金融審議会「第一部会」第2回会合議事録
日時:平成10年12月22日(火)13時30分〜15時34分
場所:大蔵省本庁舎(4階)第四特別会議室
○蝋山部会長 ただいまから、第2回の金融審議会第一部会を開催します。
2時と思い違いをしている方がおられるのかもしれません。やや我々委員の側の出席が悪いようでありますが、定刻もやや過ぎておりますので、始めさせていただきたく思います。
今日は大変お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。本日はこの部会の第2回の会合ですけれども、前回御欠席で今回初めて出席されることになりましたお二人の委員と、それから、今回から新たに御参加いただくことになりました実務界からのオブザーバーの皆様につきまして、事務局より御紹介をさせていただきたく思います。津曲調査室長、よろしくお願いいたします。
○津曲調査室長 それでは、御紹介させていただきます。
まず、この第一部会への出席が初めてとなられた委員につきまして御紹介申し上げます。
まず、岩原紳作委員でございます。
○岩原委員 岩原でございます。どうぞよろしくお願いします。
○津曲調査室長 それから、神田秀樹委員でございます。
○神田委員 神田と申します。よろしくお願いいたします。
○津曲調査室長
続きまして、業界からのオブザーバーでございますが、岡本好央住友信託銀行専務取締役でございます。
○岡本オブザーバー 岡本でございます。よろしくお願いします。
○津曲調査室長
杵淵敦野村アセット・マネジメント投信株式会社専務取締役でございます。
○杵淵オブザーバー 杵淵です。よろしくお願いします。
○津曲調査室長
木村隆治全国信用金庫連合会常務理事でございます。
○木村オブザーバー
木村でございます。どうぞよろしくお願いします。
○津曲調査室長 関 要日本証券業協会副会長でございます。
○関オブザーバー よろしくお願いします。
○津曲調査室長
竹田駿輔オリックス株式会社専務取締役でございます。
○竹田オブザーバー 竹田と申します。よろしくお願いします。
○津曲調査室長 中原 眞東京三菱銀行専務取締役でございます。
○中原オブザーバー 中原でございます。よろしくお願いします。
○津曲調査室長
森 昭彦東京海上火災保険株式会社常務取締役でございます。
○森オブザーバー 森でございます。よろしくお願いします。
○津曲調査室長
渡辺光一郎第一生命保険相互会社調査部長でございます。
○渡辺オブザーバー 渡辺でございます。よろしくお願いします。
○津曲調査室長
なお、守屋 壽メリルリンチ証券取締役東京支店長は、本日御欠席でございます。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
○蝋山部会長 どうもありがとうございました。オブザーバーの皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。いろいろ私どもの方から御意見を頂戴するということもあろうかと思いますし、また、どうしても発言をという場合には、私の方にそれとなくサインを送っていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
本日の議題に入る前に、最近の金融を巡る話題といいますか、重要な案件といたしまして日債銀の国有化問題がございます。そこで、今日は金融企画局信用課長が御出席でございます。畑中課長より御説明をよろしくお願いいたします。
○畑中信用課長 信用課長の畑中でございます。
それでは、日債銀の特別公的管理の開始決定経緯につきまして、ごく簡単でございますが、御報告をさせていただきたいと存じます。お手元資料の第一部会2−1という資料の2枚目、1ページを御覧いただきたいと存じます。ここに内閣総理大臣の談話を掲載してございますので、これを中心に御報告を申し上げます。
まず、一.にございますが、日債銀につきましては、今般の金融監督庁の検査によって、本年3月末時点で債務超過と見込まれたことから、金融監督庁は債務超過を解消するための資本充実策について逐次報告を求めてきたが、11月16日の検査結果通知から1カ月近くが経過しようとする中で、中央信託との合併問題も含め、同行より実現性のある資本充実策が提示をされなかったということでございます。
その次に、二.といたしまして、金融再生委員会が15日の火曜日に設立されたところでありますが、それまでの間、その権限を代行していた内閣総理大臣は、こうした状況を踏まえ、13日、日曜日に金融再生法第36条に基づき特別公的管理の開始決定を行い、併せて、預金保険機構による日債銀の株式の取得の決定を行ったところでございます。
なお、特別公的管理の決定は、御案内のように10月23日の長銀に次いで2回目でございます。
三.のところでございますが、日債銀につきましては、特別公的管理の下で新経営陣の選任、経営合理化計画の策定、取得株式の対価の決定等の所要の手続が進められることになる。また、特別公的管理の開始決定と同時に、資産劣化防止の観点から、金融監督庁から銀行法に基づく業務改善命令が発出されたところであり、適切な業務運営が求められているということでございます。
なお、昨日、金融再生委員長柳沢大臣より新頭取候補ということで、現在の日本銀行発券局長の藤井卓也氏とするなど新経営陣の候補者が発表されたところでございます。
四.に移らせていただきますが、今後、日債銀に対しては、金融再生法に基づき、業務に必要な資金の貸付や特別資金援助が行われることとなっており、日債銀の預金、金融債、インターバンク取引、デリバティブ取引等の負債は全額保護されるとともに、善意かつ健全な借手に対する融資も継続されるということでございます。
政府といたしましては、今後とも、預金者等の保護や金融システムの安定性確保に万全を期すこととしておりまして、私ども大蔵省といたしましても、金融制度の企画・立案を所管する立場から、今回設立をされました再生委員会、監督庁、日本銀行とも緊密に連絡をとりながら、金融システムの安定性確保に万全を期してまいりたいと考えております。
続きまして、3ページでございますが、同時に発表いたしました金融監督庁長官の談話でございます。これは基本的には、先ほど申し述べました総理大臣の談話に沿ったものとなっておりますが、3.のところを御覧いただきますと、今般の特別公的管理の決定が年末の金融繁忙期と重なったことも踏まえ、金融システムの不安や信用収縮が再燃することのないよう必要な対応をとるというふうに書いてございます。
また、4.におきましては、今般の決定の内容が内外の市場関係者に正確に理解されるよう、海外の関係当局に十分説明を行うことと述べられておりまして、大蔵省としてもG7の財政当局等に必要な説明を十分行うというふうにいたしているところでございます。
また、5.におきまして、検査、モニタリングの強化と早期是正措置の厳正な運用など、監督権限の適切な行使についても述べられているところでございます。
4ページは、日本債券信用銀行の概要でございますので、これは御覧のとおりでございます。
それから、次の5ページ及び6ページが、今回の判断結果に結びつきました検査の状況でございます。簡単に御報告いたしますと、まず、6ページの総資産の査定結果というのを見ていただきます。これは本年3月末の総資産の査定結果でございますが、回収不能と見られるいわゆる IV 分類債権は、日債銀の自己査定、これは?欄でございます。0に対して当局査定後は、?のところの
1,277億円、それから、回収に重大な懸念のある III 分類債権は、自己査定
5,931億円に対し当局査定1兆 3,110億円と増加をしております。
この結果、5ページに戻っていただきますと、5ページの3.
でございますが、自己資本額 4,671億円に対しまして、追加償却あるいは追加の引当見込額ということの増加額が
5,615億円ということで、バランスシート上、差し引き 944億円の債務超過というふうに聞いております。また、そのほか有価証券等の含み損が、ここにございますように
1,803億円であったということでございます。
以上、簡単でございますが、御報告させていただきました。ありがとうございました。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
ただいまの畑中課長からの御説明に対しまして、何か御質問なり御意見ございませんでしょうか。
どうぞ、原委員。
○原委員 皆さんお詳しい方なので、私だけが多分素人で余りわからないんだと思うんですけれども、確かに当局査定と自己査定との乖離ですよね、これほど違うのかという感じがしたんですけれども、具体的には何が違ってこれほどの差になったのかというのを、例えば今後の議論の中でディスクロージャーの話が出てくるかと思いますけれども、ディスクロージャー誌なんかもいろんな数値が書かれているんですけれども、見ていての信憑性というんでしょうか、そういったところなんかとも絡んでくるかなというふうにも思いますので、何が一番大きな原因であったんでしょうかというのだけ簡単で結構ですので、教えていただけたらと思います。
○畑中信用課長 今の御質問は金融監督庁の所管の話でございますので、私どもが何か申し述べる立場ではないんでございますが、通常監督庁から聞いているような話の伝聞で恐縮なんですが、今御案内のように、今年の4月から早期是正措置というものが導入をされまして、これに伴いまして金融機関の償却、あるいは引当てのルールの抜本的な変更というものがなされたわけでございます。
したがいまして、その中で各金融機関はそれぞれ自分の方で自ら自己査定を行って分類を決めるわけでございますが、従来の検査では主として分類について検査を行っていたようでございますが、この自己査定導入後は、それぞれの資産の分類に加えまして、より厳しいルールに基づいて償却、あるいは引当額の適正さについても検査をするというふうに抜本的に変更になった。
それに伴いまして監督庁の検査で精査をした結果、先ほど申し述べましたように I 、 II 分類から III 、 IV 分類の分類替えという検査結果になり、それに伴って必要とされます引当額、あるいは償却額が相当程度上積みになった結果、バランスシート上、先ほど申し述べました
900億円強の債務超過になると同時に、それに加えて有価証券の含み損というものが
1,800億円程度出たというふうに私どもは聞いておるところでございます。
○蝋山部会長 今日のところはその程度で。
上柳委員、どうぞ。
○上柳委員 同じようなことなのかもわかりませんけれども、特に第 IV 分類なり第 III 分類で、誰が見ても今見れば IV なり III になるということの分類ができるものもあるのかもわかりませんけど、やはり評価等が伴うことがあるんじゃないかと思うんですね。それで、見ようによってはこうだったけれども、当局査定ではこういう点に着目して第 IV なり第 III なり、あるいは第 II も同じですけれども、というふうになったというあたりが、どこかの時期で今後の教訓にもなるような形で見れるような形になるのかどうかですね。なるようなふうにこれも持っていくべきだというふうに考えますんですけれども、そのあたりについて見込み等があれば教えていただきたいと思います。
○蝋山部会長 ただいまの点はいかがでございましょうか。
○畑中信用課長 先ほど申し上げましたように、この自己査定に伴う、それを基本にいたします早期是正措置というのが本年の場合4月からスタートして、それによりまして大手行から始めて順次中小の金融機関まで現在検査が進んでいるというふうに私ども聞いておるところでございまして、従来の検査手法、それと相当程度違った形の検査が今行われているように思うわけでございます。
そういった中で今御指摘のような点も踏まえて、一種の共通化といいますか、ルール化といいますか、それを表にディスクローズしていくというようなことも含めて、監督庁の方は大変大きな問題意識を持ちつつ現実の検査をこなしているということで、いましばらくその辺は時間がかかるんではないかと思いますが、大変重要な問題だというふうに監督庁も認識しているようでございます。
○蝋山部会長 ほかにございませんでしょうか。
それでは、畑中さん、どうもありがとうございました。第1の日債銀の特別公的管理開始決定につきましての御説明はこれで終わりまして、次の議事に入りたく思います。
本日のテーマは、前回に引き続きまして、「最近の金融システムを巡る問題について」ということになっております。事務局に関連する様々な資料、論点の提供をお願いし、その後自由討議ということにしたいと思います。
それでは、津曲さん、よろしくお願いいたします。
○津曲調査室長
今回から新たに御参加いただいた方々もおられますので、前回説明した事項をごく簡単に御紹介いたしました後で本日の説明に入りたいと思います。
前回は、今回も配付されております資料1−1でございますが、これに基づきまして、最近の金融を巡る動きや我が国の現行法制、英米の金融関連法制を簡単に御紹介いたしました。それとともに、新しい金融の流れに関する懇談会の論点整理のうち、総論部分に相当する1.
