金融審議会「第一部会」第12回会合議事録
日時:平成11年9月3日(金)10時00分〜12時20分
場所:大蔵省本庁舎(4階)第三特別会議室
○蝋山部会長 まだ二、三お見えになっておられない方もございますが、ただいまから、第12回金融審議会「第一部会」を開催いたします。
お忙しい中お集まりいただきまして、大変ありがとうございます。
本日は、部会としてとりまとめ、公表いたしました「中間整理(第一次)」、それ以来初めての会合でございます。この「中間整理」につきましては、概要がいろんなメディアを通して紹介されたわけでありまして、それに対する反応も寄せられたコメントの数から見ましても、大変関心が高まっているかというふうに思います。我々も一層この問題の審議に熱意を持って取り組みたいと考えておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
議事に入ります前に、いろいろ交代がございまして、オブザーバーあるいは事務局のメンバー、交代・異動がこざいましたので、御紹介させていただきます。事務局の方から紹介をお願いしたいと思いますので、乙部さん、どうぞ。
○乙部債権等流動化室長 おはようございます。私、第一部会の議事進行をお手伝いさせていただきます企画課債権等流動化室長の乙部でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、今回新たに第一部会に御参加いただくこととなりましたオブザーバーの方2名を、まず御紹介させていただきます。
石橋三洋オブザーバーでございます。
○石橋オブザーバー 石橋でございます。よろしくお願いいたします。
○乙部債権等流動化室長 河野正道金融監督庁長官官房企画課長でございます。
○河野金融監督庁企画課長 河野でございます。よろしくお願いいたします。
○乙部債権等流動化室長 次に、事務局メンバーにつき、大幅な異動がございましたので、改めまして全員を御紹介させていただきます。
まず初めに、委員席から向かいまして、部会長右隣になりますが、福田金融企画局長でございます。
○福田金融企画局長 福田でございます。よろしくお願いいたします。
○乙部債権等流動化室長 以下、座席順に御紹介させていただきます。
委員席から向かいまして、部会長席左手から、内藤企画課長でございます。
○内藤企画課長 内藤でございます。よろしくお願いいたします。
○乙部債権等流動化室長 高木大臣官房参事官でございます。
○高木参事官 よろしくお願いいたします。
○乙部債権等流動化室長 新原関東財務局東京証券取引所監理官でございます。
○新原監理官 新原でございます。
○乙部債権等流動化室長 大藤大臣官房参事官でございます。
○大藤参事官 大藤でございます。よろしくお願いいたします。
○乙部債権等流動化室長 森市場課投資サービス室長でございます。
○森市投資サービス室長 よろしくお願いいたします。
○乙部債権等流動化室長 玉川企画課調査室長でございます。
○玉川調査室長 よろしくお願いいたします。
○乙部債権等流動化室長 神崎大臣官房企画官でございます。
○神崎企画官 よろしくお願いします。
○乙部債権等流動化室長 続きまして、委員席から向かいまして、福田局長席の右より、窪野大臣官房審議官でございます。
○窪野審議官 よろしくお願いいたします。
○乙部債権等流動化室長 総務課長の三國谷は、所用で席を外しております。
その隣、畑中信用課長、同じく席を外しております。
それから、菅野信用課保険企画室長、同じく席を外しております。失礼いたします。
林信用課信用機構室長でございます。
○林信用機構室長 よろしくお願いいたします。
○乙部債権等流動化室長 岡田大臣官房企画官でございます。
○岡田企画官 よろしくお願いします。
○乙部債権等流動化室長 このほか、松川市場課長は、本日欠席させていただいております。
以上、新しい事務局を紹介させていただきました。よろしくお願いいたします。
○蝋山部会長 特に事務局はメンバー一新でありまして、そういう新しい事務局を代表して、福田金融企画局長より御挨拶をいただきたいと思います。よろしく。
○福田金融企画局長 7月の異動で金融企画局長を仰せつかりました福田でございます。金融審議会第12回第一部会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
委員の皆様並びにオブザーバーの皆様方におかれましては、日頃より御多忙のところ、審議会の活動に御参加、御尽力いただきまして、大変ありがとうございます。
さて、金融審議会におかれましては、昨年8月の発足以来、「21世紀を見据え、安心で活力ある金融システムの構築に向けて、金融制度及び証券取引制度の改善に関する事項について審議を求める。」旨の大臣諮問に基づきまして、骨太の御議論を積み重ねていただいております。
中でも、この第一部会は、「21世紀の金融取引や金融サービスのあり方はどのようにあるべきか」という主題の下で、いわゆる「金融サービス法」の検討も視野に入れながら、これまで11回に及ぶ精力的な御審議をいただいてまいりました。
また、部会の下に設けられました二つのワーキンググループでは、それぞれ実務的・専門的な観点で御検討を深めていただいております。
7月6日の審議会総会・部会合同会合におきまして、そのような中間的な成果物として、第一部会としては「中間整理(第一次)」、それから、ホールセール・リーテルに関するワーキンググループの「レポート」及び集団投資スキームに関するワーキンググループの「レポート」をそれぞれ御了承、御公表いただいたわけでございます。
これらの成果物につきましては、国民の皆様方からいろいろな意見がパブリックコメントとして寄せられておりますので、今、内容について事務局で整理・とりまとめをいたしておりまして、今後の会合におきまして適宜御紹介させていただき、また、これについて検討を加えていただきたいと存じます。
申し上げるまでもございませんけれども、近年の技術革新を背景に、金融システムが単なる資金融通手段以上の意味を持つようになっておりまして、経済社会に多様で重大な影響を及ぼす存在になっておりますので、これまで以上に魅力的で信頼に足る金融システムが求められております。
大変変化の早い金融分野でございまして、あり得べき金融システムの姿を探るという作業は決して容易でございませんけれども、委員・オブザーバーの皆様方におかれましては、21世紀の経済社会にふさわしい、後世に誇れるような金融システムの理念形といいますか、そういうものをぜひお示しいただきますようお願い申し上げます。
以上をもちまして、簡単でございますが、御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○蝋山部会長 どうもありがとうございました。
それでは、お手元にあるかと思いますが、議事次第に従いまして、本日の議事を進行させていただきたく思います。
本来ですと、「中間整理(第一次)」公表後の初めての会合でありますし、また、この間2カ月余りの日時も経過いたしました。ですから、「中間整理」に対する反響を十分に掌握し、それを踏まえて今後の部会運営のあり方について議論をいただくということが本筋かと思いますけれども、まだ、いわゆるパブリックコメントにつきまして、8月末という締め切りを設けておりましたので、締め切りが来てからまだ日が浅うございまして、資料12−1では名前と数だけが示されておりますけれども、50にもなるコメントを頂戴しております。大変消化するのにまだ十分な時間がないということで、今回は夏休みの前に宿題としてセットしておきました裁判外紛争処理制度、いわゆる苦情整理制度、こういう問題についての議論を行うことといたしまして、パブリックコメントの概況と今後の部会運営という点につきましては、次回のテーマにさせていただきたく思いますので、御了承いただきたく思います。
したがいまして、以下では、今日この部会に御参加いただいております各金融業の方々から、業態別に裁判外紛争処理制度に関する説明をお伺いしたいというふうに思います。また、それを踏まえまして、金融機関の苦情処理体制の充実・強化、あるいは周知徹底につきまして、監督の立場から取り組んでおられます金融監督庁の西原監督総括課長にも、いろいろ教えていただきたく思いますので、御出席をいただいております。
それでは、まず、オブザーバー報告をいただくわけですが、それに先立ちまして、簡単に「裁判外紛争処理制度に関するこれまでの議論」と、それから、「英国における金融サービスオンブズマン制度」につきまして御紹介をいただきたく思います。玉川さん、よろしくお願いいたします。
○玉川調査室長 それでは、お手元の資料の12−2と12−3に沿いまして、簡単に御説明させていただきたいと思います。12−2の方の最初の1ページ、2ページ、3ページに、いわゆる自主規制団体、業界団体と、その役割と、これは今回の主要テーマでありませんが、業者のコンプライアンスに対して各業界団体とかはどんな役割をなしているかということについての簡単な比較表を作らせていただきました。
10個業法を選んでありますが、1ページ目の証券から始まって金融先物取引、3ページ目の抵当証券から始まりまして、最後、投資顧問業法。金融商品の販売ではないんですけれども、投資顧問というところまでの10個の業法を対象にして比べてみました。
そういたしますと、まず、いわゆる業界団体、自主規制団体のうちで、法令に根拠のあるものとないものとがあるということがありまして、あるものは六つあり、逆に銀行・保険・特定債権・商品ファンドなどは、法令にはその業界団体の根拠は書いてありません。
そして、業界団体が書かれている場合、自主規制と書いてある場合には、一般的に投資者保護のために資するための目的とするとか、一般的な目的規定があると同時に、苦情についての相談に応じるということが必ず書かれているようでございます。
なお、証券業協会は非常に強い地位を法律で与えられていまして、併せて斡旋を行うというような規定も入っております。
さらに、各業界団体の役割として、例えば1ページ目の証券投資信託法を見ていただきますと、2ページ目に、「証券投資信託協会は、目的達成のため「証券投資信託法その他の法令の規定を遵守させるための会員に対する指導、勧告その他の業務」を行う」という形で、コンプライアンスの遵守と言われるものについて、業界団体は役割を果たすということが書かれております。これにつきましても証券業協会は、よりはっきりと、2ページ目にございますが、定款の中において、会員には規則を遵守させるための社内規則や管理体制を整備させるというようなという形での書き方がなされております。
さらに業界団体、また、自主規制団体の中では、この証券業協会及び金融先物取引業界におきましては、2ページ目でございますが、会員に対する過怠金の賦課とか、そういうふうな権限も与えられております。
さらに、これは追加的な情報でございますが、コンプライアンスということにつきまして、現在、法律で直接何か書いているというのは、保険業法と銀行法、2ページ目の●でございますが、例えば銀行法の12条の2という本条の施行規則の13条7にあります、顧客の知識、経験、財産の状況を踏まえた重要な事項に関する説明等に関しての社内規則を定めるとかいう形のコンプライアンスを明確に定めろと書いているのが銀行法、保険業法でありまして、ややそれに少し近いものとして、3ページ目の投資顧問業法の右下には、「投資顧問業者の法令及び投資顧問契約の本旨に従い顧客のために忠実に投資顧問業を行う義務」という形で、何かコンプライアンスにやや近いものが法律で書かれているというのが、現在、関係団体及びコンプライアンスのあたり、苦情処理とかいうことについての法律の状況でございます。
次の4ページ目、5ページ目でございますが、これは本日説明していただきます様々な苦情処理機関の概要についてまとめられたものでございますが、二つ大きくありまして、苦情処理という場合の相談所というものが各業界ごとに設けられているということがおわかりいただけるかと思います。
と同時に、それだけではなくて、項目として「紛争処理機関」という形で、例えば銀行におきましては、弁護士会仲裁センターとの連携による仲裁・斡旋、生命保険における裁定委員会、損保会社における損害保険調停委員会、それから自動車事故紛争処理センター、そして証取法に定められます斡旋委員会による斡旋という形で、紛争処理センター、紛争処理の機能も併せて持っているという形になるのではないかと概観できると思います。
引き続きまして、これはこれまでの議論の、どんな議論が出たかということについて主な議論。
まず、第一部会の「中間整理」におきましては、最初の囲みでございますが、「裁判外紛争処理制度の充実を図ることも望まれるが、その場合、その中立性・公正性についての信頼確保を一層図っていく必要がある。」と。そして、これについてまた、残された検討課題として検討していく必要があるということが書かれておりまして、その根拠となるもととなったホールセール・リーテルに関するワーキンググループのレポートの中にも、例えば「統一的・包括的な紛争処理制度を整備する必要」とか、「窓口段階での一本化を図ることが望ましい」とかいうことが出ております。
8ページ目でございますが、これまでの委員会における委員からの御意見の中におきましても、裁判外紛争処理制度のあり方につきまして、英国で実施されているオンブズマン制度の導入等が必要なのではないか。苦情受付窓口を統一することが必要ではないか。第三者機関が管理・運営することが必要ではないかとか、特にオンブズマン制度とかについての御興味、御関心が示されたということが記録に残ってございます。
10ページ目でございますが、これは併せて今現在、消費者契約法を国民生活審議会消費者政策部会において検討している中においても、この裁判外紛争処理制度についての議論が行われておりまして、この中におきまして、例えば民間業種・業界ごとに設置されている紛争処理機関、ここで先ほど紹介がありました紛争処理機関とか、あと、個別法の規定に基づき設置されている紛争処理機関とか、そういうものについての例。それから、あと、11ページになりますが、弁護士会が設置している仲裁センターの紹介。それから、12ページ以降になりますが、今度は行政型横断的な紛争処理機関として、全国の地方公共団体等に置かれております消費生活センター及び苦情処理委員会についての紹介等の記述がございますので、御参考にしていただければと思います。
