金融審議会「第一部会」第21回会合議事録



日時:


平成12年2月22日(火)14時01分〜16時12分
場所: 大蔵省本庁舎(4階)第三特別会議室




蝋山部会長 ただいまから、第21回金融審議会「第一部会」を開催いたします。
 御多用のところをお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。
 本日は、昨年末に「中間整理(第二次)」を公表して以来、初めて開催される第一部会であります。年末の公表時におきましては、いろんなメディアでも取り上げられましたし、我々の審議の成り行きが注目されているわけであります。その後、事務局ではいろいろ苦しい中、法案策定作業を我々の中間整理に従った形で進めておられるというふうに聞いております。今日はそのあたりをまず伺うというところから始めたいというふうに思います。
 世間の関心も決して冷えていません。中間整理に対するパブリック・コメントや、また、公表後の状況の変化といったものを受けまして、6月の最終答申に向けて十分に努力を重ねたいというふうに思っております。
 では、早速審議に入りますが、本日は、盛りだくさんの議事次第でありまして、まず、「中間整理(第二次)」に寄せられたパブリック・コメントの概要、それから第一部会の関連する法案の検討状況などについて事務局から紹介をしていただこうと思います。そのほかにも二つほど大きな議題があります。その他にも銀行への標準外形課税の問題等も議論したいと思いますので、スムーズな議事進行に御協力いただきますようお願い申し上げます。
 では、内藤課長、よろしくお願いします。


