金融審議会「第一部会」第5回会合議事録
日時:平成11年3月24日(水)14時00分〜16時04分
場所:大蔵省本庁舎(4階)第三特別会議室
○蝋山部会長 ただいまから、第5回金融審議会「第一部会」を開催いたします。
お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
早速ですが、席上に配付されております議事次第に従いまして、本日の議事を進行させていただきます。
今日は、この部会の検討課題「21世紀における金融のあり方」についての専門的な議論を深めていただくようお願いしております二つのワーキング・グループ、ホールセール対リーテイルあるいはプロ対アマ、それから、集団投資スキーム、この二つの問題に関しましてワーキング・グループを組織し、議論をしていただいておりますが、その検討状況につきまして、それぞれのグループの議事進行役を務めていただいております、まず神戸大学の山田誠一教授、それから神田委員、お2人から御報告をしていただきたく思います。
ホールセール・リーテイルに関するワーキング・グループでの検討状況については山田教授から、また、集団投資スキームに関するワーキング・グループの検討状況については、神田委員から頂戴したく思います。そして最後に、去る15日に開催されました受託者責任に関する問題。これは二つのグループに共通のイシューでありますけれども、その二つのグループがこの問題につきまして合同会合を開きました。その合同会合の検討につきましては山田教授から御報告をいただく、こんなふうな予定で進めさせていただきます。
質疑応答、自由討議は、全てまとめてお話を伺った後、行いたく思いますので、御協力をよろしくお願い申し上げます。
それでは、まず、神戸大学法学部の山田誠一教授から、ホールセール・リーテイルに関するワーキング・グループの検討状況の御報告をお願いいたしたく思います。
山田さん、よろしくお願いします。どうもお忙しい中ありがとうございました。
○山田神戸大学教授 ありがとうございます。ただいま御紹介いただきました山田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。着席させていただきます。
ホールセール・リーテイルに関するワーキング・グループの議事進行役をお引き受けしております者です。何とぞよろしくお願い申し上げます。
早速でございますが、御説明を始めさせていただきます。
ホールセール・リーテイルに関するワーキング・グループは、1月29日と2月24日、2回の会合を持ち、ホールセール・リーテイルに関して事務局からの説明を受けた後、メンバー、オブザーバー全員による討議を精力的に行いました。
以下、この2回の会合におきます討議の様子に基づきまして、ワーキング・グループの活動の中間報告として、ホールセール・リーテイルに関するワーキング・グループにおける主な論点について御報告を申し上げます。
縦長の資料で「ホールセール・リーテイルに関するWGにおける主な論点」、右肩の資料番号は「第一部会5−1」となっております。及び横長の資料の「ホールセール・リーテイルに関するWGにおける検討状況」、同じく右肩の資料番号は「第一部会5−2」となっております。この二つの資料を御覧いただければ幸いに存じます。
縦長の資料「ホールセール・リーテイルに関するWGにおける主な論点」に沿って御報告を申し上げます。
まず、基本的な問題意識と議論の対象について御報告をいたします。
基本的な問題意識は、金融取引に関するルールの内容の明確化・具体化であります。ここでルールと申し上げますのは、取引ルール、業者ルール、市場ルールを含むものであります。ルール内容の明確化・具体化の目指すところは、金融イノベーションと十分な利用者保護とを両立することができるルールの体系の整備であります。
このことを若干敷衍いたしますと、整備されるべきルールの内容は、公正で効率的に責任を配分するものであること。また、そのルールは柔軟なものであることが求められます。また、そのようなルールが整備されることは、経済全体として最適な金融仲介が実現し、適切なリスクの評価とリスクの再配分とが行われるようになるための前提条件であると考えられます。さらに、ルールの整備は、金融市場と金融取引に対する信認を確保するためのものであると位置づけられます。
以上のような問題意識の下で、議論をこれまで行い、また引き続き行おうとしております対象は、次のようなものです。
まず、ルールを明確化し、具体化するためには不可欠な作業であると考えられますホールセールとリーテイルの区分及びプロとアマの区分を議論しております。その上で、明確化・具体化が行われるべきルールの領域は広範囲に及ぶものでありますが、主として金融商品の販売・勧誘に関するルールのあり方について、ルールの内容そのものと、その実効性確保に関して議論を行っております。さらに、ホールセール・リーテイル又はプロ・アマの区分問題及び販売・勧誘ルールの問題の前提であります金融商品、金融サービスの範囲をどのように考えるかという点や、その利用者像をどのように把握するかという点にも議論が及んでおります。
以下、議論の具体的な内容の報告に入ります。
最初に、ホールセールとリーテイルの区分及びプロとアマの区分について御説明いたします。
ホールセールとリーテイルの区分、プロとアマの区分の基準・手法につきましては、外形的に線引きをすることと、ルールの選択に関する手続ルールを定めることの2点が重要であるという考え方がワーキング・グループでは概ね共有されたのではないかと思います。それぞれを若干敷衍いたします。
まず、外形的に線引きをすることに関しては、取引主体、すなわち当事者に着目してプロとアマに区分する方法が考えられ、それとともに、取引の内容に着目してホールセールとリーテイルに区分する方法が考えられます。また、この二つは必ずしも二者択一ではなく、二つの区分を組み合わせる方法も可能ではないかと思われます。そして、区分のための具体的な基準については、客観的・明確性を確保することが留意されなければなりません。このことから、外形的な線引きが重要であるという考え方が導き出されます。
それとともに、多様な主体、多様な取引に柔軟に対応することができる基準であることにも留意が必要です。さらに、その基準に基づく区分の実行可能性が留意されなければならず、その際には、事前の調査、情報収集がどのように行われるべきか、プライバシーの保護の点からは問題はないか。また、区分が適切に行われたことを事後的に立証するためのコストの観点からも現実的かという視点が重要であると考えられます。
具体的な区分については様々なアイデアが提案されている段階ですが、プロとアマの区分の例としては、ほんの一例にとどまりますが、あるいは参考例と言うべきでありますが、個人と法人あるいは証券取引法上の適格機関投資家、商法特例法上の大会社といったものが参考になり、また、一定の資産、所得、取引規模、知識・経験、投資目的などの要素を区分の基準に利用することが考えられます。
ホールセールとリーテイルの区分、プロとアマの区分の基準・手法について重要であると考えられます第2点は、ルールの選択に関する手続ルールを定めることであります。ルールの選択というのは、幅広い取引主体が自由にルールを選択することができる環境を確保するという観点から、外形的な基準で一定の線引きを行った上で、当事者の合意によってプロ・アマの区分を選択し、転換できることを認めようとする考え方であります。
ごく簡単にこの点を補足いたしますと、客観性・明確性が高く、また、実行可能性も大きな外形的な基準で一定の線引きを行いますと、果敢にリスクテイクしようとする者から取引の機会を奪ってしまう危険があり、そのような危険を回避するために、当事者の自由で確実な判断に基づいて別のルールの下で取引をする機会を認めようとするものであります。
ただし、この区分の転換の選択が軽率に、また、十分な判断に基づかずに行われますと、そもそも外形的な基準で一定の線引きを行う趣旨が否定されてしまいますので、工夫が必要となると考えられます。
続いて、ホールセールとリーテイルの区分及びプロとアマの区分のそれぞれに適用されるルールの内容については、議論の出発点として、どの分野の主体あるいは取引を念頭に置いて考えるべきかという問題があります。この点について、ワーキング・グループでは、なお議論の途上ではありますが、おぼろげに見えてきました筋は、まず、一定の自己責任を負い得るアマあるいはリーテイル分野を念頭に置き、そのような分野において妥当すべきルールを考え、その上でプロあるいはホールセール分野についてはルールを軽減し、場合によっては適用除外していく。それとともに、他方で、自己責任を問い得ない分野がある場合には、アマあるいはリーテイル分野のルールをさらに保護的な措置を追加するというものではないかと思われ、このようなアプローチをどのように考えるかという点を軸に、引き続き議論を行うことになろうかと考えております。
続いて、議論の具体的内容の第2点である販売・勧誘をめぐる論点に進みます。
この論点においては、説明義務と適合性原則という二つの概念を販売・勧誘行為に関するルールの中に取り込むとするならば、それぞれどのように定義するか。そして、両者の関係をどのように整理するかが問題となります。
適合性原則については、ルールの中に取り込むべきかどうかという点で相当議論をする必要があるものですが、そのような議論を効率的に行うためにも、それぞれの定義と両者の関係は重要であります。ワーキング・グループにおける現在までの議論においては、適合性原則には、説明義務と異なる原理を基礎としたルールとしての側面があるという指摘が示されております。その上で、説明義務及び適合性原則に係る民事法上の効果という大変大きな問題がございます。現行法において、説明義務と適合性原則について業態ごとに若干異なりますが、業者ルールとしては規定されていますが、説明義務違反及び適合性原則違反の民事法上の効果につきましては特に規定がなく、その結果、現在、裁判所においては、民法の一般ルールに基づいて損害賠償責任又は契約の無効が判断されております。
このような現状に対して、この点に関する取引ルールの内容をより具体化・明確化することができないかが問題となります。そしてそこでは、取引ルールと業者ルールの守備範囲、あるいは機能をどのように分担するのか。そして、相互の連関、連動の仕組むをどのようなものとするのかが問題となります。これらはワーキング・グループで引き続き精力的に議論をしてまいる論点であります。
さらに、最終的には、説明義務及び適合性原則に係るルールを具体化しなければなりません。その方法論としては、法令、ガイドライン、自主ルールなどのルールの形式の各レベルにおいて、それぞれどのようなルールを示すべきかが問題となります。ルールの形式の各レベルにおける役割分担の問題であります。そこで考慮されるべきは、ルールの明確性を確保すること。金融取引の多様性に対応したものとすること。さらに、金融取引のイノベーションを阻害せず、同時に取引の内容や対応の変化によって利用者の保護が欠けることになることを防ぐことであり、しかも、ルールの実効性が確保されることであります。
この販売・勧誘行為をめぐる論点の中には、さらに勧誘規制・広告規制の問題及び販売・勧誘行為者の責任範囲の問題がありますが、これらは今後議論をしていく予定です。
最後に、関連インフラ等について御説明いたします。ここではルールのエンフォースメントと利用者・消費者の啓発・教育を問題として取り上げております。
ルールのエンフォースメントについては、金融機関のコンプライアンスの仕組むを有効に活用する方策を重要視する意見が多く示され、例えばイノベーションの中でルールがエンフォースされるためには、内部ルールの制定が有効であるとの意見が示されております。
また、自主規制団体について、従来の業態別の自主規制団体に代わり、行為ルールごとの自主規制団体が有効となるという意見が述べられています。さらに、個別企業である金融機関のコンプライアンス及び自主規制団体による自主規制が有効に機能するためには、さらにどのようなインフラが用意されるべきかが問題となるのであり、それは監督当局による行政的な監督なのか、あるいは裁判所の司法的な解決なのか。裁判所の司法的な解決に関連しては、取引ルールの充実・整備に金融機関のコンプライアンスや自主規制団体による自主規制が有効に機能するためのインフラとしての性格を認めることができるのではないかといったことが問題となるものと思われます。
ルールのエンフォースメントについては、監視・チェック体制、制裁・是正措置、簡易な紛争処理手続を含めて、なお引き続き議論をしていく予定です。
