金融審議会「第一部会」第3回会合議事録
日時:平成11年1月29日(金)10時00分〜12時03分
場所:大蔵省本庁舎(4階)第三特別会議室
○蝋山部会長 時間が参りましたので、ただいまから、第3回金融審議会「第一部会」を開催いたします。
御多用のところお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。
まず初めに、事務局のメンバーに変更がありましたので、三國谷課長から御紹介をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○三國谷企画課長 それでは、御紹介させていただきたいと存じますが、その経緯も御説明させていただきたいと存じます。
実は、昨年から債権流動化室長と法規担当参事官が空席になっておりました。と申しますのは、金融再生委員会、あるいはその前に準備室ができる等の経緯によりまして、当課の山崎参事官及び八田債権流動化室長が再生委員会へ繰り出しまして、その間空席になっておったわけでございます。今月に入りまして、主計局から兼務という形で2名、それからまた、理財局からも1名、兼務という形で増員をいただいたところでございます。御紹介させていただきます。
主計局文部担当主計官で債権流動化室長を兼務させていただきます細溝でございます。私の右手です。
○細溝債権流動化室長 細溝です。よろしくお願いします。
○三國谷企画課長 同じく主計局の給与課長で法規担当企画官を兼務させていただきます原でございます。
○原企画官 原でございます。よろしくお願いいたします。
○三國谷企画課長 なお、もう一人、理財局国有財産二課長で保険企画室長を担当いたします菅野というのがおりますが、本日はこの席には欠席させていただいております。事情を申し上げますれば、大変テーマが多いものでございますから、別途、生保の株式会社化に関しますワーキング・グループ等の審議もこの時間と並行して行われますので、お許しいただきたいと思います。
なお、国会開会中でございまして、幹部席、出入りがあろうかと思いますが、その辺もお許しいただきたいと思います。
以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
お二人の方、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、議事次第に従いまして、今日の議事を進めさせていただきます。
今日は、「21世紀の金融のあり方」と、非常に大上段にかぶったテーマですけれども、こういうテーマの下にお二人のゲストスピーカーからお話を伺い、質疑をし、我々の共通の理解を深めたいと考えている次第であります。
お一人は、野村総合研究所の淵田資本市場研究室長より、「21世紀の金融業の展望」ということでお話をお願いしております。引き続きまして、東京三菱銀行田中取締役業務企画部長より、「銀行の投信等リスク商品のリーテイル販売における留意点」ということで、12月から始まりました投信の銀行での販売ということを巡りまして、どういう点をお考えになってきたかお話をいただき、我々の問題を提起していただければ幸いだというふうに思います。
質疑応答、自由討議につきましては、まとめて行いたいと思います。まず、お話を伺った後、まとめて行いたいと思いますので、どうぞよろしく御協力をお願いいたします。
それでは、淵田さん、お願いいたします。
○野村総研淵田資本市場研究室長 ただいま御紹介いただきました淵田でございます。
21世紀を展望すると申しましても、ある意味では、わずか2年後のことでもありますし、また、ある意味では
100年続く話でもございますので、展望するのも大変難しいわけでございますけれども、日本語訳で「21世紀の金融業」という、ちょうど同じタイトルの米国財務省レポートがありますけれども、その中に、「未来を語り始めるのに最も意味のある場所は現在である」という言葉がありますので、そこで、現在現れております動きをまず確認するところから始めたいと思っております。
これにつきましては、昨年10月の新しい金融の流れの懇談会の第3回目に私が申させていただいたことを、いま一度、ごく簡単に繰り返すところから始めたいと思います。
3ページ目をお開きいただけますでしょうか。今、いろいろな見方があると思いますが、私なりにまとめますと、金融仲介ビジネスの拡大と融合ということが起きているのではないかと思っております。
一つは、異なる業態間の融合。銀行、証券、保険、運用会社を巡る買収、合併の活発化がここ数年、大変活発に起きておるわけであります。それから、同じ業態の中でも、ホールセール・ビジネスとリーテイル・ビジネスの融合といったことも見られます。
2番目に、金融機関の規模の拡大。
3番目に、異業種との融合。金融仲介機関と情報テクノロジー会社とか小売産業、この境目が何となく曖昧になりつつあるのではないかということであります。
4番目に、複数の業態の相乗り商品・サービスの拡大。他業態類似商品・サービスの拡大。例えば、デリバティブとか年金関連業務というのは相乗りでいろいろ行われているわけでありますし、あるいは投信類似の保険商品・預金商品というものも出ているわけであります。
5番目に、投資対象、投資手段の拡大。デリバティブとか証券化とか、あるいはオルタナティブという代替的投資商品がございます。これは、例えばベンチャーキャピタルですとかヘッジファンドとか、そういった類のものであります。つまり伝統的な株とか債券とかいう括りから、もっと外れた様々なタイプの金融商品がどんどん普及している時代になっているということかと思います。
6番目に、金融仲介ビジネスのグローバルな拡大と融合。すなわち、から
で述べたような動きが一国にとどまらず、グローバルな規模で展開されているということであります。
なぜこういうことが起きているかということを図にしましたのが4ページでありまして、4ページの右端に「金融仲介の拡大と融合の背景」ということで、今述べました六つのトレンドを記入してあります。そして、それぞれのトレンドを引き起こしています金融仲介機関としての事情が真ん中にあります。これは、例えば「規模の経済の追及」があります。したがって、規模の経済を追及する上で規模拡大を目指しているという流れが一つあり、また同時に、それはグローバルに拡大を目指す動きにつながっているわけであります。
そして、そもそも、例えば、なぜ規模の経済が生まれているかと申しますと、一番左の枠の中にあります「テクノロジーの発達」であります。ネットワークを使った金融取引が拡大していることでありまして、それから、もう一つ、テクノロジーの横に「規制緩和」ということが書いてあります。こうした規制緩和とかテクノロジーの発達ということのさらに背後にありますのが、一番下にあります「ユーザーのニーズ」というものになると思います。したがって、ここで強調したいことは、今起きている変化というものは構造的で、かつ不可逆的なトレンドとして続いていくのではないかということであります。
このような点は、既に新しい金融の流れの論点整理という形で、よりきれいにまとめられているわけでありますが、私なりに再確認させていただいた次第であります。
5ページ、6ページでありますが、こういう図を使った発表を昨年10月にしましてから、わずか数カ月でありますが、この間も世界の金融業は日進月歩しているわけでありまして、この6ページ目以降は、新しい金融の諸断面という形で、できるだけ目新しそうな話題をオムニバス的にピックアップしてまいりました。そして、多角的に今日の金融を捉えようという趣旨であります。
6ページ目でありますが、まず第1の話題は、「コンシューマー・グッズとしての預金・貸出」というふうに書いてあります。イギリスで最大手の生命保険会社プルデンシャル、ここが個人向け金融サービス、「Egg
」という名前なわけですけれども、それが大変注目を集めておりまして、去年の10月にスタートしました。これはインターネットと電話を通じまして、預金、住宅ローン、消費者ローンを提供する。将来的には保険とか投資商品、旅行などの情報サービスもしましょうということであります。
組織上は、ここの銀行子会社のプルデンシャル・バンキングの一部であるんですが、完全に独立した組織でありますEgg
というところがサービスを提供する。ターゲットは、金融機関に対するロイヤリティが低くて、商品の条件に敏感に反応し、インターネットを使いなれている層。若者を意識した商品設計でありまして、テレビコマーシャルなども、そういうのを狙った戦略を活発にやっているようであります。
既存顧客層と異なる層をターゲットにするために、親会社の名前をサービス提供主体から外す。「Egg
」というのは組織名であり、かつ、商品サービス名であります。こうした例は、例えばミッドランド銀行がテレフォンバンキング専門子会社を作りましたが、この名前が「ファースト・ダイレクト」、バークレイズが投信直販子会社を作りましたが、これは「b2」とかという名前なようで、何のことだかさっぱりわかりませんが、このインターネットのサイトは親会社のホームページもリンクしない。何か全く違ったイメージで顧客に訴えようという発想のようでして、金融機関としては珍しいですけど、よく考えますと、アパレルですとか食品のチェーン会社、食品業界などではよく見られるような普通のマーケティングの手段なのかもしれません。
2番目の話題としまして、7ページ、「個人にとっての金融仲介者の変化」ということを記してあります。
まず一つは、「インターネット」であります。
アメリカでは、個人の株式取引の25%がインターネット取引に昨年中なった。これは年間を通してでありますので、一説によりますと、10−12月期はもう3割を超えたんじゃないかという話もあります。これによって、営業マンを抱えるフルサービス証券会社というのは、当然戦略転換を迫られております。
そして、これは単に金融機関がそういうサイトを提供するというだけでありませんで、インターネット会社のPortalサイトと俗に言われます入口のサイト、そこが顧客の接点として重要になっていると言われております。ここがほかのいろいろなサービスと並べまして、例えば検索サービスと並べまして、ニュースとか株価とか金利、為替、あるいはリサーチ、会社情報、ローン計算のシミュレーションとか、投信の選択のアドバイス的なもの、あるいはポートフォリオ診断的なものを提供できる。そういう仕組みを提供しているということですが、それに加えて様々な銀行とか、あるいは証券会社、保険会社などのページに行ける入口になっているということであります。
しかも、これは単なる多数の金融機関への入口ではなくて、特定の金融機関とこのPortal業者というのがエクスプルーシブなアライアンスを結ぶという例が見られております。昨年の8月にシティバンクがネットスケープと提携したり、あるいは11月にBankOne
とExciteという、これも検索で有名なところですけれども、提携するといった、専属銀行といいますか、どちらがどちらに対する専属かわかりませんけれども、非常に融合的な動きが見られているということであります。
ある予測によりますと、2002年には全米世帯の46%がインターネットに接続する。すなわち、これはある人の言い方で、全米の半分の家庭の中に金融機関の支店が開設されることを意味するんだという言い方もされております。
7ページの右でありますが、もう一つの動きとして、「独立型営業マン」という動きもあります。
アメリカでは、証券会社の従業員になるのではなくて、証券会社と契約を結び、証券・金融商品を提供するインディペンデント・コントラクターという者が6万
3,000人ほどいるようでありまして、注文執行とか決済とか、教育・研修とか監督、規制順守、その他営業支援サービスを契約先の証券会社から得まして、この分、手数料を10%その証券会社に払う。しかし、残り90%は自分の手元に残るというタイプの業務であります。最近、大手証券会社のトップ営業マンが転身したり、あるいは保険会社が変額年金とか証券商品の販売チャネルとして彼らに着目するという動きも見られます。そして、投資信託とか変額年金中心に、アセットアロケーションに重点を置いたサービスを提供する。
背景としまして、勤務先の証券会社の推奨銘柄とかお仕着せの商品ではなくて、地域に密着して、自らの手腕を武器に顧客本位のファイナンシャルプランニングをすると、そういう姿勢が、老後に向けた資産形成を重視するベビーブーマー層に受け入れられているのではないか。大証券よりも地元で信頼できるプロという、左側はコンピュータの端末が前面に出るわけですけれども、右側は人間が前面に出た、そういうサービスがそれぞれ受け入れられるということであります。ただ、この人間が出たサービスというものも、右下に書いてありますように、情報テクノロジーが発達して、自前の小さな事務所をベースにしても、大手証券会社の営業マンと遜色のない業務環境が確立できるといったことが背景にあるということのようです。