から3. の分を御紹介したわけでございます。
この論点整理の概要を用いて御説明したわけでございますが、その基本的な考え方は、この論点整理本体の方の93ページをおめくりいただきますと、その次に表が付けてございます。これは「新しい金融の流れと金融法制・ルールのあり方」というところで図が作られておりますが、ここを主に御説明申し上げました。我が国の金融を巡る基礎的な環境変化、とすると、新しい金融の流れをどのように見るのか、そして、新しい投資者像をどう見るのか、とすると、今後の金融システムの改革を進展させていく場合に期待される効果、その場合の留意すべき課題というのがあるだろうと。こういうことを踏まえて新しい金融法制・ルールの考えていく際の必要性、基本的な考え方というものが、大きく分けると、下の四角の中に書かれています六つぐらいのポイントがあるだろうというところでございます。
この基本的な考え方を踏まえた上で新しい金融法制・ルールの枠組みというものがあるだろうといたしますと、これが金融商品をどのように考えていくのか。そして、その金融サービス、取引行為の類型というものに応じた考え方をする必要があるだろうと。これら金融商品と金融サービス取引、合わせてみると、集団投資スキームについての法制・ルールが非常に重要なポイントであるだろうというようなことがございました。
それから業者ルール、それから、最初の切り口としてホールセール・リーテイルという考え方が出てくる。とすると、これらをどのようなアプローチでやるかということになりますと、そのときに一つは取引ルール、それから市場ルール、業者ルールという整理ができるだろうというところまでが前回の主なポイントでございました。
今日は、この論点整理の概要の方をまた使いまして、こちらの方で8ページでございますが、こちらの新しい法制・ルールの具体的な内容というところから御説明申し上げたいと思います。
この新しい金融法制・ルールの具体的な内容としてはどんなものが考えられるかというところでございますが、例えばまず取引ルール。これは当事者間の権利・義務関係の明確化に係るルールだということでございますが、これについては、例えば情報開示、説明とリスクの移転。例えば不十分な説明があった場合、リスクというのは移転するのかさせないのかといったもの。それから、分別管理と破産リスクからの遮断。分別管理がちゃんと行われた場合の破産リスクからの遮断がどのようにあるだろうか。それから、利益相反行為に関する責任分担というのはどういうのがあるか。例えば利益相反行為を行った受託者の行為というのはどのように評価できるのか。さらに返還請求はどのように考えられるのかというようなことがあるだろうと。
それから、9ページ目にまいりますが、受託者の注意義務。この受託者自体の注意義務の基準が曖昧であると、逆に受託者の資産運用そのものに影響が出てくるんじゃないかと。ここらあたりをはっきりさせる必要があるんじゃないだろうか。それから、支配・従属、提携関係がある場合の責任の分担はどういうふうに考えたらいいのか。分業体制が進むと取引者間の権利、義務関係というのははっきりさせていく必要が出てくるだろうというところでございます。
それから、市場ルールでございます。これはリスクに関する十分な情報と公正な理由が不可欠だというところで、市場参加者全部に係るルールとしては、例えばディスクロージャー。従来の公衆縦覧型のディスクロージャーに加えて、例えば説明時、それから、交付をする説明用の文章などの内容についてもさらに考える必要があるかもしれない。それから公正取引ルール。これはインイサイダー、それから相場操縦などのルールが考えられるだろうと。さらには価格形成機能、取引所、マーケットメイカーに関してはどのようなルールをしたらいいだろうかということが出てくるだろうということでございます。
それから、三つ目の業者ルールですが、こちらは取引ルールと市場ルールが実効的に担保されているならば、必要があるのかどうなのかという議論はあるわけでしょうけれども、しかし、リーテイルについては情報コスト、監視コストがかかる。それから、ルールの実効性を確保するためにもこの業者に係るルールというのが必要だろうというところで、ここに八つほど挙げてございます。
これが販売・勧誘行為に関する説明義務、適合性原則、勧誘・広告規制などがあるでしょうと。それから、業者側としての分別管理の義務があるだろう。それから、利益相反防止の義務でもあるだろうと。それから、資産運用サービスにおける注意義務、業者としての注意義務があるだろうと。それから、仕組み行為。手続面の行為ルール。書面の作成・交付、それからファンドの状況の縦覧、取引記録の保存云々があるだろうと。それから、業者のそのものの適格性(fit
and proper)に関するルール。その場合には参入規制、財務健全性規制、業務分野規制・兼業規制の見直しなどがあり得るというところでございます。
それから、次が集団投資スキームに関するルール。
この集団投資スキームにつきましては、投資対象や投資ビークルの形態にかかわらず、機能に着目して、横断的に適用されるルールについて検討していく必要があるのではないか。現在の法制は投資対象、商品ごとの縦割りになっているということを踏まえた上でございます。
その場合には、投資ビークルの主体の法的な位置づけと投資者などによるガバナンスの確保がある。それから、集団投資スキームに関する専門家の責任範囲の明確化ということもあるだろうと。それから、集団投資スキームの仕組み行為の適格性の担保ということも考えなくちゃいけない。これらを検討する場合には、その前提といたしまして包括的な金融商品の概念ということを検討しなくちゃいけないだろうと。その場合に来るんだろうと思います。
それから、その次が、今度、このようなルールができた後のルールの実効性の確保(エンフォースメント)の話が出てくるだろうというところでございますが、これにつきましては、基本的な考え方は取引参加者の自己規律、市場メカニズムを通じたガバナンス、当事者の権利行使のガバナンス機能、さらにこれに加えて公的な関与というものがどんな形がいいのだろうかということになると思います。
そのときに是正・救済の手段・体制といたしましては、民事救済。民事救済といいましても裁判だけではなくて、例えば裁判外の紛争処理制度というものが考えられるのではないか。それから、刑事罰、行政による監視処分、それから、自主規制機関による役割というものが考えられるのではないだろうかというところでございました。
それから、ルールの形成・運用でございますが、こちらにつきましては、今後のリスクの明確化、金融イノベーションへの対応を考えた場合には、取引参加者にとって透明性が高く、明確性・機動性・弾力性に富むルールとしていくことが重要だろうと。その場合の幾つかのことが考えられるだろうと。例えば公開草案、パブリックメント云々ということが書かれておりました。
それから、八つ目の消費者保護ですが、これは、今後の消費者保護の基本理念としては、消費者保護と業者との情報力・交渉力の格差を念頭に置き、その消費者の自立支援、自己責任原則の補完を基本的な考え方にすべきではないかというところでございまして、新しい金融法制・ルールの枠組みは、公正かつ効率的な取引の確保を目的とするものであることから、それ自体結果として消費者保護にもつながることにはなるけれども、金融取引の特性に応じた特別のルールというものの必要性ということをどう考えていくのかということでございます。このときには消費者契約法との関係をさらに吟味する必要があるだろうということが触れられてございます。それから、消費者保護の観点では、信用を供与する場合の問題もあるだろうというところでございます。
それから、9番目の預金・保険・企業年金、これをどのように考えるかということでございますが、預金や保険商品というのは、決済機能、それから、保障機能を持ちつつ資産運用機能も持っているということでございまして、この資産運用機能に着目すれば、投資性を持つ金融商品と共通の性格を持つと考えられる。他方、決済機能や保障機能に着目すると、経済的な外部性、それから、預金者や保険契約者のソーシャルミニマムを確保する観点からセーフティーネットが供与されるなどの措置が講じられておりまして、このため、利用者の自己責任をベースとする新しい金融法制・ルールとは異なるルールで律する必要があると言われているけれども、この点についてどのように考えるのかというようなことがこの論点整理の中ではいろいろ触れられております。
以上が新しい金融の流れに関する懇談会の論点整理の御紹介でございます。
それから、前回、委員の方から御指摘がございまして、ヨーロッパの大陸系の金融制度の動きがどうなっているのかということでございましたので、こちらの方を若干御説明申し上げたいと思います。なお、そのとき委員からイギリスにおけるプロモーションの指摘がございました。こちらは今勉強中でございますので、また別の機会にさせていただきたいと思います。
こちらの方は、第一部会2−2という資料を御覧いただきたいと思います。おめくりいただきますと、「欧州における金融制度の改革のうごき」というものが横の表で作ってございます。ここには、イギリス、EU、ドイツ、フランスでどういうふうになったのかと時系列に並べてございますが、ここを見る場合にはポイントが二つほどあるかなというふうに思います。
欧州大陸における動きを見る場合にはどこからどういうふうに影響があったかということでございますが、一つは、イギリスのビッグバン及び金融サービス法の制定というのがあるだろうということでございます。それとEUの単一市場実現のための様々な指令が出てきたというところでございまして、EUの動きで見ますと、1985年5年にUCITSの指令が出ておりまして、投資信託の単一免許制度というのがここで作られてきた。単一免許制度がここで出てきたというところだと思います。
それから、イギリスのを見ますと、ビッグバン86年、87年、それから89年、こちらの方で金融サービス法が整備されまして、これらをこの金融サービス法の動きをまた非常に強く影響を受けまして、これが1993年3年のEUの投資サービス指令になってきた。他方、銀行自体を見ますと、第2次銀行指令が89年にできておりますが、これが単一免許と母国監督主義ということで、これはユニバーサルバンクを想定した広範な業務範囲を設定したということで、こちらをどのようにそれぞれが実現してきたかというところでございます。
そこで、これらを踏まえまして各国がどのようになっているかというところでございます。なお、UCITSとEUの投資サービス指令の概要がこの後付けてございます。
そこで、大陸のドイツとフランスの金融制度の話でございますが、これまでの動きを受けてどうなっているかということをまず御説明しまして、ここに至るにはどういう経緯があったかということを次に御説明申し上げたいと思います。
まず、「ドイツの金融制度の概要」という紙を付けてございますが、ここはドイツの金融制度は大陸系はそうでございますが、もともとユニバーサルバンクというところでございまして、このユニバーサルバンクは全ての銀行業務、ここに証券業務を含むわけでございます。これを銀行本体で行うことができるというところでございます 。
従来はこのユニバーサルバンクが全てだったわけでございますが、現在では、この二つ目に書いてございますが、金融サービス会社というものが作られるということでございます。これはあくまでも信用制度法上の免許を受けた業者でございますが、ごれはいわゆる金融サービス、投資サービスを営む銀行以外の会社として位置づけられるというふうなものが作られました。それから、もう一つは、投資信託を扱う投資会社というものがまたここで位置づけられているというところでございます。
