金融審議会「第一部会」第18回会合議事録
日時:平成11年11月30日(水)10時00分〜12時02分
場所:大蔵省本庁舎(4階)第四特別会議室
○蝋山部会長 それでは、時間も過ぎておりますので、第18回の「第一部会」を開催させていただきます。
お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。11月の最後でありますが、12月も本当に師走で、たくさんまだ金融審議会の予定は残っておりますが、相変わりませず御参集をよろしくお願いいたします。
今日は、議事次第にありますように、三つ問題があります。初めに、「集団投資スキームに関するワーキンググループ」における検討結果の成果を御報告いただきます。また、前回のこの第一部会で議論いたしました裁判外紛争処理制度に関しても御検討いただきたく思います。さらに新たな話題ですが、新聞報道等でも御承知のように、証券取引所の株式会社化という問題を第一部会で引き受けることにいたしました。こういう三つの議題を予定しておりますので、どうかよろしく活発な御議論をお願いしたいと思います。
早速、最初の議題であります集団投資スキーム法制についての審議に入ります。
本日は、これまで専門的な検討を行っていただきました「集団投資スキームに関するワーキンググループ」から、集団投資スキームという仕組みの法制化の問題についての検討の成果の御報告をしていただくということになっております。
まず、審議に入る前に、ワーキンググループのとりまとめた資料である「横断的な集団投資スキームの整備について」という資料の18−1を事務局から読み上げていただきます。続いて、このワーキンググループの進行役を務めていただきました神田委員から御発言を願い、その後、審議ということにさせていただきたく思います。
それでは、稲本さん、よろしくお願いします。
○稲本補佐 それでは、資料の方を読み上げさせていただきます。資料番号18−1及び18−2でございます。
横断的な集団投資スキームの整備について
−「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」及び「証券投資信託及び証券投資法人に関する法律」の改正−
(平成11年11月30日) (集団投資スキームに関するワーキンググループ報告)1.当ワーキンググループは、多数の投資者から資金を集めて市場で専門家が管理・運用する、いわゆる集団投資スキームについて、金融審議会第一部会からの委託を受け、具体的な法整備に向けて専門的・技術的な検討を中心として6回にわたり審議を行い、
? 資産流動化型スキームについて、「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(以下、「SPC法」という。)を改正し、投資者保護に配意しつつ法制の簡素・合理化を図ることにより使い勝手のよい制度に改めるとともに、流動化対象資産を拡大し流動化の器として信託も利用可能とすることにより幅広く利用できる法制とする。
? 資産運用型スキームについて、「証券投資信託及び証券投資法人に関する法律(以下、「投信法」という。)を改正し、不動産を含めた幅広い資産に投資運用が可能となるよう横断的な法制とする、
ことが適当であるとの結論に達した。
審議内容は各般にわたっており、それぞれの論点に関する検討結果は別紙に記載するが、法制整備の基本的方向は以下のとおりである。
2.資産流動化型スキームは、特定の資産を企業本体から切り離し、そのキャッシュフローや資産価値を裏付けとして投資者に証券等を発行することにより流動化を図るという、資金調達のための仕組みである。
そのひとつの制度であるSPC法は、指名金銭債権及び不動産等を特定目的会社(以下、「SPC」という。)を利用して流動化するものであり、特定資産を投資者の唯一の拠り所とする資産流動化の特質を踏まえてスキームの変動防止のなどの投資者保護の枠組みを定める一方、流動化の器としてのSPC自体は簡素な組織になるよう制度化されている。
SPC法については、資産流動化型スキームという現行法の基本的性格を維持しつつ、以下の方向で法制の簡素・合理化を図り、より使い勝手の良い制度とすることが適当である。
SPCの最低資本金制度の見直し
SPCの発行証券の商品性の改善(優先出資の途中減資、優先出資の無議決権化、転換社債・優先出資引受権付社債の発行等)
借入金制限の緩和(特定資産取得のための借入金)
資産流動化計画に関する規制の簡素・合理化(定款記載事項からの除外、反対者の買取請求権を前提とした特別多数決による変更等)
特定社員の影響力の制限(特定出資に関する特別の管理信託等)
SPCの登録制から届出制への移行
また、流動化対象資産を幅広く拡大するとともに、流動化の器として信託も利用できるようにして、柔軟な法制とすることが適当である。
3.資産運用型スキームは、投資者から集めた資金を合同して専門家が各種資産に投資運用し、その利益を投資者に配分するものであり、資金運用という金融サービスを提供するための仕組みである。
その代表的な制度である投信法は、有価証券の発行により広く一般投資者から資金を集め、これを、信託又は投資法人という器を利用して、主として有価証券に投資運用するための法律であり、利益相反や運用リスク等に対して投資者保護を図る観点から、投資運用業務を担当する会社の適格性確保等のための兼業制限や認可制による検査監督、利益相反による弊害防止のための情報開示、一定事項の禁止、投資者や外部の第三者によるガバナンスの確保等を定めている。
横断性と自由度の高い法制の整備により金融のイノベーションを促進して多様な金融商品の開発が可能となるよう、投信法について、「主として有価証券に対する投資として運用する」という規定を改正し、不動産を含めて幅広く投資運用できるようにするとともに、信託を利用したスキームについて外部の運用会社が運用指図する仕組みに加え、受託者たる信託銀行自らが運用する仕組みも整備することが適当である。
同時に、これによって生み出される新しい金融商品が我が国金融市場に定着し発展していくためには、透明性・公正性の高い仕組みとして広く一般投資者に受け入れられることが不可欠である。資産運用型スキームの投資証券の信頼性はひとえに運用会社にかかっているといっても過言ではなく、法制整備に当たっては、内外の過去の歴史の教訓を踏まえて透明性・信頼性の高い仕組みとするため、運用会社の在り方をはじめとする投資者保護のための現行法の枠組みを基本とした上で、投資運用対象資産の拡大等に伴う制度の整備・改善を図ることが必要である。
その際、投資者保護の実効性やスキームの円滑な運営が確保されるよう、すべての資産に共通するルールを形式的に規定するのではなく、対象資産の特性や取引市場、取引慣行を踏まえた対応を行う必要がある。
4.なお、このように整備される資産流動化型と資産運用型の集団投資スキームが円滑に機能するためには税制上の措置が必要と考えられることから、所要の措置が取られるよう要望する。
5.以上のような不動産を含む幅広い資産をその対象とする資産流動化型及び資産運用型スキームの整備は、金融審議会第一部会「中間整理(第一次)」における集団投資スキームの基本的考え方に沿ったものであり、本問題と並行して第一部会で検討中の販売・勧誘ルールと合わせて、いわゆる日本版金融サービス法の重要な枠組 みを構成するものである。当面の対応としてその実現を期待するとともに、更に 21世紀を展望した金融サービスの在り方を踏まえた金融のルール整備を一層推進することを要望する。
続きまして、資料番号18−2に移らせていただきます。
横断的な集団投資スキームの整備について
・【法制の基本的枠組み】
○ 特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(以下「SPC法」という。)については、特定資産を投資者の唯一の拠り所とする資産流動化の特質を踏まえて投資者保護の枠組みを確保するとともに、流動化の器としての特定目的会社(以下「SPC」という。)について組織の簡素化等を図るという流動化法制の基本的性格を維持しつつ、法制の簡素・合理化を図る。
○ 投資判断の裁量を業者に認める場合には資産運用型の集団投資スキームとして整理し、証券投資信託及び証券投資法人に関する法律(以下「投信法」という。)を改正して、幅広い資産への投資運用が可能となるよう法制を整備する。
I .資産流動化スキーム(SPC法改正)に係る論点
1.最低資本金の引下げ
一般の会社においては、最低資本金は会社財産を唯一の担保とする債権者のための財産的基礎として設けられているが、資産流動化のための単なる器としてのSPCについては、最低資本金を定める必要性に乏しい。
2.1つのSPCによる複数の流動化計画に基づく証券発行
発行される証券と資産の対応関係が不明確となり、投資判断が難しくなったり各スキームの法的安定性が弱まるという問題がある。実務上もSPCの最低資本金引下げや設立手続の簡素化が図られれば、現行の1SPC1流動化計画で支障はなく、また、特定社債に付すことができる担保の範囲が広がれば、相当程度利便性は向上することとなる。このため、一つの流動化計画に一つのSPCを対応させるという現行の仕組みを維持すべきである。
3.組織の簡素化
(1)取締役の義務・責任の緩和
簡素な仕組みであるSPCにおける投資者保護の仕組みである取締役の義務・責任を法的に緩和すべきではない。
(2)監査役の廃止
SPCは取締役が1人でもよいとされていることから、取締役の行為をチェックするものとして監査役は必要である。
4.商品設計の自由度拡大
(1)対象資産の範囲の拡大
金融イノベーションを促進し自由な商品設計が可能となるよう横断性と自由度の高い集団投資スキームを整備する必要であり、財産権を幅広く対象資産とすべきである。
但し、任意組合の出資持分や同一法人の一定割合の株式のようにSPCがこれを取得するとSPCが実質上主体的に事業等を行う結果となるものや、資産運用が行われる匿名組合の出資持分権や特定金銭信託の受益権のように、流動化対象資産に加えると資産流動化型スキームの中で実質的に資産運用が行われるのと同様の効果が生じ、資産運用型スキームに係る規制が回避される結果となるものについては、流動化対象資産から除外する必要がある。このように実質的に資産運用にあたるようなものについては、投資者保護や横断的な共通ルール構築の観点から、資産運用型スキームにより対応することが必要である。
なお、流動化対象資産が不動産・指名金銭債権から幅広く拡大されることにより、資産保管会社の破綻時のコミングルリスクへの対応が必要であり、有価証券等のコミングルリスクの大きい資産については、資産の保管について信託を設定する等の手当てを講ずる必要がある。
(2)転換社債、優先出資引受権付社債の導入
商品設計に柔軟性を付与する観点から転換社債及び優先出資引受権付社債を発行できるようにすることが適当である。
(3)その他
優先出資証券の投資商品としての魅力を高めるため、特定出資者には当初の払込金額を超える残余財産の払戻しを行わず、すべての残余財産を優先出資者に払い戻すこととしたいとの実務上の要望がある。特定出資は流動化の器としてのSPCを設立するために行われるものであることや、あらかじめ資産流動化計画に定めておけば特定出資者に不測の損害を与えることはないため、資産流動化計画の定めにより残余財産の全額を優先出資者に分配できるようにすべきである。
5.行為規制の緩和
(1)特定資産の弾力的処分、追加取得
流動化型は資産が特定していることが前提であり、計画外の弾力的な処分や追加取得は投資者の利益が害される恐れがあるので原則として認められるべきではないが、不動産の流動化の場合、中長期の計画期間内においては、想定し得ない収益力や価格の低下等が生じ、不動産を計画通り保有し続けるよりは早期に売却して資金を回収した方が投資者の利益が保全される場合もありうるので、反対者への買取請求権付与を前提とした特別多数決により流動化計画を変更して資産の処分及び投資者への払戻しができるようにすべきである。なお、計画外の追加取得についてはこのような変更を認める必要性は乏しく、資産運用型スキームで対応すべきである。