3番目の話題としまして、変額年金。
変額年金と申しますと、年金額が変動する年金であって、変額保険の年金版だろうというふうにお思いになるかもしれません。確かにそうでありますが、それだけではありませんで、まず、アメリカの場合、これを販売するのは保険会社だけでありません。ちょっと薄くなっておりますが、左側の図の一番左端の方に、投資家に誰が販売しているかとあります。販売業者は、保険会社のエージェントもありますけれども、銀行あるいは信用組合、証券会社も販売しております。
では、この商品を誰が作っているかといいますと、誰が運用しているかといいますと、保険会社の特別勘定の中のサブアカウントもありますけれども、ミューチュアル・ファンドがそのまま入っているということもあります。しかも、投資家がこのファンド間で乗り換えができるということがあります。
401Kが今話題ですけれども、それの保険版といいますか、年金版といいますか、保険会社が提供する商品として、そういう形になっているわけであります。
真ん中の保険会社の立場で見ますと、保険会社の人間だけではなくて、銀行、証券を使って販売するわけでありますし、それから、運用は、投資会社が運用する投資信託というのがかなりの割合で入っているわけです。ただ、あくまでこれは年金商品ですので、いわば投資信託のキャッシュ・フローというものを年金のキャッシュ・フローに替える仕組みと。そのために保険会社の機能が使われているということかと思います。
右の表にありますように、ミューチュアル・ファンドの販売先というのに変額年金が入っていまして、これが97年で1割。投資信託の販売先が変額年金だという、これは一見するとよくわからなくなるんですけれども、重要な販売チャネルが変額年金になっている。投資信託の販売チャネルが変額年金になっているということであります。
逆に、変額年金がどうやって販売されているかといいますと、独立したエージェンシー、専属エージェンシー、保険会社の従業員というケースもありますけれども、銀行・信用組合、直接販売、それから地方証券会社、大手証券会社。この地方証券会社、大手証券会社の比率が、2000年に向けてもっと高まっていくだろうというふうに予測されております。
4番目の話題としまして、9ページに「金融仲介の多層化」ということが書いてあります。
間接金融から直接金融とかよく言われますけれども、一方で、間接金融がどんどん間接化していくといったような動きもあるのではないかということでありまして、昨年ヘッジファンドが話題になりましたけれども、日本にも過去数年、かなりの量のヘッジファンドが流入しております。
どういう形かというと、一番左端の→印のように、特定のファンド会社が日本に持ち込むというケースもございますけれども、普通、ヘッジファンドあるいは様々なベンチャーキャピタルも含めまして、コンサルタント会社というのが門番(ゲートキーパー)になっておりまして、そこを通じてアクセスするというのが一般的であります。しかも、それもコンサルタント会社が日本に来るというよりも、通常は、例えば日本の証券会社、外資系も含めまして、日本にある拠点がお客様に勧誘して、これは外国の拠点と自社の拠点と連絡をとりながら、その拠点が、どのコンサルタントがちゃんとしたコンサルタントかを選ぶ。そのコンサルタントはまた、どのファンド会社が一番良いかを選ぶ。場合によってはそれを組合せて、ファンド・オブ・ファンズという形の新たな商品に仕立てて、そして売っているわけであります。それを証券会社の海外拠点がまたいろいろ選択し、またそれを日本に持ち込み販売していくと、こういう多層的な姿になっているということであります。
ですから、一口に金融仲介と申しましても、実は何層もの間接金融の機能が働いているということかと思います。こういう幾つもの金融機関が複雑に関わり合いまして、役割分担をしながら、初めて一つの商品がお客さんのもとに届くという姿であります。
5番目の話題としまして、10ページでありますが、ある商品の販売において、今はプレーヤーが様々に関わるという例を御紹介したわけですけれども、この10ページで書いてありますのは、本質的には同じ商品が様々な形の商品の形態で販売されるという例でありまして、ベンチャーキャピタルとか、バイアウトファンド、ディストレストファンド、あるいはヘッジファンドでもいいんですけれども、こういうものがどういう形で日本に持ち込まれるか。これを商品サイドで見ますと、よくある形は、バミューダとかケイマンにSPCを作る。そこが私募債(パフォーマンス・リンク・ノート)といったものの形態にする。そして日本において、有価証券ですから証券会社が販売するという形もありますし、あるいはルクセンブルグ。バミューダ、ケイマンというよりはルクセンブルグにユニットトラストを設立しまして、そこがユニットトラストですので私募外国投信という形で日本に持ち込まれる。いずれも証券会社は有価証券しか扱いませんので、逆にその制約上、ユニットトラストとかSPCという形を通じるという形になるわけであります。
ただ、もともとこうしたファンドは様々な形をとります。リミテッド・パートナーシップとかリミテッド・コーポレーションとか、様々な形をとりますので、直接そこに投資してしまうというケースもあります。例えばそれは、日本の銀行が今、プライベート・バンキングというのを強化しております。「日本の銀行が」と言いますが、外資系の銀行の日本の会社もありますけれども、そこがそういう業務を強化する中で、お客様からお金を預かり、それを海外に送金し、それがこうしたリミテッド・コーポレーションなりリミテッド・パートナーシップに投資されるという形があります。これも別に銀行だけではなくて、各種のコンサルティング会社的なものが海外での資金運用を指南するといったような世界が、最近よく耳にされるわけでありますけれども、この辺、実態はよく承知しておりませんけれども、海外送金とか、海外に直接預金という世界が大変自由度が高まりましたので、こういう世界が広がっているような可能性があります。
つまり、根っこにありますのは全く同じキャッシュ・フローの投資機会なんですけれども、それが、あるものは債券、あるものは投資信託、あるいは一種の預金的なイメージ。ここに「預金者」と書いたのは適切ではないかもしれませんけれども、プライベート・バンキングのビジネスとしてアセット・マネジメントというサービスの一環で外に流れているということかと思いますが、債券、投資信託、あるいは海外送金か海外運用といった形で日本のお客様に勧誘されている。
債券や投資信託形態をとった場合は、日本の証券会社が証取法の規制の下で勧誘するわけでありますけれども、全く別の形で銀行やコンサルタントが勧誘する場合もあるということであります。
第6の話題でありますが、11ページ、所有と経営の分離ではなくて融合的なものもあるんじゃないか。
今、アメリカのベンチャー・キャピタルなどはリミテッド・パートナーシップの形態でありますが、これがベンチャー企業にお金を投入する重要な役割を果たしているわけですが、これは単純にお金を出すということではないわけであります。むしろ経営に入り込む。そして何年間も持つ。これは市場性がないです。流動性がありません。そして、資金を出す人と受ける人の相対交渉の世界であり、お金を出すだけではなくて、例えば経営のコンサルティング、技術指導、あるいは財務戦略の指導、経営に密接に関わって、そして何年かして、その企業の価値を高めていく。単に市場がどう動くかではなくて、自ら投資対象の価値を高めることによって、その投資の価値を、プロフィットを得ようという考え方であります。
そして、このリミテッド・パートナーシップはジェネラル・パートナーとリミテッド・パートナーと。リミテッド・パートナーは年金が大きな資金源でありますけれども、ここはここでまたジェネラル・パートナーをモニターするというガバナンスが働いているわけであります。いずれも、これは単にお金を出すだけの世界ではなくて、しかも流動性のない世界であります。マーケットとはちょっと違う、直接相対交渉の世界であります。こういうことをやっている人間に聞きますと、我々はファイナンシャル・エンジニアリングをやっているんじゃない。ビジネス・ビルディングをやっているんだと。金融仲介機関という姿とはかなり違う。しかし、大事な金融仲介を果たしているというふうに言えるように思います。
最後、7番目でありますが、「銀行(?)を目指す年金」というふうに書いてありますが、昨年、カルパースのオルタナティブを投資している人に9月に会いましたが、彼が言っていたことは、「今後は、オルタナティブ投資の過半において、国内外の大手企業と直接にファイナンシングを交渉するような形態をとることも考えている。そうすることによって魅力的なリターンが得られ、流動性という点についても、我々がファイナンスする相手にとっても多様な形態のものを大規模に提供できるようになる。これは自分たちの受託者責任義務にも合致するんだ」と。あるいは、「我々は将来、もっと多くの企業に直接的に資金を供給するようになる。ある意味で銀行のような役割を果たす機関になるというふうに考えている」ということを言っていたわけであります。
以上、いろんな角度からスポットライトを当ててみたわけですが、そこから浮かび上がることは何であろうかということを、14ページ、15ページでまとめてあります。
一つは、金融が普通の産業にまた一歩近づいているのではないか。
ブランド・マネジメント、データベース・マーケティング、販売チャネルの変革といった点で、リーテイル金融業というのは普通のコンシューマー・インダストリーにおける企業経営と同様のアプローチが活発化する時代になっている。
一方で、グローバルに展開する金融サービス業というのも登場しつつあるわけですけれども、ホールセール・ビジネスのグローバル化というのが今までは中心であったように思います。しかし、今はどんどんリーテイルでもグローバル金融サービス・プロバイダーというものが台頭していくのかなと思います。
ようやくそれは21世紀において、金融サービス業というものも真の意味でグローバル産業になるのかなということを意味しているのかと思っております。
20世紀において、自動車とか食品業界において様々なグローバル企業が登場したわけでありますけれども、金融業の世界では、本当の意味でここまでグローバルに浸透した企業というのはなかったのではないか。それがようやく出てくるのかな。これは、やはり各国での規制緩和というものが一つの背景になっているのかと思います。
一方で、金融サービス業者が提供する金融サービスではなくて、情報サービス業の一環としての金融サービスも登場する。金融サービスが情報サービス・パッケージの1パーツになるような動きも見られるということであります。
15ページでありますが、それで、一体どういう産業になっていくんだろうか。これは本当にわからない世界ですけれども、ただ、何となくですが、先ほど申したように、グローバルな金融サービス業者というのもいる。インターネットでやる人もいる。しかし、一方で地域密着の信頼される個人。組織ではなくて、個人がリーテイル金融サービスの前面に出るという現象も、インディペンデント・コントラクターで見たように現れているわけであります。
そういうふうに考えますと、金融サービス業というものが、よりほかの普通の産業に近づくとしましても、さらなるグローバル化、寡占化が進んでおります自動車産業という形ではなくて、一定の巨大企業もあるんだけれども、各種のローカル業者とか職人的な人たちも支持されるような食品産業、そんな姿にひょっとしたら近いのかなと、漠然と思った次第であります。
「制度論への示唆は?」ということで、これは私が申すことではないかもしれませんけれども、金融商品、金融サービスというのはどんどん多様になっていく。一概に「証券化」、「市場型間接金融化」と、あえてこんなことを言わせていただきますと、一概にそういうふうに言えないような側面もあるのかなと。むしろ間接金融的なもの、相対交渉で、かつ、市場とはまた外れたようなものの世界も大分広がっているのかなというふうに思います。一言で言って、多様であるということかと思います。
ですから、重要なことは、こうした金融及び金融サービス業の多様性というものを受容して、活発な競争と革新を促進していくということに尽きるのかなと思いました。
この多様性というのは、日本においても重要かなと思っています。
この点は、一昨年の証券取引審議会総合部会の最終報告におきまして、「豊かで多様な21世紀の実現のために」というタイトルが付いてあった次第でありまして、まさに「多様性」というのがキーワードになっていたわけであります。しかしながら、まだまだ日本の金融は多様でないような気がしまして、ここでは二つだけ例を挙げました。
