金融審議会「第一部会」第6回会合議事録
日時:平成11年4月23日(金)10時00分〜12時00分
場所:大蔵省本庁舎(4階)第三特別会議室
○蝋山部会長 やや出足が悪いようですけれども、時間になりましたので、ただいまから、第6回金融審議会「第一部会」を開催いたします。
お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
まず、実務界からのオブザーバーの方々の交替がございましたので、ここで御紹介させていただきます。
東京三菱銀行の中原専務取締役に代わりまして、第一勧業銀行の野田忠男常務取締役が新たに参加されることになりました。御紹介いたします。
○野田オブザーバー 野田でございます。どうかよろしくお願いいたします。
○蝋山部会長 もう一方、住友信託銀行の岡本専務取締役に代わりまして、東洋信託銀行の松島 裕専務取締役が新たに参加されることになりました。
○松島オブザーバー 松島でございます。よろしくお願いいたします。
○蝋山部会長 どうぞよろしくお願いいたします。
本日の議題は、議事次第にありますように、やや地味なテーマですが、大変重要な「金融商品」の範囲についてということでありますが、その前に、金融システム改革の進捗状況につきまして事務局より簡単な説明が行われます。
細溝債権流動化室長、よろしくお願いいたします。
○細溝債権等流動化室長 お手元の右肩に「第一部会6−1」という小さい四角で囲った資料があると思います。表題は、「金融システム改革の進捗状況」という資料でございます。これを御覧いただきたいと思います。
近年といいますか、この2〜3年、金融システム改革につきまして大きな変化がございましたので、それらをかいつまんで、この1ページ目と2ページ目は書いてございます。
もう御案内のところだと思いますので、表題だけ申し上げていきますと、「資産運用手段の充実等」ということで、そこにございますように投資信託等の整備とかいったことが行われておりますし、2番目としまして、「企業の資金調達の円滑化・多様化」ということで、例えばSPCができたとか、いろんなことがございました。
それから、3番目に、「多様なサービスの提供」というものもございますし、1枚 めくっていただきまして、「効率的な市場の整備」、それから、「公正取引の確保 等」、「仲介者の健全性の確保及び破綻処理制度の整備」、それから、「証券税制の見直し」、有取税、取引所税がこの4月から撤廃されたというようなトピックがございます。
それで、3ページに、今後といいますか、これから予定されているもの、スケジュールでございます。
上の方から、例えば「多様なサービスの提供」ということで言えば、株式売買委託手数料の自由化とか、そういったことを10月1日に予定されておるというようなのがここにずらっとスケジュール的なものが並んでおると思います。
真ん中の方から言えば、ディスクロージャーの充実ということで企業会計についてもいろんなものが公表され、かつ、今後実施される予定になっておるものでございます。
4ページ目、次のページでございますが、この10月1日から実施するものをここに特掲してございます。株式売買委託手数料の完全自由化、銀証の相互参入に係る業態別子会社の残余の業務範囲制限の撤廃、それから、普通銀行による普通社債の発行、保険会社の子会社形態での銀行業務への参入、これらが今年の10月1日から予定されておるところでございます。
業務範囲につきましては、非常に細かくわかりにくいものですから、5ページ、6ページで、どれが今までできなくて、×だったものが○になるか、△だったものが○になるかというものを整理してございます。
それで、直近の動きでございますが、7ページを御覧いただきたいと思いますが、いわゆるノンバンク社債法、「金融業者の貸付業務のための社債の発行等に関する法律」、これが昨年の5月に国会に提出されました後、継続審議になっておりましたが、今年の4月14日に成立いたしております。これらは要するに、ノンバンクが貸付のために、貸付資金の調達として社債を発行する、そういったことができるようになるということでございます。
それで、3ページほどめくっていただきまして、10ページをお願いしたいと思います。
10ページに、もう一つ本国会で成立している法律がございます。これは「特定融資枠契約に関する法律」、いわゆるコミットメントライン契約に関する法律でございます。
コミットメントライン、欧米では結構やられておるようですが、日本におきましては、利息制限法ないし出資法上のみなし利息に該当するおそれがあるということで、リーガルリスクがあってできなかったといったところを、これは議員立法でございますが、議員立法でそれができるということを明確化したということでございます。いわゆる商法の大会社を借り主とするものに限り、みなし利息の規定を適用除外することとしたといった法律が成立しております。
直近までこういうことで動いておりますということの御報告でございます。
以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
ただいまの説明につきまして、御意見なり御質問がございましたらお受けしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
よろしゅうございますか。
それでは、こうした事態の推移につきましては、十分な御認識をいただいたこととして、次の今日の本来の議題に入りたく思います。
本日は、先ほどちょっと触れましたけれども、前回の部会の終わりにも申し上げたことですが、いわゆる金融サービス法のあるべき姿を検討する場合、まず、その大前提として、「金融商品とは何か」「金融サービス法で対象とする金融商品とはどういうものであるべきか」、こういうイシューにつきまして議論をしなければなりません。今日はそれを取り上げたいというふうに思います。
今日の予定としては、まずは、第二部会の委員でもあり、同時に同第二部会の下に設置されました銀行の役割、機能に関するインフォーマルな検討の議事進行役を務めておられます慶応大学経済学部教授の池尾委員から、銀行機能に関する検討内容を踏まえつつ、金融サービス法の対象となる「金融商品」についてどう考えるか、一つのお考えをお聞かせいただきたく思うわけであります。そして、引き続きまして、池尾委員の発表を補足する形で事務局より、勉強しました「金融商品」の範囲に関する勉強の成果を、これまでの議論の内容とか、内外の法制といったことに絡むわけでありますけれども、説明していただきたいというふうに思います。
そして、その後でまとめて質疑応答、自由討議に入りたく思います。よろしゅうございますでしょうか。このような形で今日の議事を進めさせていただきます。
それでは、池尾さん、どうぞよろしくお願いいたします。
○池尾委員 慶応義塾の池尾です。
今、蝋山先生から御紹介いただきましたように、私は第二部会の委員のはずなのに、どうしてここでお話をしなければいけないのか、率直に言って、経緯をよく理解しないままやって来ておりまして、しかも、お話しする内容が、ある意味ではそもそも論みたいな事柄でありまして、ここに出席しておられる委員の大方の方々にとっては、当たり前のことを改めて聞かされるというふうに思われたりするんじゃないかと危惧しておりまして、本当にやりにくいなと思いながらここに座っておるんですけれども、時間を限られておりますし、そういう御託はもうやめにして、内容に入らせていただきたいというふうに思います。
それで、お手元に資料「第一部会6−2」という形で、「金融サービス法の対象となる「金融商品」」というタイトルの私の3枚ほどのレジュメを配付していただいていると思いますので、それを御覧いただきながら、話を聞いていただければというふうに思います。
それで、今申し上げましたように、そもそも論みたいな話で、やや教科書的になってしまって恐縮なんですが、金融商品ということを考える前提として、そもそも金融の役割と機能というところからやはり再確認を始める必要があると思います。
それで、そこに書きましたように、金融の機能は、大きく分ければ二つだというふうに認識しておりまして、社会全体から見て表現するのと、個別の経済主体から見て表現するので若干言い方は違ってくると思いますが、とりあえず二つだ。
一つは、個別の主体の観点から言えば、所得と支出の時間的なプロファイル、時間的なパターンといいますか、それを変えられる。
例えば、将来の所得を先取りする形で現在の消費を増やすとか、現在の所得を将来に持ち越して将来の消費に充てるとか、そういう所得と支出の時間的な配分を変えられるところであります。これは社会全体から見れば、貯蓄の投資への転化を促進するというふうな働きになります。
それと並んで、もう一つの金融の基本的な機能は、リスク負担の変更でありまして、金融システムの働きとして言えば、リスク分担の機会を提供するということが基本的に大きな機能だというふうに考えております。
我が国では、金融の仕事というのは、1番目の資金を配ることが金融の仕事だといふうに、それに限定したような形で理解をされている向きが必ずしも少なくないかのように思いますが、それだけが金融の仕事ではなくて、リスク負担の変更、リスク分担の機会を提供するということが金融に課された非常に大きな機能であるというふうに認識しております。
すなわち、例えばビジネス活動を考えてみましても、金がなければビジネスはできないというのは当然のことですが、金さえあればビジネスができるわけではなくて、ビジネスには当然リスクが伴うわけですから、そのリスクを事業を行う主体が全部抱え込まなければならないということになると、これは非常に大変なことになるわけでありまして、事業が生み出すキャッシュフローを受け取る権利と引き換えに、一部そういう事業に伴うリスクを他の主体に転化するというふうな機会を与えることは、全体としての経済活動を拡大する効果を持っておりまして、これは非常に基本的に必要な金融の機能であるというふうに考えております。
したがって、金融商品というのは、一番広く定義すれば、こうした二つの機能の両方、あるいはどちらかを果たすことになるようなインストルメントが金融商品であるというふうに考えることができると思います。
より具体的には、金融商品というのは、その保有者に対して、将来時点で特定の条件に応じてキャッシュフローを提供することを約定したものということになります。そういう金融契約で、最近の経済学の議論では、金融商品という言い方よりは、金融契約という言い方をむしろ使っているのではないかというふうに思っておりますが、それで、特定の条件に応じてキャッシュフローを支払うわけで、そのキャッシュフローの額というのは条件次第で変動する可能性があるということであります。
今冒頭で申し上げました2番目のリスク分担の機会を提供するという基本的な役割を果たすためには、変動の可能性が当然織り込まれる必要があるということを確認していただきたいというふうに思います。
そういたしますと、負債契約といいますか、普通の一番なじみのある貸借契約の場合であれば、約束されたキャッシュフローの額というのは固定されておりますから、金融商品の内容を理解するということはそんなに困難ではないわけですが、リスク分担の機会を提供するというふうな役割に重点を置いた金融商品でありますと、約定されているキャッシュフローが様々な条件に応じて変動するという形になりますので、極めて契約内容が複雑になるということが一つ考えられます。したがって、契約内容自体を必ずしも容易に理解できないというふうなケースが一つ考えられると思います。
それから、契約内容といいますか、約定内容そのものは非常にわかりやすかったりするか、複雑でもそれは理解することができたとしても、その約定内容がどの程度履行されるかというふうな点を見極めることについても困難が伴う。信用リスクというふうな話になりますが、そういうことも考えられます。