関連インフラ等の二つ目である利用者・消費者の教育・啓発については、金融市場を活性化させつつ被害を事前に防止するためには、賢い投資者を増やしていくことが必要であること。しかし、一律の投資者育成は困難であるため、人々を資産保全層、資産形成層、資産形成予備層に分け、資産保全層と資産形成層については、消費者センターなど現行の対応に加えて、さらなる体制の充実が必要であり、高校生以下の資産形成予備層については、学校教育における金銭教育の内容の改善が必要であることが意見として述べられ、また、金融商品が複雑化する中で、中立でかつ広範囲な金融知識を有していて、利用者教育を行うことができる人材の確保が困難であるとの認識が示されております。それとともに、個別企業である金融機関及び業界の側が教育・啓発活動に積極的に取り組むことの必要性も指摘されました。利用者・消費者の教育・啓発については、これらの意見や指摘を受けて、引き続き議論をしていく予定であり、そこでは電子媒体の活用も視野に入れていく予定であります。
以上で、ホールセール・リーテイルに関するワーキング・グループにおける主な論点についての御報告を終えることにいたします。ありがとうございました。
○蝋山部会長 どうもありがとうございました。
恒例ですので、クーさんを紹介させていただきます。リチャード・クーさんです。どうぞよろしくお願いいたします。
○クー委員 よろしくお願いします。
○蝋山部会長 それでは、続きまして、集団投資スキームに関するワーキング・グループでの検討状況について、神田委員から御報告をお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。
○神田委員 神田でございます。集団投資スキームに関するワーキング・グループの進行役をさせていただいておりますので、私の方から簡単に御報告をさせていただきます。
集団投資スキームに関するワーキング・グループは、2月3日と2月25日だったと思いますが、2回単独で会合を持ちました。なお、3回目は、この後、山田先生から御報告がありますホールセール・リーテイルのワーキング・グループの合同の会合として開催されました。
集団投資スキームに関する問題点というのは、前の新しい金融の流れに関する懇談会の中でもかなり明確に問題の所在、問題意識は出ている論点ではないかと考えられます。それに基づきましてさらに論点を再整理をし、第1ラウンドの第1読会とでも言うのでしょうか、ざっと全般の項目を議論して今日に至っている次第であります。
お手元の資料で申し上げますと、縦長の5−3という資料、それから5−4という資料があります。5−3の資料と5−4の資料の関係は、これはホールセール・リーテイルのワーキング・グループも同じだと思いますが、5−3の資料の主な論点というのが5−4の資料の左半分に書いてありまして、5−4の資料の右半分は、ワーキング・グループで出されました主な意見を御紹介してあります。今日は時間の関係で、ワーキング・グループにおける主な意見というものは御紹介いたしませんけれども、適宜御覧いただければ幸いでございます。したがいまして、むしろ山田さんと同じように5−3の方の縦長の資料に沿って、以下簡単に申し上げます。
集団投資スキームに関しましては、5−3を御覧いただきますと、五つの大項目に分けて問題を整理しております。第1が集団投資スキームをめぐる現状認識。それから2番目、これは1ページですが、ルール整備の基本的考え方とアプローチの方法。3番目は次のページになりますが、基本的なルールのあり方。これはいわば各論になるところであります。4番目は3ページ目になりますが、その他の検討事項として、基本的ルールを前提とした上でさらに検討が必要となる事項。そして5番目が、横断的法制の確立に向けた方法論ということであります。
1ページに返っていただきまして、もう一つ資料の見方について若干申し上げておきますと、この資料には、1.?・とか、こう書いてありまして、1.の?あたりを御覧いただきますと、さらに→印があります。これは・あたりのところが主要な論点として整理して議論をしたものですが、この→印の部分については、特にワーキング・グループにおいて突っ込んだ御意見が出されたというふうに理解される部分であります。それを申し上げまして、1.に戻りまして、集団投資スキームをめぐる現状認識。これは流れ懇談会においても相当指摘されていることでありますけれども、?の最初にありますように、集団投資スキームとは何かという話につきましては、多数の投資者からの資金のプーリング、それと専門家による資産の運用・管理ということと、投資者によるリスクテイク、それから一定のガバナンス機能という、大体こういう両軸で捉えております。
これを項目を一つ一つ御紹介する時間的余裕はございませんので、1.の?で、集団投資スキームをめぐる現状分析として、二つ目の・にあります集団投資スキームが発展しない要因分析。どうもいまいち発展していないという認識があります。これには制度の問題と実態の問題というのでしょうか、そこの言葉で言う経済的・社会的問題と二つの側面があると考えられますが、経済的・社会的問題については、そこに書いてありますように商品性の問題、情報開示の問題があるのではないかという御指摘がございました。それと並んで二つ目の→印ですが、投資者によるリスクテイクを容易にするような環境整備がまだまだ必要ではないかという御指摘がありました。
制度の方の問題は、これは流れ懇でもう既に指摘されていることですけれども、縦割りの法制からくる弊害がある。それから、法制・ルールが明確でない、具体的でないということから、不確実性を生んでいるといったことに大体収斂されると考えられるわけであります。
そこで、「2.集団投資スキームに関するルール整備の基本的考え方とアプローチの方法」ということですが、そこに書いてありますように、?、それから2ページ目にいっていただきまして、「アプローチの方法(ルールのあり方〔総論〕)」としては、2ページの一番上から2行目の・になりますが、投資対象や投資ビークルの形態にかかわらず、機能の面に着目して横断的に適用されるべきルールを検討する必要であるのではないかということであります。そしてまた、それは広い意味での証券市場というのでしょうか、資本市場というのでしょうか、その発展に資するような法制整備になるのではないかという問題意識であります。
続きまして、3.で各論でありますが、実はこの各論も、かなり流れ懇の「論点整理」で既に整理されている問題であります。そうは申しましても、3.?ルールの対象。集団投資スキームについて横断的なルールを整備するとして、何をもって集団投資スキームとしてそのルールの適用対象とするかという問題は、詰めて考えると難問であります。抽象的に申しますと、そこの→印に書いてありますように、資金のプーリング(共同性)ということと、受動性というのでしょうか、お金を出す人でない人が運用・管理をする。お金を出す方はその上がりをいただくという受動性。この二つがメルクマールになるという問題認識でありますけれども、これは、金融サービス法という名前で議論されている話との関係で申しますと、三つ目の・になりますが、金融サービス法の対象となるべき「金融商品」というものを定義しなければいけないことになります。それと集団投資スキームとの関係をどう整理するのかという問題が、入口の重要な問題として存在しております。
このあたりは私の個人的な感触になりますけれども、むしろこの部会で御議論をいただければ大変ありがたいと思います。特に二つ目のになりますが、預金とか保険商品という、これまで日本で大きなシェアを占めてきた商品ですね。こういうものをどう取り扱うのかという点につきましても、ワーキング・グループでももちろん御意見はありましたけれども、それは5−4に紹介してありますけれども、この部会等でさらに詰めた御議論をお願いできればいいのではないかと感じております。ちょっと私の感想まで入ってしまいました。
3.?ですが、集団投資スキームに関してルールを設定していく上で、どういう考え方に立ったらいいかということですが、そこに→印が三つあります。
第1には、当事者間のリスクシェアリングの明確化の必要性ということで、伝統的な銀行預金ですとか保険などとは違って、お金を出す人も薄くリスクをシェアするような、どういう条件でそういうことが可能なのかといったことを明確化する必要があるのではないかという点。それから、運用性・裁量性といったところに十分配慮してルールを考えていかなければいけない。そして最後に、市場性というのでしょうか、マーケッタビリティというものに応じたルールの設定ということが、特にワーキング・グループでは御指摘がございました。
??は飛ばさせていただきまして、3ページ目にいきまして、??も飛びまして、4.その他として、?にありますように、集団投資スキームを大きく類型に分けると、「asset
securitization」と「asset management」というような分類で差し当たり分けられるのではないかという問題意識であります。その上で、特性を踏まえた対応の必要性ということを議論する必要があるのではないか。
そして、?になりますが、ガバナンス構造ということについて、ワーキング・グループでは、そこに→印がありますけれども、幾つか御指摘がありまして、一つには、ビークル内部の責任分担(関係者の責任分担)、それと、内部と外の人との責任分担について明確にする必要があるのではないかという御意見。それから、ガバナンスという話とディスクロージャーの役割。このあたりの最適ミックスというか、関係をきちんと整理する必要があるのではないかという御指摘がございました。
そのほか、?のクロスボーダー取引、?の信託関連法制等も重要ですが、?の信託関連法制につきましては、3回目の合同ワーキングの方で御意見が出ていたように思います。
最後に、5.でありますが、横断的な法制を確立すべきだという問題意識は、そもそも流れ懇で既に出ていたと思いますけれども、?にありますように、方法論としてどういうふうに考えたらいいのか。?にあります集団投資スキーム法制と金融サービス法制との関係をどう整理したらいいのかという問題意識がございます。
最後に、これは先ほどちょっと申し上げましたところの私の感想というようなことで、若干今の点について補足させていただきますと、現状の法制で問題点はどこにあるのか。これは法律上の問題、それから法律外の問題。先ほどちょっと申しましたけれども、そういう点についての認識も、もう一度この部会で御確認いただければありがたいように思います。
そして、今最後に申し上げました横断的法制の確立に向けた方法論というときに、例えば「横断化」といっても、金融商品とか集団投資スキームといったものをいわば横断的に定義し、自由な参入を認めていく一方で、こういう行動ルールというのでしょうか。伝統的な言葉で言いますと行為規制になろうかと思いますが、そういう行動ルールに服してくださいという方向がいいのか。それとも、言ってみれば金融サービス業者といったような枠組みを横断的に置いて、それに対して監督法的なルールを設けていくという方向がいいのかといったあたりも、ややワーキング・グループからすれば手に余る部分がありまして、この部会等で御意見を賜れれば大変幸いだと思います。
また、横断、横断と言いますけれども、どういう機能に着目して横断をするのか。山田さんから御紹介ありました販売とか勧誘とか、そういういわば出口の部分なのか。あるいは資産の運用・管理、仕組む行為といった、そういう仕掛けの部分もあるのかというようなことも重要な論点でこの部会等で御議論いただければありがたいと思います。
そして、抽象的になりますし、繰り返しになりますが、最後の行にあります集団投資スキームの法制と金融サービス法制というものをどういうふうに整理し、関連づけるのかということについても、むしろこの部会で御意見を賜れればありがたいように思います。
以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
最後になりますが、二つの部会で受託者責任についての合同会合を開きました。そのことにつきまして、山田さんからお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。す。
○山田神戸大学教授 ありがとうございます。続きまして、受託者責任関連の主な論点について御報告を申し上げます。
ただいま御紹介がありましたように、3月15日にホールセール・リーテイルに関するワーキング・グループと集団投資スキームに関するワーキング・グループは、受託者責任をテーマとして合同で会合を持ち、事務局からの説明の後、メンバー、オブザーバーによる討議を活発に行いました。その討議の様子に基づき、以下御報告を申し上げます。
