金融審議会第5回総会議事録
日時:平成11年10月19日(火)10時04分〜12時00分
場所:大蔵省本庁舎(4階)第四特別会議室
○貝塚会長 それでは、ただいまから、第5回金融審議会総会を開催いたします。
皆様、御多用のところ御参集くださいまして、ありがとうございます。
まず、今回から新たに審議会委員あるいはオブザーバーとして参加いただくこととなりましたメンバーを紹介いたします。
八木良樹委員でございます。
〔八木委員 立礼〕
○貝塚会長 八木委員には、金融再生委員会委員就任に伴い退任されました片田哲也委員の後任としてお願いをし、併せて第二部会の委員を勤めていただいております。
また、新しいオブザーバーとして、森 昭治金融再生委員会事務局長にも御参加いただいております。
〔森事務局長 立礼〕
○貝塚会長 以上、よろしくお願いいたします。
さて、本日の第1の議題は、会議終了後のタイミングで第二部会からの公表を予定しております「特例措置終了後の預金保険制度等に関する基本的な考え方」についての御報告及び関連での自由討議となっております。「基本的な考え方」は、預金保険制度の問題について、「できるだけ早く骨格となる基本的な考え方をお示しいただきたい」という宮澤大蔵大臣からの御要請もありまして、第二部会に夏休み返上でまとめていただいたものであります。本年末に予定されております最終答申の前の中間報告に位置づけられるものであります。
また、本日は、前回7月6日の合同会合で部会毎の中間整理を公表して以来の総会になりますので、その後の会議の状況、あるいは金融審議会の審議の状況、すなわち中間整理公表後の部会・ワーキンググループ等の活動状況、及び第一部会の「中間整理(第一次)」に対して寄せられましたパブリックコメント等につきまして、その概要を事務局より御紹介いただき、審議会の運営について御自由に議論いただければと存じます。
では、早速審議に入りたいと思いますが、それに先立ちまして、本日は、大野功統総括政務次官に御臨席を賜っておりますので、御挨拶をお願いします。
どうぞよろしく。
○大野総括政務次官 おはようございます。
金融審議会の貝塚会長はじめ、委員の先生方には、金融システムのあり方ということで、金融取引の円滑化を目指して、鋭意これまで検討していただいておりますことを心からまず厚く御礼を申し上げる次第でございます。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。
私、今、会長から御紹介いただきました、第2次小淵改造内閣におきまして、新しく「総括」なるものが付きました政務次官でございます。先生方よく御存知だと思いますけど、総括とは一体何ぞや。今まで政務次官なんていいますと、盲腸みたいなことを言われておりまして、ちょっと腹が立っていたのでありますが、まず第1に、何といっても、国会をおもしろくする、活性化する、こういうことで国会審議活性化法というのがございまして、大蔵省の方もいらっしゃいますが、大蔵省の役人は国会では答弁しないということで、我々が答弁していかなければいけない。あるいは反論権もあります。ということで、まず国会をおもしろくして、活性化するということが第一の任務でございます。
活性化するためには.やっぱりいろんなことを基礎勉強してないと、到底対応できませんので、今日じっくりと終わりまで勉強させていただきたい、座って聞かせていただきたい、こういうふうに思っております。
私も大蔵省におったのでありますが、22年前のことでありまして、その頃はデリバティブズなんて全然ありません。勉強を根本的にし直さなければいけないかと思っております。
それから、第2は、政務次官といいますと、これまで、例えば政策企画に参画すると、こういうような言い方でございまして、新しい法律の下では総括政務次官というのは、政策企画を司る、いわばラインに入るわけでございますから、大蔵省内で意見の不一致があったら、これは大変なことでございます。対外的には意見の不一致があったら大変なことでございまして、大蔵大臣宮澤先生の御指導の下に、省内不一致なぞならないように頑張ってまいりたいと、このように思う次第でございます。
今日の金融審議会では、いわゆる特例措置終了後のペイオフ問題について、中間的な整理を基本的な考え方として聞かせていただく、とりまとめていただくということを伺っております。特に国民生活に重大な関連がございますし、企業の決済等にも関連ございます。
大蔵省ホームページを見てみますと、ヒットチャートのナンバーワンがこの預金保険制度の仕組みということでございます。ヒットチャート・ナンバーワンでございます。今年の9月24日から9月30日まで、1日平均
5,000件ほどのヒットがあるようでございますけれども、ヒットチャート・ナンバーワンが
1,582件で、1週間でございますが、預金保険制度の仕組みということであります。預金保険制度の仕組み、これは1番でございまして、ちなみに2番は何かということを申し上げますと、大臣記者会見
1,297件。宮澤大臣も人気あるんだなと思っております。3番目が税制を巡る最近の動き
1,218件ということでございまして、本当に国民の皆様が関心を持っていることでございます。
一体2001年4月1日からどうなるんだろうと、こういう問題でございますので、どうぞ、今日の基本的な考え方、さらに、この問題につきましては、先ほども会長から御紹介こざいました。宮澤大臣が、どうしても大事な問題だから、年末答申の前に、この29日から始まります臨時国会で基本的な考え方でも国会にお示し申し上げたい、こういうことで夏休みも返上していただいて、鋭意検討いただいた事項でございます。
年末答申に向けまして、まだ若干詰めが残っている問題もあろうかと伺っておりますけれども、これまでの御労苦に感謝申し上げますとともに、年末に向けての最終答申作りに向けて、どうぞひとつ精力的な御審議をお願い申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。
ありがとうございました。よろしくどうぞお願いいたします。
○貝塚会長 どうもありがとうございました。
それでは、議事に移ります。
まず、第二部会より、「特例措置終了後の預金保険制度等に関する基本的な考え方」について御報告をいただき、その関連で自由討議を行います。まず、「基本的な考え方」の概要につきまして、事務局より説明をいただいた後で、倉澤第二部会長、神田預金保険WG座長からそれぞれ補足説明をお願いします。
それでは、林信用課信用機構室長からお願いいたします。どうぞよろしく。
○林信用機構室長 信用機構室長の林でございます。よろしくお願いいたします。
お手元に総会の資料5−1といたしまして、「特例措置終了後の預金保険制度等に関する基本的な考え方」という表題にさせていただいておりますが、資料をお配りしておるかと思います。概要について御説明いたします。
まず、1ページ目の「1.はじめに」というところでございますけれども、これは今回の「基本的な考え方」のいわば位置づけを示すものでございます。
?にございますように、金融機関の破綻処理につきましては、平成12年度までの時限的な特例措置といたしまして、ペイオフコストを超える資金援助を行うことによりまして預金の全額保護が図られております。さらに、いわゆる再生法、早期健全化法のような時限的な特例措置が設けられておりまして、平成12年度までに金融機関の不良債権処理を基本的に終了し、ゆるぎない金融システムを確立するということが求められ、このため、いわゆる60兆円の財源措置等が講じられているところでございます。
?にございますように、この全額保護の特例措置は平成12年度限りで終了するということが法律で予定され、その後は、預金者が金融機関の破綻による損失の一部を負担することがあり得る体制に移行することとされております。
そこで、?でございますけれども、金融審議会の第二部会としては、「恒久的」な金融機関の破綻処理及び預金保険制度のあり方について検討を行ってきていただいたわけでございますけれども、今回第二部会として、特例措置終了後の預金保険制度等の骨格となる部分についての基本的な考え方を以下のようにとりまとめたところである。今後、各界各層からの意見を踏まえた上で、これはパブリックコメントに付すことを前提として書いておりますけれども、さらに詰めるべき点、これは後ほど出てまいります流動性預金についての議論、それから、何を預金保険の対象とするかという各論の部分、そういった部分についてはさらに議論を尽くす必要があるということと、それから、特例措置が終了するまでの間に整備すべき環境、こういった点も含めて最終的な考え方をとりまとめることとしたいというのがこの考え方の位置づけでございます。
2ページ目を御覧いただきますと、ここでの議論は、実際に破綻が起こった場合の預金保険及びその破綻処理のあり方というものがこの基本的考え方の大宗を占めておりますけれども、2.のところは、まず、預金者の保護はどうあるべきかということを書いているところでございます。
「市場規律を中心とした預金者等の保護」というところでございますけれども、?では、預金保険制度は、金融機関の経営破綻に際しての預金者保護という事後的な対応措置でございますけれども、預金者保護の基本というのは、健全で収益力の高い金融機関の経営にある。したがいまして、個々の金融機関においては、適正な会計処理、内部管理の向上、新たな金融商品の開発、顧客の信頼の獲得などについて努力が求められる。
?でございますけれども、全額保護の特例措置が終了いたしますと、金融機関の破綻を未然防止するということが預金者の保護の上で最も肝要になりますので、問題金融機関の早期発見・早期是正が重要になってまいります。
この早期発見・早期是正については、市場規律による金融機関のモニタリングが有効に機能することが求められますが、それと併せて、監督当局による検査・モニタリングの充実・強化、早期是正措置の適時適切な運用が必要である。
なお書きでございますけれども、現在の金融市場における決済慣行や企業行動等は、預金にリスクがないことを前提として成り立っていますが、特例措置終了後においては、この前提を変更せざるを得ないため、多様な資金運用、資金調達、資金決済手段が提供され、市場規律と自己責任に立脚した金融システムにふさわしいものとなることが望まれるということも指摘しておるところでございます。
3.からは実際の金融機関の破綻処理のあり方についての考え方を書いております。
まず、「基本的考え方」でございますけれども、預金保険制度の本来の目的は少額預金者の保護であり、保険負担やモラル・ハザードを減少させるためにも、基本的には「小さな預金保険制度」を目指すべきである。この観点からも、金融機関の破綻処理においては、回復の見込みがなくなった金融機関を、問題を先送りすることなく早期に処理することが重要である。
このように「小さな預金保険制度」でございますけれども、?以下にございますように、破綻処理が迅速に行われれば決済機能の保護や借り手の保護にも資するということが指摘されております。
それから、金融機関が破綻した場合には預金保険の発動により処理されるわけですけれども、その場合、破綻金融機関を存続させないことを前提に、ペイオフコストの範囲内で破綻処理コストがより小さいと見込まれる処理方法を選択するとともに、破綻金融機関の有していた金融機能を維持するなど破綻に伴う混乱を最小限に止めることが重要でございます。
そのため、金融機関の破綻処理方式としては、破綻に伴う損失負担により預金の一部がカットされることは同じであるけれども、譲受機関が破綻金融機関の金融機能を引き継ぐことになります一般資金援助方式、これを優先し、金融機能まで消滅させることになる保険金支払方式、いわゆる狭い意味でのペイオフの発動はできるだけ回避すべきである。その際、破綻処理の迅速化と破綻処理の多様化が必要である。