こういうようなことを考えますと、金融商品を取引しよう、金融商品を買おうということになりますと、それに伴ってその金融商品の内容、約定された内容とその約定内容が履行される度合いについての確認という、ここで一言で「商品情報」というふうに言わせていただきますが、その商品情報の獲得、それとガバナンスという問題が生じることになります。単に情報の問題にとどまらないのは、どれぐらいキャッシュフローが提供されることになるかというのが、発行体の努力次第で、あるいは発行体のコントロールの及ぶ要因によって変化するという可能性がありますので、全くの外部的な環境条件で変動するということも考えられますが、金融商品の発行している主体の行動次第で変わるというふうな面がありますので、単に情報を獲得すれば済むということにはならないということになります。
したがって、こうした情報の獲得とガバナンスの遂行ということに伴って、当然ある種の手間暇がかかるといいますか、経済的に言ってコストがかかるということにならざるを得ません。
したがって、金融取引を通じて何らかの利益、例えば、最初に申し上げた所得、支出の時間的なプロファイルを変更できることによって生涯効用を高められるというふうな利益があったといたしましても、それに伴う商品情報の獲得とか、ガバナンスのコストが大きければ意味がなくなってしまうというふうなことが考えられるわけでありまして、したがって、コストを低減させると申しますか、もっと正確に申し上げますと、便益とコストの差額である純便益を最も大きくするような社会的な制度配置というものがどういうものなのかというふうなことが、金融制度改革といいますか、金融制度のあり方を考える際の本当の課題といいますか、問題だというふうに思います。
こういう困難といいますか、コストが存在するということを申し上げましたが、これが直ちに公的関与という話にいくのは少し短絡的でありまして、実際は困難が存在するというのは、言い換えますとビジネスチャンスがあるということでもあるわけで、その困難を解決するようなサービスとか何らかのものを提供すれば、それは利益につながるという側面がありますので、市場経済の下では自生的にといいますか、スポンテニァアンスに様々な制度が成立し、解決が図られるというふうなことが期待できます。
金融仲介機関が存在するということ自体、そもそも論から申し上げますと、そうした自生的な制度で一つの解決を与えるものとして登場したというふうに考えられます。
1ページの一番下ですが、金融仲介機関は、一般の取引主体に代わって、既存の金融商品の品質情報、商品情報を生産・提供したり、発行者に対してガバナンスを及ぼす役割を果たす。あるいは、一般の取引主体にとって商品情報の獲得が容易で、ガバナンス上の働きかけの必要性が非常に低い、あるいはガバナンス上の働きかけをしなくても済むような新しい金融商品を創出する。金融論の言葉で言いますと、資産変換を行ってそういう商品を作り出すということを役割としております。
ただし、金融機関、金融仲介機関といいますか、例えば銀行をイメージしますと、銀行が提供する預金という商品については、普通のガバナンスのことは考えなくていいということになるわけですが、金融機関に対するガバナンスが総体としてはやはり確保されなければならないということは当然でありますから、その点に関連した政府の役割、いわゆる公的規制と呼ばれるような側面での役割、あるいは市場が生み出す様々な制度がより良く機能するように環境条件を整える、インフラを整えるという、市場インフラの整備に関わるようなところで政府の役割は考えられるということだと思っております。
そうした政府の役割を考える前提といたしまして、金融商品といいますか、金融契約に関して、やはり基本的に二つのタイプの違いについて、改めて確認をしておくのが有益ではないか。くどいかもしれませんが、やや確認をしておきたいというふうに思います。
それは、金融契約といいましても、いわゆる負債契約というふうに呼ばれるものと、エクイティコントラクト、どう訳せばいいのかわかりませんが、出資契約というふうに訳しておきましたが、そういうふうなものは、金融契約といっても、かなり性質の違いがあるということは確かだろうというふうに思います。
先ほども多少触れさせていただきましたが、負債契約の場合は、将来提供するというふうに約束されているキャッシュフローは固定しておりますから、契約内容そのものを理解するというふうなことについての困難は少ないと考えられます。したがって、負債契約の場合は、商品情報というのは、要するに債務不履行の可能性がどれぐらいあるかというふうなところに限られてくる。
それから、もう一つ、債務不履行があったか、なかったかというふうなことは非常に立証が簡単な事実といいますか、払わなかったということを証明するのは割と簡単なことでありますから、債務不履行に対する社会的なペナルティが十分に大きければ、発行者が意図的に債務不履行を起こそうとするようなインセンティブは除去することができるという意味で、ガバナンスの問題についての解決も比較的容易だというふうなことが考えられます。
それとの関連で申し上げますと、そこに書いておりますように、こういう契約との関係では、債務不履行時の倒産処理法制というか、破産処理法制のあり方ということがむしろ重要だというふうに考えられます。
しかしながら、こういう種類の契約とか、こういう種類の契約を内容とする金融商品しか世の中に存在しないとすると、最初に申し上げた金融の一番基本的な機能であるリスク分担ということができないというか、非常に限られた形になるわけですね。
だから、金融に期待されるリスクの配分機能が十分に発揮されるためには、そういうデットコントラクトというふうな、約束するキャッシュフローを固定した契約だけではなくて、ある種の条件に応じて支払われるキャッシュフローが変動するような契約というものがどうしても必要になり、そういう契約を内容とするような金融商品はやはり必要になるということが言えると思います。
しかしながら、それの一番わかりやすい例が、株式に代表されるような契約形態なわけですが、こういうものになりますと、最初の方で申し上げましたように、内容そのものが非常につかみにくいという問題も生じますし、それから、日常的に発行者とか、運用を委託している先の行動をモニターしたりとか、働きかけてチェックをするとか、そういうふうなことをしないと金融商品購入者の利益が守れないという問題が起きまして、そこでは、最初の方で申し上げました金融取引に伴うコストがかさみやすい。こういう商品があることによって特にリスク配分という面で純便益を高める可能性があると同時に、コストもかさみやすいというふうなことになり、できる限りコストを抑えて、ネットの利益を確保する工夫が必要になるということだと思います。
やはり日本経済の発展段階等を鑑みましても、リスク分担機会を拡大する必要性というのは非常に高まっているというふうに思いますので、そういうリスク分担機会を拡大することにつながるような金融商品の登場は不可欠であって、こういうものがわかりにくいからやめろというふうなことを言うと、これは角を矯めて牛を殺したようなことになりかねないわけでありまして、こういう商品が登場することは必要なんだ。しかしながら、こういう商品は、何度も申し上げますが、ある種のコストがかさみやすいものですから、そのコストを抑え込むような社会的な工夫、制度整備ということが重要になるというふうな理解をすべきだというふうに考えております。
ちょっと時間もないのではしょりますが、2ページの一番最後のところに書いておりますが、金融機関というのも、どういう形の契約で資金を調達しているか。負債契約といいますか、金融商品で言えば、フィックストクレーム型のもので資金を調達しているか、それとも、運用資産の価値が変われば、それに応じて価値が変動するようなマーク・ツー・マーケットされるような特性を持った商品で資金を調達しているかということでは、随分話が違うということであります。
3ページですが、フィックストクレーム型の商品で資金調達しているような金融機関がかつては圧倒的といいますか、支配的であったわけで、そういう状況の下では、とにかく債務の履行を確保すれば、それで投資家といいますか、この場合は、預金者になるかもしれませんが、投資家保護のようなことは実現できるわけですから、債務の履行を確保するというふうな観点から公的規制のあり方が発想されてきたというところがあると思いますが、そうしたフィックストクレームではなくて、いわゆる変動商品というのが出てくると、発行体がつぶれなければいいという話では済まないわけでありまして、発行体が十分な努力をしなければ、それだけで投資家の利益が損なわれるわけですから、発行体あるいは運用受託者に適切な努力するように担保する必要が生じるわけであります。
そういうことを考えますと、金融商品の購入者といいますか、取引者が自分で商品情報の獲得とかガバナンスという課題を遂行することをサポートするといいますか、支援するような形で政府の関与の仕方、政府の役割。金融商品の購入者自身が自分で情報獲得とかガバナンスを行うことを支援するというアプローチが必要になってくるのではないかと思います。
もちろん負債契約の場合でも、商品情報の獲得について支援するという必要性はあるわけですから、そこでは新しく問題が発生するというわけではないかもしれませんが、支援するという観点が必要だというふうに思います。
それで、私なりに金融サービス法というのを定義するといたしますと、法律家の先生もおられる前で非常に口幅ったいのですが、金融契約の内容の定型化といいますか、契約内容の定型化、あるいは契約に関わる手順といいますか、プロトコルの標準化を図り、一般の取引主体が自分で商品情報の獲得やガバナンスの課題遂行を行うことを支援するような法制的枠組みが金融サービス法というふうに言えるのではないかと理解しております。
やはり契約内容をある程度定型化するとか、契約に関わるところを標準化するというのが社会的に金融に関わるコストを抑制し、全体としての金融取引を通じて獲得できるネットの便益を高める方策ではないかというふうに思っております。だから、全部を個別の商品発行者と購入者の個別の契約の問題に委ねるのは、ちょっとまずくて、やはりある種の標準化、定型化ということをやっておくのには非常に大きな意味があるのではないかと思います。
それはちょっと飛ばして言い忘れましたが、要するに債務不履行があったか、ないかというのは、先ほど申し上げましたように非常に立証しやすい事柄ですが、発行者がちゃんとした努力をしたか、しなかったかというのは非常に立証しづらい事柄でありまして、そういうことの立証可能性を高めるという意味でも、ある程度契約内容そのものが契約に係る手続か、プロセスか、そういうものの標準化をしておいて、紛争があった場合にでも、紛争の解決を容易にしておくということに社会的な利益があるのではないか。
そういう観点から、今申し上げました契約内容の定型化云々を図って、一般取引者が商品情報の獲得とかガバナンスを行いやすくする、それを支援する、そういう法制的な枠組みがぜひとも必要ではないかというふうに考えております。
もう時間がなくなってしまったんですが、そういうふうに支援をして、普通の一般の消費者というか、一般の国民であっても、ある程度商品内容を獲得したり何かすることがかなり容易になったとしても、やっぱりそういうことに気を使わなきゃいけないというのは煩わしいという問題はありまして、一定限度内でそういう問題に全く煩わされることのない金融商品というのが存在するという社会的な枠組みといいますか、制度配置というのは、割り切りの問題になりますが、有益ではないかというふうに考えられます。
具体的には、日本の現行でありますと、1人1銀行 1,000万円までの預金に対しては政府が保証を与えているということがあるわけですが、今は特例措置でもっと与えていますが、基本的に保証を与えているということがあるわけですが、そういうふうなものを一部作り出しておくということは、それはそれでかなり効率的な制度配置の一環として、そういうものがある。全体としては自己責任といいますか、直接商品を購入する主体がいろんな情報の獲得、ガバナンス等をやるように支援するわけですけれども、それをやりやすくして容易にする、そういう制度整備を全般として図っておくというのがベースにあって、ただ、一部金融システムの中にそういう問題に全く煩わされることない商品の存在を確保しておくというふうな組合せが全体としてのアレンジメントとしては、効率的なものではないかというふうに考えております。
