金融審議会「第一部会」第10回会合議事録

 日時:平成11年6月18日(金)10時00分〜12時16分
 場所:合同庁舎第四号館(4階)共用第1特別会議室

○蝋山部会長 ただいまから、第10回金融審議会「第一部会」を開催いたします。
雨の中、また、お忙しい中お集まりいただきましてありがうとございます。やや御出席の委員の先生方、出足が遅いようですけれども、時間も少々過ぎておりますので、始めさせていただきます。
 本日は、前回の部会において申し上げましたとおり、これまで皆様からいろいろ御議論をいただきました内容を踏まえまして、事務局に作成をお願いしておりました部会としての公表物、それをどういうタイトルにするかというのはまた御相談ですが、公表物のたたき台につきまして御議論をいただきたいというふうに考えております。このたたき台は、これまで金融審議会、議論を重ねてまいりました部会としての活動の一つの区切りとして位置づけられるものであります。しかし、まだ大まかな方向性を示すにとどまっておりまして、この夏以降、これを公表した後、内外からの意見を頂戴いたしまして議論を継続しなければならない、このように考えております。
 そういう意味で、公表物の表題は、部会の「中間整理(第一次)」といったようなものになろうかなとも考えておりますが、それも御意見を頂戴したいというふうに思います。
 今日は、その「中間整理」のたたき台を事務局から読み上げていただきまして、パーツ・パーツ御意見を伺いたく思います。
 前回の部会で何人かの委員の方々から、特に原委員から、苦情や相談の扱い、あるいは自主規制機関の現状、こういった問題についてオブザーバーの方々から御報告をいただきたいものだと、こういう御発言がございましたが、一度まとまった機会にきちんとした数字等も用意していただいた上でお話を伺うのがよろしいのではないか。そこで、夏以降、夏も含めて夏以降に十分な時間をとって、しっかりとこの問題については議論させていただきたいと、こういうふうに思いますので、御了解いただきたいというふうに思います。
 そこでは、部会の「中間整理」のたたき台を読み上げていただきまして、皆様からの御意見を伺うということにさせていただきたく思います。
 室長、よろしくお願いします。
○細溝債権等流動化室長 読み上げに入ります前に資料の御説明をしたいと思います。
 分厚いもので、金融審議会第一部会「中間整理(第一次)」たたき台、こういうものがお手元にあろうかと思います。これは、ただいまも部会長から御紹介ありましたとおり、まさに議論のためのたたき台でありまして、本日これを後で読み上げますが、それで各ブロック毎に御意見を賜ってまた書き直すといった性格のものでございますので、本日これは回収をさせていただきたいと思っておりますので、後で御退席の際に置いて御退席いただければと思います。
 それで、目次はありせんが、目次は別刷りで下に一枚紙であろうかと思います。一枚紙で「目次」と書いてありますが、全体大きく七つの章立てになっております。第1章、21世紀を展望した金融サービスのあり方、第2章が、その流れを支えるルールの枠組み、三つ目は、新しい金融ルールの枠組みが対象とする金融商品の範囲、ここら辺がいわば一つ総論的なところかなと。各論的には、第4章で、横断的な販売・勧誘規制とプロ・アマの区分のあり方、用語も含めて御議論いただきたいんですが、ホールセール・リーテイルのワーキンググループでやっていたものと、第5章で、集団投資スキームに適用されるルール、ここら辺がいわば各論に当たる部分でございます。第6章で、ルールのエンフォースメント、実効性の確保と消費者教育のあり方、これは両ワーキングが関係しますので、第6章として共通事項として書いてございます。最後に、残された検討課題と今後の進め方、全部で大きく七つの章になっておりますが、今申し上げましたように、大きくは三つのブロックに分かれるのかなといったものでございます。
 そこでは、ただいまから読み上げますので、よろしくお願い申し上げます。
○森田補佐 それでは、朗読させていただきます。1ページおめくりいただきまして、1ページから読み上げます。
I .21世紀を展望した金融サービスのあり方について
1.金融の世界は大きく変貌してきている。金融・情報通信技術の発展と経済のグローバル化を背景に、投資対象や投資手段は多様化しており、金融業態間の垣根の低下、金融業の異業種との融合、さらには、金融業のグローバルな展開といった動きが、かつては考えられなかったスピードで進展している。
 こうした中で、欧米諸国では、市場メカニズムを通じた資金・リスク配分を実現させることで、金融が経済の発展に貢献してきており、金融イノベーションの進展の恩恵が利用者に広く及んでいる。
2.わが国金融について見ると、高度成長期には、潤沢な投資機会に比較して、貯蓄は不足するという資金不足の構造があった。こうした構造の下で、金融に求められていたのは、いかに円滑に資金を融通するか、という点であった。しかし、国民の金融資産は今や1200兆円に及ぶなど、経済のストック化が進んできている。来るべき高齢化社会を控え、国民の金融資産の有利な運用が求められるとともに、国民の運用ニーズも多様化している。また、経済の成熟化に伴い、資金調達面でも、積極的なリスク・テイクを伴う新規産業への資金供給が重要な課題となっている。
 こうした経済環境の変化の下で、わが国金融に期待される役割も、資金の円滑な融通とともに、リスクの適切な仲介と配分の重要性が一層増してきている。また、金融のあり方についても、リスクが、伝統的な間接金融により仲介者に集中して負担される形態ではなく、市場を通じた幅広い利用者の主体的選択により、分散して担われることが望まれている。
3.このような金融を巡る環境変化の下で、市場を通じた幅広いリスク分担を実現していくためには、金融取引に伴うリスクとリターンの関係の明確化と透明性の向上を図ることが必要である。その結果、市場に対する信頼が高まり、金融サービスの利用者がより安心して取引を行える環境が整備され、自己責任原則の下で、利用者が主体的にリスクとリターンの組み合わせを選択することが一層可能となろう。
4.現在進められている金融システム改革では、事前調整型行政から自己責任原則と透明なルールを基軸とした行政へと転換する流れの中で、ディスクロージャの充実や公正取引ルールの拡充等の施策が進められている。また、金融システム改革では、銀行や保険会社による証券投資信託の窓口販売解禁等に伴い、証券会社が証券投資信託を販売する際と同様の行為規制が銀行や保険会社に対しても課されるなど、業態横断的なルールの整備が図られている。今後、新しい金融商品がさまざまな形で既存の業態の枠を超えて提供されてくることを見通した場合、そうした金融商品取引の勧誘・販売についてのルールを、金融商品について横断的に幅広く、包括的かつ整合的に整備することが求められる。
5.リスクとリターンの関係の明確化という観点では、金融取引の当時者間の私法上の権利義務関係を明確化するためのルール(取引ルール)も重要である。取引当事者間の私法上の権利義務関係について、一般の経済取引では「買い主注意せよ」が民商法の原則である。この原則に従えば、商品の性質等について、売り主である業者が虚偽の情報提供を行うなどの詐欺的な行為を行った等の場合以外は、取引は原則として有効で、買い主がリスクを負担することになる。しかしながら、金融取引は将来のキャッシュフローという目に見えないものを取引対象とするため、商品の性質を理解することが買い主である顧客にとって必ずしも容易ではない上に、金融技術の進展に伴い商品・サービスの高度化や分業化が進展し、例えば資産の運用・管理が売り主以外の第三者により行われるなど、買い主の意思が適切に反映されないおそれがあるといったことがらに留意する必要がある。従って、「買い主注意せよ」という私法上の原則を一部修正し、「売り主も注意せよ」とすることが適当な場合が考えられる。その際、業者に対して一定の行為を義務づける(業者ルール)ばかりでなく、さらに、例えば金融商品・サービスの説明義務について言えば、いかなる説明を尽くせば買い主にリスクが移転するのか、といったことについて事前に明確にしておくことが望ましい。
(注)この部会の中間整理でいう「ルール」とは、取引参加者間の権利・義務関係や責任分担等について、例えば、どういう場合に誰がリターンを享受しリスクを負担するか、また、それぞれの主体がなすべきこと、してはならないことは何か、等を事前に決めておく約束事(規範)の総体を指している。従って、法令で定められた規則や行政の規制のみを直接に意味するものではなく、当事者間での取り決めや、業者の内部管理(コンプライアンス)上の取り決め、自主規制団体のルール等の全てを含むものである。
 なお、ルールの類型としては、金融取引の当事者間の私法上の権利義務関係の明確化に関するルール(取引ルール)、市場機能の維持・発揮に関して全ての取引参加者に適用される一般的な行為ルール(市場ルール)、及び業者に対する行為ルール(業者ルール)が挙げられることがある。
6.21世紀の金融を見据えた場合、市場を通じた広範な利用者によるリスク配分の効率化とリスク負担能力の向上を経済全体として実現することが望まれる。しかしながら、わが国において多数の投資家が、市場のハイリスク商品に直接に投資を行う形でリスクの配分が進むことはあまり期待できないであろう。それ故、金融技術の高度化と金融サービスの専門化の流れを背景に、金融サービス提供者によって、ローリスク・ローリターンやハイリスク・ハイリターンといった商品のみならず、多様な投資家のニーズに応えた、ミドルリスク・ミドルリターンの商品を含む多様な金融商品が幅広く厚みをもって提供されることが期待されている。米国や英国では、投資信託のように多数の者から資金を集め、そのプールされた資金の運用をプロに委ねてリターンを投資家に還元したり、あるいは、特定の資産の証券化等を行う、いわゆる集団投資スキームと呼ばれる仕組みが、広く浸透している。
 わが国でも、金融システム改革において会社型投資信託、私募投資信託、及びSPC(特別目的会社)の導入等の措置が採られ、集団投資スキームの発展、多様化が始まろうとしている。集団投資スキームを始めとし、多数の投資家から集めた資金を金融の専門家が市場において運用する一方、資金の借り手も直接に、あるいは、金融サービス業の仲介を経由して間接に市場から資金を調達する、いわゆる「市場型間接金融」は、今後の我が国の金融システムにおいて、より重要な役割を果たすことが期待される。こうした観点から、集団投資スキームについて、必要な投資家保護を図りつつ、より多様で魅力ある商品を生み出していくためにどのような制度整備が必要かを、積極的に検討していくことが求められている。
II .新しい金融の流れを支えるルールの枠組み等
1.金融イノベーションを促し、その成果を幅広い利用者が享受し、リスクが効率的に配分される金融システムを構築していくためには、金融仲介者による創意工夫が発揮される枠組みを提供するとともに、適切な利用者保護を前提としつつ、自己責任原則を貫徹し得る環境を一層整備していく必要がある。
 今後の金融システムのあり方としては、ルールの透明性の確保を前提とした上で、効率性と公正性という2つの軸が、ともに重要となる。幅広く効率的なリスク分散を行うためには、一般の利用者が安心して取引ができるシステムを構築することが必要である。他方で、余りにも利用者保護を強調しすぎれば、金融商品・サービスの提供コストに跳ね返り、一般の利用者に提供することが経済的に見合わなくなったり、あるいは業者の自由な創意工夫の発揮を妨げ、金融イノベーションの進展を阻む可能性があることにも留意が必要である。そのような場合には、結果として、利用者にとっても金融技術の革新の成果を享受できなくなることから不利益となりかねず、さらには幅広く効率的なリスク配分が阻害されることによって経済の活性化にもつながらないこととなろう。
2.金融の多様性の展開と変化の速さに鑑みれば、構築される制度は、簡素・柔軟・スピーディーなものであることが望まれる。そうした観点では、すべてのルールを法令の形で規定するのは望ましいとは思われない。むしろ、自己責任原則の下、業者の法令遵守体制の整備、自主規制団体のルール、業法レベルの法令、民事法制に係るルール等のさまざまな水準のルールが全体として整合的な一つのしなやかなルール体系を形成することが望まれる。こうした整合的かつ明確で透明なルールの枠組みを用意することが、結果として、利用者・サービス提供者の双方にとって使い勝手の良い、信頼できる市場を整備するのに要する社会的コストを抑制することにもつながろう。
3.なお、わが国においても、英国に倣い、ルールの枠組みにおいて金融サービス業を機能別に整理していくべきではないか、との意見がある。英国では、業態横断的に包括的なルールを定めた金融サービス法が存在するとともに、業者の行為規制について、多くを自主規制機関に委ねる仕組みをとってきている。また、現在、自主規制の枠組みの中で監督体制の一元化を行うとともに、大幅なルールの枠組みの見直しが進められている。米国では、業態横断的な一元的な法制とはなっていないが、連邦証券諸法上の証券概念はきわめて広範なものとなっており、証券法のルールが適用になる範囲は広くなっている。他方、わが国においては、これまで業法中心のルール体系となっている。
 このように、ルールの枠組みはその国の金融のあり方や歴史的・社会的経緯によってそれぞれ異なっている。わが国についても、これまでのわが国の金融の実態を踏まえたうえで将来を展望する、いわば「日本版金融サービス法」といったものを模索していくことが求められている。
4.金融業態間の垣根の低下や異業種との融合といった新しい金融の流れに照らせば、わが国においても、最終的な目標として、業の概念をサービスの提供主体から取引行為そのものに係る機能面に重点を移して整理していくことが考えられよう。商品・サービス・組織形態の自由化を盛り込んだ金融システム改革は、そのような方向へ向けた第一歩である。しかしながら、そうした抜本的な制度の枠組みの変更を、市場参加者の行動の実態に先行させ理念のみに基づいて進めることには困難が伴う。むしろ、金融システム改革の進展状況を十分踏まえつつ、具体的な検討を進めていくことが必要である。このように考える場合、現在まず検討が求められている点として、マル1今後予想される多様な金融商品の登場等に備える横断的な金融商品の販売・勧誘についてのルールの検討、及びマル2国民に多様なリスクとリターンを組み合わせた商品を提供する集団投資スキームについてのルールの検討が挙げられる。
 金融審議会第一部会は、この2つの点について、それぞれワーキング・グループを設置し、専門的かつ技術的な検討を進めた。
III .新しい金融のルールの枠組みが対象とする金融商品の範囲
1.新しい金融のルールの枠組みを横断的に考える場合、その対象範囲としてどこまでを金融商品として考えるかが問題となる。
 この点について、参考となる事例を引くと、以下のとおりである。
 英国の金融サービス法では、「投資物件」が対象として定義されている。そこでは、株式、社債、政府証券、集合投資計画のユニット等に加えて、通貨や商品等に係る先物、オプション等のデリバティブ取引や長期保険契約等も含む幅広い商品が個別列挙されており、また、預金は銀行法でカバーされるという体系になっている。なお、金融サービス法は現在改正作業が進められており、改正案である金融サービス・マーケット法案では、現行の金融サービス法の範囲に加え、新たに預金、不動産担保貸し付けや保険商品全般等を追加することが提案されている。