次をおめくりいただきますと、「ドイツの金融制度を巡る動き」というところでございますが、1990年に第1次資本市場振興法を制定したというところでございまして、ここからいろんな動きが始まってきたというところでございます。この第1次資本市場振興法で、ここに書いてございますが、先物が解禁になっている。それから、第4次銀行法改正というものが93年にございますが、ここで先ほど申し上げましたEUの第2次銀行指令に基づく改正が行われた。それから、第5次で連結ベースの銀行監督を入れまして、94年の第2次資本市場振興法の制定というところで証券取引法が制定された。ここで金融サービス会社というものがはっきり位置づけられるようになるわけでございます。
それで、これを受けまして第6次の銀行法改正、投資サービス指令等をここで国内法制化いたしまして、金融サービスを信用制度法の適用対象に追加した上で、これを営む会社で銀行以外の会社を金融サービス会社ということにしてございます。それから、またその後、第3次資本市場振興法ということで幾つか企業持分会社に関する規制緩和、証券市場に関する規制緩和、投信の新商品云々ということが加えられてございます。
次に、「フランスの金融制度の概要」でございますが、ここももともとユニバーサルバンクでございましたが、現在は整理されておりまして、もともとのユニバーサルバンク、それから、銀行法上の金融機関ではあるけれども証券会社の業務を行うもの、それから、証券取引所の会員会社、これはいわゆる昔型の証券業務を行ってきたものでございますが、現在は金融業務近代化法というもので投資サービス提供者としての規制に服すると。それからポートフォリオ管理会社、これはむしろ投資顧問会社に近いものだと言われております。
それから、五つ目の投資企業でございますが、これは銀行法上の金融機関ではないけれども、金融業務近代化法によりまして投資サービスの提供を主たる業務として行える金融機関以外の法人というところで、こういう概念が導入されたというところでございます。
その次をおめくりいただきますと、「フランスの金融制度を巡る動き」でございますが、こちらの方は、EUの第2次銀行指令を受けた形の法制度が整備された後、96年にEU投資サービス指令を受けまして金融業務近代化法が制定されたということでございます。その結果先ほど申し上げました形になったわけでございますが、この金融業務近代化法の中では、やはり投資サービス提供業者という概念を導入すると同時 に、投資サービスがどういうものである。それから、そこの場合には金融商品、それから、金融商品を対象としたディーリング、ブローキング、引受け、売出し云々のこういう類型が書かれているというところでございます。
これらにつきましては規制、監督がまたいろいろ分かれてございますが、こちらの方は参考に付けてございますので、御覧いただければと思います。
雑駁な説明でございますが、以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
前回に引き続きまして新しい金融の流れに関する懇談会の要旨を論点整理の概要のさらにかいつまんでの紹介をしていただきまして、その後、ヨーロッパの現状についての展望をしていただいたわけであります。
前回この第一部会では、総論的に皆さん方がこれからの日本の金融の仕組みをどう考えたらいいのかという点に関してのポイントを御発言いただいたというふうに記憶しております。今日もそれに続きまして、オブザーバーの方々からも含めて御意見を頂戴したいというふうに思いますが、岩原先生、もう時間が迫ってますので、まず初めにおっしゃりたいことをどうぞおっしゃってください。特に新しい金融の流れに関する懇談会の論点整理等についての御意見等がございましたら、あるいは今の時点で欠けているようなことをお気付きでしたら御指摘いただけると助かります。
○岩原委員 急な御指名でございまして、心の準備ができてないのでございますが、新しい金融の流れに関する懇談会のメンバーとして加わった者といたしまして、懇談会の報告書は私としては非常に良くできていて、問題点はかなり明確に指摘されているのではないかというふうに思います。
したがって、この第一部会におきましては、そういう基礎的な作業は終わっているわけでありますので、それを踏まえて、むしろあるべき金融サービスに関する新しい法制の具体化の道筋をつけていくのがこの部会に与えられた使命であると考えておりまして、また、それは現に非常に必要になっているというふうに考えております。
金融ビッグバンが進みまして、いろいろな新しい法制が生まれておりますが、それだけに一方で従来の縦割りの法規制のあり方の問題点がより明確になってきている。例えば、新しくSPC法等ができましたけれども、その下で証券化などの新しい金融革新の動きがスムーズに進んでいるかというと、どうも必ずしもそうではない。SPCにつきましても、法律ができまして最近やっと初めて商品化の第1号が出ましたけれども、なかなか期待どおりには進んでいないのが実情ではないかと思います。
その理由を考えてみますと、その一つとして、やはり集団投資スキーム、あるいは証券化に関する法制がなお途上のものであって、金融サービスを横断的にカバーするような金融サービス法ができていないために、SPC法などがなお性格的に、あえて言えばやや中途半端なところが残っている。そのために使い勝手がいまひとつよくないというところがあって、証券化、あるいは集団投資スキームの新しい発展がなお十分でないところがあるのではないかと思いますので、この新しい部会におきまして、まさに議論から実行の方に一歩踏み出していただいて、新しい法制への道筋をぜひつけていただきたい。メンバーとしてはつけたいというふうに希望しているところであります。
とりあえず総論的には、以上でございます。
○蝋山部会長 まだお帰りになるまでに20分ぐらいありますから、その前にお気付きの点がありましたら御発言いただきたく思います。
神田さん、どうですか。
○神田委員 御指名を受けるとは思いませんでしたけれども、それでは、若干感想を述べさせていただきます。
私もこの流れ懇談会というののメンバーになっておりましたので、今となっては懐かしく思うんですけれども、一般的な感想を申し上げさせていただいて、その後1点御質問をさせていただきたいと思います。
一般的な感想としては、今、岩原さんがおっしゃったこととも共通しますけれども、論点整理は、メンバーの一員として良くできていると言うのはどうかと思いますけれども、良くまとまっていると思いますし、かなり多角的に論点を拾ったということができてますので、これを出発点として実現するというための努力をし、その中で基本的な方向感とともに、具体的になかなか難しいところ、それから、そう難しくないところ、それから、現在の法体系を大きく変えなければいけないところ、あるいは多少変えればいくところと、こういうのがあると思うんですけど、そういう議論をこれまで体系的にやった場というのは、この流れ懇談会を除けばないと思いますので、ぜひこの機会にこの部会で一歩でも二歩でも、百歩ぐらいできれば先へ進んでいただければというふうに思います。
今、岩原さんから証券化というんでしょうか、流動化の部会の話があったんですけれども、流動化にせよ、それから、それ以外の分野にせよ、そういうものを新しい金融の流れの一つと位置づけられると思うんですけれども、どこまでが法律が進展を妨げているというんでしょうか、あるいは逆に言うと、法律を変えることによって世の中を変えていくことができるかというのはなかなか難しいところでして、法律もまだまだ改善の余地はあるというふうに私も考えています。
しかし、他方、法律を変えればそれだけで世の中が変わるほど単純ではありませんで、やっぱり法律以外の制度、慣行というんでしょうか、そういうものも変えていかなければいけない、あるいは変わっていかなければならないという面が大きいと思いますので、前回違うコンテクストで議事要旨を拝見いたしますと、投資家の啓蒙というか、エデュケーションというか、そういったような御指摘もあったように思いますけれども、法律が間接的に影響を与えて、さらにその周りにあるインフラというんでしょうか、そういうものが変わっていくような、そういうためにはどういうことができるだろうかということも議論できるのではないかと思います。
もう一点ですけれども、この流れ懇談会に参加して感じたことですけれども、蝋山先生の表現を使わせていただきますと、市場型の間接金融。この市場型の間接金融というものの法制のあり方、今はもうばらばらになっているわけですけれども、法制のあり方というものをまずきちんと見据えたいというふうに思います。それは、結局、ヨーロッパの動きもそうですし、アメリカの動きもそうですけれども、そういうものとも十分に平仄がとれ、競争関係に立てるような日本における市場型間接金融の法制のあり方ということを展望して、その中で具体的にそれぞれ今のSPCというのも一つだと思いますし、それからファンド物ですね、投資ファンドみたいなのもそうだと思いますし、そういうものの具体的な位置づけをつけるというのは、一つの課題ではないかと思います。
最後に一つ御質問なんですが、私、金融システム改革法が国会で成立したときに、国会において、いわゆるこの金融サービス法についての関心と議論が随分盛り上がったというふうに伺っているんですけれども、ただ、国会の議事録等一般に公になっているものを若干拝見しますと、必ずしもはっきりしないところがあるんですけれども、金融サービス法イコール、ちょっと表現がよくないかもしれませんが、消費者保護法といったような観点での議論だったかのようにも思うんですけれども、その国会で盛り上がった議論というのはどういう議論だったのか。もし御存知でしたら若干教えていただければと思います。
○蝋山部会長 では、審議官よろしくお願いします。
○山本審議官 この5月から6月にかけましてのいわゆる金融システム改革法の議論のときに、盛り上がったと申しますか、最終的には確か衆議院でも参議院でも附帯決議が付きまして、要するに金融サービス法について早期に検討をして、早く作れと、こういう趣旨の附帯決議であったわけであります。
議論の中では、前国会成立しました金融システム改革法の中で、いわゆる利用者保護というものが銀行法なり、あるいは証券取引法なりにいわばばらばらといいましょうか、それぞれに規定がなされていると。それをむしろこれからの時代、いろんな商品間で横に横断的に見るべきではないかということで、どちらかといいますと消費者ないしは利用者保護、そういう観点からの議論が多かったように思います。
○蝋山部会長 審議官は当時、証券局長代理として国会で答弁に立たれましたから、今のような形で先生方の議論に対応したんではないかというふうに思います。ただ、前回にも議論が出ましたけれども、そういう利用者保護という側面のみ、いわばフェアネスの側面のみではこれからの我々の第一部会の課題というものは応えられないと思うんですね。どういうふうにエフィシェント、効率性と公平さというものをシステムとしてうまくバランスをとるか、こういう点が大事だというふうに思います。
どうぞ。
○神田委員 今のに関連してなんですが、利用者保護というときに、これは質問の域を出なくて恐縮なんですが、国会あたりで関心が高まったときに、どういう方法で利用者を保護するということについてもある程度議論があったんでしょうか。
例えば、商品の内容を制約すると、法律で規制して、ある種のリスクの高い商品は売っていけないというような形で、商品の内容を規制してでも利用者を保護するという部分があっていいというような議論があったのか。それとも、逆に商品の内容をあらかじめ規制するようなことではなくて、何か別の方法で利用者を保護、例えば業者の行動ルールですとか業者ルール、流れ懇の言葉で言えばですね。そういうようなもの、あるいは取引ルール、そういったもので利用者を保護するとか、その辺のニュアンスというか何か御議論があったかどうか伺いたい。