続きまして、部会資料12−3の、英国におけるオンブズマン制度について、我々で調べたこと、また、勉強したことを簡単に御説明させていただきたいと思います。
1枚目、2枚目に大体オンブズマン制度の概要と、その一つの例としての銀行オンブズマン協会の概要というものが書かれておりますが、オンブズマンというのは、裁判とかが非常にイギリスの場合に多大な時間と費用をかけるということを背景にいたしまして、その解決までの期間が短い紛争処理サービスを利用者に対して無料で行う。そしてかつ、業者からは独立性が確保されていることを目指しているということが基本になっている制度でございます。
1ページ目の真ん中のあたりでございますが、現在、イギリスには24のオンブズマンが存在していますが、そのうち金融関係のオンブズマンは五つでございまして、下にバンキング、バンキング・ソサイエティーズ、インシュアランス・オンブズマン、インベストメント・オンブズマン、パーソナル・インベストメント・オーソリティー・オンブズマンという五つのオンブズマン制度が現在ございます。このうちで一番古いのは、1981年にインシュアランス・オンブズマン・ビューローというものが作られております。それから、最後のパーソナル・インベストメント・オーソリティー・オンブズマン・ビューローというのは、これは保険の中でも例えば終身保険とか、貯蓄性の高い保険とか、年金とかを対象にしたオンブズマン制度だということを伺っております。
そして、では、オンブズマンに持ち込まれた事件というのが、どのような形で処理されているのかということでございますが、これは例えば銀行オンブズマン協会の例を例にいたしますと、2ページ目にありますが、真ん中のあたりで、銀行のオンブズマン協会には、1名の正オンブズマン及び2名の副オンブズマンがいて、そして50名ほどの事務局スタッフがいるというふうな体制になっているそうでございます。
それで、3ページ目と4ページ目に、どういう形でその事案が処理されるかというフローチャートがかかれているのでございますが、例えば、基本的には電話とか書面でもって、まず、このオンブズマン協会に対して苦情が来たときには、まず確認されるのは、それは個別の会員銀行との間で苦情処理の対応がなされているかどうかということをまず確認して、そちらがちゃんと−−まず初めは会社とやってくださいということをお願いするそうです。
それと同時にオンブズマン協会に対しては、書面で、こういう苦情がある、問題があるということを出していただくということから話がスタートいたしまして、そして4ページ目の方になりますが、結局、これ以上個別の金融機関とやっていても解決が望めないという、デッドロック状態にあるということが判明したときから実際のオンブズマンの活動が始まりまして、最初にまず、全ての必要な書類とかを金融機関からオンブズマンが受け継ぎまして、まず即時的な和解が可能かと。これで過半数ぐらいの方が和解をされたりすることがあるそうでございます。
そして次には、15名ほどの専門調査員をスタッフの中に抱えているそうですが、この方々が出した調停案を6カ月ぐらいの間にまとめ、それを大体1カ月ぐらいの間に、そのような調停案がのめるかどうかということを利用者と両方に示すと。そして、これで利用者がここで受け入れられるというケースが、またこれも6割ぐらいあるそうでございまして、これでもだめだというときに、今度は最後に、オンブズマンによる採決、裁定を行っていただくという形になりまして、これは比較的即時裁定、数日間ぐらいということで、比較的早く裁定が行われるそうでございます。
この裁定が行われた場合におきましては、利用者の方はもしも反対があれば、それは裁判へ持ち込むことができますが、金融機関の方は契約により、これはもう、それを受け入れるということがルールとされております。
このオンブズマン制度におきましては、補償金の上限−−もう一度2ページ目に戻りますが、上限は10万ポンドぐらい、約
2,000万円ぐらいになっているそうでございまして、最近の例では、この間神田先生が御出張した話を受け継がせていただくんですが、8万
5,000ポンドぐらいの高額のお金が払われた例があり、平均して 2,400ポンドぐらいの補償金額がこれによって定められたりするということになっているそうでございます。
最後でございますが、さらに4ページ目、5ページ目になりますが、今現在、この間6月17日に提出されました英国の金融サービス・マーケット法案におきましては、オンブズマン制度全体を一本化するということが進められておりまして、かつ、今までは会員業者だけだったんですが、全ての金融業者についてこのオンブズマンの参加を義務づけるということで、より公的な制度としてこのオンブズマンを持っていく方向で検討が進められております。
その結果として、このオンブズマンの決定については、全ての業者がオンブズマンの決定に服する義務を負うということになり、新しいオンブズマン制度につきまして今現在、検討が行われるとともに、この間、そのための法案が−−これが7ページ目以降に、法案の仮訳として出されておりますが−−出され、かつ、これをどう運用するかが検討されているところでございます。
もちろんメリットもあればデメリットもあるということで、6ページ目の最後のところに、オンブズマン協会の独立性が高まる、窓口が一本化される、規模の経済性がある、強制加入によるので会員以外にも及ぶというふうなメリットとともに、やや組織の巨大化により、なかなか運営が難しくなるのではないかというふうなデメリットも心配されているというふうな状態だと聞いております。
この法案につきましては、相当な部分をFSAが規則で定めるということに具体的に譲っているということが特徴だと思いますが、いわゆるマーケット・サービス法の197
条から 205条までの中に金融サービスオンブズマン制度の骨格が定められておりまして、その附属書17条というところに組織の骨格とか、そういうものが定められておりますが、特徴として、例えば最後の17ページの17条などに、このオンブズマン規則のうちの強制ルールというものによって決められて、定められた災害賠償の裁定自体は強制執行も可能であるという意味で、かなりこのオンブズマンの行われた決定とかを国の機関がサポートし、そして最終的には実行可能なものにしているというふうな形になっていることが窺えます。
以上、説明、はしょってでございますが、終わらせていただきます。
○蝋山部会長 どうも玉川さん、ありがとうございました。
ただいま説明のありました各業態の裁判外紛争処理制度並びにオンブズマン制度についての概略の説明に関しまして、御意見なり御質問があればお受けしたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ、原さん。
○原委員 6月に申し出ておりまして、資料を調えていただきまして、ありがとうございました。
それで、イギリスのことについてもうちょっと具体的なイメージをつかみたいので、質問したいんですけれども、これの利用者像というんでしょうか、オンブズマンを使っていらっしゃる方々ですね。例えばイギリスにも消費者協会的なところもあるんですけれども、そちらに持ち込まれる苦情というのは、金利の計算もできないような方々なんかがいらっしゃっているようなんですけれども、オンブズマンのところに行っていらっしゃる利用者像というのがどういったものかということと、それから、具体的にかかっている案件ですね。そういったのはどんな形のものが多いのかというのは、もうちょっとイメージをつかみたいと思います。
それから、もう一点なんですけれども、これは費用負担については、消費者は無料というふうになっておりまして、消費者にとっては非常に歓迎というか、利用しやすいようにはなっておりますが、例えば銀行オンブズマンの場合だと、その50人の中に事務局スタッフを抱えているようで、運営をしていくのにもかなりの金額になるだろうというふうに思われますけれども、どれぐらいの金額でおやりになっていて、そのコスト負担については業界内部には特に異論もなくおやりになっていらっしゃるのかどうか、お聞きしたいと思います。
○蝋山部会長 ただいま原さんから質問で、答えられるところと、答えられないところがあるかと思いますが、どうですか。
○玉川調査室長
必ずしも細部についてお答えができないかもしれませんが、利用者像については、結構膨大な電話とかが、まずオンブズマン協会にかかってきて、それを例えば、これはこの管轄ではないのでほかに行きなさいとかいうことでやっているので、一般的には多くの一般的な利用者がこれを活用されているのではないかという印象を受けました。
案件については一つ、例えば、確かこの銀行オンブズマン協会については、4割ぐらいが例えば住宅ローンの話で、そのほかにも、1割ほどがそれ以外のローンの話とかが中心であるということの記述が、確かどこかにあったかということを記憶しております。
費用負担につきましては、問題があるか、文句があるかということについては存知上げませんが、確かにこれは業界にかなり、FSAの運営自体が今後も、要するに業界にそういう費用を課徴していくというふうな形の制度になっておりまして、もともとは、今までのオンブズマン協会は逆に自主的にそういうものを持ち合って、お金を出そうというふうな制度だったかと思いますが、今度は強制的になると、それが、FSAが業界に対してこれだけの活動費用をおんぶするというか、そういう形になるのではないかと思います。
もしも神田先生が、この間御出張されていらっしゃいますので、何かインフォメーションがあればとは思いましたが……。
○蝋山部会長 神田さんがこの前、ロンドンに出張されたそうで、今の玉川さんの説明の補足も含めてお願いできたらと思います。どうぞ。
○神田委員 ありがとうございました。私、財団法人金融情報システムセンターというところである研究会をやっておりまして、実は、原さんもメンバーになっていただいているんですけれども、それの関係で、短い期間ですが、ロンドンに行く機会がございまして、今御紹介がありましたうちのバンキング・オンブズマンの正オンブズマンの方、この方、ディービット・トーマスとおっしゃる方ですが、それから、PIAオンブズマン、これは94年にPIAができたのと同時に誕生したところですが、そのヘッド、正オンブズマンの方、アンソニー・フォランさんとおっしゃるんですけれども、とお会いする機会があって、いろいろ伺いました。
それで、私個人の印象は、このイギリスのオンブズマン制度というのは非常にうまく動いているなと。このメリットを取り入れたら、何かのものが日本でもできないかなという印象を持っております。
それはさておきまして、原さんからの御質問ですけれども、これは五つの金融分野のオンブズマンに、それぞれちょっといろいろ違うんですけれども、基本的には個人ですね。個人が多い。その個人の中でもビジネス、自分が個人で事業をしていて、その関係で金融取引をしたものは除くというスキームがあります。ただ、銀行オンブズマンの場合は、個人でも、事業関連でも、それ以外の、つまり中小の会社でもいいということになっています。PIAの方は原則個人ということだったと思います。
それで、件数いろいろありますけれども、年次報告書というのがありまして、これはインターネットでも公開されているんですけれども、PIAの方で言いますと、私が聞いた限りでは、毎日
700件ぐらい電話がかかってくるということなんですけれども、大体年間が、日本の苦情処理制度の資料がありましたけれども、PIAの方で言いますと、96年〜97年で
4,000件、97年〜98年で 6,800件程度、98年〜99年で 9,000件という、非常に激増しているということで、その内容ですが、PIAの方は主として年金・保険ですね。
ただ、保険といっても、先ほど御紹介ありましたように、PIAの管轄になる保険だけですから。つまり、金融サービス法の適用のある保険ということで、そうでないものは現行の保険会社法のDTIと言われるところの管轄になりますので、金融サービス法に入ってくる保険関係のものだということになります。
実際、PIAの方の保険とか年金はどういう苦情が多いかというと、日本で言えば説明義務と呼ばれているところで、こういう保険だと思ったけど、思ったほど給付がないとか、そういうのが圧倒的に多いですね。幾つか具体的な例は、年次報告書にありますけれども。それで、年齢層も、二十歳ぐらいの方から60過ぎの方まで。これは余り個別のケースは特定しては紹介してありませんけれども、6〜7件は代表的なケースが年次報告書に説明があります。必要であれば、もちろん、資料をまたここでお配りしてもと思います。
銀行の方ですけれども、銀行の方はもう少し苦情が少ないんですけれども、大体先ほど御紹介ありましたように融資関連が多くて、住宅ローンとその他の、お金を借りる方の苦情が多くて、金利の条件が思ったのと違ったと、この手のが非常に多くて、それを除きますと、電話で送金を頼んだけど、送金してくれなかったとか、カードがどこかへいっちゃったんだけれども、クレジットカードではなくて、デビットカードの方でしたはずなのが、クレジットカードの方で請求が来たとか、そういうようなもののようです。これもほとんどは個人ですけれども、PIAほどの苦情というよりも、ちょっとした何というんでしょうか、ローンを除けば、中身の説明とか、思っていたのと違ったというよりは、ちょっとしたミスというんでしょうか、思ったことをやってくれなかったとか、間違った送金をされたとか、むしろそういうことの方が多いような印象です。
銀行の方も年次報告書を毎年出していまして、これもインターネットで公開されております。その中に幾つかの例が挙がっております。
ちょっとついでに、一、二分補足させていただいてよろしいでしょうか。
私がなぜこの制度がうまくいっているかなと思ったというのは、よくわかりませんけれども、業者側も消費者側もそれなりに満足しているというか、評価しているように思うんですね。ただ、これは相対的な問題ですから、日本のようにワラントだ、変額保険だというので何百件と訴訟が起きる国と比べますと、イギリスは説明義務の訴訟はほとんどないんですね。