 米国の証券法による証券の定義では、株式、債券等を始め、信託受益証券、リミッティッド・パートナシップ持分など、きわめて広範な商品が列挙されているほか、判例によって、新しい金融商品が登場した場合でもこれら列挙されている商品と類似性を有するものについては証券に該当するとされ、これにより、幅広く弾力的な新しい金融商品等を「証券」の範囲に取り込むことが可能となっている。また、証券には「投資的契約」も規定されており、その解釈については、判例により、?共同事業への出資である、?収益が専ら投資者以外の者の努力によって得られる、という基本要件(いわゆるハウイ基準と呼ばれる)がメルクマールとされている。他方、証券や商品関連の先物取引については、原則として「商品取引所法」によってカバーされる法体系となっている。
 わが国証券取引法上の有価証券は、投資対象性に加えて流通性も念頭においた定義となっている。具体的には株式、社債、証券投資信託受益証券、銀行等の貸付債権を信託する信託の受益権等が定められている。さらに、証券会社等が行う有価証券デリバティブ取引は証券取引法上、証券業と位置づけられている他、金融先物取引については、金融先物取引法が制定されているといった法体系となっている。
2.金融審議会第一部会においては、21世紀を見据え、横断的な金融法制を検討していくに当たっての考え方として、検討の入り口では幅広い金融商品を対象として考えるべきではないか。その上で、商品の特性等の問題は、例えばルールの適用や規制の目的等との関係に照らして判断していくというアプローチを採ることを考えてはどうか、という意見が大宗を占めた。
3.金融には、キャッシュフローの転換(資金の配分)と、リスク負担の変更(リスクの配分)という2つの機能がある。いわゆる「金融サービス法」の対象となる金融商品のメルクマールを考えていくに当たっても、この金融の機能に着目し、キャッシュフローの移転を実現しているかどうか、投資の対象となっているかどうかを基礎としていくことが適切である。ただ、金融・情報通信技術の進展と金融業の分業化という流れに照らせば、この2つの機能をともに満たすことを条件とすると、実態上は金融機能を有しているにもかかわらず、かなりの部分が対象として除外されてしまうことにもなりかねない。したがって、キャッシュフローの移転と投資対象性という2つの基礎概念のうち、少なくともどちらか一つを満たすものについては、金融商品として幅広く検討対象としていくことが適当である。
4.具体的に何が金融商品に含まれるか否かは、このメルクマールを基礎に取引の実態等を踏まえ、政策的に判断されるべきものである。しかしながら、金融を横断的に捉えるいわゆる「金融サービス法」の趣旨に鑑みれば、株券や公社債券といった証券取引法上の有価証券はもとより、信託の受益権、預貯金、保険、融資といった伝統的な金融商品を始めとして、デリバティブ取引、さらには、いわゆる「金融サービス法」の下で横断的な整理を目指して現在検討を行っている集団投資スキームの商品についても、対象として全て含まれることとすべきである。
 このメルクマールの下では、郵便貯金や簡易保険といった国により提供されている商品も対象となりうることとなる。こうした商品についても、証券取引法上の有価証券である国債と同様、メルクマールに従い、金融商品となると考えられるが、その上で、業務を国が運営する等の特性を考慮してルールの適用を弾力的に考えていくことを検討する、というアプローチが考えられる。
 なお、第一部会においては、マル1プロ・アマないしホールセール・リーテイル等の区分とそれに基づく販売・勧誘規制のあり方について、及びマル2集団投資スキームを巡るルールのあり方について、それぞれ、ワーキング・グループを設け、専門的かつ技術的な議論を行った。その際に出された議論は、本中間整理に添付されているワーキング・グループのレポートに詳述されている。その上で、そうしたワーキング・グループの議論を基に第一部会において検討を行った結果を整理したものが以下の記述である。部会の中間整理では、広く関心を惹起し意見を求めるため、あえて、できるだけ方向性を出す形で議論を整理してある。他方、下記の内容のすべてにおいて第一部会の意見が完全に集約されているわけではない。また、ワーキング・グループにおいても、さまざまな意見が出された。ワーキング・グループでのこうした議論の内容や、以下の記述の背景となる考え方の詳細については、別添のワーキング・グループのレポートを参照していいただきたい。
IV .横断的な販売・勧誘規制とプロとアマの区分のあり方
1.前提とする利用者像
? 基本的考え方
 金融に対する利用者のニーズが多様化・高度化するなかで、適切な利用者保護と金融イノベーションをともに実現させていくためには、金融取引の特性に応じた区分を設け、それぞれに対応するルールを明らかにしていくことが重要となる。その検討を行うに当たり、出発点となるのは、まずどのような利用者像を想定するかである。
 その場合、現実の多様な利用者像についても念頭に置くことが重要である。全ての人が、さまざまな金融商品の仕組みや性格に精通しているわけではない。こうした利用者に自己責任を求めていくに当たっては、十分な判断の基礎となる情報が入手可能であることが前提となる。
 他方、事前調整型行政から自己責任を原則したルールに基づく行政への転換の流れの中で、利用者像の前提として、自己責任原則を負えない者が大部分であると想定することは適当ではないであろう。いわゆる「金融サービス法」の検討に当たっても、自己責任意識を持って主体的にリスクを選択できる利用者像を基本とした上で、他のさまざまな性質を持った利用者についても考えていくべきである。その上で、いわゆる「金融サービス法」は、利用者に必要とされる情報が取引に与えられる環境を整備するとともに、必要な情報が与えられない場合にはリスクが完全には移転しないことを明確にすることと等により、こうした自己責任意識を持った利用者層の形成を支援していくものとして位置づけられるべきである。
 しかしながら、金融取引の形態は多様である。例えば、コール市場を始めとして、業者を中心として活発に継続・反復的に取引が行われる取引市場においては、利用者が特段の条件なしに自己責任を貫徹し得ると想定することができよう。また、そのように取り扱うことが実務上も、また、金融のイノベーションを促すという点においても適当である。他方、如何に説明を尽くし情報を与えても、自己責任の全部ないし一部が問い得ない場合も限定的にはあろう。このように考えると、
(a)利用者が特段の条件なしに自己責任を貫徹しうる場合(ホールセール・プロ分野)、
(b)利用者が一定の情報提供等を受けたことを前提として自己責任の下でリスク負担ができる場合(一般リーテイル・一般利用者分野)、
(C)利用者の自己責任の全部ないし一部が問い得ない場合(特定リーテイル・特定利用者分野)
を考え、それぞれの区分の基準を定めるとともに、各々に対して如何なるルールが適用になるかを明確にしていくことが重要となる。
(注)なお、ここで、「アマ」、「プロ」という用語については、「新しい金融の流れに関する懇談会・論点整理」の整理に従い、自己責任との関係での区分を示す用語として便宜上用いているものである。この用語自体が個人の投資技能や資質等の優劣を示すという趣旨ではない。
? プロとアマ(一般・特定利用者)、ホールセールとリーテイルの区分
 この「プロとアマ」、ないし「ホールセールとリーテイル」の区分を行い、適用になるルールを分けていくことは、金融の効率性向上と適切な利用者保護という2つの軸を確保していく上で、有益なアプローチである。この区分を検討していくに当たっては、
 マル1金融商品の利用者という取引の主体に着目して、例えば業者の取引相手が 「プロ」である場合と「アマ」である場合とに分け、それぞれルールを対応させる方法と、
マル2金融商品に関する取引の類型に着目して、例えば、金融商品の種類や取引の金額、取引市場といった属性に応じて、取引参加者を特段の条件なしに自己責任が貫徹できるものと見なす「ホールセール取引」とそうではない「リーテイル取引」とに区分した上で、それぞれの分野におけるルールを対応させる方法があり、さらに、
マル3その取引主体と取引類型の組み合わせに着目するという方法がある。その場合、区分の基準のあり方としては、( i )明確性・客観性、( ii )取引主体・金融商品の多様性に応じたきめ細やかさ、( iii )実行可能性(ルール運用のコスト、プライバシー保護等)、( iv )選択の自由の確保(恣意的な区分の排除、当事者の意思の尊重)を念頭に置いていくことが考えられる。さらに、こうした区分を画一的に決めるのではなく、利用者による主体的選択をできるだけ重視していくという視点も重要である。
 取引の主体に着目した場合、利用者に特段の条件なしに自己責任を貫徹し得る「プロ」の基準としては、例えば、金融取引に係る知識・経験に照らして判断したり、リスク負担力や専門の助言者を雇う可能性等を考慮して利用者の資力等に照らして判断していくことが考えられる。
 こうした観点からは、プロに区分され得るものとしては、例えば金融サービス業者、一定規模以上の法人、事業目的・内容等に照らして金融取引を反復・継続して取引する者等が考えられる。今後、それぞれについて、具体的にどのような基準を設定していくのかという点を検討していく必要がある。例えば、一定規模以上の法人といた場合、商法特例法上の大会社や証券取引所の上場会社という基準を用いるのか、といった意見も見られたが、そのような基準についてどう考えるのか、また、事業内容等に照らして金融取引を反復・継続して取引する者については、年金基金等の機関投資家や金融子会社等を考えていくことで良いのか、海外の主体についてどのように取り扱うかなど、今後、具体的な基準について、現行法制の考え方や金融実務等を踏まえ、検討を進めていくべきである。
 取引の類型に着目する区分については、実務的な観点からは利用者の属性を取引の都度確認するコストが省ける等という利点がある。この類型の基準としては、一定の種類の金融商品に関する一定金額以上の取引について、取引の主体に関わらず一律に「ホールセール取引」と区分することも考えられる。また、取引所における会員の取引、外国為替や短期金融市場に係る業者間取引といった市場に着目し、こうした取引については、全て「ホールセール取引」と区分することも考えられる。
 いわゆる「金融サービス法」の基本理念が適切な利用者保護の確保と金融イノベーションの促進であること、また、金融商品の販売・勧誘に関するルールが取引主体間での情報格差の存在を取り扱う問題であることに照らせば、区分方法については、取引主体に着目した区分を中心に考えていくことが、デメリットが少なく、相応しいと考えられる。
 他方、区分の明確性・客観性や実行可能性等にも配慮しつつ、望ましいと判断される場合には、取引の類型に着目したアプローチや取引主体と取引類型を組み合わせるアプローチについても併用していくことが考えられる。
? プロとアマ(一般利用者)との間の選択・転換等
 利用者はアマに区分されることによってより手厚い保護が受けられる一方、プロに区分されることによって取引の選択肢の拡大や低い手数料といったメリットが享受できる。こうした点を踏まえれば、アマの中でも、一定の情報提供等を前提として自己責任を問い得る一般利用者に対しては、その主体的な選択を尊重し、一般利用者からプロへの選択・転換を一定の明確な手続きに従って求めるということが考えられる。
 この場合、選択・転換の方向としては、利用者のモラルハザードの助長を防ぐ等の観点からは、一般利用者からプロへの方向の選択・転換を主として想定し、プロから一般利用者への選択・転換は原則として認めないことが考えられる。但しこの場合でも、一度一般利用者からプロへの選択・転換したものが再度一般利用者に逆戻りする場合については、一定の手続きに従った上でこれを可能とすることが適当と思われる。
 選択・転換が行われた場合、その選択・転換の範囲について、その後の金融取引全般について適用されると考えるのか、同種の取引に限って適用されると考えるのかといった点について明らかにする必要がある。なお、選択・転換の手続きについては、業者側より書面等による通知を行い、利用者による書面等による同意を必要とすること等により取引当事者の意思が的確に反映されるようにしていくことが考えられよう。
(注)ここでは、取引主体による区分を中心に考えたが、取引類型による区分を考えた場合には、一般リーテイル取引のルールから主体的に離れ、ホールセール取引のルールを選択する、ということになる。
2.販売・勧誘行為に関するルール
? 販売・勧誘行為に関するルールの位置づけと対象とする商品の範囲
 金融商品の販売・勧誘行為は、金融取引のさまざまな場面で発生するものであり、金融仲介の非常に重要な部分を担っていると言える。その一方で、金融取引を巡るトラブルの多くが販売・勧誘行為に関係して発生しているのも事実である。従って、金融商品の販売・勧誘行為に関連するルールを明確化し、その実効性を確保していくことは、いわゆる「金融サービス法」の検討において非常に重要な部分を占めることになる。
 金融商品の販売・勧誘に当たるルールを検討していくに当たり、当事者間の取引の私法上の要件・効果の関係を律する「取引ルール」と、業者に一定の行為を義務づける「業者ルール」のそれぞれについて、検討していくことが適当である。
 なお、ここで、金融商品の販売・勧誘についてのルールは、金融商品に対して横断的にかけられるべきルールとして想定されている。従って、如何なる金融商品に対する取引であれ、原則としてこのルールが適用されることとなる。
 但し、金融商品の類型によっては、利用者が資金の出し手ではなく資金の受け手となる場合がある。融資に関する契約がその典型である。金融取引が融資の場合には、むしろ利用者保護の観点からは、信用供与にあたっての条件の適正な開示や、回収方法の適正化といった点が意味を持ってくると思われる。従って、融資取引等の場合にあっては、以下に検討される金融商品の取引にかかる販売・勧誘行為に関するルールとは別の視点からのルールの整備についての検討も今後深めていく必要がある。
? 販売・勧誘行為に関するルールの類型と定義と相互関係
 金融商品の販売・勧誘行為に関する主要なルールとして、説明義務、適合性原則、及び、勧誘・広告規制がある。
 説明義務とは、業者の利用者に対する金融商品の情報提供義務という意味であり、相対型ディスクロージャー義務であるとも言える。
 他方、適合性原則とは、狭義には、一定の利用者に対しては如何に説明を尽くしても一定の金融商品の販売・勧誘を行ってはならない、という意味であり、広義には、利用者の知識・経験、財産力、投資目的等に照らして適合した商品・サービスの販売・勧誘を行わなければならないといった意味である。
 さらに、勧誘・広告行為に関するルールがある。このうち、勧誘ルールとしては、不適切な勧誘についてのルール(詐欺的あるいは誤解を招く勧誘の禁止等)のほか、上記の適合性原則に関連して利用者に不適合な勧誘の禁止等が考えられる。
? それぞれのルールの内容
マル1 説明義務
(イ)取引ルール(私法的権利義務関係の明確化)としての説明義務
 取引ルールとしての説明義務を考える場合には、「説明をすればリスクを移転する」、「説明をしなければ移転しない」を基本として、その要件と効果を具体化・明確化していく作業が重要になる。