一つは、余り今までの議論で強調されていなかった分野として、オルタナティブというものがあるのかな。私は、かなり大げさに言いますと、今の日本経済はオルタナティブを必要としているのではないか。ヘッジファンド、ベンチャーキャピタル、バイアウトファンド、ディストレストファンド、それぞれ今、日本で抱えております投資家がリターンが低いといった悩みとか、あるいは新興企業にお金が流れないといった悩みとか、成熟企業がリストラするための事業再編の資金がないとか、あるいは破綻してしまった企業においては、その破綻処理をどう進めるかとか、それぞれお金が関わることですけれども、そういうことにお金を流す仕組みこそ、このオルタナティブ的なものであります。伝統的な金融仲介とまた違った世界であります。
それから、もう一つ、これは余り適切な例ではないんですが、たまたま思いついたので、ちょっと触れさせていただきますと、18ページ、「日・米のサービサー」と書いてありますけれども、今の日本の金融の問題を若干象徴しているのかと思いますが、日本のサービサーというのは新しい業として導入された。そして新しい業者ができた。許可要件も厳格である。専業義務もある。アメリカは、ノンバンクが兼業でやっているような仕事であって、したがって、証券化において重要なプレーヤーになれるわけであります。日本はどうも違うようだ。
もちろん、これは様々な事情があったことをある程度私も承知しております。弁護司法の問題とかですね。ですから、これは金融法制とか金融行政の問題ということで持ち出しているわけではないかもしれませんが、傍目で見て、出来上がった姿だけ見ますと、アメリカでは自由に活動するある種の金融仲介者というものが、日本では極めて制約ある形でしか存在し得ないということには変わらないんじゃないのかなと。ビッグバンで業務範囲の規制緩和、競争促進という流れが大きくスタートしているわけでありますが、その中で新たにこういう世界がまた再生産されてしまうのかなというふうに感じております。
最後のページでありますが、別に私は、ここでオルタナティブにも我々は対応すべきだとか、あるいは、できたばかりのサービサー法を見直すべきだとかいうことを主張したいわけではありません。申し上げたいことは、そういう個別問題対応型のアプローチを続けていっても、本当の問題はなかなか解決しにくいのかなという大ざっぱな印象でございます。
競争的で革新的な金融サービスの促進が望まれるわけでありますが、現状は、ビッグバンが進展している一方で、縦割りで狭く定義された「業者」の再生産が続いているような世界もあるということであります。
多様な金融を包摂できる枠組みが重要かと思われますけれども、そのときに、どういうタイプの金融の流れ、あるいはどういうタイプの金融サービス業がこれから中心になっていくのかということを単純に予見することは難しいのではないかと思います。
そのときに、やはり金融の何が特殊で、なぜ普通の産業と異なる法規制が必要なのかという視点も同時に大事かと思いまして、新しい枠組みを何らかのアプローチで作ったとしても、願わくば、それが新しい「業者」をまた作ってしまうことにならないようにしなければいけないのかなと思っております。
最後、素人考えでありますが、先ほど、金融業というのが普通の産業に近づくとしまして、自動車産業よりもひょっとしたら食品産業的になるのかと申しました。しかし、人の命に関わります食品ビジネスにおける規制以上に、ひょっとして金融の世界、つまり命から2番目に大切と言われるお金に関わるビジネスにおいて競争や革新が不十分であるとしますと、やはり何か規制の枠組みに改善の余地があるのではないかと思っている次第であります。
若干時間を超過しましたが、以上で私の話を終わらせていただきます。
○蝋山部会長 どうもありがとうございました。
いつもながらというか、大変明快なメッセージであったと思います。ありがとうございました。
それでは、引き続きまして、田中さん、よろしくお願いいたします。
○東京三菱銀行田中取締役業務企画部長 東京三菱銀行の田中でございます。本日は、このような格好で、事務局の方から、銀行におけるリスク商品の販売について説明するようにとのテーマをいただきまして、本社の立場といたしまして、私どもは例の全国銀行協会連合会の会長行でございますが、今日は東京三菱銀行という個別行の立場から、また、私は営業店を預かる実務サイドでございますので、実務担当者という立場からいろいろお話ができればというふうに思っております。
それでは、早速でございますが、私どもが12月1日に販売開始いたしました投資信託を例にいたしまして、リスク商品の販売に関してどんなことを留意したかということについて、お手元のレジュメをお配りしておりますが、7項目に分けてお話しできればというふうに思っております。
最初の、私どもの基本戦略を策定するときに、どういうことを留意したかということでございますが、私どもは、まず、投信そのものは私どもにとって当然のことに新商品でございまして、それについての現状認識について、次のような考え方を持っておりました。ということで、投資信託そのものは、その販売状況、現在は不振でございます。その理由としては、株式市況の低迷というマーケット環境が恵まれなかったということもございますが、それ以上に、過去の無理な回転販売とか、販売時における商品説明の不足とか、さらには運用会社のディスクロージャーの不足等々、本来、その魅力ある商品性というのを十分理解されなかったというふうな問題意識を持ってスタートしたわけであります。
その結果、まず、基本戦略として三つのことをセットしております。
まず、第1には、長期的な預かり資産の残高の拡充を図ろうということでございまして、過去のいわゆる手数料追求主義ということは排除しようということが第1の考え方であります。
第2は、当面スタートに当たりまして、お客様を選ぶ必要があるということで、資産家層を積極的なアプローチの対象といたしました。その背景としまして、やはりリスク商品への投資経験が比較的豊富であるということと、万が一のリスクに当たった場合の余裕資金や、そのリスク許容度というのが高いというふうに考えたわけであります。
第3点が、これは法的に定められたレベル以上の販売ルールというのを徹底する必要があるなということであります。その背景としましては、御存知のように、銀行の場合には元来、元本リスクのない預金というものを中心に扱ってきたわけでございまして、その結果、お客様の方にも、銀行で購入する商品は安全であるという意識がございますし、一方、銀行の方にも、販売担当者がリスク商品の販売経験が少ないと、そういう事情がございます。それに加えて、従来、投資信託は証券会社で取り扱われていたわけでございますが、証券会社の場合、銀行に比べれば来店客がある程度限られておって、また、特定の顧客層というふうに想定されます。一方、銀行の場合には、来店客層は1日に数千人にも及ぶわけでありまして、窓口でお客さんを特定するということは不可能であります。そういうふうな事情もありまして、いわゆる販売の体制とか、商品のラインナップとか、ルール等々の面について、行員教育を徹底していこうというところでございます。
そのようなところが基本的なスタート台でございますが、第2の販売体制についてでございますが、私どもは三つの販売チャネルのルートを設けております。
第1には、49カ店のいわゆる常設の窓口を設けたルートでございまして、第2が、これは全店
313カ店ございますが、個人担当の外訪による販売のルートであります。第3が、これは有人対応の補完という意味で、テレフォンバンキングのルートということでセットしてあります。
その中で、まず、49カ店での常設窓口の店における留意点ということで御説明いたしますと、今お手元の近くに、私どもの今回開きました店の状況を写真にしたものが回っていると思いますが、まずいろいろと、いわゆる預金商品との誤認を防止するというために様々な工夫を凝らしているわけであります。
まず、カウンターについてですが、これは独立したブースを設けられればいいんですが、それができないというふうな状況にございまして、その結果、窓口には「投資信託」という大きな窓口表示を、右上の写真で御覧のようになっています。また、リスク商品取扱い窓口であるということで、それをうたった表示板を付けております。また、視覚的な工夫を凝らすためにカウンターの色を変えております。左上の写真の一番奥のところが変わったところでございますが、また番号札。これは、お客様がお待ちいただくとき、番号札を持ってお待ちいただくんですが、その番号札のボタンを預金と分けて独立させたり、また、販売員の制服を別にあつらえております。これは右下の方でございますが、また、名札も通常の名札の4倍の大きさにしておりまして、識別性をはっきりさせようというところが主たるところでございます。
それで、外訪のルートでどういうところを苦心したかといいますと、いわゆる外訪の中で資産運用相談業務の要員、これはよくフィナンシャル・プランナーというふうに言われていますが、それを各店に少なくとも1名指名付けしておりまして、その人間に対する教育・研修というのを施しておりまして、その人間をコアにしまして、各店に戻って店内勉強会ということで、店内全員へのノウハウの浸透を図ると、こういうふうな格好でございます。
最後のテレフォンバンキングのルートでございますが、これは先ほどの有人対応の補完という位置づけでございまして、基本的には簡単な商品説明とか、資料請求受付というのが主体でございますが、新規の商品販売についての要請があった場合には、有人店舗の方で御利用いただくというふうな誘導を行いますが、追加購入とか中途換金とかというのは、電話でもできるというふうな体制をとっております。
続いて、3.のところで、商品ラインナップを行った際の留意点でございますが、これについては、お手元に私どものパンフレットで、「東京三菱ファンド ラインナップ」というのをお配りしてありますが、特にここで留意いたしましたのは、とにかくお客さんが自己責任で商品を選択するということでございますが、その選択の際に制約を生じないようにするというところに留意しております。
その結果、一つには、リスク度というのがございます。このパンフレットで「RR」で表示してありますが、私どものRRの1から4までですが、リスク度に応じて、また、投資商品のカテゴリー、これは株とか債券とか、また、国別で言うと日本、米国、欧州とか、また、世界中やったグローバルと、各々の商品カテゴリーがあるわけですが、そのようにリスクカテゴリー、商品カテゴリーを一応網羅的に品ぞろえするというところが一つのポイントでございます。ただ、私どもの場合は、投機的な性格の強い商品ということで「RR5」は扱っておりませんし、また、アジア等のカントリーリスクの高い商品というのは除外しております。
一方、もう一つの配慮のポイントは、現段階では、お客様の商品性に対する理解度もまだ低いというふうに考えられますし、また、販売員の習熟度もまだ低いというふうに考えておりまして、その結果、各カテゴリーごとに複数商品を並べない。逆に言うと、1カテゴリー1商品というふうな格好で絞り込んでいるということでございます。
また、運用会社を各々商品のときに選ぶわけですが、私どもは、グループの投信委託会社、東京三菱投信投資顧問というところで11商品中の9商品をそろえております。そこでカバーできないカテゴリーについて、ほかの投信委託会社の商品を使うというふうな格好をとっておるんですが、その理由は、いわゆる製造から販売まで極力一貫して、投資家向けに説明対応ができる体制をしようというところでございます。その結果、他の投信委託会社を選定するに際しましても、その選定基準としましては、運用力というのはもちろんでございますが、いわゆるファンドに関する情報について、販売員に対するサポート体制とか、また、法定の運用報告書以外の終時の運用レポートの提供等々といった、二フォロー体制の充実等々もその選定基準の一つというふうに考えて選定したわけでございます。
第4の販売ルール、では、具体的にどんな販売ルールにしているかというところでございますが、これは受益証券説明書に沿って商品説明をするというふうな法律上要求されているものに加えて、私どもとして独自に幾つかの対応を行っております。お手元に「質問票」というのが、アンケート用紙で付いているのを御覧いただければと思いますが、これは販売するときに、都度、お客さんにこの質問票を記入していただくということをやっております。お客さんの属性といいますか、特に年齢とか、投資経験とか、投資の目的とか、リスク許容度等々について、まず必ず聞こうというふうなことをとっているんですが、その中で「必須項目」というふうに並べているものとその他のものと、こういうふうな格好で一応分けております。特に必須項目に回答のない場合は、私どもの方から能動的にはリスク商品は売らないというふうな対応をとっておりますし、また、リスク許容度がないというふうに判断された場合には、売る商品もかなり限定するというふうな販売ルールをとっております。