そうすると、そういうセーフティネットの適用を受けるような部分に関しては、その商品を直接購入する主体は煩わされることがないわけですから、逆に言うと、誰かが代わりに厄介なことをやるということでありまして、それがある種の公的規制というふうなものの役割と考えられるのではないかと思っております。
ちょっと時間が限られておりまして、それ以上に能力的な問題で雑駁なお話になりましたが、一応以上で終わらせていただきたいと思います。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
続きまして、事務局より、細溝さん、よろしくお願いいたします。
○細溝債権等流動化室長 右肩に「第一部会6−3」と書いた5枚の紙があると思います。表題は、「いわゆる「金融サービス」の対象となる「金融商品」の範囲 (論点メモ)」こういうものでございます。
金融商品の定義といいますか、一体何が要件で、それで、その外縁といいますか、何が入って何が入らないといったものについての今までの論点を整理させていただいて、御議論の材料にしていただきたいという趣旨でまとめたものでございます。
ただ、そうは言っても、何でそもそも、では、そういう金融商品を定義しなきゃいけないのか。それは、それを定義したものに係る取引・サービスに特段のルールが必要となるであろう、それが金融サービス法ではないかと思っているんですが、1.で「金融商品」に係る取引・サービスに特段のルールが必要となる理由。
基本的にこの紙は四角で囲っているところは、実は流れ懇の「論点整理」の抜粋でございます。したがいまして、ややおさらい的になりますが、ざっと読ませていただきたいと思います。
一般の経済取引については、対等な当事者間の取引において、「買い主注意せよ」が民商法の原則であり、商品の性質等について、売り主が虚偽の情報提供をする等しない限り、詐欺には当たらず、取引は有効であるとして買い主が責任を負うことになる。一方、金融商品の取引については、
イ.将来のキャッシュフローとリスクに係る情報という形のないものを取引することとなるため、利用者(買い主)の商品に対する理解が必ずしも容易でなく、金融商品の仕組み等に係る技術の高度化・複雑化により、こうした面はさらに増幅される、
ロ.「集団投資スキーム」においては、第三者が運用・管理を行うこととなるため利用者の排他的な支配・管理が行われず、利用者の意思が必ずしも適切に反映されない可能性がある、
ハ.経済効率性の観点から、より専門性の高い主体(多くの場合売り主)に一定の責任を担わせることで、紛争処理等に係る社会的コストが節約されうる、
といった特性があり、「買い主注意せよ」という原則を一部修正して、「売り主も注意せよ」ということが求められる場合があるのではないか。
こういったところが基本的な理由ということでございます。
しからば、その要件とは何かということでございます。
2.「金融商品」の満たすべき要件
「金融商品」については、?現在から将来にわたるキャッシュフローの移転、?投資性(厳密には投資の共同性・受動性)という二つの条件を満たすことがコアの要件となるのではないか。
商品の「流通性」については、法制・ルールの内容や程度の面で種々の考慮は必要になろうが、「金融商品」の要件とはせず、流通性が低いあるいは流通性がない商品についても、横断的な法制・ルールに取り込むことでよいか。
上記?、?を同時には満たさない商品についても、少なくとも一方を満たす商品については、必要とされるルールが共通する場合もあると考えられ、取引の実態や別途の法制・ルールの整備状況等に照らしながら、全体としての法制・ルールの横断性・整合性が図られるように、適宜「金融商品」の範囲に加えていくべきではないか。
これらが要件に関する流れ懇の議論でございます。
それで、以下、そうは言っても、具体的に、では、こういうものは入るのか、入らないのかといった具体的な商品を念頭に置いての記述がございます。
まず、現行証券取引法における「有価証券」でございます。
「金融商品」については、証券取引法上の「有価証券」が最も関連の深い概念の一つではないか。具体的には、株式、社債、公共債等の列挙された商品・権利のほか、政令指定によって追加できる枠組みとなっており、その要件として、商品等の「投資性」に加えて、「流通性・市場性」も念頭に置いた法体系となっている。
幅広い金融商品・サービスを対象とする横断的な法制・ルールを考える場合には、金融イノベーションが急速に進展するなかで、政令指定のような方法ではどうしても後追い的にならざるを得ない面があり、包括的な「金融商品」の定義を設けるとともに、これを機動的・弾力的に適用できるようにすべきとの意見があった。
ここは包括的な概念にするかどうかということでございます。
また、商品の流通性に着目すると、投資者保護の対象となる範囲が必ずしも十分でなかったり、証券取引法の適用外の取引について結果的に商品性(特に流通性)を制約するおそれがあるとの指摘もあった。
一方で、現行証券取引法の枠組みを前提として、単純に「有価証券」の概念を包括的なものにすると、?新たな商品が有価証券に該当するか否かについて法的不安定性が生じる可能性がある、?これに付随して罪刑法定主義との抵触が問題となりうる、?同法における公衆縦覧型のディスクロージャー規制や公正取引ルールを流通性の低い商品に適用することが果して適当か議論の余地がある、等の意見もあった。なお、?、?については、ノーアクションレター等の機動的・弾力的な手法を整備・活用することにより、回避できるのではないかとの意見があった。
ということが流れ懇の整理でございますが、ということで、要するに論点といたしましては、証取法上の有価証券の全てが「金融商品」に該当するということでよいかどうか。
流通性の要件についてはどう考えるか。
それから、包括概念についてどう考えるか。
また、最後に出てきましたような弾力的な規定適用の手法についてどう考えるか。
そうすると、規定方法について再整理が望ましい部分があるかどうか。
再整理が望ましい部分があり得るとすればということで問題提起ですが、「証券」と「権利」、例えばペーパーとペーパーレスといった観点からもございますし、例えば社債とCP。これは法形式の違いによって書き分けている。それから有価証券、特に店頭デリバティブなどは証券業として規定しているとかいったような現行の規定のしぶりがありますので、それらについてどう再整理するのかどうかといったことでございます。
2番目に、集団投資スキームですが、集団投資スキームの定義といいますか、集団投資スキームについて流れ懇でどう整理していたかということですが、
「集団投資スキーム」は、仕組み行為者(スポンサー)が投資者の資金をプールし、これを専門家(ファンド・マネジャー等)が運用・管理する仕組みであり、その受け皿となるファンド等(いわゆる投資ビークル)は、信託、投資法人、特別目的会社、匿名組合、任意組合、特別勘定等、我が国法制上は、種々の法的形態を採っている。
それで、3ページ目へ移りまして、
「集団投資スキーム」に関するルールのあり方としては、投資対象や投資ビークルの形態に関わらず、機能面に着目して、横断的に適用されるべきルールについて検討していく必要があるのではないか。また、その前提として、幅広い「集団投資スキーム」をカバーできる包括的な「金融商品」の定義のあり方についても考える必要があると思われるが、どうか。
コモディティや不動産、さらには美術骨董品や競走馬といったものも含め、それ自体は「金融商品」とはいえなくても、集団投資スキームを通じて間接的に投資の対象となっている場合は、当該スキームの受益書証等について「金融商品」に係るルールが及ぶこととすべきか。また、保険リスクの証券化商品についてはどうか。
ここで論点として残っておりますというか、ありますのは、ビークルの法形式ないしは投資対象、これらは何でもいいといいますか、制約されないということでいいかどうか。
それから、集団投資スキームに、例えば米国の1933年証券法における「投資契約」のようなものを含めて考えるか。また、英国の集団投資スキームや米国の投資会社を念頭に置くのか。また、集団投資スキームの種類等によって、適用されるルールの差別化が必要となる場合があるかどうか。集団投資スキームをどう定義していくのかということもございます。
それで、そうすると、「受動性」や「共同性」の有無を如何に整理するか。アンドなのか、アンドアなのかといったような話もございます。
それから、「証券化型」と「資産運用型」をどのように整理するか。かなりタイプによって、型によってルールが違うかもしれませんが、その意味で大きく分けると、「証券化型」と「資産運用型」というのがあろうかと。集団投資スキームの中にも二つのタイプがあろうかと思います。
それから、現行の出資法ないしは金融犯罪取締法というのができるのかどうか。いわゆる刑罰規定との関係をどう考えるかということでございます。
次に、デリバティブをどう考えるかという話がございます。「デリバティブ取引」ですが、
デリバティブ取引については、投資の共同性・受動性という点は満たさないが、異なる性格のキャッシュフローの交換・移転という点で上記?の要件を充たしており、様々なデリバティブ取引を用いた金融ポートフォリオの管理が広く行われていること等に照らし、原資産やリスク種類の如何によらず、幅広く「金融商品」に取り込むことを考えてはどうか。
次に、
コモディティ(石油、金属、農産物等)の差金契約取引−−差金決済ですが、(原資産自体は「金融商品」ではないが、取引の実体はキャッシュフローの交換であるもの)を含めるか、といった点についての検討が必要となるか。
というのが流れ懇の整理でございます。
ここでは原資産やリスクの種類、商品性。商品性という意味では、先物、オプション、スワップその他によらず幅広くカバーすべきかどうか。
それから、原資産自体は「金融商品」に当たらないといったような場合、どこまでを範囲とするかといった問題でございます。
次に、4ページ目ですが、今度は、キャッシュフローの交換を伴わない取引もあるので、それをどうするか。入れるか、入れないかという話でございます。
両替や外為取引、差金決済を伴わない通貨スワップ等(一般的には広義の金融取引に含まれると考えられているが、受渡しの対象は外貨といったキャッシュフロー以外のもの)を含めるか、といった点についての検討が必要となるか。
例えば、直物為替とか両替。
次に、差金決済を伴わない先物為替とか通貨スワップ。
それから、金そのもの。その他貴金属ですが、金そのものをどう考えるかという話でございます。
それから、?で、業者間取引をどう考えるか。業者間取引に限定されている、いわば対顧客取引がないものについてどう考えるか。これはマネーマーケット(短期金融市場)商品が大体当たると思いますが、それらをどう考えるかということでございます。
?預金、保険、年金。個別の商品で預金、保険、年金が入るかどうかといった議論があろうかと思います。
上記?、?を満たす商品でも、特別の政策目的がある場合等については、「金融商品」の範囲から除外、あるいは「金融商品」には含めるもののルールの適用を除外したり別途のルールを適用する、といったことがあるのではないか。
このような政策的な取扱いが必要なものとしては、銀行等の決済性預金や保険等の長期保障性商品のように、外部性の存在による社会的なコストの削減といった観点から、公的セーフティネット等の保護が必要とされる商品・取引が考えられるのではないかとの見方がある。
預金や保険商品等も自由化に伴って多様化しており、また、預金や保険に類似する商品も登場してきているため、これらに関する具体的な線引きは、取引の実態やセーフティネットの適用範囲、投資性の程度、リスク把握の特性等に照らして検討する必要があるのではないか。
そこで、
具体的な検討を要すると思われる商品としては、?預金関連では、預金保険対象を超える大口預金、変動金利預金、譲渡性預金等の短期金融市場商品、外貨預金、デリバティブ組込型預金等、?保険関連では、年金保険、変額保険、一時払い養老保険、積立保険等、が挙げられるのではないか。その場合、関連法制(銀行関連法、保険関連法等)との関係も踏まえて、「金融商品」の適用の要否を検討していく必要があるのではないか。