なお書きといたしまして、金融機関を破綻に至らしめた経営者の責任追及、株主・出資者等の損失負担、悪質な借り手への責任追及と債権回収の徹底の重要性に触れております。
?が、次に問題となります一般資金援助を適用した場合に営業譲渡をいかに迅速化するかという問題でございます。
一般資金援助方式の下で営業譲渡が行われる場合、監督当局の業務停止命令や司法手続による保全処分によって預金の払戻しや融資機能が停止されることが想定されます。その場合、預金者に多大な影響が生じ、決済機能を含む金融機関のフランチャイズ・バリューが急激に低下するなど、地域経済や金融システムに大きな影響を与える可能性がございます。
したがいまして、この営業譲渡を迅速に行いますことにより、破綻金融機関の金融機能をできるだけ早く譲受金融機関に引き継ぐことが極めて重要でございます。
ただ、預金の一部カットを行うような私権の一部剥奪ということについては、最終的には司法手続によらざるを得ない。しかしながら、金融機関の破綻処理を迅速に進めるためには、司法上の手続に入ることを前提としながらも、その前に司法手続の外で破綻金融機関の営業譲渡を行うという手法が有効である。このためには、以下に述べる事前準備、資金援助が可能になる場合の拡大、営業譲渡手続の迅速化・簡素化についての手当てが必要ということでございます。
まず、事前準備でございますけれども、金融機関の破綻処理を迅速に行うためには、名寄せや資産内容の把握等が事前に行われることが求められます。したがいまして、預金保険機構及び監督当局が密接に連携をとりながら、実際に破綻が起こる前に、破綻処理に備えて可能な限りの準備を行っていく必要がございます。
また、一預金者当たり一定限度まで保護するという預金保険制度の下で、破綻処理を行うためには、破綻した金融機関の預金者等の名寄せが不可欠でございます。
破綻時に預金保険機構において名寄せを開始することとすると、名寄せ作業そのものが迅速な破綻処理の障害となる。破綻処理の迅速化という観点から、金融機関に対し、少なくとも当面、平時から預金者データを預金保険機構にスムーズに引き継ぐことができるためのシステム対応を求め、さらに、預金保険機構が金融機関の対応状況を把握できるようにすることが必要となるということでございまして、平時から常に金融機関に預金者の名寄せをするというところまでは求めないけれども、少なくとも当面、預金保険機構にスムーズにデータを引き継げるような対応を求めるということでございます。
が「資金援助が可能になる場合の拡大」という論点でございまして、現行の本則の営業譲渡におきます一般資金援助については、破綻金融機関が譲受金融機関に対して営業の全部を譲渡した場合に、営業譲渡時に譲受金融機関に対して行われることを前提としている。全部譲渡であって、営業譲渡時であって、かつ、譲受金融機関に対してであるという三つの要件がかぶさっているところでございます。
しかしながら、上記の場合以外にも資金援助を可能にすれば、破綻の態様に応じた多様な破綻処理を行うことが可能となり、破綻処理の迅速化にも資するということから、例えば、健全資産と付保預金のみを譲渡した場合にも資金援助をする。あるいは営業譲渡が終わった後にも追加的な援助をするということも含めて、資金援助が可能になる場合を拡大することが必要となる。
それから、「営業譲渡手続の迅速化・簡素化」というところでございますけれども、迅速かつ円滑に破綻金融機関の営業譲渡を行うために、また、破綻金融機関の経営陣が自ら破綻処理を進めるということは適当でないことからも、司法手続に入る前に、監督当局の権限に基づく行政処分として破綻金融機関を公的な管理人の下に置くことが適当。そのため、現行の金融再生法におきます金融整理管財人の機能を踏まえまして、破綻金融機関の経営権を掌握する管理人制度を導入すべきである。
それから、もう一つ、通常の金融機関の営業譲渡におきましては、株主の保護、債権者の保護のために、一定の厳格な手続が要請されております。他方で、破綻の場合には、このような手続により、一定期間を要するために営業譲渡が遅れてフランチャイズ・バリューの低下をもたらしますと、結果的に債権者保護の要請に応えられない事態になるということが想定されます。
したがいまして、金融再生法で時限的に措置されております株主総会の特別決議に代わります裁判所の代替許可制度を導入することによりまして、営業譲渡の手続を迅速化・簡素化する。代替許可制度以外にもございますけれども、この迅速化・簡素化が必要である。
次のページでございますが、上記の〜
の手当てを前提とすれば、我が国における破綻処理の望ましい基本形としては、十分な事前準備が行われた上で、破綻公表と同時に公的な管理人が選任され、公的な管理人により譲受金融機関に破綻金融機関の営業の一部又は全部の譲渡を行うという方法が考えられる。これはアメリカのP&Aと同様の機能を持つことになる。
なお、ここで簡単に保険金支払、ペイオフの方式について触れておりますけれども、ペイオフはなるべく回避すべきであるけれども、仮に保険金支払を実施した場合には、混乱を最小限にこれを迅速に行うことが必要であり、そのためにも、事前準備等が十分になされていることが重要と指摘しております。
以上が基本形でございますけれども、基本形ではうまくいかないといいますか、事前準備が十分ではなかった場合などを想定したのが、次の「? 金融機能の維持」というところでございます。
破綻金融機関の金融機能の維持については、処理の迅速化により対応すべきであるが、営業譲渡のための事前準備が十分でない場合など、破綻してから営業譲渡までにある程度時間が必要なケースも想定されます。
その間、預金の払戻しや融資の継続等の機能を停止しますと、利用者であります法人や個人の決済が滞る、あるいは必要な融資を受けられなくなるといったことで、地域経済等に大きな影響をもたらしかねません。このため、営業譲渡までの間であっても、公的な管理人の下、あるいは司法手続の下にある破綻金融機関におきまして、処理手続として整合性がとれる範囲内で、一定の金融機能を継続することが望ましい。
まず第1に、預金者の利便性の確保、預金の払戻し、あるいは決済サービスの享受につきましては、破綻公表から営業譲渡までにある程度時間がかかる場合であっても、預金の払戻しについては可能にしておくことが望ましい。したがって、破綻金融機関におきまして付保限度までの預金の払戻しを可能にする。あるいは預金保険機構が破綻金融機関に対して必要な資金をこのために貸し付けることができるようにすることが必要になる。
今のが付保限度まででございますが、付保限度を超える預金につきましては、保険金支払方式の場合に措置されております預金等債権の買取制度の適用が求められるということでございます。
が流動性預金でございますけれども、金融機関が破綻して預金等の一部がカットされる場合に、迅速な破綻処理による対応で決済の問題をどこまで解決できるかが問題となる。これについては、預金保険制度は少額預金者保護を目的とする制度であり、決済の問題は可能な限り破綻処理の迅速化と民間による多様な決済サービスの提供によって解決すべきであるとの基本的な意見がある。
他方、迅速な破綻処理を目指すとしても、営業譲渡までに時間を要する場合には、企業や個人の決済への大きな影響が懸念されることから、当面の営業資金や生活資金が保管されている流動性預金については、全額を保護すべきではないかとの意見もある。これに対しては、流動性預金を全額保護対象とすることは負担やモラル・ハザードの増大につながる、流動性預金の範囲をどうするのか、他の預金との明確な線引きが技術的に可能か、全額保護が必要ならば他の制度で対応すべきではないか、等の問題が指摘されている。
さらに、決済サービスへの影響を緩和しつつモラル・ハザード等の問題を回避するため、付保限度を超える一定額について、予め定められた比率で迅速に払い戻すこととしてはどうかとの意見がある。また、流動性預金については、決済されるまでの間は移転の途上にあるものと考えられるので、他の債権に優先して弁済を受けられる優先権を与えてはどうかとの意見もある。
以上のように議論が多岐にわたっていることに加え、破綻金融機関に滞留する仕掛かり中の決済取引の扱いをどうするかなど実務的に詰めるべき点も残されており、今後、これらの論点について検討を急ぐこととする。
次に、借り手の保護の問題でございますけれども、金融機関が破綻した場合、その破綻金融機関と取引をしていた善良かつ健全な借り手が新たな融資を受けられなくなる。これらの保護についても、破綻処理の迅速化により対応するということでありますけれども、司法手続の下でも破綻処理費用の最小化を図るために破綻金融機関からの融資を可能としておくことが望ましい。しかしながら、預金者保護を本来目的とする預金保険制度による対応では限界があり、国における政策的対応が望ましい。
また、地方公共団体における自主的な対応が期待されると書いております。
以上が営業譲渡に時間がかかる場合でございまして、もう一つは、「譲受金融機関の問題」です。
一般資金援助は当然譲受金融機関の存在が前提となるわけですけれども、これの即座に現れない場合もあり得る。この引き継ぐべき譲受金融機関が現れやすい環境の整備と、直ちに現れない場合の対応について次に書いております。
まず、「現れやすい環境の整備」につきましては、資金援助の一環として、破綻金融機関から引き継いだ資産が劣化した場合に譲り受けた金融機関に生じる損害の一部を担保する仕組み、あるいは資産の引き継ぎにより自己資本比率が低下いたしますが、これを回復するための資本増強について検討することが必要となる。
それから、「譲受金融機関が直ちに現れない場合」といたしまして、この譲受金融機関を探す時間的な余裕を確保するためにも、現在の再生法にございますブリッジ・ バンク制度を踏まえた制度を導入すべきである。また、預金保険法附則の協定銀行 (整理回収機構)の受皿機能を継続することも必要と指摘しております。
以上が基本的な破綻処理の流れでございますけれども、「4.危機的な事態が予想される場合の対応」にも触れております。
全額保護終了後の破綻処理はペイオフコストの範囲内ということでございますけれども、金融機関の破綻により信用秩序全体の維持、あるいは国民・地域経済の安定に重大な支障が予想されるようなシステミック・リスクの場合には、通常の破綻処理の枠組みでは対応できないことも想定されます。
アメリカには、金融機関の破綻処理におきまして、「最小コスト原則」ということが定められている一方、厳格な手続の下において「コスト基準を遵守した処理方法によれば経済情勢や金融システムの安定性に深刻な影響を及ぼし、他の方法を用いればこれを回避ないし緩和できる」と判断された場合には、この「最小コスト原則」に依拠することなく例外的な処理が可能になっております。
我が国でも、現在の特別措置により金融システムが安定化した後においても、危機的な事態の可能性は否定することができません。このような万が一の場合に備えて、例外的な措置が可能にしておく必要がありますが、その場合には、厳格な手続が併せて求められるのではないかということでございます。
「5.預金保険制度の他の論点」について触れております。
まず、「付保対象」につきましては、従来から、基本的な貯蓄手段として国民の間に定着している、元本保証がなされている、債権者が特定され、転々流通しないということが主な基準となっておりましたが、今後、預金利子の扱いを含めまして付保対象の見直しに関する検討を進めていくことになりますが、上記の基準を基本に、預金者の混乱の防止や迅速な破綻処理の観点を考慮することが必要と思われます。
