価証券報告書等のデータが磁気ベースで保管される場合には、バックアップを入念に行う等、データの保護に万全を尽くすべきではないか。


 目論見書交付の電子化に当たっては、投資家保護に問題が生じないように、投資家が希望する場合には紙媒体での交付も行う方向で検討すべきではないか。


 金融商品の販売・勧誘ルールの検討に際しては、目論見書の電子交付を含め、電子技術の発展をどのように取り込んでいくかという視点が重要になるのではないか。

 裁判外紛争処理制度のあり方等について

(1)  総論的意見


 裁判外紛争処理制度は、金融審議会の良心の根幹に関わるテーマであり、free・fair・globalのスローガンに基づく新しい金融秩序のシンボル的存在と考えられる。


 裁判外紛争処理制度が紛争処理を通じて適切なルール形成と苦情・紛争の低減に寄与することについては、労働委員会等の先例があるのだから、金融分野においても、短期的にはコストが嵩むとしても、裁判外紛争処理制度の整備拡充を行うべきではないか。


 裁判外紛争処理制度のあり方を、いわゆる金融サービス法との関連付けて論じる場合には、いわゆる金融サービス法で前提としている"自立した消費者像"を裁判外紛争処理制度の制度設計に当たっても前提とすべきではないか。


 行政指導という手段に頼ることが必ずしも適当ではない現在、法的根拠のある自主規制団体が中立公正、かつ実効性を有する形で苦情・紛争処理を行うことにより、消費者が安心して取引できる環境を整備することが必要ではないか。


 裁判外紛争処理制度が購入後に利用できるか否かも金融商品の品質の一部であり、その点を巡っても企業間の競争が行われるような環境を整えるべきではないか。

(2)

 業態横断的な裁判外紛争処理制度について


 業態横断的な裁判外紛争処理制度の実現に向けては、コスト負担等、解決に時間のかかる問題も多いことから、当面は既存の業態別制度の枠組みの中で、裁判外紛争処理機関の運営の公正性確保のための手当(苦情・紛争処理機能の外部化等)を速やかに実施することになるとしても、最終的には業態横断的な裁判外紛争処理制度を目指すべきである。


 業態横断的な裁判外紛争処理機関を如何に設立し、機能させるかについて議論する前に、現存する業態別の裁判外紛争処理機関を如何に有効活用するかを考えるべきではないか。

(3)

 裁判外紛争処理制度の中立性確保について


 消費者と事業者との間に利益相反や情報の非対称性があるので、両者から中立な第三者による相談対応を行うことが必要ではないか。

(4)

 苦情・紛争処理結果の公表及び事後的な活用について


 裁判外紛争処理制度を単に個別具体の事案の解決を目指すものとせず、既存の制度・ルールの不備を個別事案の解決過程を通じて発見・改善していくためのシステムと位置付けるべきではないか。


 裁判外紛争処理制度を通じた苦情・紛争処理状況の開示を(プライバシーに配慮しつつも)行うことにより、裁判外紛争処理制度の運営の透明性を確保するとともに、個別事案の処理結果を事後に役立てていくようにすべきではないか。


 苦情・紛争処理の結果を制度改善に有効に結び付けるためには、行政や業界団体が改善命令を迅速に出すことが出来るようにしておくことも重要ではないか。

(5)

 コスト負担の問題について


 苦情・紛争処理機関の運営コストは、基本的には各金融機関が紛争係属数に応じて負担するのがよいのではないか。


 消費者が業者に支払う取引手数料のうち、どれだけの額が苦情・紛争処理機関の運営に使用されているかを明示するようにすべきではないか。消費者が費用負担者であるとの考え方に基づき、その費用負担者たる消費者に苦情・紛争処理に関する情報を開示していくことにより、苦情・紛争予防の効果も期待できる。


 コスト負担については、一次的には業者が負担することとしても、最終的にはマーケットメカニズムを通じて消費者にも応分の負担が求められることになることには、留意が必要ではないか。

(6)

 自主規制機関等との関係について


 自主規制機関は裁判外紛争処理制度の実効性確保のために大きな役割を果たし得る存在であるから、裁判外紛争処理制度のあり方について論じる際には、自主規制機関との関係を整理しておく必要があるのではないか。

(7)

 スタッフの育成について


 どのような苦情・紛争処理制度を構築しても、スタッフの充実度ということが大きな問題になることに留意すべきではないか。


 良質のスタッフを育成するには、如何に報酬が安くても構わないという方ばかりではないので、報酬にスタッフのクオリティの差が現れる制度を作り、スタッフ間の競争が働くようにすべきではないか。

(8)

 行政との連携について


 アメリカのSECが訴訟等における被害者救済に自ら助力していることに鑑み、日本においても監督官庁は苦情・紛争処理機関との連携をしっかりと確保していくべきではないか。

(9)

 他の紛争処理制度との関係について


 既存の様々な紛争処理制度の機能が非効率な形でバッティングしたり、あるいは全体としてのコスト負担が増加するといった事態を防ぐために、紛争処理制度相互の関係や機能分担を整理すべきではないか。

 金融商品の販売・勧誘ルールのあり方について

 説明義務が金融商品の販売・勧誘ルールの中心となることに異論はないが、不適切な勧誘等についても、金融商品の販売・勧誘ルールを法制化する際には盛り込む方向で検討すべきではないか。


 民法等に基づいて一定程度実現されてきた消費者保護のレベルが、金融商品の販売・勧誘ルールを法制化する場合に後退することがないように留意すべきではないか。


 消費者契約法における不当勧誘の認定は、その効果が契約の取消という強力なものだけに、相当厳しいものとなることが予想されるが、金融商品の販売・勧誘に関するルールについては、契約の取消まで至らずとも金銭賠償で決着するケースも多いので、不当勧誘の認定要件を消費者契約法とは別途のものとすることも出来るのではないか。

   

問い合わせ先

大蔵省金融企画局企画課 堀、尾前

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