ただ、お客様が質問票の回答と矛盾する商品を希望するということも想定されたわけでありまして、その場合にはどうするかということでございますが、一応再度、質問票の内容とお客様の希望の相違点というのを確認するという作業を必ず付けようということでございまして、その場合に納得したという際には、販売を行っても可能というふうな格好にしております。ただ、その場合には、その経緯とか記録というのを必ず保管する手続をセットしております。
それと、販売ルールの第2の留意点というところですが、高齢者とか未成年者への特別な配慮ということで、特に高齢者の場合には、一般的にはリスク許容度が低いわけでございまして、70歳以上のお客様に対しては、私どもの方から能動的なセールスは控えるというふうなルールをとっておりますし、また、未成年との取引の場合には、親権者等法定代理人との取引というのを条件として進めているということでございます。
第3のポイントですが、これは、確認書の徴求を行っております。これもお手元のところに「確認書」ということでお配りしてありますが、新たな商品を購入するたびに、少なくともここでは三つの点でお客様の意向を確認しております。要すれば、これは預金保険の対象外であること。第2には、元本保証がないこと。また、第3には、元本をひっくるめたリスクは購入者側が負担を負うこと、ということでございまして、それについては確認書にお客様の署名捺印をいただくというふうな格好をとっておりまして、それに加えまして、口頭での投資者保護基金の対象外であるということを、また改めて確認するというふうなことをやっております。
最後に、販売ルールを逸脱するケースということも先ほどのように考えられるわけでありまして、その場合、将来のトラブル等々も発生するわけでございます。そういうこともありまして、いわゆる顧客管理の管理カードとか、面談交渉記録というのは、いわゆる「整備・保管」という格好での義務づけを行っております。
第5点のところで、教育研修でございますが、このたびは、ある意味では大変なコストをかけて教育研修に力を入れております。販売開始に向けて、延べ
1,800人を対象にした研修を行っておりまして、具体的には、支店長・副支店長クラスの管理者層とか、事務回りの営業課というのがありますが、そこの役付層とか、個人取引の外訪、また、窓口販売担当者等々、各々の職階、職域に分けて、いわゆる投資家の自己責任原則の問題とか、情報開示及び説明義務の必要性とか、投資適合性の原則とか、預金誤認の問題等々、かなり網羅的に周知徹底を行うというところに力点を置いております。
その中でも、特に窓口の販売担当者というところには、また力を入れておりまして、ここには証券会社からの中途採用の人とプロパーの人が半々ぐらいいるわけですが、証券会社の人には、特に証券会社と銀行の販売姿勢の違いというのを理解していただくところに力点を置きまして、また一方、プロパーの販売員に対しては、そもそもの基本的な販売手法というのを中心に、約1カ月半に及ぶ集合研修を行いました。この1カ月半というのは、私ども新入行員の導入研修というのはやはり1カ月ぐらいやりますが、いわゆる例のない長期間の研修ということを行ったわけであります。
以上のような販売ルール、教育体制ということで行いましたが、その第6の項目で、実際の販売状況について御説明しますと、販売概況につきましては、今のように、かなり自然体で慎重な販売スタンスということでスタートしたこともありまして、現状、トラブルとかクレームは一切ございません。また、全体としても静かなスタートを切ったというふうな印象でございますが、商品別に販売状況を見ますと、やはりリスクの低い短期の公社債商品、RR1というレベルですが、それが約半数を占めております。ただ、残り半数というのは、例えば日経インデックス型の商品。これは商品性が理解しやすいというところかと思いますが、また、日本株が底値感があるということで、日本株のアクティブ型運用商品。また、ユーロ市場がスタートしたということもありまして、また、それへの期待感ということがあったかと思いますが、欧州株の商品等々、比較的リスクの高い商品も相応にニーズがあるかなというふうな感触を持っております。
ただ、実際に販売してみて、幾つかの問題点というのを気が付いておりまして、幾つか申し上げますと、先ほどの質問票への回答とか、確認書をいただくとかということについては、やはり手続が煩雑である。また、個人情報への踏み込みに対する一種の警戒感とか、そういうものが感じられました。こういうふうな手法が根付くためには、もう少し時間が必要なのかなというふうに思っております。
また、一方で、先ほどのように説明を十分にするということも徹底した結果、1人のお客様当たりの説明時間というのが最低40分から1時間、複数の商品を御説明する場合には数時間というふうなケースがございまして、それもかなりちょっと問題かなと。加えて、総じてリスクを前面にした説明をするというふうな格好をとった結果、お客さんの投資ニーズ自体を冷やしてしまうというふうなケースもございまして、やはり商品のリスクだけではなくて、メリットに関していかに正確に、かつ効果的に説明するかというには、もう少し販売員の慣れというのが必要かなというふうに思っております。
最後に、7番目で、今後の展望と課題ということで若干考えておることを申し上げたいと思いますが、まず、今後の投信市場の拡大ということを考えますと、やはり投資家層の裾野の広がりというのが必要でありますし、そのためには幾つかの環境の整備が必要かなというふうに考えております。たまたま私ども、今回、資産家層というところに焦点を絞って、かなりウェイトを置いてやったわけですが、やはり御高齢の方が多いということもありまして、長期投資のニーズというのは限界があるかなというふうに考えておりますが、一方、その次の層といいますと、中堅のサラリーマン層というふうに考えられますが、ここの層というのは、やはり老後資金の手当て等々に頭を痛めているというのはわかりますが、反面、リスク商品に対する不安感も払拭できないというふうな状況にあるかと思っております。やはり確定拠出型の年金等々の導入というベースで、自分での責任選択に基づいて長期投資をしていくんだと、それを通じて資産形成をやるんだというふうな社会的理解、風土が広まっていくまでは、ちょっとここも無理かなというふうに考えております。
さらに、マスの個人層というところまで広げていくためには、もう少し販売チャネルの一層の拡大というのが必要かと思います。先ほど少し出ておりましたが、気楽に購入できるATMの大幅な増加とか、インターネットを通じた販売とか、また、窓口で銀行・証券複合型店舗の展開とか、等々、幾つかチャネルの拡大というのが必要かと思います。当然その商品性に対する理解が広く浸透するということと相まっての話かと思います。
最後に、私どもなりに今後のルール作りというふうな側面でちょっと考えてみますと、やはり利用者保護の実効性の確保というのは非常に必要でありますし、一方で、販売業者といいますか、販売者側から見た販売効率、いわゆるコスト低減の確保というか、この両面がうまくバランスするルールが望まれるというふうに考えます。ということは、利用者保護が重要なことというのは当然でございます。ただ、今回、若干触れましたように、ちょっと過度なルールをやっております。こういうふうな格好が制度化されてきますと、逆に販売業者側では、販売体制、ルールの維持というところでかなりのコスト、また、初期投資が必要になってきます。そのような中では、販売網の縮小とか撤退とか、また、コストアップの部分を手数料に添加する手数料の引上げとかいうふうな動きにつながるおそれがあるわけで、その場合には、一方で利用者側から見ても投信へのアクセスポイントが減ったり、また、手数料が上がるということでリターンが減って、その商品性の魅力が低下する等々、結果的には投信市場の成長にも影響を及ぼすおそれがあるかなというふうに思っているわけであります。
以上、簡単でございますが、私どものかなり超ミクロの世界になりましたが、今回の販売に当たっての留意点について御説明申し上げました。
○蝋山部会長 どうも大変ありがとうございました。
お二人の方の御報告は、それぞれタイプが違いますけれども、我々にとって大変勉強になったというふうに思います。
淵田さんのお話、僕らとして、これからどういうふうに日本の金融が変わっていくんだろうかということについて、最低限共通の認識をある程度まで持っていかなきゃいけないと思っておりますので、そういう点で「多様性」という言葉でメッセージを頂戴しましたけれども、そういう認識をもう少しこの議論の中で深めていければなというふうに考えます。
また、田中さんからは、非常に「超ミクロ」というふうにおっしゃいましたけれども、やはりまだまだ実際にお仕事をされている現場と、それから、これからのルール作り、特にリーテイルの面でのルール作りを考えようとする我々と、まだギャップはある程度あるのではないか。そういう点も可能な限り今日埋めていきたいというふうに考えます。
そこで、自由討議に移りたく思いますけれども、初めに、淵田さんの提起された議論を参考にしながら、日本の金融サービスの将来像をどう捉えるかという点で議論を進め、その次に、規制の枠組みの今後のあり方、特にリーテイルの面での規制の枠組みについて、田中さんからのお話を一つのきっかけにしながら議論していきたいというふうに思います。
この点は、オブザーバーの方々それぞれ強い御意見があるでしょうから、どうか、余りオブザーバーだということに今回はこだわらなく、御意見をいただければ幸いだというふうに思います。
まず、いかがでしょうか。どなたから。
上柳さん、どうぞ。リーテイルの方から入りますか。
○上柳委員 はい。
○蝋山部会長 では、そういうふうにしてください。
○上柳委員 すみません、淵田さんによろしいですか。
○蝋山部会長 ああ、淵田さんから。では、淵田さんの話から。
○上柳委員 一つだけ御質問なんですけれども、金融業についても、ある意味ではほかの業界と同じように、いろんな工夫をされているという流れのお話で、最後に19ページのところですけれども、「そもそも金融の何が特殊で」という問題提起をされていますので、私も、そういう意味では従来型の考え方に毒されているのかもわかりませんけれども、消費者保護であるとか、あるいは規制がどこまで必要か。でも一般的には規制緩和は必要だということは、ほかの業界と変わらないというふうに私も捉えているんですが、金融というのは、一つは、顧客から見ますと人に任せちゃうという面と、それから、もう一つは、商品自体が捉えどころのないというか、すごく極端に言えば、将来どうなるかわからないというところがやっぱり特殊で、そこの商品の特殊性というように捉えていくかという動きだろうと思うんです。ですから私自身は、業者に注目するんじゃなくて、その商品がどういうふうに流れていくかで消費者保護の規制もあるべきだと思うんですけれども、人に任せるということで言えば、それこそお医者さんとか、あるいは自分もやっています弁護士なんかもそうで、よくお客さんからこんなに任せるなというふうに思うこともあったりするんですが、そのあたりのお考えはどうでしょうか。
○野村総研淵田資本市場研究室長 ちゃんとした考えを持っているわけではありませんで、やはり考えれば考えるほど不思議に思いまして、お医者さん、弁護士というレベルもありますけれども、例えば、どこかに食事に行ってお料理を任せると。何が出てくるかわからない。何が入っているかわからないわけですね。今、食べてすぐひっくり返ることはないにしても、何年か先に影響があるかもしれないし、ある意味でそういうことは非常に不確実でありまして、それと金融の不確実性というのはどの程度違うのか、だんだんわからなくなってきたりします。ただ、フグみたいにちゃんとそれはそれで免許が必要な分野もあったり、やはり食品の世界も分けるべきところは分けているのかなという気もいたします。
確かにおっしゃるとおりですけれども、例えばだんだん成分表示を細かくしたり、品質保持期限とか、そういういわば金融に当たるディスクロージャーの世界も向こうにはあると。かなり共通点は多いような気がするんです。ただ、どうも一方では、たくさんの業者が創意工夫を日常やっていると。しかし、金融の世界はどうも、少なくとも日本はかなりがちがちじゃないかと。私が申したいのは、そういう極めて素朴な素人考えであります。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