このほか、預金や保険に類似した商品としては、金融債、貸付信託および合同運用指定金銭信託、共済関連商品の取扱いについても「金融商品」として取扱うべきか、整理していく必要があるのではないか。
ここでの論点としまして、預金や保険も広義には集団投資スキームに含まれるとの見方をどう考えるか。
それから、これらについて、例えば金融商品でない、ないしは金融商品だけれども違った扱いをする、そういったいろんなことがありますが、そういった特別な扱いとする基準としてはどのようなものが考えられるか。例えば元本保証性の有無、セーフティネットの適用の有無、ないし決済性、保障性、長期性、投資性といったようなことがあるかもしれません。
それから、他法に定めのある場合、どう考えるか。
それから、例えば、これらの商品と他の「金融商品」が組み合わされている場合にどう考えるかといった論点があろうかと思います。
最後に、「融資」ですが、流れ懇の「論点整理」では、
融資についても、キャッシュフローとリスクの移転という面で「金融商品」に共通していると考えられるが、経済行為としての一般性(与信行為自体は金融分野に限定されない)やリスクの態様(信用リスクが中心)等に照らして、「金融商品」との関係を整理していくことになるか。また、消費者に対する信用供与の問題といった別の観点が存在しており、こうした法制・ルールの今後の整備状況を見ながら、全体としての整合性を図っていくべきか。
「金融商品」の要件として、「投資性」を中心に考える立場からは、法制・ルールを検討する際の大まかな整理として、受信面(=利用者から見た投資)に関するルールと、与信面(=利用者から見た借入れ)に関するルールに分けて考えることができるのではないかとの意見もあった。
具体的な検討を要すると思われる商品としては、融資関連では、変動金利融資や外貨建て融資、デリバティブ組込型融資等、が挙げられるのではないか。その場合、関連法制(銀行関連法、消費者信用関連法等)との関係も踏まえて、「金融商品」の適用の要否を検討していく必要があるのではないか。
これらの論点としまして、融資に係る商品性の説明、例えば説明をするというような局面等について、ルールの面で他の金融商品と共通すると考えられないか。
また、融資と他の「金融商品」の組み合わせ取引についてどう考えるか。
それから、信用供与というのはまた別の方向の面の問題もあろうかと思いますが、そういう別途の側面をどう整理するかといった論点があろうかと思います。
以上、流れ懇の「論点整理」をそのままおさらいをし、かつ、それぞれの中でいろいろ定義として、内包、外縁をお考えいただく際の論点を提出いたしました。
それで、6−4の「金融審議会第一部会 資料」と書いてございますが、これらについては、本日は特段御説明はいたしませんが、例えば1ページ目には、諸外国の金融商品をどういうふうに定義しているか。アメリカなどは証券、日本でも有価証券を持ってきていますが、あとイギリス、ドイツ、フランスないしはEU指令においては、いわば一般的な投資物件でありますとか、金融商品といった形での定義になっております。
あと、イギリスでも、現行の金融サービス法を金融サービス・マーケット法案という形で改正しようという動きがございますので、この2ページ目以降はそれの改正法案、現時点で入手しているものを入れたものでございます。
ポイントは、預金もこの中には入っていますし、それから、保険につきましては、10ページを御覧いただきますと、保険契約。今までは長期保険契約だったんですが、保険契約一般が対象に入っております。入ったから、どういうふうな効果で、どういうふうなルールになっているかというところはまだ出てないものですから、ちょっとよくわかりませんが、とりあえずそういったものでございます。
以下、資料でございます。
以上でございます。
○蝋山部会長 どうもありがとうございました。
合計40分、やや長くなりましたけれども、お二人のお話を素材にして議論を進めたく思います。
まずは、池尾さんからの説明に関する御意見等を伺うことにいたしまして、その後で、今、細溝さんからいただきました説明に関する質疑応答を行いたいと思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ、原さん、お願いします。
○原委員 2点お聞きしたいんですけれども、私としては本当に学者でも何でもありませんので、大変きれいに整理していただいて、よくわかりました。
二つ質問ということなんですが、一つは、両方とも3ページになるんですけれども、これは金融サービス法が必要だということの論拠になっている部会で、ちょうど中段のところに、契約内容の定型化とか、それから、手順の標準化ということが必要だと。多分こういうのを前提にして金融サービス法というのは考えられるだろうというふうな組み立てなんですが、私としては、これだけだと無機質的なような感じがしておりまして、例えば、消費者の立場から見る金融サービス法というのは、もうちょっと期待が込められているようなところというか、理念のようなものがありまして、この部分だけを見ると、金融仲介機関からの考えられる金融サービス法という形での書きぶりになっているような気がするんですけれども、例えば、消費者から見ると、消費者契約法の制定の話も今一方で出てきておりますように、消費者の視点から見て、もちろん標準化とか定型化は私どもとしてもメリットは感じておりますけれども、何かもう一歩踏み込んだお考えがあれば、教えていただきたいと思います。
それから、後段の方でセーフティネットで 1,000万円を限度にしてということで、こういったことに余り関わりたくない、もちろんそういった消費者もいますので、そういった
1,000万円という限度を設けて、輻輳的にというのでしょうか、二つの層に分けて考えていくというふうな考え方もあるかと思うんですけれども、その場合、例えば
1,000万円以下というのは、ただ単純にこのセーフティネットの中にいれば安全だから、そのままでいいですよというのも、私はちょっと違うような感じがしておりまして、やっぱりここの分野についても金融サービス法というのはもちろんかかっていくべきだというふうに思っておりますので、その組合せ方というのでしょうか、単純に二層に分けるということではないんだろうと思うんですけれども、その辺をもうちょっと聞かせていただけたらと思います。
○蝋山部会長 それでは、池尾さん、ただいまの原さんの質問に対し。
○池尾委員 お答えするの難しいのですが、経済学の議論というのは無機質的な傾きがそもそもあったりいたしますので、後の方から先にお答えしたいと思うんですが、私の趣旨といたしましては、限られた範囲に限定する必要があると思うんですけれども、安全地帯を用意しておくということに意義があるだろうということなんですね。1,000
万円以下の運用資産しか持っていなくても、安全地帯に必ずいなさいということを強制する必要はもちろんないわけであって、一般的なリスクを伴う金融商品に投資といいますか、自分の資金を運用されても、それはもちろん結構なことだと思うんですね。
しかしながら、それは嫌だという人に退避する場所といいますか、安全地帯を用意しておくということは社会的に非常に意味のあることで、例えば、原則は自己責任の社会だとしても、逃げ場という表現をすると少しまた誤解を生んでしまうかもしれませんが、ある種の安全地帯が用意されているということは、社会的に非常に意味があるだろう。だから、いろんなことに煩わされたくないとか、自分はリスクを取りたくないという人については、その安全地帯に退避できるというふうなことを社会全体の制度の枠組みの一環として用意しておくことは意味があるし、必要なことだろうというのが私の理解でありまして、ただ、その安全地帯を余り広げるのはよくないという気がありまして、安全地帯は存在しなければいけないですけれども、やっぱりそれはある程度限定的なものであるべきだというふうに考えております。
ただ、そのときに、では、どこまでかというのは、ある種の割り切りの問題になりまして、なぜ
1,000万円なのかとかいうことにはそんなに厳格な理由はないと思うんですね。
どうして 990万円ではだめで、 1,000万円なのかと言われても、それは答えようがない問題であって、ある種の割り切りとして、一定の範囲で安全地帯を用意することが重要であろうということであります。
それで、前者の方ですが、もちろん定型化ということを前提にして、一般の取引主体、消費者というふうに言っていいと思いますが、消費者がいろんな活動を行うことを支援するのが金融サービス法だというのが私の理解でありまして、支援をする。だから、その支援の内容というのは、もっと具体的に議論していけば、いろんな幅があり得ると思います。
ここでは情報獲得を支援するとしか書いておりませんが、実際には、販売業者の方に説明義務を課すのは当然として、しかしながら、説明をしても、必ずしも理解できないとか、その消費者の持つ資力等から考えて、過大なリスクになってしまうとかいうときには、いわゆる適合性原則で販売を見合わせるというふうなことをルール化するのは当然含む。そういう意味で考えております。
前半の方については、それ以上お答えする内容がなくて申し訳ないんですが……。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
ほかにございますか。
どうぞ、上柳さん。
○上柳委員 池尾先生に御質問ということになるのかと思うんですけど、「金融契約の基本二類型」ということで2ページですけれども、負債契約と出資契約に分けられて、多分、文脈としては、これから出資契約というか、リスク配分が重要なところに流れていくだろうと、そういう意味で分けられたんだと思うんですが、これを例えば、読みようによっては、負債契約と出資契約が二つあって、その規制のあり方も違ってくるんじゃないかというふうな捉え方もあり得るのかなと思って質問なんです。
具体的には、例を何を挙げるのがいいのかよくわかりませんけれども、例えば保険契約をここで言う金融商品に挙げるかどうかのところで、投資性の高い保険契約については金融の対象にして、金融サービス法なり何なりの規制にしていくというのは、多分そうだと思うんですけれども、そうでないものについてどうなのかみたいなことを考えるときに、負債契約的な側面が強いものについては、場合によっては金融サービス法の対象から外すという議論も出てくるのかなと思って、私はそうではないんじゃないかと思うんですが、そういうこととの関連があるのかどうかという質問にすればいいでしょうか。
○池尾委員 確かに御質問いただいたような印象をちょっと与えてしまった懸念といいますか、可能性はあるんですが、それは真意ではありませんで、だから、従来、特に日本の金融を考えた場合に、株式市場は当然あったわけですけれども、株式市場を別にすると、金融契約というのはイコール負債契約だというふうな感じで金融取引が行われてきた。その中で、レジュメ3ページ目の頭にも書かせていただいていますが、ややもすると、そういう契約が支配的だということが背景にあるので、発行体の健全性を確保すればいい。つまり、つぶさなきゃいいんだという形でいろんな制度設計が発想されてきたようなところがありますが、そういう発想自体よくないということを申し上げたいわけでありまして、負債契約を内容とする商品が中心だとしても、その契約の約定内容はわかりやすいにせよ、約定内容がどれぐらい守られているのか、ちゃんと履行してもらえるのかという信用リスクの判断は難しいわけですから、そういうところでは、商品の購入者に対して、そういう商品情報を獲得することを支援する必要性は当然のこととしてあるわけでありまして、ましてや、単純な負債契約以外の複雑な内容を含む金融商品も共存する、併存するという状況になれば、商品情報の獲得とか、ガバナンスとかいうことを積極的に支援していく、そういう枠組みを準備する必要が当然強まっているんだということで、分けて考えていいという意味ではないです、というか、私の趣旨はそうではないということです。
○蝋山部会長 どうぞ、オブザーバーの方も遠慮なしに御質問なり御意見をぶつけてください。
クーさん、どうぞ。