内藤企画課長
 それでは、私の方から御説明をさせていただきます。
 金融審議会の第一部会の「中間整理(第二次)」に寄せられたパブリック・コメント、これは確か1月14日に締め切らせていただきましたが、につきましては、お手元に配付している資料の第1部会21−1、21−2、この二つについて御覧をいただいたいと思います。21−1が「中間整理(第二次)」へのパブリック・コメントの概要でございます。21−2はもう少し詳しい資料的なものとしてつけさせていただきました。パブリック・コメント全体をできるだけ忠実にまとめさせていただきました紙でございますが、時間の関係もございますので、21−1を中心に御説明をさせていただきたいと思います。
 このパブリック・コメントを御説明いたしました後、集団投資スキームの法制の検討状況、それから販売・勧誘ルールに係る検討状況について申し添えさせていただきたいと思います。
 まず、21−1を御覧いただきたいと思います。
 まず、集団投資スキームの整備についてでございますが、資産流動化型スキームと(2)で資産運用型スキーム、その2類型があるという整理でございます。
 まず、資産流動化型スキームでございますが、最初は残余財産の分配ルールの明確化でありますとか、優先出資の減資、優先出資の無議決権化を投資家の立場として強く要望というような投資家サイドからの意見が出ておりまして、これは基本的に現在盛り込む方向で検討中でございます。
 信託型スキームの導入においては、受益者の集団的権利行使、こういった新しい方法というものを現在前向きに検討しておりますが、この中で実務上機能するかという観点と、それに要するコストにも配慮すべきだという御意見もいただいております。
 それから、三つ目でございますが、今後SPC法に基づく不動産証券化市場を育成・発展させていく上で、販売チャネルを多様化していくべきであるという御意見がございます。
 二つ目が資産の運用型スキームでございますが、二重規制とならないように改正投信法と既存の資産運用型の法制の調整をきちんとすべきであるというような御意見がございました。
 それから、資産の適正評価の担保について、資産の時価評価等のディスクロージャーの手当てをきちんとすべきであるというご意見がございました。
 ガバナンスについても、やはり実務上の観点、コスト面、こういった観点もきちんと考慮すべきであるというご意見がございました。
 特に運用型につきましては、運用会社の資格といいますか、制度が非常に重要になってまいりますが、これについては認可制が妥当であるという御意見がございました。
 利害関係人との取引を一律禁止するというのではなくて、情報開示等によって間接的な規制といいますか、そういった方法をとるべきであるというような御意見もございました。
 不動産投資においては、取引価格の透明性・公平性が確保できにくいのが実態であり、利害関係人取引に関する基準を緩和することは問題だという御意見がありました。
 受託者運用型については、利益相反等の問題がある、受託者と委託者というのは分離しておりませんので、そういった問題があるのではないかという御指摘がございます。
 投信法改正の効果を十分に発揮するためにも、販売の担い手が制限されることのないように考えていくべきであるというような御意見が出ております。
 それから二つ目でございますが、金融商品の販売・勧誘ルールの整備についてでございます。まず説明義務を明確化する意義等についてという点でございますが、説明義務を法制化し、明確なものとすることに基本的に賛成するということで、多数の方々から基本的に賛成だという御意見をいただいております。
 利用者保護の観点から法整備するということで、具体的、基本的な考え方というものを法案作成に当たって尊重していくべきであるというご意見をいただいております。
 利用者の自己責任原則の下で金融取引における公正性と効率性を実現するということを目的条項等でも明確にすべきではないかという御意見がございます。
 次のページを御覧いただきますが、説明義務を課すということは、販売業者にとっても好ましいことではないかというような御意見もいただいております。
 それから(2)の金融商品の範囲の問題でございますが、金融商品を横断的に対象とする販売・勧誘ルールの趣旨からしまして、事業主が国であっても、民間と同様の扱いをすべきであるということで、御議論がございました郵貯、簡保、そういった商品を想定をした御意見でございます。
 融資についても、リスクのある融資商品、あるいは他の金融商品との複合商品というものも考えられるので、こういったものについては販売・勧誘ルールの対象とすべきではないかという御意見がございました。
 それから、三つ目で、やはり消費者被害というものを考えますと、できる限り包括的な規定や類似商品を捉える規定をおくべきであるということで、後追いの政令指定ではないという工夫ができないかという御意見もございました。
 他方、説明義務違反に対する損害賠償責任というものが制度化されてくるということでございますので、包括的な定義よりは範囲が明確になるような個別列挙が望ましいという御意見も多うございます。
 次に、説明の方法、内容等でございますが、商品の仕組みや全体像の説明は、説明すべき重要事項に含まれるべきであるという御意見がございました。
 二つ目が、説明の重要事項として、顧客のリスク判断にとって重要な事項に限定して、具体的・明確に示すということで、現場に過度の負担がないような配慮をお願いしたいという御意見がございます。
 説明の方法としては、書面をもってすることを明文化すべきであるという御意見、あるいは説明のレベルといいますか、内容ですけれども、判断力・理解力の弱い人が理解できるような説明を基本として考えるべきであるというふうな御意見がございます。
 業者が説明不要であることについて勧誘した場合に、説明義務を課した目的が達成されないことにならないように、明らかに説明が不要である場合に限定すべきである、これは特に説明が不要なもの、出資性の高い商品について説明が不要なものというふうな考え方も示されておりましたので、その点についての御意見でございます。
 それから、特に説明が不要となるプロの範囲でございますが、これは適格機関投資家だけではなく、幅広く考えて、市場の効率性に留意すべきではないか、こういうような趣旨の御意見がございました。
 (3)でございますが、説明義務違反の民事上の効果の点でございますが、これについては、損害賠償責任による処理というものが、安易な過失相殺となるおそれがある。そこで消費者契約法では契約の取り消しというものも規定をしているということもあるので、そういったことを勘案しながら、今後さらなる検討を続けていくべきであるという御意見がございました。
 それから、立証責任を業者に転換するという観点から、ぜひ再検討をしていただきたい、金融機関に比べ、顧客は記憶や証言能力で極めて劣る場合が少なくないという御意見もございます。
 (4)が不適切な勧誘等についてというところで、詐欺的でありますとか、不実告知とか、あるいは迷惑販売等々の不適切な勧誘という問題でございますが、まず第1点が、詐欺的な勧誘等の取扱い、消費者契約法との関係というものを中心に整理いたしましたが、消費者契約法だけでは不十分だという御意見がございました。
 そこで、詐欺的な勧誘等については、全ての商品・サービスに等しく生ずる問題であり、金融サービスに特別な立法をすべき事由があると考えがたいというご意見がある一方、消費者契約法で十分であるというふうな御意見もございました。
 次のページを御覧いただきますと、二つ目の論点が適合性原則とか、不招請の勧誘という問題でございますが、これにつきましては、適合性原則、不招請勧誘の禁止が最重要課題として法制化すべきであるという御意見が出ております。
 他方、適合性原則というものが過度に意識され、営業活動が萎縮いたしますと、かえって顧客の利便性が損なわれるのではないかという御意見も出ております。
 それから、不招請の勧誘というものを法律で一律に禁止するということは、過度の規制、一般投資家の投資機会を奪うということにもなりかねないということで、業者のコンプライアンス体制に委ねるべきであるというような御意見もございました。
 販売業者に対するコンプライアンス規定の義務付けでございますが、コンプライアンスの公表対象はできる限り広くすべきであり、また、公表義務違反についての制裁措置を検討すべきであるという御意見がございました。
 それから、二つ目は、社内規程ないしマニュアルは業界独自の営業秘密とか、ノウハウとか、いろいろそれに属するものがございますので、そういったものについての公表というようなことについては、十分な配慮が必要であるという御意見がございます。
 それからまた、コンプライアンスについて業者間で競争を促すと、これは12月のレポートにございますように、コンプライアンス規程の義務付けは、できるだけ緩やかなものにして、その内容を競わせるということによってマーケットの進展というものを図っていこうという考え方が示されております。そういったことから考えると、公表内容、方法、程度等全てを業者の自主責任に委ねて初めて効果的に機能するのではないかというふうな御意見がございます。
 以上が現在法律案として検討しておるという内容についての御意見でございました。
 さらに、今後引き続き検討されるということのテーマでございますが、裁判外紛争処理制度の整備等と消費者教育の充実についてということで、まず、裁判外紛争処理制度の整備等については、英国のオンブズマン制度を参考にした裁判外紛争処理制度を確立すべきであるという御意見がございました。
 それから、裁判外紛争処理制度についての窓口の一元化、第三者の関与、プライバシーに配慮した上での紛争事例公開が重要であるという御意見。
 制度の横断化を議論する前に、裁判制度と裁判外紛争処理制度でどのように役割分担とするのか、また裁判外紛争処理制度を実効性あるものにするためにはどうするかを検討するべきであるというような御意見がございます。
 消費者教育の充実につきましては、金融サービス法の目的を達成するために必要なのは、金融サービスの利用者に対する教育を充実し、利用者が自己責任原則に立脚して行動する資質の向上を図ることである、学校教育の場においてしっかりした取り組みが行われるべきである、金融サービス法に、金融庁が消費者教育を行うということを規定すべきであるというふうな御意見がございます。
 以上がパブリック・コメントの御紹介でございます。
 そこで、次に、実質的な資料というのはお配りはしておりませんが、簡単に現在の私どもと法制当局との検討状況について御説明をいたします。
 1月に入りましてから、法制当局との検討が本格化をしておりまして、もちろん主に内閣法制局でございますが、特に金融商品の販売の販売・勧誘ルールにつきましては、民事法、民法との関係が非常に密接でもございますので、法務省の民事局とも頻繁に連絡をとりながら、意見交換をしながら作業を進めて、極めて過密な作業の中で、まだまだ厳しい、いろいろ宿題もいただいきながら、とにかく3月の半ば頃が私どもの予算の非関連の法案の提出締め切り、デッドラインでございますので、それに向けて大車輪で現在作業をしておるというところでございます。
 それで、これから申し上げますが、資産の流動化、あるいは資産の運用型の集団投資スキーム法制につきましては、現在の証券投資信託法というものを抜本的に改正、見直しをしていく必要がある。特にこれは対象商品を広げていくという問題もありますし、ガバナンス等の実質的な見直しというものも今回ございますので、そういったことを考えますと、相当大幅な見直しが必要になってくると思われます。
 それから、流動化の方につきましても、やはり使い勝手が悪いということで、できるだけ柔軟な制度にしていくという趣旨で現在見直しておりますけれども、これも対象商品を思い切って幅広いものにしていくという趣旨から、抜本的な見直しをしておるということで、相当数の、数百以上に上りますか、膨大な条文数の見直しを現在やっているというふうな状況でございます。
 そこで、SPCの改正につきましては、現在の方向性としては、まずSPC、流動化型について若干御説明いたしますと、12月のレポートで、信託型も新たに創設をするということで、スペシャル・パーパス・カンパニーと、スペシャル・パーパス・トラストというものの両方を整備をしていくというような改正に現在取り組んでおります。
 会社型について申し上げますと、対象資産を財産権一般に拡大をして、いろんな取引ニーズに応えていこうと考えております。SPCの登録制を届出制にして、手続の簡素化を図ることとしております。また、現行法ではSPCの最低資本金が300万となっております、それでもコストが大きいという実務家の要望もございますので、これを10万円に引き下げる方向で現在検討しております。
 それから、SPCの発行証券の商品性の改善ということで、減資し得るような形にできるとか、あるいは優先出資を無議決権化をして多様な証券が発行できるようにするといったことも考えております。
 それから、借入を柔軟にできるような形にしてほしいという要望も従来から出ておりまして、それも対応し得るような形に持っていきたいというふうに考えております。
 それから、資産流動化計画そのものについては、そもそもは定款記載事項ということで、SPC設立段階で証券の発行条件を詰めるということ自体が実務的に非常に難しいということで、何とかこれを規制緩和できないかという御意見がございまして、流動化計画については、定款事項から除外をして、特別多数決があれば、変更が可能にできるような、投資家の保護というものを十分に配慮しながら規制の緩和を図っていく、こういうふうなことで今取り組んでおります。
 それから、信託型につきましても、今申し上げた会社型と同様の仕組みを信託型に盛り込むような方向で考えております。特にこの信託型につきましては、受益証券を証取法上の有価証券として認めて、流通性を高め、マーケットを育成しようという観点で現在取り組んでおります。
 それから、大きい二つ目が運用型の仕組みでございまして、運用型の仕組みにつきましても、これまでは証券投信法における運用対象は、主として有価証券という形で規定されておったわけでございますが、これについては、不動産その他政令で定める資産に拡大をしていくということで取り組んでおります。
 それから、一番大きな問題は、運用会社に対する規定の整備というものをどう考えていくかというところでございまして、これについても昨年のレポートでいろいろ検討された末に取りまとめられておりまして、その線に沿って現在取り組んでおります。認可制にするということ、兼業については制限をする、利益相反による弊害防止のための情報開示を行う、一定事項については禁止を行う、そういった行為規制等の規定でございます。
 それから、借入制限の緩和ということで、不動産を運用対象にするという場合の資金の手当てというものは柔軟に行えるようにし、投資家保護と齟齬をきたさないような形での借入れを柔軟に行うというようことも考えております。
 その他信託約款の変更については、権利者の過半数が異議を述べた場合には、約款変更は禁止されるとか、あるいは異議を述べた受益者に対しては、その買取請求権を付与するという形で保護を図っていきたいということでございます。
 以上が流動化運用型の集団投資スキーム法制でございまして、基本的に昨年のレポートの方向でさらに検討を続けていく、そういう考え方でおります。
 次に、販売・勧誘ルールの方でございますけれども、販売・勧誘ルールにつきましても、今年の1月からいろいろと実務的な議論に入っております。現在のところ、幾つかの点について法制局からも指摘を受けたり、また、その検討の中で新たな論点といいますか、十分詰めてない論点が浮かび上がっておりまして、それについて私どもとして今それについての取り組みを行っておるという点でございます。
 具体的に申し上げますと、まず第1が説明義務の点でございますけれども、説明義務につきましては、金融商品販売業者が重要事項の説明をしなければならないという形で規定をしておりますが、この重要事項につきまして、後との関連でございますけれども、損害賠償責任の規定の規定振りとの関係でございますが、やはり重要事項の説明について、定型化といいますか、類型化といいますか、かなり明確に認識し得る、そういう重要事項として整理していく必要があるというふうな論点を出されておりまして、具体的に申し上げますと、例えば金利とか、為替とか、あるいは有価証券市場の相場とか、あるいはその他指標の数値の変動というものを直接原因として元本欠損が生ずるというふうなおそれがある場合に、そういった点について説明をしなければならないという点がございます。
 二つ目が信用リスクというような問題でございますが、金融商品販売業者とか、発行者等の業務、財産の状況の変化によって元本欠損が生ずるおそれがある場合、その他政令で定める事由による場合、それから、契約の条件面でございますが、権利行使期間の制限又は解除に係る制限がある場合にはその点を説明をする、そういった説明義務、その説明内容というのは重要事項であるということを中心に現在検討しております。
 もちろんプロとして政令で定められるような場合あるいは重要事項の説明を受ける意思がないというものを顧客が表明をしたというような場合には、この限りではないというふうな整理でございます。
 三つ目が損害賠償責任の規定でございます。重要事項の説明をしなかったというときには、これによって生じた損害を賠償するという考え方につきましては、基本的な規定ぶりとして考えておりましたが、法制局との検討の中で、現在は説明義務というものの存否といいますか、それが裁判の実務で半年以上の時間をかけて大いに原告、被告で争われるようなことになってきます。ただ、今後この説明義務というのを法制化をするという形になりますと、大いにその点では裁判の手続の簡素化というものを図り得るという面はあるわけでございますが、他方、そうなってまいりますと、説明をきちんとしなかったということからくる損害についての賠償ということは、逆に言いますと、説明をきちんとしたであるならば、その商品を買わなかったというようなことについての原告の立証という問題が果してできるのかどうかというふうな議論が出てまいりまして、その点については、現実問題として、今の裁判事例でも、私ども専門家ではございませんので、現実の法曹実務をやっておられる方々にお聞きいたしますと、必ずしもそこを厳密にやっているわけではないと。ただ、全体の裁判官の心証形成としていろいろ証明をする、あるいは反証するということの繰り返しで、最終的な結論を導き出しているということのようでございますけれども、やはり立法化、法制化していくという過程の中では、かなりその点について因果関係というものをどういうふうに考えていくか。余りにも原告側に難しい立証を求めるという形になりますと、制度がなかなか動かないというふうなことになる可能性がございます。
 ただ、それを安易に立証責任の転換といいますか、そういった形になってまいりますと、これはこれで非常に金融業者にとって酷な形になってくるというふうな問題点がございまして、常にバランスを考えながら法制化していく必要があるというふうな御指摘もいただいております。
 そういったことで、今回、重要事項の説明をしなかったということと、損害が発生するということについての相当因果関係というふうに呼ばれているようですが、そういったことについての推定を働かせ得るような規定というものを検討していく必要があるのではないかというふうな御議論もございまして、例えば元本欠損額について、それが顧客の側に生じた損害の額であるということを推定する、そういうような考え方も検討をする必要があるのではないかという形で、現在さらに検討をしているというふうな段階でございます。
 それから、第4点がコンプライアンスの点でございますが、金融商品販売業者は勧誘の適正の確保に努めなければならないというような規定をおくようなことで現在考えておりますが、それに加えまして、販売・勧誘の適正な勧誘を行うということについての何がしか、基本方針というふうにレポートでは書いてあると思いますが、勧誘方針といったものを定めまして、単にそれを訓示規定とするのかどうかというところでも議論がいろいろなされまして、何らかの実効性の確保を図る点も必要ではないかという御指摘もいただいておりまして、科料といった対応というものも含めて、さらに現在検討しておるというふうな状況でございます。
 以上、幾つかの点について販売・勧誘ルールの点につきましては、民法709条の不法行為の規定についての督促という位置づけの中で、どういった説明義務を課し、そして損害賠償責任というものの規定をおくのかということについて、必ずしも確定しているという段階ではございませんで、今日の段階ではそういったことで、法制当局とも種々議論が残っているということでの御理解をいただきながら、今申し上げたようなことでございます。