○蝋山部会長 では、審議官。
○山本審議官 商品の内容を規制をするとかというような議論、これはなかったように思います。むしろどちらかといいますと、今、神田先生がおっしゃられましたような形での行為規制なり取引ルールなり、そちらの考え方、これが強かったのではないのかなという感じがいたします。
ただ、一番議論になりましたのは、今投信の銀行の窓販がこの12月1日から本格的に行われておりますけれども、要するに投信のようないわばリスク・キャピタルを銀行で売ることについて、そういった点に関していろんな議論が出たということは、これは事実でございますけれども、では、投信の商品の内容を規制をすべきであるというような形ではなかったように思います。
○蝋山部会長 どうぞ、原委員。
○原委員 私もこの流れ懇の論点整理、どこに問題があるのかということがよくわかる形で書かれていて大変参考になるんですけれども、幾つか論議の中でどうであったのかということを私も確認をさせていただきたいんですが、一つは、今、神田先生の方からおっしゃられたとおりなんですが、消費者というものの捉え方ですね。これは10ページから11ページに書かれていて、項目としての消費者保護という項目では立てられていますけれども、結果として消費者保護になる部分はあるけれども、できるだけ公正なルールを確立することが消費者の保護につながるという形で、自立した消費者を支援をするというふうな書きぶりになっていると思います。
確かにこれからを考えると、こういった自立した消費者というものを原則に打ち立てなければいけないということはわかるんですが、一方で大変気になりますのが、金融関係の相談ですとか苦情の多さですね。
具体的に、例えば変額保険の被害者の方々がいますけれども、こういった人たちというのは、新しいスキームができたときに、ああいう被害はもう出ないという形のもので作り上げるのか、それとも、変額保険の被害者あたりというのはやっぱり自己責任の部分になるんではないかというふうに考えてやるのかという、どのあたりを消費者というもので捉えるのかということについて、議論がどの辺まであったかということをお聞きしたいと思います。
それから、神田先生の質問に付け加えてなんですけれども、商品そのものの規制は国会の中でもなくて、取引ルールとか、それから、業者ルールのところでの行為規範でやるべきだろうというようなニュアンスだったというお話だったんですが、もう一つ進めると、これは実効性確保の点とも絡みますけれども、例えば変額保険のような被害があった場合の救済のルールですよね。こういったことについては話がなかったのか。11ページのところを見ますといろんな形で、例えば民事責任の追及ですとか、それから、刑事罰とか行政とかありますけれども、多分民事責任の話にも関わってくるかと思うんですが、そういった救済のシステムみたいなことの話はどこまであったのかということを付け加えてお聞きしたいと思います。
それから、もう2点なんですけど、一つは、金融商品の範囲を横断的にできるだけ広げてというところがありますけれども、今念頭にあるのは証券ですとか保険とかといったところなんですが、先物取引のようなものというのはどんな感じで捉えられていたのか。11ページのところなんかには、悪徳商法との絡みなどということも書かれているので、議論の中では出てきたのではないかなというふうに思いますけれども、そういった先物取引まで金融商品の範囲に含めるのかどうかという話をお聞きしたいと思います。
それから、消費者契約法との関係も整理をしてみる必要があると書かれておりますけれども、私どもの方も消費者契約法の制定というのも来年度に向けて非常に強く運動を展開していこうというふうに思っておりますけれども、具体的にはどういったところを整理して考えたいといったようなお話が出たのかどうか、それを簡単で結構ですので追加で質問したいと思います。
以上です。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
ただいまの原委員からの御質問は、恐らく座長だった私に対する質問であるというふうに理解しなくちゃいけないと思うんですけれども、今、原委員の方から御指摘のあった様々な問題点について、非常に精力的に集中的に議論をして、そして、ある種の結論に達したということでは必ずしもありません。重要な問題であるという認識においては共通しておりまして、本報告の方を御覧になっていただいても、ある程度のページ数を使っておりますし、問題点の指摘は、今、原委員が指摘された点、ほとんどの問題は触れてはあります。しかし、結論として具体的にこうすべきだと、こういう点についてはまだ論点整理という段階でありますので、まとまった提言ということにはなっておりません。
そういう点では、前回の第1回のときにも議論が出たと思いますけれども、こういう点については、私としては、この第一部会が相当早期に、こうすべきではないかという提言をまとめるようなところにまでなればいいかなというふうに私は思っております。
基本的な考え方としては、御指摘のように自立した消費者、私なりの言葉を使えば賢い投資家を援助する。世の中に賢い投資家がたくさんあって、そして、そういう人たちがいわば中心になって金融が支えられる。こういう方向が一つの進むべき方向ではないだろうかというふうに思います。ただ、残念ながら現実としては、そういう賢い投資家ばかりが現実の投資家であるはずがないわけであって、賢くなろうと思えば容易になれるような環境を作り上げていくということが大変大事ではないだろうかというふうに思います。
そういう点では、過去これまでそういう賢い投資家づくりというのは非常に不十分だったろうと。また、賢い投資家になろうと思ってもなかなかなれないような環境にあったんではないだろうか。そういう中から生まれてきた変額保険のいわば被害者といいますか、不服を申し立てている方々、そういう方々は相当多くは、今これから考えられるようないろんな仕組みを導入したとすれば、少なくなっていたんではないかなというふうに思います。
全体として、例えば自分の退職金を 1,000万円をもらったけれども、
1,000万円を全部一つの商品に投下してしまったなんていうことは、普通の投資の原理から言えば考えられないわけですけれども、結構そういう方おられるわけですね。そういうような点は絶対起きないようにしなくちゃいけないんではないかと。投資の原則に関する啓蒙から始めていかなければならないんじゃないかなというふうに思います。
それから、救済の問題につきましては、これは随分私は議論したと思います。ただ、消費者が問題が起きたときにどういうふうに救済すべきかという点についての議論は流れ懇の中でも相当に行われたように記憶してますし、本報告の中ではページ数をある程度割いております。その辺のところ、上柳先生もおられますけれども、一体和解のシステムをどういうふうにもっとスムーズに働かせるのか、裁判所との関係をどうするのか、そういうようなところはある程度私どもとしては踏み込んだ議論をしたように記憶しているわけですね。
商品の範囲については、投資家の観点からすれば、現在の1円を投資する対象全てが金融商品でありまして、それは先物であろうと何であろうと、当然消費者の観点から見れば投資対象として考慮すべきことということに、対象ということになるので、これは例外です、これは例外ですというような形にはなり得ないというふうに思います。
総じて私はこの流れ懇の中で、前回申し上げましたけれども、繰り返すことになりますが、投資家の方が賢くなろうと思ったときに容易になれるような環境を整備するということが、今の日本で一番必要なんじゃないかなというふうに個人的には思っておりますが、その辺のところがまだまだ十分に流れ懇の中で議論できなかったきらいは否定できないと考えています。
吉野さん、どうぞ。
○吉野委員 3ページのところに市場メカニズムによるガバナンスという言葉があるんですけれども、これは今蝋山先生がおっしゃったように、賢い投資家がいなければ市場メカニズムによる淘汰ということはできないんだと思うんですね。ですから、消費者保護と賢い投資者というのは裏腹の関係にありまして、余りにも消費者保護をすればするほど賢い投資家はできない。そうすると、市場メカニズムによるガバナンスというのができないんじゃないかと思うんです。それが一つ感想です。
それから、2番目は、超長期の商品。例えば年金とか保険、こういうのは幾ら情報開示がそのときあっても、そこにひとたび始めますと、ずっとそこに年金なり保険なりは預けていくわけですから、20年後、30年後のことってなかなかわからないわけですね。ですから、金融業態によっても割合リターンが短期的にわかる商品と、それから、20年とか30年という商品というのは何か区別しませんと、やっぱり困るんではないかなというのが2番目です。
それから、3番目は、金融商品の定義でございますけど、蝋山先生おっしゃいましたように、今後ハイブリッドの商品ができれば、不動産とか商品、コモディティとか全てが証券化された金融商品になると思いますので、私は広く考えていただいた方がいいんだと思います。
それから、御質問なんですが、この論点整理の要約の3ページの下のところに?というところでから
まで、現行の業法あるいは業態を超えた様々な動きが活発化されると、3ページの下の方に
から
とあるんですけれども、これで大体どういうところがまだネックなのか。新しい金融の流れに関する懇談会の論点整理の概要というところの下の方なんですけれども、もし、そこら辺で現行でまだどういうところが不十分なのかわかれば教えていただきたいんです。
○蝋山部会長 初めの方の問題について、特に超長期の商品というものについてどう考えるか。そういう問題については、やはり専門家の運用というものが最も重要なファクターになってきて、どうしてもそういうところになると、そういう面では専門家がいかに投資家の代わりとなって資産運用を行うか。それに対して投資家がどういう信任を与えるか。そういう関係で全てが投資家の責任に委ねられるというような問題ではないというふうに思いますね。
ここでは保障という機能を持つ生命保険のケースが例にとられて、決済機能を提供する銀行と並んで、やや特別な存在だというふうに位置づけられていますけれども、その理由は、今、吉野さんが御指摘のような点にあるからではないかというふうに思います。マーケットは必ずしもテレスコープ・アビリティといいますか、望遠能力は持っていないわけですね。
それから、お答えすべき点は、3ページの六つの点。様々な動きを活発化させるものと予想される。しかし、現実には必ずしもそうなってない。その原因は何かという御質問なんですが、難しいですね。一言ではなかなか言えないと思います。
一つは、こういう情勢ですから、なかなか新しい商品を作り出そうという場がないというのが一つ考えられると思います。それから、2番目、場があったとしてもやる気がないというケースも考えられる。3番目、チャンスがあり、機会があり、やる気があっても、それが抑えられてしまうというケースも考えられる。
現在ここで政策的に考えるとすれば3番目のケースであって、現実に専門家の間で新しい商品を作り出そうとするやる気もある。また、世界中を見回してみれば、そういうやる気を実践するマーケットというのも存在している。しかし、そういうをやろうとしても、法律なり仕組みなりがなかなかそれをやらせてもらえない。こういうことがあればそれは直していかなければいけないんではないだろうか。現在の縦割りの制度の中にはそういう側面が多分にある。証券投資信託だって、本当の意味での投資信託ではないわけですね。そういうような点は一つ例としてあるんではないだろうかというふうに思います。