○クー委員 今の池尾先生の話の中で「ガバナンス」という表現が何回か出てきて、非常に重要なポイントだという点は、私も全くそのとおりだと思うんですが、日本の場合、株の持合いという、ガバナンスに対しては暴挙としか言えないような状況が、これほど徹底されているわけですね。それに対して池尾先生どう思われるのか。
この 1,000万円の預金保険というのは、私もある議論に参加している者ですけれども、こういうふうに考えることもできるんじゃないかなと思うんですね。つまり、煩わしさということを池尾先生言われて、これは非常に重要なポイントだと思うんですが、というのは、本当の金融マンを除けば、ほとんどの人たちはほかに職業があるわけですね。それは大企業であろうと、小企業であろうと、サラリーマンであろうと、小さな店のオーナーであろうと、みんな同じで、そういう人たちに金融は自己責任ですよというのを本当に強制すべきなのかなという気がします。
つまり、大手企業がたくさんの給料を払わなくてはいけないときには、当然億円単位の金がどこかに預金されていなくてはいけないわけですし、もちろんその預金をもっとうまく運用しなさいよというのもありますが、そういうことは一切考えたくないと、うちは本業に徹したいという企業だってあるはずなんですね。
例えば、なぜトヨタがこれだけ成功しているかというか、あの2兆円というトヨタが持っている金を遊ばなかったからであって、普通だったら、2兆円もあれば、投資銀行からいろいろ案件があって、恐らくそういうところに手を出していただろう。今頃どこかのファイナンス会社みたいに、とんでもないことになっているわけで、なぜトヨタがそれをやらなかったかというと、本業に徹したからであります。
本業に徹したい企業が、つまり経営資源ということが一番世界で少ない資源だと考えれば、経済的に見て一番貴重な資源だと考えれば、
1,000万円以上は保護されてないから、しょっちゅう預金を移し替えなくてはいけないとか、銀行の背景を見なくてはいけないというのは極めて煩わしいわけで、ここは
1,000万円という金額にするよりも、ある金融商品というふうにする考え方はできないのかな。つまり、金利の付かないような当座預金は保護しましょうと。そうすると、大きな金があっても、別にそれで儲けようと思ってない企業は、安心してそこに置いておいて、残った経営資源を、良い車を作る、国際的競争力のあるテレビを作るとか、そちらの方向へ持っていけるわけで、そういう考えはできないのかなということをお聞きしたいんです。
○蝋山部会長 池尾さん、どうですか。非常におもしろい問題だと思います。
○池尾委員 1番目の方は、私も株式の持合いはけしからんと思っている方ですけれども、だから、一般論として、もう少し一般化しますと、やはり投資家の権利。例えば投資家にある種のガバナンス上の権限が与えられていたとしても、それが形式的権限と実質的権限という話があると思うんですね。
だから、問われるべきは、実態として、どういうふうな保障があるかということを本当は問われるべきであって、形の上だけで権限を与えていますから、これでいいんですということにはやっぱりならないはずであって、だから、投資家に対して実質的な権限を保障するという仕組みを考えていく必要が非常に重要だと思うんですね。
だから、これはやっぱり法律だけで済む問題ではなくて、それを精神どおりエンフォースしていくための仕組みとか、それから、法律を補完するような様々な制度みたいなものを、それは国が作る制度という意味でなくて、市場自体が生み出す制度とかを含めて、実態として権限が保障されているというふうにならないと、やはりそれは意味がないということだと思うんですね。
2番目は非常に大切なことで、例えば、今後の金融の方向ということに関して、特に日本では「直接金融」という言葉を非常に使ったりするわけですが、今クーさんおっしゃった話から、直接金融なんかに絶対ならないと思うんですね。直接やらなきゃいけないというのは本当に大変で、煩わしいので、資本市場を活用するようにはなるだろうけれども、やはり資本市場を活用するということと、資本市場に直接自分で行くということとは全然別な話であって、ここで蝋山先生もおっしゃったように、市場型間接金融というのか、やはり機関化、仲介化というのが、今おっしゃられた話から当然起こってくると思うんですね。
それで、金融活動なんかに煩わされたくないというニーズは確かにあるわけですね。それはニーズがあるということは、報告の中でもちょっと申し上げましたが、ビジネスチャンスがあるということなんですよ。だから、そのニーズを満たすような金融商品・サービスを提供するという、大いなるビジネスチャンスがそこには存在しているはずで、例えば、私はビジネスマンでないので、そのビジネスチャンスを具体的に具体化するにはどうすればいいかというところまではアイデアが及びませんが、例えば、自分のところは運用は国債でしかやらない。だから、絶対つぶれる危険性はないというふうに資産運用に関して、何らかのコミットメントをして、それで、決済サービスに関しては絶対安全ですから引き受けますと。私のところは絶対つぶれることはないような資産運用にコミットしていますから大丈夫なんですというふうにして、安全な決済サービスを提供することで、おっしゃったようなビジネスニーズを酌み取ることができるわけですから、それは大いなるビジネスチャンスなんですね。
そこで、そういうビジネスチャンスがあるときに、政府がセーフティネットで全部それをカバーしてしまうと、せっかくのビジネスチャンスを結局取り上げてしまうことになって、ビジネスチャンスを取り上げて、セーフティネットの提供には財政コストが伴いますから、せっかくのビジネスチャンスを取り上げて、財政コストをかさませるというのは、私は余り望ましい社会的選択方法ではないと思いまして、最低限、先ほど申しました限定された形で必ず安全地帯を用意しておく必要があるということには同意するんですが、公的に用意される安全地帯というのは限定されているべきであって、それを超える部分について、確かにおっしゃったような深刻なニーズがあるわけですね。それはビジネスで応えていくようなことがないといけないんじゃないかというのが私の考え方です。
○蝋山部会長 どうぞ、クーさん。
○クー委員 今の話は非常に論理的で、正しいと思うんですが、LTCMも全く同じことを言っていたんですね。絶対これは大丈夫だと。それで、全世界の中央銀行までそれに乗ってしまったわけですから、よっぽどそれは安全に見えたんでしょうけれど、結局は惨憺たる結果になってしまった。だから、理論的には池尾先生のおっしゃることは全くそのとおりだと思うんですが、現実問題として果たしてうまく機能するのかなと。
同じビジネスチャンスという点では、私が元住んでおりましたメリーランド州では、州の預金保険というか、まさに民間の預金保険というのをやったんですね。なぜ政府でやる必要があるのか。民間でやってもいいじゃないか。しかし、1回取付け騒ぎが起きたら完全に崩壊してしまって、それこそ大変な事態になってしまった。
特にこの話の場合は金額が大きいわけですから、 1,000万円以上の話をしているわけで、ちょっとでも問題が起きたときに、本当に民間で対応できるのか。それとも、全部がある方向へ行っちゃったときに、LTCMみたいなことになってしまうのか。私はまだちょっと議論の余地があるのかなと。理論的には池尾先生の言っていることは
100%正しいと思いますけど、実務が問題で、本当に民間でそこまで信用力を持ってできるのか、ちょっと心配な気がします。
ちょっと怖いのは、日本のマスコミなんかが、大口預金者というのは、金持ちで、貪欲で、リスクが幾らでも取れるはずだということになっているわけですけれども、よくその預金の構成など調べてみますと、全然そうじゃないですね。
そもそも預金をしている人なんてのは貪欲で、リスクを取ろうと思っている人ではないわけで、そんな人が今の金利で預金しているはずがない。だから、その辺をもう少し分けてもいいんじゃないかなと思います。
○蝋山部会長 今のイシューに関して、堀内さん。
○堀内委員 2人の御議論聞いていまして、どちらかというと、完全に安全な金融商品を作って、社会的に供給するということであれば、それはやはり何らかの形で公的なセーフティネットが必要になるという点は、そのとおりだと思うんです。それは池尾さんも先ほどのプレゼンテーションの中で認めておられる。
問題は、その社会的セーフティネットをどうやって維持するかは結構また大変で、これは単に預金者が安全地帯を見つけることができるという意味では非常に良いわけで、それは我々にとって非常に重要なことですが、その安全地帯をいかに維持するかという社会的問題は、必ずしも日本を含めて多くの先進国で成功してないわけですね。ですから、そういう安全地帯を作るということに伴って、実は別の問題もやっぱり生じてくるというのが、池尾さんがおっしゃっているセーフティネットの問題点だというふうに思います。それは蛇足だと思いますけど、付け加えます。
○池尾委員 一言だけ。
○蝋山部会長 はい、どうぞ。
○池尾委員 クーさんもそういう趣旨でおっしゃっておられると思うんですけど、やっぱり二者択一で考える必要性はないといいますか、もっと組合せを考えるべきであって、民間が全部やるか、政府が全部やるかという話ではなくて、民間が主としてそういうニーズに応える努力をする中で、最後のところで政府が何らかのコミットとか、手助けをしてやらないと完全にならないとか、手助けをしてやれば、よりうまくやれるという、そういうレベルの問題だと思うんですね。
だから、そういう趣旨でおっしゃったんじゃないと思いますけど、最初から政府がすぐ出ていくのは、ちょっと間違いだと思うんですね。やはりそういうシリアスなニーズがあるのは、ビジネスの種としてそれを活用していくようなバイタリティが日本の金融業界の中にまず存在していてほしいというのがあって、その上で、最後のところで政府が何らかの関与をしなければいけないかもしれない。でも、政府が関与すると、堀内先生おっしゃったように非常に高くつくという問題も考えておかなければいけないということだと思います。
○蝋山部会長 どうぞ、上柳さん。
○上柳委員 先ほどのクーさんに質問なんですけれども、金額ではなくて、商品でそれは全額というか、セーフティネットになるというのが、私はそれがあれば大変良いと思うんですけれども、だけど、それは実際可能なんですか。消費者の立場から言えば、例えばこういう商品、それが預金であれ、何か一定の名前の付いた商品であれ、そこについては安心で、余りガバナンスのことも煩わさなくていいというのは大変良いことだと思うんですけど、それが可能なら、私は飛びつきたいですけれども、難しいんじゃないかという前提で議論が進んでいるような気がするんですけれども。
○蝋山部会長 具体的に何か良い案がありましたらどうぞ。
○クー委員 これはいろいろ国民性の違いなど、もしかしたらあるのかもしれませんが、日本の方というのは、いわゆる職人気質ということがよく言われるわけですよね。一生懸命自分はそのことに徹して良いものを作りたい、世界で一番良いものを作りたい、日本で一番良いものを作りたいと、こういう人たちが企業をやっているわけで、彼らは金のことで、どの銀行が安全かとか、そんなことで煩わされたくないし、それで失う社会的コストというのは非常に大きなものがあるような気がするんですね。
アメリカでも一応ペイオフという制度はあるんですけれども、ほとんどのアメリカ人に「ペイオフって何だ」と聞いて、99.9%答えられません。それは英語になってないから。ペイオフというのは、悪い意味で買収するという意味なんですね。普通使われるときは。唯一、「リポース・ペイオフ」と言ったときに、FDIC用語の中にそれはあるんですが、ほとんどの人が知らない。ということは、実質的に保護されていたということで、みんな安心しているわけで、もしも今の日本で出ているような議論で、
1,000万円以上は全部ペイオフだ。実際は全部ペイオフにはならないんですけれども、そういうふうにしたら、果たして今のアメリカ経済もつのかなと。