縦長の資料「WGにおける主な論点〜受託者責任関係〜」、右肩の資料番号は「第一部会5−5」となっております。及び横長の資料「WGにおける検討状況〜受託者責任(fidueiary
duty)関連〜」、右肩の資料番号は「第一部会5−6」となっております。この二つの資料を御覧ください。そして、先ほどと同様に、縦長の資料「WGにおける主な論点〜受託者責任関係〜」に沿って御報告を申し上げます。
最初に、検討の目的と基本的な問題意識について御報告します。
検討の目的は、金融取引の高度化・専門化に対応した金融商品・金融サービスの提供に係る分業体制の高度化に対応するルールを新たににしていくことであります。そこでは、分業体制の高度化の下で、金融イノベーションと十分な利用者保護とを両立させるという要請に応えなければならず、また、別の角度からは、公正で明確な責任配分とルールの柔軟性とを両立させるという要請にも応える必要があると考えられます。
ルールの柔軟性とは、金融取引・金融サービスを提供する側に裁量性が与えられていることのメリットが生かされるという趣旨であります。さらに、分業体制の高度化の下で、取引主体の合理的な意思を金融取引・市場に反映させること。そのことによって、経済全体として適切なリスクの評価とリスクの再配分を担う金融仲介が最適な形で実現すること。それらによって、金融市場・金融取引が内外からの信認を確保することが検討の目的であります。
このような目的の下で検討を行う際の基本的な問題意識は、何よりも、金融取引における専門化、あるいは受託者の責任に関する諸ルールを明確化し、具体化し、さらにその実効性を確保する方策を明らかにすることであります。
そこで、現状については、金融取引における専門化あるいは受託者の責任について、現行法制、現行法理の必ずしも十分に対処し切れていない部会はどこにあり、どのようなものかを明らかにすること。及び、将来に向かっては、これらに関して信認関係(fiduciary
relationship)又は受託者責任(fiduciary duty)の考え方の活用を探ることが、より具体的な問題意識となっております。
以下、議論の具体的な内容の報告に入ります。
受託者責任に関する基礎概念につきましては、現状の法制では同じような機能を行っていても行為ルールが異なり、したがって、それを横断的に整理していく必要があり、その作業を進めていく際に、
fiduciaryという考え方は重視する必要があるという意見が述べられ、また、
fiduciaryに係るルールをできる限り明示していくとともに、 fiduciaryという考え方を、包括的なマーケット法制を支える高度な倫理上のバックボーンと考えてはどうかという意見が述べられました。
また、金融取引における様々な信認関係を金融の機能面に着目して類型に整理することは取引ルールの明確化のために有効であり、積極的に打ち出すことが望まれるという意見や、同じく類型に整理することは、直接の契約関係に立たなくても客観的にスキーム全般を見渡した場合に必要となる行為基準が明確になり、それとともに当事者の責任分担関係が明確になり、さらに、将来的に予測不可能な事態が起こった場合の解決のための基本原理が明確になるという点から重要であるという意見が述べられました。
受託者の行為に関するルールにつきましては、資産運用、資産管理、仲介、助言、販売・勧誘、仕組む行為などの類型ごとに見たルールのあり方が問題となりますが、合同の会合では、以下の点を重点的に議論いたしました。
第1は、助言あるいは販売・勧誘行為において、利用者と業者の信認関係に着目した受託者的な義務が発生する場合があるかという問題であります。とりわけ適合性原則やアフターケア義務が、信認関係あるいは受託者的な義務とどのように関係するかという問題であります。金融商品を販売した者は、原則として販売した商品についてアフターケア義務を負わず、一定の場合に負うことがあるとする意見があり、それとともに、自ら購入した金融商品についてアフターケアをすることができないような利用者に、業者がそのような金融商品を販売する場合にはアフターケア義務を負うことになるのではないかという意見が述べられました。
また、適合性原則は多義的に用いられており、厳密な意味では、業者は特定の者に適合しない商品を売ってはいけないという意味であり、それに対して、広義の適合性は、利用者の投資経験等に応じてふさわしい情報提供を行うべきであるという、ノウ・ユア・カスタマー・ルールとして理解されているものであるとの指摘が行われています。
さらに、助言サービスにおいては、正しい内容の助言を行うことは、業者が善管注意義務として負う義務の内容であるとの指摘が行われております。
第2は、利用者と受託者、仕組み行為者、販売者との間における責任範囲をどのように考えるかという問題であります。基本的には、それぞれの行為者が自分の行為について責任を負うべきであるという理解で共通しているように思われます。その上で、複数の業者の責任が競合する場合の解決方法としては、責任を負う者の中に販売者が含まれるのであれば、利用者は販売者に対して責任追及をすることができるという意見が述べられました。
以上のような受託者の行為ルールの具体化・明確化の方法については、手続面、仕組み面においてルールを明示すること、及び受託者の行為義務を具体化することが問題となります。
この点を敷衍いたしますと、受託者の行為ルールについて、どの程度まで具体化・明確化を図るかが問題となり、そこでは、受託者に裁量性が与えられていることが、金融商品・金融サービスのイノベーションの点からはメリットであることとの比較衡量が必要となってまいります。
また、法令で規定するのか、当事者の自主的なガイドライン的なもので対応するのかという問題もそこには同時に存在します。
これらの問題については、法律が自主的な基準の形成を促し、また、サポートするよう役割割を果たしつつ、自主的な基準に委ねられない部分については、法律がルールを明確化していくという考え方や、法令と自主規制ルールを組合せていくという考え方が、二つのワーキング・グループの合同の会合におきましては、比較的広く共有されていたように思われます。
信認関係と倒産リスクからの遮断、損失分担及び金融取引に関する信託法性のあり方については、まず、受託者が破産した場合の利用者の権利が問題となります。すなわち、集団投資スキームにおける受託者の破綻において、利用者である受益者の財産はどのようにして保護されるかという問題ですが、取引ルールとしては、分別管理をしていれば分別破綻、分別管理をしなければ受託者と一体で破綻となるため、そのいずれであるかを事前に明らかにしていくことが求められるという意見が示されました。
また、信託法制のあり方に関しては、現行法では、信託法が適用されるか適用されないかによって規律の内容が大きく異なる点があり、民訟法などの取引ルールによってこれを補完しつつ、横断的に整理をしていくことが必要であるとの意見が示されました。
以上で受託者責任関連の主な論点について御報告を終えることといたします。誠にありがとうございました。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
以上、二つのグループから、三つの論点についての検討の経過を御報告いただいたわけです。
引き続きまして、これからは自由討議に移りたいと思いますが、今お2人からいただきました内容についての御質問でも結構ですし、あるいは御関心をお持ちの点についての御意見でも結構です。どなたからでもどうぞ御自由にお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
まず原さん、どうぞ。
○原委員 質問なんですけれども、一番最初の御報告の中にあった2枚目のところで、もう少し詳しくお話をしていただきたいと思いましたけれど、3行目のところで、「他方、自己責任を問いえない分野がある場合には保護措置を追加する」というふうな表現があるんですが、これは具体的にはどういった場面がこういうのに当たるかな、そういう具体的なお話が出ていたのか。それとも、考え方としてそういうことだけが述べられたのかどうかということが1点です。
それから、関連インフラのところで自主規制機関のお話が出ているんですが、これも「業態別でない自主規制団体」というふうに書かれておりますけれども、具体的にはどういうイメージのものかということ。
それから、この言葉なんですけれども、いろんな言葉が出ておりまして、「利用者・消費者の啓発・教育」となっていて、ところが学校教育のところをずっと読んでいくと、「投資家育成の方策」となっていて、投資家育成だけに収斂されるような話ではないとも思ったりしておりまして、全体に「利用者」という言葉が使われているというところで、何か使い分けがおありになったのかどうかというのをお聞きしたいと思います。
○蝋山部会長 今の三つの点は、どちらかというとクラリファイ・クエスチョンなので、山田さん、お願いします。
○山田神戸大学教授 第1点でございますが、具体的な例を挙げての議論にはなっておりません。ですから、抽象的ではございますが、取引当事者の全体を見たときには自己責任を問い得ない領域もあるだろう。そこについては、自己責任を問うということを前提にしたルールに加えて、さらにその人たちを保護すべきルールを考えるべきだろうということについては、抽象的でありますが、かなり明確な議論が行われたところであります。
第2点でございますが、自主規制機関の役割として、行為ルールごとの自主規制機関というものが考えられないかというアイデアでございますが、これはワーキング・グループの中でこういう考え方に議論が集約したというわけではなく、そういう意見も出されていたというものであります。したがって、御発言の方にお尋ねをしませんと正確には御紹介できないところがあろうかと思いますが、私が理解しているところでは、行為ルールといいますのは、例えば販売・勧誘であるとか、助言であるとか、資産の運用であるとか、別のところでも出てきましたが、そういう金融サービスの行為ごとに自主規制というものを考えていくべきではないか。自主規制の重要性というものは繰り返しワーキング・グループの中でも触れられておりまして、それに対しては触れられているんですが、その自主規制というものを現行のような、例えば銀行であるとか、生命保険であるとか、そういう業態ごとの自主規制に委ねるのではなく、行為ごとのというところに重点が置かれた御発言であったように思います。
最後の第3点でございますが、「利用者」「消費者」「投資家」と、どういう関係かということでありますが、これは余り意識して使い分けていないというふうに御理解いただければと思います。
ただ、ここも私の責任で今御紹介させていただきましたが、元に発言された方がいらっしゃいますので、あるいは少しニュアンスがあるのかもしれませんが、「利用者・消費者の問題として議論を始めたけれども、最後は投資家育成だけに絞ってしまったのか」という御質問の趣旨でありましたら、そうではありませんで、ここはそれぞれに応じた利用者育成の方策を考えるべきではないかということで改めさせていただいた方が、より正確にお伝えできるのではないかと思います。
以上でございます。
○蝋山部会長 ただいまの最後の点は、これはどなたが発言されたのか。
高橋さん、どうぞ。
○高橋委員 流れ懇での言い方とか、この金融審議会の前の各審議会が、「消費者の学習の場」とか、「利用者の教育」とか、「消費者教育」とか多様な言葉が出てきていたので、いつかはこれを整理した上でまとめなきゃいけないという認識は持っているんですが、まずそれを問題として投げかけさせていただいたのにとどまっています。そのように御理解いただけたらと思います。
○蝋山部会長 原さん、どうぞ。
○原委員 私は、流れ懇を見ますと、随分「消費者」という言葉が出ていたんですよね。それで日弁連の意見書もかなり「消費者」で、これからの金融サービス・金融商品と消費者という立場が非常に鮮明で、印象も大変強烈だったんですが、これを見ますと全体に「利用者」という言い方になってしまうと、少し不鮮明になってくるのではないかなというふうな気がいたしまして、何かお話があってこういう言葉に統一をしていこうということになっているのか。それとも、ワーキングでの話ぶりというのでしょうか、それを反映したものになっているのだろうかということもお聞きしたかった。