蝋山部会長 どうもありがとうございました。
 長くなりましたけれども、今内藤課長より紹介があったパブリック・コメント及び法案の法制化の過程についての概説につきまして御意見なり御質問がございましたらどうぞお願いしたいというふうに思います。いかがですか。
 上柳さん、どうぞ。


上柳委員 私は「中間整理(第二次)」に対して、主に弁護士なりあるいは種々団体の方からいろいろお話を伺って、今回は反応がかなり二つに別れるというか、率直にいいまして去年の夏の時は、もうちょっと何とかならんのかということで、かなり一致して評価しないという意見が多かったんですが、今回は両様の意見がありました。といいますのは、一つ目に、大蔵省なり、あるいは金融審議会が本気で法案という形で金融サービス、特に消費者との接点のところについて態度を示そうとしている、具体的には法案を用意されようとしているということについては、画期的なことだなというふうに言う反応がかなり強かったです。
 これは偏見かもわかりませんけれども、これまではどう見ても、もちろん投資者保護、消費者保護が目的だったとは思いますが、業者さんの間を見て、その間の調整をとっておられるというふうに見えたのが、むしろ消費者なり、ユーザーの方も視野に入れて、全体を見てその利益なり、あるいはルールを作っていくということについて踏み込まれたということで、実現すればですけれども、大変画期的ではないかというふうに歓迎する声もかなりありました。
 ただ、そういう点から言うと、後半は残念な面になるわけですけれども、ということであれば、せっかくのことですから、もう少し踏み込んでいただきたいなという意見もあったことも事実です。
 先ほど内藤課長からお話があったので、今調整をされているのかもしれませんけれども、特に私どもから見ると、いわゆる適合性の原則について、これはなかなか説明してもわかり切らない、一通りの説明ではなかなか理解できないような商品について、電話であるとか、訪問であるとかいうことで、金融機関の方から勧誘するというのはまずいのではないか、売ってはいけないというルールを決める必要があるのではないか、こういう問題ですけれども、これについて「中間整理」というのは、コンプライアンスでやっていこうと、しかもコンプライアンスを公表させることによって、消費者がどの金融機関がきっちりこういう原則を守ろうとされているのか見ていこう、こういうことになったわけですが、それが要は消費者サイドから言うと、それは信頼できるのかということになるわけですね。
 私なんかは審議会の議論を見ていますと、出てみえているオブザーバーの皆さん方を見ていますと、信用できるというふうに思いつつあるんですが、とはいっても、なかなかそんな人の言うことでいいのかという意見も強くて、やっぱりここは、少なくともコンプライアンスの公表については、公表をしない場合、公表が不十分な場合については、何らかの制裁があるべきではないかということと、やはり適合性原則については、最近判例上も損害賠償責任を認める例が出てきておりますので、そういう線から言うと、損害賠償責任を端的に決めるべきではないかという議論が強く出ております。
 今日の一覧表を見せていただいても、消費者サイドだけではなくて、金融機関で働いておられる方の中から、なかなかコンプライアンスだけでは営業重視の姿勢が改まらない限り難しいんだと、だからルール、法律として決めるべきだということを出されているようですので、そういう点について、さらに法案として具体化するときには、ぜひ検討していただきたいというふうに思います。