私どもが考えなくちゃいけない点は、そういう仮にやる気があっても、また、やるチャンスがあっても、客観的にチャンスがあっても、それが実現し得ないようなルールというものに今我々は縛られているんでないだろうか、そういう認識ではないかというふうに思います。
上柳さん、どうぞ。
○上柳委員 余り抽象論をやってもしようがないというふうに言われそうだという予防線を張った上なんですけれども、吉野先生がおっしゃった一番最初の、いわゆる賢い投資家作りという観点から言うと、その投資者を保護するということと市場メカニズムによるガバナンスというのが、トレード・オフというか、矛盾する場合もあるんだという点についてなんですけれども、おっしゃることはよくわかっているつもりなんですが、あえて言いますと、例えば、90年代の始めの頃のワラントについても、変額保険についても、私が見るところ、あえて言えばですけれども、賢い投資者の人たちはそこで大変教訓を得まして、そういうところに近づいちゃいけないなというふうに今思っているんじゃないか。本当の被害者の人は、近づこうにもお金がなくなっちゃって近づけないわけですけれどもというふうに言うと、私の依頼人さんに失礼ですが。
ただ、その親戚なり、あるいは口コミなり、あるいはメディアを通じて、そういう人たちはもう行かない方がいいと。極端なこと言うと、これも語弊があるかもわかりませんけど、郵便貯金でもしておこうとか、あるいは銀行の中でも〇〇銀行は危ないとか、あそこへ行くと余分なものまで勧められるからというような予防を張っていて、それで現在のいろいろな日本の景気の問題も含めて、なっているんではないかというふうにも私思ってて、それは市場メカニズムである意味ではいいというふうに考えるのかどうか。
私自身も、少なくとも弁護士としての立場は割とはっきりしているんですが、そうじゃなくて、理屈的に考えたときには大変悩むところで、結論が出せているわけじゃないんですけれども、すごくイメージで言いますと、抽象論でしようがないのかもわかりませんけど、この金融サービス法なり、あるいは行政の役割なり、自主的機関の役割もですけれども、嵐が吹きすさんでいる荒野の中で最後の駆け込み寺が金融サービス法であるとか、あるいは何か裁判所であるとかというような雰囲気よりも、金融サービス法が全体が暖かくなるようなというか、例えが難しいんですけど、荒野の駆け込み寺なり砂漠のオアシス−−オアシスになってほしいんですけど、そういうことじゃなくて、あまねくと言うとこれまた難しいんですが、その範囲はどうかということになりますけれども、あちこちに作物ができるように水を供給できる、そういうふうに言うとまた大きな政府論なのかもわかりませんけれども、何かそういうイメージを考えているんですが、経済的な議論とどういうふうに結びつくのかよくわからないんですけれども、ちょっと感想を言わせていただきました。
○蝋山部会長 今の続きですか。
○井上委員 そうですね。少し関係します。
○蝋山部会長 では、井上さん。
○井上委員 今日も午前中いろんな経済の統計データを 100系列ぐらい見てたんですが、現下の日本経済は、金融収縮をはじめとして、まだ下がっているようにしか統計データを読めないんですね。つまりこの1年間、流れ懇談会の議論に係るこの1年間何が世の中で起こって、今何が問題かということを考えたときに、今のようなお話に関わるんですが、今起こっている金融収縮や貸し渋りに基づくマクロ経済のものすごい冷え込み、あるいはそれを遡れば、10年前の金融も含むバブル経済みたいなこととこの今回の流れ懇談会の議論というのは、どこまで接点を持って議論をなさっておられたのか。
つまりこういう流れ懇のような考え、いろいろ幅のある考え方なんですが、概ねこういう方法でやれば、かつての護送船団型の下で生じたバブルの拡張や、あるいは今非常に困難な過渡期にある金融のリストラ過程を乗り越えた後には、比較的そういう問題は起こらないような構造改革が可能になった。こういう構造改革によってそういうことが可能になるんだというようにも読めるんですが、その辺の議論をどこまでなさっておられたのか。
これは日本の場合は日本の国内なんですが、もう一つ別の文章を見てますと、恐らく来年の主要国サミットなんかでは、間違いなくこの1年間、1998年というのは、戦後、国際的に金融システムリスクという点では最も厳しい年だったかもしれないです。そういうことに関して今恐らく11月、12月、来年1月にかけて各機関でいろんなペーパーが出て議論をされてきて、今までの金融の国際金融、国内にも連動するので、そういうシステミックリスクに対して何らかの手を打たなきゃならぬという議論がかなり出てきていると思うんです。その辺はこの流れ懇の中でどこまで議論されて、もしこの中でどういう点がいわば取り入れられているのか教えていただければありがたいと思います。それが1点。とりあえずそれだけにしておきます。
○蝋山部会長 前回も井上さんから同じような御質問を別な表現でいただいた。国際金融システムの問題をどういうふうにこれからの日本の金融システムを考えるときに取り入れて議論したのかと、こういう御質問を受けたというふうに記憶してますけれども、正面から議論をしておりません。それで議論をし始めますと、全部時間を費やしても答えは出てこないと。
ただ、それぞれの参加者は、私の希望的観測かもしれませんけれども、今、井上さんの御指摘の論点に関しては、それなりに私はある種の答えを持ちつつこの議論に参加したのではないかというふうに思っています。
そういうのの例として私の意見を申し上げれば、これからの金融システムに関して日本がどういう金融システムを持つんだろうか。そういうビジョンがないままに住専問題に突っ込み、
6,850億円という、今から言えば総体的な少額の公的資金の投入に戸惑い、右往左往して、結局いわば錘を、足かせを作ってしまった。
ブッシュが89年でしたか、大統領になったときにS&Lの問題を抱えていて、あのときにやはり公的資金を頼むというテレビ演説をしたと思うんですけれども、そのときには新しい金融システムを作るんだという非常に強い将来に向けての決意があって、今何もしないでいることと、それから、皆さんからの公的資金、タックス・プレイヤーズ・マネーを使って新しい方向へアメリカの金融を持っていくと、どちらがいいと思うか、自分は後者がいいと思う、ぜひお願いしたいと、こういうところから始まったと。ある種のビジョンがあったと思うんですね。
そういう点で私は、遅いと言う人もいますけど、もう今では遅いんだと言う人もいますけれども、今からでも遅くない、いろんな形でこれからの日本の将来はこういうふうに進むべきなんだから、それとの連携において不良資産の問題の解決策をこういうふうに考えていきたいと、こういうような考え方をぜひ私はとってもらいたいというふうに政策施行者には思っているわけですね。具体的には、いろいろあるんですけれども、例えばはやめましょう。幾つか新聞に書いたり何かいたしましたから。
会長がそれに関連して話があるそうです。どうぞ。
○貝塚会長 今の点はかなり幅の広い話で、金融システムの不安定とかそういう問題は、実を言うと、ほかの機会でもいろんな、例えば一例を挙げれば、財政投融資というのを私は関係しておりますが、財政投融資で勇ましい議論がたくさんあって、政府金融機関はやめてしまえという議論が結構あったわけですね。ところが、今や政府金融機関はどんどんお金を貸している。そのときに私の説明は、平たく言えば、そういう事態を予想してなかったんですね。政府金融機関がこれほどの役割を果たす。
ですから、今は異常な事態で、恐らくそれが二、三年で終われば、もともとの財政投融資の改革の路線に必ず戻るはずですが、金融システムの場合もその面がないわけでもなくて、不良債権の処理その他は、これは第二部会も非常に関係しておりまして、要するにペイオフがあるときに実施される
1,000万円以上ですか、そのときのシステムを構築するわけですよね。それはやはり今とは違って格段に破綻処理とかそういうことに関する新しい考え方を入れてシステムを作らなくちゃいかぬですから、それは銀行に関しては恐らく第二部会の役割ですね。ですから、そういう話はある程度これからやらなくちゃいかぬ。これは非常に難しい話なんですが、そういう点があるということをちょっと付け加えておきます。
○蝋山部会長 私はちょっと貝塚さんと違うんですけどね。二、三年たって解決すれば新しいシステムを作るいろんな作業が始まるだろうというニュアンス、それはまずいと思うんですよね。それで10年たっちゃったわけです。そういう点では、今の不良資産の処理とか、今の難しい問題のときに、こういうはっきりとした方向性を踏まえて、そして、それに乗るような不良資産の解決策というものを考えなきゃいけないし、あり得るだろうというふうに思っています。
井上さん。
○井上委員 基本的にこういう流れ懇の考え方に沿って金融構造改革を今この時期こそ進めて、系統的に進むことが中長期的に見ると金融システムの安定にもつながるという御指摘だと、そうかなと、もちろんそうだろうなと思いつつも、いま一つ、これだけのここに書かれているいろんなことがどういうタイミングとどういう手順でどのスピードで進むかにもよるわけですけれども、広い意味での護送船団方式、もうちょっと言えば保護型の金融行政、つまり業界保護によって消費者保護や利用者保護をこれまでしてきたような姿を根本的に変えるわけですよね。
そのときの今おっしゃったこれは第二部会の仕事になるかと思うんですが、利用者保護、消費者保護の考え方というのは、その利用者保護や消費者保護の構造や位置が変わってくるものですから、戦略的に大変大きな転換をするものとして消費者保護を考えなきゃならぬという、抽象的に言えばそういうことなんですが、もうちょっと別の言葉で、私ども勤労者の方の仲間が多いものですから、一連の議論を聞いておりまして、私、また、社会学会とか、この前、国際労使関係学会とか、その辺の議論の金融とかコーポレート・ガバナンスの議論の中で、ここで幾つかの御意見が出たのと大変感じが違うなというふうに思われる、ちょっと場外れ的なんですが、申し上げます。
やっぱり一般の勤労者は日々、できれば金融なんかについて頭を悩まさない方がいい。金融についてはしっかりした市場秩序があって、信頼できる効率の良い金融システムがあって、一般勤労者は、こんなことはできるだけ心を煩わさなくて日々汗を流して勤勉に働く。質の良い製品やサービスを作り、できるだけ勤勉に貯蓄する。あとはシステムが安全であればいいというような角度から見たときに、先ほど金融サービス。結論的に言うと、部会長が言うとおり、賢くなろうとすれば容易になれるような仕組みが今ないわけですから、これはとても賛成なんですけれども、教育の場なんかでの議論で言えば、一体そういう議論をどの程度すべきなのか。
非常に積極的に、もっと賢い利用者になるための教育を初等教育から入れろとなると、どこかで私読んだことがあるんですが、それよりはもうちょっと違う社会観、価値観みたいな議論がほかの学会でなされているもので、ここで伺っている話と大変違和感を覚えている。それと消費者保護の先ほど申し上げたこと。
つまりリスクテイキングというのは、やっぱりプロの世界を基本にリスクテイキングであって、アマの世界にどこまでそれを持ち込むか。ちゃんとこの中で議論されておられますけれども、何となくまだ不安が残る。すみません、感想みたいな言い方で。
○蝋山部会長 非常に大切な問題提議だというふうに思います。今の井上さんが言われたことを繰り返しませんけれども、やっぱり働く者は働くことに比較優位があって働いているわけで、そこに大きな賢い投資家というのが歪められて、私は歪められてだと思いますけれども、働くことが阻害されるようでは非常に困るわけで、そこのバランスをどういうふうにするかというのは、私なりに答えはありますけれども、これからの具体的な議論の中で詰めていかなければならない非常に重要な論点ではないかというふうに思います。