ただ、それは、ここの資料にも説明がありますように、イギリスでは負けた方が勝った方の弁護士費用も払わなければいけないという、非常に日本と違ったルールでして、日本は裁判費用は払いますけれども、弁護士費用はそれぞれが、勝っても負けても、自分の側の弁護士費用をもたなければいけませんので、アメリカ型なんですけれども、やっぱりイギリスは消費者にとって訴訟はリスクが高い。勝てばいいですけれども。そういうことがあります。
したがって、軽々には比較できないんですけれども、それにしても、ほとんど訴訟になりません。そうすると、オンブズマンか、あるいはその他の和解・斡旋のような形で解決されるということだと考えられます。
オンブズマン制度の特色ですけれども、ちょっと重複するかもしれませんけれども、とにかく一つには迅速にやるというのを旨にしていまして、長引いてもせいぜい、先ほど表がありましたけれども、数カ月内には確実に決着がつく。普通の場合はもっと早く決着がつく。それから、消費者にとってただである。今御質問ありましたけれども、これは銀行オンブズマンとPIAとで違いますが、PIAの方だけ申し上げておきますと、1件当たり、当該業者から
500ポンドの費用を取ると。それだけで運営されているということになります。
そのオンブズマンのほとんどが、電話で苦情を受けますと、それぞれ個々の業者にその中で解決するようにまず斡旋をして、その当該業者と消費者の間でうまくいかないものをオンブズマンの方で引き取る、こういう手続をしますけれども、オンブズマンは消費者にも当該業者にも一切会わない。電話と手紙のやりとりだけでやるというのが原則です。銀行オンブズマンは全然会わないと言っていました。PIAの方は、場合によってはヒアリングというか、当事者に会うということもあるけれども、ほとんどそういうケースはないというふうにおっしゃっていました。
それで、先ほど御紹介ありましたように、下した決定は、消費者側は拘束しません。したがって、消費者側は不満であれば訴訟を起こす自由がありますけれども、業者側はそれに縛られるということでして、額は最高10万ポンドですから
200万円から 180万円ぐらいでしょうか。それで、先ほど御紹介ありましたとおり、銀行オンブズマンは昨年、最高額で8万ポンド程度を命じたものがある。平均
2,400〜 2,500だというようなイメージだそうです。
PIAオンブズマンの方は、そういう斡旋額というか、補償額に加えて、慰謝料として
1,500ポンドまでを命ずるというか、提示することができるというふうにされています。
今回の金融サービス市場法案ですけれども、先ほど御紹介ありました6月17日に最終的に国会に上程されていまして、来年の春成立すると言われていますけれども、この五つのオンブズマン制度とその他の三つの苦情処理制度、FSAなどが持っている苦情処理制度、合わせて8本を1本に統合するものであります。
これも、消費者からどうしても、業者側のお金でやっているので、独立性についてやや疑問が持たれかねないということで、きちんとした制度にした方がいいのではないか。それから、先ほどおっしゃった執行力も与えてということなんですけれども、逆に、ちゃんとした制度にすると、今までのインフォーマルなやり方がうまくいかなくて、結局オンブズマンは、苦情があると、業者に関係の情報をくださいというふうに言って、業者から全て情報をもらうんですね。したがいまして、銀行オンブズマンの場合には、当該顧客の情報を銀行がオンブズマンに渡すことについて、苦情申立者は最初にサインすることに、了解をすることになって、オンブズマンに対してそういう手紙を送ることによって、オンブズマンはその了解に基づいて当該顧客の情報を銀行からもらう、こういうことになりますので、そういうことが今までうまくいっていたけれども、ちゃんとした制度になると、業者の方もちょっとディフェンシィブになって、何となく非常に公的な感じになるのではないかという、両論ありますけれども、統合されることになったわけです。
それで、私の感想は、2点大事だというふうに思うんですが、一つは、日本でもかなり利用されている制度、先ほどの資料等にあるかと思いますけれども、また、今後のあれにもあるのかもしれません。先ほどの資料にあったかと思いますけれども、何か横断的なものであって、今までの「中間整理」にも出ていますけれども、独立性があって、両方から信頼されるような、そんなうまくいくかどうかわかりませんけれども、何かそういうものができれば、やはり訴訟を起こすよりは−−訴訟を起こす自由はもちろんふさいではいけないと思いますけれども、かなり効率的なのではないかという印象を持ちます。したがって、オンブズマンのような制度がうまくできれば、やや抽象的ですけれども、非常にプラスではないかという印象を持ちます。
第2点はそれに関連して、ちょっと話が飛ぶかもしれませんが、そのインフラ整備というか、体制整備として、業者の、英語で「レコード・キーピング」と言うんですけれども、記録保持義務というんでしょうか、これを横断的に、それぞれあるんですけれども、整備する必要があるのではないか。結局紛争になりますと、イギリスのケースでもそうですが、「説明した」「してない」という言い合いになって、PIAオンブズマンがよく言っていましたが、事実を認定するということになるわけですが、事実認定がほとんどできないらしいんですね。そうすると、できない中で「えい、やっ」と、とにかく早く決める。不満があれば訴訟をしていただくということのようなんですけれども。そのためにイギリスでも、これは日本でもありますけれども、業者側に金融サービス法の下で詳細な記録保持義務というのがかかっているわけですね。
日本もそれがかなりキーになり、いろいろ議論があるところなんですけれども、取引が電子化していったりしますと、ますます、紙であれ、電子的なデータであれ、取引契約成立について、あるいはその前後の状況についての記録保持というのが非常に大事になると私は思っていまして、そういう意味では、ここの言葉で言えば、業者ルールとしてのレコード・キーピング・ルールというものを横断的に整備するということは非常に重要なことではないかなと思います。
長くなって申し訳ありません。以上です。
○蝋山部会長 どうもありがとうございました。
井上さん、ありますか。そろそろ各業界からのお話にと思ったんですが、どうぞ。
○井上委員 大変有益な報告をありがとうございました。
実は、私のところにも幾つか、今回の「中間整理」に関する意見が寄せられておりまして、今、神田委員からのお話のようなことをぜひ議論してくれという要望もあったものですから、大変有益な御報告だったと思います。
それに多少関わるわけですが、今最初の報告の中に、裁判外の処理制度の日本のケースについて報告があったんですが、恐らく第三者機構的なものをきちっとやるということはどうしても必要だと思うんですが、可能な限り民間ベースで物事が処理できた方がいいわけでありまして、その部分を担保するというのは、こういう裁判外の処理制度の民間の機構の中によきバランスが保たれているかどうか。つまり、こういう諸制度の中に、消費者であるとか、アマチュアの立場の人がどのようにうまく組み込まれて議論がされているかどうか。それを今日のこれから御報告ある中でも教えていただければありがたい。あるいはまた、消費者団体に詳しい方についてもコメントをいただければありがたい。
以上です。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
ほかにございませんね。
今までの議論も含めて、さらに具体的な実際の状況を知った上で議論をしたいと思いますので、これから各金融業界の方々から、それぞれのお立場での業界での裁判外紛争処理制度について御説明をお願いしたいというふうに思います。
大変時間を制約して申し訳ありませんけれども、それぞれの皆さんにアサインされております時間の中で御報告を頂戴できればというふうに思います。
まずお一人目は、銀行の実情につきまして、野田オブザーバーからよろしくお願いしたいというふうに思います。どうかよろしく。
○野田オブザーバー 全国銀行協会の野田でございます。発表に入らせていただく前に、本日はお許しをいただきまして、私ども事務局の橋本業務部長を陪席させておりまして、後ほどの質疑に加わらせていただきますことを最初にお断り申し上げます。
まず初めに、私ども全銀協の現在の苦情処理体制について御説明申し上げます。
銀行業界では、東京銀行協会をはじめといたしまして、全国54の銀行協会に設置しております「銀行よろず相談所」というところにおきまして、お客様からの苦情・相談を受け付けております。これらの銀行協会はいずれも民法第34条に基づく公益法人でございまして、銀行よろず相談所は昭和45年に、当時の時代背景として、銀行員による不祥事件であるかと、あるいは事務ミス等が相次いで起こったということを受けまして、顧客サービスの向上を期するためにその年、昭和45年の10月に全国各地の銀行協会に設置するということを決めたものでございます。
銀行よろず相談所の相談員は、現在、いずれも銀行協会事務局の職員でございます。例えば東京銀行協会では、相談業務専任の職員10名の外、業務・事務等の専門知識を有する職員9名を兼務発令ということで行っておりまして、また、非常勤職員として、消費生活センター等に勤務しておられます消費生活アドバイザー2名を採用し、お客様からの幅広い苦情・相談に対応できる体制をとっております。
次に、昨年度1年間に私ども全国54のよろず相談所に寄せられました相談・照会、あるいは苦情・要望という総件数でございますが、資料はお手元の「第一部会12−4」という綴りの中の最初のページに〔資料1〕と称して、右肩に、横向きでございますけれども、資料がございます。これを御覧いただきたいと存じますけれども、一番下にございますように3万
9,917件というふうになっております。このうち96%に当たるものは預金や融資に関する、いわゆる相談・照会という範疇に属するものでございまして、残りの4%が苦情、それに要望というものも一緒のジャンルで区分けしてございますが、これで
1,633件ということになっております。
この苦情・要望の内容を業務の中身で見てみますと、貸出業務で
654件、そのうち住宅ローン関係で 136件となっております。これが最も多うございまして、以下、預金業務が
453件、為替業務が 103件、手形に関するものが35件、証券業務は1件というふうになっております。なお、その他の
387件というのがございますけれども、この多くは銀行員の対応等に対する苦情でありますとか、銀行の経営姿勢等に対する御批判などでございます。
なお、この件数を時系列で見ますと、平成8年度は 1,052件、平成9年度は
1,174件でございましたので、平成10年度は前年度比40%近く増えております。中でも貸出業務に関する苦情・要望が特に増加しておるところでございます。
次に、苦情・要望の具体的な内容を、東京銀行協会のよろず相談所に寄せられた事例ということで見てまいりますと、預金業務では、相続預金の払い出し手続に関するもの、あるいは預金通帳・印鑑、あるいはキャッシュカードが盗まれ、預金が引き出されてしまったというようなもの、あるいはATMの故障、あるいは現金不足といった苦情が目立っております。貸出業務におきましては、いわゆる固定金利型住宅ローンの繰上返済手数料が高過ぎるとか、担保物件の再評価手数料を債務者の負担にさせるのは納得できないとかといった手数料に絡む苦情、あるいは貸し渋りの解消を求めるなど、事業資金融資に関する苦情が目立ってきております。為替業務では、手数料を含めた外貨両替についての銀行の説明不足に関する苦情や、海外送金の日数がかかり過ぎるといった苦情が目立っております。
こうした苦情の内容・件数に関する詳細は、お手元の資料の中に、下の方でございますけれども、〔参考資料1〕として、東京銀行協会の平成10年度「「銀行よろず相談所」取扱状況」というものをお付けしてございますので、よろしければ後ほど御覧いただければというふうに存じます。
そのほか具体的な統計はございませんけれども、銀行よろず相談所に寄せられる苦情は、一般的に言いまして裁判に持ち込まれるような案件、すなわち法人間のトラブルでありますとか、金額の大きくなるものというものは少のうございまして、個人、あるいは中小企業のお客様からの、金額で言いますと比較的少額の苦情が中心であるということは言えると思います。
それから、苦情・相談が寄せられる形態でございますけれども、私どもに寄せられる苦情・相談は、そのほとんどが電話によるものでございます。こうしたことから私どもでは、銀行よろず相談所につきまして毎年、新聞・雑誌広告のほか、電話帳への広告掲載等の広報活動を実施いたしております。なお、本年は試験的に新聞広告に替えまして、東京・横浜・大阪等の都市部において、電車の窓に張るいわゆるステッカー広告の実施を予定しております。
なお、苦情に限って申しますと、お客様が銀行よろず相談所に持ち込まれる前に、個別の取引銀行に苦情を申し立てたという事例も相当数ございます。こうした事例は、お客様が銀行よろず相談所に苦情解決の仲介を期待しているのではないかというものを示すものと言えましょう。
次に、資料を1枚、お手元をおめくりいただきまして、〔資料2〕を御覧いただきたいと存じます。これも横向きでございますが、後ほど御説明いたしますけれども、私ども本年10月、来月から体制の改善を図ってまいりますが、その説明をいたします前に、現在の体制について〔資料2〕の左側の図で御説明申し上げたいと思います。
銀行よろず相談所は、原則といたしまして、苦情の相手方である銀行のお客様サービス部などの専門部署に対し寄せられた苦情の内容を伝え、お客様との間のトラブルを解決するように求めております。これがのところでございます。続きまして
でございますが、これを受けまして、銀行のお客様サービス部は、お客様とお取引を行っている取引店と連絡をとりながら、お客様との話し合いを行います。その結果、お客様の御理解を得られれば、もちろん解決。そうでなければ話し合いの継続や、場合によっては弁護士対応、あるいは民事調停等に進むということに相なります。こうした苦情の処理の結果につきましては、