(2)借入金制限の緩和
資産流動化のためのSPCの資金調達手段の多様化を図るため、資産流動化計画に記載することを前提に、特定資産の取得のための借入金を認めるべきである。
なお、不動産流動化に関し、予想外の事態により建物の大規模改修が必要となった場合に、流動化計画に記載された借入限度を超えて弾力的に借入ができるようにしたいとの要望があるが、追加的な担保設定等、投資者の利害に直接影響を与えるため、流動化計画の借入限度や使途を超えての借入については投資者の同意が必要であり、反対者への買取請求権付与を前提とした特別多数決により流動化計画を変更して対応することとすべきである。
(3)余裕金運用制限の緩和
不動産の流動化の場合、減価償却費相当額の資金や物件の一部売却代金がSPC内に滞留することから余裕金運用制限の緩和要望があるが、リスク資産による運用は、投資者保護のために運用型スキームの規制を及ぼす必要があり、流動化型では認めるべきではない。SPC内に滞留する資金については、後述(5)の優先出資の減資・払い戻しを可能とすることにより対応すべきである。
(4)優先出資の計画外増資
予想外の事由により必要となる特定資産の価値の維持・向上のための予定外の支出に対応できるよう、反対者への買取請求権付与を前提とした投資者の特別多数決により流動化計画を変更して優先出資発行総額の増額ができるようにすべきである。また、額面発行だけでなく時価発行増資ができるようにすることが必要である。
(5)優先出資の減資
不動産の流動化の場合にSPC内に滞留する減価償却費相当額の資金や物件の一部売却代金について投資者への払い戻しができるよう、優先出資について、流動化計画への記載に基づく減資や、債権者異議手続等の手続に基づく減資ができるようにすべきである。なお、流動化計画に基づく減資であっても一般債権者については流動化計画の記載を知らない可能性があることから、別途異議申述手続を経ることが必要である。
(6)業務委託制限の緩和
SPCは証券化を行うための器に過ぎないため、資産の管理処分の外部委託を義務づけることはやむを得ない。
6.資産流動化計画の簡素化等
(1)定款事項からの除外、記載内容の簡素化
流動化計画は定款記載事項であるため会社設立時に作成する必要があるが、実務上は証券発行直前まで内容が確定できないことが多く(SPCは登録完了後でないと証券の発行ができないが、登録審査の標準的処理期間は2ケ月程度とされている。)、会社設立時の作成には困難を伴うとともに、その後の変更のための事務コストもかかるという問題がある。投資者への情報提供・スキームの変動防止という資産流動化計画の基本的役割を維持しつつ、実務上の要請に応えるため、投資判断の前提として流動化計画には現状通り詳細な情報を記載するが、定款記載事項からは外すとともに、別途、流動化計画違反の行為に対する投資者や監査役の差止請求権を認める規定を設けることが適当である。
(2)計画の公衆縦覧の限定
証券が私募形式や適格機関投資家向けに発行される場合には、証取法でも公衆縦覧によるディスクロージャーは不要とされており、投資者に対する情報の提供は相対により行われればよいと考えられることから、この場合には流動化計画を公衆縦覧しないこととする。
(3)計画の中途変更
流動化型スキームにおいては、スキームの変動防止により投資者保護を図ることが基本となっているが、他方で予め予想しえない事由への対応(上記5(1)特定資産の計画外処分、(2)計画外借入、(4)計画外増資等)の必要が生じることもありうることから、この両者の要請の調整のため、予め定款や信託約款に記載しておけば、反対者に証券買取請求権を付与することを前提として投資者の特別多数決(書面投票を含む。)により流動化計画を変更できることとすべきである。
7.行政庁の関与のあり方
SPCの登録の審査(標準処理期間2ケ月)のため市場の状況に応じた迅速な流動化に支障があるとの指摘がある。SPC法においては登録審査は法令違反の有無のみを審査することとされ、流動化計画の健全性、妥当性は投資者の自己判断に委ねられていること、実際には行政の関与のない海外SPCを利用した証券化商品が国内販売されるケースが多いこと、一般の会社の証券発行は事前登録なしに行われていることに鑑み、登録制による事前審査を届出制に改め、法令違反に対しては事後チェックにより対応することとすべきである。
但し、行政の事前審査がなくなることから、詐欺的な証券発行防止のため届出時点で流動化対象資産の取得が確保されていることを義務づけるとともに、投資者の自己判断に資するよう特定社債の利回り等に加えて、これらの計算の前提となっている根拠もあわせてディスクローズさせることとすべきである。
なお、登録制から届出制への移行は、行政の関与が事前審査から事後審査に変わるだけであり、引き続き金融監督当局が法律に基づき監督することに変わりはない。金融監督当局は一般の会社の証券発行に対する証券取引法の執行体制も含め、事後チェックの実効性があがるよう執行体制の充実に努める必要がある。
8.倒産隔離
(1)特定社員の議決権制限
議決権を通じたSPCへの特定出資者の影響力を限定してスキームの安定性を高めるため、有限会社のように定款で特定社員の社員総会招集権、議案提出権を制限することを認めるとともに、取締役の解任にかかる議案提出権を監査役に限定することを認めることも考えられるが、この場合取締役の欠員への対応が困難となるなどスキームの運営自体に支障が生じて投資者の利益が損なわれることのないようにする必要がある。
(2)倒産隔離のための信託
議決権を通じたSPCへの特定出資者の影響力を遮断してスキームの安定性を高めるため、特定出資者が信託銀行との間で、受託者は信託財産たる特定出資持分を、当初のスキームの変動防止、その他の信託契約で定める目的に従い管理する義務を負う、
委託者はSPCの業務終了まで指図及び信託契約の変更又は解除を行うことができない、という内容の信託の設定ができるようにすべきである。
(3)優先出資の無議決権化
取締役解任権等の議決権を有する優先出資社員の構成が変化しうる状況においては特定社債権者が安心して投資することができないため、オリジネーターが優先出資証券を保有せざるを得ない場合がある。優先出資証券を広く一般投資者に販売できるよう、定款により優先出資を無議決権化できるようにすべきである。
9.信託型スキームの導入
資産流動化スキームにおけるビークル(器)として信託の利用が可能となるよう、資産流動化信託スキームについてSPCと同様の法制度を整備し、当該スキームの信託受益権を私法上及び証取法上の有価証券とすべきである。この場合、投資者保護の観点から、複数の受益者の権利行使関係の明確化が必要であり、受益権を取得した者はその取得により委託者の地位を承継する、
受益者の意思決定について、多数決原理を導入するなど、集団的権利行使のスキームを整備する、
全ての受益者について計算書類等の閲覧請求権を認める、等の措置を講ずる必要がある。
なお、投資者の数が少ない場合や期間が短い場合など、信託受益権を有価証券としない従来のスキームの方がコスト面から有利な場合もあり、幅広い選択肢を用意するという観点から、従来型のスキームも併存させるべきである。
II .資産運用型スキーム(投信法の改正)に係る論点
1.基本スキーム
資産運用型スキームについても会社型と信託型について法整備を行う。
会社型スキーム:資産の器としての投資法人、実際に業務を行う運用会社、資産保管会社、一般事務受託者という構成とする。
(注)不動産ファンドの「運用」は、不動産の売買だけでなく、賃貸や修繕・改装等の管理業務の判断等も含む。「保管」は、不動産を保管するのではなく資産保全という観点から現金や口座等の分別保管を行う。
信託型スキーム:外部の運用会社が運用指図を行う委託者運用型に加えて、受託会社が自ら運用できる受託者運用型も整備する。
(注)受託者運用型は、投資信託委託会社ではなく、信託銀行が投資家から集めた資金を自ら運用する。
2.対象資産等
(1)対象資産の範囲
金融イノベーションを促進し自由な商品設計が可能となるよう、横断性と自由度の高い運用型集団投資スキームを整備する必要があり、財産権を幅広く投資運用の対象とすべきである。
法制の整備にあたっては、既存の資産運用型法制との関係について、過重な二重規制とならないよう配意する必要がある。また、それぞれの資産には特有の性格や取引形態・市場があるので、すべての資産に共通する行為規制を形式的に定めるのではなく、投資対象資産の特性も踏まえた対応を行う必要がある。
(2)ファンドのポートフォリオ等
リスク分散の可能性も含めて商品設計の自由度を広げる観点から、1つのファンドが様々な資産に投資して運用する混合運用もできるようにすべきである。また、ファンドの設計や運用にあたっては、設立したファンドが想定された成果をあげられるよう、適切な投資やファンドのタイプに応じた流動性の手当て等を図る必要があるが、具体的にどのような内容とするかはファンドの内容に大きな影響を与えるものである。創意工夫により多様なファンドの創設が可能となるよう、法令では、適切な投資やファンドのタイプに応じた流動性の手当てを講ずることを求める一般的な規定を設けるとともに、具体的な内容の設定は各ファンドが行い、これを投資者にディスクローズさせることが適当である。
(3)資産の適正評価の担保
組織化された公開の市場による価格形成が行われていない資産について一定規模以上のものをファンドが取得、売却するにあたっては、ファンドの運営の透明性、公正性を確保し投資者保護を図る観点から、SPC法のように外部の者による価格評価の適正手続を義務付ける等の手当てを講ずることが必要である。
オープンエンド型のファンドについては、解約価格や新規投資価格算出のためファンドの資産価値を定期的に時価評価する必要がある。公開市場による価格形成が行われていない資産については、ファンドごとに個別に評価基準を定めて規約に記載するとともに、時価評価の計算根拠等も含めて資産の時価評価額及び解約価格・新規投資価格をディスクローズすべきである。これとは別に、財務諸表の作成については、投資目的の金融資産のように市場価格で売買することで利益を得る目的で保有する資産については時価評価すべきであるが、使用により収益を得る目的で保有する資産については取得原価又は低価法で評価することとする。
クローズドエンド型のファンドについては、常時新規投資価格等を算出する必要性はないが、投資者自らが当該ファンドの価値を判断するに足る時価情報を開示していくことが重要であり、運用報告書等において、財務諸表に加えて、資産の時価を判断するに足る情報も開示することが必要である。なお、不動産は日々の時価評価が困難なほか、流動性が低く大規模な入替えも困難なことから、投資者の意思に基づく追加投資や一部解約等に対応しにくいため、オープンエンド型よりはクローズドエンド型のファンドに馴染みやすいと考えられるが、この場合、投資証券を取引所に上場するなどして一般投資者が随時購入・換金できるようにすることが必要である。
3.ファンドの設立等
(1)設立時の最低規模、常時保持すべき最低純資産額
詐欺的な小規模ファンド設立を防止するため、一定以上の規模とすることは必要であるが、具体的な金額レベルについては商品設計の自由度を阻害しないよう十分な配慮が必要である。
(2)ファンドを設立する者
ファンドを企画・設立する者は、ファンドを適切に設計するとともに適正な運用会社を選択する必要があり、この観点から対象資産に関する十分な知識と経験を有する者に限定する必要がある。
4.ガバナンス
会社型については、投資者が投資法人の社員として規約違反行為の差止請求権や規約変更の議決権等、種々の権利を有している証券投資法人と同様の仕組みとする。