○蝋山部会長 私としては、できるだけこの部会で、そういう点は一番適切な言葉を使っていきたいと、こう考えておりますので、どうぞワーキング・グループの議論は、その趣旨は御理解いただいて、用語・表現、そういう点については、むしろ原さんや高橋さんの方から「こうあるべきだ」という積極的な御提案を頂戴したいというふうに思います。今日の場でなくて結構でございますから。
能見さん、どうぞ。
○能見委員 山田さんの御報告に関連している分ですが、適合性原則についてなんですけれども、私もちょっと別な会合といいますか、ある場所でも、この扱い方は非常に苦慮しておりまして、そもそもどういうふうに位置づけたらいいかというのがなかなか難しいと思っているんですね。
今日の山田さんの御説明では、一つは、説明義務と適合性原則という形でセットにして、両者が違うということを前提にしながら御説明いただいたわけですが、私の理解では、説明義務というのは、恐らく金融取引においては、自己責任を問うための前提条件を整備するために必要な説明をするというものだと思うんですね。
それに対して適合性原則というのは、私もどういうふうに説明したらいいのかよくわかりませんけれども、そもそもある種の投資にはふさわしくない、そういうものに対しては売らないようにするという、一般的にはそういうふうに使われていると思いますが、これはある種の無能力者制度というのでしょうか、それにちょっと近い。ですから、そもそも自己責任を問えない。そういう人に対しては問えないので、そういうものはマーケットといいますか、そこに入ってこないようにすると、そういうようなものだと思うんですね。
この二つは相当性質の違うもので、私の方も解決がなくて、ただ御質問するだけで申し訳ないけれども、どういうふうに両者を関連づけて理解したらいいのだろうか。特に金融−−先ほど「別な」と言いましたのは、実は消費者契約の方なんですが、そちらの方では、適合性原則というのをもうちょっと正面に出して、それぞれ消費者の判断力とかいうものを考慮しながら、これも説明義務の内容などに反映させるという考え方があり得るわけですけれども、金融商品とか投資の場面では果たしてどうなんだろうかというのが、ちょっと漠然と疑問に感じております。私もまたこれから考えていきたいと思いますけれども、今まで山田さんがここで適合性原則というのを正面に出されましたので、何か両者の関連について、あるいは方向についてお考えがありましたら、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
○蝋山部会長 山田さん、お願いします。
○山田神戸大学教授 今、能見先生おっしゃられたように説明義務と適合性原則を分けて捉える、そういう意見がワーキング・グループでは一つの立場として示されておりました。ただ、それとは別に、能見先生が途中で触れられた点でありますが、適合性原則の考え方、すなわち顧客の属性に応じて勧誘や販売をしなければならないというところから、説明義務の内容を定めるため、内容を決定するために適合性原則というものが働くのであって、両者は二つの別のルールではないという位置づけもあり得ると、そういう意見も出されておりまして、どちらか一方でワーキング・グループの議論を進めてきた、あるいは進めていこうとしているものではありません。
今二つ申し上げました後の方の考え方ですと、説明義務をどのようにして整理するか、あるいはその内容はどのようにして決定するかという問題の中に取り込まれてしまいますので、適合性原則の根拠は何であるかという議論は、余り大上段に議論をしなくてもいいようにも思います。
それに対して、恐らく今、能見先生が御自分のお考えに近いものとしておっしゃられた点、私の説明の順序で言いますと最初に申し上げた点、すなわち説明義務と適合性原則は別である。自己責任が要求できる領域が説明義務の問題になり、適合性原則というのはその外の問題だという考え方において、適合性原則をどのように位置づけるかというところは、ワーキング・グループでも十分に解明されているわけでありませんが、一つの手掛かりとしましては、利用者が金融サービス業者に対して持っている信頼とか、あるいは金融サービス業者の専門性というようなところから、後の方の議論につながるんですが、受託者的な立場に基づいて適合性原則を遵守したような販売とか勧誘をすべきだというような適合性原則の説明の仕方というのがあり得るのではないか。必ずしも明確に形を伴ったものでありませんが、そういう方向が一つ示されております。
したがって、そういうふうな説明がもし可能であるならば、無能力者制度そのものとは少し切り離したものとして位置づけることができるのではないかと、最後のところが私の考えですけれども、考えております。
以上です。
○蝋山部会長 ただいまのところ、ホールセール・リーテイルの問題について御意見、御質問が出ているわけですが、引き続いて、山田さんのワーキング・グループについての御意見なり御質問を頂戴した方が議事進行上いいんじゃないかと思います。
関さん。
○関オブザーバー
資料5−1の部分で、1ページの下の方ですが、ホールセール・リーテイルあるいはプロ・アマという概念が出てきまして、それから、下の方に、ルール選択に関する選択の自由を認めることあり得べしというのがあって、それから2ページの方にまいりまして、「一定の自己責任を負いうるアマないしリーテイル」というのと、「プロないしホールセール」分野というのと、それから、「自己責任を問いえない」ここは「分野」と書いてありますが、三つに区分けしてあるわけですね。
それで、そのところは今後の議論の整理のためにもクラリファイしておいた方がいいんじゃないかと思うのでお尋ねするわけですが、ホールセール・リーテイルという概念がまずある。それから、プロ・アマという概念がある。それで、ホールセールというのは一応プロと並列でぶつかる。ホールセールはプロだと。リーテイルはアマだけれども、アマの中に「一定の自己責任を負いうるアマ」と、「自己責任を問いえない分野」と書いてありますが、一定の自己責任を問えないアマと両方ある。そういうふうな区分けになっていると考えていいのかというのがまず第1点です。
それから、「選択を認める」と。自分はこちらの分野だけれども、私はこの取引についてはこちらの分野に飛び越しますよということを認めるというふうに読めるのですが、これはまさかプロの方が、私はこの取引についてはアマとして認めてくださいと、こういうことを言うということはあり得ないだろうと思うんですね。
最近は劣後債か何か出しておいて、うまくいかなくなるとアマみたいなことを言っているところもあるようですけれども、これは具体的な問題ですけれども、それは別として、そこはそういう理解で、ここで「選択を認める」というのは、リーテイルあるいはアマになっているんだけれども、私はこの取引についてはプロ、ホールセールとして扱ってくださって結構ですと、こういうことを認めようということを書いていらっしゃるのか。そこが2番目のクラリファイです。
それから、3番目は、先ほど原さんが御質問になっていましたけれども、「自己責任を問えない分野がある場合には保護措置を追加する」というアプローチについてどのように考えるか。これは問題提起ですから、必ずそういうことを考えろということを、いいかどうかというのをこれから議論する立場ですが、後段の方の説明の中に、何かアフターケア責任を持つべきだというくだりがいろいろありまして、これは、もし自己責任を問えないアマという概念を認めて、それにアフターケア責任を業者が持てということは、これは相当難しい話じゃないかと思うので、ここのところは十分今後議論させていただきたいと思います。
以上です。
○蝋山部会長 山田さん、お願いします。
○山田神戸大学教授 3点について御発言いただきましたが、御質問は2点かと思いますので、最初の2点についてお答えさせていただきます。
第1の、分野は透明でない書き方をしてあるけれども、要するに3分野かという御質問でありますが、私はそのように理解しております。ただ、3分野ですねということでワーキング・グループで確認をいただいておるわけでありませんので、それぞれの方々が少し違ったイメージを持っていらっしゃるかもしれませんが、概ね自由でイノベーションを促進する領域と、それから、プロではないけれども、しかし、自己責任を負担して、情報の格差はプロとの間ではあるから、一定のそのためのルールが必要であるというもの、これが真ん中。そして、もう一つは、自己責任を問い得ないアマというふうに表現いただきましたが、それに当たるもので、具体的には、例えば適合性原則をそこには導入するとか、あるいはそのほかのいろいろな、ほかの取引領域でも考えられている、いわゆる消費者保護的なルールを取り込んでいくことが検討されるべきではないかという領域と、その三つに分かれるだろうと思います。
ただ、多分真ん中の領域が非常に広くなってこようかと思いますので、その領域がまたさらに2のA、2のBみたいな形で分かれてくる可能性もあるのかもしれませんが、まず現段階では、そのような3分野というふうに私も考えております。
それから、第2の点でございますが、ルールの選択というのはどういうことかというのは、とりわけ、今の私の申し上げた順番で言うと第2と第1というのでしょうか、その間のルールの選択を認めようということであります。しかし、議論の中に具体的に出てきておりますのは、全く御指摘のとおり自己責任を問い得るアマだけれども、自分は外形的にはアマに当たってしまうけれども、自分には十分に投資判断をするだけの力があるということでプロのルールを適用してくれと。そうすると、取引ができる範囲がより広がるし、取引をするためのコストが下がるというようなことを念頭に置いております。
その反対がどうかということでありますが、そこについては明示的にそれも認めようという議論はありませんでしたので、ちょっとよくわかりませんが、余りそこについては注意が及んでいなかったということになろうかと思います。
○蝋山部会長 ほかにありますか。
貝塚さん、どうぞ。
○貝塚会長 割と概念的に難しいんですよね、分けるのは。私はですから、ちょっと参考のために別の、似ているんですが、大口と小口の取引というのも当然あって、小口というのは普通はやっぱりアマである可能性が多いということ。
それから、もう一つは、専門家であるか専門家でないか。専門家というのは、要するに金融技術ないし金融の知識を相当持って、これは相当今の世の中では難しい要件ですが、少なくとも専門知識をかなり持っている人とアマチュアというところが一つの切り口。
それから、もう一つは、多分プロとアマというときに、プロは多分個人でない可能性が多いですね。だから、集団ないしは機関投資家とか金融機関とか、ある程度それなりの組織を持っているというのも割と重要。ですから、その辺のところがある程度入り組んでいまして、私は法律の人間ではないのですが、経済をやっている人間だと、もうちょっと具体的にこの辺は、大体そこで直感的に常識的に考えて、これはプロであり、アマでありというところは割と具体的な例示があって、そしてこれは大体そうなんだということで、そこのところをある程度具体例で、ここで大体こういうふうに切りますという形に持っていった方が、最後の法律の処理はとにかくとしてですが、そこのところを具体像を描きながらやっていかないと、皆さん多くの方の理解はかなり難しくなって、いろんな尺度があって、それを組み合わせると一体どうなるのか、そのあたりをもう少し整理していただいて、おおよその具体的なイメージを描いてもらう方がわかりやすいということではないかと思います。私の意見です。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
ほかにプロ・アマの問題について、非常に折衷的なアプローチをとっているわけですね。今、貝塚さんが指摘されたような、まだ具体的に条件がきちんと取り上げられてはいませんけれども、少なくとも外形条件で、外側から判別できる基準で、まずプロとアマなり、大口取引者なり小口取引者なり、あるいは専門家なり非専門家なり、そういう区分をしよう。しかし、それで押し込めるのではなくて、それを前提にした上で幾つかの取引ルールのシステムを提示して、一つ一つの取引ごとに、この場合は、プロ・アマの取引としてあなたはアマとして扱われますよ。それでいいですねと。いや、この場合は困る。プロにしてくれと。そういうときは、では、こちらのセットでやりましょうと。こういうようなルールの選択を、そういう二重構造にしてこの問題を解決しようと。
アメリカの場合はどうなっているんですか。基本的に取引規模でやるんですか、何億ドルとか。どうなんですか。恐らく国によって、経験によって違うと思うんですけどね。SECの基準に何かそういうのがある。私は細かいことはちょっと頭の中にありませんが、クーさん、何かアイデアはない?