 この点については、利用者に提供されるべき一定の重要な情報を業者が提供しなかった場合には、業者に損害賠償責任が発生することを、取引ルールとして明確化すべきである。
 この場合、具体的にどのような情報が提供されるべきかが重要な論点となる。利用者が金融商品の内容全てについて知ることを想定するのは非現実的である。説明義務の趣旨に照らせば、それは金融商品のリスク判断にとって枢要となる情報として捉えるべきである。その場合、説明内容としては、金融商品の種類に加え、金融商品に係るリスクの種類(損益の変動をもたらす要因)とリスクの内容(あわせて、リスクが顕現化した場合の状況も)が、最も重要な意味を持つことになると思われる。但し、こうしたリスクの種類と内容の一層の明確性・具体性を高めるという意味から、例えば、商品の基本的な仕組み等のその他の事項についても、重要事項として含めるべきではないか、との指摘があった。説明が必要とされる重要事項については、金融商品の種類等に応じてさまざまなバリエーションが考えられ、今後、その細目についても検討を深めていく必要がある。
(ロ)業者ルール(業者の行為の基準)としての説明義務
 業者ルールとしての説明義務については、業者の利用者に対する重要事項の提供の義務づけとして考えることができる。ルールの明確性を保ちつつ、金融商品の多様性にも対応していくためには、例えば、重要事項と考えられる事項については、法令等において、各商品に共通のミニマムスタンダードとなる事項や、商品分野毎の基本的な重要事項を明示した上で、さらなる細目については、民間の自主ルール等に委ねるといった対応が考えられる。
 他方で、業者ルールとしての説明義務についても、円滑な金融取引の妨げとなるほど、不必要な加重なものとなることは避けるべきであり、一定の場合については、業者の説明義務の適用を軽減あるいは除外することが適用ではないかと考えられる。この点については、例えば、( i )ホールセールあるいはプロに関する取引を行う場合、( ii )同種取引を反復・継続する場合、( iii )利用者側が説明を不要とした場合、( iv )金融商品に周知性がある場合、( v )ディスクロージャーが別途行われている場合、などを念頭に置いてはどうか、との指摘があった。
 また、説明義務の履行を確実にし、事後的な確認についても可能とするための方策としては、例えば説明等にかかる書面の作成・交付や、利用者からの確認書の作成等が考えられる。今後、利用者と業者の双方のコストにも配慮した上で、取引の種類等に応じて具体的に検討していく必要があろう。
 なお、説明義務については、業者の利用者に対する情報提供義務に止まらず、提供された情報についての利用者側の理解の有無という意味も含めて考えるべきではないか、との議論がなされる場合がある。これに対して、利用者の理解や納得という側面は、主観的な事項を対象とすることとなるため、妥当かつ明確性のある法的要件を提示することは必ずしも容易ではないとも思われ、具体的なルール化については引き続き慎重な検討が必要である。また、理解や納得の側面については、ルールというよりも、むしろ、業者は利用者の理解等に配慮した販売を行うよう努める一方で利用者としても自ら理解した上で取引を行うよう心がけるべきであるといった意味で捉え、少なくとも理念的には重要性を持つと考えることもできよう。
 また、今後の法体系のあり方としては、取引ルールと業者ルールを適切に組み合わせることにより、全体としての規制の社会的コストを現行制度よりも引き下げる方向を目指しつつ、ルールの実効性を確保していくことが重要である。かかる観点からは、必要と認められる範囲内で業者ルールの違反に民事上の効果を与えることが考えられる。併せて、こうした義務違反に係る立証責任、免責事由及び損害額の推定のあり方についても検討していくことが有益である。この点については、民事訴訟法等の一般法規との関係も含めて、引き続きそのあり方を検討していく必要があろう。
マル2 適合性原則
(イ)狭義の適合性原則
 狭義の適合性原則とは、ある特定の利用者に対してはどんなに説明を尽くしても一定の商品の販売・勧誘を行ってはならない、という意味である。これを「取引ルール」として考えれば、こうした利用者への一定の金融商品の勧誘に基づく販売は如何なる場合も無効と見なされ、リスクの移転も認められないということになる。「業者ルール」としてみれば、利用者に対する一定の金融商品の勧誘行為あるいは販売行為を禁止する、ということになる。
 このように取引を一律に無効とする取り扱いを法令で明示的に規定することは、契約における私的自治の原則等に照らせば難しいのではないか、との意見が多かった。しかし、金融取引の実態に照らして、こうしたルールの必要性が高いのであれば、むしろ取引・契約の成否ではなく、その前段階としての勧誘行為に着目し、「業者ルール」として、一般的な個人に対して極端にリスクが大きい金融取引の勧誘行為を禁止する、あるいは厳格な手続きに従うことを義務づける、といったように、何らかのルールを設ける余地がないか、との意見が出された。この場合、まず問題となるのは利用者の属性と金融商品との具体的な組み合わせをどのようにルール化していくかである。この点については、利用者保護の観点から必要性が高い範囲として、例えば、取引経験のない一般的な個人に対しレバレッジが極端に高かったり、利用者に相当額の負債が残るといった一定のリスクの大きい金融取引を行う場合について、業者の利用者に対する勧誘行為を禁止する、あるいは、コンプライアンス体制の整備や取引記録の保存等の厳格なルールに従って勧誘を行うことを義務づけるといったルールが考えられるのではないか、との意見があった。今後、このように、狭義の適合性原則に基づき、一定の勧誘行為を禁止することの適否やそのあり方について、引き続き検討をしていく必要がある。
(ロ)広義の適合性原則
 広義の適合性原則とは、業者が利用者の知識・経験、財産力、投資目的に適合した形で勧誘(あるいは販売)を行わなければならないというルールである。その場合、利用者の理解という側面への配慮が重要な要素となる。
 広義の適合性原則を「業者ルール」として考えた際、適合性に配慮する勧誘・販売の前提として業者が利用者の属性等について知ることが必要になる。しかし、業者に対し利用者に関する情報の調査を義務づけることは、プライバシー保護の観点等に照らし時期尚早であり、むしろ業者が利用者について知るための十分な体制整備を行うことなど、業者の内部的な行為規範を義務づけるべきではないか、との意見が大宗を占めた。なお、不適合と判断される利用者が取引を希望する場合について、業者がこれに応じることができるかが問題となる。取引の私的自治の原則に照らして取引自体を禁止することは難しいが、これに対しては、取引自体の禁止は困難としても、業者が利用者に対する警告を行うことを義務づける等の対処ができないか、との意見がみられた。
 なお、広義の適合性原則と「取引ルール」との関係については、広義の適合性原則はあくまでも業者の内部的な行為規範に関するルールであり、個別の訴訟等において、業者の内部体制の不備が斟酌されていく余地はあろうが、私法上の効果に直接連動させて考えるのは困難であるとの意見が大宗を占めた。
マル3 勧誘に関する規制・ルール
(イ)不適切な勧誘行為の禁止等
 不適切な勧誘行為の類型としては、(a)詐欺的な行為による勧誘(虚偽の情報の提供、重要な事実の故意による秘匿等)、(b)誤解を招くような勧誘(断定的な判断の提供等)、(c)強迫的行為による勧誘といったものが上げられる。
 こうした不適切な勧誘行為についてのルールを「業者ルール」の観点から考えると、不適切な勧誘行為は、利用者保護の観点のみならず、金融取引・金融市場全体の信認にも悪影響を与えかねない場合があり、現在の各業法においても禁止あるいは防止に係る規定が設けられている場合が多い。いわゆる「金融サービス法」の検討においても、金融商品の種類等に応じて、ルールの具体的内容について考えていく必要がある。
 「取引ルール」の観点から整理すると、不適切な勧誘行為を取引・契約の無効・取り消しや解除のための要件と考えることが必要あるいは適当といえるか、という点が論点となる。不適切な勧誘行為に関する「取引ルール」の確立は、利用者保護に係る現状に照らして有効な方策であるとの見解がある一方で、これに民事責任発生の要件等まで持たせることは、民法の原則等に照らして議論の余地がある、との意見もあり、今後引き続き検討を深めていくことが必要である。
(ロ)広告に関するルール等
 広告に関するルールについては、広告が現実の利用者の行動に与える影響の大きさ等に照らして、虚偽あるいは利用者の誤解を招くような表示を禁止するといったルールのほか、金融商品の基本的なリスクに関する警告についてのルールを充実させていく必要があるのではないか、との意見が出された。今後、こうしたルールの内容が競争制限的にならならいことにも配慮しつつ、検討を進めていくことが考えられる。
(ハ)その他の論点
 その他、重要な論点としては、クーリング・オフ(無条件契約解除権)の適用の適否、いわゆるウォーミング・アップ(一定期間置いた契約成立)の導入の適否、金融商品に付随するリスクが第三者(金融商品に係る資産運用業者等)の行為に依存する場合等において販売・勧誘を行う業者と資産運用業者等との責任分担をどうすべきかという点がある。また、インターネット取引等にみられる金融商品の電子取引やクロスボーダー取引の取り扱いについても、今回は十分に掘り下げた議論を行う余裕がなかったが、今後、引き続き検討をしていく必要がある。
V .集団投資スキームに適用されるルール
1.集団投資スキームとは何か
 金融サービスの高度化・専門化が進展している中で、多数の投資家から資金を集め、市場で専門家が運用・管理する、いわゆる集団投資スキームは、21世紀の金融において一層重要な役割を担うこととなる。
 集団投資スキームについては、大まかに「資産運用型」と「資産流動型」の2種類に分類することができる。
 「資産運用型」は、多数の投資家から集めた資金をプールし、これを専門家たるファンドマネージャー等が各種の資産に投資・運用することによって得られたキャッシュフローを投資者に配分するものであり、既存のものとしては、証券投資信託、商品ファンド、実績配当型合同運用金銭信託等がこれに当たる。
 「資産流動化型」は、これに対し、特定の資産から生じるキャッシュフローを、専門家たるアレンジャー等が組み換えて主として多数の投資家に証券等を販売することにより資金調達を行う仕組みであり、既存のものとしては、SPC(特別目的会社)法や特定債権法による証券化商品等がこれに当たる。
 現在、こうした資産運用型や資産流動化型の特性や、投資される商品の対象、さらには仕組みを組成する際に受け皿として用いられるファンド等(ビークル)の法的枠組み等の特性を踏まえつつ、それぞれの業法によって、ルールや投資家保護のあり方についての枠組みが規定されている。
 集団投資スキームにおいて、業者による一層の創意工夫の発揮によって金融のイノベーションを促進し、より多様で魅力的な商品の提供を可能としていくためには、適切な投資家保護が図られることを前提としつつ、より横断性と自由度の高い法制・ルールを検討していくことが望ましい。
 この検討に当たり、金融審議会第一部会では、まず、集団投資スキームについての基本的性格と、スキームに必要とされるルールとその背後にある考え方を整理することが、将来の具体的な制度の見直しに当たり有益な前提となるのではないかとの考えに立ち、こうした点の検討を出発点として議論を行ってきたところである。
2.集団投資スキームに関する法制・ルールの必要性
 投資者にとって、集団投資スキームへの投資は、プールされ、第三者により運用される等といった性格をもっている。すなわち、投資の受動性、共同性という性格である。こうした特色から、
マル1 投資家が投資対象資産を直接支配・管理しないという性格のゆえに、投資家がその金融商品であるスキームの内容について理解することが困難である場合が多いだけではなく、スキームの運営者による不正行為や利益相反が行われるおそれがある。
マル2 投資家が多数存在するために、投資家間の利害対立が起きたり、個別の投資者がモニタリングを行うインセンティブが欠如するおそれがある、
といった問題が存在する。また、多数の専門の金融サービス業者が分業してスキームを構成している場合が多く、どのようなリスクを誰がどの程度負担し、リスクを移転するためには何をなすべきかが分かりにくい、といった問題もある。従って、集団投資スキームにおいては、スキームの適正な運営を確保するとともに、関係当事者間のリスク分担を明確にするためのルールを具体的に明らかにしていくことが重要になる。
 なお、こうした集団投資スキームの適正な運営の確保やリスク分担を明確にするためのルールを考えていくに際し、その前提として、適切なディスクロージャーの枠組みを整備することにより、自己責任原則のもと、投資家の主体的な投資判断が行われる環境を確保しておくことが重要であることはいうまでもない。特に集団投資スキームにおいては、そのスキームの仕組みについても、十分なディスクロージャーが確保されることが必要である。
 また、このような基盤整備がなされれば、運用対象などを一層自由化することが可能となり、それによって、創意工夫を発揮した自由な商品を市場に提供することが推進されよう。
? ガバナンス機能の活用による対応
 情報開示は投資家保護の基本的前提であるが、情報開示の目的は主として金融サービス業者と投資家との間の情報格差の是正等にあり、金融サービス業者の利益相反行為等に対しては牽制効果等はあるものの、直接的に規律づけを行うものではない。このため、集団投資スキームの受け皿となるファンド等(ビークル)の適正な運営の確保について、ファンド等(ビークル)自体として自律的に規律づけるルールの確保が重要になる。
 こうした自律的な規律づける具体的な方策としては、
( i )議決権行使等、投資家の直接の権利行使を通じる方法、あるいは( ii )監査役監査を始めとする第三者による外部チェックを通じる方法、等(これらを総称して、ファンド等(ビークル)の「ガバナンス機能」と呼ばれることがある)が考えられる。
 集団投資スキームに対する自律的な規律づけ(ガバナンス)が効率的・効果的に発揮されるためには、こうした種々のガバナンス機能について、コスト等も勘案しつつ、適切に活用していくことが必要である。
 なお、集団投資スキームの受け皿となるファンド等(ビークル)に関する主な根拠法制としては、民法上の任意組合、商法上の匿名組合・株式会社、信託法上の信託、等がある。そして、こうした根拠法制に応じて、組織形態、出資者等の責任、業務執行に対する監視等のルールが定められている。さらに、集団投資スキームが、資産運用型か資産流動化型かといった点によっても、ファンド等(ビークル)の果たすべき役割が異なってくる。具体的なルールを考えていくに当たっては、こうしたファンド等(ビークル)のさまざまな特性を踏まえつつ、追加的なルールの整備の必要性の有無等も念頭に置いて、検討を進めていくことが必要である。
? 受託者責任の具体化・明確化による対応
 集団投資スキームのガバナンス機能の活用を図ったとしても、スキーム運営者の不正行為や利益相反行為をモニタリングすることには困難が伴い、また、コストがかかる。従って、ガバナンス機能の活用に加え、何らかの方策によって業者の規律づけを行っていくことが重要な意味を持つ。