次に、「保険金支払限度額等」につきましては、我が国の1人当たりの平均貯蓄残高や諸外国の水準、保険料負担の増加を勘案すると、これを引き上げる必要性は乏しいと考える。
「仮払金」につきましては、破綻処理が迅速化されれば、意義が相対的に薄れますけれども、これが必要とされる事態に備えて、預金者の不安を解消するために20万円の水準の引き上げを検討することが考えられる。
次に、「預金保険料」でございますけれども、現在、一般勘定の借入れ残高が1兆3,000
億円に上り、既に破綻が公表されている金融機関の処理が予定されておりまして、さらに借入金が増加することが見込まれます。
全額保護の特例措置終了後の預金保険料の水準の検討に当たっては、この制度に対する国民の信頼に応えるためにも、まずもって、借入金を早期に返済し、さらに、一定規模の責任準備金を積む必要があることを念頭に置かなければならない。
それから、最後に、金融機関の財務状況等に応じました保険料率、可変保険料率でございますとか、一律の保険料率の弾力化といったものにつきましては、市場規律を補うという観点から望ましいと考えるが、一方で、一般勘定の借入金の早期返済が必要な状況の下で直ちに導入した場合には、経営の悪化した金融機関に与える影響は看過できない。したがって、当面、慎重に検討すべき課題であると考えるとしております。
一番最後のページには、パブリックコメントを募る旨のことが掲げられているところでございます。
私からの説明は、以上にさせていただきます。
○貝塚会長 どうもありがとうございました。
それでは、倉澤部会長、神田WG座長からそれぞれ補足をお願いいたします。
では、倉澤第二部会長、どうぞよろしく。
○倉澤第二部会長 倉澤でございます。
この骨格の骨格といいますか、基本的な思想として、現行の預金保険法の本法では、保険制度として発想いたしましたものですから保険金の支払が第一次的な手段で、一般の資金援助というようなものが二次的といいますか、そういう書きぶりになっておりますが、今度のこの案では、一般資金援助の方が優先するという骨格の転換というようなことがございます。
これが7月に論点整理でちょっとこのアイデアが出たところで、世間一般に、ペイオフに代わってP&Aというような話が出たんですけれども、一つには、P&Aというのは資産買取・負債の引受けともに、連邦の預金保険機構が関与はいたしますけれども、取引行為、契約でやるというようなことですが、アメリカの企業文化と、それから、金融機関についての規制権は州が持っているのに対して、この預金保険機構が連邦機関であるといったようなことがありまして、我が国でそのままこれを持ってくるというようなことがなかなかできないということで、日本版P&Aというものを考えざるを得なかったことが一つ。
それから、もう一つは、究極の最後の最後で、破綻金融機関の処置が先送りされるということは、やはりありうべきではないということで、例外的ではあるにしても、ペイオフ制度というものが最後の担保の役割を果たすということで、こういうことになったわけですが、最後にちょっとお時間をいただきまして、この夏休みを返上して、委員、オブザーバーの皆様に非常に熱心に御討議に参加いただきましたことに対する謝意と、それから、この短い時間に極めて精力的に次から次へとたたき台を出し続け、たたかれ続けてきた事務的の方に敬意を申し上げたいと思います。
ありがとうございました。
○貝塚会長 どうもありがとうございました。
それでは、神田WG座長、お願いします。
○神田預金保険制度WG座長 神田と申します。
それでは、4点ほど簡単に補足というのでしょうか、感想めいたことを申させていただきたいと思います。
第1点ですけれども、これまでにも申し上げたことと重複するかもしれませんけれども、世の中一般に「2001年4月からペイオフ開始」という表現でよく言われることがあるんですが、これが非常にミスリーディングでございまして、ペイオフ開始という意味は、正確に言えば、「特例措置終了」という意味であって、狭い意味でのペイオフですね。すなわち預金保険金が払われるという形でのペイオフがあり得るという意味。あり得る状態になると。今は特例措置期間ですのであり得ないんですけれども、あり得る状態になるということで、イコール破綻した金融機関は常にペイオフするという意味では決してないわけです。その点を注意しなければいけないと思います。
実際問題としても、アメリカの例を見ましても、ペイオフという形で保険金を払うということが行われた例は極めて少ないわけでありまして、かなりはっきり申しまして小規模の金融機関の場合でありまして、それ以外の場合には、よく使われるP&Aと、ちょっとわかりにくい言葉ですけれども、そういう形で処理されているわけです。
したがいまして、やはりこの「特例措置終了」という、余り良い言葉じゃありませんけれども、そういう意味で理解しなければいけないということを繰り返し強調させていただきたいと思います。これが第1点です。
それから、第2点は、預金保険制度というのは確かにセーフティネットの仕組みなんですけれども、他の金融機関に関わる諸々の制度や仕組みといわば連携して、初めてその価値が発揮されるものでありますので、逆に申しますと、他の制度や仕組みがちゃんと動いているということに依存している面がかなりございます。
具体的に申しますと、これは今回の「基本的な考え方(案)」の中にも出ておりますけれども、いわゆる早期処理、すなわち金融機関が経営破綻を起こしていった場合に、マイナスになる前にそれが処理できれば、仮にペイオフになったとしても預金は全額返ってくるわけですね。マイナスではないわけですから。これが処理が遅れて非常に赤字が大きいという状態になって処理しますと、誰かがコストを負担しなければいけないということになりますので、預金者がその一部を負担するのか、あるいは公的資金で国全体で負担するのかということを議論しなければならなくなる。
したがいまして、大事なことは、やはりその早期処理、あるいは適正、厳格な監督という表現がいいのかどうかよくわかりませんけれども、そういうそちらの制度がまず大事であって、あくまで預金保険制度というのはセーフティネットとしての役割であるということであります。
アメリカでも実際にペイオフが行われたケースでは、日本で言えば
1,000万円、アメリカで言えば10万ドルですけれども、それを超えた部分の預金も、何か日本では、1,000
万円を超える部分は全額返ってこないように報道された時期もあろうかと思いますけれども、アメリカでは大体10万ドルを超える部分も96%〜97%は返ってきているという統計がございます。
したがいまして、これも早期に処理する、あるいは早期に閉鎖するという手段、早期にこういった処理手続に入ると、そういう態勢が出来上がっているかどうかによって、いわば被害というのでしょうか、損害というものもミニマムに抑えられると、そういう関係にあることを強調させていただきたいと思います。
第3点ですが、今回の「基本的な考え方」のポイントというのは、ややワーキンググループ的に、すなわち実務的に見ますと、どういう点にあるかと申しますと、これは司法上の破綻処理手続を使おうということであります。と同時に、これは預金者に負担を求めるということになりますから、これを使おうというか、使う必要があるということであります。
と同時に、それに入る前に、いわば日本版P&Aというものをやりましょうと、これが基本形でありまして、この紙の4ページから5ページに書いてあり、今御説明があったとおりであります。
実はこういったやり方は、これまでは日本の法制度が遺憾ながら十分でなかったと言わざるを得ませんで、現在の預金全額保護という特例措置を打ち出す前も、戦後は一度も使われてこなかったということがございます。したがいまして、ここの部分の 法制度をきちんと整備し、かつ、実務的に動く姿をまず作ろうと。それをいわゆる 2001年4月以降、あるいはこの紙の言葉で言いますと、「恒久的な」と1枚目に出ていますけれども、そういう法制度としてきちんと作ろうというのが今回の「基本的な考え方」の中心部分だということになります。以上が3点目です。
最後に、4点目は、これはひょっとするとワーキンググループの立場として申し上げるというよりは、私個人の感想めいたことになってしまうかもしれませんので、ここで申し上げるのは適切でないかもしれませんけれども、ちょっと申させていただきます。
これは、今回ワーキンググループでもそうだったんですけれども、ここの「基本的な考え方」で示したような世界に2001年4月に本当に移れるんだろうか、あるいは移るのが妥当だろうかという議論が非常に世の中一般でもなされておりますし、それから、専門家の間でもかなり議論されております。
細かい点はともかくとしまして、私の一般的な感想ですけれども、確かに今いる状態から言いますと、これは金融機関だけの話ではないと思いますけど、やはり何でも保護してほしいと、こう言いたくなるので、私も自分の何かが危機に瀕していれば保護してほしいと、こう言いたくなると思うんですけれども、問題は、何でも保護するのは結構だと思うんですが、ただではできないので、誰かがそのコストを負担する必要があるということであります。現在は預金全額保護、それから、オペレーションも全額保護しているわけですけれども、その保護のコストは誰が払っているかというと、公的資金で払っているわけです。
今後のことを考えましても、預金保険制度で保護しますといいましても、保険料だけでは到底負担できないことは一目瞭然でありまして、そうだとすると、保護してほしいというのは、保護するためのお金は、結局のところ、公的資金というか、国民全体で負担するということにならざるを得ない。その意味はどういうことかといいますと、結局ツケを次の世代に延ばすということでありまして、今の世代はそれで保護されて、大変ハッピーかもしれませんけれども、ツケを後に先送りするという決定を我々はしていいのかというのが、非常に私は疑問に思うわけであります。
そうだとしますと、2001年4月以降と言われております恒久的な制度をまずきちんと作る、その絵をきちんと描くというのがこの金融審議会としては非常に重要なことであって、その絵が描ければ、2001年3月31日と2001年4月1日の間にいきなりばっといくか、あるいはそこにある種の経過期間、あるいはソフトランディング期間のようなものを設けるかというのは、次の議論として、これは高度に政策的、あるいは政治的、政策的な議論として大いに行っていただきたいと、私個人的にはそういうふうに思うわけです。
しかし、そういう議論を、現在は政府の立場は4月1日に平時というのでしょうか、恒久的な世界に移行するという考え方だと思いますし、私はその考え方、基本的に正しいというふうに思っておりますけれども、いずれにしましても、そういう意味でも恒久的な世界がどういうものかというものをきちんと作って、そして、それを固めるというのが非常に重要なことで、繰り返しになりますけれども、ツケは後の世代に先送りすべきではないというふうに私は思っております。その意味でも、その世界をまず固める必要があると思います。
それに関連して、もっと大きな話になるかもしれませんが、預金保険制度は先ほど申しましたようにセーフティネットにすぎないというか、全体の一部でありまして、先ほどはむしろ早期処理とかそういう話をしましたが、実はもっと大きな話としては、結局これは日本の金融分野の将来ビジョンをきちんと持つということが非常に重要な話だと思いますので、そういうことから申しますと、やはりつい目の前の問題に注意がいってしまうわけですけれども、この日本の金融分野を今後どう展望するのかという将来ビジョンをきちんと議論する必要がありますし、そういう中に位置づけて、初めてセーフティネットの制度というものも真価を発揮するというふうに思います。最後のところは、ワーキンググループの立場をちょっと離れたような発言をついでにさせていただきまして、大変申し訳ありませんでした。