信託型については、現行の証券投資信託では、投資者の帳簿閲覧権と外部の会計監査人の監査が定められているが、他方で商品としての同一性が失われるような信託約款の重大な変更についても投資者の同意なしに変更可能な法制となっている。信託約款の変更は、投信委託会社と信託銀行の合意が必要であることや、投資者や市場の評価を受けることから、現実には投資者の利益を害するおそれのある変更が行われることは稀であると考えられるが、他方で投資者間で評価が分かれる可能性のある変更を行うことは事実上困難である。約款の重大な変更も必要に応じて現実に行うことができるようにするため投資者のガバナンスの仕組みを整備する必要がある。既に、多数の投資者が受益証券を保有しており、新たなガバナンスの仕組みのコストは投資者の負担となることや、約款の変更には受託会社たる信託銀行の同意が必要であり事実上のチェック機能が期待できることも踏まえ、信託約款の重大な変更については公示するとともに、反対者が異議を述べることができることとし、反対者が過半数に達しない場合には変更が承認されたとする手続を導入することとする。また、当該ファンドがクローズドエンド型である場合には反対者には信託受益権の買取請求権を与えることが必要である。
5.発行証券
(1)投資証券
資産運用型スキームにおいては複数の種類の投資証券を発行すれば投資者間の利害対立が生じるため、エクイティ型の発行証券は1種類とすべきである。なお、会社型のクローズドエンド型については、エクイティ型証券1種類に加えてデット型の証券の発行ができるようにすることが望ましい。
(2)オープンエンド型の可否
投資者の選好を考え、随時の払戻が可能であるオープンエンド型の組成も引き続き可能とすべきである。なお、流動性の低い資産に投資するオープンエンド型については、払戻資金の手当てを講ずるとともに、払戻手続や払戻制限等について定め、投資者に対して十分なディスクロージャーを行うことが必要であるが、どのような内容とするかはファンド毎に異なるため、法令では適切な対応を求める一般的な規定を設けるとともに、具体的な内容はファンドの組成者が定めることとするのが適当である。
6.借入制限・レバレッジ規制
個別性の強い資産については、売却のオファーがされている時期を逃すと取得は困難であることから、このような資産に投資するファンドについては、機動的で柔軟な資金調達の道が用意されている必要があり、その手段として借入が行えるようにすることが必要である。この場合、貸し手と投資者の間で利害の対立が生じることがあるので、オープンエンド型ファンドの解約に関する利害調整措置が必要である。
デリバティブ取引に関するレバレッジ規制については、投資者保護の観点から様々な議論があり、投資者に対する適切なディスクロージャーを行えばレバレッジ規制は必要ではないとの意見がある一方で、投資判断の情報として意味があるとともに理解が容易な適切なディスクロージャーを行うことは困難であり規制が必要との意見もある。この問題については各国においても様々な議論が行われているが、未だコンセンサスが得られている状況にはない。当面は、法令レベルでのレバレッジ規制は定めず各ファンドの設計に委ねるとの現行法制を前提に、ディスクロージャーの充実に努めることが現実的である。
7.運用(指図)会社
(1)資格要件
今回整備を検討している資産運用型スキームは、有価証券の発行により広く一般投資者から資金を集めて多様な資産に運用するファンドであり、この新しい投資ファンドが我が国金融市場に定着し発展していくためには、透明性・信頼性の高い仕組みとして一般投資者に受け入れられることが必要不可欠である。資産流動化型スキームは企業の資金調達のための手段であり、その投資証券は裏付けとなる特定資産に支えられているのに対し、資産運用型スキームは、一般投資者から資金を預かって運用するという金融サービスを提供するための仕組みであり、その投資証券の信頼性はひとえに運用会社にかかっている。
このため、資産運用型スキームの運用会社については、投資者保護の観点から各国とも金融監督当局による適格性の確保が図られており、我が国においても投資者保護の観点から、運用会社について、健全な財産的基礎・良好な収支見通し、運用対象資産についての十分な知識・経験や社会的信用を有する人的構成、的確な業務執行体制等を要件とする認可制とすべきである。
(2)兼業制限
運用会社については、投資者との間の利益相反の問題について情報開示や利益相反行為の禁止規定で対処する一方、ファンドの運用に必要な各種情報の入手、有能な運用担当者の確保や経営基盤の強化を図ることができるよう、業務範囲を制限せず、ファンドと同種の投資事業を自ら営むことも含めて幅広い業務が行えるようにすべきとの要望がある。
しかしながら、利益相反のリスクは単に禁止行為を定めることによって防止しうるものではなく、その実効性が確保されなければならない。このためには運用会社の事業や保有資産の内容の透明性が確保され投資者が利益相反の有無を現実にチェックできることが必要であり、この点は、組織化された公開の市場がなく、客観的かつ公正な価格評価が難しい資産を投資対象とするファンドの運用会社においては特に重要である。このため、運用会社は専業制を基本とすることが望ましい。更に、他業の事業リスクを遮断し運用会社の健全性を確保するとともに、適格性確保のための検査・監督の実効性を確保するためにも、運用会社は専業制を基本とすることが必要である。以上の理由から、運用会社は専業制を基本とし、兼業範囲はファンドの運用業務を営むにつき公益又は投資者の保護に欠けるおそれがないと認められるものに限るべきである。また、兼業部分についても投資者に対して透明性が確保される必要があるとともに、ファンドの運用に与える影響という観点から業務及び財産の状況について検査・監督の対象とする必要がある。
(3)受託者責任
利益相反防止のため、ファンド相互間の取引、
運用会社とファンドの間の取引、
運用会社の利害関係者とファンドの間の取引、
ファンドが第三者との間で行う取引であって、投資者の平等を害する行為や運用会社、利害関係者及びこれらの顧客等、ファンドの投資者以外の者の利益を優先する行為、
運用会社又はその利害関係者が第三者と行う取引であってファンドの運用・管理に何らかの関連性を有する取引、等について情報開示義務や一定の行為の禁止等を定める必要がある。
但し、利益相反取引の禁止については、大量に流通し価格・利回り等の条件だけで売買される資産と個別性の強い資産とでは区別して考える必要があり、不動産等の個性の強い資産についてはファンドのパフォーマンスをあげるためには利害関係人との取引等が有益な場合もあり、取引行為そのものを禁止するのでなく情報開示や投資者等のガバナンスの確保により対応することが必要である。
このほか、売買価格の適正性確保のためのアームズ・レングス・ルール、プルーデント・インベスター・ルール、関係者が複数存在する場合の責任関係の明確化等を図る必要がある。
8.資産保管会社
コミングルリスクへの対応や相互牽制の観点から、資産運用会社と資産保管会社は分離することが適当である。また、金銭や有価証券等の即時取得の対象となる資産については、コミングルリスクに対応するため資産保管会社の一定の者に限定する必要がある。
但し、信託勘定については破綻の場合に独立性が法的に担保されているため、受託者運用型について信託銀行の外に更に資産保管会社の設置を義務付ける必要はない。
以上でございます。
○蝋山部会長 どうもありがとうございました。
特に後半の18−2の方は随分長くかかりましたけれども、神田さんから、以上のワーキンググループからの報告についての補足的な御説明をお願いしたいと思います。
○神田委員 詳細は、今読み上げていただきましたとおりでございます。前にも中間的な段階で一度御報告させていただいておりまして、それをさらにワーキングで詰めた結果、以上のような結果としてこちらに報告させていただくことになりまして、その詳細につきまして、さらに私が補足させていただく点はございません。
ワーキングに参加していただきました委員、オブザーバーの皆様には、非常に多くの時間を割いていただきまして、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
あえて1点補足させていただきたいと思いますのは、私どもの集団投資ワーキンググループにおきましては、資産流動化型についても、また、資産運用型につきましても、いずれについても、対象となる資産については幅広くするということを念頭に置きながら、法制度のあり方全般について議論の集約を見ることができました。ただ、これはワーキンググループの中でも御指摘がございましたけれども、今回の制度改正で拡大されるというんでしょうか、その個別具体的な対象資産につきましては、実際問題としては、不動産についてはかなり議論させていただきましたけれども、それ以外のものにつきましては、必ずしも十分な議論を尽くす時間がなかったということを一言だけ付け加えさせていただきたいと思います。
以上です。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
それでは、どうぞ、このワーキンググループからの報告につきまして、御意見あるいはさらなる御注文、あるいは御提案といったものがございましたらお願いしたいというふうに思いますが、いかがでなものでしょうか。
能見さん、どうぞ。
○能見委員 詳細な御報告でいろんなことがよくわかり、ありがとうございました。ただ、私が今、御報告を伺っていて、ちょっと気になった点は、直接の対象は資産運用型のガバナンスなんですが、最初の18−1の方では、2ページ目に御説明があって、2ページの3.の2段落目で、投資者や外部の第三者によるガバナンスの確保を図るということで、投資者によるガバナンスというのが重要だと思いますけれども、そういう観点から見ていましたときに、資産流動化の方は多数決原理というんでしょうか、いろいろ、例えば信託型ですと受益者の恐らく多数決とか、あるいは法人型でも、多数決によってガバナンスを図るということが基本的なスキームになっているように思いましたけれども、運用型の方については、特に恐らく信託型なんだと思いますけれども。
私は別ないろんな研究会等で若干関連した議論などしておりまして、私は信託型においても、投資者のガバナンスとして、ある種の受益者の集会と言ったらいいんでしょうか、はっきりわかりませんが、そういうものが想定できる、あるいはそういうものがガバナンスの一つのあり方としてあり得ると考えていたんですが、今日のこの御報告、それから、6ページ目の図などを見ますと、投資法人の方はそういう投資家によるガバナンスがあるんでしょうが、信託型についてはそういうガバナンスが予定されてないようにちょっと思ったんですが、果たしてそういう理解が正しいのか。それから、もしそうだとすると、それが適切なのかということについて、若干疑問といいますか、感想を持ちましたので、御説明いただければと思います。
○蝋山部会長 この点に関して、同じような御質問なり御意見ございますか。
岩原さん、どうぞ。
○岩原委員 実は私もその点ちょっと気になっているところでありまして、やむを得ないのかなと。それに代わる制度を作るのはなかなか実際には大変なところがございますので、やむを得ないのかなと思いますが、なお、細かい点を含めて検討する余地はあると思っていまして、今後の最終的な立法作業をする上で、なお御検討いただけたらありがたいというふうに思っています。
特に信託型スキームの中でも、受託会社が自ら運用できる受託者運用型の場合は、従来の投資信託委託会社と受託会社が分離されていて、両者の間のチェック機能を期待するという側面がなくなっておりますので、そういうところでガバナンスについて格段の配慮が必要ではないかという気が少しいたします。
併せて、例えば、受託者運用型ですと、受益者兼委託者の立場に投資家が立つわけですけれども、その受益者兼委託者としての投資家がどういう形で権利行使をするのかという点の細かい詰めが必要であると思っておりまして、例えば、信託法31条に基づく受益者としての処分の取消し等の権利を行使するときに、たくさん受益者がいる中で、どういう形で受益者としての権利行使ができるのかといったような問題がなお残っておりますので、今、能見先生が御指摘になったような集団的な権利行使の方法みたいなものを用意していなくても、果たしていいのかどうかという点を、なお最後の詰めとして御検討いただけたらありがたいというふうに思います。