蝋山部会長 ありがとうございました。内藤さん、どうですか。


内藤企画課長 今、上柳先生から御指摘いただいた点で、適合性原則については、昨年のワーキング・グループでもそうですし、部会でもそうですけれども、いろいろ検討いたしまして、ただ、なかなかそれについて直接的な民事効というような形に持っていくというのも、その段階においては確かに難しい。ただ、それについての種々の勧誘姿勢としての問題というのはあるでしょうから、それについてはコンプライアンスというものの中で考えていく必要があるのではないかということになったわけです。それから、先ほど申し上げましたけれども、コンプライアンスについては、訓示規程としておくという非常に緩やかな規定の方法と、それから何らかの実効性の担保をおくということで先ほど申し上げましたが、科料といったようなことも含めて、これは法制当局とも、指摘も受けながら検討しておりまして、この辺については当然各方面で影響も出てまいりますので、その辺も十分考えながら、現在検討しておるというようなところでございます。


蝋山部会長 それでは次に、原さんどうぞ。同じ問題ですか。


原委員 いえ、違うことも含めてですけれど、実は消費者団体からも何件か出させていただいているかと思いますけれども、評価は上柳先生がおっしゃったとおりで、一歩大蔵省が法を進めていらっしゃる点では非常に評価をしていると。一方で不当勧誘、特に適合性の原則については、もう少し何とかならなかったんだろうかという意見が強いです。
 昨日も、パブリック・コメントの提出期限は過ぎているんですけれども、国民生活センターという消費者からの苦情相談を受け付けているセクションの方からお電話がありまして、法案の行方がどうなっているかというお話と、あわせて今の相談の現場なんですけれども、非常に巧妙になってきていまして、特に商品がまだ全然わからない人に売っているということは、今の状況でも大変多い。だから適合性の原則というあたりがまだ余り機能していないということと、取引をやめたいと言っても、やめさせてくれないという、何かものすごく基本的な、そういうところが今あるんですかというような感じだったんですけれども、そういった苦情というんでしょうか、それがたくさんあって、3月7日か24日をめどに、どういった形での苦情とか相談が多いかというのをまとめるという御予定になっていらっしゃるようなので、それがまとまりましたら、ぜひここの場にもというふうなお話をしておりますので、ぜひ説明義務だけではなくて、適合性のところもあわせて、もう2月の終わりですから、余り実質的な議論はできないかとも思いますが、ぜひやっていただきたいということです。
 それから、今の御説明のあった、11月のワーキングでまとめました販売・勧誘ルールの法制局との御苦労の話を聞いておりますけれども、私どもも短い時間だったので、議論を十分詰めていないところを、法制局のやりとりの中でかなり明確に見えてきたような部分もあるかというふうに思っておりまして、先ほどの立証責任のところも、余り議論を詰めていなかったところで、やはり推定なんかが必要ではないかというふうな御意見は、もっともなような気もいたしますし、科料の話もそうだと思うんですが、1点質問ということで気になる点は、冒頭におっしゃられた、何を重要事項にするかということで、それを明確化しろという話で、二つおっしゃられて、元本が欠損するというおそれがあるという場合と、それから信用リスクによるものと、この二つなんですけれども、私ども議論しているときに、元本欠損の生ずるおそれというのは当然なんですが、例えば私たちは元本割れがするというふうに聞いていても、それが2割程度にとどまるものなのか、8割になるのかという程度の問題ですとか、何が原因で元本割れが起きるのかというリスクの要因のようなものですね。だから商品設計全体がわかるようなものも含めて説明をしてほしいというふうな話をしていたんですけれども、それは今おっしゃられた、二つに絞られたというときに、どういう形で今話が進んでいるのかというのを、もうちょっと具体的に聞かせていただけないかと思います。その程度とか、商品設計全体の話は言わないということになるのかどうか、お願いしたいと思います。


内藤企画課長 現在の重要事項の問題点というのは、元本欠損というよりも、金利とか、為替とか、有価証券市場の相場とか、あるいはその他の諸要因、マーケットリスクですね、それが商品の元本欠損につながるというようなおそれがあるようなものが、重要事項という形で説明がされるという必要があるのではないかという議論を中心に今やっています。それが一つです。今、原委員がおっしゃるように、程度の問題はどうかとか、今後の見通しがどうかとかいう話になってまいりますと、これはむしろ断定的な勧誘とか、そういった話にまで広がってまいりますので、これはむしろ誤認を与えるよう可能性もありますので、そこは非常に注意をしなければいけません。むしろ我々の法律の求めるところというのは、そういう商品、例えば株である、あるいは社債である、あるいはいろんなオプションとかいわれる取引である、それぞれがどういうリスクを抱えているのかということを、一般の人もわかりやすい形で説明する、基本的なことを説明するということだろうと思うんですね。
 それ以上の、例えば特定の株、A社という株、B社という株がどうなんだという財務内容の状況そのもについては、証券取引法上のディクロージャーとか、いろんな開示書類が出されていますから、その情報を見て、目論見書を見て投資家に判断してもらう。ただ、基本的なところが十分理解されてないということで、例えばワラントというものが十分理解されてないということで、例えば行使期間を全く考えないでずっと持ってしまったと。結局そのチャンスを失って紙くず同然になってしまったというときには、やはりその説明義務があったんではないかという議論があり得ると。ですからそういった点を説明していくということで考えております。ですから、そういう面で元本欠損が生じ得ることについての因果関係が明確なものについてのリスクといいますか、要因を説明してもらうということで、金利であるとか、あるいは為替とか、例えば外貨預金ですと、預金そのものは原則的には元本の目減りはないわけですけれども、ただそれが倒産という形になりますと、それが顕在化してまいります。ですから例えば信用リスクについては倒産をするということの、言い方の問題はありますけれども、倒産するときの1,000万まではカバーしますとか、あるいは1,000万を超えればカバーされないことがありますとかいうふうな点ですね。
 それから、金利については、いろいろ金利は変わりますけれども、その時々の金利ですから、特に元本欠損ということではありません。ただ、為替の変動がありますから、為替の変動によってそういった元本のリスクというものが出てまいりますというふうな説明になろうかと思うんですね。
 ですから、そういったことを業者も非常に明確にその説明のポイントがわかり得るような制度にしなければいけませんし、それを聞けば、理解をすれば、利用者にとってみても基本的なところは押さえたという説明をしてもらう必要があると、そういう意味での制度化を図っておるということでございます。