しかし、今の点は、恐らく田中さんも御関心があるのではないかと思うんですね。実際に預金を今扱われていて、そして今度は投資信託。非常に慎重に慎重にということは、その慎重さという点については説明はよくわかったわけですけれども、しかし、いつまでも恐らくそうじゃないでしょう。しかし、違いはやはり残っていくわけですね。その辺のところは、どんなふうにお考えでしょうか。商品の違い。預金という商品と、投資信託商品というものの違いというものを、どの程度まで認識して、このお仕事に反映させるのが適切であるとか、預金だってもしかしたら−−東京三菱銀行はそういうことはないかもしれませんけれども−−ということになるわけですね。その辺はどんなふうに、現場の田中さんの目から見て、こんなふうになっていればいいのかなというような理想的なお考えがもしもありましたら、お聞かせいただきたいと思うんです。
○東京三菱銀行田中取締役業務企画部長 基本的に、それこそ思いつきもひっくるめて申し上げますと、おっしゃるように銀行業、いろいろ商品がどんどん広まってきて、たまたま今、運用商品といいますか、お客様の方からの運用で預金と投信とかというのはありますが、一方デリバティブとかいろいろ広がってきます。結局は、やはり商品ごとにその特性と世の中での認知度等が各々違うわけで、その商品ごとの特性に合わせて、またそういう消費者保護、銀行についての販売ルール等は考えていかざるを得ないのかなと。
ただ、私ども、今回特に投信というのはかなり慎重にいっているわけですが、では、いつまで慎重にいくのかというのも、いつまでもそういうふうにやっていたら、逆に今度、お客様の利便性の方が、理解度が進んでいるのに私どもがずっとそういうような格好でやっていると、乖離してくるのかなということで、その辺のライフステージといいますか、商品としてのライフステージ等にも合わせてルールを変えていかなきゃいけない。まさに先ほど食品業界と銀行が同じだと、こういうふうな話がありましたが、まさにそんな感じで、商品としてもいろいろ新しい商品があって、ホットな商品がだんだん冷えるまでの間に、いろんな対応の仕方を変えていかなきゃいけない。まさに普通の企業のマーケティングそのもの世界に入っていくわけですから、その辺の自由度と、一方で消費者保護というのが、商品ごとに、また、ステージごとにバランスしていくというのが理想かと、こういうふうに思っております。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
どうぞ、原さん。
○原委員 2点質問があるんですけれども、1点は、資料に基づいて、もう少し詳しく御説明いただけたらということで、もう一つは、今の話に関連をしてなんですが、一つは、資料1の方の7ページに書かれている……
○蝋山部会長 淵田さんのですね。
○原委員 はい。淵田さんの方の7ページの「インターネット」と「独立型営業マン」の部分についてなんですけれども、この二つのタイプというのは、これから増えていくというふうに私も思うんですけれども、例えばインターネットについては、インターネットでの株の取引が25%から3割ぐらいというお話で、先日、たまたまテレビのニュースだったかのように思うんですけれども、こういった形で誰もが気軽に株式の売買のところに参入をしてくることで、株の相場の場面が随分変わってくるというのでしょうか、それは非常に予測もできないような揺れが出てくるんじゃないかなというようなニュースだったように思っているんですけれども、ここの部分が、インターネットで個人のどれだけの情報を得てやっていらっしゃるかわからないようなのが増えることによる市場への影響のようなものをどう思っていらっしゃるのかということ。
それから、独立型営業マンなんですけれども、日本ではちょっとまだ余り見ないので、どんな形のもので登場してくるのかという感じがするんですが、この独立型営業マンというのは、証券会社から例えば10%の手数料をいただくというふうになると、感じとしては個人代理店みたいなものになるのか、それとも本当にフェアな立場で、自分の情報を基にして、消費者の方を向いて、消費者から資産を預かってそれを運用するというふうな、消費者の立場に立ったような形での仕事の展開になっているのか。もしも後者の方であるとしたら、消費者からの手数料というんでしょうか、そういうものももちろん業務として、弁護士や何かと同じで、いただくということになるのじゃないかと思うんですけれども、もうちょっとこの独立型営業マンという方の位置づけのようなものを御説明いただきたいというふうに思いました。ですから、この方には説明義務のようなものというのがどれだけあるのかとか、リスクが出たときには、そのリスクについての責任のようなものですか、そういうのを負うことになるのかどうかというようなことも含めて御説明いただけたらと思います。
それから、もう一つの質問は、先ほどの質問とも関連をするんですけれども、確かに命で一番大切なのは、食べ物の次にはお金とかというようなことがありますけれども、自動車業界よりは食品業界に近いのではないかというふうなお話がありました。消費者問題をずっとやっていますと、食品というのはかなり消費者問題の中では大きな位置を占めていまして、二つの取り組み方があって、一つは、食品衛生法なんかに代表されるように基本的な安全性を−−先ほどフグを食べて死んだら困るという話がありましたけれども、基本的な安全性を決める枠組みのようなものが一つありますね。もう一方は、品質保持期限ですとか、そういう期限表示ですとか、それから添加物の表示ですとか、原材料表示ですとか、いろんな形での情報提供ですよね。情報提供というところで消費者側にきちんとした情報が伝わっているのかどうかという、その二つで食品の場合は括られるのではないかなというふうに思うんです。
これも金融に限ってみれば、金融についても、基本的にやっぱり銀行なんか、本当はばたばたと倒れることはよくないわけですから、そういった安全性ですとか、それから、ディスクロージャーをはじめとする情報提供ということが大事だという点では非常に似通っているようには思うんですが、ただ、先ほどの後者の説明にもありましたけれども、リスク内包商品というものが出てくると、食品は絶対リスクがあってはいけないですよね。ところが、金融というものはそういうものも含む可能性があるとすると、やはりちょっとそこは少し特異なところではないかなというふうな感じがして、その場合、一体どういうふうに考えていったらいいんだろうかというようなことを、何かお考えでしたら、先ほどの御回答の中にもちょっと含まれていたようには思うんですけれども、その辺、食品とちょっと違う部分について思いますので、もうちょっと付け加えて何か御意見がありましたら、お願いしたいと思います。
○蝋山部会長 淵田さん、お願いします。
○野村総研淵田資本市場研究室長 はい、わかりました。
まず、7ページのことでありますが、個人がインターネットを通じて株式取引を活発化させることが市場の変動を大きくするといった問題はないかと。これは、実はアメリカでまさに、特に最近の相場環境の中で話題になっていることでありますが、日計り商いと言いますが、個人が一種のトレーダーのように、朝買って昼売るような動きをいろいろすると。ただ、これ自体、何か規制すべき悪いことなのかどうかというと、必ずしもそうでないような気がいたしまして、ちょっと前までは、いわゆる機関化現象がどんどん進み、株式市場の参加者が大手の機関投資家ばかりになってしまう。このことが市場に対して変動を及ぼしてしまうんじゃないかといったようなことが議論されていた時期もあったように思います。逆に今度は個人がたくさん参加することが相場の変動だというようなことになりますと、何か、そもそも変動することは悪いことなんでしょうかという気にもなってくるわけですね。
私は、基本的な考え方として、マーケットというのは多様な投資機関、投資目的を持った人たちがたくさん存在することが、より効率的な市場を作ることになると考えておりますので、今まで個人が株式市場から遠ざかってきたという動きに対して、より株式市場が身近な存在になって参加者が増えてきたというのは、中長期的に望ましいんじゃないか。ただ、その過程において、十分なファンダメンタルズを考えないで相場だけで動くような人たちが一方的に現れるようなことになれば、それは短期的には相場の変動を大きくすると思いますが、ただ、マーケットというのは、行き過ぎると常にそれを修正する動きが働きますので、そういう中長期的な観点から評価すべきではないかと思います。私は、基本的に参加者が多様化していくことは、マーケットにとって良いことだと思います。
その変動が、何らかのマーケット全体の問題に係るような大きな問題につながるのであれば、それは何らかの手段で価格変動の幅を上限をつけるといったことはアメリカでもありますし、参加自体をどうこう言うのではなくて、実際に起き得る何らかの弊害、それに対して対応するというアプローチでよろしいのかと思っております。
それから、独立型営業マンでありますが、彼らは、証券外務員登録を行っております。証券外務員であります。ですから、証券営業マンなわけですね。ただ、証券会社に属さないということでありまして、アメリカの場合、証券会社がスポンサーになりまして、証券外務員登録を行いますと副業で証券営業を行うことができます。例えば、会計士さんが副業で証券営業をやったり、あるいは個人向けの投資顧問業者が証券営業をやったり、あるいは保険のエージェントが証券営業をやる。この場合の証券営業をやるということの意味ですが、ポイントは、注文処理に対してコミッションをもらうということであります。つまり、1件1件の取引に対してコミッションを幾らかもらうというところで、これは定義上、証券営業マン、ブローカーディーラーということになるわけですね。
そういうお金のもらい方をしなくても構いません。例えば、アドバイスで年間幾らですと、フィーをもらうと。そういうアプローチをとる場合は、この人たちは、いわゆる証券営業マンではない、ファイナンシャル・プランナーという位置づけになるかもしれません。ただ、ファイナンシャル・プランナーと名乗って、実は証券営業マンであったり、あるいは投資顧問業者であったり、その辺がかなり錯綜しているように思います。ポイントは、フィーの取り方、コミッションの取り方なんですけれども、その違いだけで、何か個人にとっては、この人は証券営業マンの資格で、この人は投資顧問業者登録。ひょっとしたらアメリカでも、十分理解されているのかなという気になることはあります。
あと、ほかにも個別銘柄を推奨するとか、そういったような違いもあったように記憶しておりますけれども。ですから、証券営業マンとしての様々な勧誘のルールというものに服するわけであります。そこは普通の証券会社の営業マンと変わりません。かつ、スポンサーとなっている証券会社がこの人たちを監視・監督する義務があります。ですから、その辺はきちんとやられているというふうなことであります。
商品としては、どちらかというと最近はファイナンシャル・プランニング的なことが多くて、昔は腕利きの営業マンが独立して非常に相場観があると。この銘柄は次は上がるといったことで、もう証券会社から離れちゃって、独立してそういう相場観で営業してきたタイプが多かったんですが、最近は、やはりお客さんの立場に立って資産形成をアドバイスするということで評価されているようですね。
ですから、ある証券会社に明確に属するのでなくて、属するけれども、それは事務処理として、あるいは監督責任で属しているのであって、何をお客様に提供するかというところは、あくまでその人自身の判断で、お客様もそれを信頼してアプローチするということかと思います。
2番目の食品と金融の話でありますが、これは、恐らく違いを探そうと思えば幾らでも出てくると思います。ただ、一見同じじゃないかという立場から物を見ると、また同じようなこともいろいろ見えてくるわけであります。例えば、食品はリスクがあってはいけない。金融はリスクがあるんじゃないか。ただ、食品はリスクがあってはいけないと申しましても、例えば、たばことかお酒はリスクがあるんじゃないかというようなへ理屈もこねることができるわけでありまして、共通要素が大きいんじゃないかという立場に立ってしまうと、何かそういうふうに同じように見えてくる面が多いような気がいたします。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
ほかにどうぞ。
能見さんから。