 英米では、スキームに関与するそれぞれの金融サービス業者に、受託者(広義)としての責任があることを明確化し、一定範囲の任務を遂行すべき任務を負っていると考える、fiduciary duty(受託者責任)の法理が発達している。他方、わが国においては、「受託者(広義)が当然に負うべきすべての責任」といった広い意味での受託者責任についての法理は、十分に明確になっていなかった。今後、スキームのそれぞれの特性を踏まえつつ、できるだけ法制・ルールの横断化を図っていくに際しては、受託者責任についてのルールの具体化・明確化を行い、それを金融サービス業者の行為規範として受託者責任の考え方を積極的に位置づけていく必要がある。
 この受託者責任の具体的内容はさまざまである。集団投資スキームにおいて重要になるものとしては、忠実義務(利益相反防止義務)、善管注意義務(適切投資義務)、分別管理義務等が挙げられる。そして、これらのさまざまな義務が提供される金融サービスの機能に則して、さまざまなルールとして具体化される。
 ルールの明確化・具体化に当たっては、法令による対応だけでは弾力性に欠けるおそれがあることなどから、自主ルール、契約等による当事者間の取り組み等が適切に組み合わされることが望ましく、今後、その具体的なあり方について、一層検討を進めていく必要がある。
3.機能面に着目した集団投資スキームに関するルール
 以下、機能面に着目して集団投資スキームに関するルールについて、検討する。
 集団投資スキームに関するルールを大まかに整理すれば、マル1スキームの「仕組み」に関するルール(ファンド等のガバナンス機能、スキームの組成行為、スキーム等の適格性)、マル2スキームの運営に関するルール(資産運用、助言、資産管理)、及びマル3組成された金融商品の取引に関するルール(販売・勧誘、ディスクロージャー等)に分類することが可能である。なお、このうち、特にマル1「仕組み」に関するルール及びマル2運営に関するルールについては、資産運用型と資産流動化型のスキームとの間では、必要されるルールについて差異が存在することに留意が必要である。
? 資産運用型スキームについて
 資産運用型スキームは、関与する金融サービス業者としては、スキームの構成を組成する仕組み業者、スキームの基本的な投資方針に従って実際の運用を行う資産運用業者、それに対し投資助言サービスを提供する助言業者、プールされ運用されている資産を管理する資産管理業者等が存在する。
 マル1 仕組み行為に関するルール
 集団投資スキームにおいて、その仕組みのあり方は、商品そのものの内容を左右する重要なものである。従って、運用の基本方針と運営のあり方、資産管理のあり方というものから、スキームの運営経費、金融サービス業者に対する報酬、キャッシュフローの分配方法、発行した証券等の解約や買取りにおける価格や手数料のあり方、買取りの原資の確保などについて明確にしておくことが必要になる。
 運用型の特徴としては、資産運用業者に裁量が働く余地があるため、利益相反といった弊害が生じる可能性があることである。従って、スキームを組成する仕組み業者(スポンサー)としての受託者責任は、こうした利益相反等による不測の損害を起こりにくくするよう、利害関係に関するディスクロージャーや、適正な資産運用業者や助言業者の選任、適正な仕組みの設計といった面に反映される。
 なお、例えば、基本的な投資方針の決定・変更等を投資家の直接の権利行使による決定に委ねるなど、スキーム運営の適正性確保について、投資家のガバナンスを発揮させるケースもあり得る。この場合には、決定された方針に不服な投資家の有する株式の買取請求や譲渡等ができるようにしておくことが必要となると考えられる。
 さらに、外部チェック機能として独立したトラスティー(受託者)を設置することも考えられる。
 このような受託者責任、投資家によるガバナンス機能、及び外部チェック機能を、ファンド等(ビークル)の類型等に応じて組み合わせてスキームの適正な運営を確保することが必要と思われる。なお、この場合、会社型のファンド等(ビークル)の場合には、投資家自身によるガバナンス機能がより重要な役割を果たすと考えられる。
 スキームや業者に対する適格性の認定についてのルールも重要である。スキームの仕組みを構築することは、商品性の内容を決定することに他ならず、その適正性を確保することは、投資家保護の観点から極めて重要である。従って、わが国のみならず、欧米等においても、その適格性を確保するために、何らかの行政の関与を行う場合が多い。
 適格性を確保するための方法としては、仕組み業者(スポンサー)に対し、一定の適格性(fit and proper) を求める方法と、個別の仕組みについて認可等にかからしめる方法とがある。英国では業者及びスキームの認可制がとられており、米国では投資会社を含めたスキーム自体の登録制が採られている。わが国においては、証券投資信託について、委託業者の認可制をとる一方で信託約款は届出制となっている。また、商品ファンド法については、業者に対しては許可制がとられているが、スキームについてのルールは存在しない。
 集団投資スキームについて、横断的・整合的な法制ルールを考えていく際には、業者とスキーム自体と、どちらにウエイトをかけて適格性を確保していくかが問題となる。この問題については、受託者責任の浸透度、投資家によるガバナンス機能や外部チェック機能の実効性の程度等を踏まえつつ、全体として判断していく必要があろう。
マル2 資産運用に関するルール
 事前に定められた基本的な投資方針に従いつつも、裁量制を持って実際の運用に携わる資産運用業者に対しては、利益相反等の弊害が発生しないようなルールが必要になると思われる。こうした観点からは、利益相反を防止する必要性の程度等に応じて、投資家に対する利害関係にあることの情報開示や、一定の利益相反関係にある取引の禁止、利益相反の立場にあることの禁止等のルールを整備・明確化することが考えられる。
 また、資産運用業者に対する受託者責任については、英米では、適切(プルーデント)な運用を行うべきことを定めたプルーデント・インベスター・ルールが存在する。他方、運用の適切性を確保する他の態様のルールとして、ファンドの流動性確保等を目的とした、ポートフォリオ規制が存在する場合がある。こうした規制は目的に沿った運用の適切性を直接確保するものであるが、他方で、商品設計に制約を与える面もあるとの指摘もある。今後、プールデント・インベスター・ルールの確立・浸透の程度に照らしつつ、この点について検討していく必要があろう。
マル3 助言に関するルール
 集団投資スキームにおける資産運用に対し助言行為を行う業者について、受託者責任としては、依頼者のニーズに合った助言を確保するといった、ベスト・アドバイス・ルールが存在する。さらに、利益相反を防止するためのルールとしては、顧客との金融商品の取引や自己の保有する金融商品を顧客に推奨する行為(スカルピング)を禁止するなどのルールが考えられる。
マル4 資産管理に関するルール
 資産管理サービス業者に課せられる受託者責任としては、自己の信用リスクから受託した資産を隔離するとともに、利益相反を防止するため、受託した資産を分別して管理することが求められる。
 なお、この分別管理については、投資家の資産を自己の破産リスクから遮断することが重要であり、資産を分別管理していること等を要件として破産の際に他の資産と分離して取り扱われることが、法的に担保されなければならない。こうした観点から、取引の類型や資産の種類に応じた分別管理の方法や、法的位置づけの明確化等の検討が論点になる。
4.資産流動化型のルール
資産流動化型の集団投資スキームの金融商品は、資金調達のために特定の資産が生み出すキャッシュフローを用いて金融商品を組成するための仕組みである。このため、キャッシュフローを独立させ、維持・管理することが重要であり、仕組み(ストラクチャリング)が終了しスキームが運営される段階においては、スキームの変動を防ぐこと(導管性の確保)が重要になる。スキームの安定性を維持することが重要であるという性格から、運用型の場合とは異なり、投資家によるガバナンス機能については、むしろ一定の制約が存在せざるを得ないこととなる。
 このように考えた場合、受託者責任の重要性が増してくる。スキームを組成する仕組み業者(スポンサー)に対する受託者責任としては、資産運用型と同様に、利益相反防止に関する措置の手当てに関する内容が課せられると考えられよう。
 スキームの適格性の確保については、例えば、特定債権法では特定債権等譲受業者の許可制と流動化スキームの届出及び確認が、SPC法では、SPCの登録制(スキームの内容は資産流動化計画等に記載され登録の要件となる)が採られている。スキームと業者の適格性についても、全体としての投資家保護の枠組みの中で、望ましい取り扱いを考えていく必要がある。
 資産管理については、資産運用型と同様に、破産リスクの遮断、資産管理業者への利益相反防止のための分別管理が基本となる。
 いずれにせよ、資産流動化型のスキームは、構造が比較的に単純なものから非常に複雑なものまで、多様なストラクチャーの構成が可能である。今後、仕組み行為に関するルールについて一層具体的な検討を進めていくに当たっては、このような特徴を十分に踏まえていく必要があろう。
5.資産運用型・資産流動化型共通の金融商品の取引に関するルール
? 販売・勧誘ルール
 集団投資スキームに関する販売・勧誘行為については、他の金融商品と同様に、説明義務や適合制原則といった販売・勧誘にかかるルールが適用になると考えられる。この販売・勧誘ルールについて、具体的に必要とされる情報提供の内容等は金融商品の性格等に依存する。集団投資スキームについては、わが国では伝統的な金融商品と比べまだ歴史が浅く、馴染みがうすい金融商品であることが多いといった点に留意する必要があろう。
? ディスクロージャーの内容等
 わが国においては、SPCの発行する証券や証券投資信託等の受益証券については、不特定多数の投資家に対して譲渡されるといった市場型の取引が想定され、証券取引法上の有価証券として公衆縦覧型のディスクロージャー方式が適用され、発行開示としての有価証券届出書及び継続開示としての有価証券報告書のディスクロージャーが行われている。他方、商品ファンド法、特定債権法、不動産特定共同事業法に基づく金融商品のように相対型の取引が行われるものについては、発行開示に当たるものとしての契約前や契約時の書面交付が、また、継続開示にあたるものとして運用報告書や流動化対象資産の状況等の交付といった、相対方式のディスクロージャーが採られている。
 今後、集団投資スキームの横断的なルールを検討していくに当たっては、こうした公衆縦覧方式と相対方式のディスクロージャーの差異について考え方を整理していく必要がある。
 また、集団投資スキームについては、仕組みそのものが金融商品の性格を決定づけ投資判断に当たり重要な要素の一つとなっており、仕組みに関するディスクロージャーの更なる充実が必要になると考えられる。
 なお、今回の部会審議においては、公正取引ルール等の市場ルールについて、議論の時間が十分とれなかった。今後、市場型取引・相対型取引の差異を踏まえた、公正取引ルールや価格形成ルールについて、他の一般の金融商品に係る市場ルールと合わせ、検討を進めていくことが望ましい。
 また、クロスボーダー取引の進展に伴い、海外で組成された商品の国内への持ち込み等が一層進む可能性があるが、こうした場合に対するルールのあり方についての検討も重要である。
VI .ルールの実効性確保と消費者教育のあり方等
1.ルールの形成と実効性の確保
「ルール」とは、取引参加者間の権利・義務関係や責任分担について、それぞれの主体がなすべきこと、してはならないことを事前に決めておく約束事の総体であるが、これを定める方法としては、法令、判例の積み重ねにより形成された法理、自主規制団体のルール、取引参加者による慣行ルール、個別業者の内部的なリスク管理やコンプランアンスのルールといったさまざまなレベルがあり、こうした手法にそれぞれの役割分担を考えていくことは重要である。
 ルールの遵守の実効性確保という観点からは、行政の役割が大きいことは否定できない。しかしながら同時に、わが国の金融市場の自律的・効率的発展を図っていくという観点からは、取引参加者の主体性をできるだけ促す方法でルールが定まっていくことが望ましい。こうした観点からは、自主規制団体の役割や業者のコンプライアンス体制が重要になる。
 わが国における自主規制団体についてみれば、法律上の根拠を持つ自主規制機 関の他、法律上の根拠をもたない業界団体が併存している。さらに、いわゆる 「金融サービス法」において、幅広い金融商品・サービスを対象に横断的にルールを設定していくことを考えれば、むしろ将来の自主規制団体のあり方の方向性としては、行為に着目した横断的なあり方を模索すべきではないか、との意見があった。他方、その場合、団体の設立・運営のためのコスト負担をどうするのか、といった問題も指摘された。今後、関係者の間で自主規制団体のあり方についての議論が進められることを期待したい。
 さらに、「ルール」実効性確保のいわば最後の拠り所として、司法的解決が存在する。この点について、わが国においては、司法的解決は、解決に要する時間や費用等に照らし利用者にとっては敷居が高く、制度・運用の改善について、関係者の努力が求められているのではないか、との意見もみられた。さらに、この観点からは、裁判外紛争処理制度の充実を図ることが望まれるが、その場合、その中立性・公正性についての信頼確保を一層図っていく必要がある。
2.消費者契約法(仮称)との関係等
 現在、政府部内で検討が行われているいわゆる消費者契約法(仮称)は、消費者・事業者双方の自己責任原則に基づく行動を促すような環境整備を図ることが必要であるとの問題意識の下、具体的には、契約締結過程等において、予見可能性を高めるための、具体的かつ包括的な民事ルールを立法するとともに、契約に関する情報提供や消費者教育の推進を図るという考えに基づく検討がなされているものである。こうした点において、現在金融審議会で検討を行っている、いわゆる「金融サービス法」と目指す大筋の方向性としては一致しているものと考えられる。
 他方で、いわゆる「金融サービス法」の検討については、単に消費者保護の充実といった側面のみならず、効率的で活力ある金融サービスの構築を図ることが重要という問題意識に基づき、金融取引全般を対象に検討を行っているものである。この点において、「消費者契約法(仮称)」の趣旨や対象範囲とは必ずしも一致するものとはなっていない。
 こうしたことから、金融審議会第一部会としては、消費者契約法の検討については、現在検討を進めているいわゆる「金融サービス法」と基本的には相互補完的な関係に立つとの理解の下で、消費者契約法(仮称)の検討状況を見据えながら、それぞれが果たすべき役割分担を検討していくことが望ましいと考えている。
3.消費者教育について
 金融イノベーションが進む中で、さまざまな金融商品の中から、消費者が主体的に選択をしていくに当たり、消費者による金融商品についての適切な理解が必要である。このためには、販売・勧誘段階で業者から消費者に対して適切な情報提供が行われる必要がある。さらに、消費者が金融の仕組み全体に対する知識を深め、商品の選択に際し、多数の選択肢の中でその商品がどのように位置づけられるかについての理解を高めることが重要である。また、リスクとリターンを厳しく判断する消費者の存在は、市場の効率性を一層高めていくことにもつながろう。こうした観点からは、消費者が情報を得て学ぼうとする際にはそれを可能とするような環境整備を図っていくことは不可欠である。