でございますけれども、通常、銀行からよろず相談所の方に報告を頂戴しているということでございます。
現在のフローは以上でございますけれども、私ども全銀協では、一昨年の6月の金融制度調査会の答申、すなわち「我が国金融システムの改革について」というものにおきまして、民間における苦情処理や紛争処理体制については、関係業者を中心に、早急にその見直し等を検討することが必要であるとされたこと、あるいは、先ほど申し上げましたように昨今の苦情・要望件数が著増しているということなどを踏まえまして、昨年5月に苦情紛争処理に関する体制整備についての検討に着手したものでございます。
検討を進める中で、私どもの現在の苦情処理体制については、次の三つの課題を解決する必要があるということで整理いたしました。
まず第1に、苦情処理に関する全国共通のルールを策定し、お客様に信頼される体制を整備すること。第2に、苦情処理の対応能力を高める観点から、簡易で迅速な処理が可能な裁判外の紛争処理機能を持つ必要があること。そして第3に、現在の全国54の銀行よろず相談所相互間の連携を強化するなどにより、全国組織化を進めるという、この3点でございます。このほか、銀行において販売する金融商品が多様化している状況の下、他の金融団体の相談所や消費生活センター等との連携による一層の体制整備も重要であるというふうに考えております。
以上を踏まえまして、全銀協及び東京銀行協会では、この10月に苦情紛争処理体制の改善策を実施することとしたものでございます。具体的には、恐縮ですが、資料を1枚おめくりいただきまして、〔資料3〕を御覧いただきたいと存じます。
ポイントは二つございまして、一つは、苦情処理に関する全国共通のルールを、そこにございますように「苦情の受付と解決促進に関する規則」ということで制定いたしまして、来月から施行いたします。いま一つは、これを受けまして、東京銀行協会として東京の三弁護士会の仲裁センターと業務提携をすることの2点でございます。
なお、今回、弁護士会仲裁センターの利用を考えましたのは、お客様の信頼を得るための中立性の確保、それと運営コスト等、この二つの理由が大きいわけでございますが、なおさらに、本年1月の国民生活審議会消費者政策部会の報告書、先ほど若干事務局の方から御説明があった資料の中にございましたけれども、「消費者契約法の制定に向けて」の中で、弁護士会仲裁センターは手続が非公開で、訴訟に比べて当事者プライバシーが保護され、事業者側の参加も確保しやすく、消費者取引に関わる紛争において活用の余地は大きいと考えられるという旨の検討結果がまとめられましたこと。さらには、実態を拝見いたしましても、裁判や民事調停に比べて迅速な対応が可能であること等も弁護士会仲裁センターを選びました理由でございます。
現在の私ども銀行協会の性格を考えますと、こうした形で第三者機関との提携を行うことが最善の選択肢であるのではないかと判断したものであります。
また、来月から施行いたします規則につきましては、今月14日に開催されます全銀協の理事会で最終決定することとしておりますが、本日は御参考までに、その案文を〔参考資料2〕として後ろの方にお示ししてございます。
ここで、先ほど申し上げた10月以降の苦情処理フローにつきまして、資料は1枚また戻っていただきまして、〔資料2〕でございますが、その右側の方の図に沿って御説明いたします。
現在と異なります点は、一つは、会員銀行に取次ぎを行った苦情については、銀行よろず相談所は、図にございますように、お客様の求めに応じて会員銀行における対応結果を説明するというルールを定めた点でございます。そして、そのために会員銀行は、図の
にございますとおり、必ずその対応結果を銀行よろず相談所に報告することといたしております。現在の体制では、銀行よろず相談所に苦情を申し出ても銀行に取り次がれるだけという批判もございましたが、今後は、銀行よろず相談所として主体的に対応していくこととなるわけでございます。
もう一点は、先ほど申し上げましたが、紛争処理機能を新たに付与したということでございます。具体的には、図のによる説明でも納得されないお客様とか、あるいは、苦情申し出から一定期間、具体的には3カ月間でございますけれども、経過いたしましても苦情の解決が図られないとするお客様、この場合は、ただし個人の方に限っておりますけれども、こうしたお客様を対象に、弁護士会の仲裁センターを利用して紛争の解決を図るというものでございます。この場合、弁護士会仲裁センターに取り次いだ後は、弁護士会の規則、手続によって処理されることとなっており、弁護士会との間の協定において、銀行協会は弁護士会の中立性を尊重しなければならないとされております。また、相手方の銀行は、裁判や民事調停によりその紛争の解決を図ることを明確にしない限り、弁護士会仲裁センターによる和解仲裁に参加するということと規定しております。第6条でございます。
なお、弁護士会仲裁センターの利用に関わる費用負担でございますが、通常であれば、本来お客様が支払う申立手数料と記述手数料に相当する額、これにつきましては銀行協会が負担することといたしております。ただし、和解等が成立した場合の成立手数料というのがございますけれども、これにつきましては銀行協会ではなく、お客様の負担ということにさせていただいております。
以上が、私ども銀行業界における苦情処理体制に関する説明でございますが、当面、弁護士会仲裁センターと業務提携を実施いたしますのは、東京銀行協会のみでございます。他の地区につきましては、苦情の受付件数が多い地区を中心に、今後、弁護士会をも交えまして具体的に検討が進められていく見通しでございます。
私ども全銀協といたしましても、こうした検討をそれぞれサポートしてまいりたいと考えております。また、全国54の銀行よろず相談所の横の連携を強化して、苦情の事例分析を通じて、会員銀行の業務改善を進める等の活動も強力に実施していく所存でございます。
全銀協は、御案内のとおり任意団体でございまして、全銀協のルールには法的拘束力がなく、いわばこのルールは会員相互の自主ルールにすぎないわけでございますが、以上御説明いたしましたとおり、お客様に安心してお取引いただけるための環境整備の一環として、中立性と公平性を兼ね備えた苦情紛争処理体制の整備に取り組んでいるところでございます。
いわゆる自主規制団体、自主規制機関と申しますと、ルールの形成や監視といった事前規制的な機能に目が向きがちでございますけれども、利用者保護の確保といういわば公正性と、金融イノベーションの促進といういわば効率性の両面を追求するという金融サービス法の趣旨を考えますと、苦情受付や紛争処理といった事後的な機能こそ重要なのではないかというふうに考えておる次第でございます。
また、今後の自主規制に関する議論におきましては、私ども全銀協のように、業者自らの意思によって、自らが努力して、よりよい金融取引の実現を目指すという、文字通り自主自立をエンカレッジしていただくような施策についても目を向けていただければというふうに考えている次第でございます。
少し長くなりまして恐縮でございます。私からは以上でございます。ありがとうございました。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
ただいまの野田さんからの御説明に関して、恐らく信託銀行、それから信用金庫、それぞれの立場で補足的な御意見があるのではないかと思いますので、大変恐縮ですが、できるだけ手短に、一、二分の範囲の中で、資料はきちんと読むことにいたしますが、よろしくお願いしたいというふうに思います。
○松島オブザーバー 東洋信託の松島でございます。社団法人信託協会の信託相談所の資料を、この15ページと16ページに挿入していただいておりますので、簡単に信託相談所の概要について、資料に沿って御説明をさせていただきます。
私ども東洋信託銀行を含めて、信託協会加盟会社の多くは、全国銀行協会並びに各地の銀行協会に加盟しております。お客様からの苦情・相談につきましては、先ほど野田オブザーバーより御説明のあった銀行よろず相談所でも受け付けておるわけでございますけれども、それとは別に信託協会においても信託相談所を設置して、お客様からの信託業務等に関する苦情・相談を受け付けております。
信託相談所は、信託機能についての一般の御理解を深めること、及び信託業務等の改善に資すること等を目的としまして、昭和50年に信託協会内に設置したものでございます。信託業務並びに信託協会加盟会社の業務全般について、広く国民一般並びにお客様からの苦情・相談を受け付けさせていただいておりまして、御利用の御案内につきましては、信託協会の各種の刊行物や、最近は信託協会のホームページなどにも記載しております。
組織でございますけれども、信託相談所は所長を含めて3名体制で運営しておりまして、うち1名は専担者でございます。寄せられた相談・苦情等の件数は、16ページ(別紙)のとおりでございますけれども、平成10年度は信託業務を中心といたしまして
573件でございます。うち、相談・照会に関するものが 559件、苦情に関わるものが14件となっております。相談や苦情が寄せられる形態としましては、電話によるケースがほとんどでございます。また、銀行協会の銀行よろず相談所に寄せられた信託業務に関する相談・苦情も信託相談所に取り次いでいただくことになっております。寄せられました苦情につきましては、当該加盟会社に取り次ぐことによって解決を依頼しております。また、信託相談所の取扱い状況につきましては、今後の業務運営に各社が反映するため、加盟会社の諸会合等で報告をしております。
以上が現状でございますが、現状、信託相談所は紛争処理機能を有しておりませんけれども、信託協会内でこれまで検討を重ねてまいりました結果、信託業務に関する苦情処理の円滑な解決を今後図っていくために、先ほどの東京銀行協会さんと同様に、弁護士会の仲裁センターの斡旋仲裁制度を活用するのが適当であるという結論に至りまして、年内、できるだけ早くスタートすべく、今、弁護士会さんと折衝を行っております。
なお、スキーム等は今後決定するわけでございますけれども、お客様から苦情の申し出があった場合、信託相談所はこれを誠実に受け付けて、当該加盟会社に対して申し出のあった苦情の迅速な解決を求め、その対応結果についての報告を受け付ける。そして、当該加盟会社の対応結果について納得のいただけないお客様、また、一定期間にわたり苦情の解決が図られてないお客様からは、その旨の申し出を受けた場合は、お客様の希望によって、先ほど申し上げました弁護士会の仲裁センターの斡旋仲裁制度を、申立て段階につきましては信託協会の費用負担で御利用いただく、こういうスキームでございます。
以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
続きまして、木村さんから信金について。
○木村オブザーバー それでは、信用金庫業界の苦情等の処理体制について、説明は補足程度にさせていただきます。資料は17ページから19ページの3枚でございます。
信用金庫業界の処理体制につきましては、?の全国レベルのもの、都道府県単位と地区協会レベルのもの、それから、各地区の信用金庫の本部に相談所が設置されているということでございます。
それぞれの役割分担につきましては、全国レベルとか地区レベルのところは信用金庫業界全般に関する案件につきまして対応しておりますが、個別信用金庫に関する案件につきましては、これらの協会レベルの相談所は橋渡し的な役割をしておりまして、基本的には個別信用金庫で解決するというようなことでございます。
それから、これは最近の全国しんきん相談所の処理実績でございますけれども、下の方に、最近相談件数等が増えているように思いますが、実は、次のページを御覧になっていただきたいと思いますけれども、要望とか苦情に係るような相談が増えているということではなくて、の方の照会とか相談に係るものが増えているということでございます。特に最近の照会・相談件数で多いのは、昨年10月から始まりました保証協会の中小企業に対する特別融資保証制度、そういうものの相談であるとか、あるいはペイオフの解禁を控えて預金保険制度に関する相談とか、そういうものが増えているということでございます。それで、信用金庫の場合は協同組織形態で、地域に密着した金融機関ということでございますから、お客さんとの長期的な信頼関係を重視され、あるいはお客さんのことをよく知っているものですから、お客さんの適合性を重視した営業活動をやっているというようなことと、それから、基本的にはリスクの大きい商品であるとか、あるいはリスクの所在が不明確なといいますか、そういうような商品は余り扱ってなくて、伝統的な預貸金商品というのですか、そういうものを中心にやっているものですから、比較的そういう苦情等は少ないのではないかというふうに思っております。
それから、最後でございますが、そういう紛争処理機関の検討をこれから深めるに当たって2点ばかり。
一つは、苦情等の処理につきましては、やはり当事者間同士で解決し、それを促進していくというような基本的なスタンスが必要ではないかと思います。紛争処理機関はあくまでもラストリゾート的な位置づけといいますか、そういうようなことを重視する必要があるんじゃないかというのが一つ。
それから、相談情報等の情報の活用ですね。例えば、いろんなルールを作成する、あるいは日常の営業活動にそれを直ちに反映させるというような仕組みを考える必要がある。この2点は、処理機関の組織形態や役割を考える上で重要な要素になるのではないかというふうに思っております。
以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
以上が、いわゆる広い意味での銀行業における裁判外紛争処理制度、いわゆる苦情処理の仕組みについてでありました。
続きまして、石橋オブザーバーから生命保険の場合についてをお話を伺いたく思います。よろしくお願いします。