○能見委員 両方に少し関連することなんですが、お話を伺っていまして、金融のサービス、特に仲介サービスというのでしょうか、それが最初の田中さんのお話でしたか、「より間接的な」という言葉で触れられたと思いますけれども、サービスが多様であり、中間のサービスに関与する主体も多数に及ぶ。そういうのに一つ、これはサービスはどこでも複数のものが関与したり複雑になるんですけど、金融の場合には特にそういうことがあるのが一つの特徴かもしれないというふうに、私はずっとお話を伺っていて感じました。
そのことと関連するんですが、今いろいろ問題となっているものの一つに、リスクをどう評価し、どう分散するかとか、そういうことが基本的な問題の一つだと思いますけれども、例えば東京三菱の投資信託の説明の中に、いろいろリスクのランキングなどが出ていて、ただ、ここで言うリスクのランクというのは、恐らく運用先というのでしょうか、あるいは相場というのでしょうか、そういう意味でのリスクだと思うんです。最初の話につなげるわけですが、もう一つ私がちょっと感じたのは、いろんな金融仲介が複数、多数あるいは多様化してくると、何か仲介のシステムというのでしょうか、あるいはスキームというのでしょうか、そのスキーム自体のリスクというのがあるんじゃないか。
例えば単純に考えれば、外国の証券を買うときに、その証券が値下がりするというのは相場のリスクですけれども、それをカストディアンか何かに預けているときのリスク。そういうリスクというのがどう評価されるというか、特に販売されるときにどう評価されて、あるいはどっちが負担すべきだというふうに基本的に、これはいろいろもちろん契約で多様なことができるんだと思いますけれども、基本的にどういうふうにお考えなのか。
私も、そう単純には割り切れないと思いますけれども、相場のリスクは、これは当然、投資家というものが十分説明を受けた上で自己責任で負担すべきですけれども、システムのリスクということになると、必ずしもそうではないかもしれない。そこら辺のちょっとお考えを、あるいはお二人に、ごく簡単で結構ですけれども、お聞かせいただければ幸いです。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
いかがでしょうか。今の価格リスクや利子リスクとか、そういうのは確かに投資家が負担すべきだけれども、しかし、そうでない、管理リスクその他の面もあるんじゃないかと。こういう面に関しては、どんなふうに説明し、また、どうお考えかということですが、お二人にそれぞれお願いします。
まず、田中さんから。
○東京三菱銀行田中取締役業務企画部長 それでは、投信という立場から御説明しますと、まさにシステム、先ほどのように販売業者と運用業者と、それを管理している信託銀行のような管理会社というのが主に主体として介在しているわけです。先ほど御説明の中に、私ども、自分のグループの運用会社を主体にして進めたんだというふうなところでちょっと御説明しているんですが、要は、その運用会社の信用度というのも、結局は売る方といいますか、全体として商品を提供する側としては、仕組みの中で、あくまで信用度を高める仕組みというのはどういうことなのかというのを常に考えながら運用会社を選定していくと、そういうアプローチを現状はしております。ですから、先ほどのように外資系の運用会社の商品というのも山とあるわけで、それをどういうふうに売る方も理解し、それをお客さんの方に説明できるかというところの体制作りというところで考えていくことなのかなと我々はずっと考えています。
○蝋山部会長 淵田さん、どうですか。
○野村総研淵田資本市場研究室長 市場リスク、信用リスク等、市場リスク以外に、大ざっぱに分けて信用リスクとか、それからオペレーショナル・リスクというものをよく言われますが、市場リスクは、今おっしゃったように、投資したものがマーケットの変動によって上がるか下がるかであります。信用リスクの方は、これはひょっとしたら、投資対象の信用が変化したことによる値下がりかもしれません。これは投資家にきちんとディスクローズしていれば、投資家のせいと、投資家の判断ということになるかもしれませんし、ただ、あるスキームに関わるカウンターパーティーが何らかの信用リスクというものに陥るということがありますが、これはやはりそういう商品を顧客に提供した人の判断がまずかったということになってしまうわけですね。ですから、恐らく私は、詳細を見たことがありませんけれども、プロスペクタス的なものに、このようなリスクがありますということをずらずらと書き並べるんだと思います。こういうパーティーが参加しておりますので、ここが倒産する虞がありますといったことを最低限開示するということで対応しているのかなと思います。
ただ、オペレーショナルなリスクに関しても、これは相手が受渡しで事故が起きたとか、そういったこともあるかと思いますが、もう一方で、そういう私企業間の話ではなくて、市場のインフラとしての決済システム自体に問題があるというケースもあるかもしれません。前者に関しては、これも先ほどと同じように、私企業としての責任でディスクロージャーということで御理解いただくと。事務上の手続の問題があれば、損害賠償といったようなことになるのかもしれません。ただ、決済システムという面に関しては、これはもうちょっと公的な器の問題。つまり、国としてのマーケットインフラをどう整えるかという責任の問題もあると思うんですね。単純に私企業の責任というふうに言い切れなくて、もう少し国の証券行政としてグランドデザインを描いていく。技術の発展に応じてより良くしていくと、そういうことによって、国民全体、証券市場参加者全体に対するリスクを下げることができると、そういう側面もあるように思います。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
もう少し今の点は詰めて考えることも大事ではないかと思いますが、次に移りましょう。いずれの時期にか、能見さん、整理して御意見を頂戴したい。
高橋さん、どうぞ。
○高橋委員 田中さんに、投信のリーテイル販売に関することを少し御質問させていただきたいと思います。
私どもは今、リスクのある商品の特性を考えて消費者保護、利用者保護ということを考えたいと思っているわけなんですけれども、今、個社として東京三菱さんがその販売ルールをどうしているかということに関しては丁寧な御説明をいただいているんですけれども、我々一般消費者にとっては、投信などの証券投資というのは、買いよりは売りの方がずっと難しいというふうに言われているわけなんですけれども、また、消費者トラブルというのも、ほとんど売りの時点というので発生してくるというふうに思います。
そこで、御質問三つなんですが、まず一つ目は、先ほどお話しいただいた販売ルールって、主に勧誘ルールと言っていいんでしょうか、売りの部分に−−そちらから言うと売りですね。私たちから言うと買いの部分に入ってくるわけなんですけれども、そこは御説明いただいたんですが、顧客が、消費者が売りの判断に対する、そこのところのアドバイスのルールがどうなっているのかということをお伺いしたいと思います。通常の値動きの中でやっていらっしゃる情報提供ということが一つ。それから、マーケットが急落したり乱高下したときにどういうふうにするのか。その辺の御対応はどうなっているのかということをお伺いしたいと思います。
二つ目は、仮にそうした時点でトラブルが発生した場合のことなんですけれども、消費者側からのトラブルとかクレームの受付というのは、売り手サイドとして専門の相談員、相談窓口というのを設けていらっしゃるのか。東京三菱さんのケースで結構ですので、お答えいただきたいと思います。
この二つは個社ということでお伺いしたいんですが、三つ目は業界としての対応ということでお伺いしたいのですけれども、我が国では、業界が消費者教育とか投資者教育の一翼を担ってきた、こういう歴史があるというふうに思うんです。先ほども御説明がありましたRR表示、リスク・リターン分類なんか投信業界がずっと取り組んできたことだというふうに思うんですけれども、とはいえ、ビッグバンが進みますと、もはや業界でということではないのかなという不安も私ども持っているわけなんですが、こういう諸々のリーテイル販売におけるいろんなトラブルを考えて、業界での自主ルールがあるのかどうか。そうしたことについてお伺いしたいというふうに思います。現状及び将来展望についてお答えいただけると助かります。よろしくお願いします。
○蝋山部会長 田中さん、よろしくお願いいたします。
○東京三菱銀行田中取締役業務企画部長 最初の御質問の、いわゆる売りの場合のリスク等々の値動きのリスク、また、乱高下のときのリスクをどうするかということですが、基本的に、まず相場といいますか、買われた商品についての運用実績というのは、定期的にお客さんの方に行くことになっています。それで、ただ、それをどう判断するかというのは、基本的にはお客様の判断というところですが、それではまさにサービスにならないわけで、そこで、一種のFPと先ほど申し上げましたが、いわゆるお客様の資産形成、資産内容の中でのリスクバッファー、許容度というのがどの程度あるのか。それで、その場合には、値動き、乱高下をどう理解していったらいいのかということを、相談業務としてきちっと確立していこうというのが一つの対応の仕方であります。
ただ、FPそのものというのが、FP協会とか金融財政とかというのでやっていますが、まだ資格として統一されたものはございません。ですから、各々のFPのレベルというのは、私どもの場合とほかの銀行さん、証券会社さん等々でいろいろばらつきはまだあるのかなというふうなのが現状かと思います。
一方、トラブルの受付窓口でありますが、いわゆる専用という格好にはなっていません。私どもの場合ですね。要は、総合的にお客様のいろいろトラブル、クレームについて受け付ける組織がございます。そこで必ず対応しようというところになっています。ただ、一方で、先ほど、商品の中身についてのいろいろなトラブルというのは、販売側わからない。運用会社の方でしかわからないというふうなところもございます。その場合に、例えば私どもの場合は東京三菱投信投資顧問というところですが、そこが運用会社としてヘルプデスクというのを持っております。ですから、必ずそこで詳細御説明ができるような格好にはなっております。
これが今は個別行のということでございますが、一方、業界としての自主ルールというのは、現状ないというふうに理解しております。ただ、たまたま欧米の例を見ますと、これはまさに自主だと思うんですが、特にクレーム等々についての裁定機関というのを共同で設立して、一種の民間組織ですが、そこがいわゆるクレームについて仲裁といいますか、お客様側の判断と銀行側の判断、販売業者側の判断というのを必ず仲裁して、そこでの決定には両方が従うというのを特にアメリカの場合には作っているというふうに承知しておりますが、将来そういうふうな格好も考えていかなければいけないのかなというふうには考えております。
そんなところでよろしいでしょうか。
○蝋山部会長 よろしゅうございますか。
○中原オブザーバー
申し訳ありません。ちょっと一言よろしいですか。
○蝋山部会長 では、中原さん、どうぞ。
○中原オブザーバー
全銀協の一般委員長をやっております東京三菱銀行の中原でございます。
ただいまの御質問の2番目の点について、むしろここは関オブザーバーの方からちょっと補足していただいた方がいいかなと思うんですが、まず、全銀協といたしましては、一般的なクレーム受付の窓口を各地区の銀行協会に設けておりまして、よろず相談所と言っておりますが、ここで、これは投信ということ、あるいはリスク商品ということに限らず、融資、預金、一般の銀行業務全般についてのクレーム受付の窓口になっておりますが、今後は恐らくここでリスク商品の販売に関わるクレームがいろいろと出てくることは予想しておりまして、それに対する対応をどうすればいいかという議論は、中で始まっております。
一方、この投信につきましては、日証協の方で、関オブザーバーの方でいろいろとルールも検討されておりますし、また、紛争処理、あるいは調停・斡旋というようなところまで踏み込んだ、既に証券につきましてはそれがあるわけですけれども、銀行の販売した投資商品について、そこをどうするかということで、現状はとりあえず日証協の方にお任せする形になっているわけです。ということで、対応の動きはかなり進んできておりますので、私の方からちょっと一言申し上げたいと思います。
○蝋山部会長 では、関さん、一言補足をお願いします。
○関オブザーバー
一言と限定されましたけれども、質問にもお答えをすると同時に、今まで御参考人が言われ、それから、皆さんから御意見も出ていますけれども、それに対して少し、私としては参考になるんじゃないかということも併せて申し上げたいんですけど、よろしいでしょうか。