○クー委員 私は、プロ・アマですとか、ホールセール・リーテイル、ホールセール・リーテイルというのは、実際に証券業の中ではっきりそういう区分けをしておりますので、それは先ほど貝塚さんからありましたように大口・小口と。これがまさにプロかリーテイルかということにほとんど
100%合致するわけですけれども、このプロ・アマの方は、余り厳密にやろうとすると大変な差別になるんですね。
つまり本来はできると思っている人にそういう取引ができなくなるとか、なぜ私はできないんだろうと。それに、さらにもっと大きな問題は、この人はアマだから、こういうものをいっぱい準備しなくちゃいけないとやると、当然それはどこかのコストに反映されます。そうすると、小口の取引の人に対するコミッションは、大口に対する倍にしようとか3倍にしようとか、そういうことになるわけで、消費者だから、かわいそうだから、いっぱいこういう保護的なものを設けようとして、一方でビッグバンで、国際競争という大変な世界に入っているわけですから、そういうコストの議論がどうもこの中でないような気がするんです。
業者にこれも要求する、あれも要求するとやっていたら、もう業者は、そんな客は要らないと。我々は大口だけで十分やっていけると、こういう判断だってできるわけですし、もちろんその反対で、では、アマの方ばかり専門でやろうというところも出てくるかもしれませんが、それは結局高いコミッションを取らないと当然ペイしないわけで、その高いコミッションに対して、つまり余りにも高いコミッションで、そういう商品に全く魅力がなくなってしまった場合、一般の小口の人たちは、ある意味で全く市場に出られなくなっちゃうわけですね。出ても余りにもコミッションが高い。よっぽどバブルのように株が上がっているときは儲かるかもしれないけど、そうでないときは、ほとんど参加する意味がなくなってしまうと、こういうリスクもあるわけで、私は余りアマだからどうしなくちゃいけないというのを、コストを無視して議論してしまうと、結局は消費者にとって不利益なことになるんじゃないかという気がします。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
ただいまの基本的なクーさんの意見はポイントの一つだと思いますが、山田さん、どう考えますか。
○山田神戸大学教授 それは現在許さないかもしれませんが、ワーキング・グループの先生方でお考えいただければと思います。
○蝋山部会長 ワーキング・グループの議事進行役が山田さんですので、今のクーさんの意見は十分にこれからのワーキング・グループの議論の中に反映させていきたいと思います。それは非常に大事な指摘だというふうに私は思います。
ほかにホールセール・リーテイルの問題について。
高橋さん、どうぞ。
○高橋委員 私はワーキング・グループのメンバーなんですが、このプロ・アマの議論が主で、関連インフラの方の議論というのはまだ活発化してないものですから、この場で皆様の御意見をいただきたいというふうに思います。
まず1点は、先ほど原委員から御質問のあった部分なんですけれども、それについて私の意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
ここで大切なのは、金融商品・サービスに対して自己選択、自己責任という意識を持って、リスクも分かち合える自立した人を増やすということが望ましいということが大前提にあると思うんです。それのためにどういう支援をしていくかということなわけで、そうであれば、単なる「利用者」という表現は余り好ましくないのではないかというふうに思います。やはり金融商品・サービスの受益者である消費者がという考え方で、その人が投資をしたときは「投資者」「投資家」というふうな使い分けをしたらどうかというふうに思っております。
もう一点、「消費者」を使いたいというのは、早期成立が急がれております消費者契約法の中に金融分野が入っているわけで、一般の人が迷わないという意味でも「消費者」に統一できたらば、それがよろしいのではないかというふうに思います。
それから、もう一点は、同じようなものなんですが、資料「第一部会5−2」の9ページ目の?のところなんですけれども、これも「利用者・消費者の啓発・教育(「賢い投資家」創り)」と、いろんな言葉が並べてあるんですけれども、これも整理をしたいところで、金融業界の方は、「教育」はおこがましいということで「啓発」という表現をよくお使いになるように認識しております。
しかし、業界あるいは業界団体等がおやりの中身を見ますと、商品情報が主になっているのかな。それプラス・ハウツー教育なのかなと思われますので、この辺も端的に「情報提供」とか「ハウツー教育」とかいう言い方をしてしまった方がいいのではないかというふうに思っています。
「消費者教育」というのは、その意思決定のプロセスを重視した、いわゆるプロセス教育というふうに消費者学会の先生方はおっしゃっているようなんですけれども、そちらの範疇に入るのだとすれば、そういうふうな自己選択、自己決定をできる人を育てるという意味での「消費者教育」という使い方をして、さらに金融分野だから、金融業界が行う情報提供だけでは、なかなか安全性とか利殖性とか流動性とか、そういった諸々の概念を理解することが難しいのであれば、「金融分野の消費者教育」とか何か頭に付けて、一般の方にわかりやすい御提示の仕方があるのではないかなというふうに思います。
このことを調べていきますと、ハウツー部分、情報提供は業界が主に担い、プロセス教育は学校教育とか社会教育が主に担っていくというすみ分けができれば、非常にこの分野についての議論が今後スムーズに進むのではないかなというふうに思いますので、皆様の御意見をいただきたいというふうに思います。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
前半の方はよろしいかと思いますが、後半は……。
どうぞ、能見さん。
○能見委員 先ほどのクーさんのお話で、私もコストのことがちょっと気になったので、蛇足ですけれども、よろしいでしょうか。
○蝋山部会長 どうぞ。
○能見委員 たまたまドイツの銀行のことをちょっと前に調べていたことがありまして、そのときに、皆さん御専門家ですから十分御承知でしょうけれども、ドイツでもディレクト・バンキングというのが伸びてきまして、普通の銀行がなかなか形勢が悪いというので、普通の銀行でも支店の窓口で有価証券だとかそういうものを販売する際に、コストを下げた商品提供というのでしょうか。要するに説明なしの有価証券の売買。今まで確かドイツは伝統的に有価証券の売買の場合には、一定のサービス料というのを、かなり高いとドイツでは言われているんですけれども、サービス料を上乗せしているんですけど、そのサービス料を非常に削減した安い有価証券の取引という、そういう項目というんですか、消費者の方で選べる、そういうものを提供している。それがまさに消費者の方からすると、コストの安い金融サービスを受けられるという選択肢が提示されているんだそうです。
ただし、その先はまだよくわからないんですが、どんな消費者であっても、それを選択すれば銀行の方はそれに応じたサービス、要するに説明のないサービスというものを提供するのか。そこでやはり何らかの、先ほどの適合性原則の問題に関連するんでしょうけれども、やっぱりこの人は経験がないので「そちらはだめです」というふうに言うのか、そこら辺が最後にちょっと残る問題かなということを感じました。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
神田さん、どうぞ。
○神田委員 意見を言わせていただいてよろしいでしょうか。2点あるんですけれども、一つは、プロ・アマ区分について、先ほどのワーキング・グループの御報告で、3分類ということになった場合に、頭の整理の問題ですけれども、両端というか、明らかにプロ、明らかにアマというのは、実際には非常にはっきりしていて余り問題がないので、ほとんどの部分は真ん中なので、今選択肢とか、まず外形基準で次に選択肢とか、いろんな難しい話というか、これから詰めていかなければいけないルールの問題だと思うんですけれども、ほとんどの部分がそこに入るので、実はそこが非常に重要なんだという感じがします。
それに関連して、イギリスで、お手元の5−7の資料の15ページでしょうか。現在の分類ですね。イギリスにおけるプロ・アマ分類が、15ページが非常にわかりやすい表になっていると思います。引き続いて16ページ以下に説明がありまして、さらに20ページでしょうか。現在どう整理していこうかというときに、取引主体に着目しようか、取引に着目しようかというようなことで非常に議論がなされていまして、このあたり、私が伺っている範囲では、かなり活発にイギリスでは議論されていますので、参考になるのではないかと思います。
それから、第2点目は、適合性原則と説明義務の話なんですけれども、適合性原則自身は、私自身は、狭い意味と広い意味というような形で漠然と理解しているんですけれども、むしろちょっと申し上げておきたかったのは、これは流れ懇の言葉で言いますと、取引ルールなのか、業者ルールなのかということなんですね。業者ルールは、業者に対して適合性の原則、あるいは説明をせよというものを要求するルールになるわけです。伝統的な言葉で言えば、監督法というか、業法上のルールになり、それに違反したからといって、直ちに私法上の効果に結び付くわけではないのに対して、取引ルールというのは取引保護上のルールなわけです。
最近、適合性原則という言葉をややこしくしているのは、釈迦に説法で恐縮ですけれども、取引法の分野において裁判所が、説明義務もそうですけれども、法律の言葉で言いますと、不法行為に基づく損害賠償責任を民法上業者に負わせるに当たって説明義務の違反があったとか、あるいは適合性原則というものの違反があったという言い方をする。そういう判例というか、裁判例の蓄積があるわけです。
したがいまして、現在では日本の民法の解釈として、裁判所が取引ルールの中で適合性の原則−−これは先ほどの整理で言いますと広い意味の方に当たると思うんですけれども−−とか説明義務を言っている。それとは別に、例えば証券取引法は伝統的に業者ルールとして適合性原則、それから、「説明義務」という言葉は証取法は使っておりませんけれども、それに似たような行為ルールというものを課してきたわけです。
したがいまして、将来を展望するときに、これはまず取引ルールとしての基本としてこういうものをきちんと認識をして、それを補完するような形で業者ルールとして上乗せするのか、あるいは違うアプローチなのかということを御検討いただく必要があるように思います。
以上です。
○蝋山部会長 どうぞ、原さん。
○原委員 2点ですけれど、一つは、高橋委員がおっしゃられたところで、私どもも消費者教育というのは長年、30年、消費者大学講座というのを開いておりますので、大変関心があるところで、確かにこれまで金融関係から出されているものというのはハウツー的ですね。それから、新聞とか雑誌に出ているのも、どういう金融商品を選んだら得かというふうな、選択のための情報はたくさんあるんですけれども、自分の自己決定できる、そういった消費者を作るという意味での消費者教育というのは大変不十分だというふうに感じておりまして、ここ30年やっている消費者大学という講座も、この2年、金融関係で立て続けに開いているんですが、大変関心が高くて、消費者問題というと、これまで女性が主のような形で講座に見えていたのが、男性が半数を占めるようになっていて、皆さんがこういった分野についての情報を非常に欲しがっていらっしゃるというのがわかります。
ですから、もちろん金融サービス法とかという法体系を作るという作業も急がなければならない大切なことではありますけれども、それにも増して、2001年のペイオフまでということを考えると、私はこの消費者教育の部分というのは、もっともっと早急に力を注いでやらなければいけないのではないかな。それでないと、いつまでも金融サービス法で、では、どの消費者にというところで、消費者なんて本当に厄介でお荷物だなというふうな意識からなかなか抜けられないのではないかなというふうな感じがしておりますので、ぜひ並行して進めていただきたいというふうに思います。
それから、もう一点なんですが、今、神田委員の方から出ました適合性原則の話なんですけれども、証券取引法で取引ルールのというふうなお話があったんですけれども、1週間ぐらい前だったと思いますけれども、朝日新聞の記事で、こういった金融商品についての消費者トラブルというのを、日弁連ではなくて第二東京だったでしょうか。その記事を取り上げていらして、それで各業界団体のコメントを取っていらっしゃる中に、証券業界だったように私は思うんですけれども、「適合性原則なんていうのは自分たちにとって都合のいいように判断ができるから、こんなに楽なものはない」とコメントをしていらしたのが新聞に引用されていたんですよね。それで、今の実態というのでしょうか、そういったものもちょっと併せてお聞きしたいと思います。
○蝋山部会長 今の点は早急には答えられないと思いますが、もしもオブザーバーの方々で何か。
関さん。
○関オブザーバー