以上です。
○蝋山部会長 この点につきまして、ワーキンググループから何かありますか。
どうぞ。
○神田委員
一応ワーキンググループの考え方の整理だけお話しておきたいと思いますけれども、運用型の方について申しますと、まず、一般論としては、ガバナンスというのは、何か一つで全部期待するというわけにはいきませんので、例えば、これは外部監査というのは当然要求されるわけですけれども、外部の第三者によるチェックということですけど、それだけでいいわけではない。そしてまた、運用を司る者について、例えば信託型の方で申しますと、信託型と委託会社、委託業者が分離しているものについては、委託業者の認可制という行政的な監督もかかるわけですし、信託会社が自分でやる場合には、信託銀行は免許制+兼営法の認可ということになっていますので、免許制というものがあるわけです。
それに加えて、投資者による一定のガバナンスという、要するにいろんなガバナンスのメカニズムの組合せから成り立っているという考え方、これは7月の中間整理のときにもそういう考え方に立っているわけです。
流動化型の方と比較いたしますと、流動化型に比べまして、やや抽象的かもしれませんけれども、行政的な監督というのも流動化型の方は基本的に届出でありますので、比較的軽いということがあります。
したがいまして、この運用型の方は投資者によるガバナンスというのは、現在考えておりますところは、多数決ということを考えておりますが、信託型の場合で言いますと、集会までは開くことを予定してない。ちょっと細かくなりますけれども、流動化型の方は集会を開くというか、そういう手続を用意しておくことを予定しているわけです。したがって、能見先生御指摘の点につきましては、多数決は予定しているということです。
ただし、それは集会という形を開いた上での多数決ではなくて、受益者の意見を聞くということであります。
この点に関連して、これは前にもこの場で申し上げたかもしれませんが、現在の投信法は、信託型につきましては、8ページに書いてあることなんですけれども、投資者の−−というのは受益者になりますが、同意なしに変更できるかのごとく規定に、昨年の改正の後なっております。29条及び30条を見ていただきますと、委託者と受託者で約款を変更した場合には、届ければよろしいというふうに読めるんですね。よろしいという意味は、受益者を仮に害するような内容の変更であっても、届ければよろしいというように読めるわけです。
これは改正前は約款は個別承認制になっておりましたので、そこは行政が内容をチェックするという法制になっていたわけですけれども、昨年の改正で約款は届出制になっておりますので、変更の方も届出と、こういう形で法制的につじつまが合っているんですけれども、しかし、実質的に考えますと、約款の変更によって利害というか、影響を受けるのは受益者ですので、やはりそこには受益者の声を聞くなり、そういう手続はあった方がいいのではないかと考えられるわけです。
そういうことで申しますと、8ページに書いてあることなんですけれども、現在の投信法は、受益者のガバナンス、こういう言い方は失礼かもしれませんが、ゼロになっているんですけれども、そこは受益者の声を聞いて、そこの言葉で申しますと、反対者が異議を述べることができることとし、反対者が過半数に達しない場合には変更が承認されたと、こういう意味でのいわば多数決を導入しようと考えているわけです。
なお、オープンエンドの場合には換金性がありますけど、クローズドエンドの場合には、換金性がオープンエンドの場合に比べて一段落ちるということで、最後の「また、」以下で、買取請求権を与えよということになっております。
ワーキングでも、こちらの場合、集会を要求してなくて、流動化型の方は集会を用意しようというような、ややきめ細かい整理をしているんですけれども、理屈の上でどうかという御指摘ございましたけれども、先ほど申しましたように流動化型と運用型のいわばいろいろなガバナンスの仕組みの組合せの違いということで、一応そういう整理をつけております。
岩原委員御指摘のとおり、なおこれを具体的に法制化していく上では、法技術的な側面から、さらに細部を詰める必要があろうかと思いますけれども、ワーキングの現在の考え方は、そういう考え方に立っております。
長くなって恐縮です。
○蝋山部会長 ありがとうございました。
関オブザーバー、どうぞ。
○関オブザーバー
前々回に、御質問したこととも関連するのですが、今日の御報告で、大変詳細に細かいところが詰まってきたという感じがするわけですが、やや念のためというか、クラリファイの部分を含めて、もう一度お伺いしたいわけでありますが、特に詳しい方の18−2の5ページの「9.信託型スキームの導入」というところと、それから、10ページの「受託者責任」とか、「資産保管会社」とか、そういったところで書かれていることとの関連に主としてなるわけですが、まず、流動化のスキーム、運用型のスキームということの両方共通だと思いますが、そうした証券化された商品を投資者に売っていくという部分があるわけですね。それで、これは図に入っていますけれども、また、それを意識していろんなところに書かれていますが、余りそこのところは焦点が当たってないわけでありますが、そこの部分は、私、前回も念を押したようなつもりがあるわけですけれども、全て証取法上の有価証券になるのかどうか。もちろん民事法上も有価証券になるんだと思いますが、そういう前提で考えていいのかどうかということであります。
特に信託型ということになりますと、現状の構造を見ると、受益権に分割して売るという方の今の投資信託型と、一つ一つの顧客と信託銀行の個別の契約で契約をして、それを合同的に運用していくという仕組みと二つあるわけでありますが、それは両方の中でどういうふうに、今私が提起している、どちらも全て有価証券になるというふうに考えていいのかどうかということであります。
特にそのところにつきましては、5ページで最後に9.のなお書きが付いており、従来スキームを併存させるべきであるということが書いてあるわけですが、これはSPCの枠組みには入れるけれども、証取法上の有価証券にしないんだという意味が入っているのかどうか、そこのところがちょっとわからないものですから、そこをお伺いしたいわけであります。
それから、もう一つは、問題意識は似ているんですけれども、流動化型の方はSPC法という、今まで会社型だけであったものが、信託型のスキームをSPC法の構造に入れていくということでありますし、運用型の方では、新しく従来の投信法の体系のほかに、信託銀行が受託銀行のまま運用機関を兼ねると、こういう仕組みが入ってくる。どちらにも言えることだと思いますが、二つの構造がコスト面において、一体差がつくのかつかないのか。そのあたり一体どういうふうに考えるんだろうかということであります。どちらか非常にコスト面で有利だということになっていると、私はそちらにシフトするんじゃないかと、こういう気もするわけでありますけれども、その辺どうだろうか。
特に信託銀行が運用機関もやり、受託銀行もやり、場合によっては、もともとのオリジネーターとしての財産も持っているというような状況を考えますと、いろんな意味の競争関係、特にここでも触れておりますけれども、アームズ・レングスのこととか、そういったところは一体どういうふうに担保していったらいいのか。そのあたりについて何か追加的に御説明いただければというふうに思うわけであります。
以上であります。
○蝋山部会長 今の関さんからの質問に関しては、どなたが一番よろしいですか。
では、室長、お願いします。
○乙部債権等流動化室長 第1点の証券化した商品ですが、私法上と証取法上の有価証券に指定することを前提として議論いたしました。
それから、従来型スキームも併存させるべき、5ページでございますが、これはSPC法の中に入らないスキームを禁止するつもりはないということでございます。今できていることは、今までどおりできるし、改正されたSPC法を使って流動化されることを選択される人は、それも利用できるようにする。選択が可能になるという趣旨でございます。
それから、2者型の場合ですけれども、コスト面で差がつくかどうか。差がつくかもしれませんし、差がつかないかもしれません。そこは商売上の観点が入ってこようかと思います。
それから、オリジネーターになれるかと、日本は信託宣言できませんので、信託銀行が自分の持っている資産を自分で信託して、証券を売るというのは日本の法制ではできないというふうに理解しています。
神田先生、補足がございましたらお願いします。
○蝋山部会長 どうぞ。
○神田委員 ワーキンググループの考え方というよりも、やや私個人の、ワーキングでは必ずしも明示的に議論してない部分につきまして、私個人の感触ということになろうかと思いますけど、第1点の売る出口の部分は、今回のスキームは全て証取法上の有価証券になるということですね。
ただ、そのことは、従来からの言い方で言うと、誰が取り扱えるかという、いわゆるワンセット規制構造の問題は、現在の証券取引法を衣替えして金融サービス法にするまでの間は、そういう表現がいいかどうかわかりませんが、現在の証券取引法のしがらみが残っているということになりますので、販売・仲介ができるのは、原則としては証券業の登録をした者ということになります。
ただし、発行者が、例えばソニーとかトヨタが自分で株を売るのは自由ですから、発行者が売ること、あるいは投信法の下で「直販」と呼んでいますけれども、そういうことは可能だということになると思います。逆に言うと、そこの法制を大きく変えるというところまでは、今回はちょっと難しいかなということです。
それから、第2点については、これは乙部さんがおっしゃったとおりで、今回はこれらのスキームを合理化し、整備しましょうということですから、これらのスキームというのはSPC法とか投信法ですが、そういう枠内に入ってきたときにはいろいろできるようになるけれども、入らない、今まであったものを制限する趣旨は全くありませんので、例えば、具体的に申しますと、SPC法の中に入らない信託を使った流動化商品がもう既に存在して、多数あります。運用型の方ももちろんいろんなものがありますけれども、しかし、流動化の方について言いますと、5ページに書いてあるのは、そういう趣旨であります。
そのときの法的形態ですけれども、考え方としては、分割型であれ、おっしゃったように1本1本信託契約型であれ、その法形式によってどちらかしか認めないということにする必要は、少なくとも運用型の方についてはないと思います。そこを区別する必要はないと思います。
ただ、第3点にちょっと関連するかもしれませんけれども、コスト面でどちらが有利か不利かというのは仕組み次第ですので、仕組みの商品開発競争みたいな形で、より望ましい仕組みが出てくることを期待しているということになろうかと思いますけれども、法制・ルールみたいな、御指摘のようなアームズ・レングス・ルールみたいなものは信託型であろうが、2者型であろうが、1者型であろうが、これは平等に機能に応じて適用されることになります。
ただ、これは余計なことかもしれませんけれども、これも最初に申し上げたことと関連する。現在の証券取引法の構造を前提としますと、65条という条文が存在している以上は、1者型、信託銀行だけが全てやる型で、主として有価証券に運用するスキームが作れないと言わざるを得ないということになると思います。
そこは明示的に議論しておりませんけれども、最初に申し上げましたように、現在の証券取引法はそこを前提にしているというのでしょうか。それを制約と見るのか、そういうものだ、合理性があるというふうに考えるか、意見が分かれるかもしれませんけれども、そういう考え方で法制を整備するということだと思います。
以上です。
○蝋山部会長 私も今、乙部さんと神田さんのお話、全部必ずしもフォローできなかったんですが、やや具体的に、今の貸付信託の形態でもって全ていろんな証券に運用する、そういうことはできるということを意味するわけですか。運用型のケースについて。それは意味しない?