私もこの場をお借りしまして、ワーキンググループ、ものすごい頻度で長時間会合をやっておりまして、委員の皆様方、オブザーバーの皆様方、そして事務局の方々に厚く御礼申し上げたいと思います。
以上です。
○貝塚会長 どうもありがとうございました。
それでは、自由討議に移ります。ただいま御紹介のありました資料で言いますと、総会5−1の資料ですが、それに関する御感想、あるいはその他預金保険関係の審議運営の今後等につきまして、御質問、御意見あるいは御感想、御自由に御発言、御議論いただければと存じます。どなたからでも、どうぞ御自由に。
では、堀内委員さん。時間がだんだんなくなりまして、なるべく短く。
○堀内委員 短くやります。
この5−1の資料は、第二部会の我々が議論したものを非常に良くまとめていただいておりまして、基本的に私、全く異存がないわけで、それから、今、神田さんから非常に良いコメントがあったと思うんですね。したがって、私が言おうと思ったことはほとんど神田さんがということなんですが、やや重複ですけれども、二つほど私の意見を述べさせていただきたいんですが、その二つとも、実は、いわゆるペイオフ問題について、かなり混乱があると思うんですよね。それは我々の間というよりは一般の人々の間にも混乱があって、それをこの際、クリアにしておいた方がいい。そのために少しこの資料の書きぶりを工夫していただければということでコメントします。
一つは、これは神田さんが、ペイオフというのは特例措置終了後に終了するということを非常にインプライしているというようなお話で、それは確かにそのとおりであるんですが、もう一つ私が混乱しやすいと思う点は、御説明にもありましたが、狭い意味でのペイオフというのと、それから、銀行破綻のときに預金等が一部カットされるということが渾然一体で議論されているように思うんですね。P&Aが行われればそういうカットがないかのような受け取り方をされてしまうと困る。ここにはちゃんと書いてあるんですけれども、やはりその点はきちんと、つまり狭い意味でのペイオフでない場合にも預金等のカットはあり得るということですね。これがいわゆる「小さな保険制度」というふうに我々が掲げた、「小さな保険制度」ということは新しい言葉じゃないかと思います。この言葉が我々の言葉を意味していることであって、それを明確にしておいた方がいいように思うんです。それは狭い意味でのペイオフと、それから、P&Aなどに伴って生ずるであろう預金等の一部カット等は、今後は両方とも起こり得ることであって、それが「小さな預金保険制度」が持っている具体的な意味の一つである。
それから、もう一つは、我々が議論したのは恒久的制度に関する議論ですけれども、ここで積み残しとして考えられている例えば流動性預金の問題とか、借り手保護というものは、ここから先は私の意見になりますけれども、移行の問題である。神田先生も少しそういう点のことをお触れになりましたが、移行の問題として考えるべきでないか。つまり我々は長期的には「小さな預金保険制度」を目指すというスタンスを明確にし、しかしながら、今この状況の下で、一挙にそういうことに移るというのは非常に混乱が起こり得る原因になるんじゃないかという心配は確かにあるわけですね。ですから、そういう恒久的な制度に移行していくプロセスとして、一体どういうふうに対処するかという形に問題を分けた方がいいんじゃないか。
つまり恒久的な制度の場合には、流動性預金の問題については、流動性預金の保護ということは本来あり得ないというふうに書いた方がいいんじゃないかというのが私の意見です。いずれにしましても、そういう形で、恒久的な制度への問題と移行の問題をクリアに分けるということが必要なような気がします。
以上です。
○貝塚会長 ほかにどうぞ御自由に御発言。
蝋山委員。
○蝋山委員 神田さんの発言の中で、銀行に対しては、常日頃、どんな銀行に対しても適正、厳格な監督を行い、それがうまくいかなかったときに早期に処理をする。それでもうまくいかなかったときにセーフティネットが発動されて、セーフティネットのいわば今までにない穴として日本版P&Aというのがあり、さらにそれでもというときには、どうしようもないときにペイオフ、こういう構図は非常にわかりやすいし、大変基本的に重要だ、それでいいと思うんですね。
問題は、一番初めの適正、厳格な監督というニュアンスがほとんどこの文章にはない。例えば、先ほど名寄せと資産内容の把握ということについては、常日頃は求めないと、こういうふうに室長はおっしゃったんじゃないかと思うんです。そういうニュアンスがこの文章の中にある。
しかし、韓国を見ても、仮名制から実名制というのは、もう何年も前に、何年だか正確に忘れましたけれども、少なくとも制度としては移行している。名寄せをしない。いろんな理由があるんでしょうけれども、やはり銀行の持つ公共的な、社会的な責任から考えれば、適正、厳格な監督というものの中に含まれなければいけないし、資産内容の把握という問題にしても、これは預金保険機構が把握すればいいんじゃなくて、やはり資産内容はきちんとディスクローズされなければいけない。そういうようなニュアンスがほとんどこの文章には書かれてないというのは、ほかの全体が非常に良くできているがために、私は気になるところであります。それが一つ。
それから、もう一つは、譲受金融機関がなかなか出てこない、そのインセンティブをどうするか。これも日頃から適正、厳格な監督をしていて、資産内容がはっきりしていれば、そしてプラス、それに加えて、資産内容を良くするような規制が行われていれば、何かできるんじゃないか。前に私は、流動性預金と裏腹に国債のような安全資産を持つことを義務づける制度を、ある程度の期間、導入したらどうかというようなことを申し上げましたけれども、そういう点がちょっと、譲受金融機関が出てくるのが当然だというのが非常に強く書かれていて、出てくるような環境を作るということをもう少し強くインセンティブ・メカニズムを制度の中にビルト・インすべきなんじゃないかなというのが第2点です。
第3点は、簡単に言いますが、特にこの文章は、一般の人々に理解してもらなくちゃいけない文章だと思うんですが、大変難しい。そして、先ほど総括政務次官が紹介されたようなホームページの預金保険機構のところくらいの文章にすべきなんじゃないかなと。それから、曖昧なところが大変多い。「が」というのが14あるんです。私が数えただけでは、曖昧の「が」が。やっぱり伝統的な大蔵省の文章になっていて、私はこれは、特に今回の場合は、ペイオフという、いろんな誤解がある問題を扱っているわけですから、私はもっと注意すべきなんじゃないかというふうに思います。
以上、3点。
○貝塚会長 どうもありがとうございました。
蝋山さんの言われた趣旨は、多少文章に書いてあるんですが、まあよろしい。
○蝋山委員 わかりにくい。だから、言っているんですよ。
○貝塚会長 御趣旨わかりました。
原委員、どうぞ。
○原委員 先ほど大野さんの方から御発言があって、ヒットチャートの1番にこれが上がっているというお話だったんですが、消費者も金融サービス法と並んでこの問題は関心が高いテーマです。ただ、関心が高いんですけれども、今、蝋山先生がおっしゃられたように、よくわからないというんでしょうか、言葉がすごく難しいのが多くて、よくわからないと。混乱というような言葉もありましたけれども、
1,000万円を超えた部分については、もう全く保証されないんだというようなことは、かなり浸透したりしておりまして、実際にはそうではなくて、早期是正措置や何か図られれば、そういうふうにはならないんだということも徐々には伝わってきているんですけれども、そういう意味では非常に混乱をしているというふうに思います。
それから、消費者から見ると、自分の預金は保護してもらいたい。だけれども、ほかの人の預金を保護するのに税金は使ってもらいたくないという、二律背反するような気持ちでこの問題をずっと見ているんですが、大体流れとしては、この方向で消費者も私は納得をするのではないかなというふうに思っております。その
1,000万円という限度のところまでは保険でカバーをし、それ以上については、それぞれの金融機関の努力ということでいいのではないかと思います。
ただ、意見として幾つかありまして、一つは、範囲をどうするかというところで、今のところ、元本割れをしないこととかと三つぐらいの要件がありますけれども、非常に多種多様な金融商品が出てきていますので、ここのところは、もう少し継続をしての検討が要るのではないかということと、もう一つ、皆さん非常に気にしているのが保険ですね。生命保険。損保は単年度とかの契約も多いのですが、長期の契約になる生命保険について、どういう扱いになるんだろうかということを気にしていらっしゃいます。ですから、その範囲が一つ。
それから、二つ目は、融資のところなんですが、借り手としてですけれども、例えば、私なども住宅ローンを抱えておりますけれども、抱えている相手先がかなり危ないと言われている銀行で、随分長く言われているんですけれども、そういった借り手のところがまだ十分詰められていないと思いますので、ここの充実は、やっぱり消費者としては大変気になるところです。
それから、三つ目なんですけれども、私どもも最終的なセーフティネットとしての機能はもちろん求めたいんですけれども、神田先生とか蝋山先生がおっしゃられたように早期是正措置ですね。厳格な監督というところを非常に期待をしておりまして、これは、今回まとめられたもので、その中に具体的に法案の形で盛り込まれるものなのかどうかというのは、ちょっと私もよくわからないんですけれども、やはりそこが大原則だといふうに思います。
今日も来るときに週刊誌を読んでおりましたら、住友とさくらの話が出ていて、さくらが抱えている不良債権をどれだけ住友が知ってこういう話をしているのかというのがありまして、今回のいろんな合併劇の中でも、お互いがお互いの不良債権の額をどれだけ把握をしているのかとか、それから、ここ二、三年、後から後から発覚をしてくるような形での不良債権が出てきておりまして、実際にそういった金融機関内部の情報というんでしょうか、それがはっきりした形でディスクロージャーもされて、監督をされるということが大前提だというふうに思いますので、ぜひそこも継続をして検討していただきたいと思います。感想めいた意見です。
それから、難しいという意味では、P&Aですね。これが消費者はよくわかりません。それから、もう一つ、わからないだろうなというふうに思う言葉があったのが、7ページの「ロス・シェアリング」という言葉ですが、これ二つが、このままペーパーを皆さんに出したときにわかりにくいかな。あと、流れとしては基本的にはよくわかるというふうには思います。
以上です。
○貝塚会長 保険につきましては、後でまたグループができることになると思いますので、それだけ付け加えておきます。
福間委員、どうぞ。
○福間委員 前回の報告から見ると相当踏み込まれて、非常に具体的になって、立派なものができたと思うんですが、我々最大の関心は、実は7ページの4項でございまして、「危機的な状態が予想される場合の対応」、要するにシステミック・リスクの部分でございます。
承継先が直ちに見つからない場合の措置については、この7ページの上の方にあるわけですけれども、体験から申し上げてなんですけれども、二つのことが過去二、三年の間に起きたと思います。
その一つは拓銀の倒産。これが地域の中核的金融機関が破綻した場合にどういう事態になるかというのが一つと、もう一つはやっぱり大きな長銀、日債銀さんの倒産。こういうビッグバンクがつぶれた場合の経済に対しての影響というのが非常に大きい。