私もその朝日新聞の記事は読んだような記憶がするんですが、 「証券業協会が言っている」とは書いてなかったような気がします。「証券会社幹部」とは書いて、こういうことを言う人間もいるのかなと思って感じていたわけですけれども、協会は、適合性原則違反というので処分した例もありますし、決して自分の都合のいいということのためにあるルールだなんていうふうに、そういう理解は全然してないつもりです。
○蝋山部会長 適合性原則の実態については、いずれの機会にか企画局の方で調べていただいて、まとめていただくなり、それをリポートの中に反映させるなり。
神田さん先ほどの御意見は、神田さんの意見としては、問題は提起されたけれども、どっちがいいと思いますか。取引法として適合性の原則を周知徹底させ、それを補強するものとして業者ルールとしての適合性の原則。この2段構えがいいとお考えですか。
○神田委員 私は、基本的にはその方がいいというふうに個人的には考えております。
○蝋山部会長 それから、高橋さんの提示された消費者教育。原さんも補強されたわけですけれども、単なる情報提供、ハウツーの伝授というものを超えての投資・資産運用に関する意思決定のプロセスをきちんと啓発する。こういう点の、もちろんそれは非常に大事なこと。意見を徴すまでもなく、きちんとその辺は使い分けた形で我々の報告書というものは、あるいは外へ出すものはやっていかなきゃいけないというふうに思いますので、改めて皆さんから意見を徴することはしません。よろしいですね。
○高橋委員 「消費者」という使い方についてはコンセンサスが得られたというふうに考えてよろしいんですか。
○蝋山部会長 それは非常にまたやや厄介だと思います。もうちょっと機を熟した方がいいと思います。というのは、議論のプロセスでは、恐らくそれぞれ思い入れを持って使うんじゃないんでしょうか。だから、どの人がどういうふうに使うかということをよくウオッチしておいていただきたいと思います。
○細溝債権等流動化室長 事務局が今補足しますが、イギリスも「コンシューマー」という言葉で書いてパブリック・コメントを求めて、その言葉をめぐって大混乱になっているようですので、他国の用例とかも見ながら、ちょっと検討はしてみたいなと思っています。
○貝塚会長 「消費者」という言葉が日本で使われている場合には、割合と例えばいわゆる「消費者教育」とか、どちらかというと通産省ないしは企画庁がやる国民生活、そういう概念に近いんですね。それで、金融の問題が登場したときの「消費者」というのは、やや違った側面が出てくるということは間違いないので、それは普通で言えば「カスタマー」という感じが強くなるんですが、その辺の表現は非常に難しいんですね。難しいというか、従来の「消費者」というイメージがあって、そこでこの話が出てくると、やや違和感があるということもそうですし、その辺、だから用語法は、私は割合と難しいんじゃないか。
○蝋山部会長 いや、難しくても何とかしなくちゃいかぬ。
○貝塚会長 だから、言葉としてはちゃんと定義しなくちゃいけない。
○クー委員 今イギリスの例を挙げられましたけれども、アメリカでも、私が中央銀行に最初に入行したときに言われたのは、元本保証のものは、つまり金融システムですね。これは政府として最終的に責任を持って見ていく必要がある。ただし、元本保証でないもの、だから、ここで言われている金融商品というのは、どちらかというとそちらへ入るわけですけれども、これはリスク・キャピタルであると。リスク・キャピタルに関しては中央銀行は必ずしも責任を負うものじゃないということを最初の日に言われました。
そういう意味では、いわゆる預金者というのは、つまり預金というのは決済機能を担っているわけですから、これがないと社会というのは機能しないということを考えれば、「消費者」という言葉を使えると思うんですね。でも、こっちの株を買っている人、債券を買っている人、これも「消費者」なのかというと、私は確かにおっしゃられたように、むしろここで言う「カスタマー」という表現であって、「顧客」ですね。「消費者」という一般的な言葉には、ちょっと私も抵抗を感じます。
あと、教育の点ですけれども、資料の5−3の部分に「集団投資スキームがなぜ発展しないのか」と。これは恐らく投資信託ということを念頭に置かれて書かれているんだと思いますが、私のある友人が実際にファンド・マネージャーをやっているんですけれども、ここの基本的な教育のところで、例えばあるファンドを作ったときに、それは5%で回すファンドなんだというときと、10%で回すファンドだというと、当然とるリスクは違ってくるわけですね。
そうすると、5%のファンドで10%のリターンが出たら、その投資は何か間違っているんですよ。ところが日本は、どうしてもそうならないと言うんですね。5%で10%出したら「いいじゃないか」と。ほかが10%出したら、「おまえ、なぜ5%なんだ」と、すぐこういう発想になってしまう。これは基本的には間違いであって、5%のファンドは、そもそも5%以上で回ったらおかしいんですね。5%以下で回るのも問題なんですけれども、そういうリスク・リターンが、残念ながら日本では全然定着してない。実際にファンド・マネージャーをやっている自分の上司でさえ、そういう認識がないんですね。だから、「株が上がっているのに、なぜおまえのファンド5%なんだ」と、こういう話になってしまう。だから、こういう本当に基本的なところで、業界でさえ教育が徹底してないものですから、ここは本当に学校教育からやり直してほしいなという気がします。
○蝋山部会長 どうぞ、井上さん。
○井上委員 今御議論になっている点に少し関わるんですが、従来の日本の金融市場といっても、サプライ・サイドの側の構造はあっても、もともと消費者的な発想法そのものが非常に乏しかったんだと思うんです。したがって、これから進むいろんな制度改革も、自然にいくと多分、サプライ・サイドの側からのいろんなことの議論が先行しがちであって、うっかりするとコンシューマー・サイドといいますか、そういう議論がやや後になるということを少し心配して言っていることなんですけれども、この山田さんのワーキング・グループのところでも、希望として、ぜひ一連の簡易な紛争処理制度とか、制裁、是正とか、裁判がいいとも必ずしも思えないものですから、いろんなインフラ整備についての議論をぜひ積極的にやっていただければありがたいなと思います。
何よりも今、アメリカやほかの国にある金融の利用者側、ユーザーと言うべきか、カスタマーと言うべきか、コンシューマーと言うべきか、大変難しいわけでありますけれども、そういう前提土壌が多分日本は違った上で議論をしているんだと思うんですね。それだけにかなり、今何人かの委員で消費者教育のことが非常に強調されましたけれども、そういうことを含めて、多分まだ消費者的な発想法が、製造物責任法ができてもまだわずかしかたたないぐらい、もともと乏しいわけですから、うっかりするとワンサイド・ゲームになりがちであるリスクを見ながら、ぜひ議論を深めていただければありがたいと思っております。
○蝋山部会長 山田さんの報告の中で、ある種のルールの体系ができたとして、その実効性確保の手段として、それぞれの業の中でのコンプライアンスの重要性が指摘されているかというふうに思いますが、今の井上さんの御質問からの関連として、一体どれくらい皆さんは、まず裁判とか、様々な外側の第三者の裁判も含めて、紛争の調停というのがあるでしょう。しかし、その以前に、当事者に非常に近い形での自主規制団体なり、あるいはそれぞれの当事者そのものの内部のリーガル・コンプライアンスというようなメカニズム。その辺のところは一体どんなふうに評価されているんですか。ある種の部会の方向性として、やっぱりこういうのは向こう側だと、サプライ・サイドだと、信用できぬと、こういうふうに皆さん考えておられるのか。
それとも、やっぱりそういうものも非常に重要な役割を演ずるものというふうに認識されておられるのか。その辺のところはどういうふうに、井上さんからの山田さんへの応援的な御注文に加えて、私ちょっと井上さんにお聞きしたい。どんなふうだったですか。
○井上委員 いや、十分に意見を言うほど情報を蓄積していませんので、遠慮させてください。
○蝋山部会長 印象としては、どうですか、原さん。
○原委員 私、製造物責任法を作るときに随分関わって、10年ぐらいやってきて、法律を作るのと併せて、そういった実効性確保のところもかなり気を配ってやってきたんですけれども、その部分は非常に難しくて、一応製造物責任法では、PLセンターというのが17ぐらいできておりまして、これは全部が裁判に行くということではなくて、簡易な処理ができるということで、一応その業界ごとにそれができていて、ただ、資金とか人というのでしょうか、人員とかというのが業界から出ているんですね。ですから、当初スタートしたときには、やはり業界丸抱えではないかというふうな批判が出ていたんですけれども、一方で、そこでやられていることの情報開示が徹底をすれば、外部からのチェックもできるという意味で、ちょうど今3年ぐらいたったところなんですけれども、思ったほど悪くはないと。だけれど、完全に消費者のサイド、中間的な中立的なスタンスでやられているのかというのは、まだちょっと結論は出ていなくて、PLセンターによっては、消費者から来た苦情というのをそのままメーカーに持っていったりとかいうようなのをしていて、そこ独自で解決をしようという、能力の問題もあるかと思いますけれども、それがやれているところとやれていないところとがあって、ちょっとばらつきはありますけれど、先行的なものではそういうものがあります。
あと、行政が抱えている苦情処理委員会というのが、消費者保護条例に基づいて各自治体にはほとんど整備されています。ただ、ほとんど活用されていないですね。
それから、東京の第二弁護士会の仲裁センターというところがありますけれども、これも期待をして見ているんですが、もう多分10年近くたっているかと思いますけれども、不動産関係のトラブルが持ち込まれることが多くて、金融商品というのはまだ余り入っていないような感じがしています。
だから、私としては、こういったものの整備はぜひ必要だというふうに考えているんですけれども、では、日本でどれだけ根を張ってやっていけるのかについては、まだちょっと未知数の部分もあるというふうな感じを持っています。
○蝋山部会長 ぜひそれぞれの企業、業者のサイドでの個々の法遵守の慣行というのがリーガル・コンプライアンスという形で確立して、それが集まった形で自主規制団体の、そしてそれがさらにパブリックな形での行政、こういうような3段構えぐらいの−−コストがかかり過ぎるというふうにクーさんに怒られるかもしれない。そういう3段構えのものをどういうふうにうまく低いコストで効率的に運用するか。こういうのが課題ではないかというふうに思います。
余り集団投資スキームについてはないんですが、上柳さん。
○上柳委員 今の点ですけれども、私も、個々のサプライ・サイドの内部なり、あるいは横断的な自主団体のいわゆるセルフ・コンプライアンスに非常に期待したいところというか、期待するしかないというふうに思っているんです。
ただ、この間の合同のワーキング・グループで印象的だったんですけれども、私がそういうふうに申しましたら、証券会社の中にいらっしゃる弁護士さんの方から、アメリカでもコンプライアンスが確立しているのは、やはり守らなかったときの制裁が極めて大きいからだと。そこに今までの歴史的に司法でもたくさんコストを使っておられるでしょうし、個々の企業でもコンプライアンス・コストをアメリカ、イギリスでは使っておられると思うんです。私は、コストを幾らでも使ってもいいんじゃないかという趣旨ではなくて、そういうことも踏まえて、そういう意味では日本は少し後発になったわけですから、後発の利益を生かして、何とかうまくやる必要があるんじゃないか。そのときには、ある程度コストがかかっても仕方がないというふうに思わざるを得ないんじゃないかというふうに思っています。
○蝋山部会長 余り集団投資スキームと、それから受託者責任については御意見、御注文がないように思いますが、もしありましたら、どうぞそちらの方に主力を移したいというふうに思います。
能見さん、どうぞ。
○能見委員 それでは、集団投資スキームの方についてですが、神田さんの一番最後の5.のところで?、あるいは前の方の説明でも出てきましたけれども、集団投資スキームの法制と、それから金融サービス法の関係というものについて、これもまだこれからさらに詰めて検討しなくてはいけないんでしょうけど、その両者がどういうレベルで違うというふうに理解するのか、恐らくそこの理解についても、いろんな理解の仕方があるのではないかと思ったんですね。
一つは、この集団投資スキームというのは、御説明にありましたように、小口のお金を集めてそれを投資するスキームですから、例えばその中には、財産を預かるカストディアンだとか、あるいはそれを運用する、指図する、いろんな人たちが関係してまいりまして、そういうもの全体についてどういうルールを作るかという意味で集団投資スキームというのを考えるんだとすると、これは金融サービス法というのは、あるいは私の理解が間違っているかもしれませんが、一応カスタマーに対して窓口になってくれる。そういう意味では、サービスを提供し、それを受け取る、契約のレベルの問題を扱うのが、取引ルールというふうに言えばもうちょっとわかりやすいのかもしれませんが、カスタマーとの間の契約についてのいろんなルールが中心になるものだ、そういうふうにスキーム全体のいろんな投資者の問題を扱うのと、カスタマーとの間の取引のルールを扱うという意味で、集団投資スキームと、それから金融サービス法というのが違うという理解も一つ可能だと思うんです。