○蝋山部会長 どうぞ。
○関オブザーバー
では、全体で7項目申し上げたいと思いますが、できるだけ簡単にまいりたいと思います。
まず、例のインディペンデント・コントラクターの問題でありますけれども、アメリカは、証券会社というものを法律的にはブローカーディーラーという押さえ方をしているわけですけれども、実際にブローカーディラーにおいて、顧客と接触していろいろな投資勧誘等を行うという仕事は、それは会社によっていろんな名前をつけていますけれども、一般的にはブローカーという言葉を使うわけです。日本の証券外務員に当たるのが、このブローカーという概念だと思います。
それで、日本と違いますのは、日本のブローカーは、大部分がいわゆる固定給中心の、これは少しずつ変わっておりますけれども、要するに会社との関係は、雇用契約に基づくブローカーということになっておりまして、そこで上げたコミッションを自動的に何%自分の懐に入ると、こういう計算にはなっていなくて、給与で賄って、ボーナスにいろいろ稼ぎが反映してくると、そういう構造だと思います。ただ、日本にも歩合外務員制度というのがございまして、これは会社との関係は、いわゆる委任契約、準委任になりますが、委任契約、準委任契約という感じになっておりまして、税法上は歩合外務員は事業所得になります。しかし、これは大体の戻し率というのが、最大で大体40%ぐらいじゃないかと思います。アメリカも、実は通常のブローカーというのは歩合中心ですけれども、多分そこに戻るのは大体40%とか、そういう程度じゃないかというふうに言われております。
実は、インディペンデント・コントラクターというのはどこが違ってくるかということですが、先ほど淵田さんの御説明にありましたように、戻し率のところを、そんなものじゃなくて、もっと9割以上をインディペンデント・コントラクターの方に戻していくと。それで投資勧誘すると。そういうことなんですが、一体そのインディペンデント・コントラクターが、先ほど申しましたブローカーディーラーの資格を独立に持っているかどうか。これがどうも必ずしもそうでもないようでありまして、今度は特定の証券会社、先ほど「契約」と言いましたけど、ブローカーディーラーと契約をしつつ、かなり戻し率が高い独立的な営業をやっていくと、こういう形態のようであります。
そこで、今まで皆さんの関心の中で一番の問題点は、結局顧客といろいろな取引をすると、その法律効果。うまくいっているときは全く問題ないと思いますが、何かまずいことが発生して損害賠償を求めるとか、そういうことになったときに、一体どちらの責任になるのかというところをはっきりさせるということだろうと思います。恐らく私の理解では、今、監督義務というのは証券会社にあるということになっていましたけれども、多分、契約の親会社の方に帰属をすると、そういう関係になっているのじゃないかというふうに思います。そこは、アメリカは御承知のように州でいろいろな規制が違っているとか、いろんなことがありますので、少し多様になっているかもしれません。
それで、もう一つは、これはさすがにアメリカだと思うんですけれども、今度は証券会社の中で、全国までいっているか、ある特定の地域かわかりませんけれども、そういうインディペンデント・コントラクターだけを使って証券会社を経営すると、こういう経営方式をとっている専門会社も出てきていると、こういうことでありますから、将来日本にこういうものを入れるというときに、まず独立も、いわば証券会社として個人を認めるかどうか、あるいは形式的な法人になるかどうかはわかりません。その場合の考え方。先ほど「代理店の形になるんですか」というお話がありましたけれども、そういう問題だろうというふうに思います。
それから、2番目に申し上げたいのは、電子化についての議論であります。先ほど淵田さんが言われましたように、全株式取引の25%から30%がいわゆるエレクトリック・トレーディングになっているというのがアメリカの現状のようであります。これは株式だけではなくて、投資信託なんかもそういったものにどんどん乗っているわけであります。
それで、もう一つ、これは別な調査でありますが、SIAが毎年やっている調査の中に、投資家に向けて、「あなたは投資情報を取るのに自らのコンピュータを利用してやっていますか」という調査項目がありまして、それに「イエス」と答えた人が既に40%を超えているという状況です。ですから、そういういろんなパソコンとかインターネットとかを通じて情報を取るということが、パターンがそういうふうに進んでいることは間違いないわけです。
日本も御承知のように、これは決まっておりますが、今年末までに手数料の自由化ということが完全になります。小口も含めて完全自由化でありますから、当然ディスカウント・ブローカー型の営業というのも始まると思いますし、いわゆるエレクトリック・トレーディング型のものも始まると思います。そのときに、そういうことが進まないようにしようということは全く必要ないんですが、今アメリカで問題になっているのは、逆にそういう電子化トレーディングの手法をうまく利用して、不公正な取引、詐欺的なことをやるということが非常に問題になって、要するに影の部分がもう向こうでは問題になっている。昨年末から、SEC等は躍起になってそれの摘発に当たっているわけです。
今までの議論で出ている話で、これは必ずしも証券会社だけではないんですけれども、インターネットを通じてインディペンデント・コントラクターとか、そういうフィナンシャル・アドバイザーと、いろんな肩書きを持っている人がどんどん情報を流すわけですね。この株は良いですよと、こういう情報を流すと。それを見る人が見て、みんないろんな手法でそれに殺到する。株価が上がると。ところが後で調べてみると、そんな根拠がない株だったと。それならまだいいわけですけれども、それを推奨すべく、その発行会社から幾らかお金をもらっていたとか、自分が予め買っていたとか、そういった問題が起きてくるわけです。ですから、今我々として考えなきゃならないのは、そういう電子化というものが進めば進むほど、それを利用する規制の問題も考えていかなきゃならないという問題があると思います。
それから、3番目でありますけれども、もう一つもっと関連ありますが、投資信託の銀行窓販というのが始まるに当たって、これは基本的に証取法の方の手当てがございますけれども、証券業協会も、大きな金融機関はほとんど特別会員ということで、協会の自主規制機能の中に入ってきております。それを利用して適切な規制をすべきだという考え方で、従来の証券会社が投資信託を売る場合と、銀行が投資信託を売る場合と、これとの関係は、そういった適合性原則とか顧客の管理とか、そういったものがパラレルになるような規制にしているわけです。
それで、もう一つ銀行について特別な配慮があったのは、これは法律の方もそうなんですが、既に銀行は預金という商品を扱う機関であって、元本変動型のものというのは余りやってなかった。そこで、お客さんの方に誤認があってはいかぬと。預金というものとの誤認防止というところに一つプラスアルファがありますけれども、そういう体系をとりまして、先ほどの例えば顧客カードの整備とか、それから、顧客カードの一環として調査票とか、それから確認をすることとか、そういう制度を決めて運用しているわけです。
実は、問題はもう一つ私はあると思うのは、これは決して投資者のためにそういう規制を与えるということでなくて、今後の展開を考えますと、今、幸いなことにまだ始まったばかりで、苦情・クレーム等はないということですが、相場の変動とかそういう問題で、必ずどこかでは銀行にも苦情が来るという時期が来ると思います。単純に苦情で処理が終わればいいですけれども、十分な説明がなかったとか、そういうことで訴訟に巻き込まれるということにもなる。これは証券会社もそういう経験はたくさんあるわけでありまして、そういうことが起きたときの一種の防衛。企業側からすると、仲介業者からすると防衛という観点からも、そういうところはきちんとしておかなきゃならないのじゃないかなと、こういう問題だと思います。
それから、証券教育の問題でございますけれども、これは実は証券業協会も毎年、重要な課題だということの一つの課題として、ある程度お金をかけて証券教育のいろいろな努力をしていますのと、それから、別法人になっておりますが、証券広報センターというものを設けて、そちらの方の活動もしているということでありますが、これは実は一般的なそういう努力のほかに、先ほど申しました顧客の、投資家の裾野を広げると。これが長い目で見た将来の営業にもつながってくるということで、証券会社あるいは銀行も含めて、日々の活動を通じて証券教育も地道に時間をかけてやっていかなきゃならないというテーマではないかと思います。
それから、最後に苦情処理でありますけれども、今度のビッグバンで、これは証券取引の顧客とのトラブルの処理というのが、今までの証券取引法は、行政の方もおやりになる、それから日本証券業協会の方もやると、こういう制度になっていたわけですが、今度、行政の方はそういった機能をやめるということになって、民間ベースに移すということになりました。それで、日本証券業協会の苦情処理の体制というのは、これは非常に歴史が古いわけで、各地区・ブロックごとに苦情処理の体制を整えて、まず、苦情処理が来ればいろいろ言い分を聞いてあげる。これはまだいろいろの投資相談、苦情処理という事務方の組織でありますが、そこで当然相手になっております証券会社にそれを伝えて、証券会社の言い分も聞くと。それで、全然初めからこれはだめだということは、それで終わっちゃうわけですけれども、少し話し合いたいということであれば、次に協会の方の苦情処理の斡旋制度というのに移ることになっております。これは各地区に専門の弁護士さんをお願いしておきまして、弁護士さんが両方の言い分を聞いて、間で、こういったことで解決できませんかというのを打ち出してくる仕組みであります。
これは古いわけですけれども、全て証券業協会は、証券会社についてだけその制度を作っていたわけですが、今度のビッグバンの一環で、その制度を特別会員、つまり銀行の方にも今広げた状態になっております。これが今、全銀協の方からお話しありましたように、永久にそれでずっとやるのかどうかということは、銀行界の中にもいろいろ御議論があるようです。銀行のよろず相談所というようなものが各地域にあると、将来体制が整えば、そういったものも扱えることになるかもしれません。しかし、それはそういうことができてきましても、協会の方は、それではまた証券会社に戻すというような考え方はございませんで、依然として開放、そういう問題が来れば同じように処理をしていくということでありまして、今御説明しました。ただ、これから本当にどのくらい斡旋とかそういう形にまで処理する件数が増えてくるかということは、実はまだ予期できません。ある程度体制整備しておりますけれども、果たしてこれでずっと十分かどうかなという問題は残るような気がします。
大変長くなりましたが、以上です。
○蝋山部会長 もう残り少ないんですけれども、福間さん、どうぞ。
○福間委員 「21世紀の金融業の展望」の件なんですけれども、今お話しのように、どちらかというと金融業を中心に説明されているわけですけれども、今後の21世紀の金融業はもちろん走りながら考えなきゃいかぬのですけれども、収益ソースをどういう具合に求めるんだと。先ほどからのお話のように、投信ではどうも飯を食えそうにないと。そんなにたくさん皆が一斉にやるほど果たして儲かるのかどうか。やはりああいうものというのは、サクセスストーリーができないと投資家というのは寄っていかないということで、文句を言うときは非常に大きく言いますけど、儲かってる人は黙っていると。やはりサクセスストーリーが必要なんですが、今は大ショックの後でございますので、そう簡単に投信の業務が拡大するかどうかわからないんですけど、どの程度の重点を置かれるか。
さらに言ったら、既存のコーポレート・ファイナンスとか、あるいはコンシューマー・バンキングとか、プロジェクト・ファイナンス、あるいはプロプライアトリー・トレーディング、そういうものの中で、こういう21世紀の金融業の中で、先ほどからの御説明のようなことがトリガーとなるのかどうか。
アメリカの中でも、例えば、一時はブティックがいいんだといってブティックでやった銀行、あるいは最終的にはやっぱりユニバーサルバンキングといいますか、フルバンキングでやった銀行が一番儲かってみたり、いろいろ戦略は、もちろん銀行が保有している経営資源の分配をどうやるかという、抽象的に言えばそういうことなんだろうと思いますけれども、私は、先ほどからあります投信の問題も、販売の問題も、大いにやっていけばいいかと思うんですけど、やはりみんな儲からなかったといってUターンしないようにするには、ほかの業務が儲かってないと、組織としてバランスが欠けてくるんではないかなということです。