○石橋オブザーバー 石橋でございます。それでは、生命保険に関します相談・苦情につきまして、業界の対応状況について、私の方から説明をさせていただきます。申し上げます数字等は、お手元の20ページ以下のレジュメに記載しておりますので、御参照いただければと存じます。
生命保険に関する相談・苦情につきましては、そのかなりの部分を各生命保険会社で受けておりまして、さらにこれに加えまして、業界団体でございます生命保険協会と生命保険文化センターの二つの機関においてもお受けをしております。
ちなみに、ここにございます生命保険文化センターでございますが、情報の提供活動を通じて生命保険に関する知識の普及を図るということで、昭和51年に設立をされた財団法人でございます。このような設立趣旨でございますので、生命保険文化センターに参りました苦情につきましては、生命保険協会の方に回付をしております。
次に、処理の具体的なボリューム感をつかんでいただきますために、受付件数を紹介をさせていただきます。
数字につきましては平成10年度の実績でございますが、まず、各生命保険会社受付分でございます。生命保険協会の集計では、2万
5,400件余りの苦情を受けております。なお、相談につきましては、これは様々なレベルのものもございます。あるいは照会等もございますので、各社の合計の集計はなされておりません。一方、業界団体の受付分でございますが、二つの団体で相談が2万
1,859件、苦情が 1,391件でございます。苦情件数のおおよそ95%は各社でお受けしておりますが、これは各社ごとに商品が異なること、あるいは販売アフターサービスにつきまして各社が独自に対応しているということから、各々の会社の処理になじむ問題が多いということではないかというふうに判断をしております。また、各社におきまして、こうした相談・苦情処理を通じて集まってまいりますお客様の声につきましては、各社ごとで商品開発やサービスの改善に積極的に役立てているところでございます。
次に、業界団体としての生命保険協会が受け付けました苦情への対応について御説明をさせていただきます。
昭和21年より生命保険協会に、お客様窓口を担います専任機関といたしまして「生命保険相談所」が設置をされまして、既に50年を超える歴史を有しております。この相談所の現在の体制でございますが、レジュメにもございますとおり、本部の協会には課長以下7名の専任スタッフを、また、全都道府県、合計53カ所でございますが、その地方生命保険協会には、各々2名以上のスタッフが配置をされております。
続きまして、相談所での受付の内容につきまして御紹介をさせていただきます。次のページを繰っていただければと思いますが、まず、お客様からの申し出経路別の実績でございます。平成10年度、相談・苦情1万
7,977件のうち、本部の協会で受け付けたものが69%、地方協会で受け付けたものが31%でございます。さらに、これは本部協会のみのデータでございますが、電話受付が96%、来所あるいはお手紙によるものが4%でございます。
続きまして、お客様からのお申し出内容でございますが、相談と苦情につきまして簡単に御紹介させていただきますと、相談につきましては、ここの表にございますとおり保障の見直しに関するものが18%、保険種類に関するものが14%、会社の内容等の問い合わせ等が11%でございます。
次に、苦情でございますが、解約手続に関するもの。手続をお願いしているんですけれども、なかなか進まない等の意味合いでございます、これが15%。給付金の支払いを謝絶させていただいているものに関してが7%。商品その他につきましての説明不十分ということに対しての苦情が6%でございます。あと、多々にわたっている形でございます。
最後に、近年の受付件数の推移でございますが、平成8年度 9,827件、9年度2万2,700
件、10年度1万 6,586件でございます。平成9年度の相談件数が相対的に多いわけでございますが、これはこの年の4月に日産生命の破綻が生じたことの影響が大きいものというふうに伺っております。
苦情につきまして、同じく3年間の推移を見てみますと、平成8年度に
1,196件、9年度 805件、10年度 1,391件でございます。このように受け付けました苦情の処理につきましては、各社との連携を図りながら、相談所が責任を持ってその解決、対応に当たっております。
さて、こうした生命保険相談所の業務をいかにお客様にPRしているかということが、私どもの業界あるいは生命保険協会にとって大切なテーマでございます。平成10年度、生命保険協会では2回、生命保険相談所の業務に絞りました広告を全国紙に掲載をしております。それとともに、テレビ、ラジオを通じました相談所のPRを行ってまいっております。加えまして、生命保険協会が新聞・雑誌に広告を掲載する際には、必ずこの相談所業務の紹介を盛り込むこととしております。相談業務を利用されたお客様へのアンケート調査によりますと、この新聞・雑誌を御覧になったということで、きっかけでの御相談が多いというふうに伺っております。また、インターネットの生命保険協会のホームページでも、本部、それから、全国の相談所を紹介させていただいております。
次のページに移らせていただきます。
次に、相談所が運営しております裁定委員会制度について、簡単に御紹介をさせていただきます。この制度は、昭和40年に発足をいたしました調停委員会の制度を前身といたしまして、昭和52年にこれを改組し、現在のような形での裁定委員会として発足をしたものでございます。
規程によりますと、裁定委員会は、契約関係者と会社との間に生じた契約上の紛議の調整に当たるというふうにされております。また、相談所が苦情の申し出を受けたときから原則として1カ月を経過しても、当事者間においてなお問題が解決しない場合であって、かつ、当事者の双方又は契約関係者等から紛議裁定の申し出があったときには、この裁定委員会に付託をして、裁定手続を行うということになっております。52年の4月に裁定委員会が発足をいたしましたときには、「当事者の一方または双方から申立があった」という表現であったものを、ここにお示しをしておりますとおり、同年の8月に改正をいたしまして、生命保険会社単独の申立てによるものを除外、排除をしております。双方の申立て、あるいはお客様の方からの申立てということで裁定委員会に付議する形になっております。
裁定委員会では、申立てを認めた場合には、当事者間に和解が成立するように努力をいたしますが、解決をしない場合には裁定を行うということで、裁定が相当であると認めた場合には、公正妥当な立場から和解案を作成をいたしまして、これを当事者双方に提示をいたします。この場合、規程上、当然ながら、和解案は当事者を拘束するものではございませんが、会社側にはその尊重が規程の中で求められております。
裁定委員会の委員でございますが、これも規程がございまして、保険学者、弁護士、医師等の学識経験者の方、そして協会常勤役員の方、5名の方々にこの裁定委員会の委員をお願いするということになっておりまして、現在、お手元の資料にございますとおりの5名の方々にお願いをしているところでございます。
この制度発足以来の利用数というのは大変少なく、3件でございます。このうち2件が当制度によって解決が図られまして、残る1件は訴訟提起に至っております。
最後に、私ども生命保険業界におけます業界団体といたしましてのこの分野での役割につき、これは私見でございますが、一言述べさせていただければと思っております。
まず、大前提といたしまして、このような相談・苦情といった分野につきましては、やはり商品を提供し、また、それぞれサービスを担当しております生保各社が第一義的に責任を持って解決に当たるということを私ども基本と考えております。一方、業界団体でございます生命保険協会につきましては、相対的な数は少ないものの、かなりの御利用をいただいているという状況でございます。ただいま数字で御説明をしたとおりでございます。ただ、この中で裁定委員会制度の利用実績につきましては、先ほど報告をいたしましたとおり、過去大変少ない数でございます。
調停委員会から裁定委員会への発展段階を、当時の記録・資料で見ますと、そのときの、そしてそれ以降の業界の苦労と努力はしてきたつもりではございますが、生命保険協会の相談所制度、あるいは裁定委員会制度につきましてお客様の認知度を高めていくということが御利用の前提ともなってまいりますので、今後一層のPRに努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
それぞれおっしゃりたいこと、たくさんあるようでございまして、時間が大幅に超過しております。ト書きですと、この間で一応区切って、御意見を頂戴するということであったんですが、それは時間の関係上スキップいたしまして、委員の皆さんには申し訳ありませんけれども、引き続いて損害保険業、証券業、証券投資信託業からのお話を頂戴したいというふうに思います。
実は、10分・15分・10分というふうに時間を差し上げていたわけですが、それぞれ大幅にカットをお願いしたいというふうに思います。申し訳ありませんが、よろしくお願いします。どの程度カットするかはお任せいたしますが、超過されないようにお願いしたいというふうに思います。
○森オブザーバー それでは、私、森から損保業界における裁判外紛争処理制度について御報告いたします。資料の1ページ目は全体像でございます。全体像については、今までお話しございましたような他の金融機関の業界対応とそう大きく変わりませんので、省略させていただきまして、今日は損保業界で比較的うまくいっているADRというのが歴史的にもございまして、これについて紹介させていただくということにしたいと思います。ただ、対象とするフィールドは、自動車保険の保険会社対被害者という紛争処理でございますので、金融サービスとはややフィールドが遠いということはございますけれども、我が国におけるADRの実態として多少なりとも御参考になればということで紹介したいと思います。
それでは、資料の1ページの一番下の「?交通事故紛争処理センター」というところを御覧いただきたいと思うんですが、これは交通事故に関する裁判外紛争処理機関として、損保業界の寄附金10億円を財源とする財団法人として1978年3月に発足したものでございます。発足した経緯は、自動車保険について、保険会社が契約者である加害者に代わって示談代行、今では当たり前になっておりますけれども、これを1970年代に導入いたしましたときに、被害者が著しく不利な立場に置かれるという懸念をする声が世論からございまして、こういうものを作ったという経緯にございます。したがいまして、理事長以下、理事、評議員に、損保関係者はおりません。全国8カ所、高等裁判所のあるところで設置しておりまして、嘱託弁護士は
126名、直近は 128名だと思います。法律学者、元裁判官、弁護士による全国39名の審査員、事務職員30名強で運営をしております。事務職員は、損保のOBは1人だけでございまして、あとは全て官庁のOB、裁判所のOB、それからプロパーの方というのですか、生え抜きの方で占められております。業務の内容は、、
、
と書いてございますが、こういうことでございます。
裏にまいりまして、設立の目的はこうでございますが、実態は先ほど申しましたように、加害者に代わって示談を代行する保険会社対被害者の紛争処理ということでございます。センターの事業は、先ほど申しましたので省略させていただきまして、センターの特徴でございますが、若干ここは資料に補足しながら追っていきたいと思います。
このセンターで相談担当者として相談に当たる嘱託弁護士は、センター所在地の弁護士会から交通事故の紛争に経験の深い弁護士の推薦を受けて、センターが相談担当者を委嘱しています。相談は、被害者の方がセンターに来られて、相談担当の弁護士と面談して、無償で相談することができます。特徴的なことは、初回から相談の終結まで、同じ弁護士が一貫して担当するという形をとっているということでございます。
それから、相談担当者は和解の斡旋に当たって相手方−−これは加害者とか保険会社、主として保険会社になるわけでございますが−−にセンターへの来所を要請して、中立の立場で和解の斡旋に当たる。要請しても応じないということはしないことになっています。それは下に書いてございますが、保険会社だけじゃなくて、保険事業を営んでいる外国保険事業者、それから農協共済、全労災、こういったところはセンター設立のときに協定を結んでおりまして、センターの業務運営に協力するということになっております。したがって、応じないということはない。
それから、相談担当者は和解斡旋が不調となった場合には、被害者側・加害者側いずれかの申立てによって、センターの審査会に審査を申し立てることができるということになっています。審査会では審査員−−これは39名の法律家、大学教授でございます。それから弁護士の先生方−−が当事者に質問し、内容の確認を行って、通常3名だと聞いておりますが、3名の審査員が合議によって、中立・公正、独立して裁定を行う。3名の審査員も配慮されていまして、学者1名、判事出身の弁護士1名、生粋の弁護士、この3者構成ということをできるだけ配慮されているようでございます。
これが一つのポイントでございますが、?で下に書いてございますが、被害者は審査会の裁定に拘束されないが、保険会社とか共済といった方は、センター設立時の協定によって、審査会の裁定に拘束されるということになっております。この仕組みを通じて迅速な紛争解決を担保しているということでございまして、資料にございませんが、相談は、同一案件について1カ月に1回程度ということでございますので、お互い両当事者はそれほど大きなロードがかからない。そして、6カ月以内にほとんど解決しているという実績がございます。ここが日本のADRとして非常に高い評価を得ているということが言われている根拠のようでございます。ただ、現在は、新規案件は2カ月待ちというパンク状態でございまして、ちょっと待てないという場合は、日弁連の交通事故相談センターと連携しながら、そっちへ回っていただくとかいうようなこともやっておられるようです。
それから、?のセンターの実績でございますが、相談件数は平成10年度で1万6,000
件、新規が 5,000件、再来が1万件。対人・対物とございますが、これは人身事故の場合と物損事故の場合。御覧いただきたいのは「事案終結の形態」という右の欄でございますが、示談成立が