それから、また、金融サービス法というのは、ある種のいろんな政策というのでしょうか、先ほどの預金だとか保険を入れるかどうかとか、そんなような観点から若干範囲が狭まる可能性がある。だけど、集団投資スキームというのは、純粋に機能的に考えていって、集団の投資のためのスキームだということで、こちらは広い。
そういう意味で、集団投資スキームの方が、まず確認ですけれども、範囲が広いというのが神田さんの理解なんでしょうか。あるいは先ほど言いました預金・保険、あるいはこれから問題となるであろう年金とか、これも集団投資スキームとしては、機能的には年金などの問題も入ってくるんだと思いますけれども、金融サービス法というところで扱うかどうかということになると、私は扱った方がいいとは思いますけれども、いろいろ異論などが出てきて、そこは狭いと。ちょっとその両者の区別の理解の仕方について。
○蝋山部会長 どうぞ、神田さん、お願いします。
○神田委員 ワーキング・グループでは、それについて詰めた議論はまだ私の理解ではしておりませんで、若干関連する御意見は出ていたと思うんですけれども、むしろこの部会で御議論いただきたいというふうにぜひ思います。
それで、私の従来の理解は、金融サービス法の概念の方が集団投資スキームの概念よりも広いというふうに理解していました。
これは流れ懇の報告書に則して言いますと、例えば一つの例としまして、金融サービス法の中には、「消費者」という言葉を使わせていただきますと、消費者がお金の出し手ではなくて借り手に回る。いわゆる消費者信用というふうに呼んでいる分野も含めて、そういう意味では、イギリスに金融サービス法という名前の法律がありますけれども、それよりも広いものを金融サービス法という名前で捉えていたということがあります。消費者がお金の出し手に−−「消費者」というのは便宜上使わせていただきますけれども−−回る方で言いますと、金融サービス法の中の集団投資スキームというのは、かなり大きな部分を占めるのではないかということです。しかし、金融サービス法には入らないけれども、集団投資スキームに入るというのは、ロジカルにはそういう整理は可能だと思います。
例えば、ある種の預金証券・保険証券が、集団投資スキームの定義にはファンクショナルに入るけれども、金融サービス法の適用対象からは何らかの理由で外れるべきだという議論は、ロジカルには可能かもしれませんけれども、これまでの議論の中ではそういう整理ではなくて、むしろ集団投資スキームの法制というのは、金融サービス法の中の中核部分としてその中に入るという、そういう整理だったと思います。
したがって、具体的に言いますと、あるものが金融サービス法の対象にならないということは、それは金融サービス法の中の中核的な法制となる集団投資スキームの対象とも「ならない」という表現がいいのかどうかわかりませんけれども、むしろ私はそう理解しています。ただ、それだけが唯一のロジカルな理解でないことは認めます。
○蝋山部会長 今の点をめぐって、岩原さん、どうぞ。
○岩原委員 私も大体神田さんと同じような考えを持っていまして、金融サービス法と集団投資スキームの対象というのは、ほぼ重なるというふうに思います。
まず、なぜかと考えてみますと、集団投資スキームというのは、要するにたくさんの人から集めたお金をプーリングして、専門家の人に運用してもらうというのが集団投資スキームであります。この集団投資スキームは、そういった仕組みの複雑性ですとか、あるいは金融のそういった流れで第三者に預けるということから、第三者がお金を預けた人の信頼を裏切るというような問題が出るということから、普通の物と物との取引と違った特別の法規制が必要だということで、集団投資スキームについては特別の法制が入ってきたというふうに考えられます。
具体的な商品で考えてみましても、ほとんどの集団投資スキームの商品が金融サービスに入ってきます。例えば、一番典型的なのは投資信託等でありますけれども、さらに広く考えてみますと、株式や社債というのも、ある意味で言えば集団投資スキームのうちの一つであります。ただ、それについては特別の法制がありますから、伝統的な会社法のルールで規制されているというだけのことでありまして、広い意味で言えば集団投資スキームの一つと考えられます。
さらに言えば、預金あるいは保険商品といったものも、これまた銀行なり保険会社という専門家のところにたくさんの人からお金を集めて、そういった専門家に運用してもらって、その成果を分配するという意味では、広い意味では集団投資スキームの一つだというふうに考えられます。ただ、これもまた特別の法規制がありますし、また、預金商品の場合には、決済制度の安全の確保といったようなことから特別の法規制があるということで、直ちに金融サービス法の対象にするかどうかという議論があり得ますけれども、私は、本来は金融サービス法の対象に入ってもいいものだというふうに考えています。
ただ、金融サービス法と集団投資スキームの違いが出てくる点として、先ほど神田さんは、いわば融資という与信取引の方についても規制の対象になり得るところが金融サービス法の違いだというふうにおっしゃったわけですけれども、これはまた金融サービス法の対象をどこまでに考えるかということと関わってきますけれども、そういう考えのほかに、与信の面でない、やはりお金を運用するという観点から考えましても、たくさんの人のお金を集めてプーリングをしない場合であっても金融サービス法の対象となり得るというか、なすべき場合がある。
例えば店頭デリバティブ取引のようなもの、これですと、たくさんの人から集めたお金を運用するといった側面はないわけでありますけれども、金融サービスとしての取引の複雑性ですとか、そういった点から考えて、例えば説明義務といったような点で、金融サービスとしての法制の対象にする方が妥当だということで、多くの国でそういうふうになっていますし、イギリスが典型でありますけれども、そういったものも金融サービス法の対象には考える。集団投資スキームではないけれども、金融サービス法の対象と考えられ得るという意味で、融資の面だけでなくて、そういった本来の資産の運用という面でも、両者の間で若干の違いがあるというふうに考えてはいかがかと思います。
以上です。
○蝋山部会長 どうぞ、能見さん。
○能見委員 今、岩原さんの御説明で大体いいんだと思いますけれども、私が先ほどそういう質問をしたのは、与信といいますか、顧客の方が借りるような場面は当然集団投資スキームじゃありませんから、金融サービス法の対象にそれも入れるのであれば、これは当然集団投資スキームの法制と金融サービス法が違うのはある意味で当然なんですけれども、お金を集めて運用するという場面で考えたときに、集団投資スキームの法制と、それから金融サービス法との間でギャップがある。
端的に言いますと、これは集団投資スキームなんだけれども、いろんな政策的な観点から金融サービス法の対象から外れるという考え方は、どうも適当ではないだろうと。やっぱり集団投資スキームであれば、金融サービス法で全部カバーした上で、もちろんその上で、さらに何か特別法というのがその上に乗っかるということはあるかもしれませんけれども、少なくとも外れるのは適当ではないのではないかということでちょっと申し上げたので、その点だけ補足したいと思います。
○蝋山部会長 もう一つ忘れてはいかぬのは、金融サービス法と言う場合に、市場法的な、公正かつ効率的なマーケット、市場を形成する、そういう側面を金融サービス法、特に日本の場合には持たなければいけない。それを前提にして、いわば新しい業として集団投資スキームというのは登場するというものではないと思うんですね。やっぱり金融サービス法というものの影響の及ぶ範囲というのは、そういう良いマーケットを日本の中に確立させるということも一つあるわけで、それは良い業者を作る。良い投資手段を国民に提供するということとは一応別な問題だと考えられますので、金融サービス法というのはずっと広くて網羅的だと考えていいんじゃないでしょうか。
どうぞ。
○貝塚会長 これは事務局の方が説明した方がいいんでしょうが、金融サービス法のイギリスの、26ページに出ていますが、要するに集合投資スキームの定義があって、それで適用除外として保険と、それから年金ですよね。それからクローズドエンドの、これはいろいろあり得るわけです。だから、原則的にはそうですが、適用除外というのが今おっしゃったようにいろいろあり得る。
○蝋山部会長 だけど、イギリスの場合、インベストメント・サービス・アクトですからね。フィナンシャル・サービスでなくて。しかし、今、日本が考えようとしているのは、我々が考えようとしているのは、まさにフィナンシャル・サービス・アクトだと思うんですね。だから、イギリスの例は、もちろん参考にはします。そういう適用除外というものはあり得るとは思いますが、初めからそれは適用除外だというふうにしてしまうのは、イギリスが例だからというのは、私はちょっと納得いかない。やっぱりもう少しこういう議論を詰めて、その上で、現行のバンキング、あるいはインシュアランスという問題をどう考えるかという方法をとるのが正道だと思いますが、違いますか。
○渡辺オブザーバー ちょっとよろしいでしょうか。
○蝋山部会長 どうぞ、渡辺さん。
○渡辺オブザーバー 今保険についても触れられておりますので、ちょっと参考にということでお聞きいただきたいと思いますが、基本的な整理の方向性について全く否定するものでありませんで、当然消費者の信認を得て投資マーケットを今後需要を喚起していかなくてはいけない。この方向で各業者も考えていかなくてはいけないという、これが基本だという認識でございます。ただ、そのときに、今英国の例も出ましたように、個々の商品、それからその担い手、その裏についている業者、この関係整理というのが非常に重要なことだというふうに認識しております。
今ありましたように、今日、集団投資スキームと、それから受託者責任の関係等が議論の中に出ておりましたけれども、この中で、例えば受託者責任というものについて、保険のスタンダードに当てはめるときにどういうふうに整理するのかと考えたときに、実はドイツやフランスは、信託法理を保険に当てはめるということにはしていないんですね。イギリス、アメリカ等については当然対象にしているんですが、ただ、今御指摘ありましたように、イギリスの中でももう少し細かく法規制が組まれておりますから、例えばユニットリンクと言われる保険の分野でありますけれども、これについては、運用管理について契約法、それから保険会社法、金融サービス法がそれぞれ適用されているという実態がございます。
ただ、先ほどのほかのいろんなルールを見たときに、個別のルールごとに適用除外になっておりまして、保険について、非常に実態に合った形での適用除外がそれぞれのルールについてなされている。こういったきめ細かいルールの検証というのが必要ではないかというふうに思います。
ですから、今後の御議論の中で、例えば今日のテーマに出ました受託者責任の問題につきましても、当然その受託者責任を問う中身ですね。フィデューシャリー・デューティそのものは非常に広い概念ですから、その中でも善管注意義務、忠実義務、それから分別管理義務、それぞれの経済効果というものはどういうものなのかという中身を見ていただいて、それぞれがその商品、あるいはその担い手、取扱者にフィットするのかどうか、その辺の検証していただいた上で御議論いただければありがたいなというふうに思います。
すみません、参考にということで、長くなりましたけど。
○蝋山部会長 ただいまの御意見に関して、お2人の議事進行役の方、何かレスポンスありますか。
私は、余り小口のところに今の段階から入っていくのは困ると思うんですね。むしろ木を見て森を見ずということになりがちなので、今、日本のこういうピンチな状況で必要なことは大きな筋であって、そしてその大きな筋を具体的に法制化する。そういう場合には、まさにおっしゃったようなことは非常に大事ですよ。
しかし、我々が今求めているのは、見失っているのはと言ってもいいかもしれませんけれども、日本の金融が大きな筋としてどっちへ行くのか。それを支える仕組みはどうなんだというところではないか。それが私としては、金融サービス法という形で仕組みのところを一括りに表現はしているんですけれども、それを具体的に法制化したり、インプリメンテーションを考えるときには、まさにおっしゃるように一つ一つ丁寧に考えていかなければいけないと、そんなふうに思います。
ですから、保険という場合でも、総合保障の場合と、それから、保険会社が持っているノウハウを生かして、いわば貯蓄型のサービスを提供しているというものとは一応アンバンドルして、純粋な保険の部分というところはちゃんと我々は考えておかなければいけないと思うけれども、それを具体的に個別立法という形で考えたときには、保険業法との絡みではどんなふうに調整していくか。これが次の課題としてあると思います。
決済についても同じであって、定期預金は決済してないわけですから、それは基本的にはアセット・マネジメント。ただ元本保証で、そういう点では、決済のところはきちんと特別な例として考えなければいけないけれども、しかし、アセット・マネジメントも非常に大きく運用サービスというものを銀行は提供しているという事実を我々はきちんと分離しつつ、総合的に考えなければいけない。苦しいところだろうというふうに思います。