 消費者教育については、これまで、業界などによる説明会の開催やパンフレットの作成など、地道な努力が既に行われてきている。こうした取り組みを今後一層拡張していくことが望まれる。さらに、業界の垣根を超えた消費者教育全般についての取り組みが考えられなければならない。
 また、こうした業者側の取り組みに加え、個別の金融商品に対する知識以前の問題として、金融全般に関する基本的な知識の向上や、金融を含む消費者教育全般について、一層の拡充を図ることが重要である。金融の基本的な知識の向上等については、学校教育の場で行われることに馴染む分野でもあるとも思われ、教育関係者の理解も得て、広範な消費者教育の充実が図られていくことを期待したい。
VII .残された検討課題と今後の進め方
1.以上記述したように、金融審議会第一部会においては、これまで、
 マル1 ホールセールとリーテイルあるいはプロとアマの区分と、金融商品に横断的に適用になる販売及び勧誘に関するそれぞれの区分に応じたルールについての考え方、及び
マル2 集団投資スキームのルールについての考え方、
に焦点を当てて検討を進めてきた。
 マル1金融商品に横断的に適用されるべき販売及び勧誘に関するルールについての考え方については、今後本中間整理に対し各界から寄せられる意見を踏まえ、検討課題として残された問題についての検討を続けていく予定である。
 また、インターネットを始めとした電子取引が急速に進展している点にも留意する必要がある。こうした背景の下、米・英においては、電子的金融取引に関するルールの構築に向けての検討・整備が進められている。今回の部会の検討においては、主として対面販売のケースを念頭においてきているが、電子取引の進展を踏まえ、非対面販売の場合やクロスボーダー取引の場合のルールの枠組みを、どのように考えたらよいかについての議論を行っていくことも今後視野に入れていきたい。
 マル2集団投資スキームのルールについては、今般の検討軸としつつ、頂いたコメントを踏まえ、今後、現在の各制度を念頭に置きながら、具体的な検討を進めていきたいと考えている。
2.今回の検討においては、販売・勧誘行為に焦点を当てたため、ディスクロージャーや公正取引ルールといった、市場機能の維持・発揮に関して全ての参加者に適用されるルール(市場ルール)には直接の焦点が当てられていない。しかしながら、効率的かつ信頼できる市場を構築する上では、業者ルール、取引ルールと並び市場ルールのあり方は重要であり、今後検討が進められることが必要である。
3.いわゆる「金融サービス法」の検討に当たって、重要となる軸は、透明性を前提とした金融分野の効率性と公正性である。今回の取り組みは、全体としての規制を強化する方向に向かっているのではなく、むしろ、ルールを明確にしていくことによって、社会的な取引コストを全体として低下させていくことを狙いとしている。また、ルールを明確化する方法としても、これまでの事前予防的な業者ルールに過度の負担を負わせていた枠組みから、業者ルール、取引ルール、市場ルール全体として、さらには行政法規のみならず、自主規制団体のルールや業者のコンプランアンスのあり方等が全体として、適切な役割分担をしつつ整合的なルールの体系を構築することが期待されている。こうした点に鑑みれば、ルールの実効性確保のあり方についても、これまでのように行政がその大部分を担うのではなく、司法も含めたさまざまなエンフォースメントの体制全体のあり方を総合的に念頭に置いて幅広く検討を行っていく必要があろう。
4.金融システム改革の進展を踏まえつつ、以上のような検討を行っていく中で、最終的には、既存の業態別の法制という枠組みについて抜本的に見直しを行う横断的な法制の検討が視野に入ってくることが期待される。
 以上でございます。
○蝋山部会長 どうも大変ありがとうございました。森田さんが一番疲れたと思いますが、聞く方もなかなか大変でして、1回だけですっと頭の中に入られたかどうか難しい面もあるかと思いますけれども、とりあえず、全体の構成とか、そういう点について御意見があれば伺いたいと思いますし、それは最後にして、パーツ・パーツということで進めていって、最後にということでもいいんですが、全体について何かここでという意見ありますか。原さんがお一人。
 では、原さん、どうぞ。
○原委員 これの「中間整理」の出し方なんですけれども、ずっとこれまでの話だと、夏の時期にパブリック・コメントを求めるという、そういう言葉でずっと表現をされてきたんですが、これは実際には「中間整理」として各界の意見を聞きたいというふうには書かれておりましたので、これを公表という形で、パブリック・コメントではなくて、何か御意見があれば各界、それは消費者も含めてですけれども、お寄せくださいというふうになるのか。それによって書きぶりとか、パブリック・コメントを求めるんだったら、専門的な用語がありますけれども、そういったところの括弧をもうちょっと丁寧にしていただきたいようなところもありまして、各界に出されるんだったら、こういったスタイルというのでしょうか、書式でもいいように思うんですが、それについてちょっとお聞きしたいと思います。
○細溝債権等流動化室長 厳密には、パブリック・コメントというのは、例えば政省令を制定するときに関係者の意見を求めるといったのが通常の厳密な意味でのパブリック・コメントなんです。
 私どもがパブリック・コメントを求めたいと申しておりましたのも、そういった厳密な意味ではパブリック・コメントではないんですが、金融審議会として一定の方向性のある考え方を打ち出す。打ち出したときに、各界からどんどん意見を寄せてほしいと。そういった意味で、いわば政省令でパブリック・コメントを求めると同じようなことをやりたいということで、パブリック・コメントと一般的に言われている言葉を使っておりました。
 したがって、これはいわば単に公表してということではなくて、これに前文が付けなきゃいけないんだろうと思うんですが、こういった方向で今物を考えている。したがって、それについて意見を寄せてほしいというようなものを付けていこうという発想でございます。
○蝋山部会長 どうぞ。
○三國谷企画課長 全体の話につきまして申し上げたいと思います。
 金融審議会におきましては、第一部会、第二部会それぞれのテーマについてワーキンググループ等を設置しながら議論を行ってきているところでございますが、それぞれの部会あるいはワーキンググループの進捗状況、あるいは性格等がそれぞれ異なるところがございます。したがいまして、それぞれのこういったパブリック・コメント的なものを求めるかどうかということは、それぞれのテーマに応じて異なってくることになろうかと考えております。
 第一部会の問題につきましては、この部会の下に、そのパーツをさらにワーキンググループに専門的な意見を委ねるという構成をとっておる、そういったものの中でこういった「中間整理(第一次)」あるいはワーキンググループのレポート、そういったものを公表いたしまして広く意見を求めるということでございまして、これがまた他のものに同じようなことでやるということは考えてございません。それぞれの状況に応じるものでございます。
○蝋山部会長 私の頭の中には、例えば証取審のビッグバンのときの総合部会のやり方というのがあるんですね。それはインターネットで、もちろん新聞で公表いたします。原文を配布します。そして、取りに来て、読みたい人はどうぞと。それから、インターネットでもホームページの中に入れ込みます。そして、特定のアドレスで、どんなコメントでも不特定の方から、何も相手を指定せずにコメントを頂戴しました。そういうようなやり方が我々の頭の中に既成概念としてありまして、恐らく今回もそのような方法をとりたいというふうに思います。
 ですから、各界という場合に、特定の方にコメントをお願いするとか、そういうことではありませんで、任意にどなたからでも御意見を頂戴したいというふうに考えております。そういう点では、政省令の際のパブリック・コメントより、もう少しパブリックという概念が広いかもしれない。
 もしもそういうやり方について御意見があれば、そういうことを考えているならば、もう少し書き方が具体的に、ここはこうした方がいいという御意見がありましたら、また具体的に頂戴したいというふうに思います。
 どうぞ。
○細溝債権等流動化室長 この第一部会の「「中間整理(第一次)」は、実は三段重ねになっていると思うんです。これが一番上にありまして、その次にワーキンググループの専門的な検討結果。これはワーキンググループの報告ですが、これが付きます。それに、なおかつ、ワーキンググループに参加していただいた先生方、委員の皆さんのそれぞれの論文といいますか、意見発表といいますか、それが付きます。
 なおかつ、今御指摘いただいて思ったのは、用語ですね。言葉の意味が確かにきっちり書いている部分もあれば、書いてない部分もあるとすれば、用語の説明をインデックスで付けるのか、そういったものも付けて、いろんなポンチ絵も入れながら、皆さんに御意見を広く求めようというようなことになるのかなというように思っております。
○蝋山部会長 原さん、よろしゅうございますか。
 まだそういうふうに読者というのが、そんな専門家でないことも頭の中に入れなくてはいけないんだから、もう少しこの部分はこんなふうに書いた方がいいよという御意見があれば、ぜひパーツ・パーツで頂戴したいというふうに思います。
 どうぞ。
○三國谷企画課長 先ほどちょっと抽象的に申し上げましたが、第二部会のテーマは、それぞれの進捗状況によって異なりますので、これはあくまでもこのテーマに限った話でございまして、そういった段階に至っているもの、至ってないもの、多々ございますので、そこは区分をよろしくお願いしたいと思っております。
○蝋山部会長 高橋さん、どうぞ。
○高橋委員 今の件に関連してなんですけれども、やはり一般の方にも読んでいただきたいという点からしますと、重要な事項については論点ということを明らかにしていただいて、サマリーのようなものを付けて、この点についてどう考えるのかという幾つかの重点について出した方がよろしいのではないかということが一つです。
 それから、こういうコメントを求めた場合は、そのコメントがどのように検討、処理されたのかということが大事ですので、それについて現在ある程度決まっていることがあれば、教えていただきたいと思います。
○細溝債権等流動化室長 非常に論点が多いものですから、そういうふうにうまく出せるかというのがあるんですけれども、ただ、いわば一種のエグゼクティブ・サマリーみたいなものは、これも用意はしたいと思っています。全体をやるようなものですね。
○三國谷企画課長 実際にパブリック・コメントが出てきた段階で、どのようにするかという問題でございますけれども、実はこれはやってみなければわからないところがございます。と申しますのは、私、昨年は企業会計審議会で、ここは伝統的にパブリック・コメントを出して意見をもらうというところでございますが、それぞれ意見書の数、内容等相当様々な形態があるわけでございまして、相当分厚いこともあれば、少ないこともある。それぞれに応じて定型的にああする、こうするというのは、なかなか困難なところがございます。
 そういったいただきましたパブリック・コメントにつきましては、物によりましては、まとめて集約いたしまして審議会に御紹介することもございますれば、あるいは件数が少ない場合であれば、そのまま全部お示しして御議論いただくこともございます。そういったパブリック・コメントの中には、さらにいろんな種類がございまして、既に部会で十分議論を経たことについて意見が出たもの、あるいは部会の意見の中では少し範囲を超えているもの、いろんなものが多々ございまして、そういったものを見ながら、その段階でどのように取り扱うということを考えていかざるを得ないかと思っております。
 ただ、いただきましたコメントにつきましては、いずれにしましても、真摯にそれを我々なりにまた事務局としても集約、分析して、審議会にお諮りするという形になろうかと思います。
○蝋山部会長 よろしゅうございますか。
 それでは、全体のこと。
 どうぞ、岩村さん。                            ○岩村委員 完全に全体と言い切れないものもあるんですけれども、これから世の中の意見を、各界の意見を聴取していくという観点ですので、個別にここに書かれていることについて賛成、反対ではなくて、聞いていくという前提で、分類で言えば大きな二つ。
 つまり、一つは、恐らく法律を実際に作ろうとしたときには重大な論点になるはずなのだけれども、重大な論点になりそうな点を書いていただいているわけですけれども、私の印象では、必ずしも十分に強調されていないので、早く意見を酌み取った方がいいと思う点が二つほどあります。
 それから、技術的に少し混乱した、私の印象ではよくわからない表現になっているので、整理していただいて、世の中に問うた方がいいのではないかという点が三つほどあるような気がするんです。
○蝋山部会長 どうぞ御紹介ください。
○岩村委員 まず、重大な論点であろうが、強調され切ってないのではないか。もう少しぎりぎりと意見を聴取した方がいいのではないかと思う点が2点ございまして、第1点は、しばしば「自主ルール」ないし「自主規制団体」という言葉が出てまいります。やはりこれを法律体系の中に組み込んでいくことを考えるのであれば、何よりも強調すべきは、その自主ルールというものが、いわば取引関係をわかりやすくしたり、あるいはその私的自治の形成、契約の形成を容易にする、そのコストを低くするために、というものとして自主ルールを位置づけているのか。
 それとも、自主ルールをもって、直接、取引当事者間に法律的な効果、強制的な効果をもたらそうとしているのか、この点は非常に重要な点で、その点を明らかにしながら自主規制団体のあり方を議論しなければいけないように思うんですが、28ページなんかの表現を見ますと、自主規制団体のあり方を議論することを期待しているというふうにお書きいただいているんですが、何よりも重視すべきは、やはり私の意見では、自主ルールが直接私人間の契約に強制力を持つのか。それとも、強制力を持つのは、あくまでも私人間の契約であって、その契約形成に対して、それを補助する役割をしているのか。これは位置づけの問題ですので、最初から強調しておかないと、私は混乱するような気がいたします。これが第1点です。
それから、同じく重大な問題になるかもしれないなという直観がいたしますのは、例えば24ページに「仕組み業者」という概念が出てまいりますが、この仕組み業者というのが、今度は金融法体系の規制の体系の中に入れていくのか。特に金融機関的な観点で入れていくのか。現実に集団投資スキームと言われているものは、現実的な仕組み行為が会計士がやっていたり、弁護士がやっていたり、格付機関がやっていたり、金融機関がやっていたりと、いろんなケースがあるように思います。
そこで、仕組み業者という概念を登場させるということがあるとすれば、それはやはり法令上大きな体系の問題ですので、そこについての議論は、少なくとも喚起しておいた方がよろしいような気がいたします。恐らく事務当局の方でも意識されていながら、私の感じでは、もう少し強調された方がいいと思う点は、以上2点です。