したがって、今の日本の議論はちょっと理想形に走り過ぎているような気がするんですね。もちろん、池尾先生が言われたように、民間がそういうものを本当に担える何か知恵を出して、LTCMみたいなことは絶対に起きないということができるのであれば、それはすばらしいことだと思うんですけれども、世界の金融の歴史を見ても、なかなかそうはいかなかったようで、最初から政府が出ていくのはという池尾先生の指摘だったんですけれども、これも随分、もう何十年、何百年の歴史を経て、やっぱりここのところはこうなくてはいかぬのだなということを人類が学んできたわけですね。そういう部分が私はあってもいいんじゃないか。
商品に関しましては、恐らくこれは一番低い金利か、全然金利の付かない預金というところで押さえるべきじゃないかなと。それ以上のものについては、つまり一番ここで恐れているのは、危なくなってきた金融機関がものすごく高い金利を付けて大口預金を集めて、それでハイリスク・ハイリターンに走ると、これが唯一怖いわけです。
ペイオフの議論というのは、全部このたった一つのリスクを押さえるためにやっているわけですけれども、それに対して例えば、金融検査官が、ある銀行が高い金利を提示したら、すぐ即刻行って、そんなに高い金利を払えるだけの融資先があるんですかというチェックをすれば、かなりはカバーできるんじゃないかなと。
だから、池尾先生も、いろんな可能性があって、白と黒じゃないんだと言われたんですけれども、私も全く同じ考え方で、いろんな手法でリスクを限定、国民に対しても、また、財政に対してもリスクを押さえることはできるんじゃないかと思います。
○蝋山部会長 どうもありがとうございました。
ほかに、池尾さんの報告に関して御意見ございますか。
窪野さん、どうぞ。
○窪野参事官
今議論のあった点、ちょっと事務局から状況を御説明したいと思いますが、実は、第二部会の方で今、預金保険についてのワーキングを神田座長、それから、まさに池尾委員にも参加していただいてやっておりますが、その中の一つの議論として、まさにセーフティネットと決済サービス、特に当座預金の扱い。これを普通の定期性預金等と同じでいいのかどうか、その辺を考えたらどうかとちょうど議論が始まっておりまして、またいずれその部会、さらには総会、金融審の場でも、この問題については、まさにクー委員の問題意識のような点を含めて御議論いただく機会があるということをちょっと御紹介させていただきます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
そういう機会に大いにまた論戦をしていただきたいと思いますが、今日は少し視点を変えてみたいと思います。
ほかにございませんか。
私が余り言ってはいけないんですが、一つは、金融機能のと
、それを、金融商品とは、
及び、あるいは
の機能果たすことになるインストルメント、こういう考え方は、細溝さんが説明されたところよりもやや広くとっているわけですね。そういう点をどういうふうに、言い換えれば、細溝さんの説明された流れ懇の議論、あるいは伝統的な考え方とどういうふうにつなげて考えたらいいのかなというのが一つ疑問になって出てくると思うんです。それが一つ。
それから、フィナンシャルコンラクトという言葉を使われていて、商品とか証券とか、余りそういう言葉を使われてないという理由は何だろうか。これも細溝さん、ちらっと言われたんですが、ペーパー、ペーパーレスの問題ということが念頭にあって、池尾さん、あえてこういう最近の言葉のコンラクトというのを、ある種の意図を持って使われたのか。ただ世の中で、経済学の中で最近こういうことが多いから使ったのか。その2点を伺いたいと思います。
○池尾委員 1点目ですが、1点目は、幾つも要件を同時に満たさなければいけないというふうに考えてしまうと、金融サービス、金融商品に関しては、いわゆる要素分解という技術が非常に進んでおりますから、別に何でもかんでもアンバンドリングすればいいということではないんですけれども、やりたいと思えば、何でもかんでもアンバンドリングするだけの金融技術の基盤というのは整ってきておりますから、これとこれだったらこの規制だ、これとこれが二つの、一番単純で、と
を満たすのを金融商品とすると。それに対して規制がかけられるというふうなことをしますと、そうすると、
だけの商品を作り出して、
だけの商品を作り出して、それを同時に買えば、実は同じことになるんだけれども、規制上は、昔アメリカでノンバンク・バンクという、商業貸出と預金受入れ両方やっているのが銀行だと持株会社法で定義されていたので、それで、預金受入れしかしない、商業貸出しないとかいうことで、それは銀行法の規制を免れるという話がありましたが、そういうふうなことはもう今や、金融商品について非常に容易にできると思うんですね。
そうしますと、金融商品を構成する基本要素については、その基本要素がここで言う二つで尽きるのかどうか、議論の余地があると思いますが、金融商品を構成する基本要素の一つでも持っていれば金融商品だというふうに考えていかないと、金融技術の動向の中では、少し対応が難しいのではないかというのが私の考え方です。
それから、2番目の方は、余り深く考えてないんですが、正直なところで、私自身もよくわかってないところがありまして、例えば、英語のコントラクトということの概念が日本語の契約という概念と多少じゃなくて、かなり違うんじゃないかという気も、いろいろ文献を読んでいますと、するんですけれども、最近の経済学では、取引ということ、前にも別の機会に申し上げたことがありますが、取引ということに着目して、取引に関わるいろんな規定といいますか、取引に関わる取決めの総体をコントラクトと呼んで分析するというのがポピュラーといいますか、スタンダードになっておりますので、それを受けたということで、今日はたまたま欠席されているみたいですが、本当は柳川委員でも、あの人はともかく「契約の経済学」という本を書こうというぐらいの人ですから、そこら辺は説明をいただくのがよろしいのではないかと思います。
○蝋山部会長 上柳さん、どうぞ。
○上柳委員 もう一点だけ聞かせてください。
池尾先生の3ページの先ほど来議論になっている下の方の下線のところあたりなんですけれども、公的規制の実施という形で、政府が商品情報の獲得やガバナンスの課題遂行を代行する。これはまさに金融サービス法をどの程度作るのかという問題と、それから、今ずっと例を考えていて、思いつかなかったのであえて言いますと、例えば、いわゆる郵便貯金については、完全に政府がこのあたりを代行しているとも言えるのかもしれないなと思っているんですが、郵便貯金のような制度についても、私の考えでは、金融サービス法の対象になって、それこそ現実性があるかどうかわかりませんけれども、例えば事前開示があり、勧誘規制があり、それから、受託者責任がありというふうになってきてしかるべきで、ただ、履行は皆さん簡単で、「余りリスクないですよ」というふうに勧誘されてもいいんじゃないかと思うんですけれども、というふうに、この代行の意味なんですけれども、全部政府がやっておられるようなことについても、代行しっ放しではなくて、投資者なり、あるいは消費者の方のコントロールが少なくとも今まで以上にはかかるべきだというふうにも読んでいいんですか。それとも、それは一定の部分については、政府が完全に代行し切っている商品のようなものも残るという御趣旨なんでしょうか。
○池尾委員 今触れていただきました3ページの一番下のところに書いておりますが、金融サービス法的な枠組みに付加してというふうに私は考えておりまして、適用を受けるにしても、今御質問の中にありましたように、有名無実的なものになってしまう可能性はあるわけですけれども、例えば、おっしゃった説明義務を課すとかいうようなことを言っても、郵政大臣が保証している商品について、説明義務といったって有名無実になるという可能性はありますが、形の上では金融サービス法のルールの外にいるということではないと思うんですね。
そういう意味では、有名無実であったって、説明義務はやっぱり課されているということであって、だから、付加するという表現がちょっとまずいかなと思って、余り強調しなかったのですが、普通の商品だと、金融商品を購入する主体が自らやると、支援を受けるにせよ、自らやるというのが基本なんだけれども、自らやる代わりに、政府に任せてしまうものがあるということで、政府がやるというだけで、それは金融サービス法の枠組みで一般の投資家が行うことを政府がやるということで考えていただければいいと思うんですね。
○貝塚会長 一つは、今の問題で制度の問題は、銀行をどう取り扱うかというのがある意味では非常に関係が深いんですね。要するに、今おっしゃっている件は、現在は銀行が決済プラスある種の非常に重要な点。それを金融機関全部で非常に広い範囲にわたって法律を仕組んだときに、もともとイギリスなんかは元来、銀行というのは入っていなかったようですが、ある段階で入ってきたと思うんです。だから、銀行業というのは一体どういうふうになっているかというあたりの問題と制度的には割と関係しているというのが私の理解なんですね。ということをちょっと指摘したい。
あとは、郵便貯金その他の問題は、今言われたのは本当は非常に重要な問題ですが、金融制度調査会というのが昔ありまして、そこでは郵便貯金には発言するけれども、ほとんど発言の効果は薄い。実際問題として、公的金融の、しかも、郵便貯金をどうするかというのは非常に重要な問題。しかし、基本的に郵便貯金はどうなるかというのは、これも郵政省に聞いても郵政省自身がよくわからない。要するに今の行政機構の改革で、ある段階で独立になって、しかもその先、もしかしたら民営化の可能性が多少残っています。ですから、非常に中途半端ですが、とりあえずは全額国が保証している。
非常に平たく言うと、本当はその問題はややシリアスなんですが、民間の銀行業が必ずしも全額保証でなくて、今おっしゃったようなリスクが多少あるとしたときに、郵便貯金が今のようにちゃんと限度額は守ると、その辺問題ありますが、とにかく、そこの世界は本当はややシリアスな問題としてあり得るわけですね。ですから、そこのところは、どこかでちょっと書いておいた方がいい。少なくとも筋論はきちっと書いた方がいいというのが、私の個人的な意見です。
○蝋山部会長 銀行というのをどう考えるかというのは、我々の金融サービス法の商品範囲を考えるときに非常に重要だと、こういう問題意識は皆共通なところがありまして、そうであるがゆえに、第二部会の委員の池尾さんに、銀行の機能のいわば政策的な再検討もお願いしていると伺っておりますので、御報告をお願いしたということで、どうも貝塚さん、ありがとうございました。
池尾さんの御報告に対する御意見なり御質問もあれば、これからも受け入れますが、残された時間は、細溝さんが御説明になった内容につきまして御質問を受けたいというふうに思います。もちろん詳細な説明は省かれましたけれども、資料6−4の「金融審議会第一部会 資料」という資料についても御質問かあれば、頂戴したいといふうに思います。いかがでございましょうか。
どうぞ、原さん。
○原委員 質問というよりは、いつも最初に手を挙げるんですけれども、今御説明になった部分なんですけれども、流れ懇の部分を枠で括って、それで、その下に、ワーキングの方で議論をして、こういったところをどういうふうに考えていくのかということで提示をされているんですが、幾つかこの辺がどうなんだろうというふうにお聞きしたい点があるんですけれども、ワーキングも結構やっていらっしゃると思うんですけれど、もうちょっとその議論の中身ですよね。ワーキングと言うのでしょうか、集団投資、それから、ホールセールとありますよね。一応そういったところを踏まえてこれを作られたようには思うんですが、もう少し議論の中身になるようなところを丁寧に御説明をしていただけないかなと思っておりまして、3点あるんです。
一つは、2ページのところに書かれていますけれども、有価証券、特に投資信託の部分に少し議論が傾いていないのかなというのが1点。
それから、中で、先物取引ですとか、それから、マンションの経営とかというのが、この頃、もう金利が低いものですから、そういったものに手を出すというのでしょうか、手がけている消費者も多くなってきていて、その辺はどうするんでしょうかというふうに枠の外に書いてあるんですけれども、どういう議論があったのかどうかということ。