どうぞ、クーさん。
○クー委員 集団投資スキームということですけれども、いろいろと−−また「消費者」という言葉になっちゃうんですが、消費者保護の話がいっぱい出たわけですが、その一方で、究極の投資ファンドというのはヘッジファンドですね。全ての規制から外れていて、だからすごいリターンを上げることができ、今、世界のかなりの金がそういう形で動いていて、日本の証券会社も、海外ではヘッジファンドやっております。国内ではいろんな規制があってできなくて、やってないわけですけれども、これはやがて日本でもできるようになるというのが、この金融サービス法の究極的な姿というふうに考えていいんですか。それとも、日本の消費者は、あくまで低リスク・低リターンというところで甘んじなくちゃいけないのか。ここはどうなんですか。
○蝋山部会長 こういうときには会長にお願いします。
○貝塚会長 ヘッジファンドというのは、私の理解している限りは、要するにケイマンかどこかであるでしょう。ですから、平たく言えば、規制当局がほとんどないところでやっていますよね。だから、普通の先進国でそういうファンドを運用する場合は、必ず何らかの意味で規制の対象になっていると思います。どの程度かは別問題として、日本の金融当局が、確か日本のベースで、これは大蔵省が詳しいわけですが、国際的に主張しているから、少なくともレジスターして、その中身、細かいディスクロージャーは無理ですけれども、その辺のところまである程度情報を明らかにするようにと。それは国際的な協定ですけど、基本的にもともと規制当局のないところで実質的にはやっているわけです。そういうファンドじゃないかというふうに理解していますが……。
○クー委員 ヘッジファンドというのは確かに規制のないところで、だから例えばアメリカの場合、99人以上の人で集団ファンドでやると規制がかかりますから99人以下でやるとか、又はケイマンでレジスターする。ただ、実際のファンドはニューヨークで運営していて、ニューヨークの人の金をそこで運営しているわけですね。形だけがケイマンになっているだけで。日本でもこういうことがやがてできるようになるのかどうか。それとも、日本の人はニューヨークにお金を持っていって、そこで運用しなくちゃならないのか。この辺はどうなるんですか。
つまり、名目上は確かにヘッジファンドというのは全てから外れているということで、あれだけ自由な行動がとれる。しかし、自由な行動がとれるからこそ、ほかの条件が同じなら、当然リターンは高くなるわけですね、そうでない状況に比べれば。そういう選択肢も日本の消費者にもあってもいいのかな。それはまさにプロとホールセールということになるのかもしれませんが。
○蝋山部会長 これは議事進行役としてのチェアマンが答えにくい問題なわけです。恐らく委員の皆さんそれぞれが、それぞれのいわば行く末というものを考えておられるんじゃないかというふうに思いますが、そこで、どうぞ、神田さん。
○神田委員 ちょっと事実の問題だけを申し上げておきたいと思いますけれども、ヘッジファンドというのは、おっしゃるように私募ファンドとして組まれるものですので、アメリカの法制の下では99人までですね。投資家であれば、アメリカの例えば証券投資会社法というものの適用は一切ありません。有価証券に主として運用しているんですね。
ところが日本の場合には、現在の証券投資信託法−−証券投資信託及び証券投資法人に関する法律ですけれども−−は、私募ファンドというものを新たに定義して導入しておりますので、こちらは私募ファンドであっても、アメリカは一切適用されないのに対して、主として有価証券に運用すれば、日本の証券投資信託は適用されるわけです。外で組んだ場合には、そこにどこの国の法律が適用されるかということになるわけですね。
したがいまして、法制の議論としては、将来は日本での私募ファンドというものは、アメリカのように規制を一切かけないべきか。あるいは12月1日施行の法律を作ったように、ある種のディスクロージャーは免除するけれども、しかし、業のところはある種の行為規制を含めて、規制なり行動ルールがあるべきかという、こういう議論をしていくことになると思うんですね。
それから、もう一点は、今、「主として有価証券」ということを申し上げたんですけれども、これは従来の集団投資ファンドで言われていることですけれども、有価証券に運用するのか、不動産に運用するのか、商品先物に運用するのかということで、日本もアメリカも実はそうですが、そこは縦割りになっている。これに対してイギリスの法制は横割りになっている。何を運用しようとも、集団投資スキームは集団投資スキームだということになる。
現在落ちている話は、これは大きな議論になりますけれども、為替に運用するというか、為替取引というものが現在、証券取引法の対象にもなってないし、何の対象にもなってないという問題があるんですね。
もうちょっと法制の将来ということで言いますと、では、不動産とか何とかと言ったときに、集団投資スキームの部分は運用対象は問いませんと。そこは為替が入っていても、何が入っていても結構ですということを言ったとしても、私募ファンドは全部外しますという話になりますと、今度はもうちょっと大きな話として、そもそも為替とか、従来の伝統的な株とか社債という有価証券というもの、あるいは商品先物という、歴史的に存在してきたものに入らないようなものが取引の対象になっているところを、この言葉で言えば金融サービス法みたいなところで大きくルールを設けられるかどうかという話で、後者の方の問題は、実はまだ世界的にも議論は始まろうとしている段階であって、御承知のように現在は、それぞれのリスク管理ということに世界のレベルの議論がとどまっているというのが現状です。
ちょっと長くなってすみません。
○蝋山部会長 やっぱり部会長代理というのは、ちゃんとした答えを出してくれます。
クーさんの質問に答えるならば、イエスでもあり、ノーでもあるということになると思いますね。現在のジョージ・ソロスのようなものが、そのまま日本でも販売されるようになるかというと、それはなかなか。しかし、きちんとレジスターしてやろうと思えばできる。そういう点でイエスでもある。しかし、ノーと言っても答えになるし、その辺のところは、より進んだ、よりベターな、良い金融サービスを提供できるようなものにしようと。その中にいわゆるヘッジファンドと言われるものがどこまで入ってくるかということは、イエスでもありノーでもある。そのファンドのマネージャーの判断だということになると思います。
○クー委員 私も、こういう商売に身を置いておりますから、世界中のファンド・マネージャーの方とお話しする機会があるわけですが、本当に日本のファンド・マネージャーの皆さんはかわいそうだと思います。本当にがんじがらめになっていて、世界的に遅れた会計基準からも、ありとあらゆる面で、これでリターンが出るはずないんですね。日本はこれだけ一生懸命良いものを作って世界中に売って、全部金融で取られているというような構造になっているわけですが、日本でも、そういうものに対応できるだけのファンド・マネージャーを育てていかなくてはいけない。
やっぱりアメリカなんかを見ましても、最高のファンド・マネージャーはヘッジファンドのファンド・マネージャーです。これはもうはっきり言えることで、そういう人たちは一番世界中に金をばらまいているわけですけれども、一番規制がないものですから、一番自由な発想で動けるわけですね。そういうのを見ていると、本当にうらやましいなと思う限りで、日本でもそういう人たちが早く出てきて、高いリターンを上げるような勝負をしてもいいんじゃないかなという気がします。
○蝋山部会長 わかりました。ありがとうございました。
それぞれまだ御意見はあろうかと思いますが、一言ずつでしたら結構です。
関さん。一言ですよ。
○関オブザーバー
5−3の一番最後のところの「横断的法制の確立に向けた方法論」というところでありますが、先ほど御議論の金融サービス法という捉え方か、集団投資スキーム法という捉え方かというのは、いろいろこれから詰めて、その範囲がどうかとか、その際どういう適用除外を入れるかとかというのは、いろいろこれから考えなきゃいけないんですが、現実の問題として、要するに官庁の監督の権限の問題というのをどういうふうにするかということをきちんと整理しておかないと、自ずからこれは限界がかかってしまうということだと思うんですね。
先ほどの資料にありましたけれども、イギリスはFSAという新しい組織を作って、およそ金融に関するものを全てそこに権限を集めて、金融サービス法というのを作ったわけです。ですから、そういう覚悟をした上でやりませんと、なかなかうまくいかないんじゃないか。私は前にも1回こういう趣旨の発言をしたと思いますけれども、それをぜひこの部会でも提言していく必要があるというふうに思います。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
上柳さん、どうぞ。
○上柳委員 今後の質問でもあるんですけれども、先ほどクーさんがおっしゃったように、ヘッジファンドいきなり言われると、私なんかは目がくらくらするんですけれども、でも、いずれにしても、やっぱりこういうふうに金融イノベーションの観点からしたいというのは、もう少し、特に私にとっては教えていただける方がありがたいと思うんですね。それで、それが消費者サイドから見てどうなのかというふうにまた反論はするのかもわかりませんけど、ぜひそこを教えていただきたい。
それから、今日配っていただきました5−7の資料の中で、特に42ページ、43ページにアメリカのリステイトメントのことが紹介されて出ているんですが、ここでは分散投資、ポートフォリオ理論というのが前提になってこういう考え方が出てきているようなので、そのあたりの金融的な考え方についても、どこかの機会でまた教えていただければなと思っています。
以上です。
○蝋山部会長 はい、わかりました。
今の最後の点は、やはり日本における投資家の意思決定のプロセスというものに関わる基本的な問題。投資の原則とは何かということが、必ずしも日本は国際的な基準には合ってないところがあるわけですね。何か良い材料はありませんかという方が先に立つわけでしょう。そういう点で、今の上柳さんの御注文も、ワーキング・グループのみならず、この部会でも正面から取り組んでいきたいというふうに思います。
ありがとうございました。
まだまだ御意見はあろうかと思いますが、とりあえず今日の自由討議は、ここで終了させていただきたく思います。
改めて、二つのワーキング・グループの非常に熱心な御議論に感謝するとともに、今後もワーキング・グループに参加なされているメンバーあるいはオブザーバーの方々、それぞれ問題意識を持っておられるイシューについて、より専門的な考察の結果をリポートとして出されるというふうに伺っております。今日この場で議論された論点が、より深まった形でこの部会にフィードバックされるということを希望すると同時に、確実にそうなるだろうと信じておりますので、よろしくお願いいたします。
次の部会ですけれども、今回の二つのワーキング・グループの検討状況の報告から明らかになったとおり、いわゆる金融サービス法のあるべき姿を検討していく中で、一体金融商品って何ですかということはどうしても避けて通れない問題でありますし、また、金融サービス法で対象とすべき金融サービスというのは一体何だと。今まで資産運用という点に力点が置かれましたけれども、日本の場合は、特にお金を借りるという点も大事な点と考えておかなければならない点であって、インベストメント・バンキング・サービスとか、コーポレート・ファイナンス・サービス、あるいはコンシューマーズ・ファイナンス・サービス。「コンシューマーズ」と英語で言った方がいいですね。そういういろいろ別な金融サービス等も考えられる。そういう問題に関して、事務局で素材を用意していただきまして、フリーディスカッションをしてみたらどうかと考えております。
また、今日も議論になりましたけれども、預金とか保険商品とか、もう既に確定し、日本の中で大きく根付いている金融商品を、これからの金融サービス法あるいは集団投資スキームの中でどんなふうに位置づけるかということについても、ある程度の、あるいは相当程度の議論の統一化を図らなければいけないというふうに思います。
現在、第二部会の下で、銀行の果たすべき機能というものに関するインフォーマルな検討が進められておりまして、我々の議論とそういう点では密接に関連しているというふうに思います。そこで、このインフォーマルな検討での議事進行役を務めています慶応大学の池尾和人教授からヒアリングを併せて次回に行いたいというふうに考えておりますので、こういう予定で次回の部会、4月を考えております。どうかよろしく御参集いただきたく思います。
日程について、細溝さんから、どうぞ。
○細溝債権等流動化室長 次回は、4月23日(金曜日)の午前10時から12時までを一応予定しております。場所等、詳細につきましては、また追って御連絡をいたします。よろしくお願いします。
○蝋山部会長 どうも本当に今日も活発な議論を頂戴いたしまして、大変ありがとうございました。いろいろもっと意見を言いたいということで、フラストレーションがたまっておられる方もたくさんおられるかと思いますが、お許しください。いずれの機会にか爆発させていただきたいと思います。
本日の部会は、これで散会いたします。
ありがとうございました。
(以 上)