 それから、技術的に私がよくわからないので、報告ということで世に問うていくのであれば、はっきりさせた方がいいのではないかと思う点がやはりありまして、これはページを特定できないんですが、金融商品というものを考えるときに、基本的にはこれは一般の顧客からお金を預かるという方向のものを意識しているのか。それとも、お客さんに金を貸す、与信するというスタイルのものも意識しているのか。ここの点はいかがなのかというのは、これも明示された方がいいような気がします。
 フレーバーとしては、基本的にはお客さんからキャッシュを預かるタイプのものですね。今の有価証券を販売するような形のものをお考えになっているようなフレーバーはするんですが、ただ、これからの金融というのを考えていくと、例えばお客さんに住宅ローンを貸すと。だけど、地震のようなイベントが起こったら返済を免除するなんていうようなスキームを考えると、これは住宅ローンと地震保険の組合せなんですけれども、しかし、形としては、キャッシュはお客さんの方に渡っていて、その反対ではないので、こういうものをどう扱うのかというのはスタンスの問題です。技術的ですけれども、しかし、やはり混乱する可能性がある点ですので、気になります。
 それから、同じく混乱する可能性がある点だなと思うのは、14ページに損害賠償の話が書いてあります。これはむしろ表現なのかもしれませんが、説明すればリスクが移転する、しないと、こういう議論でやった方がいいと書いてあって、その下に損害賠償と受けているんですが、これは混乱的な点ではないと思います。つまりリスクは移転していないのであれば、損害賠償ではないはずなのですが、損害賠償的にこういう法律の仕掛けを作るのか。そもそもリスクが移転する、しないと。だから、その場合、むしろ不当利得の返還とか、債務の存在とか、そういう話になるんでしょうけれども、そういう話で構成するのかは、これも技術的ですけれども、割と大きな分かれ目になってしまう論点になるかもしれないので、しばし注意するか、あるいは論点であれば、論点であることを明示された方がよろしいのではないか。
それから、同じく技術的にではありますけれども、ややこしくなりそうだなという気がするのが17ページなんですが、要するに説明責任とか適合性の話なんですが、あるいは売り主も注意せよという話の中で、そうすると、その売り主は何に注意するのかという話ですね。プライバシーとの関連やなんか書いてあるんですが、17ページによりますと、金融業者に顧客の調査を義務づけるのは、プライバシーとの抵触もあるのでと書いてありますけれども、プライバシーという考え方からすれば、むしろ義務づけようが、義務づけまいが、業者が顧客の情報を調査していれば、それ自体やはりプライバシーとの抵触はあるはずなので、義務づけるか否かということでプライバシー問題を迂回することはできないと私は思います。迂回する方法は、プライバシーとは何ですかというような話をまた始めるわけで、今日はそれはいたしませんけれども、義務づけるか否かで話を切ってしまうと、やはりこれも技術的ですけれども、混乱的な論点になり得ると思いますので、御検討をお願いしたいと思います。
以上です。
○細溝債権等流動化室長 自主ルールないし自主規制機関という話がありましたけれども、実は全体的に大きくて、業者ルールをいかに民事効を持たせるかというところに入ってくるんですね。実はそういう業者ルールの中に自主規制団体のルールなり、業者のコンプライアンスなりがある。
前々回でしたか、ポンチ絵を御紹介したときにも、業者ルールから取引ルールにいく?が二つありまして、一つが一定の場合の一定の民事効を与えるというのと、業者ルールができることによって取引ルールがだんだんと確立されるであろうというところと?が2本あったと思います。したがいまして、岩村さんがそのどちらなのかとおっしゃられると、それはどちらもなんですと。ただ、そこは切り分けがまだできてないと。どういう場合に直接の民事効を認め、どういう場合になのかというのが、まだ実は切り分けができてないというのが今の状況であります。
 それから、仕組み業者のところは、ちょっと工夫させていただきたいと思いますし、金融商品のところは、キャッシュフローの確かにその方向が逆だねというのはあるんですけれども、実はデリバティブなんかも双務契約でありまして、双務取引の場合があります。したがって、今回の対象の中にはデリバティブまで入れているんですが、それは当然認識しているんです。融資についてどうするかというのは大問題なんですが、実はそこまで今回入り切れなかった。むしろキャッシュフローが投資家から業者の方に来るというところに注目した販売・勧誘のルールになっているということであります。
 それから、損害賠償の話ですが、これも実はワーキングで大問題になりまして、いわゆる契約法でいくのか、不法行為でいくのかという話でありまして、でも、実際には過失相殺なんか考えると、不法行為の方が今は主流だし、それの方がやりやすいんじゃないのというような話がありますが、そこら辺は、実はワーキングの方ではかなり書いてあるといったものでございます。
 最後の調査義務のところも、実はワーキングのレポートの方に書いてあるといった感じでございます。
○蝋山部会長 岩村さんの五つの点については、それぞれのパーツでもまたそれなりに御議論をいただきたく思いますが、今、岩村さんからは一つ一つの部分についてもコメントがありましたので、順を追って皆様から御意見を頂戴したいといふうに思います。
まず、初めの1章から3章まで、ページ数で言えば1ページから8ページまでの総論的な部分について御意見等がございましたら頂戴したいというふうに思います。
 関さん、どうぞ。
○関オブザーバー この第1章の部分で金融サービスのあり方を整理されているわけですが、ここは多分意図的に外しているんだと思いますけれども、というのは、後ろの方で、今後の残された課題で、エレクトニック・トレーディングとの関係のことをこれから詰めていかなければならないということが書いてありますし、途中でもどこかそれに触れたところがもう1カ所あったように思うんですけれども、ただ、今後の展望する場所ですから、やはり今後、金融サービス法的なものを考えていくときには、こういったエレクトニック・トレーディングの手法が前回議論がありましたように相当大きな部分になってくるだろうという前提で考えていかなきゃいけないんじゃないかということは総論に入れておいた方がいいように私は思うんです。これはあくまで中間でございますから、総論で書いたことは全部各論で触れてなければコメントできないという問題ではないわけで、これは多分そういう配慮があって落とされたと思いますが、どちらかというと、入れておいた方がいいんじゃないかなと私は思うんですが、いかがでしょうか。
○蝋山部会長 わかりました。十分に考えます。ただ、岩村さんの先ほどの融資の件とか、ほかの国との流れとの比較で言うと、70年代の終わりにアメリカでは、例えばトゥルース・イン・レンディングとかそういう非常に消費者保護的な、利用者保護的な法体系ができているんですね。我々の非常に包括的な、そういうものに関して我々は大分遅れをとってしまって、インターネット、そういう新しいトレーディング・システムが技術的に発展しようがしまいが、やっておかなきゃいけないことがたくさんあるので、そういうようなところをまず扱っているというファクターも大分あります。
ですから、おっしゃるようなそういう新しい情報技術の発展というものがこれを必要とさせたんだという認識は大分後退しているんですね。その辺のところがクーさんに批判されているところなんですけれども、そういうところに追いつくためにも、まず基礎産業として、こういうリーガルな基礎が必要だという認識の方がどうも我々に強かったものですから、今、関さんから御指摘のような結果になってしまったというふうに思います。その辺のところは微妙なところがややありますけれども、きちんと手入れさせていただきたく、検討させていただきます。
原さん、どうぞ。
○原委員 簡単なことで大変恐縮なんですが、4ページの1.の第2段落の「今後の金融システムのあり方として」ということで、効率性と公正性という二つの軸なんですが、これは私もこのとおりだと思うんですが、順番としては私としては、公正性と効率性というふうに思っておりますが、確かに社会的コストの低減というのは狙いの中にありますけれども、出されるときには、逆になさった方がいいのかなと思っています。
 それは31ページの……
○蝋山部会長 並んで書くときには、必ず公正を先に出せということですね。
○原委員 ええ。31ページの下から4行目もそのように思います。
○蝋山部会長 はい、わかりました。
○原委員 それから、同じような表現で大変恐縮なんですが、5ページの4.から始まるところですが、「金融業態間の垣根の低下」と書いてあるんですが、これは低下ではなくて、「垣根を低くすることや」という表現ですよね。「垣根が低下した」というような表現が日本語的におかしいように思いますが……。
○蝋山部会長 はい、わかりました。
○原委員 それから、この5ページのところで、現在まず検討が求められている点として、マル1マル2で、こういうワーキングを設けたということが書かれているんですが、私はマル1のところは、もうちょっと広い形での検討が進められたといふうに思っておりまして、販売・勧誘についてのルールだけではなくて、金融商品の範囲そのものはその「多様な金融商品」という言葉に入っていますが、ある意味では実効性確保の話なんかも含まれておりましたから、せめて「ルール等の」とか、実効性確保とかエンフォースメントとか、そこまで広げたような形での検討をしたというふうに書かれた方がいいと思いました。
 それから、あと7ページですが、ここで4.のところで、4.の下の段落で郵便貯金と簡易保険について書かれていて、ここでも雑談的には話は出ましたけれども、これを読むと、実際にここでもこれを検討するというふうに読み込めてしまうんですが、国が運営する等の特性は考慮するけれども、ルールの適用についてはここでやりますというふうに書いているように読めてしまうんですが、これはそこまではできないとおっしゃっていましたよね。だから、ちょっと書き方が違うのではないかな。印象的な話で申し訳ありませんけれども、ちょっと気がつきましたので。
○蝋山部会長 一番最後の点は、郵貯や簡易保険や、そういうのは国がやっているから我々は検討しないと言ったことは一度もないと思います。
○原委員 やってもいいということで提案をしてよろしいわけですね、私どもとしても。
○蝋山部会長 はい。
○原委員 はい、わかりました。雑談のときには、いや、なかなかこちらが意見を言っても、向こうが聞いてくれない。
○蝋山部会長 ポリティカルには難しいですよ。リーガライズするときにどうかということは、それは固有の問題があります。相手がまだパーティシパントが増えますからね。それは厚生年金についても同じことで、年金についても同じことで、いろんな形でそういう問題があります。商品ファンドの話とか、特定商品ファンドとか、不動産の特定事業の場合もありますし、いろんなことが触れられています。同じように貯金や簡易保険についても考えて構わないと思います。
○原委員 はい、わかりました。
 以上です。
○蝋山部会長 クーさん。
○クー委員 まず、当初に全体のということだったわけですけれども、幾つかの点がありまして、まず、この資料、「会議終了後返却」とあるのは、委員に対して余りにも誠意がないんじゃないか。つまりこれは、1回確かに今すばらしい朗読があって、私も大変感激したんですけれども、恐らく委員の方で、もっとじっくり見たいという人はいると思うんですね。あたかもあとの35分、あと25分間に何も出てこなければ、もうこれでオーケーだというような雰囲気があるので、ここはちょっとどうかなと思います。
それはともかくとして、全体の中で、特に最初に、国民の金融資産の有利な運用というのがうたわれているわけですけれども、それに資する話はほとんどないですね。じいちゃん、ばあちゃんにどうやって勧誘しちゃいかんかというところに全体が向いているようで、 1,200兆円がこれまで余り効率的に運用されてなかった。それが国民にどのくらい大きなロスがあったかということに対して、こういう金融サービス法を打って出ることによって、どのくらい効率性が上がるのか、どのくらい資金運用者に自由度が増すのかという、そっちの部分。先ほど原さんの方から、公正と効率で、公正の話はたくさんあるようですけれども、効率の話はほとんどないような気がします。
先ほどの朗読の中で20ページの下の方ですけれども、また、このような基盤整備がなされれば、運用対象を一層自由にすることが可能になり、それによって、創意工夫を発揮した自由な商品を市場に提供することが推進されようと、これ一言なんですね、効率に関しては。なぜ今できないのか。もっと今でもできるのではないのかという、こういう問題点も含めて、余りにもじいちゃん、ばあちゃんに勧誘しちゃいかんということばかりで、それで失われている国民の富ですね。これは恐らく 100兆円単位かもしれない。 1,200兆円の運用の議論しているわけですから、そっちが余りにも足りないんじゃないかなという気がします。別の部会でやっておられるのかもしれませんが、最初にそういうふうに大きく打ち出しておいて、あとは本当に微々たる消費者の話で終わってしまっているのは、ちょっと残念だなという気がします。
それから、プロ・アマ、これは極めて差別的な表現で、私はこういうことは考えたくもないんですけれども、プロ・アマを区別すべきというところの12ページですけれども、アマの場合は「手厚い保護」という表現があるんですね。手厚い保護とはどういうことなのか。損失補填してくれるのかと。まさか損失補填はないわけですから、そうすると、結局は、いっぱい説明を食らうというぐらいなんじゃないんですかね。ということは、いっぱい説教を食らうだけで、結局は同じリスクを背負って、場合によっては、高い手数料を払わせられて、それで、損失が出たときはプロと同じ扱いと。もしもそうだとしたら、そういうふうに書くべきじゃないですかね。何か「手厚い保護」という表現を使うと、あたかも、プロの人はここで損を出すかもしれないけど、うちは損が出ないんだろうというような印象を与えては非常にまずいんじゃないかという気がします。
あと、これは後ろの方になりますけれども、集団投資スキームの中でディスクロージャーということで、これは誰でもディスクロージャーを充実すればいいと書けば作文になったような気持ちになっている人がたくさんいるようですけれども、特に集団投資スキームの場合、最近、特に新しいいろんなアイデアがこの集団投資スキームの運用に使われているわけですけれども、これは商品知識の中でも、余りディスクロージャーしては危ないものがたくさんあるわけですね。
例えば、ポートフォリオ・インシュアランスというスキームがありますが、これはどこでポートフォリオ・スキームのコンピュータ・プログラムが実際にオーダーを出すかというのを知られちゃうと、ほかのマーケット参加者から、わざとそれを引っ張り出そうと、そいつに売らせようと。そろそろあと何銭か動けば、あいつは必ず売りに出なくちゃならなくなるはずだと。無理にでもそこまでやって、そいつに売りに出させて、それで儲けるというようなことは実際に行われているんですね。