これはアメリカでは、地域金融機関のエッセンシャル・ルールとか、あるいはビックバンクの場合はトゥ・ビッグ・トゥ・フェールとか、そういう形で呼ばれますけれども、やはりシステミック・リスクのところは、健全化法なり再生法を延長しろというんじゃないんですけれども、経済の一番悪いときに金融機関の問題が当然起きるわけですから、経済の悪いところで去年のような金融国会がまた開かれ、再生法のリバイブとか、健全化法のリバイブなんて議論やられると、また経済が麻痺してくるので、何らかの形で現在の再生法健全化法などの、法律を相当内容を変えた上でシステミックリスクへの、例外的な対応を残す方法はないものかというのが、実は経済の混乱が余りにも大きかったので、どうしても考えたいところなんでございます。
あとは、前回に比べますと相当具体的になっていまして、大変よろしいかと思うんですが、やはり先ほどもこざいましたように、事務局からの御説明がありましたように、一番重要なのは1ページの?だと思います。早く特例措置があるうちに、ここに書いてあるように、「ゆるぎない金融システムの確立」を行うことがポイントで、その後、基本形による対応があったり、あるいは基本形で対応しきれぬ部分にブリッジバンクなどで対応するとか、さらに例外的なシステム・リスクにどう対応するかということなんだろうと思います。
感想とともに、多少考えていただければという参考意見として申し上げます。
○貝塚会長 吉野委員、どうぞ。
○吉野委員 二、三意見を述べさせていただきます。
一つは、神田先生が一番最後におっしゃいました 1,000万円以上全額例えば流動性預金を保護した場合に、やはり現在と少し長期でありますけれども、同じ世代の人たちに余計に税の負担がかかるということがあり得るわけだと思うんです。
つまり、 1,000万円以上で、例えば 5,000万、1億の人たちの預金が全部保護されたとしましても、その場合には不良債権を抱える銀行が生き延びられる状況を作るわ けですから、さらにそこの銀行が不良債権を抱えて、ひいては国民全体にとって、 1,000
万円で切っておけば、もっと負担が少なかったのに、その同じ世代が長期的には負担を負ってしまうという問題があるのではないかと思いまして、それが一つ。神田先生は次の世代とおっしゃいましたけれども、同じ世代に負担がくる。
2番目は、早期是正措置、皆さんの御意見そうだと思うんですが、このワーキンググループの中で私も同じようなことを御質問いたしまして、銀行の場合の早期是正措置で一番難しいのは、例えば風の状況で早期是正措置をしたときに、預金者が預金を引き下ろしてしまう。本来ならその銀行は、小さな風のために治ったのに、殺してしまう。ですから、どの状況で早期是正措置をきちんと打つかということが、今後プラクティスが進んでいけば、個人がそういう変な動揺を持たないと思うんですが、回復できる状況のときに早期是正措置を打ちますと、今の状況ですと預金が引き出されてしまう。そういう意味では、国民も練習しながら、その早期是正措置がどんどんうまく適用されることが実務的には必要ではないかと思います。
以上です。
○貝塚会長 ほかに御質問ございませんか。
八木委員、どうぞ。
○八木委員 新参でございますけれども、先般コメントいたしましたところ、一つ報告書に入れていただきまして、ありがとうございます。
企業の立場として申し上げたのは、6ページの流動性預金のところの最後段なんでございますけれども、ここのところは六つの意見が併記されておりまして、これからの非常に大きな問題だということが表示されておりますが、私たち企業の方の立場としては、この最後に付け加えた「以上のように」の後の「破綻金融機関に滞留する仕掛かり中の決済取引」という、これでございます。
昨今、銀行は預金とか貸出以外に、流通過程の中で非常に大きな機能を持っております。例えば、我々の給与の支払いから始まって、代金の振込から、とにかくそういうものが銀行が動くと思ってルーチンとしてやっていくわけなんで、預金のように滞留しているものはいろんな対策がとれるんですが、ルーチンとして毎日毎月やって、したがって、できるだけ営業時間中には倒産させないでくださいとか、いろいろな具体的なお願いがいくわけでございまして、ぜひここにおきまして、意外に細かいような問題ですけれども、企業にとっては非常に大きな問題なので、これはまたワーキンググループその他になるかと思いますが、実務的に細かく詰めて、良い策を講じていただきたいと、こういうことでございます。
感想です。よろしくお願いします。
○貝塚会長 ほかに御質問あるいは御意見ございませんか。
黒田さん。
○黒田日本銀行理事 こうした新しい制度を作るときには、どうしても、何ができるかとか、何をすべきかという議論が先行しがちだと思うんですが、当然冷静な分析のためには、コスト・ベネフィットを比較して議論するということが必要になるわけでございます。本日、この報告書を見させていただきますと、まず最初にそういったコストに関する観点を含めまして、「小さな預金保険」、そして、早期処理の重要性というところから出発していらっしゃるということで、先ほど来神田座長からも御説明ありましたけど、こうした筋の通った一貫したレポートが出されましたこと、改めて敬意を表させていただきたいと思います。
このコスト・ベネフィットということに密接に関連するといいますか、それを具体的に考えていく場合に、避けて通れないのが、この預金保険機構の活動に必要となる資金をどのようにファンディングするかという観点かと存じます。
この点、現行の預金保険の仕組みは、中央銀行の資金にかなりの程度依存するという点におきまして、先進諸外国の預金保険とはいささか趣を異にしているわけでございます。この点、活動に伴う資金をどのようにして調達するのかという点につきましては、今後、中央銀行の資金の性質というものは、本来、短期の流動性の供給ということだと思いますが、こういった点も念頭に置いていただきまして、さらに御議論をいただけたらというふうに考えております。当然、日本銀行といたしましても積極的に議論に参画させていただきたいと考えております。
どうぞよろしくお願いいたします。
○貝塚会長 ほかに御質問あるいは御意見。
杉田委員、どうぞ。
○杉田委員 私も基本的にここに書かれているレポート、異論ないと。最小のコストで、とにかく特例措置の後の体制を恒久的な制度を作っていくということについては全く異論がないということなんですが、二つだけ。
これからの詰めの一番大きな問題になっています流動性預金、これはとにかくいろんな意見があるということで、この中で先ほど神田先生、それから、堀内先生の方からお話がありましたように、恒久制度としては、やっぱりあるべき姿をきちっと我々としては目指すということは、それでよろしいと思うんですね。
ただ、現実に、私も新聞社という企業経営の中に入っておりますと、企業の皆さんの気持ちもわかるんですね。特に中小企業の皆さんの気持ちもわかる。現実に金融機関からお金を借りる場合に、これは本当は建前としてはあってはならないんでしょうが、やっぱり預金をどの程度積んでくれるかとかいうようなことがどうしても現実的に必要になってまいりますし、事業計画と借入金と預金というものがある程度セットになっている場合と、なかなか個人の預金のように、危ないからといって、明日からさっと逃げて、ほかの金融機関に移るわけにいかないというのが企業の現実問題としてあるわけなんですね。
ですから、そういう点も私も非常にわかりますので、私は、先ほど神田先生、堀内先生がおっしゃったように、この移行にあたっては、ある一定期間の暫定措置が要るんではないか。これから1年半ぐらいの間に、全企業がそれに対応できるというふうにはとても考えられないわけでありまして、やはり私は3年ないし5年ぐらいの流動性預金については暫定措置が要るんではないだろうか。この暫定措置については、ここに専門家の方がこれだけおられるわけですから、ぜひ知恵を絞っていただきたいというふうに思うんですね。
暫定措置の間に、これから暫定措置、3年ないし5年といいますと、六、七年あるわけですから、その間に、例えば金融のメカニズム、この中に意見もあったと思うんですが、そういうような決済資金を管理する信託を作るとか、いろんな新しい商品開発が要るかもしれないし、また、現実にそういう方向がはっきりすれば、そういうものも出てくるというふうに思うんですね。
ですから、そういうものの対応措置が全くないまま、我々としては国民の税金を最小に使うんだという筋論だけで押していきますと、ここにヒアリングをした中小企業の皆さんが、こぞって中小金融機関、中小企業がおっしゃっている中でやった場合には、私が前にちょっと部会で申し上げましたように、グリーンカードの二の舞になる危険性も現実にはあるかもしれないということを考えますと、筋論を通しながら実際に法制度化していくということを考えると、そういう暫定措置の知恵というものも必要なのではないかというような感じがいたします。
それから、第2点は、先ほど神田先生が4点ほどおっしゃった、大変参考になったんですが、その中の第3点に、結局、この預金保険制度をできるだけ使わないで済む、ペイオフをできるだけ使わない。他の仕組みをいろいろ活用しながら、円滑な破綻処理をやるということで、私も全く本当にそうだと思うんですが、そうすると、結局、現行の司法制度がどの程度短縮されるのか、改善されるのかということにかかってくると思うんですが、この点については、前に林信用機構室長から、法務省の方でも民事再生に関する法律案が用意されつつあるから、それを使えばいいんではないかというような趣旨の示唆もあったんですが、その法律の方は法務省に任されているわけでありますから、多分グループの方の専門の先生方からもいろんな意見が法務省に寄せられていると思うのでありますが、肝心の法務省がどういうふうに動いているのか我々全然わからないわけでありますから、一度、最終結論の前に、法務省の担当のしかるべき方を呼んでいただいて、どういうふうにそれが活用できるような仕組みに変わろうとしているのか、法改正を用意されようとしているのかということを併せて聞いておかないと、我々は言うだけ言ったけれども、そちらの方がどの程度用意されているか全くわからないと、こういうブラインドの答申になっていくんではないかという2点、意見とお願いであります。
○貝塚会長 そろそろ予定の時間が経過しておりますが、先ほど来の御質問の中で私が補足したいのは、この文章は確かに、そうわかりやすいものでないとは、そうなんですが、いずれにいたしましても、パブリックコメントを求めるわけでして、その第1のところが、もしかしたらコメントの第1は、この文章は難しいというのが返ってくる可能性があり得る。これはややブラックユーモアに近いのですが、要するにここはわからないということがいろいろありますので、それは、そういう点で広く関心を持っておられる方のコメントを伺って、改善すべきところは改善するということではないかと思います。
それから、できれば、これも個人的ですが、前に確かフローチャートみたいなものがあったはずなんですが、やっぱりどういうふうになっていて、順番でこの選択肢がこういうふうになって、最後のところはペイオフになりますよというあたりのところを、割と視覚的にわかりやすいように表示するのも一つの仕方かと。これは全く私の個人的な意見です。
それから、福間委員がおっしゃいましたシステミック・リスクの話というのは、私が理解するところでは、アメリカの金融早期再生措置法ができてから、1回もまだないんですね。それは、たまたまアメリカ経済が幸運に見舞われて、大きな銀行がうまく推移したという点があって、結局まだアメリカにおいても、実を言うと実験してないことで、これは非常に難しい問題であるということは、おっしゃるとおりであります。