原委員 消費特性ごとにまたいろいろあるかと思うので、具体的にこの商品についてはこういうことになるんですというのが、何かもうちょっとある方がわかりやすいですが、今この場ではわかりました。


蝋山部会長 ほかにございませんでしょうか。
 杵渕さん、どうぞ。


杵渕オブザーバー 運用会社の規制のところで一つお伺いしたいことがあるんですが、約款変更の件なんですけれども、今の制度でいきますと、異議申立て制度というものを設けて、過半数の者が反対したら約款変更は不可と。それに対しては買い取ればいいと、こういうことになっているんですが、仮に反対した人が50%いましたと、約款変更は不可になりましたと。ところがその人が全部解約請求を申請して、全部抜けていなくなりましたと。残っている人は論理的には全部賛成の人ですね。その場合でも約款というのは変更できないのか。そのときはまた改めてもう一回公示をやるんですか。


内藤企画課長 細かなことですので、個別に相談させていただきます。


石橋オブザーバー 2点、私の方から意見といいますか、感想的なものも含めて述べさせていただければと思いますが、1点目は立証責任なんですが、内藤課長の説明を理解をさせていただいたつもりでおりますけれども、ただその中で現行の裁判実務においても、ケース・バイ・ケースで適切な分配が行われているということ、これもそのとおりだというふうに思っておりますけれども、現在の裁判実務というものが、ベースとしてはあくまでも、平たく言いますと、原告に挙証責任がありという民事法の一般原則のもとで裁判所の工夫がなされているというふうに考えておりまして、これが一方的にという形にはならないにしても、挙証責任が転換をされた場合には、かなりの負担になってくるということも予測されるのではないかというふうに思っております。この点御理解を賜ればというふうに思っております。
 それからもう一つが、説明義務違反、あるいは説明義務の範囲でございますが、現在のまさしくこの分野というのは、判例、あるいは判例法の果たす割合というのが大変広い、また大きい分野ではないかというふうに考えます。もちろん可能であれば、このような領域においても、今議論いただいておりますようなリスクの関係での説明義務にように、これを成文化するということによって、法的な安定性の向上につながってくると、大変意義深いものだというふうに考えますけれども、一方で一律に法律でルールを定めてしまうということ、かつ具体的な列挙をしていくということになってまいりますと、具体的な紛争の態様に着目した裁判所による個々の柔軟な解決の妨げになり、時代の変化とか、あるいは社会のニーズの変化とか、こういうものに本当に対応できていくんだろうか、どうだろうかというようなところもあろうかというふうに思います。
 したがいまして、ルールの具体化について一方的に決めこむのではなくて、やはり大きな流れの中で、5年後、10年後にどういうふうな形で対応ができるのかというところも頭にぜひ置いていただければというふうに思っております。


蝋山部会長 ただいまの石橋さんの感想なり御意見に関してどういうふうに。


内藤企画課長 今の御意見について特に感想といいますか、私どもから申し上げるということでありませんで、今申し上げたことについての石橋さんのお立場からの当然のお考えだろうというふうに思っておりますし、そうした御意見というのは十分我々も承知しながら、これからまた真摯に対応していきたいというふうに思っております。


石橋オブザーバー よろしくお願いいたします。


蝋山部会長 ほかにございませんか。


関オブザーバー 基本的に石橋さんの御懸念の2点目と全く同じことを私も申し上げたいと思います。特に挙証責任の転換が法律上出てくるということは、事実上の転換も入れますと、やっぱり裁判のいろいろな今後の一つ一つの事件処理に与える影響というのは非常に大きいと思われます。内藤課長の御説明の中にも、業者の方に余り酷にならないようにということも十分織り込んで考えていくと、今検討しているというお話もありましたし、それからまた「中間整理(第二次)」の一部をなしているワーキング・グループの報告の中には、立証責任の転換は必要ないだろうという結論が一応出ているわけでありますので、そういったことを踏まえて慎重に御検討願いたいと思います。


蝋山部会長 ありがとうございました。
 いろいろまだ御意見はあろうかと思いますが、私としては、ともかく今回の説明義務に関する法制化ということを柱にして、日本の金融サービスの販売・勧誘のあり方に関するある種のグラウンドができて前へ進むと、まだまだそれでは不十分だろうとは思いますし、またそこで出てきた様々な欠点というのも出てくるだろうと、今、産業側から示されたような懸念というのも、もしかしたら現実のものになるかもしれない。ともかくしかし、私としてはできるだけ包括的な形で横断的な金融商品の販売・勧誘に関してのルールの一端が形成されるということは非常に大事なことであって、今後もぜひ、これが全体としてもろくも崩れ去って、法制化できないというようなことにはならないように、事務当局に法務省との間の交渉、その他に御尽力をお願いしたいというふうに思いますし、また、政務次官にもいろいろお助けいただきたいというふうに思うわけです。ここで後退したらだめだというふうに思いますね。
 もう一つは、SPC法、あるいは証券投資信託に関する法律については、杵渕さんが御質問されて、細かい点になりますと、まだまだ裁量の余地というものがあって、その辺のところは詰めていかなければならない点があろうかと思いますが、どうもこちらの方はうまくいきそうだと、その辺のポリティカルなバックグラウンドというのはどういうところなのかというのは、僕によくわからないところがありますが、大いに期待したい。
 しかし、そういう効率化を促すという点と、日本のイノベーティブな金融システムを作り上げるという側面と、同時に公正なシステムを作り上げるということとが、二つ同時並行的に進んでいるわけでありまして、ぜひ片方だけというふうなことがないように我々としても注目したいと思いますし、仮に万が一そんなことになったとしたならば、一体なぜそうなのかということを審議会としてもきちんと取り上げて議論しなければいけないんではないかというふうに思います。
 今後まだまだ、時間的な余裕は余りありませんけれども、事務局は大車輪で動いていただかなければならないわけで、審議会の委員としてはそれを見ているということで、やや、やきもきしているというところがあるわけですが、余り動ける余地がなさそうなので、残念に思うわけであります。
 なお、今日、パブリック・コメントとして配付しました資料は、重立ったものを事務局が取りまとめたものでありまして、もしもコメントの全文が必要であるというお方には、閲覧・コピー用の全文を用意しておりますので、事務局にお申しつけいただきたいというふうに思います。一応この「中間整理(第二次)」以降の経過報告につきましては以上にいたしまして、次の盛りだくさんの話題に入りたいと思います。
 それは、昨年末、金融審議会総会の答申として公表されました「特例措置終了後の預金保険制度及び金融機関の破綻処理」に基づいた法案の策定作業が完了いたしまして、去る2月18日に法案提出の運びとなりました。新聞報道等で御承知のように、金融審議会の答申とはやや内容が違った、ややかな、大いにかな、違ったものになってはいるわけでありますけれども、その2月18日に提出されました「預金保険法等の一部改正法案」についての概要の紹介をお願いしたいと思います。林信用機構室長、どうぞよろしくお願いいたします。