東京マーケットは比較的参加者みんな顔を知っているものですから、あいつ、そろそろトリガーポイントに近づいておるぞと。そうしたら、じゃ、ニュージーランドで仕掛けて、市場が比較的薄いわけですから、ちょっと為替がそこで動いたら、あいつら売らちゃならなくなる。結局今度は、そういうファンドを運用している方からしてみますと、絶対に自分のファンドの構成がどうなっているか知られないように、わざとうそをつくんです。本当は売りたいんですが、先に買って、マーケットをだましてから次に売るとか、そういうことも集団投資スキームでは実際に日々行われていますから、余りディスクロージャーのことを強く言ってしまって、投資家の皆さんが、後から、「えっ、こんなスキームになっているとは知らなかった」ということで議論が出てくる。ここは非常に難しい問題だと思うんですね。
ある程度はもちろん投資家は、例えばポートフォリオ・インシュアランスというのを入っているんだと、それで、そういう形でヘッジをやりますということはある程度わかっていなければ参加してもらっては困るわけですけれども、どのトリガー・ポイントでそれが出てくるのかというところまでディスクローズすべきかどうか。余りにもこういうふうに書いちゃうと、それも当然入っていてしかるべきだという印象を読んだ人は持ってしまうんじゃないかなと。この辺は、書き方を非常に注意していただかないと、恐らくそういう商品は日本では出てこなくなってしまう。これは国民にとっては大変なロスになりますから、そこはちょっと工夫していただきたいなというふうに思います。
○蝋山部会長 最後の点は十分に誤解を招かないような、決してトリガー・ポイントまで、何円で売りますというようなことを書けと申しているのではありませんので、その辺は表現の際に誤解のように注意したいと思います。
一番初めに言われた、会議終了後返却というのは失礼じゃないかという御意見は、私はよくわかります。事実そうなんです。少なくとも私は、会議終了後返却にしておかないと、リークしちゃんですね。そして、大変それで、いわばにっちもさっちもいかなくなったという経験がたくさんあります。そういう点では、必ずしも私は、これはまだ未定稿ですよと、今後十分に変わる可能性があります、たたき台ですということをどんなに口酸っぱく申し上げても、翌日の新聞あたりに大きく出ちゃう。これ、困るんですね。狭い議論の方が後で修正に困ったというケースが多々ありまして、こういうことにさせていただいております。
ただ、相対型で、ぜひじっくり読んでみたいんだけどという場合には、これは交渉に応じるということにはさせていただきたく思います。一般的なルールとしては、申し訳ありませんが、会議終了後返却にさせていただきますが、ちょっと読みたいんだけど、どうかという場合には、どうぞそれは、ということで勘弁していただきたいというふうに思います。本当に、要らざるところがすごく大きく報道されて、とても困るということが今までも何回もありまして、大変申し訳ありませんが、こういうことであります。
それから、効率性の向上という点が力説されてないじゃないかと。これも難しいところで、クーさんはどういうふうにお考えか、これは全体の議論の中で積んでいかなきゃいけないと思うんですが、これはあくまでも舞台装置でありまして、よく私はそういう例を出すわけです。劇場をきれいにしようと。観客が芝居を楽しむ一つの必要条件を満たしましょうと。しかし、本当に観客が芝居を楽しむかどうかということは、プレーヤーがどういうドラマの筋書きで、どういう戯曲で、どういう演技をしてくれるかによる。そのことを余り書いてないんですね。これはこちらにおられる方々がプレーしていただく。クーさんも含めてかもしれないけれども。それに非常によるわけでありまして、その辺のところの芝居が、それで結果的に良い芝居ができるかどうか、すばらしい芝居で観客が喜んでくれるかどうか、どのくらいその喜びの度合いを、今まで☆一つだったのが三つになるのかどうか。そう書けと言われても、なかなか難しいところがある。
 そこで、今御指摘のようなことになっているかと思うんですが、しかし、そういう点ももう少し考慮した上で、実際のプレーヤーの方々に大いにやる気があれば、この舞台はすごく活用できますよという点をもう少し強調するような書き方はしたいというふうに思います。そのコメント、大変ありがとうございました。
 あとは答えられるところありますか。
○クー委員 特に、今まではこうだったからできなかったけれども、これが入ればこういうふうに変わるから、こういうことができますと、それが少しわかる形になっていれば。幾つか英米ではこうでしたと、日本では遅れていたという指摘があって、そういうのは非常に重要なポイントになってくると思うんですが、もう少しそれを増やしてもいいんじゃないかなという気がします。
○蝋山部会長 はい、わかりました。
 上柳さん、どうぞ。
○上柳委員 今の点に係るのかもわかりませんけど、私のごく私見で言えば、去年あるいは一昨年来のいわゆるビッグバンの中で、日本の業者の方々もかなり自由になってきたんではないというふうに私自身は認識しているんです。
 そこで、消費者の方がもう少し安心できるように、むしろ公正性の方が強調されるべきではないかというのが私の考えですけれども、そこまでいかなくても、まさにこの 1,200兆円がうまく動いていくためにも、私は効率というよりも、むしろ公正というのがキーワードではないかというふうに私は思っているんです。
 というのは、例えば説明義務の話も、おじいさん、おばあさんに勧誘してはいけないということが強調されるわけではなくて、あるいはその説明義務を強く厳しく決めるということも、顧客の方が、業者が少しでもミスをしたら後で訴えてやろうと、そういうためのものではなくて、そういうふうに考える人も一部にはいらっしゃるだろうというふうに思うことは十分わかった上でも話なんですが、だけど、多くの消費者なり顧客、潜在的顧客にとっては、やっぱり業者にはすごく強い義務が課されていて、隠し事ができないようになっている。それが金融サービス法に決まったということで、国がそういうふうに、業者さん、隠し事しちゃいけないよと言ってくれているということで、じゃ、私が取引に入るときも、目の前でできた業者は隠し事をしてないだろうと、やっぱりそこの信頼がすごく大きな意味があるんじゃないかと思っているんです。
 ですから、私はむしろやっぱりそこの公正らしさというか、もっと言えば、説明義務がかなり厳しく課されていること。あるいはもっと言うと、お客さんに、自分に適さない商品については、はなから業者の方も勧誘なんか来ないだろうと、そういう環境があるということがむしろ重要なんではないかというふうに考えているんです。
 以上でございます。
○クー委員 そうだとしたら、それをもっとはっきり表に出すべきじゃないですかね。普通の人がこれを読んだら、説明義務とか何とかいっぱいで、こんなんだったら、例えば業者側の立場からしても、面倒くさくてやらないというような、そっちのロスももちろん出てくるわけですから、今おっしゃられたような点はもっと前面に出して、今までできなかったことがこういうふうに変わるんですというのがもう少しはっきり出てくれば、もっと国民にアピールするものができるんじゃないかなという気がするです。
○蝋山部会長 恐らく抽象的に言えば、効率と公正の間で完全なトレード・オフの状態に今あるというわけでは必ずしもないというのが上柳さんの認識だと思うんですね。公正さを改善すれば効率性の面でも改善ができる。そういう意味ではヒパレート・オプティマムな状況にあるという認識を上柳さんは示されて、恐らくクーさんは、いや、そうじゃないんじゃないか。そこで、トレード・オフの中で公正の方にぎゅっと傾いている表現になっているんじゃないか、そういうような印象を受けると。その辺のところも取り入れたいというふうに思います。
 ほかに、たくさん手が挙がっていますが、岩原さん、どうぞ。
○岩原委員 私の方はそういう大きい問題ではなくて、細かい概念の問題なんですけれども、現在の議論は8ページまでという了解ですね。そこで、7ページのところの3.で、金融商品の対象として何を考えるかということは議論されているわけなんですけれども、金融には、キャッシュフローの転換と、リスク負担の変更という二つの機能があって、これを出発点に考えるべきだというふうに書いてあるんですが、その次に、「キャッシュフローの移転を実現しているかどうか、投資の対象となっているかどうかを基礎としていくことが適切である」。後の投資の対象となっているかどうかというのを「投資対象性」という言葉で呼んでいるわけなんですけれども、従来この概念は余り議論していなかったと思うんですが、仮にここでの議論は、リスク負担の変更が、すなわち投資対象性を意味しているのかどうかですね。
 「投資対象性」という言葉を使うと、例えばイギリスの金融サービス法の投資物件というような概念を想起しますし、投資の対象と考えますと、リスク負担の変更というだけであれば、例えば保険商品が金融商品の対象と考えられますが、投資性ということを考えますと、全ての保険商品が投資性を持っているというふうにイメージするかどうか。多分違ってくると思うんですね。別に実質として私は投資対象性ということを一つのベースの概念にするのは賛成ではありますけれども、もう少しここを概念を整理する必要があるのではないか。少なくとも説明が必要ではないかという感じがします。
○蝋山部会長 ありがとうございます。
 高橋さん。
○高橋委員 今の続きの4.の部分なんですが、先ほど郵便貯金について、簡易保険についての例示のお話があったんですけれども、やはり会議の中で再三出てきましたJAとか全労災とか共済とか貯金ですね。国によるものではないのだけれども、伝統的な商品でもないものに関しても、やはり農水とか厚生省の管轄のものに関しても対象だというイメージは、ぜひ書き込んでいただきたいというのが一つのお願いでございます。
 それから、全体的に「横断的」という言葉がやや曖昧に使われているのではないかという点が気になりました。やはりこの金融サービス法の狙いは横断的であるということがキーワードだと思うんですが、例えば2ページ目の3行目に、金融システム改革法のときの説明義務を証券業法とか銀行法とか保険業法に同じようなことを書き込んだり、同じような政省令を流したことを言っているのではないかと思うんですけれ ども、行為規制が銀行や保険会社に対して課されるなど、ということに対して「業態横断的なルールの整備が図られている」という書き方がされているんですが、広義で言えばそういうことになるんでしょうけれども、ここで横断的という言葉をかなり早い部分で使ってしまうと、一番最後まで言っている横断的との区別が非常にわかりにくくて、一般の方にとっては、例えば、ページを越えてしまいますけれども、15ページの下のところで、取引ルールと業者ルールを適切に組み合わせることによってコストが少なくなると、この辺をわかっていただくことが大事だと思うんですね。
ですから、一つ一つを業法に書き込むことではなくて、横断的な一元的なルールを作った方が効率的であるというふうに読み取れるような記述にしていただきたいと思います。「横断的」という言葉に関して整理いただきたいということです。
以上です。
○蝋山部会長 うまく具体的な積極的なサゼスチョンありますか。後で教えてください。
ほかに。
○原委員 次のページへいってもよろしいですか。時間がもうないんですけど。
○蝋山部会長 どうぞ、結構です。
○原委員 簡単に話しますけれども、9ページから10ページにかけての部分で、ここに利用者像というんでしょうか、消費者像の話が出てくるんですが、まず9ページで言うと、中ほどに「他方、」から始まる段落なんですけれども、「自己責任原則を負えない者が大部分であると想定することは適当ではないであろう。」という表現が入っているんですが、これは私、わざわざ入れる必要は全くないというふうに思っておりまして、こういう人たちが大部分なのか、そうでないのかというのは、まだわからないですよね。ただわからないと言うと語弊があるかもしれませんけれども、でも、金融サービス法を念頭に置くのは、前提としては自己責任原則を持った人で考えたいということを出されるだけでよいのではないか。それについて意見があれば、寄せてくださいという形でいいんではないなというふうに思って、この一文は要らないというふうな感じがしました。
 それから、同じような関連で言うと、10ページで、ここに利用者像を???で分けてありますけれども、この間いただいた、何回目かで出された図のようなものがあると大変わかりやすくて、ただ文章だけを読みますと、先ほどクーさんがおっしゃった手厚い保護の部分と関連をすると、いや、私は絶対?にいきたいわという人がいるような気がするんですね。アマからプロへの転換というくだりが入ってきますので、この???の分け方だけを見ると、いや、絶対、手厚い保護があるんだったら、私は?の方にいきたいんだけれど、というような選択をしたいというような誤解が出てくるような気がするので、ここで「特定」という言葉もちょっと入ってきていますので、この辺はちゃんとした定義とか分け方とか、もっと消費者にわかるような形でなされた方がいいと思います。
 それから、ちょっと飛んで申し訳ありませんが、一言だけで、14ページなんですけれども、ここで説明義務の話がずっと書いてありまして、それで、この(イ)の中の下から4行目のところに「重要事項」という言葉が入ってきています。ここは「例えば、」で始まって、「重要事項として含めるべきではないか、」というふうになっていて、ずっと読んでいくと、「重要事項」という言葉はここで初めて出てくるんですね。この重要事項が何に当たるのかというのが前段で要るのではないか。消費者契約法の審議も私、並行してやっていますけれども、消費者契約法では重要事項というものの定義、こういうものはやっぱり重要事項としようというふうにして、それを説明をするとかというふうに段階をやっていますので、唐突にここに「重要事項として含めるべきではないか」という日常的な用語で、一般的な用語で入ってきているんですが、何かちょっと前段に入れていただきたいと思います。
 以上です。
○蝋山部会長 ありがとうございます。
 どうぞ、渡辺さん。
○渡辺オブザーバー これは金融商品の範囲あるいはルールの枠組み全体の関係であるんですが、ただ、これは非常に大きな問題だと思いますので、残された検討課題におけるテークノートの整理でもよろしいかと思いますが、要するにセーフティネットとの関係であります。
 従来の「論点整理」、昨年の「論点整理」のいろんな書きぶりと今回の書きぶりを比較いたしまして、その点が触れられていないのではないかというふうに思いました。これは今後のいろんな商品範囲を整理して、それらを消費者サイドのコスト負担の公平性の問題にもつながるでしょうし、それから、供給者サイドから見れば、商品間の競争におけるイコール・フッティングの問題にもつながると思われますので、これはテークノートとして検討課題に記載しておいた方がよろしいのではないかというふうに思います。今回整理するのは時間的な問題があると思いますが、非常に重要な問題だと思います。
 それから、先ほど共済の問題が出ましたけれども、それもそういった視点で、商品間の整理の問題では明確にしておく必要があると思いましたので、高橋さんの方から出ましたのと同じ意見であります。
○蝋山部会長 上柳さん。