○神田委員 意味しないということだと私は思います。
○蝋山部会長 その辺のところが私にとってはちょっとよく、この第一部会できちんと議論した形にしておかなきゃいけないと思うんですけれども、一方では信託銀行というのは免許制ですね。これが届出制なり登録制になるということはちょっと考えられないというふうに思います。
他方で、証券会社なり、これは販売の面でありますけれども、それから、運用会社はこれでは認可制ということになっているわけですか。やはりその辺のところの制度の違いがあるわけですね。これは銀行と証券、あるいは銀行と資産運用会社ということの抜きがたい違いであって、これは前提にしなくちゃいけない。その間にある信託銀行というのが、同時に運用会社ともなり得るということを自動的に認めるとすると、私は何かそこに制度上の競争条件の差というものがずっと残るんじゃないだろうかと、それをやや心配しているんですけれども。
そして、それが例えば、マーケットの力によって、ディスクロージャーとかそういう点が証券と同じように扱われることによって、いわばそういう制度上の差というものは実際には反映されないということであれば、それはそれとして十分考えられますけれども、現行ということになると必ずしもそうじゃありませんので、やはり制度の差というものが残るんではないだろうか。そこのところをどう考えるかというのが今のお二人のお話を聞いただけで、座長として言い過ぎているかもしれませんけれども、ちょっとわかりにくいし、今後の一つの課題にしなくちゃいけないのなとは思いますけれども。
どうぞ、岩原さん。
○岩原委員 私もワーキンググループのメンバーの1人なんですけれども、神田さんの最後の御発言の趣旨がちょっといまひとつよくわからなかったので、改めて確認させていただきたいんですけれども、この報告書の18−2の資料の例えば6ページに書いてあるような信託型スキームで、受託会社が自ら運用できる受託者運用型も整備するということの意味は、信託銀行自らが主たる投資対象を有価証券とする場合も含めて、幅広くいわば集団投資スキームたる信託財産を作って、その受益権を販売することも可能にするという趣旨で書いてあるんじゃないかと理解していたんですけれども、先ほどの神田さんの御発言だと、それは証取法65条で可能でなというような御発言にちょっと聞こえたんですが、そうなんですか。
○蝋山部会長 どうぞ。
○神田委員 今の点はワーキングでは議論してないんですね。結局証券取引法、販売の問題もそうですけれども、販売の取扱いも証券取引法に係る問題ですが、したがいまして、私が間違っているかもしれません。先にそれを申し上げます。私の理解は、それは現在の証券取引法なり、銀行・証券分離と従来呼んできたその線というのは、徐々にもちろん緩和されつつありますけれども、アメリカのように完全撤廃はしたわけでもありませんし、65条という条文及びそれに関連する諸々の条文が残っておりますので、そこの考え方も今回併せて変えようということでないと私は理解しております。変えるなら、もちろん議論して変えるべきだ。
ですから、今の岩原委員の点につきましては、スキームとしてはまさにおっしゃるとおりなんですけれども、それを主として有価証券に運用するものを、信託銀行は銀行ですから、銀行がやるということは、これまでの銀証分離政策から言って、無理ではないかというのが私の理解です。間違っているかもしれません。
それから、もう一点、蝋山先生がおっしゃった点ですが、将来それを変更すべきかどうか、これは政策的判断の問題はあると思います。
それから、蝋山先生がおっしゃったことに関連しますが、将来の姿ということで言いますと、現在は信託銀行は銀行なものですからそういうことになるわけですが、仮に専業の信託会社が、信託業法という法律がありますけれども、信託業法に基づいてできてきたというときには、そういう制約は私はないんじゃないかと、今の制度で言えば。
さらにもうちょっと将来のことを言えば、将来的には銀行が主として有価証券に運用するようなものの運用業務に携わるということも認めていいんではないかという議論も十分あり得ると思う。これは政策的判断。そのためには先生御指摘のように、競争条件の確保ですとか、そういうものがきちんとできるかということを正面から議論した上でやっていく必要があると思います。
ですから、逆に言いますと、やや消極的な言い方なのかもしれませんけれども、この金融ビッグバンの時代に、そこの銀証なりの政策的な部分というのは徐々に緩和されてきてはいますけれども、今回ここの制度改正によって、さらにどうこうしようということは、少なくともワーキンググループでは議論しておりませんし、私の理解は、従来の枠組みの中で最大限努力するということではないかというふうに理解しております。
○蝋山部会長 この問題は、長年こういう議論をしていた人にとってみれば、大変懐かしい問題のリバイバルでありまして、発言される方は少なからずあるかと思いますが、会長がどうしてもという。
○貝塚会長 要するに、やっぱり現在のビッグバンの体制をどこまで変えるかという問題は、元来、金融システムを変えるかどうかという話と非常に関係があって、現状でこういう議論する限りにおいては、とりあえずのところ、今の業態ないしはそういうものをある程度前提にして商品設計の問題も整理されているというふうに私は理解しますね。
あとは私の理解で、先が変われば、この辺の部分も非常に変わり得るというのは、私の理解ですね。ですから、そういうふうに理解しているということだけ申し上げます。
○関オブザーバー 1分で終わります。
○蝋山部会長 関さん、今の点、ショートノーティスお願いします。
○関オブザーバー
乙部さんから先ほど私の質問に御返事いただきましたが、質問しているのは非常に簡単なことでして、例えば、信託銀行が運用会社であり受託会社であり、運用するわけですね。それで、それをお客様に売ってお金を運用するわけで、何に投資するかということは運用会社のことで、例えば信託銀行の銀行勘定の証券を買うとか、そういうことは認めてないということなんでしょうか。あるいは信託勘定の中の別な勘定のものを買うとか、そういうことは当然あり得るわけでございましょう。ですから、そういったところについて三つが一緒になっているようなところとどうやってきちんと競争関係をするのか。
それから、従来の投信会社は、受託銀行に対して手数料を払うわけですから、その手数料のところの競争関係が変わってくるということはないだろうかとか、そういうことを問題提起しているわけでありますので、ひとつぜひ細かいところは御検討願いたいと思います。
○蝋山部会長 この点は今後も、今日ここである種の結論というよりも、むしろいただいたワーキンググループの報告を受けての我々の議論として、ある程度まで整理。もちろん証取法の改正と、日本版金融現代化法まで作ろうとか、そういう大げさなことは言わずに、しかし、現行の枠組みの中でSPC法の改正、証券投資信託並びに法人法の改正ということを議論する際のある種のリマークとして、きちんと議論しておきたいというふうに思いますが、今日のところはこれで引き取らせて、杵淵さんもどうしても言いたいですか。
○杵淵オブザーバー 私の理解も神田先生と同じ理解だった。今ちょっといろいろお話を聞いていますと、主たる有価証券までも、あたかも含まれるみたいなことがありますが、これは今関さんからも指摘されておる問題だとか、いろいろ問題がございまして、慎重にこれは検討する。一体、信託銀行にそういうことをやらせた場合に、受益権の分割までも認める方向でおられるのか、この辺は今のお話ですと、ワーキンググループでもほとんど議論してないと、こういうことですから、そんなことは万々ないと思いますが、ここは慎重に御審議をお願いしたいと、一言申し添えておきます。
○蝋山部会長 慎重にということは、従来型の意味ではなくて、きちんと議論しましょうということとして御理解いただきたく思います。
やや予定された時間を過ぎておりますけれども、あと二つ問題がありますので、次の方に移らせていただきますが、しかし、ともかく、集団投資スキームに関するワーキンググループ、私は一度しか参加できなかったのですが、10月に再開以来6回も精力的に、しかも2時間では終わらない場面も幾らもあったように伺っておりますけれども、大変精力的な形で議論していただきまして、こういう形で一応ワーキンググループとしての我々の提言ということでとりまとめていただいたこと、非常に厚く感謝したいというふうに思います。
我々として、ワーキンググループからの報告は、「中間整理(第二次)」というものを今年中に何とかとりまとめるという宿題を負っているわけでありますが、その際の極めて重要な参考になる資料として使わせていただきたいというふうに思います。改めて神田さんはじめメンバーの方々に、この場を借りて御礼申し上げたく思います。ありがとうございました。
それでは、前回に引き続きまして、裁判外紛争処理制度についての審議に入ることといたします。
内藤さんからどうぞ。
○内藤企画課長 それでは、御説明をさせていただきます。本日は、これまでの検討いただきましたことについて、事務局から整理をさせていただきまして、重複部分もかなりございますけれども、御説明いたしまして、その後、自由討議をお願いしたいというふうに考えております。
資料は18−3と18−4を御覧いただきたいと思います。まず18−3でございますが、1ページを御覧いただきたいと思います。
まず、第1の論点でございますが、苦情処理・裁判外紛争処理機関の中立性・公正性をどう確保するかという点が議論になりました。
外部の紛争処理機関(弁護士会仲裁センター等)を活用していくということで、全銀協の御提案等がございましたので、これについての議論が行われまして、右の方の意見、(第一部会)と書いておりますのは、この部会で出された意見でございますが、外部の紛争処理機関を活用していくことが望ましいと、こういった御意見がございました。
それから、中立的な人材の選任等の問題でございますが、これも中立性という観点から、自主規制団体等による裁判外紛争処理機関については、消費者側、第三者が参加して紛争処理を行っていく、こういう体制を整えていくべきであるというような御意見がございました。
さらに加えまして、パブリック・コメント、これは中間整理のパブリック・コメントでございますが、裁判外紛争処理の過程に消費者代表を参加させるべきであるという御意見がございました。
それから、2.で、そうした紛争処理の機関についての透明性の確保の問題でございますが、まずが解決結果の公表の問題でございますが、この部会では、プライバシーに配慮しつつも、紛争の解決結果を積極公表すべきである。それがフィードバックというような効果に働いてくるというような御意見がございました。
他方、斡旋・仲裁等の裁判外紛争処理制度は簡便性がその特徴であるということ、あるいはプライバシーの問題には十分配慮する必要がある、こういう御意見もございました。
それから、機関の活動全体へのチェック機能の確保でございますが、英国の例を踏まえまして、同数の事業者、消費者、学識経験者から成る評議委員会というものを英国のオンブズマン制度では活用しておりますので、こうしたことが日本でも必要ではないかという御意見がございました。
3.は、裁判外紛争処理機関の権限強化という問題でございますが、これについて、まず、そうした手続に業者の応諾の義務というものについてどう考えるかということでございまして、右の方を御覧いただきますと、申立人の希望に反して裁定手続が行われないというようなことが現行の業界における紛争処理の機関において行われているということで、それが件数が伸びないということにもなってくるので、苦情・紛争処理機関は消費者の希望、相談員の意見にも配慮すべきだとか、あるいは下の方に書いてございますが、手続開始時においては事業者側の合意を不要とすべきである、こういうふうな御意見もございました。