ただ、一言だけ申し上げれば、原さんや高橋さんに聞きたいんですけれども、いつの間にか我々は非常に賢い消費者になっているんじゃないですか、消費という面では。それは違いますか。私が学部の学生の頃の消費者論と今の消費者論というのは随分違うと思います。消費者論というか、消費者像というものは。一度はかつて我々が消費者運動をやったような形で投資家運動というものは経験しておかなければならない。そういう中から今度新しいインフラストラクチャーが出来上がって、慣行が出来上がって、その中で比較優位の選択が始まってくる。そんなふうに私としては思っておりますけれども。
どうぞ、原さん。
○原委員 消費者について今いろんな方からたくさん議論が出てきておりますけれども、確かに今、井上さんの方からおっしゃられたように、かなりの人は預けている銀行がつぶれなきゃいいと。そこそこ金利があればそれで私は十分という人が多いのは、確かは確かですね。
ただ、それでいいのかというと、私はやっぱり一つ不安というんでしょうか、ありまして、そういった方々が例えば退職をするというようなときに少し小金が入ってくる。そういうところに投げ込みの投資信託のチラシなんかが入ってきて、今までの銀行、郵便局とお付き合いしている延長上で入っていかれて、被害に遭われるというようなことがあって、ある程度情報も開示されて、公正な形での金融商品が提供されている。そういった情報の中から選択をしていくというふうな消費者というのもやっぱり必要だというか、大切だと思うんですね。
それは別に金融商品に限らず、環境問題を考えたら、環境を考えるとどういった商品を選んだらいいのかということもありますし、私たちの消費者運動というのは、そういう商品とかサービスとかを購入するという投票権を行使しているというふうにも言えるかと思うんですね。これまでのように何も知らなくてもいいですよと、国の方が銀行はつぶさないように、ある程度の金利を払えるように面倒見ますので、間接的に消費者はそれで保護されてますというのだけでは進んでいかないというか、消費者自身で自立していかなきゃいけない部分もあるのではないかなというふうに思っております。
ただ、一つ気になるのは、先ほど弁護士さんの方からも具体的に被害者の姿というのをお話しなさいましたけれども、確かにそういった消費者、弱者である消費者というものの存在もあるわけで、そういった弱者である消費者というものが救済される道筋というんでしょうか、やっぱりそれも明示をされておくべきだというふうなことを感じております。だから、あなた方は何も知らなくてもいいです。私ども政府の方で保護されるように面倒見てあげましょうという時代ではない。だけれども、全てが賢い消費者であるわけでもありませんし、そういった投資商品にいつもいつも関心を持って、どこに預けたらいいかとかというのが大半の消費者でもありませんから、実際にそういった被害に遭わないような形での情報開示、商品設計、それから、実際にこれはおかしいと思ったときの救済の手立てがあるということではないかなと、そういう仕組み作りではないかなというふうな感じがしておりますけれども。
○蝋山部会長 神田さん、どうぞ。
○神田委員 幾つか感想めいたことを申し上げたいんですけれども、一つは、今、井上さんがおっしゃったことに関わるんですけれども、他の学会なんかでの議論から見ると違和感があるという御指摘なんですが、私が今から申し上げることは、第二部会のメンバーだと思うんですけれども、池尾さんという慶応大学の先生の受け売りなんですけれども、金融というのが従来はお金を融通するというそういう域に留まっていた時代と、今はもはやそうではなくて、金融というのがコーポレート・ガバナンスということにも影響を与え、一国の経済にも影響を与える。
そういう意味では、金融というのはお金を預けておくという、お金の融通というところにもはや留まってない大きさになってきているというんでしょうか、そういう時代における金融の制度というものを議論しなければいけないのに、池尾さんの言葉によれば、昔の金融というのは金を融通するという域に留まってたときの舞台装置でやろうとしている。安普請の舞台装置ということをおっしゃるんですけれども、やっぱり今日における金融の影響度、コーポレート・ガバナンスにも影響を与え、一国の経済にも非常に影響を与える。
そういう意味で金融が大きくなっているというのが正しいかどうかよくわからないんですけれども、金融の世の中に与える影響力の度合いというものが変わってきているということを現状認識として持たなければいけない。それに対応するような安普請でない制度を作っていかなければいけないのが、先ほどの蝋山先生の言葉で、大分遅れてしまったということが私はあるように思うんですね。ですから、そういうことをもっとほかの学会に対してもよく議論をしていくという姿勢が必要ではないかと思います。
ついでにもう少し申し上げますと、吉野先生が先ほどおっしゃった3ページあたりの何か不都合があるのかということなんですが、不都合とか妨げているものというのは法律のレベルで存在するものもあれば、法律ではないけれども、法律外の制度とか慣行によるものもあれば、それから、制度とは言えない経済状況、あるいは蝋山先生の言葉でやる気の問題、いろいろあると思うんですけれども、法律面では、この3ページに書かれているようなことで言うと、かなり今回のビッグバンで解消されているというか、改善されている部分が多くて、余りそう多くは残ってないというのが私の認識なんですが、一、二例を挙げますと、例えば組織体制、持株会社形態に移行しようと思っても持株会社を設立する法律上の手続がない。銀行については特例法というのがあるんですけれども、ほかの分野についてはないからなかなか移行できない。
それから、これは法律かどうかよくわかりませんけれども、一般に3ページに書いてあるようなことをやっていこうという場合に、税制が中立的でないということがあります。それから、相互参入みたいなところについて言えば、これもビッグバンのプログラムの中に組み込まれてますけれども、法律上、業務範囲に制限があって、これを徐々に広げていきましょうということになっている。
それから、これはよく言われたことで、流れ懇談会でも挙げられた例ですけれども、証券投資信託のようなファンド物でありますと、例えば40%を有価証券に、40%を不動産に、20%を商品先物にという、そういうファンドについての法律がないといったような幾つかの例が、法律レベルの例としても挙げられると思います。
もう一点、これは上柳さんがおっしゃったことで、私も基本的な気持ちは全面賛成なんですけれども、駆け込み寺としての金融サービス法ではなくて、呼び水としての金融サービス法というんでしょうか。
私の認識は次のようなことなんですけれども、では、法律は何をやるかというときに、全部を法律で面倒見ようと考えるのは、法律が大きくなるのは適切でないと私は思っているんですね。量は増えると思うんですけれども、いろいろ細かいルールを変えていかなければいけない、ルールの充実ということで。しかし、質的には法律で全部面倒を見ようというんではなくて、あるいは大きな法律、大きな政府というんではなくて、やっぱり法律は少し必要なところに手を打てば、あとはメカニズムで動いていくと、そういう話じゃないかと思うんですね。
これまでの考え方は、これは井上さんも御指摘になったことなんですけれども、俗な言葉で言うと、書いてないことはやってはいけないなんていうことをよく言われたことがあるんですけれども、事前的、予防的なルールで動かしてきたということだと思うんです。今後は、表現がいいかどうかわかりませんが、よく言われる言葉では、何でもありと。何でもありの時代における法律のあり方は何かと、こういうことだと思うんですね。何でもありの時代に法律はどこに手を出せばあとが動いていくような体系が作れるのかということであって、あくまで全てを法律で面倒見ようというふうには考えない方がいいと思いますけど、どこに手を出せばいいかというところが難問だということだと思います。
流れ懇は、私はそういう問題意識で議論していたというふうに、今思えば理解します。先ほどからの御議論ですと、私は二つか三つぐらいがポイントになると思うんですが、二つぐらい申し上げますと、一つは、先ほどちょっと申し上げたことですが、市場型間接金融というものが今後の中心的な流れだということになってきますと、一つには、従来の縦割りの業態別の法制ということから、自由な商品設計、あるいは市場型間接金融がその本領を発揮するような、それを妨げたり、あるいはそういう新しい流れをサポートしにくくしている面があるとしたら、そこの法制を改善する必要がある。
それから、もう一つは、先ほどから利用者保護という言葉で議論されていることですけれども、これは詰めていけば、行動ルールというんでしょうか、業者ルール、取引ルールを含めて、主としてサービスを提供する者の行動のルールというものについて、これは流れ懇でも出ているところだと思うんですけれども、ホールセールとリーテイルの区別などという表現でよく出てますけれども、利用者保護のためのルールというものは何かということを詰めることになるんじゃないかと思います。その際には、先ほど救済という言葉がありましたけれども、救済、エンフォースメント、さらに言えばルールメイキングというんでしょうかね、ルールを作って次々変えていくということも含めて、そのあたりを見通しをつける、展望するということがあるように思います。
ちゃんと長くなりましたけれども、幾つか感想を。
○蝋山部会長 今の神田さんの御意見、第2回の今日の会合、初めて出られたにしてはすげえ良く理解していただきまして、課題を整理していただいたというふうに思ってますが、井上さん何かありますか。
○井上委員 神田委員の御意見に少し補足的なコメントをさせていただきたいんですけれども、恐らく市場経済
150年ぐらいの歴史を見ますと、ファイナンス対インダストリー、非常に多様な組合せが、ある時期に非常にファイナンスというのが拡張し、ファイナンスが経済全体を動かしていくようなそういう経済の型や国というのがあったわけです。
だから、この1980年代、90年代は一種のファイナンス優位の時代のカラーが非常に強かったんではないか。また、もうちょっと言えば、日本の場合、そのファイナンスが余りにも時代がツーデケードぐらいずれていた。したがって、これはもうちょっと現代化しなきゃならぬという点では、池尾さんなんかの話にある程度理解ができる面があるんですけれども、同時にファイナンスが異常に優位な形で経済社会のシステムを構想して、それが必然であると、そういうふうに果たしているんだろうかというのはもう一つの問い直し、それが国際学会なんかの議論なんです。経済社会システムとファイナンスをこれから21世紀を展望したときにどういう組合せの仕方があるか。間違いなく過去20年はファイナンス優位であった。そういうことでいいのかという問い直しがあって、少し議論をし直さなきゃならぬのかなと。
来年2月、例えばヘッジファンドあたりがどう動くのか。恐らくはアメリカの中でもいろんな議論の見直しがあって、これまでの金融優位的な、アメリカ金融何とか主義とかというようなそのあり方がいろんなところから今問い直されている局面なものですから、これからあれになるべきだと。アメリカ型のそういう金融優位を一つの理想モデルとして追っかけた方がいいという議論には必ずしもならないし、私はこの流れ懇を読んだときにいろんな含みがあって、いろんな考え方が背後にあるなと。まだそこのところは多分モデルとしては、池尾さんの言われているようなモデル以外も入る得ると、こういうふうに理解をしました。ちょっと補足的なコメントです。