3,181件、審査会に移行したのが 302件、そこではどうしようもないので裁判の方に行ったらということでアドバイスしているのが
200件、取下げ・斡旋不調が 783件、こういう実態でございまして、一般的には、センターも、また、世間でも、8割以上がここへ持ち込んだ場合は解決していると、こういうふうに言われているようでございます。
以下、資料がございませんが、私なりのコメントをさせていただきますと、うまくいっているということについてのコメントでございますが、センターでは利用者に対してアンケートを行っておられます。そのアンケートから出てくる大きい項目、三つを挙げますと、一つは、費用と時間がかからないという声が大きい。先ほど申しましたように解決までに6カ月。概ね6カ月で示談が成立している。月1回ぐらいで済んでいる。これは日本のほかのADRの中でも、回数が特に少ないというふうに言われております。それから、利用者費用がかからないと言いますが、利用者は無料でございます。あと、保険会社の負担でございますが、1件当たり、現時点で平均しますと25万
5,000円ぐらいになります。これが高いか安いかということでございますが、同じようなADRの中で、例えば中央労働委員会の1件当たりの単価
400万と言われていますが、これと比べるのが正しいかどうかわかりませんけれども、社会全体、もしくは保険会社としても目の飛び出るような金額にはなっていない。
それから、二つ目の声として、裁判で認められる示談金額と大差がない金額で示談できるという声が利用者に出ている。それは先ほど申しましたように8割以上は概ね納得しているということから来ていると思います。
それから、三つ目の声としては、信頼できる弁護士を知らないということから、ここへ駆け込んだというか、ここへ来た。そういう意味では、紹介された弁護士が一貫して担当してくれる。そして、審判になっても自分の味方になってやってくれるということがあるようです。そういう意味では、費用と時間がかからない。公正妥当な解決が期待できるという、よく言われる裁判外紛争制度に求められる機能が概ね有効に機能しているということじゃないかと思います。
ただ、うまくいっているにはそれなりの理由がございまして、一つは、交通事故に関する膨大な判例があって、紛争解決の基準がある程度確立されているという世界であるということですね。例えば、賠償水準であるとか、過失割合といったものについての基準がある程度確立されておる。したがって、簡易・迅速な紛争解決が行いやすいということもございますし、また、相談を担当される弁護士も、審査会のメンバーも、ガイドラインのようなものができていまして、それをもとにいろいろ対応していけばいいということだと思います。
それから、もう一つよく言われているのは、職権主義が採用されているということがうまくいっている条件だと、こういうふうに言われております。具体的に申しますと、センターの嘱託弁護士が、相談に来られた被害者の方に積極的に被害者の主張や立証に関与されて、事案の解明に当たられる。来られる被害者は、自分は何を主張していいか、どれだけのことを請求していいかもわからない状態で、不満だけで来られるわけですから、裁判官のような対応をしないで、できるだけ主張・立証に、被害者側に関与されて解明に当たられるということでございます。また、審査会の審査に持っていっても、別途弁護士を立てる必要もございませんから、担当弁護士にそのままついてもらえますから、その点でもいいし、また、当事者が、これは保険会社側もそうですが、自分の主張を準備書面という形で提出することも省略できるということで、時間とコスト、文書管理面でも非常に効率的だという運営だと思います。また、事実認定に関しても、証人尋問は行っておりません。
こういった職権主義が採用できるのは、これも一つはやっぱり、先ほど申しましたガイドラインや基準があるからで、これがないとやっぱりケース・バイ・ケースだとか、そういった状態では、なかなかこの職権主義の採用というのは難しいというふうに思います。
では、何でも全てオーケーか、うまくいっているのかと申しますと、問題もございます。どうしてもやっぱり被害者寄りの解決になりがちでございます。被害者が納得しないと解決しないということでございますし、6カ月以内で何とか解決しようとすればするほど、被害者が納得できるものを提示しがちでございまして、一方、保険会社は多少不満でも裁定に応じなきゃいけないという協定になっていますから、どうしてもそういう傾向がある。だったら、もうやめればいいじゃないかということでございますが、保険会社としても、やはり続けているだけのプラスがある。例えばコスト面であるとか、こういったものがないと、示談屋の横行とかいろんなことが出てくる可能性があるといったようなことで、冒頭にちょっと神田先生もお話しございましたように、イギリスの話じゃございませんが、両当事者がそれなりに満足しているというところは、この紛争処理センターにはあるのではないかということでございます。
以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
続きまして、関さんから、証券業協会についてお願いいたします。
○関オブザーバー
日本証券業協会における苦情・紛争処理の流れは、お手元26ページ、資料1に要約をいたしております。二つの部分になっておりまして、上の方にいわば苦情処理、相談、こういった部分があるわけでありまして、下の方にまいりますと、調停、あるいは法律用語でいくと仲裁に近い、そういう処理の手続、斡旋手続という、2段になっているわけであります。
それで、上の方の苦情処理は電話等が多いわけでありますが、私どもの苦情相談室に案件が参りますと、それについて証券会社に調査を指示して、その状況をまた顧客に伝える。そして解決に努める。特に処理の促進に当たると、こういう機能もあるわけですが、この内容は極めて多様になっております。1回の電話で、例えば「山一、三洋が破綻になったけど、自分の取引先は大丈夫でしょうか」というようなこととか、非常に簡単な照会等から、今のように下の斡旋まで行くような、非常に時間のかかる問題。統計では全て「1」でありますけれども、両方あるわけであります。
ここで話し合いがつけば、これは解決でいいわけでありますけれども、この場合は証券会社の証券事故の扱い。何か営業員の行動に問題があったから損害賠償をすると、こういう形になるわけであります。不調であれば下の方に行くわけであります。
現在の斡旋制度というのがございますが、この斡旋制度は苦情処理の協会の職員が事務局をいたしますけれども、その斡旋案を策定とか、こういったことは全部法律専門家にお願いをしております。
それで、斡旋案が提示をされまして、両者が合意をすれば、これで斡旋が成立して金額が払われるわけでありますけれども、ここについて去年の12月から取扱いが変わりまして、11月まではこちらの斡旋手続で斡旋案に両方が合意をいたしましても、それが損失補填に当たらないということを行政で一々チェックをする、確認をするという制度が必要になっておりました。裁判所の民事調停であると、それが不要になっているという制度でありまして、斡旋というのは御承知のようにある程度歩み寄りを促すという意味でありますから、そう理屈でぴしゃっと割り切れないわけでありますが、行政が確認をするときには、むしろ、なぜこうなったかということをチェックをすると、そういうことでなかなか使われなかったということでありますが、これは12月1日から民事調停並みになりまして、後でお示ししますように非常に使われるようになってきております。
それから、もちろん顧客が斡旋に合意しなければ、それは成り立たないわけですが、証券会社が不満であった場合でありますが、これは今度は証券会社の方に義務をかけておりまして、その場合は必ず自分の方から訴訟を起こせと、訴訟を起こす義務をかけているわけであります。全体としての手続について、こういったプロセスについて協力をする義務。例えば、協会の請求があれば資料を出す義務ということと、それから、今の最後の斡旋のところでは、そういった形で参加の義務というんでしょうか、そういったものをかけて、参加と提訴の義務をかけているということであります。
それで、冒頭の玉川室長の御説明ありましたけれども、全体が証券取引法の裏付けに基づいて協会が運営しているという制度になっております。したがいまして、後ろの方に法律、それから協会の定款、それから規則を付けておりますけれども、これを御覧いただきたいと思います。正確に申しますと、法律の斡旋の方を明定したというのはごく最近でございますけれども、協会の斡旋の手続というのは、ずっと前から行われているわけであります。
それから、もう一つ、実は前段の苦情処理の部分につきまして、行政の方が今まではやるということになっていたわけです。証券取引法に仲介という規定がございまして、行政がそういう仕事をやっていたわけですが、今回のビッグバン、あるいは金融庁の組織改正の一環で、行政の方の証取法の仲介の章は全部削除されたということでありまして、専ら証券業協会がこれを担当していると、こういう姿でございます。
次に、資料2が苦情・処理の体制、内部組織でありまして、1.が斡旋委員。全国に35名の法律専門家、34名は弁護士さんということであります。それから、2.と3.が事務局スタッフでありまして、これは前段の方をやりながら、後段の事務局を行うと、こういう職務であります。
資料3をお配りしておりますが、これが、どれだけの案件があったかという表でありまして、平成4年から並べております。苦情相談等、上の方は大変数が多いわけでありますが、斡旋・調停というのは非常に少なかった。それで、この「あっせん」、「調停」となっておりますのは、下の方が、昨年11月まではいわば2審制になっておりまして、1人の斡旋委員が行い、それで不満であれば3人の調停委員会に持っていくとやりましたけれども、今度の法律改正を機に1審制に、斡旋制度だけにしております。数は、先ほど申しましたように極めて少ないわけですが、「あっせん」のところの11年度を見ていただきますと、4、6、10というふうに上がってきております。
斡旋のイメージを見ていただくために資料4を用意いたしまして、今申し上げました昨年12月から斡旋が増えておりますが、ここに7件、成立したものが並んでおります。これは後で御覧いただきたいんですが、御注目いただくのは、紛争解決の時点と斡旋の受付の時点がどのぐらいかかっているか。これが大体2カ月から4カ月という数字になっています。
それから、請求金額、どんな金額を処理しているかということでありますが、ここにありますように少ない金額が多いわけですが、最近の事例は、
8,300万の請求額に対して 7,420万という支払いが斡旋案として出て、これが認められた、両方が合意したと、こういうケースでありまして、先ほど申しましたように、少しずつこの斡旋手続が進んでくるのではないかというふうに思っております。
それから、今まで申し上げましたのは、主として証券会社を巡るものでありますけれども、銀行等も特別会員ということで協会のこの手続に入ってくるわけでありますが、先ほど銀行の団体の方からそれぞれ御報告がありましたけれども、前段のところは全部業界団体の方に委託をしております。それから、斡旋の方は、これは協会がやるということになっておりますが、今までそちらサイドのものは1件もございません。これから投信の販売等、そういった価格変動商品が銀行でも取り扱われることが多くなりますと、こういったところが少し変わってくるかと思います。
それから、今後の課題のところをちょっと申し上げますと、まず、制度をもっと利用するようにしてもらわなければならない。先ほどPRということがありましたけど、投資家に対する広報の問題。それにつきましては、今飛ばしましたけれども、資料5で、これは協会のホームページでありますけれども、こういったものを使って周知を図るとか、その他いろいろな努力をいたしております。
それから、今後の案件処理に基づきまして、斡旋委員の増員とか、事務担当者の研修を進める。その体制整備が必要であります。
次に、会員の意識の改革というか、そういったことが必要だと思います。先ほど申しましたように多くの苦情処理がこういうふうに集まるわけでありますけれども、証券会社はやっぱり話を聞くと、自分が非があるということになりますと、個別で処理をしていくという気持ちがあります。それは、それを促せばそれなりの効果を持つわけでありますが、それでない、自分の方が非がないというのであれば、最近のガバナンスとか、代表者訴訟という関係もあるものですから、徹底的に訴訟で争うと。ですから、この中間のところというのは、余り自分のところはやりたくないよという姿勢をとる会社もあるわけであります。そのあたりの分担の問題、これは今後、この委員会の仕組みの問題としてあるんだろうと思いますが、それをどういうふうに整理していったらいいか。
それから、今度は顧客の利用を促進する。それから、最近は司法制度全体のあり方も議論されていますけれども、私的な処理ができたときに、それを少し促進させるかどうか。アメリカの方は、前に私はこの部会でも申し上げた記憶があるわけですけれども、証券会社と顧客が契約をいたしまして、紛争が起きたら必ずプレ・ディスピュート・アービトレーションクローズということになっておりまして、必ずそういったものを利用してまず解決しろという義務をかけるということをやっております。そういったことは、もちろん体制設備も必要ですけれども、そういったことが一体日本で許されるのかどうか、こういった問題があると思います。
それから、もう一つ実は問題点がございまして、一部の行政の方にもあるわけでありますが、こういった苦情処理が来たら、そこはやっぱり苦情の中にルール違反があれば、それをルール違反という処罰の方に使う材料にしろという議論があるわけですね。これは非常に微妙な問題があります。これは要するに、斡旋制度でも、苦情相談でありましても、守秘義務というのをかけております。それを一般のルール違反の摘発に結び付けるかどうか、そこのところは一つの制度の問題としてあるだろうと思います。