それから、三つ目は、保険の扱いなんですけれども、保険もこの中に入れるのか、外に出して同じような仕組みで作っていくのかというふうな話があったんですけれども、もう少し、どういったところで今議論として問題になっているのかというところを詳しくお聞きしたいと思うんですけれども、結構消費者としては関心のある分野ですので。
○細溝債権等流動化室長 ワーキング自体は、今鋭意一生懸命やっているところなんですが、まさにワーキングのメンバーの方々の意見発表が第1回が両方とも終わったぐらいの感じでありまして、あと2回ぐらいそういったものがないと論点が出尽くさないというのが、今のワーキングの状況であります。
それで、例えば、「金融商品」の定義、集団投資スキームのワーキングでは、その集団投資というのはどういうふうに定義すべきかといったような御議論は、当然始まっております。
例えば、一昨日のワーキングでは、神田先生が、その定義としては、運用資産や流動化の対象資産から生ずるキャッシュフロー、それが組替えられて投資家に販売されるような仕組み、これは全て集団投資スキームの定義に含めるべきだといった御発表され、それに基づいていろんな御議論があって、先生方にもいろんな御議論があります。ただ、それが始まったばかりだというのが今の状況であります。
それから、保険が入るか、入らないかというような御議論もありましたけれども、例えば、オブザーバーの方の発表でも、保険が本当に集団投資スキームに入るのか、入らないのか、入ると考えるべきなのかどうかといったことについての保険の立場からの御議論、保険にはいろいろな特殊性もあるんだといったような御発表があって、それを受けて、どう考えていこうかというのが今のまさにワーキングの状況でありまして、オン・ザ・ウエーであります。
ただ、いずれにせよ、ワーキングは二つありますが、集団投資スキームのワーキング・グループはそんな感じ。ホールセール・リーテイルはホールセール・リーテイルで、それぞれの例えば販売・勧誘の行為規制はどうしようかと、そういった議論がなされるわけですが、いずれにせよ、では、前提となる「金融商品」とは何だといったところになりますと、これは実は両ワーキングの範囲を超えている課題であります。
したがいまして、今日、第一部会で御議論いただいて、その定義なり、どういう点がメルクマールになるとか、どこまでが入るとか、そういったものの御議論をいただいた上で、それをまたワーキングに持っていきたいというふうに思っているところでございます。
○蝋山部会長 ですから、私として希望しますのは、むしろ消費者の立場に立って、金融サービス法の商品の範囲というのは、こうでなければならないんじゃないか。どうも今までの方々の経済学者や法律学者の意見というのは、やや狭いんじゃないというような積極的な御提案をこの場で頂戴できましたら、大変結構だと思うんです。
マンションという話がありましたけれども、もしかしたら、かつてはやったMというような会社のワンルームマンションですか、そういうのは投資性ということはあるかもしれないけど、金融サービス法から出ちゃう可能性というのはあり得るわけですね。その辺のところを現実的な原さんのようなお立場から見ると、こういうふうに考えて、こう取り込んでいただいた方がいいというようにしていただければ、御意見を頂戴できれば大変参考になるというふうに思います。
森さん、どうぞ。
○森オブザーバー 保険の話が出ましたので、消費者の立場ということでなくて、ワーキング・グループでどういうふうな議論があったか、正確には存じませんけれども、保険の担い手側というのですか、業者側でこの問題をどう考えるかということを私なりに簡単にお話ししますと、投資性という面では、伝統的な保険というのは火災保険とか自動車保険とか、その他生命保険もそうかもわかりませんが、恐らく適用除外でいいんじゃないかというふうにイメージされると思いますけれども、私は今後の保険商品のニーズ対応というか、池尾先生おっしゃったようないろんなニーズが出てくるものに対応して、多様化、複合化していくということを考えると、やはり利用者の信頼を得るメリットということと、それから、保険についても、創意工夫の発揮の自在性の確保という意味でも、一括適用対象としておいて、個別の商品特性に応じて中のルールの内容を変えていくという考え方が、私は少なくともその方がいいかなと今時点では思っています。
具体的にイメージを持っていただくために、どういう保険が今あって、今後出てくるかということで申しますと、例えば、地震保険というのをとっていただきますと、地震が起こった場合、関東大震災クラスの地震が起こった場合に、恐らく復興景気、復興需要で物価も上がるし、その資材も海外から緊急輸入しなきゃいけない。円も安くなるでしょう。そういったことを一般消費者とか企業がお考えになったら、地震保険はドル建てで、ドルで払ってもらった方がいいじゃないかという率直なニーズが出てくるわけですね。今これは生命保険では、外貨建て、外貨払いの保険というのは外資系の生保会社が日本で去年あたりから売り出されましたけれども、損害保険だってそういうニーズがあるわけですよね。
そうしますと、これは一体どういう商品かと申しますと、伝統的な損害保険に加えて、一種の為替のデリバティブみたいなものを組み込んだ複合商品というか、組合せ商品というか、というふうに考えられるかもわからないし、これは切り離して別々に買うというのは、まず難しいかなと思います。買って買えなくないですけれども。
それから、ほかに企業関係で言いますと、リトロアクティブプランというのが、これはアメリカで売られておりますけれども、どういうことかといいますと、事故が起こってから保険を買うわけです。これは公序則に反するじゃないかというふうに思われるかもしれませんが、そうじゃなくて、事故が起こって、受け取る前の間の期間について、どれぐらいの損害があるか。例えば、裁判になった場合、どういうふうな損害額が認定されるかという不安定なリスク、これを固定化してしまうということもございますけれども、何よりも、その期間がわかりませんから、金利のリスクを予め固定しまいたいという、二つのリスクから、事故が起こって直ちに保険を付ける。そして、それに対して、どれだけの損害額になるかというわからない状態の中で保険会社と契約を結んでしまう。
こうなりますと、損害保険であるのか、何か違った金融商品なのかというのがわからなくなってしまう。これは個人向けじゃないですけれども、個人だってニーズは中にはあるかもわからない。こんなふうなものを今後日本で考えていくとか、それから、生命保険では変額もありますし、我々の損害保険でも、損害保険の積立て商品というのが、いつまでも確定利付きでいくかどうかわかりません。変額的なものが出てくるかもわからないし、ユニバーサル的なものが出てくるかもわからない。
401Kといったことも考えますと、やはりこれはまず一括、金融サービス法の中の対象としておいて、例えば、投資性のない火災保険、自動車保険、これはもう
100年以上消費者に受け入れられているものまで、例えば適合性原則をかけて、65歳以上は自動車保険に入れませんとか、こんなことやりますと、とても受け入れられないですから、こんなところを取引実態に合わせて変えていけばいいじゃないかと、このように思います。
ついでに申しますと、先ほど郵貯の話が出ましたが、共済についても流れ懇の中でちょっと話が出ておりますけれども、共済はやっぱり入れておかないと、おかしいと思っています。例えば、期間30年の建物の生命保険というのですか、30年間事故がなく、火災がなければ、満期時には建物の新しく更新できるお金がおりるという、これはどう見ても放置しておくというか、他のルールに従っておけばいいというふうにも私は思わないですね。
現実に時々新聞では、共済が組合債を出すとか、共済の持っている不動産を引当てにした高利の組合債が発行されると、こうなりますと、全くルールない、また、ルールが違うというのはいかがなものかと思います。ただ、その場合でも、余りにもルールを厳しくして、入りにくくするというよりも、むしろ共済側が金融サービス法の中に入って信頼を得ていった方が得だねと、消費者に受け入れられるねと思われるような、そういう易しい、入りやすいルールにした方がいいんじゃないかなと思っております。
以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
ただいまのは大変おもしろい、しかも、説得的なお話だったと私は思いますが、渡辺さんはもしかしたら、異論があるかもしれない。今までの御発言の流れから言えば異論があるかもしれませんが、しかし、どうぞ、余り過去にこだわらず、前向きに御発言をいただきたい。よろしく。
○渡辺オブザーバー 一部ニュアンスの違うところがあるかもしれませんけれども、基本的に保険分野についても、今後の金融取引の多様性の問題を考えたり、あるいは従来の業にあります金融イノベーションという視点で保険分野からそれを見た場合には、今、森オブザーバーの方から発言があった内容と認識はほとんど一致していると思います。そういった保険サイドから見たときのイノベーションには、当然今議論されています集団投資スキームですとか、そういう範囲も含めて議論されるべきだろうと思っております。
ただ、伝統的保険分野、これは信託法理とは違う部分が明らかにありますし、保険スタンダードというものがグローバル・スタンダードの観点からも明確にございますから、この保険法制の観点から、どうルールを考えるのかという視点が重要だというふうに持ってきているわけです。
今日の議論の中でも供給者サイドに立って、2点の視点で先ほど池尾先生からも御説明ありましたけれども、そういった供給者サイドの視点と、それから、消費者サイドから見た視点が非常に重要だろうと思います。とりわけ、保険の勧誘ルールと言われる保険募集のサイドから見ますと、かなり投資性商品とは違った側面。これは今まで何度か御説明していた部分、ルールの違い等について説明してきておりますけれども、こういった違いについては明確に違いを見極めた上で議論されるべきだろうというふうに思っております。
特に今、森オブザーバーの方から説明ありました適合性原則、不招請勧誘のルール等についての違いを説明しましたけれども、そういった投資性商品の特徴からアプローチするよりも、むしろ保険契約の概念から契約者保護を考えた方が、よりわかりやすい。その部分を中心に考えれば、保険スタンダードというものを業態横断的にむしろ考えていく方がわかりやすい、あるいは消費者保護が図りやすいというふうな要素もあると思います。
ですから、今、共済の話も出ました。場合によっては簡保の問題もあると思いますけれども、そういった視点はむしろ保険スタンダードから見て勧誘ルール等を考えた方が、より消費者保護が図りやすいと思います。
以上です。次回以降、またこの議論について大いにやっていただきたいと思います。
○蝋山部会長 今の恐らくお二人とも関連があるかと思いますが、原さん、まずどうぞ。
○原委員 消費者側としては、池尾先生がおっしゃられたように要件の一つに金融に係るのがあれば、金融商品の中に取り込んでいくべきではないかといふうな議論に賛成です。ですから、そういう意味では、ここで囲みで、どうであろうかというふうに書かれているようなものについては、当然私としては入れていただきたい。
今、特に保険については、お二方からの御説明があって、状況としてはよくわかって、一括、包括的に入ることについて否定するものではないということでは、私も一致なんですけれども、ただ、中に入っていくと少し議論が違ってくるような部分も私は感じておりまして、保険独自の問題、保険はやっぱり違うのではないかという部分ですとか、それから、伝統的な保険分野というふうなお話もありましたけれども、このあたりについては、やっぱり特殊性というのはあるかとは思うんですけれども、違いというふうな形になるのかどうかというのでは、もっと議論をさせていただきたいというふうに思っております。