林信用機構室長 お手元に21−3という資料と、21−4という資料をお配りしておるかと思います。21−3の方が去る18日に閣議決定されました法律案の概要でございますが、まず21−4の方のセーフティネット(案)というポンチ絵を御覧いただいて、今回の改正案がどういう位置づけのものであるかということを御説明したいと思います。
 まず左側が現行法、右の方が改正法に盛り込まれた内容でございます。現行及び改正後のうち、一重の太い黒い線のものが恒久制度としての法律でございまして、二重線で囲んでございますのが時限措置でございます。現行の制度につきましては、御案内のとおり、預金保険法の本則においては、一定の金額までの預金、小額預金者を保護するという仕組みがあるわけですけれども、これに加えて金融再生法の中でいろんな破綻処理の仕組みが整えられ、金融機能早期健全化法の中で銀行に対する資本増強の仕組み等が制度化され、さらに預金保険法の附則の中で特別資金援助ということで、保険金の支払いが限度額1,000万円を超えて預金を全額保護するという仕組みになっておったわけであります。
 第二部会ではこの現行制度について、一番左下の預金保険法附則の特別資金援助が予定どおり13年の3月、2001年の3月で期限切れとなるということを前提に、改正後の恒久的な制度としての預金保険制度のあり方はどうあるべきかということを議論していただいておったわけでございます。
 私どもの今回の改正案でございますけれども、一番左下の預金保険法の附則の特別資金援助につきましては、先刻報道等でも御案内のとおり、いわゆるペイオフ解禁を1年延長するということで、特別資金援助について13年3月ではなく、さらに14年3月まではできることとするということが与党間で決められたわけでございます。
 その際、さらに全額保護がペイオフ解禁が1年延長された後で、さらに流動性預金について1年間は全額保護を続けるという部分が、一番右下の15年3月まで延びた部分でございます。
 それから、早期健全化法、再生法につきましては、予定どおり基本的には13年3月までで業務を終了するわけですけれども、早期健全化法のうちの協同組織金融機関に係る資本増強につきましては、これまで信用金庫、信用組合といった協同組織金融機関につきましては、優先出資法上の優先出資を行うということが認められておらなかったために、事実上健全化法の適用が銀行だけに限られておったものですから、優先出資法を改正して、協同組織金融機関にも資本増強ができるようにするとともに、14年3月、いわゆるペイオフが凍結されている間は、これができるようにこの期限を1年延長したというところでございます。
 今申し上げたのはいずれも時限措置でございますけれども、翻って右上の方を見ていただきますと、改正後の預金保険法の本則におきましては、従来からございます保険金支払い、一般資金援助という預金保険法本則上の措置のほか、金融整理管財人、ブリッジバンク、あるいは危機的な事態における特例措置というふうに書いてございますけれども、ここはまさに金融審議会の第二部会でずっと御議論をいただいて、最終答申にまとめていただいた議論に沿った恒久制度が整えられたということでございます。
 第二部会では、先ほど申しましたように、13年3月で特例措置が終了するということを前提に御議論をいただいたわけですけれども、与党間の協議におきましては、13年3月に予定どおり終了させるのかどうかというところについて、専ら議論が集中したわけでございまして、年末に与党の政策責任者間で1年延長ということが決まった。そのときの取りまとめられた記者会見における発表といたしましては、我が国の金融システムは官民一体の努力によって極めて安定化してきている状況にある。しかし、今後中小企業対策に万全を期すなど、我が国の経済を確実な安定軌道に乗せるためには、一部の金融機関においてはさらに改善を必要とするところがある。政府が適切な検査監督指導を行うとともに、金融機関もみずから一層の改善努力を行い、より強固な金融システムの構築を図るべきである。その間ペイオフについては、さらに1年これを凍結することが適当であるというふうになされたところでございます。
 その後の国会等の審議におきましては、宮沢大蔵大臣は、もう少し自分の言葉でこの間の事情を説明しておられまして、このペイオフ凍結の1年延長というのは、決して複雑な話ではございませんと。具体的には現在都道府県の監督下にある300弱の信用組合が、4月から初めて国に移管され、金融監督庁の検査監督を受けるようになると。検査監督権限が信組について国に移管された後は、今後1年間で各信用組合の経営内容をよく見た上で、破綻処理を要するもの、早期是正措置を打つべきもの、場合によって公的資金の援助が適当となるものに判別する必要があり、その判別に従って次の1年をかけて必要な措置をとるということが、これまで幾つかの信用組合が毎年破綻してきている状況も踏まえれば、必要なのではないかということであるということを説明され、さらに再延長することはないということを言明されているというところでございます。
 以上が全体的な改正案のあり方でございまして、次に、21−3の方を御覧いただきまして、法律案の概要を御説明したいと思います。
 まず、1ページ目の1.のところでございますけれども、平成13年4月以降も恒久的な制度でございますけれども、この部分が基本的に金融審議会の答申に沿って預金保険法の改正を行った部分でございます。
 まず(1)として、破綻処理の迅速化ということにつきましては、事前準備については、内務整理について金融審議会で議論がございまして、金融機関自身に内整をさせるのではなくて、預金保険機構がスムーズにデータをもらったときに内整できるようなシステムの整備を行うということでまとめられております。
 それから、いわゆる日本版P&Aを迅速に行える仕組みを作るために、営業譲渡の手続の迅速化・簡素化、あるいは営業譲渡に伴う債権者保護手続の特例などといった金融審議会で議論していただいた措置を盛り込んでいるところでございます。
 2ページ目を御覧いただきますと、以上が破綻処理の迅速化という部分でございますけれども、あわせて破綻処理の多様化ということでございまして、まず金融整理管財人につきましては、これまでも金融機関が債務超過であったり、あるいは預金の払戻しを停止するおそれがあると認められる場合には、金融整理管財人を置いて破綻処理に入ることができたわけですけれども、早期に破綻処理に入り得ることができるようにという観点から、金融機関からの申し出があった場合には、債務超過が生ずるおそれがあると認めるという段階でも、金融整理管財人を置いて破綻処理に入れるということとしているところでございます。
 それから、破綻した金融機関の経営者等の民事上、刑事上の責任追及ということもあわせて盛り込んでおります。
 マル2については、受皿が直ちにあらわれない場合のブリッジバンク、マル3のところは、資金援助の多様化ということで、営業の一部譲渡の場合の資金援助、あるいは受皿に対する資金増強、ロス・シェア・ルールなども盛り込んでいるところでございます。
 (3)は、金融危機(システミック・リスク)への対応ということでございまして、3ページ目を御覧いただきますと、a)、b)、c)と三つのメニューを用意しておりまして、a)が現在の健全化法の資本増強を引き継ぐもの、b)が現在の預金保険法の附則にございます特別資金援助、ペイオフ・コストを超えて資金援助をできるようにするというもの、c)が現在の特別公的管理、長銀、日債銀に行っております特別公的管理に当たるものでございます。
 (4)の部分は、預金保険の付保対象等の改正ということで、金融債のうちの権利者を確知できるもの、権利が転々流通しないもの、あるいは公金預金、地方公共団体の預金、それから預金の利息を新たに預金保険の対象とすることを盛り込んでおります。
 4ページ目にいきまして、マル4の注のところでございますけれども、今回、金融機関の経営の健全性に応じた保険料率の導入についても、法制度上は可能ということに法律改正をしておりますけれども、具体的な導入については慎重に考えたいと思っているところでございます。
 (5)のその他のところでは、マル1のところで、破綻した金融機関から受皿に営業が譲渡されるまでの間も保険金相当額の預金の払戻しや資産価値減少防止のための破綻金融機関の貸付けを可能とするような措置を講じているところでございます。
 2.のその他の法律の一部改正といたしまして、あわせて金融機関の更生手続の特例を改正いたしまして、金融機関にも民事再生手続を使いやすいような規定の整備をしているところでございます。
 以上が恒久制度の部分でございまして、併せて、一番下からですけれども、交付国債を既に交付しております。7兆円に追加して、6兆円に増額することとしております。
 5ページ目の方は、冒頭申し上げました特例措置の延長ということで、預金の全額保護を1年延長し、さらにその後流動性預金について全額保護を1年間行うということでございます。
 一番最後のIVのところは、協同組織金融機関の経営基盤の強化ということで、優先出資法の改正と、早期健全化法の改正によりまして、協同組織にも資本増強をやりやすいようにするというものでございます。
 最後の6ページ目は、施行期日でございまして、恒久制度については、平成13年4月1日から、それ以外の部分については速やかに施行したいということでございます。
 以上の法律案を国会でこれから御審議願うことになるわけでございます。整理した暁には、さらにまた改正後の預金保険制度のあり方について、十分なPRを行いたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 時間の関係で大変はしょって説明させていただきましたが、以上でございます。