最後に、時間を縛られていて申し訳ありませんが、資料6というのを用意いたしました。これはアメリカの紛争処理の現状でありますが、まずアメリカは、実はSEC自体に、そこはあえて、翻訳じゃなくて、英語でそのまま書いてありますが、Officeof
Investor Education and Assistace
という部局がございまして、そこがまずコンプライントとインクワイアリーを受け付けるという制度になっています。そこで処理をしていくということでありますが、その3分の1が苦情だと、こういうことでありますが、アメリカで実は一つ非常に重要な点は、この苦情の処理が、証券会社とか業者の扱いが悪いという問題のほかに、やはりディスクロージャーについて発行会社に問題があるというのが相当数多いということです。1万
7,000の中の55%がブローカー・ディーラーに関する問題。それから、21%がイッシュアーに関する問題ということであります。これからディスクロージャーを非常に重視をして、そこで運営をしていこうという考え方でありまして、私の思うところ、このイッシュアーに対する苦情の受付というのは、今、日本の制度の中にはないんじゃないかと思って、これは一つ重要なポイントだろうというふうに思います。
それから、その次は、SECがコンプライアントとか、インクワイアリーもそうですが、一度受け付けまして、それを振り分けるわけですね。自分のところで処理するものもありますけれども、例えばNASDに処理しろというふうに振り分けるものもあります。それからもちろん、自主規制機関そのものが受け付けるというのもありますが、ここで2の方が「自主規制機関における紛争処理の内訳」でございまして、これは実は、全体がどうなっているかを見るために古い統計になっておりますが、アメリカでは、証券業協会に当たるNASDだけでなくて、ほかの取引所等もそういうことをやっております。ただ、NASDが大体8割をやっているということであります。
それから、NASDの制度でありますが、もちろんアービトレーションという、これはむしろ日本の言葉では「仲裁」と言う方がいいと思うんですが、そこでどのくらいなケースがあるということなんですが、3段目を見ていただきますと、斡旋手続というのが、実はこれは相当結果として強制力を持たせているものですから、それが一つ。結果について、こういう事案があったということを公表することが原則になっています。その二つがあるんだと思いますが、アービトレーションを利用しましても、最後までいかないで、ここで和解で処理されるというのが3段目であります。相当多いということであります。
それから、もう一つ、(注)に Mediationと書いてありますが、これが実は私どもの上段と下段の中間ぐらいな領域の問題でありまして、つまり両当事者の話し合いを持たせるわけですね。それはNASDの専門家がやるわけですが、自分では斡旋案を出さないんですね。お互いに話し合いにさせて、そこで合意を取り付ける。ただ、しかし、統計によりますと、このメディエーション手続を選ぶと、その結果8割ぐらいのものがそこで妥結するというふうに書いてあるんですね。ですから、こういう制度というのも一つの方法としてあると思います。だけど、このメディエーションと私どもの斡旋と、それから、アービトレーションを使ったけれども、調停で処理されるというものが多いということと、正規のアービトレーションと。そういったあたりをどういうふうに整理していったらいいかなというのが今後の問題じゃないかと、ちょっとそういうふうに思いますので、あえて用意をいたしました。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
そして、最後になりましたけれども、投資信託協会。
○杵淵オブザーバー それでは、簡単に申し上げます。
結論から申し上げまして、当協会に対する苦情件数はそれほど多くございません。これは当協会が自主規制機関としての商品や運用の自主規制機関が主であって、この分野に対する苦情が少ないということが理由として挙げられると思います。
当協会における業務の一つとして苦情処理が加わりましたのは、昨年の12月の投信法改正のときでございまして、比較的最近のことでございます。そこにお示ししました資料の最初のページにございますように、投信法53条が先般改正されました。御覧のとおり、当協会は日証協さんのように紛争処理機能は持っておりません。苦情処理だけを行うことができる。これと並行しまして、法改正と同時に、投信協会のルールも改正いたしまして、その資料下段にございますように、理事会の申合せ事項3号で、協会にそれにふさわしい苦情処理の窓口を置くといたしまして、現在では協会内に広報部内で、3人体制で苦情処理をしております。
その件数でございますが、昨年12月の制度発足から本年8月までの相談や苦情の件数を記してございますが、合計で48件でございます。そのうち、投資信託の制度や仕組みに関する相談や問い合わせが23件でございまして、いわゆる苦情に該当するものが25件となっております。苦情について、4分の3ぐらいが販売・勧誘に関するものでございまして、4分の1くらいが運用に関するものとなってございます。
問い合わせの方でございますけれども、大体の問い合わせが投資信託制度やファンドの仕組みに関するものとなってございます。販売・勧誘についての苦情は、受益証券説明書やその運用報告書を交付しなかったという苦情と、説明義務や適合性の原則の違反につきましての苦情が主なものとなってございます。さらに、説明義務についての件数が多いことが、相対方式で販売されるパッケージ商品の性格を反映しているものと思われます。開示文書の交付がなされなかったという事例でございますけれども、これは旧投信法下では交付義務についての規定がはっきりしておりませんでした。しかし、今度の新法下では交付義務についての規定が整備されましたので、交付についての件数は減少するものと思われます。その他の苦情では、受益証券の本券を受け取らなければ購入しないつもりでいたのに、実際に月次報告形式であったという特殊な事例もあれば、ファンドのリスクやクローズド期間の説明がなかったが、損失を取り戻せるかというふうな苦情もございました。その他、表には数少ない事例でございますので出ておりませんけれども、日本の投資信託であるとの説明で買ったところ外国籍投信であったとか、あるいは運用報告書の内容が不適切であったとかいう苦情がございました。これはほとんど説明義務に関することでございまして、こうしたところに投資信託の複雑な商品性が現れているものと思われます。
一方、運用に関する苦情でございますが、短期決算ファンドで安全であるとの説明で購入したんですけれども、ファンドが元本割れしてしまったことでございますとか、あるいは、毎月分配型であるのに、基準価格によってファンドが分配しなかったことはおかしいというふうな苦情がございました。これらは運用に関する苦情とは申しましても、運用会社である委託会社の信任義務を問うというふうなタイプの苦情ではなくて、むしろ商品の仕組みでございますとか、説明義務に関するものであるように思われます。
以上、協会に寄せられました苦情と比較しまして、裁判ではどのような事件が取り上げられているかについて、若干御紹介申し上げますと、一般的な証券訴訟は、およそ二つのカテゴリーに分けられるんじゃないか。
一つは、無断売買などの専ら約定に関する訴訟でございまして、これは投信についても起こり得るかと思われます。
二つ目のカテゴリーは、勧誘方法に関する訴訟でございまして、相対方式で売られる投信にとっては、こちらの方が重要かもしれません。勧誘方法に関する訴訟では、受益証券説明書を交付しなかったという開示に関するものと、説明義務や適合性原則違反に関するものが主なものとなっております。受益証券説明書の交付義務については、その交付の不徹底が問題の背景としてあるものと思われます。他方、説明義務や適合性の原則については、やはり投信商品の複雑さに由来するものと思われます。例えば、リスクの説明に関連して、原告は安定運用をしたかったのに、被告の説明が不足のためにリスクの高い商品を買ってしまったというような訴訟があるのを聞いております。
こういうふうにして見ますと、裁判で取り上げる事件の類型と、協会に対する苦情処理の事件の類型は極めて似ております。つまり、ともにディスクロージャー交付の不徹底に関するケースがあることと、それに投資信託というパッケージ商品の複雑さから、説明義務や適合性違反のケースがあるのではないでしょうか。
当投信協会に相談や苦情が寄せられる形態は、いずれの業界とも似ておりまして、ほとんど
100%電話でのアクセスでございます。今のところ、協会に対する苦情は25件は今までのところ、申立てから数日、あるいは1週間程度で解決しておりまして、長期間にわたって紛争となっているものは存在してございません。
また、苦情に対する他の対処でございますけれども、当協会では案件を処理いたします過程で出てきた建設的な意見をできるだけ採用する方向で努力しておりまして、例えば、今年の5月に協会から各社に対して苦情の内容についての説明いたしまして、これを周知徹底している。協会で作成した、一般に配布しております投信ガイドブックでは、投資家からの苦情や相談として出された意見を参考にいたしまして、いわゆる投資家に最も知っていただきたい重点事項を新たに盛り込んで作成をしている。また、投信類似商品が数多く販売されるようになってきておりますが、これがお客様から照会がございますので、投資家の注意を喚起するために新聞広告を日証協さんと共同で行っているところでございます。
パッケージ商品であります投信を買う一般投資家の多くはアマチュア投資家でございまして、説明義務に関する紛争が多いのはそのためだと思うのでございますけれども、こうしたアマの投資家からの苦情を専門的な自主規制機関の立場から受け付けるという意味では、投信協会は適した裁判外紛争処理制度であるかもわかりません。
時間がもうございませんので、これで終わります。
○蝋山部会長 どうもありがとうございました。
大変時間を急いてしまって申し訳ありませんでしたけれども、ただいまちょうど12時であります。本来はここで解散する時間であるわけですが、15分ほど頂戴して、今まで御説明を受けた内容、もちろん事務局の説明も含めて、委員の皆さんからの御意見を頂戴するということにしたいというふうに思います。
非常に限られておりますので、一番言いたいことを、お一人につき、まずお一つお願いしたいというふうに思います。そして、この問題については、特に原さん、あるいは高橋さん、言い出しっぺの1人でありますので、どうぞ、まず原さんから。
○原委員 30秒で、一言だけですが、それぞれの業界、よくわかりましたけれども、事実認定というところが一番ポイントだと思うんですが、これのレベルというのが何か皆さんお持ちなのか、それとも、ケース・バイ・ケースでそのあたりはやっていらっしゃるのかどうか。別に今日の回答でなくても構いませんけれども、そこをもう少し教えていただきたいと思います。
○蝋山部会長 皆さん全員にお聞きになるわけですか。
○原委員 はい、そうです。特に保険と証券業です。
○蝋山部会長 事実認定に関するレベル。
○原委員 そうですね。多分、神田先生も先ほどおっしゃっていましたけれども、事実認定のところが一番大きなポイントになると思うんですね。そのときに、事業者側はある程度きちんと記録を持っていらっしゃると思うんですが、消費者のレベルの記録というのを、どのあたりまで求めていらっしゃるのかということです。
○蝋山部会長 はい、わかりました。
高橋さん。
○高橋委員 保険会社のオブザーバーの方にお伺いしたいんです。まず石橋オブザーバーに、裁定委員会に関してお伺いしたいのですけれども、まず受付手順として、両当事者いずれかから裁定委員会への付議申立てがあった場合に、それを上げるかどうかを決めるのは誰なのか。全てが上がるということではないようなので、どういう手順で決められるのか。
少し取材させていただいたところでは、とことん話し合いが行われていないという理由ではねられるというふうなことがあるとか、裁定になじまないということではねられるということで、現実に上がっていないケースもかなりあるようなんですね。
過去3件の取扱いの案件は、全て告知義務違反ということなんですけれども、裁定委員会は告知義務違反は扱わないんじゃないかと、そんなイメージにも考えられてしまうのですけれども、取り上げる基準等をもう少し御説明いただきたいというふうに思います。
それから、損害保険の方の関連で森オブザーバーにお伺いしたいんですけれども、今日は自動車保険の方を中心にお話しいただきましたけれども、損害保険協会には、1965年に発足した損害保険調停委員会というのがございますね。損害保険相談室とか、先ほどの自動車保険の請求相談センターで解決できない苦情については、調停を行う役割というのを担っているはずなんですけれども、制度発足より1件も実績がないということなんですけど、この1件も実績がないということについて、どういうことなのか、お話をしていただきたいと思います。
以上でございます。
○蝋山部会長 ほかに質問の形態で、ございますか。こういう点を、今の高橋さんのようにお尋ねしたいというようなことで。
吉野さん、どうぞ。
○吉野委員 費用の負担の問題なんですけれども、イギリスの場合も、多分日本も、最初は顧客の負担なしということは非常にいいことだと思うんですが、結局はそれがどこかの手数料の負担とか、全体の預金者なり生命保険の加入者にいくことになるとは思うんですが、その場合、例えば外資系の団体とかいろんな団体がある、正会員とか準会員のある信託協会さんのような場合、負担が公平に行われているのかどうか、それがまず一つです。
あとは感想ですが、インターネットとか何かを使えば、もっとやっぱり苦情が来るのではないかと逆に思うんです。
○蝋山部会長 ほかにございますか。
神田さん、どうぞ。