それから、業者の調停・仲裁案の受諾義務というものでございますが、英国の場合には、これは、一旦手続に入りますと、事業者のみを拘束するというふうなルールになっておりまして、こうしたものであるべきではないかという御意見。それから、もっとも、裁判外紛争処理制度の参加義務を課して、さらにその結果の受諾義務を課すというのは事業者に酷ではないか、こういうふうな御意見もございました。
それから、裁判外紛争処理機関の調査・事実認定、情報を集めるというような点でございますが、これについてはパブリック・コメントでは、業者に対する情報提出命令権など、強力な権限を苦情処理・紛争処理機関に持たせるべきである、こういう御意見がございました。
それから、業者に対する記録保持の義務という問題でございますが、これについては、義務を課しまして、かつ、その記録を、全てのその手続の中で提出をしなければならないというふうに考えるべきではないかという御意見がございました。
2ページの方へまいりますと、次は、こういう紛争処理の手続における費用負担の問題でございますが、右の方を御覧いただきますと、まず、第1の点は事業者負担とすべきである。あるいは和解成立時に成立手数料を当事者が折半で負担する全銀協・信託協会の方式が妥当ではないかという御意見。それから、業者に支払う手数料のうち、どれだけの部分が苦情処理あるいは裁判外紛争処理制度の運営に使用されているのかというものを明示すべきではないか。あるいはまた、全てを業者負担だと言うけれども、結果としては消費者にも負担が発生していくということが経済理論的には言えるのではないかという御意見がございました。
それから、5.で、苦情処理・裁判外紛争処理機関の活性化・機能向上という点でございますが、紛争解決手段の多様化・重層化という点で、この手段として、斡旋、調停、仲裁など、事案の性質に応じて対応可能な重層的な手続が用意されるべきであるという御意見。
消費生活センター等との交流を強化すべきである。
それから、外部専門家の活用としまして、第二東京弁護士会の仲裁センターの助言人規定等を参考にしながら、専門家をどう参加させていくかということで工夫をすべきではないか。
特にスタッフの育成ということで、英国オンブズマン制度に倣いますと、事務局スタッフの育成が非常に重要であるという御意見がございました。
それから、6.苦情処理・裁判外紛争処理制度の統一化・包括化ということで、これは中間整理でも、こういう方向づけについての整理がなされておりましたが、この点につきましては、 窓口の一本化という問題については、苦情申立て窓口の一本化を図るべきであるという御意見。他方、下の方にございますが、利用者の通例的行動に照らせば不要であるという御意見もございました。
それから、といたしまして、そうした機関の設置の問題でございますが、この設置を検討する、設立すべきであるという御意見。それから、他方、こういった包括的な制度というものが実現可能であれば望ましいと思うが、実施するとなると難しい問題もあるというのが共通した理解ではないか。こういうふうな御意見がございました。それから、箱物の問題しは別に、活用の仕方が重要であるという御意見。それから、現在の裁判制度等もございます。既存の様々な苦情紛争処理制度と裁判外の紛争処理制度との関係をうまく整理していきませんと、屋上屋を重ねることになりかねないという御意見もございました。
それから、業者の強制加入の問題でございますが、英国のオンブズマン制度を参考にすると、強制加入の自主規制機関を設立すべきではないかという御意見がパブリック・コメントで寄せられております。
それから、3ページでございますが、法的根拠という点でございますが、右の方へ御覧いただきますと、行政指導という手法は頻繁に用いることができない以上、法的根拠のある裁判外紛争処理制度が整備されることが必要ではないかという御意見がございます。それから、業界の自主的な動きというものが現在多面的に進みつつある状況でございますので、そうした動きを踏まえながら、民間(主導)型の横断的な制度を中心とすべきではないかという御意見がございます。
それから、行政の関与という問題でございますが、紛争処理において、監督官庁は、民間の紛争処理機関との連携をより一層密にしていくべきではないかという御意見がございました。
それから、「金融についての消費者教育に関する論点と意見」というものを付けさせていただいております。
消費者教育の拡充という問題については、「考え得る具体的な対応」といたしまして、業者による取組みの問題。消費者団体による取組みの問題。金融当局の取組み。それから、
学校教育を通じた青少年期からの消費者教育の実施という問題。四つぐらい論点があろうかと思います。それぞれについて意見を付け加えておりますが、まず、第1の点といたしましては、アメリカの例も例示として説明をされまして、日本の業者もアメリカの金融業界の教育団体といったものの活動を積極的に倣っていくべきではないか。
それから、第2点としては、消費生活センターにおいてそういった環境整備を図っていくということが重要ではないか。
の金融当局の対応というところでございますが、行政による新たな金融法の体系というものが変わってきておりますので、その周知努力が必要である。英国の金融サービス省が発足スタートしておりますが、消費者教育に注力をして、インターネット等を通じた活動を行っているということは、日本においても同様のことを力を注ぐべきではないかという御意見でございます。
さらに、学校教育の場での様々な教育のあり方といったことも御意見をいただいております。
それから、18−4でございますが、これはもう御案内のとおりでございまして、ここに付けさせていただいた資料を若干簡単に御紹介いたしますと、1ページは、今の裁判外紛争処理制度についての中間整理の論点でございます。特に下の方の箱の中の「簡易・迅速な裁判外紛争処理制度」という観点で整理をされておりまして、下の方で、統一的・包括的な紛争処理制度を整備する必要がある。窓口段階での一本化を図ることが望ましい。こういった意見が大宗を占めたということでございます。
それから、2ページを御覧いただきますと、統一的・包括的な制度の担い手として誰がふさわしいか、どういう組織がやっていくのか、あるいはそのコストの問題をどう考えていくのかということによって様々な論点があるということで、今申し上げたような形で御議論いただいてきたわけでございます。
それから、特に下の方でございますが、「ハ、苦情処理等の窓口の一本化等」というところでございまして、こうした窓口を一本化して、紛争処理についての適切な窓口につなぐ、こういうふうな対応が有益ではないかという意見があったということでございます。
そこで、次に、3ページでございますが、3ページは、今申し上げました特に裁判外紛争処理制度の点につきましてのいただきましたパブリック・コメントを付けさせていただいておりますが、省略させていただきます。
それから、5ページは、消費者教育の部分についての中間整理の記述とパブリック・コメントでございます。
それから、6ページでございますが、これは、金融業界におきまして、現在苦情処理機関があるということで、確か9月の段階でございましたか、御説明をいろいろいただきました。
全銀協の方からは、10月1日から、弁護士会の仲裁センターとの提携による斡旋・仲裁という業界としての対応を行っていく。
信託協会におきましても、11月11日以降、同様の外部に、仲裁センターに委ねたような、そういう対応をしていく、こういうふうな御説明がございます。
それから、生保協会の方からは、生命保険の相談所があり、また、裁定委員会というものがあって、これからさらに活性化といいますか、そうしたことについての対応を考えていきたいというふうなお話があったかと思います。
それから、7ページを御覧いただきますと、損保協会あるいは交通事故の紛争処理センター。特にこの交通事故の紛争処理センターについては活発に活用されているというふうなお話があったかと思います。
それから、証券会社につきましては、日本証券業協会におきまして、証券苦情相談室というものが設けられ、また、その位置づけが証取法の規定に基づいた運営がなされているというふうなお話がございました。
大体以上でございます。
○蝋山部会長 前回までの議論を裁判外紛争処理制度を主として、様々ないただいた御意見を整理したわけでありますけれども、この整理を一つの手がかりにしながら、この問題についての我々としての意見のとりまとめを中間整理には難しいとしても、ある程度のところは反映させ、ファイナルには6月の段階できちんとした内容のものにしていきたいと、こういうつもりでおりますけれども、いかがでございましょうか。もう少しこういう点を強調してほしいとか、そういう点ございますか。
前回御報告をいただきましたので、原さんにまず一番発言するオプションがあります。
○原委員 とてもきれいに論点を事務局の方に整理していただきまして、ありがとうございました。早速次の日の新聞に、この裁判外の紛争処理制度が先送りというタイトルで出てしまって、見送りでなかっただけでも幸いかなというふうに思ったりしたんですが、私として大変気にかかるところが見出しには出ていたように感じておりまして、やはり実現可能性というところなんですね。
その第1ステップとしての既存のものの手直し、それをできるだけ業界の外部に出して、第三者を入れて透明性を図るというようなところは、既存のものでも第1ステップとして踏み出せるかなというふうに思うんですが、その第2ステップとして提案をいたしました横断的な組織というやり方なんですけれども、これについては、私としては、ぜひやっていただきたいというふうに思っておりまして、横断的なところと、それから、最初の苦情とか相談のところの情報収集ですね、ここを専門の消費者相談員でやっていただきたいというのが私の意見として大きいところなんですが、今回出された資料でちょっと食い違うかなというふうに思ったのが、資料の18−3の2ページのところなんですけれども。
2ページに「6.苦情処理・裁判外紛争処理制度の統一化・包括化」ということで書かれている意見のところで、こういった裁判外処理窓口の一本化、それから裁判外紛争処理制度、両方ともなんですけれども、「実施するとなると難しい問題もあるというのが、共通した理解だと思われる」というふうな書きぶりで第一部会として両方で書かれているんですが、前回の議論では、そこは共通した理解というところまではいっておりませんで、あとは資料の18−4の方なんですけれども、これを見ますと、中間整理でどういうことが書かれてあったかということの紹介があるんですが、1ページと2ページとに両方なんですが、1ページのところでの裁判外の紛争処理、2ページは苦情処理窓口なんですが、中を見ますと、「窓口段階での一本化を図ることが望ましいとの意見が大宗を占めた」という書き方になっているんですね。1ページだと下から2行目のところに書かれていると思うんですが、「一本化を図ることが望ましいとの意見が大宗を占めた」。それから、2ページ目ですと、四角の囲みのところに下線が引いてありますけれども、一番下の下線のところになりますけれども、これも「窓口を可能な範囲で一本化し、」と書かれていて、6月までの段階では、できるだけ一本化、統一化を図っていこうという意見の方が多かったように思えて、それが今回の整理では、なかなか難しいではないかという具体的な話になってくると、そういった意見も確かにありましたけれども、共通の理解を得たというところまでには至っているわけではなくて、私どもとしては、引き続き横断的・包括的な取組み、業態を超えた取組みを求めたいというふうに思っております。
付け加えさせていただきました。
○蝋山部会長 共通した理解だと思われるという意見があったんです。そういうふうに、前の▼と比較すればおわかりのように、特に実施の段階では難しいぞというのが共通の理解ではないでしょうかという意見があったと、こういう意味ですから、誤解のないよう。我々としてこういうふうに共通した理解だと、社会一般に理解だと思われているというふうに観念しているわけでは決してございません。