蝋山部会長 ありがとうございました。
 何かこの点に関しまして御質問なり御意見はございますか。
 高橋さん、どうぞ。


高橋委員 預金保険法の本則上の措置について一つお伺いしたいことがございます。
 本日お配りいただいた資料では、保険金支払い、いわゆる狭義のペイオフの保険金支払いの限度額というのが、現行水準1,000万円に据え置くのだけれども、各預金者の保険金の額は、保険金支払い限度額までの元本1,000万円までと、その元本にかかわる利息というふうになっています。今まで預金保険機構が出していたアナウンスメント及び一般消費者向けのパンフレットでは、預金者に保証される保険金の額は保険金支払い限度額までの元本のみというふうにされておりました。1,000万円までであれば、利息も払うという解釈になっているように思われるのですけれども、これは第二部会の方でも検討されていなかった事項だと記憶しております。これは何らかの解釈の違いによるものなのか、あるいは何らかの理由で支払い範囲を拡大するに至ったのか、その経緯の御説明をお願いいたします。


林信用機構室長 現行の預金保険法上では保険金の支払いの対象になっているのは元本だけで、利息については一部カットされるということでございます。今回の金融審議会の答申で、利息も保険の支払いの対象にしようということで、利息についても支払いの対象になりました。支払いの対象にするときに、しからば、元本と利息を合わせて1,000万円までとするのか、1,000万円までの元本に係る利子については、合わせて1,000万円を超えても保険金支払いの対象にするのかというところが議論の分かれ得るところだったわけですけれども、合わせて1,000万円までですよということにしますと、なかなか金利の情勢なりによってわかりにくいところがございまして、1,000万円までの元本に係る利息はオーケーだとすれば、1,000万円ずつ分けておけば安心なものですから、そちらの方が利用者にとってはわかりやすいであろうというような観点から、今回そういう仕組みにしたということでございます。


蝋山部会長 ほかにございませんか。
 私としては一つだけ、左側の、この使われた図の現行の預金保険法と新しい預金保険法、一番初めに保険金支払いというのが書いてある、狭義のペイオフで、しかし、今度の精神からいえば、保険金支払いというのはずっと後退させたわけですね。そういう点では表現の仕方として、破綻処理の迅速化・多様化に関係する一般資金援助、金融整理管財人の設置、承継銀行というのを前に出して、そして保険金支払いを最後に書くという方が、僕はいいように思うんですけどね、ちょっと変な、表現の技術の問題かもしれないけれども、その辺のところは必ずしも新聞報道等では、ポリシー、この制度を運営する態度というものが余り明確に理解されてないように私は思うんで、この点は非常に大事なことで、できるだけ保険金支払いというのは後に持ってくる。可能な限りいろんな手段を使って迅速に処理するといううところがみそではないかと私は思いますので、その辺のところを、この紙がどういうふうに回るか知りませんけれども。


林信用機構室長 おっしゃるとおりでございまして、金融審議会の第二部会では、ペイオフはできるだけ避けて、一般資金援助方式をとると。その一般資金援助方式をとるにも、多様な場合に対応できるように、かつ迅速にできるようにということをいろいろ議論いただいて、恒久的な制度の中に今回の改正に当たりましてそういった措置を取り込んだわけであります。
 ただ、残念ながらいろんなところに御説明しておった過程でも、なかなかその辺のところはぴんとこないというか、この前に預金保険についての基本的な考え方とか、答申の全貌をいろいろ御説明したときに、その点を御説明しておったんですが、その点はなかなか皆さんの余り御関心を得られなかったというところでございました。
 この紙なりにつきましては、確かに現行の預金保険法、特に改正後の預金保険法は、いろんな破綻処理の仕組みをいかに迅速に多様な場合にできるかということで組み立てられている部分が非常にウエートとしても大きくなっております。ただ、議論の出発点がどれだけが保険金であって、どれだけが確実に100%保護されるかというところから預金保険法がどうしても組み立てられておるものですから、こういった説明の資料、あるいは条文の順番なんかも、まず保険があって、破綻処理の制度が続いていくというふうな仕組みになっておるので、便宜こちらの方もそういう資料になっているということでございまして、意義については、全く部会長のおっしゃるとおりだと私も思っております。


貝塚会長 私も蝋山部会長と全く同意見です。要するに金融審議会の議論が蛇行したというのかな、その間にだんだん世の中の理解もかなり変わってきたというのは私の感じているところで、その辺のところは、今後、ここに政務次官がおられるわけですが、やはり政治家の皆さんにも、その辺のところはそういうものだということで、よろしくお願いします。


林政務次官 この法案の説明を私も参議院の政策審議会ですとか、いろんなところでしておりますが、今、会長、部会長がおっしゃったように、私もそういう認識を共有しておりますので、書き方はこうでありますけれども、原則は一般資金援助でございますということは、口を酸っぱくして申しておるつもりでございまして、今後もお墨付きをいただきましたので、そういう方向で説明してまいりたいと思います。今、林さんから御説明があったように、最初はどうしてもペイオフ、ペイオフとみんなが頭に血が上っていて、そこばっかり議論を、特に討論をしておりましたので、また、マスコミの報道もそこへ集中しておりましたので、そういう印象があることは拭えないわけでございますが、落ちついてきてゆっくり考えていきますと、本則はこっちであるということがわかっていただけると思いますので、特に国会の審議等におきましては、その点を留意をして、なるべくその方向で周知徹底に努めてまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いします。


蝋山部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、昨年の末以来証券取引所の株式会社化という問題が浮上いたしまして、ワーキング・グループを結成し、御検討をいただいておりました。その検討結果が報告という形で提出されましたので、それを御審議いただきたく思います。
 事柄の性質上非常に専門性が高いことでありますので、ワーキング・グループにお願いしたわけでありますけれども、この内容は部会報告として公表させていただきまして、今国会での法案提出の準備に入るということにさせていただきたく思います。
 まず初めに、部会報告の素案となるワーキング・グループの「証券取引所等の組織形態の在り方について」という資料21−6、これを事務局に読んでもらいます。委員の先生方には前もってお配りしてあるはずでありますけれども、一応内容確認をお願いいたしたく思います。それに引き続きまして、ワーキング・グループの座長を務められました神田委員から、その内容等について補足説明をいただき、議論に入るというふうにさせていただきます。
 それでは、事務局、よろしくお願いします。