○神田委員 今の御質問の形をとりたいんですけれども、先ほど言い忘れたんですが、イギリスで金融サービス市場法案で制度化する一つの大きな理由は、従来任意加入だったものを、強制加入というんでしょうか、金融サービス事業者は加入しなければいけないということにするという面があるんですね。従来からバンキング・オンブズマンも任意加入ですから、全銀行が加わっているわけではないんですね。日本も先ほど御説明ございましたように、例えば銀行の例で言えば、任意加入だと思うんですが、私も民間レベルで制度を構築するというのは、それがうまくいけば非常にいいと思うんですが、任意加入の問題を、入ってこない業者があるという問題をどういうふうに解決したらいいかについて御意見いただけたらと思います。
○蝋山部会長 能見さん、どうぞ。
○能見委員 今の神田さんのに少し関係するのですけれども、業界でそもそも加入してないのはどうするかという問題はある意味で根本的ですけれども、今日のお話を伺っていますと、加入していても、銀行の、全銀協のがそうだったと思うんですけれども、要するに業者側がADRといいますか、手続を受け入れるかどうかのところに自由度が残されているかどうかという問題ですね。
それで、全銀協はなかなか意欲的にだんだんできてきているわけですけれども、銀行の方でもって、「いや、これはもう訴訟で争うんだ」という態度を示すと応じなくていいという形になるわけで、これもADRというものを前置して、そこでもって効率的に解決できるんだったらそこでやるという方針をとるのであると、やっぱり強制前置というんでしょうか、そういう立場をとることが一つの立場としては考えられる。イギリスのオンブズマンの制度というのは、そういう立場をとっているんだと思いますけれども、そこら辺をどういうふうに構築するかというのが一つの問題で、銀行の場合には、日本の場合には、そこを少し逃げているという感じがしました。もし何か御意見があれば伺いたい。
○蝋山部会長 それでは、今幾つか質問が出てきたと思うんですが、まず、原さんから出されました事実認定のレベルという点について、全部の方からお話を伺うのは大変ですので、代表として、例えば生命保険、それからどうですか、証券の方で。よろしくお願いします。
○石橋オブザーバー それでは、生命保険協会の方でお答えをさせていただければと思っております。
原さんの事実認定のレベル、ケース・バイ・ケースなのか、一つの基準があるのか。それから、お客様との関係で、それをどういうふうにしているのかという御質問だというふうに理解をさせていただきますと、私ども協会の方でマニュアルを作っておりまして、「相談・苦情対応基準」というものを持っておりまして、先ほど御説明しましたように、本部だけではなくて、全国54カ所で相談・苦情を受けておりますので、一つのスタンダードをきちっとしておきたいということで、今申しましたマニュアルを作っております
そのマニュアル、例えば一つその中で、今の具体的な事実関係について、あるいは事実認定についてどうかということで、例を挙げさせていただければと思っております。
御契約が十分に納得いただけるかどうかということについての争いの場合のケースなんですが、マニュアルによりますと、こういうふうになっております。お申し出時点がいつだったのか、契約直後なのかどうなのか。それから、募集時点での資料が会社の作成資料だったのかどうなのか。あるいは、お申込書、それから、被保険者の方からいただいております告知書、署名、押印が、これが事実関係どういうふうになっているんだろうか。このあたりの事実関係をきちっと積んでまいりますし、それから、高橋委員、原委員、お詳しくいらっしゃいますけれども、御契約のしおり、あるいは約款を必ず御契約者の方にお渡しをすることになっておりますので、その印鑑の確認。そして、それはどういう形で押されているのかどうかということ等確認をさせていただくということ。これが一つの例でございます。当然そのほかの項目、分野になってまいりましても、事実認定ということが一番大事でございますので、当事者である、セールス・レディが取り扱った場合にはセールス・レディ、そして、その上の我々の拠点長と言っておりますが、その人間、そしてお客様、きちっとそれぞれのところから事実関係を聞き、また、対面をさせていただいて、事実関係の認定等をしております。
それから、あと、記録がどういうふうになっているかということにつきましては、先ほどの説明とも関連してまいりますが、私ども、御契約のしおり、それから、約款をお渡ししているかどうかについて、押印等々チェックができる体制になっておりますので、それを私どもの方に全部保管をしております。
ただ、難しいのが、それは押した覚えがないとか、そういうところが現実の話になっておりますが、事実関係としてのレコード・キーピングという面では、その部分についてはされているつもりなんですが、大変広い分野に苦情、あるいはお申し出がありますので、全てが全てきちっと文書が残っているかどうか、「言った」「言わない」のところの問題は出てきておると思います。ただ、いろいろ御指導いただいておりますので、そういう中で必ず文書を残す努力をする。そして、御契約者の、あるいは当事者の確認の印をいただくという努力の徹底を、近年、大変厳しい形の中で努力をしているつもりでございます。
事実関係のところだけでよろしゅうございますか。後ほどもう一つのものを。
○蝋山部会長 ありがとうございます。
関さん。余り細かな説明は、また何らかの方法でしていただくとして、基本的なところだけよろしくお願いします。
○関オブザーバー
先ほどお配りした資料4というところに斡旋の成立事例がありますが、その真ん中に書いてあるのは、申立人がこういうことを言っているということで、斡旋案のベースにどういう事実関係を認定したかというところが御質問の趣旨だと思うんですね。
それで、業者の記録保持義務とか、そういったものは取引ごとに全部決まっておりますので、そういったものについては関連の事案の資料というのは、先ほど申しましたように必ず資料として提出してくださいということになって、応じる義務がある。それを持ってくるわけですね。
しかし、両方の主張が非常に一致しないと、どうやっても一致しない。特に「言った」「言わない」とか、そういう話になるわけですから、これはとても、幾ら進めても合意が取れそうもないというときは、規則上も、斡旋打ち切りということになります。それから、両方で歩み寄って両者が合意すれば、それがこの解決の事実関係になるわけで、それが客観的な事実であるかどうかということは問わないというのが、この制度だろうと思います。
問題は、だから、その歩み寄りをしてどの程度を前提に考えるかという、そこのところは、何か抽象的な規則を設けているということでなくて、やはり私どもの制度では、お願いしている斡旋委員の先生の知識・経験、そういったものによっているということだと思います。
ただ、これは日本の場合はまだこの程度ですけど、アメリカは斡旋委員、先ほどのメディエーション両方含めて、委員の仕事をする人というのが
7,000人以上リストに載っているそうです。そうなりますと、やはりその人たちをどういうふうに教育するかという問題もまた大きなNASDの仕事になっているというのが現状だと思います。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
とりあえず、原さん、今の御説明でよろしゅうございますね。
続きまして、高橋さんから、生保の場合の裁定委員会に付議する是非を問うのはどなたなのかという、その点については一言だけお願いしたいと思います。
○石橋オブザーバー 苦情申立ての件数に比べまして、先ほど御説明しまして、また、御指摘いただいておりますように3件ということでございまして、それも全て告知義務違反に関するものでございます。
一言付け加えさせていただきますと、申立てをいただいて、苦情の途中では、必ずその段階で、こういう制度がありますということは、お申立てをされた方々には御説明をし、また、ビラも用意しているわけなんですが、現実の処理がどういうふうになっているかという御質問だというふうに思います。十分にやはり事実認定から始まって、それから、それぞれの立場の両方のサイドからのお話を聞いた上で、実際にどういう処理をするかといいますと、事務局でございます相談所の課長、そして所長が、まだ十分に双方の意見が調整できてない等の判断があるときに、まだ上がってこないという形でございますが、我々としては全てについての分野を拒否しているつもりではございませんが、ただ、まだそういうような声があるということであれば、やはりもう少し幅広い体制をとる努力はしていかなければいけないかなというふうに思っております。
○蝋山部会長 所長や課長だということですね、答えは。
○石橋オブザーバー 実際のフォーマルな言い方を申しますと、裁定委員会が受けるかどうか、裁定委員会に上げるかどうかという判断は裁定委員が決めると、委員会が決めるということでございます。ただ、その下段階としての事実のところの話をさせていただいた次第でございます。
○蝋山部会長 まあその点はあると思いますが、是非はともかく、事実はそうなっているということ。
損害保険の方では調停委員で実績が全然ないという理由については、何か森さんの方から一言ございますか。
○森オブザーバー 協会では損害保険相談室と、そして調停委員会は置いておりますが、おっしゃるとおり実績ございません。
ただ、実績ないことに対するコメントは、別に協会が出しているわけじゃないので、私見でございますので、間違っていれば後日訂正いたしますけれども、二つあると思います。
一つは、そもそも協会に持ち込まれる相談案件、苦情案件の全体が年間
8,000件強でございますが、そのうち明らかに苦情というのが 100件ぐらいでございますので、少ないということがある。なぜ少ないかわかりませんが、私なりに推測しますと、各社でできるだけ努力して、苦情がそちらへ行かないように、自分たちで解決しようという、いい意味ではCSが進んでいると、悪く言えばそういう各社の目に触れるようなところに恥ずかしいことを持っていかないように努力しているということかもわかりません。
もう一つ、事務局も、調停に行かないように、苦情案件は相談の段階で各社の窓口と連絡をとって指示したり、調整したり、斡旋なども行っていますので、事務局努力も、できるだけ調停に行かないようにしているというところも、いいか悪いか別にして、あるのではないかというふうに思います。
以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
最後に、銀行の一番大きなところから御説明をお願いして。特に神田さん、能見さんから御質問があった点について、御用意があれば、よろしくお願いします。
○野田オブザーバー 強制加入・任意加入ということで御質問がございました。確かに私ども全国銀行協会は任意団体でございますので、確かにそこのところの限界はあるわけでございますけれども、この4月から私ども全国銀行協会と各銀行は、直接加入ということに。従来は各銀行協会に加入して、それの連合体として全国銀行協会連合会として機能していたんですけれども、4月から直接加入ということに改めましたものですから、4月以降、外銀さんを中心として新規の加入ということが増えました。現実にリーテイルをやっておられる外銀さんというのは、基本的には全て加入いただいたというふうに理解しておりまして、事実上、リーテイルの部門については全ての銀行がカバーされているのではないかという認識におります。
それから、もう一つ、仲裁センターの利用につきまして、銀行サイドに自由度があり過ぎるのではないかという御指摘だったと思いますが、その場合、明らかな理由、合理的な理由がないと仲裁センターに持ち込むということにしておりまして、その合理的な理由については、別の細則におきまして、銀行から書面でその理由をきちっと求めるということを決めておりますので、今後、運用の問題は確かにございますけれども、今後10月以降、この辺をきちっと運用していかなきゃいかぬわけですけれども、現在のところ、私ども検討段階では、これで各銀行の自由度というのは相当制限されているという認識の下に、そういう規定を設けたわけでございます。
以上でございます。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
苦情処理に関わる様々な費用の負担という点については、それぞれのアクティビティごとに全銀協の会計制度というのは、原価計算ができて、それが幾らに、どういうふうに振り分けられているか、こういうことはフィジブルですか、それともとても難しい話ですか。
○野田オブザーバー(橋本業務部長) それは全体の予算の中で、このための費用ということでとっておりますので、そのもとになる各銀行の費用負担というのは別なルールで決まっておりますので、そういう意味では、案件ごとにそれぞれシェアを決めてやっていくということはやっておりませんので、この件については一般会計で負担しているということになります。
○蝋山部会長 吉野さん、一応事実としてよろしゅうございますね。
大変時間が限られた中で、非常に豊富な情報を提供していただいた。このために時間が20分近くも延長して、大変すみませんでした。私の司会の不手際ということもありますが、お許しください。
この問題は、今後、今日いただいた情報をベースに、我々の議論の中にどういうふうに発展的に吸収していくかという一つの課題を提供していただけたのではないかというふうに思います。イギリスのオンブズマン制度も含めて、今後の我々の議論の中で有効に生かされることを希望したいというふうに思います。
それでは、次回の日程につきまして、簡単に乙部さんの方からお願いします。
○乙部債権等流動化室長 次回の日程は、9月22日(水曜日)午前10時から開催いたしたいと思います。テーマは、第一部会「中間整理(第一次)」に対して寄せられましたパブリックコメントの概要を御紹介させていただきますとともに、第一部会の今後の運営等につきまして御審議いただくことを予定しております。
○蝋山部会長 ということでありますので、よろしく9月22日、御参集いただきたく思います。いわば中間整理後の、実際上は中間整理を踏まえて第1回の会合ということに事実上はなろうかというふうに思いますので、今後積極的に、いわゆる金融サービス法の制定に向けての議論を展開していきたいというふうに思います。
今日はどうも、時間を延長いたしまして申し訳ありませんでしたが、ありがとうございました。
散会いたします。
(以 上)