あとは、いろいろ感想がございますが、何か特にどうしてもこの点だけ、このレポートについて意見を申し述べたいという方、ございませんでしょうか。
なるべく手短にお願いします。
○田中委員 どうもありがとうございます。
杉田さんが言われた件なんですが、私はやっぱりそれはまずいと思います。流動性預金について、懸念があるかといって暫定措置をとりますと、本来、その問題を処理しようとして民間金融機関が集中的な投資を今行っておられるわけですから、まさにそれに備えて、2001年に備えてやっておられるわけですから、もしそれがないということになりますと、お客様が来ないということになるわけで、従来どおりの仕組みに依存していればいいということですから、暫定的な目標を与えると、本来への目標が妨げられるという面は明確にあると思います。
目的は、そういう意味では恒久的なものに早急に移行するということなんだと思うんですが、言われている懸念の話は、他の手段で克服できるわけですね。早期是正措置を、まだ1年半ありますから、一挙にそういう危うい銀行を追い込むということはできるわけでして、他の手段でこの流動性の問題には備えるべきであって、目標年次を遅らせることは、日本の金融のあるべき姿への立ち上がりを私は明確に遅らせることにつながると思いますので、その点はちょっと違うんだというふうに思いました。
○貝塚会長 時間がもうかなり予定より経過いたしましたので、預金保険制度に関する本日の議論は、ここまでとさせていただきます。
この「基本的な考え方」につきましては、本日会議終了後に私と倉澤第二部会長とで行います記者会見の際に対外公表いたしまして、パブリックコメントを求めるという予定でございます。
それから、預金保険制度につきましては、今もいろいろ御質問ありましたけれども、まだ詰めるべき問題点は残っておりまして、部会及びワーキンググループなどで集中審議を続けていただきまして、年末までに最終的な案をまとめるということになりますので、またハードスケジュールでございますが、「どうぞよろしくお願いします」ということを申し上げておきます。
続きまして、中間整理公表後の部会・ワーキンググループ、現在の金融審議会の活動状況の報告に移りたいと思いますが、局長は、よんどころない事情で退席されますので、よろしくお願いします。
審議は、部会・ワーキンググループ等の活動状況及び第一部会の「中間整理(第一次)」に対するパブリックコメント等につきまして、事務局から御報告をお願いしたいと思います。
それでは、内藤課長。
○内藤企画課長 企画課長の内藤でございます。
それでは、中間整理、7月でございましたが、公表後の部会・ワーキンググループの設置開催状況でございますとか、中間整理に対するパブリックコメントの概況等について、簡単に御紹介をさせていただきます。
お配りしております資料の5−2と5−3に基づいて御説明いたします。まず、5−2を御覧いただきたいと思います。
金融審議会、現在、この総会の下に第一部会、第二部会がございまして、その下にワーキンググループと書いてございます。これまでホールセール・リーテイルに関するWG及び集団投資スキームに関するWG、それぞれにおきまして、金融サービス法を睨んだ検討を進めてまいったわけでございますが、それに加えまして、御覧いただきますように証券決済システムの改革に関するWGというものが9月の第一部会の承認を得まして立ち上がって、現在検討が既に進んでおります。これは、2002年度中には世界的な証券市場の動きが約定日の翌日決済、現在そうなっておりませんが、翌日決済というようなところまで移行すべきであるという考え方が出てまいっておりまして、証券市場の活性化でありますとか、あるいは決済リスクというものをミニマイズするといったような観点で議論されているところでございまして、既にワーキンググループで御検討が進められております。
それから、第二部会でございますが、預金保険制度に関するWGについては、今御議論あったとおりでございますが、そのほかに保険の基本問題に関するWGというものが、これは既にこの夏までは保険の相互会社制度というものを株式会社化するということについて集中的に議論いただきましたが、現在は保険会社の健全性の問題、あるいは倒産法制の問題などについて御議論をいただいております。
その審議状況につきましては、2ページ以降を御覧いただきますと、最近の審議状況、この夏以降でございますが、第一部会、第二部会、御覧のとおりでございまして、第一部会につきましては、既にパブリックコメントの御紹介もいたしまして、そこで今後の運営といったものを議論をいただいております。これは後でまた御紹介いたします。
それから、第二部会につきましては、預金保険制度の議論が中心ではございましたが、保険問題についても、検討状況について随時、中間的な報告をしておると、こういうふうなことで現在議論が進行しておるということでございます。
3ページを御覧いただきますと、さらにワーキンググループの審議状況でございます。
ホールセール・リーテイルWG、集団投資スキームWG、これにつきましては、引き続き金融サービス法に関わる論点について御議論いただいております。
証券決済システムの改革に関するWGは、今申し上げたとおりでございます。
そのほか、下の方に保険の基本問題に関するWGということで、先ほど申し上げましたが、保険会社の健全性の問題、破綻処理の問題といった問題について御議論をいただいております。
次に、4ページは、証券決済システムの改革に関するWGの設置についての趣旨といったものを書いてございまして、今申し上げたように翌日決済ということを睨んだ検討をしてまいります。
それから、5ページが保険の基本問題に関するWGの設置でございまして、これも先ほど申し上げたような趣旨で現在検討をしております。
それで、6ページを御覧いただきたいんですが、6ページは金融審議会の今後のスケジュールイメージの(案)でございますが、これを簡単に御説明いたします。
まず、第一部会の関連でございますが、集団投資スキーム及び販売・勧誘ルール関連ということで、金融サービスに係る問題について中間整理を7月にいただきまして、現在は、この集団投資スキーム。特にこの問題につきましては、実務界等々からも要望が非常に強うございまして、規制緩和という方向で、特にSPC法の改正というものを睨みまして、現在鋭意御検討をワーキンググループを中心、あるいは第一部会におきまして御検討いただいております。
それから、販売・勧誘ルールにつきましても、後で御紹介いたしますが、パブリックコメントでも法制化についての積極的な検討を進めていくべきであるというふうな御議論もいただいておりまして、これも検討が今進んでおります。
それで、こういった問題につきましては、その他預金保険制度については最終報告が12月にとりまとめられる予定でございますが、ほぼ同時期を睨みまして、「中間整理(第二次)」というような位置づけで整理をしていきたいというふうに考えております。
引き続きこの問題につきましては、パブリックコメント等を踏まえまして、さらに検討を続行いたしまして、来年7月には金融庁発足ということもございまして、6月には最終報告ということで予定をいたして検討を引き続きやっていくということでございます。
証券決済制度については、今申し上げたようなとおりで、これにつきましては、6月の最終報告に合わせてまとめていきたいというふうに考えております。
それから、第二部会関連でございますが、預金保険制度につきましては、今申し上げたようなことで12月に最終報告ということで、今度は、その法制化に向けての検討が具体的に始まるわけでございますが、保険制度の関連につきましては、第1弾を株式会社化に関するレポートが夏に出たわけでございますが、さらに倒産法制の問題を中心にいたしまして、この報告書を12月を睨みましてまとめる。さらに、年開けますと、保険会社の主にリスク管理、経営の健全性の問題についての検討を続行いたしまして、この報告を6月にまとめていきたいということでございます。
もう一つ、個人信用情報関連の問題がございます。これは個人信用情報につきましての漏洩をどう防ぐかと、防止するかというような問題。それから、その信用情報について、どう利用いたしまして、ある意味でその利用を促しまして、そこで多重債務の問題をどう解決していくかというふうな問題、論点が既に中間的な整理で出されております。これは個人信用情報といいますか、個人情報の保護全体の問題につきまして、現在、内政審議室におきまして、各省庁の合同の場で部会を立ち上げまして、現在検討しておりまして、これが11月頃には基本的な方向性が出てくるということで、これを受けてまたこの取扱いについて検討していきたいというふうに考えておりまして、またこの第二部会等の場でも御議論をいただきたいというふうに考えております。
以上が今後のスケジュールのイメージでございます。
後に付けておりますのは、各部会でございますとかワーキンググループの名簿でございますが、省略させていただきます。
次に、5−3でございます。7月におまとめいただきました「中間整理(第一次)」というものに対して、パブリックコメントが多数寄せられておりますので、それを簡単に御紹介させていただきます。
まず、26ページ、後ろから2枚目の紙でございますが、金融審議会の第一部会「中間整理(第一次)」のパブリックコメント提出者の一覧というものがございます。
合計52通、52先から寄せられております。金融業者・業界団体からのもの、それから、消費者関連の団体のもの、労働組合関連団体、次のページでありますが、シンクタンク、その他の団体、個人からも11通のコメントが寄せられております。それぞれ結構大部なものになりまして、相当数のボリュームのパブリックコメントになっております。
それでは、御面倒ですが、1ページに戻っていただきまして、そうしたものをいわば項目毎に大まかに要約をいたしました。これは事務局が要約したものでございますが、これを御紹介させていただきます。
まず、この中間整理につきましては、大きく申し上げまして、今後の金融システムのあり方といいますか、金融サービスのルールのあり方といった問題についての基本的な考え方の問題。それから、その中で特に議論が及んで集中的に行ってまいりました販売・勧誘ルールの問題。それから、集団投資スキームといったような問題。こうした問題を中心にコメントが出てまいったわけでございますが、まず、「今後の金融システムのあり方」というところでございます。
中間整理が箱で囲った部分でございまして、中間整理によれば、公正性と効率性という二つの軸がともに重要であるということで、コメントが○でございまして、効率性より、公正性が重要である。利用者保護を第一目標にすべきだ。こういう意見。それから、利用者保護と効率性のバランスを図り、実務に配慮したものとすべきである。こういうような御意見がございます。
それから、「今後の方向性」でございますが、中間整理で、最終的には、既存の業態別法制という枠組みを抜本的に見直す横断的な法制の検討が視野に入ってこよう。
コメントでございますが、金融消費者保護立法の早期制定が求められると、こういう御意見。それから、二つ目が、「第一次金融サービス法」としてまず販売・勧誘ルール、こういったものを最小限まとめて、立ち上げるべきではないか。日本版ビッグバン仕上げのために、この金融サービス法を検討すべきである。それから、また、金融サービス法は、各業態別の業法の上位法ではない。既存のルール等についてのあるべきルールの明確化を図るものとすべきだ。こういった御意見。