○原委員 追加なんですが、私も文章的な表現はともかく、実際に各業態の方が一歩踏み出そうとなさっていらっしゃるのかどうかということをお聞きしたい。私が当事者ではないので、それぞれの業態の方いらっしゃると思うんですけれども、その辺の実現可能性みたいなことについてどうお考えか、お聞きしたいというふうに思います。
○蝋山部会長 今の段階では、聞くのは必ずしも戦略上適切ではないというふうに思いますので、いずれの段階で、宿題として頂戴しておきます。
関さん、どうぞ。
○関オブザーバー
今の御質問にお答えするつもりはないんですが、いずれ意見を申させていただきます。
○蝋山部会長 いやいや、積極的にお答えいただくのは構いません。
○関オブザーバー
ちょっと違います。私の発言はそうじゃなくて、この18−3の資料の、蝋山先生の言われた現在の整理ということでありますと、その意味はわかるんですが、この表でPCというのが上にパブリック・コメントの意味ですというのですから、当然誰かの意見だということがわかるわけですが、(第一部会)と入っているわけですが、これは第一部会で出た意見という意味なんだと思うんですね。ですから、第一部会についてもちゃんとコメントしておく必要があると思うんですね。第一部会でこういう議論になっているというふうに逆に今の段階で読まれるというのは適当でない思うので、それはそういう配慮していただいたらどうでしょうか。十分今後議論していくということは言うまでもありません。
○蝋山部会長 第一部会でこういう意見があったということ、パブリック・コメントでこういう意見があっということとパラレル。
○関オブザーバー
ですから、第一部会というのをちゃんと(注)に入れておいていただきたい、そういう性格のものだということですね。
○蝋山部会長 はい、わかりました。
高橋さん、どうぞ。
○高橋委員 先ほどの原さんの疑問の点窓口の一本化が難しいという、あの議論なんですが、ワーキングから参加しておりました私の記憶では、第一部会ではそれほど多くの議論はここに費やしてなかったと思うのですけれども、ワーキンググループの段階では、まず機関の一本化をしようということを議論していました。しかし、機関の一本化という包括的な苦情処理機関というのは大変難しいのではないかということで、私が確か、せめて窓口は一本化してほしいと、こういうような意見を出したという記憶があるのですね。ですから、ここの2ページのまとめ方でいくと、窓口の一本化に難しい問題があるというまとめ方になっているのですけれども、この辺は少し事実関係を確認していただきたいというふうに思うんですけれども。
非常に一本化が難しいという意見が集中したのは、統一的・包括的な苦情処理・裁判外紛争処理機関を設置することが難しいということであって、その過渡的な対策として、せめて窓口は一本化するということに関しては、コンセンサスは得られていたというか、多数意見を占めていたのではないかと、私はそういうふうに理解しておりますので、その事実関係の確認をお願いしたいと思います。
それから、ワーキング及び部会の方で私が重ねて申し上げてきたことなのですけれども、行政の役割というものの中に、ここでは横組の資料の3枚目のところに「苦情処理・裁判外紛争処理制度への行政の関与」というのが8.に載っておりますけれども、紛争処理において、民間の紛争処理機関との連携を密にするということだけではなくて、私自身は意見として、行政自らが苦情の受付、カウント、公表と、こういうふうなことにアメリカなどは携わっているわけですから、日本においてもそういうことを検討する余地があるのではないかという意見を申し上げて、どこかの段階までは出ていたかと思うんですが、このまとめの中で消えてしまっているので、その理由ないし反対意見が席上で出た記憶は私は余りないのですけれども、その辺ももう一度事実関係の確認をお願いしたいと思います。
以上でございます。
○蝋山部会長 そういう異論はあるかと思いますが、今、課長どうぞ。
○内藤企画課長 まとめ方の資料の作り方の問題等もあろうかと思いますので、そこは確認をさせていただきます。
○蝋山部会長 非常にこの点は重要だと思われるのは、一つは、苦情を受け付け、処理スルーする窓口、あるいは裁判外の形で紛争を解決する機関、そういうものと自主規制機関なり、あるいは行政なりとどう対応させるかという問題があると思うんですね。
ところが、非常に辛いところは、あるいはもしかしたら可能性があるのは、金融庁が7月にできる。そして、その金融庁がどういういわばファンクションを担おうとしているのか。その辺のところが我々として必ずしも十分にはっきりしていない。ある種の係ができますと。課ができるのか、係ができるのか、その辺ところ、局長あたりに聞けばよくわかるのかもしれませんが、その辺まだはっきりしないわけですね。そういう点では、我々金融審議会として、少なくとも金融庁監督下の業に関しては、この件に関して、こうであるべきではないかという注文をつけることは、それを担保することができるかどうかわかりませんが、必ず実現させてもらう、実現してもらう、担保することはできないかもしれないけれども、ある種の注文をつけることはできるんじゃないかなというふうに思うんですが、どうなんでしょうか。もうそういうことは……。
どうぞ、お願いします。
○河野金融監督庁企画課長
確認のためでございますけれども、少なくとも今私どもに与えられていますファンクションといたしましては、民事上のそういう紛争には介入しないと、また、できないということになっております。関与をいたしますと、行政の行った行為があたかも民事上法的効力を持つかのような印象を与えてしまうかもしれませんが、そういうことはございませんものですから、やはり関与はできないということで整理をされております。
その点だけちょっと申し上げておきます。
○蝋山部会長 解決してくれと言っているんじゃなくて、例えば、こういう組織がありますと、そこで言ったらどうですかと、こういうようないわばアドバイスも関与の中に入るわけですか。関与というのはちょっと私にはよくわからない概念なんですが、どうぞ。
○河野金融監督庁企画課長
ありがとうございます。もう一点、そういう意味では、連携という言葉もございますけれども、例えば、行政の方でいろいろなこういう裁判外の紛争処理機関などを御紹介する、あるいはいろいろな形で周知徹底に御協力をするといった点は、むしろ当然できることであると思いますし、それ以外の点でも、例えば、民間のこういう紛争処理において非常に事件が多発したような分野があると、あるいはそういう事件が多発するような特定の業者があるという場合には、それが行政上のアクションにつながっていくということは当然あり得ることでございますので、そういう意味で、個々の案件に関与といいますか、介入はいたしませんけれども、他方でそういった紛争処理との連携とか、あるいはその中で現れてきた事象に対する行政上の対応というのは当然考えられると思います。
○蝋山部会長 もう少し、今の金融監督庁の現状は、そのまま金融庁に受け継がれると、こういうふうに考えてよろしいんでしょうか。
○河野金融監督庁企画課長
この面に関しては、それで結構だと思います。
○蝋山部会長 そして、もう一つ。金融監督庁では専門の課とか窓口とか、そういうものはおありですか。
○河野金融監督庁企画課長
現在の機構上そのようなものはございませんで、各担当課においてその担当する分野におけるいろいろな事務の中で、窓口の紹介などをしておるということかと思います。
○蝋山部会長 金融庁ではそれがどうなるかという点ももう一回確認させていただきたく思います。
○河野金融監督庁企画課長
私の理解では、そこは変わる予定にはなっておりません。
○蝋山部会長 ああそうですか。
原さん、どうぞ。
○原委員 私どもとしては、金融庁、大変期待をしておりますので、実際に製造物責任法ができたときも、これはやっぱり民事だということで通産省ですとかというのは直接そこには関わってはいらっしゃらないですけれども、PL法ができたということに応じて、例えば消費経済課だけだったのに、合わせて製品安全課というものをお作りになって、改修命令とかいうところのかなり権限強化ですとか、それから、そこも別に苦情処理を扱って、商品テストもやっていらっしゃるんですけれども、その結果の公表ですね、事業者名の公表ですとか、かなり大胆に踏み込んでいろんな施策を展開をしていらっしゃるので、もちろん個別の民事的な紛争に関わっていらっしゃるわけではないですけれども、それに応じたシステムというのはおとりになっていらっしゃるので、ぜひそういうことは検討していただきたいというふうに思います。
○蝋山部会長 私が問題にしているのは、誰が検討する主体なんだろうかということなんですね。金融監督庁が主体なんですか。
どうぞ、お願いします。
○河野金融監督庁企画課長
そういう意味で、今の原委員の御指摘のような観点から申しますと、やはりこういった問題について新しい制度なり法律の改正などが行われた場合には、私ども当然そういったものを執行するための機構定員要求、予算要求といったものをしていくという格好で、今とまた違った体制を組んでいくということは将来的にあり得ますけれども、あくまで私申し上げていますのは、現行法制の下でどうなっているかという点でございます。そういう意味で、金融庁で広報事務などは強化することは考えておりますけれども、現在の体制がそう変わるものではないということは、それが実態ということでございます。
○蝋山部会長 能見さん、どうぞ。
○能見委員 別に議論に参加するつもりはなかったんです。金融監督庁の話が出てきて、この間、別な所でドイツのことを調べていまして、ちょっと御参考になるかと思って御紹介したいんですが、ドイツにも、正式な日本語訳はよく知りませんけど、金融監督庁に相当する機関があると思いますが、そこでも、従来は消費者等からの、あるいは投資家からのクレームを受け付けて、おまけに各金融機関にまたそれを問い合わせをしたりして、答えたりするところまでやっていたようですが、それは、年間約3,000
〜 4,000件ぐらいあるのを年間処理して、非常に大変だというので、若干そういう対応はやめたんですが、しかし、基本的には、苦情等が来ますと、書類をちゃんと作成して、どういう苦情があったか、それについてはどういう問題があるかというのを金融監督庁としては整理して、それぞれ毎年、金融監督庁の報告の中に、そういうクレームについてどういうのがあって、どういう問題があるということを指摘する報告書を出しておりまして、直接紛争解決はしないわけですけれども、非常に優れた処理をしているなという気がいたしました。
金融監督庁、先ほど窓口がそれぞればらばらで、関連あるところが対応している、現在ではそうだということですけれども、やはりそれは何か部署を余り大きなものでなくていいんでしょうけれども、設けて対応し、かつ、今のようなドイツ並み程度のものができればいいのではないかと思いました。
○貝塚会長 私も基本的に能見先生の御意見と同じですが、やはりエアポケットがあって、いろいろ問題が発生したときに、いや、行政はもう昔のことに懲りて何もしませんよということばかり言っている間に、それが今のある意味での昔のことを、逆に言うと、今やもう時代はまた変わりつつあるわけですから、もう五、六年前の話で非常にいろんな問題があって、それの施行方式が余りにも片一方に寄り過ぎて、それで監督庁は一切関与しませんとか、その種の発言になるというのは私はよく理解できますが、実際の金融の問題はそんな簡単な問題でなく、やっぱり苦情が起きたときに、どうしてもあるところで行政ないし監督との接点は出てくると思うんですね。したがって、自ずから、やがて金融監督庁もそれに対応せざるを得ないというのが私の予想であるし、そうしないと、金融監督というのは本当にスムーズにいくかどうかは、私は個人的には疑問だというふうには思っておりますが、ということだけちょっと申し上げて、現在の方針というものとは違うんですが、やや将来は変わらざるを得ないんじゃないかという気はするということです。