○上柳委員 やはり7ページの先ほどの郵貯、簡易保険のところなんですけれども、私の考えでは、国が扱うからといって何か特別だというふうではないべきだろうと思います。もちろん商品の性質に応じてルールが変わってくるのは当然かもわかりませんけれども、そういう意味で、あえて書かれると、何か国だけ区別しているのかというふうな懸念がしました。
○蝋山部会長 何も書かないと逆になっちゃうんじゃない。
○上柳委員 そうですか。
○蝋山部会長 高橋さん、どうぞ。
○高橋委員 いきなり飛んで申し訳ないんですけど、いつも時間切れになっちゃうので、後ろの方なのですけれども、29ページの消費者教育のところに関してちょっと意見を述べさせていただきたいと思います。
この消費者教育に関して、私、ワーキングの委員でもあるんですけれども、今回はもう少し具体的に踏み込むというのが課題だったというふうに思うのですけれども、この部会報告では非常に単純な形になっているということが、もう少し書き込まなくていいのかということが1点でございます。
 その書き込む内容についてなんですけれども、私もこれに関しての意見発表をさせていただいたわけなんですけれども、強調したことの一つに、この消費者教育に対する行政の役割、特に金融監督当局の役割ということを書かせていただきまして、そして、ワーキングの論点整理の方には、行政における対応というのがどこの機関というふうなことは書いてないのですけれども、載っているのですが、こちらの部会の報告には行政の役割が一切載ってない。ここのところが意図したものか、たまたま抜け落ちたものか、存じませんけれども、やはりこれは私は大変重要なことではないのかなというふうに思うんですね。
 多分、もし意図したことなのであれば、行政というのは、今後は後ろに控えるのだからということなのかというふうに思うんですが、私がその消費者教育に関して申し上げたかったことというのは、欧米各国では、ビッグバンみたいなものを体験したときに、監督当局が行政をどうこうするのではなくて、消費者に向けていろいろな情報発信をし始めたということに非常に大きな意味があると思うんですが、日本の場合はそこのところが非常に遅れているので、この書きぶりだと、業者だけにどうのこうのするべきであるということなんですが、監督当局なり、大蔵省とか金融監督庁が消費者に向けてどういう情報を発信し、消費者からどういう意見を酌み取るのかということが大変重要なポイントだと思いますので、ぜひこちらの部会の方にも書き込んでいただきたいというふうに思います。
 以上です。
○蝋山部会長 SECもオフィス・オブ・フォーかな、コンシューマー・エデュケーションとか何か、そういうオフィスがありますね。部局がね。わかりました。それも……。
 ほかにございませんか。
 大変時間がなくなって申し訳ありませんけれども、全部にわたって、どの箇所でも結構でございます。
 クーさん、どうぞ。
○クー委員 細かい点ですけれども、最初のページに「欧米諸国では」という表現がありますが、別に欧米だけではないですよね。香港でもシンガポールでもやっているわけで、何か欧米ばかり見て書かれているというような印象は直した方がいいんじゃないかと思います。
○蝋山部会長 原さん、どうぞ。
○原委員 高橋さんのおっしゃられたとおりなんですが、私ずっと消費者行政を見ておりまして、ここの規制緩和の流れの中で二つ大きな柱があって、一つが、社会的ルールの確立ということで、製造物責任法とか消費者契約法とか、こちらの金融サービス法も念頭に置いているんですが、もう一つの柱はやっぱり消費者教育なんですよね。
 これもこれからの消費者行政という中では、二本柱の一つというふうに考えていますので、私としても、スペースもすごく小さいし、もっともっと本当はやるべきこととか書くべきことがあるというふうに思っておりますので、もっと丁寧な形で報告書にまとめての提供をしていただきたいと思います。
○蝋山部会長 分量が多ければ大きく取り上げるよりも、むしろファイナルなところでは、分量が小さくて後でレスポンスがすごく大きくなって、そして、より印象強くファイナルなリポートに取り入れられるということもあり得ますので、どうぞ、神田さん。
○神田委員 今回のレポートに正面から取り上げてないんですけれども、触れておいた方がいいんじゃないかなとちょっと感じたことなんですが、場所で言えば31ページの2.のいわゆる市場ルールについては余り議論してなかったということになるんですが、前にクーさんがおっしゃったことなんですが、ヘッジファンドの問題ですね、抽象的に言えば。
 それは言葉を換えて言いますと、今回の話はリーテイル中心の話なのかどうか、先ほどから議論がありますけれども、ホールセール市場のルールって何なんだろうというときに、フリーはもちろんフリーでなければ困るんですけれども、フェアという話、あるいは透明性の話というのは何なんだろうかということはほとんど議論してこなかったんですね。
 そうすると、ホールセール市場のあり方というときに、では、将来は日本でもヘッジファンドのようなものが自由に活躍なのか活動なのかわかりませんけれども、という話なのかどうかということについては、世の中で今大議論しているときに、我々は黙っているのもどうか。したがって、そのマーケット・インテグリーティなどという概念の下で今議論されていますけれども、どこかにそういう問題もあるんだということだけでも触れておいた方がいいかな。議論はほとんどできてなかったと思います。
 以上です。
○蝋山部会長 ありがとうございます。
 ほかにございませんでしょうか。
 ございますか。
○関オブザーバー 次回もう一度あるんでございましょう、今日やっているような形で。
○蝋山部会長 どうぞお願いします。というのは、次回は、やや微妙なところがありますので、どうぞ。
○関オブザーバー それでは、私から見ますと、大変クリアにいろいろな問題点を出していただいているものですから、それに対してレスポンスしたいところはものすごくたんさんあるんですが、それ全部はとても言えませんので、今まで御意見の中で出たところでちょっと敷衍したいと思いますので、3点だけお許しください。
 14ページでありますが、業者に損害賠償責任が発生する取引ルールとして明確化すべきであるという部分があります。これはもし説明義務というものが、いわゆる業者ルールということでかかったり、適合性原則がかかって、それから、どこかで重要事実というのもありましたけれども、そういったものが明確になって、それが十分行われていなかったから損害賠償になると、こういう趣旨だと思いまして、それ自体はそういうことがあり得るということだと思いますけれども、前回、私申し上げましたように、やはりそれに関連してモラルハザードというものが発生しないように、そこをどういうふうにするかということは非常に重要な問題だ。そこはぜひどこかで触れておいていただきたいなという気がします。
それで、結局どういうことになるかと私は思うんですが、業者たる者、一体どういう顧客を相手にして自分は業務をやっていくかということは、これは選択が自由なわけですね。非常にお金持ちの階層だけを相手にする業務だけやりますという業者があっても、少しも問題ないわけです。
したがって、いろいろな規制が不明確な業者ルールというものがどんどんくる。それがまた取引ルールにも影響するということをどんどん拡大していきますと、またそれが公正のために絶対必要だという方だけ走りますと、そこのところは非常に結果として、いわゆる市場改革なり、市場の 1,200兆の有利な運用について、チャンスが少なくなってくるということにもなりかねないわけでありますから、そこのところは、そういう面もあるということだと思います。
それから、17ページで、プライバシー保護の云々で、業者が利用者の属性等について調査をする、情報をいろいろ調査するということについては、プライバシーの保護の観点から問題があるというふうになっています。
それから、また、先ほど岩村委員の御発言もありましたけれども、私は逆の意味で、今、適合性原則とかそういうものが証券業務にはかかっていて、それについては、そのお客の投資経験、投資目的、財産内容、そういったものをきちんと把握して適合性原則に則した勧誘をしなさいというのが一応ルールになっているわけですし、そういったことは、ある面では証券業務では国際的に確立しているという原則だと思うんですね。したがって、多分少しこの考え方は、逆に時計の針を元へ戻すと。つまりそういう適合性原則のいろいろ今かかっているルールも直していくというような方向、緩和していくというのでしょうか、業者の義務を緩和していく方向に働かせるという意味がここに入っているのかどうかということ。そこはもう少しクリアにしていただいた方がいいんじゃないかと思います。
それから、後ろの方の自主規制団体について触れてあったところがありましたね。28ページ。それで、28ページの上から第3パラグラフに、「わが国における自主規制団体についてみれば、法律上の根拠を持つ自主規制機関の他、法律上の根拠をもたない業界団体が併存している。」ここはこのとおりだと思いますが、そこから2〜3行いきまして、「むしろ将来の自主規制団体のあり方の方向性」とか、それから、一番最後、「今後、関係者の間で自主規制団体のあり方についての議論が進められることを期待したい。」こう書いてあるんですが、ここに使っている自主規制団体というのは、つまり法律上の根拠を持たない自主規制団体があるという前提でこれをお書きになっているのかどうか、そこのところはちょっとクラリファイしておきたいと思います。普通、自主規制団体というのは法律上の根拠を持って、その根拠の下に、ある強制力をすることができると、こういうものと理解されていると思いますが、ここはどういうふうに整理になったんでしょうか。
○細溝債権等流動化室長 独禁法の関係もありますから、法律上の根拠がないと、そういうものはある程度できないというのは事実でありまして、そこの自主規制団体にどんな権能、ルール形成力を持たせるかによって、本当に法律上の根拠が必要な場合と、そうでない場合があると思います。ただ、通常は、多分法律上の根拠が必要になってくるんじゃないかというふうに思っております。
○蝋山部会長 ここで自主規制団体というのは一般的な意味です。そして、法律上の根拠を持つのは、「法律上の根拠を持つ自主規制機関の他、」云々と書いてあるように、法律上の根拠を持つものは自主規制機関というふうに文章上は一応区別しております。
○関オブザーバー それはぜひ注を入れていただかないと、私ども読めませんので、そこはぜひ入れていただきたい。
○蝋山部会長 そういう形に一応なっていまして、例えば全銀協のようなものをここでは自主規制団体とし、そういうののあり方を今後どう法律上の関係も含めて考えていきましょうと、こういう問題提起をしているわけなんです。
○関オブザーバー その余地がありという考え方ですね。
○蝋山部会長 そうです。そうです。
○関オブザーバー 法律上の根拠がなくても、何らかの規制的効果を持つものができるという。
○蝋山部会長 いや、そこまで断定はしてませんけどね。
 どうぞ。
○竹田オブザーバー 今の自主規制団体につきまして、先ほどの御説明では、資料の中で用語説明という方法もあるということでございました。自主規制団体とか自主規制機関という概念は、議論されている割には余り明確な定義づけのようなものがなされていませんので、この審議会の場ではこういうふうに考えるとかというような、一定の了解のようなものがないと、今後の議論が、拡散するのではないかという懸念があります。
○蝋山部会長 ほかにございませんか。
 まだまだ潜在的にはあるのではないかと思いますが、私の司会の不手際もありまして、申し訳ありません。もう11分時間を超えてしまいました。とりあえずここで終了させていただきますが、次回は、この第一部会の中間的なとりまとめを公表するということになります。部会の今日議論いただきました「中間整理」、様々な御意見を頂戴いたしましたので、それを可能な限り取り入れる方向で検討し、文章化していきたいというふうに思います。それに加えまして、いわば「中間整理」の修正版に加えまして、ホールセール・リーテイル・ワーキンググループ、集団投資スキーム・ワーキンググループそれぞれの議論をとりまとめたレポートも最終的な形で御報告させていただきます。先ほど課長からも御説明のような、三段重ねの最終的な報告をこの中で御報告させていただきたいというふうに思います。
そして、では、一体それがどんなふうになるんだと、とりわけ「中間整理」の今日のたたき台に関していろいろ御意見を頂戴したものがどんなふうに修正されるのかということにつきましては、誠に申し訳ありませんが、私に一任させていただきたく思います。そして、修正した部分については、事務局を通して、皆様方御意見を頂戴した方を中心に、御関心を持たれそうな方を中心に、前もって御連絡申し上げます。そして、相対的に御了解を頂戴する。しかし、その以前に、もうちょっとよく読んで、赤を入れて出したいという方もあると思います。これは事務局とは全然相談してないんですが、そういう御希望がある場合には応じますので、ぜひお申込みください。それはクーさんからのコメントにも対応しているわけであります。そういう点で適宜、個別に御相談をさせていただきたく思うわけで、こういう点を含めて私に御一任いただきたく思いますが、いかがでございましょうか。だめだと言われれば、もう一回やるということになるんですが、いかがでございましょうか。
それでは、そういうことにさせていただきまして、次回の日程につきまして、室長から御報告をお願いします。
○細溝債権等流動化室長 次回の日程でございますが、現在調整中でございます。今のところ、今月の末から来月上旬ぐらいになろうかと思っています。実は、総会、それから第二部会との関係もありますので、日程が固まり次第、また御連絡申し上げたいと思います。その間に両ワーキンググループ、この部会の下にあるワーキンググループが報告書をとりまとめるというのがありますので、そういったものも含めまして、個別にまたお伺いをする、各委員の方々に個別にお伺いすることになるのかな。そのときにも御意見を頂戴することになるのかなと思っておりますが、個別にそういった意味で御相談をさせていただきたいというふうに思っております。
そういうことなので、非常に恐縮でございますが、失礼だと言われまして、そのとおりでございまして、恐縮でございますが、本日のたたき台は、一応回収をさせていただく。実は、そういう意味で新聞記者が非常に興味を持っておりますので、本段階でこのとりまとめの段階に入っておりますので、通例ですと、第一部会終了後、部会長がその内容について記者会見をするというのが一応のルールになっておりますが、そういったとりまとめの段階に入った場合には、審議会について特段記者会見を行わないということで記者クラブとも話をしておりますので、本日の内容につきましては、一切記者会見等を行いませんので、お含みおきをいただければと思っております。
以上でございます。
○蝋山部会長 逆に言いますと、個別のアタックがあるということです。新聞記者の身になってみれば、これを入手するということはものすごく大事なんですね。いいか悪いかは別ですよ。そういう点もありますので、先ほどの一般原則は、そのようにさせていただきました。しかし、繰り返しますが、個別にはと考えますので、どうかその点、御了解いただきたく思います。
今日は15分以上終了が遅れまして申し訳ありませんでしたが、これにて散会いたします。
ありがとうございました。
                                (以 上)