それから、金融サービス法を睨みまして、「対象とする金融商品の範囲」、いわばその土俵をどう限るかということでございますが、中間整理では、幅広い金融商品を対象として、その上で、金融商品の特性などについて個々に判断していくというアプローチが考えられるとされておりましたが、そうした商品特性の例外は基本的に認めるべきではないという御意見。あるいは商品先物等も入れるべきであるという御意見。あるいは預貯金とか保険は少し違うんだから、弾力的な扱いをすべきではなかろうか。こういう御意見がありました。
それから、「横断的な販売・勧誘ルールとプロとアマの区分のあり方」というところで、まず、「前提とする利用者像」でございますが、自己責任を持って主体的にリスクを選択できる利用者像を基本とした上で、「プロとアマ」とか、あるいは「ホールセールとリーテイル」といった区分を行って、適用されるルールを分けていくべきである。
御意見でございますが、実際の消費者像は、そういったものからほど遠いのではないか。それから、アマからプロへの転換の勧誘が容易に行われることには問題がある。あるいはまた、プロへ転換したアマが、またアマへ戻るという道を閉ざすべきではない。こういった御意見。
それから、次のページでございますが、営業の現場においては、やはりプロとアマの基準を明確にしてほしい。こういう御意見がございます。
それから、?は「販売・勧誘行為に関するルールの位置付け」でございまして、中間整理では、金融商品に対して横断的にかけられるべきルールとして想定されているわけでございます。
これについては、さらに融資取引についても、販売・勧誘と同様に議論すべきであるという御意見。
それから、「説明義務の内容について」でございますが、金融商品の種類に加えて、金融商品に係るリスクの種類、内容、それから、顕在化した場合の状況といった事柄が重要事項になると思われる。基本的な商品の仕組みといったものについても重要事項に含めるべきではないかとの指摘があったというような表現ぶりになっておりまして、これについて意見としましては、この三つ目あたりですが、商品の基本的な仕組み等も必要な説明事項であると考える。こういう御意見。他方、リスクの内容や程度の関連が希薄であるので、重要事項に含めるべきではないという御意見がございます。様々でございます。
それから、「利用者の理解、納得について」というところで、中間整理では、利用者の理解や納得という側面は、主観的な事項を対象とするということで、必ずしも法制化することは容易ではないということで、具体的なルール化については引き続き慎重な検討が必要であるというまとめでございますが、これについては、利用者の理解・納得まで踏み込んだ十分な説明を義務づけるべきであるという御意見。それから、確認書によってリスクは移転することをやはり認める、こういう形で対応すべきであるという御意見でございます。
それから、?で、業者が説明義務違反をした場合に民事上の損害賠償等の効果を持たせる、こういうふうなことで中間整理は整理をされ、そうしたものをルール化すべきである。こういう整理になっておったわけですが、御意見としましては、損害賠償責任に加えまして、契約の無効・取消・解除といった効果も認めるべきである。こういう御意見。それから、他方、取引の無効・取消・解除を認めますと、金融取引の安定性を損なうおそれがあるかという御意見がございます。
3ページにまいりますが、現場で一番苦労するのは、言った言わないの問題であり、業者側への立証責任の転換や立証の推定の規定はやはり欠かせないのではないかという御意見。あるいは業者が萎縮せず取引できるように、説明義務違反の要件、効果を明確に規定する必要があるという御意見が来ております。
それから、?で「適合性原則について」ということで、これは中間整理で、狭義の適合性原則と広義の適合性原則と二つの整理をしておりまして、狭義といいますのは、この箱の中に書いてございますが、特定の利用者の一定の取引を制限する。つまり下に書いてございます高齢者とか低所得者等につきましてはリスクの高い商品は勧誘を禁ずると、こういうふうな考え方があるけれども、これについてはどうかということで、中間整理では、慎重であるべきであると考えられる。こういうふうな整理でございまして、御意見としては、売ることを原則禁止とすべきだと、こういう御意見。それから、他方、私的自治、利用者の選択の自由に照らせば適当でない。こういう御意見がございます。
広義の適合性原則は、ある利用者、消費者に対する禁止ということではなくて、業者側にいわば業者のルールとしてコンプライアンスルールを義務づけると、こういうふうな考え方でございまして、そうしたものはかなり大宗の支持を得たと、こういうふうな書きぶりでございます。
これについての意見といたしましては、利用者の知識、経験等に適合した形で販売や勧誘を行うことを法定すべきであるという御意見。二つ目のところで、業者の自主的なコンプライアンスに委ねるべきである。三つ目で、他方、利用者の属性をきちんと見るということからきますと、業者が調査をする。利用者の知識、経験の程度を調査する義務を課すべきだと、こういう御意見。それから、そういった課すことについて、やはり慎重に検討すべき。利用者の協力が得られるとは限らないということから慎重に検討すべきだという御意見。様々に分かれております。
次が「勧誘に関するルールについて」でございますが、中間整理では、不適切な勧誘行為に関する「取引ルール」の確立は、利用者保護の観点から有効である。他方、民事責任発生の要件等まで持たせるということは議論の余地があって、引き続き検討と、こういうふうな整理になっておりまして、意見といたしましては、詐欺的勧誘、こういった不適切な勧誘については民事責任発生の要件とすべきだ。それから、特に二つ目でございますが、金融取引における消費者被害はほとんどが業者の電話・訪問による勧誘に端を発している。いわゆる不招請勧誘と言われておりますが、こうしたものの禁止ルールを導入すべきだ。こういう御意見でございます。それから、三つ目が、やはり勧誘行為を一律に制限すべきではない。こういった御意見で、様々でございます。
それから、4ページでございますが、以上が販売・勧誘ルールという分野として呼んでおる領域でございまして、次は、「集団投資スキームに関する法制・ルールについて」ということで、ファンドを作って、そのファンドの中で商品を運用していく、あるいは商品を、金融債権を流動化していく等のスキームについての検討でございまして、まず、「法制の必要性」というところで、中間整理では、集団投資スキーム、適切な投資家保護が図られることを前提としつつ、より横断性と自由度の高い法制・ルールを検討していくことが望ましいとされております。
これにつきましては、一つ目で、集団投資スキームとして個々の商品を包括的に規定するルール作りが必要である。それから、二つ目で、集団投資スキームの法制と税制の統合的な整備・改善を希望する。三つ目で、対象となる不動産等の資産自体に特色があり、その市場等の特徴を踏まえてルール化の検討を行っていくことが必要であるといった御意見。
二つ目で、「受託者責任の具体化・明確化」ということで、いわば資金を受けた、受託をした人の責任でございますが、中間整理で、英米ではこの受託者責任の法理が浸透しておりますが、我が国では十分に明確ではないということを踏まえまして、金融サービス業者の横断的な行為規範として、これから受託者責任の考え方を積極的に位置づけていく必要がある。
それで、御意見としましては、受託者責任のルールを確立すべきであるという御意見。ただ、他方、英米と我が国では法体系が異なり判例・学説の蓄積が十分ではないということには留意すべきだと、こういうふうな趣旨の御意見でございます。
それから、「ルールの実効性確保について」ということで、ルールを踏まえて、ルール作りのエンフォースメントの体制をどう考えていくかというところの問題でございまして、?が「コンプライアンス体制」ということで、ルールの遵守体制でございますが、中間整理では、やはり実効性確保という観点からは、行政が引き続き重要な役割を果たすべきことは否定できない。しかし同時に、自主規制団体の役割や業者のコンプライアンス体制というものは今後重要になってくると、こういう位置づけでございます。
これについての御意見としましては、業者がコンプライアンスのルールを整備していく。これを監督当局へ提出することを義務づけるとか、あるいはそれを公に開示するということを行うべきであるという御意見。他方、コンプライアンス違反に対して法的措置をいきなり講じるということは過剰な規制ではなかろうかという御意見。
それから、?が「自主規制団体」でございまして、自主規制団体については、今はそれぞれ業界毎の自主規制団体があったり、あるいはそういうものはそもそもないというふうな、業態ばらばらでございますが、横断的なあり方を模索すべきではないかとの意見があった。他方、そうした横断的なものを作った場合のコスト負担をどうするのかといった問題も指摘されたということで、各論それぞれということでございますが、これについては、この意見としても、業態横断化すべきだというような意見。それから、次の5ページでございますが、やはりコストの負担の問題、ルールの実効性の問題といった問題が指摘されております。
それから、?で「裁判外紛争処理制度」でございますが、ルールの実効性確保の最後の拠り所としては、もちろん司法的解決ということでございますが、それを補完するものとして、裁判外の紛争処理制度の整備についても検討していくことが有益という整理でございますが、御意見としましては、中立的立場の苦情処理体制や紛争処理機関の整備が必要。あるいはイギリスのオンブズマンのような制度が自主規制機関の中に制度化されておりますが、こういったものを導入すべきではないか。それから、金融サービス法によりまして裁判外紛争処理制度を画一的なものとするのではなく、弁護士仲裁センターといった、これは実は、全銀協が最近導入した制度でございまして、弁護士仲裁センターといった業界の自発的な動きによりまして、民間型の紛争処理制度を中心に据える、こういったことを考えていくべきではなかろうかという御意見がございます。
最後に、「消費者教育について」でございますが、中間整理としましても、金融全般に関する基本的知識の向上、金融を含む消費者教育全般について、一層の拡充を図ることが重要だということで、御意見といたしましては、学校教育の場でもしっかり取り組む。一方、社会人に対する継続的な生涯教育の環境も整備すべきだ。こういうふうな御意見が出ております。
以上が要約でございます。
あと、6ページ以下には、このパブリックコメントのもう少し詳しいものを付けさせていただきましたので、御参照いただきたいと思います。
以上でございます。
○貝塚会長 皆さんの御質問を受けます前に、それぞれの部会長から補足をいただいた方がいいと思いますので、最初に蝋山第一部会長、お願いします。
○蝋山第一部会長 ただいま内藤課長から説明があった中間整理に対するパブリックコメントを受けまして、私どもとしては、金融審議会の最終答申ということになるんですか、それに盛り込むべき、いわゆる金融サービス法の世界を21世紀の日本の金融の姿として、できるだけきちんとした内容のものにさせていただきたいと考えているわけです。
ですから、ここでいただきました中間整理に対するパブリックコメントというのは、そういうビジョンを作る際の大変参考になるものでありまして、我々としては、こういうコメントを十分に生かしたいというふうに思います。
ただ、御注意いただきたいと思うのは、やや誤解もあろうかと思いますけれども、あらゆる金融商品について横断的、包括的な販売・勧誘ルールの確立と、それから、集団投資スキームという二つの柱は、そう簡単にできるものではありませんで、我々としては、すぐに法制化ができるというふうには考えていません。その前に、やはりこういうものを柱とする将来の姿が日本の金融のこれからなんですよという内容の理解を十分に求めなければならないのではないかというふうに思います。そういう点が一つ。