○蝋山部会長 この件もまだ結論を……
河野さん、どうぞ。
○河野金融監督庁企画課長
大変申し訳ございません。身のあかしのために、ただ漫然としておるというわけでもございませんので。
一つには、当然私ども苦情をかなりの数受けることになりまして、それにつきましても聞き流すわけではありませんで、部内的にいろいろな参考に使うということは当然日常的に行っておるということもございますし、もう一つ、音声自動応答システムというようなものを設けまして、電話番号にかけていただくと、そこでいろいろな苦情処理窓口を御紹介するとかいうことも行っています。、ある意味で大きな予算や大きな機構定員をこれまで要求できない、あるいはほかの面でいろいろ増員が必要だったというようなこともある中で、可能な範囲では対応してきておりますし、それは今後さらにやっていかなければならないと考えておりますので、その点だけちょっと最後に申し開きをさせていただきます。
○蝋山部会長 金融庁における広報担当課に大いにまずは期待したいというふうに思いますので、企画課長、よろしく予算請求もお願いします。
もう一つ問題がありますので、この件はまた改めて整理された資料を基に議論を深めたいと思いますが、もう一つ、最後の議題について入りたいというふうに思います。証券取引所の株式会社化という問題についてであります。
この点について、もう時間はほとんどありませんが、松川さん、かいつまんで御説明をお願いしたいというふうに思います。
○松川市場課長
それでは、私から、証券取引所の株式会社化を巡る状況について御説明させていただきます。
諸外国におきましては、最近、ニューヨーク証券取引所をはじめとしまして、主要な証券取引所が株式会社化ないし非会員組織化の計画を進めているところでありまして、証券取引所の株式会社化は世界的な潮流となっているところであります。
まず、資料の18−5を御覧いただきたいと思います。
まず、最初の○最近における動きでありますが、98年10月にオーストラリア証券取引所が株式会社化を実現しております。翌11月には米国のアメリカン証券取引所が、旧会員が一定の財産権を留保しながら非会員組織化を図りまして、その上で全米証券業協会(NASD)の傘下に入っております。
本年に入りましては、6月にトロント証券取引所が非会員組織化を計画を発表いたしまして、翌7月にはニューヨーク証券取引所が株式公開を前提とした株式会社化について、それから、既に株式会社となっておりますロンドン証券取引所が非会員組織化について、それぞれ計画を発表しております。
次に、現状で、組織形態がどうなっているかということでありますが、株主を会員に限定した株式会社となっているものが、?にありますようにロンドン、パリ、香港、シンガポールであります。このうち、ロンドン、パリ、香港につきましては非会員組織化が計画されております。また、株主が会員に限定されない株式会社といたしましては、ドイツ、ストックホルム、アムステルダム、オーストラリアであります。
さらに、会員組織をとるものは、ニューヨーク、トロントがございますが、既に株式会社化、非会員組織化を計画していることは、既に述べたとおりであります。
このように諸外国では証券取引所の株式会社化の動きが急速に広まっております。その背景としては、通信・情報技術が飛躍的に発展するとともに、証券取引の一層のグローバル化が進展し、国際市場間の競争が激化していることが挙げられます。
こうした状況ま中で、それぞれの取引所が組織の生き残りをかけまして、意思決定の迅速化や資金調達手段の多様化、運営の効率化を目指して株式会社化を図ろうとしていると言われております。
他方、我が国では、戦後、証券取引所を再開するに当たりまして、証券取引法で会員組織の法人として位置づけられて、現在に至っております。
資料の18−6を御覧いただきたいと思います。
証券取引所に関する証券取引法上の主な規定を示したものでありますが、4.にありますように、「証券取引所は、会員組織の法人とする。その会員は、証券会社及び政令で定める外国証券会社に限る。」となっておりまして、会員組織とされております。
また、有価証券の売買等を行うための市場を開設するという公共的な目的に鑑みまして、2.にありますように、設立につきまして免許制がとられているほか、きめ細かな規制が設けられております。
例えば、3.にありますように、定款、業務規程、受託契約準則の記載事項が法定されて、その変更には認可が必要になっております。
また、6.の?にありますように、業務は有価証券の売買等を公正、円滑ならしめ、かつ、投資者の保護に資するように運営されなければならないとされております。
さらに、有価証券の上場等の基準、売買等の諸ルールを定めることとされております。
そして、その88条にありますように、会員の法令等の遵守の状況の調査に関しても定款で定めるようにされております。
次のページにあります6.の?のにあります98条でありますけれども、会員に対する制裁措置等ありまして、証券取引所は、証券市場における自主規制機関の一つとして位置づけられているところであります。
行政当局による監督としては、7.にありますように、法令等に違反した場合等の措置といたしまして、上場証券の取引停止等の命令あるいは免許の取消し、業務の停止、役員の解任、取引の停止の命令、定款の変更命令等、相当広範囲な措置が定められております。
以上、我が国におきましても証券取引所につきましては、投資者の保護と公正な取引の確保のため、重要な役割が期待されておりまして、これを担保するため、現行法制度もかなり広範囲な規定が設けられているところであります。
以上、証券取引所の株式会社化を巡る状況について御説明申し上げました。我が国におきましても、証券取引所の株式会社化の問題につきまして具体的な検討をお願いすべき時期に来ているのではないかという問題意識に立って御説明をさせていただきました。
○蝋山部会長 いかがでございましょうか。ただいまの松川課長からの説明に関しまして、何か御意見がございましたら頂戴したいと思いますが、余り皆さん御関心はないですか。
私は前から取引所の取引所間競争というのを1979年にペーパーを書いて以来、非常に関心があるんですけれども、私の個人の意見を言いますと、ちょっと言い過ぎになりますので抑えますが、ございませんでしょうか。
吉野さん、どうぞ。
○吉野委員 シンガポールとか香港にちょっと行ってきたんですが、やっぱりあちらでは証券取引が非常に活発でして、アジアの金融危機の後もまたすぐ回復しているんですね。ですから、こういうふうに株式会社化すると同時に、何とか日本の市場をもっと活性化するようなところまで踏み込んでやっていただければと思うんです。
○蝋山部会長 ほかにございませんか。
そこで、提案をしなければいけないわけですが、金融審議会あるいは大蔵省金融企画局はワーキンググループを作るのが大変好きでありまして、この問題もワーキンググループを作って専門的な見地から御検討をお願いしようと。これはお願いする問題を広げると非常に難しい問題で、私どもの金融審議会第一部会のメインの作業であります金融サービス法の問題、そして、今日の裁判外紛争処理制度等とも絡んでくる自主規制機関のあり方ということに非常につながってくる点であります。日本証券業協会との関係も、踏み込もうと思えば、いろいろ踏み込めるところがあります。
しかし、私としては、ここで証券取引所の株式会社化ということは、少なくとも現状の自主規制機能その他は、公共的な側面は置いておいて、もう少し東京証券取引所をはじめとする各地の証券取引所が、時代の変化に敏速に対応できるようなデシジョンメーキングのための組織を作りたいと。現在の会員組織はいわゆるユナイテッド・ネーションズ方式でありまして、会員1人が1票を持っているが故に、大変動きが鈍い。これでは環境変化に対応できない、そういう側面が一つあるのではないかと私は想像します。
もしもそうであるとすれば、ある程度問題を絞った形で、株式会社化ということを御議論していただけるのではないだろうか。余り広げますと大変なことになってしまって、収拾がつかなくなって、何回も何回も、ホールセール・リーテイル、あるいは集団投資スキームの問題に勝るとも劣らない議論をお願いするというようなことになってしまうと思うんですが、それではやはり時代の変化に即応しようという今の松川課長のお話のような要請に応えることができないんじゃないかと思います。そういう点では、十分具体的な問題に論点を絞った形で、専門的・技術的な観点からの個別的検討をお願いするということがいいのではないかというふうに思います。そういう点からのワーキンググループの結成を御提案させていただきまして、証券取引所の株式会社化についての検討を進めていただくことにしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
松川さん、それでよろしい。仕事は進みますか。
○松川市場課長
はい。今の部会長の趣旨も踏まえまして、検討させていただきます。
○蝋山部会長 もちろん私はそのまま忠実である必要はないので、ひっくり返してもいいわけですけれども、そういうことです。よろしくお願いしたい。
どうぞ、一言。
○関オブザーバー
今の部会長のお話で、限定的な議論をしていくということは、時間的制約のことでやむを得ないと、私も賛成いたしますが、その範囲で、御承知のように市場改革の結果、組織的な証券市場として取引所市場と店頭市場と両方があって、並列して競争関係にある。協会の中でも昨今の事情を見まして、店頭市場の運営についても、いろいろそういう運営のやり方について議論していく必要があるんじゃないかと、こういう問題意識が出ているわけです。
それで、私は全くパラレルにはいかないように思っていますし、それをまた全面的に議論するという態勢にもまだなってないわけですけれども、このワーキンググループで議論していく過程で、取引所の議論と関連して、少し引っかかりが出てくるところがあるかもしれませんので、そこのところは、いわばマンデイトの中にちょっと触れておいていただきたいなというのが私の希望です。
○蝋山部会長 こういう取引システム、証券取引システムの問題というのはいろんな形で触れ合いが、相互関連がきついわけですから、非常に限定したといっても、やはりそれでもいろんな形で今の証券業協会の行っている店頭株の問題、店頭市場の問題ともどうしても絡んでくる。そういうことを一切触れるなということを言う気は全くありません。
ただ、余りどんどんどんどん広げるということだけは、ということでお願いしたいというふうに思っているわけです。よろしゅうございますでしょうか。
人選等につきましては、御一任いただきまして、後刻報告させていただくということにさせていただきたく思います。よろしゅうございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○蝋山部会長 ありがとうございました。それでは、そのようにさせていただきます。
大分後半は駆け足にいたしまして、申し訳ありませんでしたけれども、本日の議事は2時間以内で終わりそうですが、しかし、次回の日程等を事務局から御連絡をいたしますので、ちょうど2時間ということになるのではないかと思います。よろしく。
○玉川調査室長 次回の日程は、12月7日(火曜日)午後3時からとなっております。議事といたしましては、ホールセール・リーテイルに関するワーキンググループの議論を受けての金融商品の販売・勧誘ルールに関する御審議をいただき、「中間整理(第二次)」に向けた部会としてのとりまとめを進めることを予定しております。
○蝋山部会長 ということですので、今日は集団投資スキームに関するワーキンググループからの御報告を頂戴いたしましたが、12月7日には、ホールセール・リーテイルのワーキンググループから金融商品の販売・勧誘ルールについての報告を頂戴いたします。どうぞ奮って御参加いただきたく思います。
ありがとうございました。
散会いたします。
(以 上)