お聞きしたいのは、「21世紀の金融業の展望」の中に、このテーマは非常に重要なテーマで、債権大国である日本の金融仲介業は、今のようなことではグローバルに見ての中でも非常に困ったことで、一回アメリカに出してアメリカから資金を分配しなきゃいかぬというような情けないことじゃなくて、東京で本源的な資金を集めて、それを、グローバルに金融仲介するということが一番重要なんだと思うんですが、こういうことから言えば、金融業というのがもう少し、どうやったら儲かるのかということが一番重要なんじゃないかな。この前もあるいは申しあげたかもしれませんが、やっぱり戦略産業的に考えていかないといかないんじゃないかなと。
今まで金融業というものはバッシングが非常に多くて、そうじゃなくて再構築という観点から考えていかないと、アジアの問題一つをとってもなかなかうまくいかないと。そういうときに、今日話題になりましたようなことが、どの程度のコアビジネスになっていくのか、あるいはコアにしたい人はコアにすればいいというお考えなのか。この「21世紀の金融業の展望」の中で、ちょっとそういうものについてのお考えがあったら、お教えいただきたいなと思います。
○蝋山部会長 淵田さん、金融業を儲かる産業に。
○野村総研淵田資本市場研究室長 私は、本当に各社各様で、どれがコアなんというのは言えないという立場でありまして、結局、儲けというのはどれだけリスクをとるかでありまして、リスクをとりたい人は一見儲かるかもしれないけど、損することもあるということでありまして、エクセスリターンがあるんだったら参入者が現れて、適正リターンにまた戻っていくと思います。
それは一般論としまして、例えば、シティバンクが92年に大きな不良債権を抱えたときに何をしたか。そのとき彼らが捨てたのは、当時において、これからは投資銀行業だ、これからは投資信託だと、そういうふうに言われたのを全部やめまして、フォーカスしたのは伝統的な銀行業。ただ、シティらしさを出してグローバルなリーテイルというところにやったわけです。そこは何ら物珍しくもない、ただの銀行の預金貸出とトランザクションでありました。しかし、逆にそこが最大の収益部門として今のシティを支えているわけであります。
ですから、重要なのは、やはり各社各様で、それぞれのおっしゃったような経営資源の再配分という視点ではないかというふうに思っております。
○蝋山部会長 淵田さんの考えでは、戦略産業と位置づけて、そして、ある種の超過利益を何らかの形で作り出して、資源をそこに注ぎ込もうというような考え方は、21世紀に淵田さんの考え方は通用しないと、こう考えていいわけですね。
○野村総研淵田資本市場研究室長 その戦略産業というところを、少なくとも今まではいろいろな規制で伸びようにも伸びられなかったと。これをもっと普通の産業に近づけて、十分実力を発揮できるようにしましょうと。かつ、その実力を伸ばしましょうというところが、まず第一の出発点だと思います。それをさらに幼稚産業的に保護育成するかと。私は、例えば公共政策的にベンチャーのお金の流れをもっと促進するといった発想はあるかもしれないと思いますし、あるいは、アメリカでも議論されているような、弱者に対する金融アクセスを公共政策的に付けるといったような発想はあるかと思いますが、基本はやはり自由競争で、その中で競争があってみんなが強くなって、結果的にほかの国よりも自由で効率的なマーケットになれば、結果的にこれは戦略産業として成長するんじゃないかという考えです。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
原さん先ほどから。一言だけです、一言。
○原委員 意見だけですけれども、先ほど能見先生が御質問になったことなんですけれども、私自身も後半で質問しようと思っていて田中さんのところに置いていったんですが、この確認書を見て、3の項目のところなんですけれども、やはり私たちは投資信託の商品を買うときに、その商品と併せて、例えば東京三菱であれば東京三菱の信用というのでしょうか、運用システムを買っているわけで、先ほどの御説明の中にも、金融仲介の多層化とか多様化というお話がありましたけれども、その部分も含めての商品であるということで、当然全てのリスクを投資家が負担をすべきだという形のこの3の書き方では納得はできないと。だから、これが免罪符になることがないように、もう少しきちんとした御回答をいただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。
○蝋山部会長 では、井上さん、どうぞ。
○井上委員 5分いただきたいところですけれども、1分か2分にします。質問もしたがってやめますが、少し部会長への希望を申し述べたいと思います。
要するに、我々はこの金融審議会で何を議論しているか。つまり金融のあり方を、日本のこれからの国のあり方、日本の社会の21世紀をどう作るか。その支えとなる金融をどのようにうまく、それを公共的なシステムと主要システム組合せの中で、どういうものを作ればいいかということを議論しているのかと思います。
振り返ってみれば、要するに過去、現在−−現在とは何かという話もありましたが、現在というのは、要するに長い金融市場の構造変化に適応が遅れたこと、国内外ともに。さらに、不良資産を大きく拡大して、非常に難しい金融状態を作り上げて、非常に苦しい不況状態にあるということ。この1年起こったのは、最もうまくいくと思われたアメリカの中心の金融業の一つのシステムに問題があるということも明らかになった。この三つの失敗。要するに政府の失敗、それから市場の失敗、あるいは金融業の失敗、あるいは世界の通貨システムの失敗というものを踏まえて、具体的にどうやったら公共的な誘導ができるのかというあたりを、少し今後も議論の中心にしていただきたいと思います。
以上です。
○蝋山部会長 いや、私はちょっと賛成できないところが幾つかあるんですが、反論することはここではやめます。しかし、御意見として十分伺っておきたいというふうに思います。
ほかに一つ二つ、短く質問なり御意見ございますか。
どうぞ。
○上柳委員 田中さんに十分お聞きしたかったんですけど、また別の機会ということで、コメントだけで。
リスクの説明については、いろいろ工夫されていることがわかりました。ですから、これがどういうふうに履行されるかという問題だろうと思います。ただ、もう一つ、特に、まだ変額保険は熟していませんが、ワラントの判例なんかを見ていますと、リスクの説明とともにスキームというのか、仕組みの説明。どういうふうにしたら、それこそ売り逃げられるかとか、そういうことについても若干の理解を得るべきだという流れになっているように私は思うので、そこについての工夫をどういうふうにこれからされるのかということを、また別の機会に伺わせていただきたいと思います。
以上です。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
どうぞ。
○木村オブザーバー 一つの論点として、多様な商品を提供するということになりますと、実は顧客の情報をどう活用するかという問題が出てくると思うんです。多様な商品になればなるほど、顧客の選択というのが重要になって、そのときに、顧客の情報をどういうふうに流用するかというか、活用するかという問題ですね。ここが一つの問題として出てくるんじゃないかというふうに思いますので、回答は要りませんけれども、そういうふうに思います。
○蝋山部会長 ほかにございませんか。
大変まとまりのつかない感じがしないわけでもない。ある種のブレイン・ストーミー的なところもありますが、これはしようがないと思うんですけど、しかし、井上さんが提起されたような基本的な問題を絶えずそれぞれの方々がお持ちになって、それを具体的なイシューに当てはめて議論をしていくということは必要だと思います。直接に井上さんのようなお話を議論するということは、非常に難しいというふうに思います。
今の淵田さんから、21世紀に向けての金融像を、淵田さんなりに整理された金融業に関するイメージを、淵田さんなりにお話を伺いまして、また、日本の銀行の個人に対する新しいアプローチという点での田中さんのお話も、やはりそれなりのイシューとして、我々は基本的なそれぞれの委員の方々の観点をぶつけながら御質問をされ、また、意見を言われたのではないかと。一見したところ、そういう点ではばらばらのような討議でしたけれども、私はそれなりに意義があったというふうに評価しております。
どうも今日はありがとうございました。これで自由討議を終了いたしますが、この部会の今後具体的な検討を行っていく上で、幾つかアナウンスメントをしたいというふうに思います。
一つは、ワーキング・グループでして、「ホールセール・リーテイル」取引に関するワーキング・グループは、本日の午後開かれます。また、「集団投資スキーム」に関するワーキング・グループ−−その二つのワーキング・グループを作ることにいたしまして、「集団投資スキーム」に関するワーキング・グループは、来月の3日に立ち上がるということになりました。そして、私に御一任いただきましたワーキング・グループの人選等については、大枠が固まりましたので、事務局から急いで御連絡を申し上げたく思います。よろしくお願いします。
○三國谷企画課長 お手元の資料、「第一部会3−3」というワーキング・グループ・メンバーリストでございます。この資料で御覧いただきたいと存じます。なお、メンバーにつきましては、ここに御紹介した皆様方に限定いたしませず、議論の過程で必要な場合には、さらに追加、あるいは随時の形で御参加をいただくこともあろうかと思います。
なお、ワーキング・グループにつきましては、型にとらわれずに、部会審議の材料を整理・提供するということを主たる役割とするとの位置づけでございますので、資料や議事要旨等の公表につきましては、これは何らかの形で部会を通じるという形になろうかと思いますので、原則そういうことはしないということとさせていただきたいと思います。
なお、前回お伝えいたしましたとおり、部会委員の皆様の出席は自由でございますので、御希望される皆様におかれましては、事務局まで御連絡いただきたいと思います。
なお、当面の各ワーキング・グループの開催日程、テーマにつきましても、お手元に「委員限り」ということで配付してございます。日程等は若干フレキシブルでございますので、これは取り立ててパブリックにいたしませんものでございますから、よろしくお願いしたいと思います。
なお、ワーキング・グループと部会の連携につきましては、節目節目で部会に報告を行い、それに基づき部会での検討を進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
このような形でワーキング・グループを進めさせていただきたいと思いますので、よろしく御協力をお願いします。どうぞ、御参加は自由ですから、御参加いただきたく思います。
それでは、次回の第一部会の日程につきまして、事務局から御連絡いたします。
○三國谷企画課長 次回会合につきましては、2月25日(木曜日)14時から16時の間でお願いしたいと思っております。
テーマといたしましては、上柳委員より流れ懇の論点整理に対します日弁連の意見書の報告を行いまして、これに対しましてコメンテーターからコメントを述べていただいた上で、自由討議と考えております。
なお、コメンテーターにつきましては、部会長とも相談の上、御依頼申し上げたいと考えております。御希望される方がいらっしゃれば、事務局までお願いしたいと存じます。
○蝋山部会長 このコメンテーターは、オブザーバーの方にお願いしてもいいんでしょうね。
○三國谷企画課長 いいと思います。
○蝋山部会長 ですから、今のお誘いは、オブザーバーの方もお誘いの対象にカバーされると。しかし、全員がというふうに御希望があると、これは収拾がつかなくなりますので、その点、もしもあった場合は厳選させていただきますので、よろしく御了承をお願いしたいというふうに思います。ですから、コメンテーター、日弁連の流れ懇の論点整理に対する意見書、これは上柳先生から御報告いただきますが、それに対して一言、二言申し上げたいという向きがございましたら、どうぞ事務局に御連絡いただきたく思います。
3分超過いたしまして申し訳ありませんでした。以上をもちまして、本日の部会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
また、最後になりましたが、淵田さん、田中さん、本当にどうもありがとうございました。
(以 上)