○蝋山部会長 高橋さん。
○高橋委員 もう一度消費者の方の問題をお話しさせていただきたいと思うんですが、新しい金融システムで期待されている消費者というのは、自己選択、自己責任という原則をきちんと心得て賢い投資行動をとってくれということだと思うんですが、今の消費者運動というお話もありましたけれども、消費者団体とか女性団体はこの自己責任ということに大変アレルギーがあって、ほかの商品のように消費者運動がうまく進んでいないというのが、一つは、金融不祥事等もあってディスクロージャーの不備、ディスク資料を見たって、そこには本当のことは書いてないじゃないかというふうな言い方をしているということと、それと、プロとアマの差があるんだから、売り手責任だ、貸手責任だと、そこでどうも消費者運動が留まっているというふうに思えるんですね。
この辺のことについては流れ懇でもきちんと論点として捉えられていると思うんですけれども、先ほどおっしゃったような食品とか衣類とか医薬品とか、諸々の部分での消費者行動というのはかなり賢くなってきていると思うんですが、そことの対比で考えれば、やはり非常に選択がしやすい、自己選択がしやすいような環境整備が消費者運動もありましたし、業界のいろんな努力もあってできていると思うんですが、金融商品について私などが消費者運動をこういうことをしたらどうですかとアドバイスするときに、例えば金融商品のわかりにくさということに関して声を集めたらどうですかなんていうことを言うんですけれども、やはり選択できないというのは品質表示に負うところが非常に多くて、食品であれば、食品の裏側を見ればすぐわかる表示になっていますけれども、金融商品で言えば、元本保証なのかとか、預金保険の対象なのかとか、そうしたことについてもわからないと。
ですから、多種多様な商品を分類整理していく必要があると思うんですが、それをどこがやるかということだと思うんです。今までは業界の自主ルールとか申合せ事項とか、そういうことでパンフレットとか取引規定とか契約のしおりとかいうものが決まってきてますけれども、多種多様な金融商品が増えた中で、やはりここの分野はここを見るんだ。例えば保険で言えば約款としおりですよとか、証券の分野でいけば受益証券説明書なんですよという、そういう言い方でわかるかというと、なかなかわからないんですね。受益証券説明書の中のRR分類、投資信託がこの12月1日から販売になって急に出てきてますが、あれは確か平成5年か6年頃から表示されているはずなんですけれども、ほとんど消費者が知らないという状況で来てたんですよね。
ですから、それを考えた場合に、行為規制とか業者ルールだけでいいのかと。その先を考えないとなかなか賢い消費者が育たないのではないかということを感じてます。そういったことに関して、流れ懇の方は13の関係省庁が共同勉強会ということでしたので、ほかの商品との比較の上で金融商品というのが話し合われたかどうかというのを一つお聞きしたいということです。
それから、前回も消費者教育の必要性ということを申し上げましたけれども、現在、金融商品の消費者教育をどこでやっているかというと、例えば日銀の貯蓄広報中央委員会とか、全国各地の貯蓄推進委員会ですか、日銀と大蔵の財務局と都道府県の県民生活課等がやっているところ、それから、経企庁の国民生活センターとか、各地の都道府県の消費生活センターとか、大蔵省が関わっている部分ばかりではないわけで、消費者教育をやっていくというときに、未来の消費者であれば文部省の今の金銭教育の中のプログラムの中に入れていかなければいけないと思うんですが、ここで議論したことがそういうところまで横断的に広げられていくのだろうかということに対して若干の不安を感じているんですけれども、その辺について教えていただけますでしょうか。
○蝋山部会長 一般の消費に関わる問題との絡みというのは、我々としても経済企画庁の今の消費者契約法と、それから、流れ懇での議論の中でどういうふうに位置づけたらいいのかということで、消費者契約法の勉強もいたしましたし、また、それなりにそれでいいのかなという疑問も持ちました。そういう点で勉強したということだけを、位置づけを考えたということだけは申し上げたく思います。
それから、2番目に、おっしゃるようにすごく広い範囲にわたっているわけでして、そういう点でぜひこの第二部会では、問題がどこにあるか議論を整理するのではなくて、それをどう実行したらいいのかというところまで踏み込まなきゃいけませんので、それは金融企画局の皆さんに大いに努力していただいて、遺漏のないように少なくともプロセスまでの我々のいわば言及はしなければならないのではないかというふうに思っています。ぜひそういう点で強力な意見を出していただきたく思います。
原さん、どうぞ。
○原委員 たびたびすみません。30秒で終わります。
自己責任という言葉は消費者団体とかは嫌いだというのは確かですね。というのは、規制緩和と自己責任という言葉はセットで出てきましたけれども、自分たちが自己責任をとりたいと言ったわけではなくて、政府から言われたので、相手から言われたくないというのが第1ですね。
特に金融商品に限っては、あの程度のディスクロージャーで自己責任をとれというふうなことはやっぱり言えないだろうというのが大きいです。
それから、もう一つなんですけれども、衣食住に比べて金融商品とかというのはこれまで消費者運動になりにくかったんですが、一番自分のうちの収入とか資産とかに関わるので、そこは私どもでもいろんなアンケートとかやりますけれども、一番やりにくいところですね。だけれども、潜在的な苦情とか相談とか聞いてみたいことというのはかなりありそうだというふうな感触は持っております。
以上です。
○蝋山部会長 残された時間はわずかなんですけれども、余り十分ありませんが、オブザーバーの方で、今までの今日のはどうしてもまだ総論段階なんですけれども、一つは、随分たくさんの時間は一般の人々に対して、消費者あるいは生活者に、金融という問題を本来もっと身近であるはずだし、また、それなりに関心を持ってもらいたいし、それなりに規律を持ってもらいたいし、自己責任もとってもらいたいんだけれども、なかなかそうはいかない。それを文化だと言って放り投げるわけにもいかない。そこのところをどういうふうに切り込んでいくのかというのが大変重要な問題で、延々議論しているわけです。こういう点が一つ。
それから、もう一つは、これは吉野さんや神田さんから整理されたわけですけれども、今までの業態別の銀行だ、証券だ、証券投資信託だ、保険だと、こういう枠を一回取っ払って、もっとイノベイティブな元気のある金融サービス業というものを日本は持たなきゃいけないし、それを利用者がみんなで支えていくというような状況にしていかなきゃいけないわけなんですけれども、そういう点についての一つの切り込み方は、コレクティブ・インベストメント・スキームといいますか、集団的投資スキームといいますか、あるいは市場型間接金融といいますか、そういう大括りなコンセプトであろうというふうに思います。
こういうような点について、どちらでも結構です、あるいは両方について、余り長くしゃべっていただくと時間がないわけですけれども、今までの議論をお聞きになってお気付きの点があれば教えていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
どうぞ、竹田さん。
○竹田オブザーバー
今の問題提起と若干ずれるかもしれません。ちょっとお教えいただきたいと思います。今検討されようとしているいわゆる金融サービス法ですが、これをこれからいろいろ煮詰めていくに当たって、参考になるのが海外の事例だと思います。例えば英国型の金融サービス法、それから、EUの投資サービス指令などがあるようですが。またアメリカなどでも具体的にこういう金融サービス法のような、横断的な法律を制定しようという動きがあるのかどうか、お教えいただきたいと思います。
○蝋山部会長 一言で申し上げると、アメリカでは、まずSECが証券というコンセプトが非常に広いということであって、投資という観点から言えば、金融サービス法というもののどの側面を言うかによりますが、投資家保護といいますか、消費者保護といいますか、そういう側面から言えば、SECが基本的には全責任を負っているというふうに思います。そういう点では証券の概念が幅広いものですから、SECの対象が幅広くなり、SECの権限が非常に大きい。ですから、投資家が何か問題があるときにはSECないしはSECのリコメンドする相談機関に相談するというのが常態になっているというふうに思います。
借手の方については、トゥルースイン・イン・レンディングという法律が、私の記憶では1970年代の終わりにもうできておりまして、消費者がお金を借りるときはどこからお金を借りようともトゥルースイン・イン・レンディング、いわば基本的な貸手の側の行動を律する法律ですけれども、貸手が誰であろうと共通の法律があるというふうに私個人は理解してますが、それでいいんでしょうか。どうですか。それでいいんですね。ですから、金融サービス法という名前はありませんけれども、事実上デファクトに非常に幅広い範囲でそれぞれの機関が、SECならSECが対応しているというふうに考えていいと思います。
○蝋山部会長 どうぞ、三國谷さん。
○三國谷企画課長 やはりヨーロッパ、それからアメリカ、日本というものはそれぞれ制度の生い立ちというのは相当違いまして、日本の場合にはどちらかというとインフラが大陸系と申しますか、ドイツ法を真似ながら、現実の証券取引というのはアメリカの法律を証券取引法が引いているといった中で、この調整というのは実務の立場から見ると大変難しい問題を抱えているわけでございまして、これは証券取引に係ります例えば信託につきましても、いろいろ根っこに民法、商法の体系に入りますところの信託法、その上に今度はこれまでは当省が所管してきているような業者法と申しますか、いろんな法律が重なっていると、そういったところがあるのかと思います。
そういった中でこれから新しいものをどういった形で構築していくかということにつきましては、この審議会のいろんな御意見を待たなければいけないとは思いますけれども、ただ一言だけ申し上げますのは、例えば大陸系のものをそのまま持ってくれば日本は翻訳すれば出来上がるとか、アメリカのものをそのまま持ってくれば出来上がるかということではなくて、そこはそれぞれの長所、短所、日本の生い立ち、そういったものを全部兼ね備えながらやっていかなくてはいけないというところに実は大変な難しさがあるんだと思います。そういった意味でいろいろ各界の皆様からの御意見を糾合していただきまして、良いおまとめをいただければと思っている次第でございます。
○蝋山部会長 関さん、どうぞ。
○関オブザーバー
蝋山先生が整理された二つの問題につきまして、私も興味深く委員の皆様の御議論をフォローしていたわけですが、第1の方の勤労者とか消費者、これが金融という問題にどういうスタンスでいったらいいだろうかということで、勤労者の中には金融のことなんかは余り煩わされたくないというような、こういう気分もあるということもあって、そういう方もあるかもしれませんが、つまり消費者とか勤労者とかいいましても、いろいろなバラエティーがあるわけですね。その中でいろんな考え方をする人が出てくるだろうというのが第1点あると思いますね。