それから、先ほどマンション、ワンルームマンションのようなお話が出ましたけれども、消費者側がワンルームマンションを買って投資というのでしょうか、ある程度それで資産形成ということでやっているような部分があるんですが、以前、消費者問題の中で、例えば田舎の田圃道みたいなところに自動販売機を設置して、それで結局儲からないということで、消費者側が損害を被ることがあったんですけれども、その場合、この消費者というのは本当に消費者と言えるのか、事業者と言うのかということで議論になったことがありまして、民法学者の方なんかお詳しいんだろうと思うんですが、最終的にはこの場合は、老夫婦ということで、消費者という形で解約をすることができたんですが、それと似通っているようなところがあるのではないかなというふうに思います。
それから、先物取引なんですが、これも私どもの会で、いろんな金融広告を去年の秋から冬にかけて調査をしまして、そうすると、読売新聞には結構この先物取引が多く広告として掲載をされていて、新聞も各媒体によって載っている金融広告がいろいろと違うんですね。読売なんかは結構この先物が載っておりまして、やっぱり一般消費者向けに商品を販売しているということがありますので、そういった点からは、私としては当然入るべきだというふうに思っております。
以上です。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
関さん。
○関オブザーバー
論点になっているのが二つあるように思うんですが、いずれも提出されてありますこの表の中に、「新しい金融・法制ルールの基本的枠組み」という表で整理されていますが、一つは、こういう金融サービス法的なものを作るということを前提にして、大きな四角が真ん中にあって、その下の方に融資機能とか決済機能とか保障機能とかと、こちらについてそれぞれの法制があって、これを整合性のとれた形で接合すると、こういう表現でここで書かれているわけです。
今御議論が続いていますけれども、私自身は、金融サービス法制、金融サービス法的なものを作るのであれば、できるだけ広い商品に統一的にかかり得るルール、それができるところがやはりあると思うんですね。特に業者に対する行為規制というところが大きく書いてありますけれども、消費者あるいは利用者、投資者、いろいろあると思いますが、そちらに対するあり方のルールというのは、基本的にどんな商品、どんな業界であっても同じものとして、金融サービス法を作るのであれば、そこで基本は決めておく。
それに保険なら保険の特別な部分が加わるのであれば、それはそれなりに配慮をする。その配慮の仕方も、金融サービス法の中でやるということも技術的にできないことはないかもしれませんが、別な保険法制、保障法制があるのであれば、そちらで加えておくと、こういう考え方でいくべきじゃないかなと。これは私の意見であります。
それから、もう一点のマンションとか、いろいろな新しい投資物件というものが出てきたときに、どこまで金融サービス法の中に取り込んでいくかということについては、図の右の方に行くと金融サービス法制と刑法、下に金融犯罪取締法制と書いてありますが、その間の金融取引の特性に応じて機能分担というふうに書いてあります。何らかの金融サービス法制の方に取り込んでいくメルクマールは、できるだけ整理をしておく必要がありますが、いろいろな状況があり、いろいろな商品が出てくるということであれば、自動的になると思いますけれども、政令とかそういったもので追加をしていくと、そういう体制をとらないと実際は動かないんじゃないかなと、こういうふうに思います。
以上です。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
余り法学者の方は今日は御発言がないようなんですけれども、岩原さん、神田さん、京藤さん、これまでの議論をお聞きになって、金融サービス法の対象となる商品、金融商品あるいは金融契約、どういうふうにまとめられますか。あるいはまだこういう点の議論が不足だとお考えですか。どなたでも結構です。
神田さん。
○神田委員 余り発言してないのは、私は今日の議論は基本的に非常に結構だというか、自分自身の意見と一致していたということがあったんですけれども、時間も余りありませんので、簡単に感想だけになるんですけれども、私は金融サービス法の対象というのは、何か理屈のないような表現で悪いのですが、広ければ広い方がいいというふうにずっと主張してきましたから、そういう意味で今日の議論は整合的だと思うんですね。
もちろん保険に特殊な面があるというのは、そのとおりだと思います。問題は、その特殊な面があるがゆえに、金融サービス法の入口で排除するか、あるいは一遍入るけれども、その先、特殊な面を考慮して、あるルールについては適用除外をするか、法律家の言葉によれば、そういう話であれば、当然保険の特殊性は考慮されるべきであるということだ。それは保険に限らず、ほかにもいろんな金融取引の類型があるわけですから。
しかし、特殊がゆえに、入口から入らない分野があるんだというのは、もちろんそういうふうに法律を作ることが可能だと思いますけれども、そうすると、やっぱり狭まったところに金融サービス法ができる。伝統的なものについても、それは入口から含まれないんだという言い方をしてきますと、
1,200兆のうちの7割ぐらいが除かれていて、残りの部分だけを−−もっといきますかね、保険、年金より8割ぐらいが除かれていて、残りの2割のところに新たなビジネスチャンスだから、先ほどの池尾先生のプレゼンテーションに私は全く賛成なんですけれども、そのために我々ここで一生懸命議論していて虚しくて、やっぱり
1,200兆を運用している全体を活性化するという枠組みで法律を作りたいとういうふうに私は思います。
以上です。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
岩原先生、どうですか。
○岩原委員 一昨日、まさに神田座長がワーキング・グループで今おっしゃったようなことを御指摘になったところでありまして、それを受けて、来週、私が具体論をやれという御指名を受けておりまして、昨日の夜、ほとんど徹夜でその原稿を書いていたんです。
今日の御議論を伺いまして、大変私にとっても勉強になりまして、昨日徹夜で書いたものを書き直さなければいけないと思っているんですけれども、一般論としては私も神田さんの御意見に賛成で、非常に広い方がいい。ここでやることはなるべく価値を持ってほしいというふうに思っております。
ただ、具体的に、では、法律上その適用対象をどう詰めていくのかというのは非常に難しい作業でございまして、法律家の仕事はそこから始まるわけなんです。
そのような観点からしますと、私、今日、池尾先生が御提示いただきました金融商品の定義というのは非常に適切ではないかと思っておりまして、先ほど蝋山部会長の方から、論点メモの範囲より広くなっているのではないかという御指摘がありましたけど、私は必ずしもそうは思っておりませんで、今日の池尾先生のこのような考え方で論点メモの括弧書きのあるものをほぼ拾う形の金融商品の定義ができるのではないかというふうに思っております。
私も金融商品の定義としては、このような考え方で基本的にいいのではないかと思っております。そのようにすることによって
1,200兆円の大部分をカバーすることもできるし、かつ、新しく生まれてくる新しい金融商品をそこの中に取り込んでいくことができる。その意味では非常に画期的な新しい金融法制ができるというふうに思っております。
ただ、集団投資スキームの定義は金融商品とまた若干違うと考えていまして、そこら辺の細かいところは、来週話させていただきたいと思っております。
先ほど原さんから御指摘のございましたマンションですとか、それから、先物その他について具体的にどういうふうに割り振って金融商品として金融サービス法の適用対象としていくか。私はかなりの部分が入ってくるように思っておりますけれども、そこら辺のところも細かい話になりますので、ワーキング・グループでの報告、そこでのほかの委員の方の御指摘をいただいて、この第一部会の方に提案していきたいというふうに考えております。
○蝋山部会長 ありがとうございました。そして、関さんが先ほど使われた図でやると、一番右側のところが御専門の京藤さん、どういうふうに。
○京藤委員 私も今日の話は非常に勉強になったのですけれども、刑法というのは、裏口の鍵をどう添えるかということなので、金融サービス法の概要ができて、今度はそれについて、どう抜け道があるかということを考えて、これは問題があるんじゃないかということを考えるので、私も基本的には今の経済犯罪が非常に増えている状況では、金融サービス法の対象である金融商品というのは、広い方がいいという気持ちはあるんですけれども、今日のお話を伺っていると、特にマンション経営とかそういったものも入ってくると、何か金融サービス法というよりも、商品サービス法とでも言った方がいいのか、非常に広がりを増し過ぎて、金融サービス法というのは、金融という、なかなかつかみにくいような商品を対象にして、それについてガバナンスをどうしっかりしていくのかという問題があるので、余り広げ過ぎると焦点がぼやけるところがあって、その点でコアの観念、金融サービスについてのコアの観念というのをどういうふうにイメージするのかは非常に大切だと思いまして、その点で池尾先生の今日の定義というのは非常に私にとっては示唆的で、それ以外の、余り取り込み過ぎて規制、ガバナンスがぼやける。いろんなものを取り込めば取り込むほどガバナンスは非常に甘くなるような気がしますから、この点、兼ね合いだと思いますけれども、そういう問題についても配慮して考えていく必要があるのかなというふうに感じました。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
時間がもう終わりに近づいておりますので、まだオブザーバーの方々も含めて御意見はあろうかと思いますが、まだまだこういう議論は継続していかなければなりませんので、またの機会にさせていただきたく思います。
今日、池尾さんは大変シャイに、そもそも論で申し訳ないと、何で自分がここにいるのかようわからんというようなことで話を始められましたけれども、岩原さんをはじめ皆さん、池尾さんの議論は大変参考になったとおっしゃっておられますので、池尾さんを選んだ事務局はちゃんとした選択眼を持って選んだということで、結構なことではないかと思います。改めて、来ていただきました池尾さんに、第一部会として感謝したいというふうに思います。
次回の部会ですけれども、金融サービスのルールのあり方については、集団投資スキームに関し、また、ホールセール・リーテイル、この二つのワーキング・グループにおいて並行して現在進められておりますが、しかるべき時点でワーキング・グループからの報告が行われる予定であります。それはともかくといたしまして、金融サービス法を考えるときに、どういうふうにエンフォースメント、実効性を確保するかということが大事な課題になります。ですから、ルールの内容、柱となる集団投資スキーム、それからホールセール・リーテイル、その具体的な内容はワーキング・グループに今お願いしておりますけれども、その作業を進めつつも、次の課題としては、エンフォースメントの問題を取り上げてみたいというふうに思います。
いわゆる金融サービス法のうちで、業者ルールの対象となる金融サービス業者の参入の要件、適格要件のあり方、エンフォースメント、こういったルールの実効性に係る論点を次回、整理いたしまして、皆さんにまた御議論をお願いするということになります。ぜひ、こうあるべきだというポジティブな御提案をお願いしたいというふうに思います。
こういうことで、集団投資スキームやホールセール・リーテイルの内容がわからなければ議論しにくいという面もあろうかと思いますけれども、それとは別な形で、並行した形で今のような問題を取り上げていきたいと思いますので、よろしく御了解いただきたく思うわけであります。
では、日程については細溝さん。
○細溝債権等流動化室長 次回は5月21日(金曜日)の午前10時から12時まで、場所は第四特別会議室を予定しておりますので、よろしくお願いします。
○蝋山部会長 それでは、ちょうど12時でして、2時間の間、集中的に御討議いただきまして、ありがとうございました。
これをもちまして散会いたします。
(以 上)