一部の報道で、金融サービス法をこの金融審議会は断念したんだと、こういうような報道がありましたけど、私は断念したとは思っておりません。それが一つ。
同時にしかし、何を。では、そこの答申ができるまで、ビジョンが完成するまで何もしないかというと、機に応じて、やはりできるものは作っていく、法制化できるものは法制化していくということは必要であるわけでありまして、戦術的にSPC法の改正という、これは一つの機運が政治の側にも生まれてきているようでありますので、その機をうまく利用して、集団投資スキームの考え方と矛盾のない形で、相当利用勝手の良いSPC法の改正をお願いしたいということで、今ワーキンググループでその具体的な詰めを行っているということであります。
さらにまた、経済企画庁の国民生活審議会で一般的な消費者契約法の問題が取り上げられていて、議論が進んでいる。そういう動きとも歩調を合わせて、金融商品の販売・勧誘の問題というものの具体化を考えていきたいと。こんなふうな考え方で、全体として金融サービスを包括的な法制をお願いするということは、作業の上でも、いろんな意味で難しいし、そういうことを狙って、それまで何もしないというのは私は得策ではないと思いますので、まず、その点については、全体の問題については答申に磨きをかける。そのために議論をきちんと積んでいくということ。
2番目に、しかし、機に乗じて、様々な動きをうまく金融サービス法の世界に近づくための努力として、法制化の準備も可能な部分はしていくと、こういうふうに考えて部会を運営しているつもりです。
以上です。
○貝塚会長 それでは、倉澤部会長。
○倉澤第二部会長 三つのワーキンググループのうち、預金保険制度については、今日、基本的な考え方が示されました。それから、個人信用情報につきましては、他との共管という関係がありますので、この中で保険基本問題ワーキンググループについてだけ一言申し上げます。
保険は将来の保障を約束するというのが商品内容ですから、倒産法制の中でも清算型の倒産法制よりは、更生型の倒産法制の方が最も適している。であるにもかかわらず、更生型倒産法制の中で保険だけが欠落しているわけです。それはやはり一つは、相互会社という組織の問題と、もう一つは、保険契約というものの特殊性ということがあって、結局、例えば金融機関の更生特例法にも保険会社だけは入らないというような、乗り越えなければならない問題があるわけでして、それについてこの資料の2ページにありますように、10月13日の13回の第二部会でワーキンググループの検討状況の報告がありまして、かなり問題点は摘示されました。
いずれにしても、今まで懸案であった問題ということをまとめようといたしますと、あるところで決断といいますか、踏み込みということが必要になろうかと思いますので、やがて第二部会、あるいはこの総会でその決断をお願いするということになろうかと思います。
以上でございます。
○貝塚会長 どうもありがとうございました。
それでは、この審議会の全体としての運営、あるいはただいま御説明がありましたパブリックコメントについて、どうぞ、原委員。
○原委員 金融サービス法についてなんですけれども、先ほどの報道出て、その後、宮澤さんの方から断念はしていないというまた報道も流れて、今、蝋山先生の方からお話をお聞きいたしまして、大体のニュアンスとか経緯とかというのはわかったような感じがするんですけれども、私としてはちょっと異論があります。
私自身はここに参画をしていますのは、包括的で横断的な金融サービス法をやはり形のあるものとして作るということを目指して作業してきたつもりでおります。今の段階をどういうふうに把握をするかということなんですけれども、今できるところからやる。できるところからやるとなると、販売・勧誘ルールのごく限定的な法律。例えば説明義務違反、それに民事効を付けるというふうな形というのが必要最小限のところなのかと思うんですけれども、例えば、それにしても不当勧誘、適合性の原則とか不招請勧誘を入れた不当勧誘のところももちろん踏み込むべきだというふうに思っておりまして、今事務局が考えていらっしゃる案では、私は大変不満足。やはりプラスアルファが要ると思います。
それから、もっと横断的、包括的を考えますと、実効性確保というようなあたりでは、オンブズマンのことですとか、そういったこともやはり検討を継続してやっていって、法案の中に盛り込むということを考えていただきたいと思います。ですから、すごく狭い限定的な消費者契約法になるというような形での横並びの、これに違反したから民事効がかかるというだけのものでは私はないというふうに思っておりまして、だから、蝋山先生が横断的、包括的なもののワンステップとしてそこというふうにおっしゃるんだったらいいんですけれども、ワンステップではなくて、その大きいところは示すけれども、できるところだけで、これというのとでは私は随分違うと思うので、それは第一部会とかワーキングの議論であるかと思いますけれども、総会の場でも確認をしていただきたいと思います。
なぜこういった法案の内容が限定的であったりとか、実効性確保の部分が落ちるかというと、やはり事業者と行政の私はやる気如何だというふうに思います。これまでもいろんな御発言ですとか、そういうのを聞いておりまして、非常に対応には熱心ですけれども、じゃ、次に向かってどういう体制を作っていこうとしていらっしゃるのかという点では、私は事業者の方は非常に不満足というんでしょうか、どういうふうにお考えになっていらっしゃるのかというのは、もっと真剣に検討されるべきだというふうに思っております。
それが私の感想めいた意見ですけれども、大きな法律というものを私たちも期待しておりますので、検討していただきたい。
それから、二つ目なんですけれども、これは個人信用情報の保護・利用のワーキングなんですが、6月以降一度も開かれておりません。今の状況については、先ほど御説明のあったとおりなんですが、私自身内閣の内政審議室の個人情報の保護の委員会に入っております。明日から本格的な議論を始めますけれども、恐らく年内に出てくるものは、OECDの8原則を大体そのまま踏襲するのか、そこから少し日本バージョンを考えるのかというようなところで、基本的な方針を出すところに今年は止まるというふうに思っておりまして、そうしますと、個人信用情報はかなり検討を進めてきておりましたので、私としては、各省庁またがって全体的なものをすれば、それほど高いレベルはなかなか望めないかなというふうに思っておりまして、個人信用情報については、先ほどは多重債務とか漏洩の話が出ましたけれども、例えば、金融サービス法の適合性の原則とかを考えれば、この話も絡んできますので、再スタートをできるだけ早くしていただきたい。それで検討を進めていただきたいというふうに思います。
長くなりました。
○貝塚会長 ほかに御質問あるいは御意見ございませんでしょうか。
私が言うのはあれですが、先ほどの総会5−2の資料の6ページに、部会の今後の予定というのか、こういうことをやりたいということでありまして、第一部会の方は、最後の方には、「21世紀の金融のあり方」というところで、要するに金融サービスと規制の枠組みの全体像を検討するという感じになっているわけですね。
ですから、これは私の感想で、あと蝋山さんに補足していただきたい。集団投資スキームとか販売・勧誘ルール、金融サービス法というのはどういうイメージを描くか、結構いろんなイメージがあり得るわけですが、その中のかなり重要なパーツであることは間違いないので、そういうものとして私は理解しているんですが、というふうな感じですが、何か部会長。
○蝋山第一部会長 思いは原さんと私も同じところでありますが、現実は厳しいというのが私の認識でありまして、我々は金融審議会という名前が付いていますけれども、もう今や、小と言ったらちょっと失礼なんで、中金融審議会なんですね。金融の分野というのは、金融審議会がここで対象とするのを超えて、もっともっと−−もちろん福間さんおられるからあれかもしれないけれども、相当福間さんを通してカバーする範囲は広いのかもしれないけれども、実際の金融というのは、もっと広くなっているわけですね。それを横断的にルール化しようと、カバーしようと、そういう仕組みを考えているわけですから、急がば回れであって、私は全体の包括的な、といって、政治の中に飛び込むよりは、きちんとした考え方をまずぶつけるということが、それが正攻法であって、それと同時に、それと矛盾のない形で機運を、外の動きをうまく利用しながら、具体的な法制化を進めると、こういうことであって、どちらか一方だけでは困ると思うんですね。
機に乗じて、つぎはぎだらけの部分的な法律を次々と作っていけば、それで全体がうまくいくかといったら、私はそうでないと思いますし、そうかといって、部分的な作業なしに、答申作りに一生懸命ですと、「きれいな文章だけ作るんですか」といって新聞記者に叱られたわけですが、そういうことにもなりますし、やはりなかなか難しいところだろうと思います。
しかし、基本的にぜひ総括政務次官にも御認識いただきたいのは、金融審議会といっても、金融審議会のカバーする範囲は非常に狭い。今後これからどうする。金融庁になったとしても、まだ狭い。実際の金融は、もっともっと広くなっている。そういう点をぜひ御理解いただき、対応を考えていただきたいというふうに思うわけです。
○貝塚会長 私が補足しますと、要するにこの問題の所管官庁というのは幾つあるかといったら、すごく多いんですよね。それを横断的に仕組むということは、それ自身がかなり官僚機構的な側面から言えば、そうです。それから、政治の側面もまた非常に複雑な利害関係があり得るわけで、その間の事情を蝋山部会長はおっしゃって、よろしくということなんですね。私の理解はそういうことです。
何かほかに、ただいまの今後の運営につきまして、金融審議会あるいはワーキンググループその他につきまして、御希望あるいは御意見ございませんか。
福間委員、どうぞ。
○福間委員 今、部会長、会長おっしゃったようなことなんですけれども、やはりビッグバンを始めた原点をもう一回考えるべきだろうと思いますし、省庁間の垣根があって、どうしても一つの金融サービス法にならないというのは、これはやっぱりまずいんだと思います。ビッグバンの意味は余りないんじゃないか。
○貝塚会長 最近いろいろ言うと、ちょっと差し障りがある。
○福間委員 いやいや、私が言う分には構わないと思いますので、そんなところで、そこが原点になったんじゃないのかなと思います。
○高木参事官 一言だけよろしいですか。
○貝塚会長 どうぞ。
○高木参事官 その省庁間の問題云々という話は、私ども一度もまだ申し上げたことはなくて、まさに、どういう姿を描くかというと、今、蝋山部会長の下で幅広く御議論されている段階で、それを受けて、またどう戦略的に運ぶかということがあると思うんですね。ただ、行政が省庁間の話があるから、何か消極的になっているかのように思い込みで言われている部分があるんですが、それについて私ども非常にある意味では困っている。まだそういう段階になってなくて、それは、また将来の話だと思うんですね。実際にやり始めたときの話だと思うんですね。
○福間委員 逆に言いますと、なぜロンドンのFSAの様なものができないんだと、日本で。そこだと思う。極めて日本的なものはですね。そこにやっぱりシンボリックに現れるんじゃないかなと。感想です。
○貝塚会長 私も多少誤解があるようです。
ほかに何か御希望あるいは御意見ございませんでしょうか。
大体時間が参ったようでございますので、本日の総会は、これにて終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。
(以 上)