それから、第2点は、金融について煩わせたくないという気持ちで、完全に公的年金の制度とかそういったことだけで豊かな生活が今後保障される時代になっているかどうか、これの方が基本的な問題だろうと思いますし、まさに年金制度が今のままでいいかというのが大問題になっているわけでありまして、それに対応して、それは本当の最低は福祉国家の原則で保障されるけれども、より豊かなということを考えようとすれば、勤労者といえども、消費者といえども、自分たちで努力をすることが必要ではないか。そのためには、蝋山先生おっしゃるように賢い投資者になることによってそれぞれ努力をしてもらう、あるいはそういったことができる体制を組もうじゃないかというのが、まさに金融審議会、あるいはその前の流れ懇の発想ではないかと私は思うということを、まず第1について申し上げておきたいと思います。
それから、第2の問題につきましては、まず、これからは直接金融じゃなくて間接金融型の直接金融ですか、そういうお話がありますね。また、端的に言えば、要するに新しいいろいろな商品、元本が変動するようないろいろな商品というものを直接、それは多様な商品を認めるんであるんだけれども、それを個人の投資家に直接購入させるというんじゃなくて、少しその間に仲介業者というのを立てて、そこに仲介業者の機能で投資者向けの商品というものを作って、それで証券市場に資金が流れ、活力を与えると、そういう方向ではないかというのが蝋山先生とか神田先生のおっしゃっているお考えだと思います。
それで、そこから一つ理論的に私は問題だと思うのは、例えばディスクロージャー一つ取り上げましても、どんどんディスクロージャーの内容を精緻にしていくと、商品の取組みが難しくなると、それにふさわしいディスクロージャーをしなきゃならないと。それはやればやるほど、今度は投資家の方は何が何だかよく理解できませんよと、こういう事態にもなりかねないわけですね。そういうこともあって、それからまた、非常にリスクの大きい商品を単品で買うよりも、合同したリスクを分散するようなものに入れて買ってもらった方がいいと、こういう発想があって間接金融型の直接金融ということをこれから重視すべきだと、こういうお考えなんだと思うんですが、今度は間接金融型、あるいは集合投資型商品そのものの理解をしてもらうというのが、これまた非常に難しいわけですね。
だんだんこれは難しくなってくるし、その商品自体は、先ほどのお話にもありましたけれども、非常にリスクの幅のある商品がどんどん出てくると。それを選択させるにはやっぱり個人の投資家の問題になると、こういうことになると、そこに多分問題が出てくると思いますね。
というのは、それでは、そこにきちんとしたディスクロージャーをするとか、危険を判定するとか、そういったものが集合型投資信託を作って売り出す人の責任にするということになるのかどうかということなんですね。それを非常に徹底させていくと、今度はそこの段階で何か非常に規制を入れて、こういった商品はリーテイル向けには売らないようにしようとか、そういうことまでいかなきゃならないと、こういうことになると思うんです。
それから、今度もう一つ、そういう集合型の投資信託を作って売り出す人も、これは大勢の人にどんどん入ってきてくださいと、こういう方向を指向しているわけでありますから、その中にも必ずしもきちんとした仕事をする人ばかりじゃないかもしらん。それ自体にまた問題が発生するかもしれない。こういう問題にもなるわけで、結局そこの間接金融型の証券投資、あるいは集合型投資商品に非常にアクセントを入れるということにおいても、その基本的な問題は引き続き残るような気がすると、こういうふうに思うんですが、以上が2番目の問題について考えです。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
ほかに御意見なり御感想なりございませんでしょうか。
どうぞ、木村さん。
○木村オブザーバー 賢い投資家の醸成という話がありましたけれども、実は賢い業者の育成という問題がございまして、非常に御迷惑をかけて、業者代表で。それで、賢い業者を作るためには基本的な物の考え方は競争促進であると。競争促進こそが賢い業者を作るというものの考え方が、これは流れ懇の中で統一的な見解で、その際蝋山先生生の話ですと、決済機能を持っているところと決済機能を持ってない金融業といいますか、後者については現に競争促進をしている。しかし、決済機能を持っているところは、これは競争促進には余りなじまないのではないかというような考え方があるように思いますが、それは競争促進こそ善であるといいますか、そういう物の考え方で流れ懇の流れも今進んでいると、賢い業者を作ると、そういうことでよろしいんでございますか。
○蝋山部会長 決済機能プラス決済機能をどういうふうなメカニズムで任せたらいいかという問題。それから、長期保障機能といいますか、あるいは吉野さんが指摘された非常に長期にわたって資産運用し、その成果を分配するという機能と、その二つは競争的な市場メカニズムに供給を任せたということだけでは難しいんではないだろうか。こういう認識はあります。
そして、純粋な資産運用の問題は、関さんの御指摘にもかかわらず、それなりの対応をうまくつけていけば競争的な環境の中で十分高い成果を上げることができるのではないか。それなりの対応というのは、例えば間接的な情報の流通をどういうふうに促していくかとか、そういうことで、まだまだ日本ではそういう点が不十分だと思いますけれども。
問題は、決済機能と長期所得保障機能のところをどうするかというところで難しい問題があるんだろうというふうに思います。そこまで競争に任せるということは私は無理だというふうに考えています。なぜなら、例えば預金保険機構みたいなものはどうお考えでしょうか。それはそういうものなしには済まされないわけでありまして、どうしても競争は純粋な競争ではなくなってきてしまうというふうに思います。
時間が余りありませんが、最後にもう1人御意見をインバイトしようと思いますけれども、何かございませんでしょうか。
森さん、どうぞ。
○森オブザーバー 感想に近いと思いますが、流れ懇で既に議論されたかもわかりませんけれども、お聞きしていまして、事業者団体のあり方というのが、我々として相当皆さんの御意見を踏まえ、自らも考えなきゃいけないなということを強く感じまして、特にディスクロであるとか、教育であるとか、具体的な行為規制が全て書けないとなれば、大部の法律ができない、そのとおりだと思いますし、作るべきじゃないということもそのとおりだと思いますが、そうした場合に、事業者団体をこれからどうしていくか。例えば業態別に今あるものをどうしていくか、機能としてどうしていくかということは、皆さんの御議論もさることながら、我々自身も考えていかなきゃいけないというふうに感じたというところでございます。
○蝋山部会長 今の森さんの御指摘は非常に大事な点であって、これからの金融機関は、業態が何であろうとも、銀行だろうが、保険だろうが、証券投資信託だろうが、みんな共通に、直接的ではないかもしれないけど、国民のマーケットに関する信頼というものを高めるような方向になっていないと、いずれはしっぺ返しが来る。もう既にしっぺ返しを受けているところもあると思うんですね。そういう点で各種の金融に関連する団体が、私の観点で言えば、一致協力して国民のマーケットに対する理解というものを高めるような働きかけをぜひしていただきたい。少なくともアメリカやイギリスと比べてみれば、随分そういう点で私は隔たりが大きいというふうに認識していますけれども。
○渡辺オブザーバー 関連です。
○蝋山部会長 どうぞ。
○渡辺オブザーバー 先ほど消費者関係からのいろんな御意見もありましたし、それから、先ほど企画課長の方から海外との比較のお話もございましたけれども、英国等の金融サービスの発展と、それから、業者ルールの発展の今までの経緯を見ますと、英国の場合は業者ルールが余り整備されていない中でいろんな問題が起こってしまって、それで金融サービス法が充実されていた。一方、我が国の方の発展を見ますと、間接金融を中心といたしました業者ルールというのが非常に歴史を持っておりますから、ある意味では消費者保護という視点では非常にルールが整備されてきた歴史があると思います。
そうしますと、単純に海外との比較の中で、今後の間接金融のあり方とか直接金融的な市場のルールに基づくルールを考える際には、英国とかアメリカのあり方という直接比較ではなくて、むしろ従来の間接金融におけるいろんな問題が起きた中で今のルール整備がどうして起きたのか、今のルールのあり方がどうなのか、こういった視点も十分念頭に置いた上で御議論いただければというふうに思います。
以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
今日はオブザーバーの方も来ていただきました初回でありまして、やや私の方の不手際もあってフラストレーションがそちら側は特にたまっておられるかもしれませんが、お許しいただきたい。徐々に改善していきたいというふうに思います。
前回と今回で自由討議、自由な御意見を頂戴したわけでありますけれども、これまでいただいた御意見をいろいろ整理いたしまして、私としては二つぐらいのワーキング・グループを作って、より具体的に議論を進めていきたいというふうに思います。今後としては、これからの金融サービス業といいますか、あるいはもう少しポイントを絞れば市場型間接金融機関、あるいはコレクティブ・インベストメント・サービス、資産運用業というものをどういうふうに考えたらいいのか、そして、既存の業との間の関係をどういうふうに整理していったらいいのか、こういう問題が一つあろうかというふうに思います。
もう一つは、マーケットの取引の形態は一様ではなくて、まだまだ非常に問題の多いエンドユーザーと直接対応するリーテイルのマーケット、それから、プロの間でのマーケットというものとは、やはりまたそれなりに性格が違う。それをどういうふうにバランスをとって一つのシステムとして融合させていくか。こういうようなテーマがあるのではないかというふうに思います。いわば業の問題とマーケットの問題というふうに非常に大づかみに言えば言えるのではないだろうか。
こんなことでテーマを分けまして、まだもう少しきちんと具体的に分けるときには詰めますけれども、ワーキング・グループを二つぐらい設けて議論を深めたいというふうに思います。そして、節目節目でワーキング・グループの議論の成果を部会に御報告いただき、部会でもんでまた戻っていくと、こういうことでフレキシブルにこの部会とワーキング・グループの間の共鳴を高めていきたいというふうに思っております。
ワーキング・グループ、どの方にお願いするか、前回私に一任させていただきましたけれども、今のところまだ事務局との調整段階にありまして、ほぼ大枠しか固まっておりません。具体的に細かい内容まで固まり次第御連絡を申し上げて、具体的な作業を開始したいと考えております。
このような形で進めたく思いますが、御異議ございませんでしょうか。よろしゅうございますか。
もしも業の問題を取り上げる、それから、マーケットの問題を取り上げる、私はこっちの方がいいという御希望がありましたら、ぜひ事務局の方に御連絡ください。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
それでは、次回の日程につきましては、津曲さん、よろしくお願いします。
○津曲調査室長
次回でございますが、1月に1回開催いたしたく考えております。日程といたしましては、1月の下旬、25日より後になるんじゃないかと思いますが、そういうことで考えております。テーマとしましては、ワーキング・グループの設置・検討状況とともに、前回と今回の御議論の内容を勘案して、また部会長と御相談しながら考えてまいりたいと思います。詳細は、追って事務局よりまた御連絡申し上げたいと思います。
ありがとうございました。
○蝋山部会長 そのとおりであります。どうか次回並びにワーキング・グループへの御参加、よろしくお願いしたいと思います。
どうも今日はありがとうございました。
(以 上)