事務局 資料の21−6でございますが、4枚めくっていただきますと、本文が書いてございますので、そこから読ませていただきます。

証券取引所等の組織形態の在り方について(案)
   

 はじめに
 
 今日の内外の証券取引所を取り巻く環境をみると、情報通信技術の飛躍的な発展、金融証券取引の一層のグルーバル化や金融システム改革の進展、特にアメリカにおける電子証券取引ネットワーク(Electronic Communications Network System:ECN)の台頭などを背景に、取引所間及び取引所と電子証券取引ネットワーク等の取引システムの間において、国内的にも国際的にも市場間競争が一段と激化している。
 こうした中で、諸外国では、技術革新導入のための資金確保や意思決定の迅速化を図り、提供するサービスの魅力を向上させ、自国市場の国際的地位の確保を実現させるため、証券取引所の株式会社化ないし非会員組織化を図ろうとする動きが急速に広まっている。とりわけ、昨年7月にニューヨーク証券取引所が株式会社化の計画を発表し、ロンドン証券取引所も非会員組織化の計画を発表したことを契機に、このような動きはさらに加速している。
 他方、我が国においても、株式市場における外国人投資家の委託売買代金のシェアが40パーセント近くに達しているように、国境を越えた取引が大幅に拡大している。ヨーロッパにおける取引所の統合、デリバティブ分野での取引所間の提携などの動きとも相まって、証券取引所の国際競争力の強化を促す要因となっている。
 また、金融システム改革の進展につれて、仲介者たる証券会社のみならず、投資者、発行会社も含め、市場利用者のニーズの多様化が進み、これらに速やかに対応していくことが一層強く求められるようになっている。
 以上のような状況の下で、証券市場及び証券取引所に対する信認を確保しつつ、証券取引所の組織形態の在り方を見直す必要が生じている。
 このような認識の下、金融審議会第一部会は、昨年11月30日に「証券取引所の組織形態のあり方等に関するワーキング・グループ」を設置し、証券取引所の組織形態の在り方等について検討を行ってきた。
 同ワーキング・グループは、12月22日に第1回会合を開催して以来、これまで5回の会合を重ね、その間、証券取引所の組織形態の在り方等についての関係者からのヒアリングを実施するなど、短期間ではあるが精力的な検討を行った。今回、同ワーキング・グループにおける検討結果等を踏まえ、以下のように最終的な考え方をとりまとめた。




 株式会社化の必要性

(1)

 会員組織の意義の変化
 戦後、我が国の証券取引所は会員組織として運営され、そのための資金は必要な範囲で基本的に会員が実費として負担してきた。
 会員組織がとられてきたのは、証券市場の運営を証券取引に精通している者の自治に委ねた方が効果的であるとともに、公正性の確保のためにも同僚による監視という機能を有効に活用できるとの考え方に基づくものであったと考えられる。
 それと同時に、会員が同質的であり、利害が共通している限り、簡便かつ速やかな意思決定ができるほか、営利を目的としない実費主義の理念による運営であるため取引コストの低減に資するとの考え方にも基づくものであったと考えられる。
 他方、諸外国においては、金融自由化の進展の中で、取引所会員の同質性が薄まりつつあり、こうした事情が組織形態の株式会社化への動きを加速させている。我が国においても、金融システム改革により、株式委託手数料の自由化等が図られたことを契機に今後会員の経営スタイル等の多様化が一層進むことが予想される中で、様々な環境変化や多様なニーズに対してより迅速に対応できる組織形態が必要になると考えられる。
 また、巨額なシステム投資への資金需要に対し、会員組織の下でどこまで対応できるかという問題も生じている。

(2)

 株式会社化のメリット
 証券取引所の株式会社化には、以下に示す通り、意思決定の迅速化、資金調達方法の多様化・円滑化、関係者の意識変革、証券市場全体の機能強化といったメリットがあると考えられ、諸外国の証券取引所の株式会社化も、これらのメリットの発揮を目指して行われようとしているものと理解することができる。


 株式会社という組織形態は、長い時間と歴史を経て整備されてきた組織運営の法的形態の一つであり、多様な関係者が存在する中で、様々な環境変化や市場利用者の多様なニーズへ適切に対応し、透明性を確保しつつ、迅速な意思決定を行っていく上において、有効かつ適切な組織形態である。


 証券取引所の株式会社化は、証券取引所の運営において、システム投資が極めて重要になってきている状況の中で、取引参加者や発行会社からの収入に依存するだけでなく、証券市場からの資金調達が可能になるという意味で、資金調達方法の多様化・円滑化に資する。


 証券取引所の株式会社化は、自らの組織の株価という共通目標を持つことなどにより、証券取引所が運営する市場の利便性及び効率性の向上や国際競争力の強化に向けて、関係者の意識変革が促される契機となる。


 証券取引所の株式会社化により、低コストで魅力的なサービスが提供される場合には、波及的な効果として、我が国証券市場全体の利便性及び効率性の向上や国際競争力の高まりも期待できる。

(3)

 株式会社化のための法制度整備の必要性
 証券取引所をめぐる環境が著しく変化している中、証券取引所の対応力を高めるため、我が国においても、株式会社形態を導入することは、避けてとおれない課題となっている。
 特に、海外で既に多くの証券取引所が株式会社化を実現ないし検討していることを考慮すると、国際競争力確保の観点からも、我が国において、できるだけ早期に株式会社形態を可能とする法制度を整備することが望まれる。
 なお、株式会社化のメリットの現れ方は、市場規模等、各証券取引所の置かれた環境により異なるものと考えられる。法制化にあたっては、そうした状況にも十分配慮し、会員組織形態も引き続き可能とすべきであると考えられる。




 株式会社化と証券取引所の公共性との関係
 

 株式会社化のメリットのを生かすためには営利性を承認する必要がある一方、証券取引所の業務は、有価証券の高い流動性の提供等により市場における公正な価格形成を実現するという高度な公共性を有している。
 株式会社化された場合でも、取引所市場の公共性を維持していくことは引き続き不可欠であり、したがって、この営利性と公共性のバランスをいかに確保していくかが重要な課題となる。

(1)

 現行制度の枠組み
 現行制度においては、証券取引所は、設立については免許制であり、定款等の変更には行政当局の認可が必要とされ、さらに法令等に違反した場合に免許の取消し等の処分がなされるなど、様々な規制・監督に服することとされている。
 また、証券取引所は、法律上、自主規制機関として位置づけられ、自らが開設する市場での取引について一定の自主ルールを定め、取引参加者たる会員に法令及び当該自主ルールの遵守を求めるとともに、これらの法令等の遵守の状況について調査を行い、仮に違反行為があったような場合には、会員に対する制裁措置をとることが義務づけられている。
 このような自主規制機能は、高度に専門化し、急速に変化する証券市場にあって、行政当局による規制・監督と相まって、市場の公正制・信頼性を高める上で、極めて重要な役割を果たしている。そして、金融システム改革による様々な自由化の進展とともに、その役割は一層高まっている。

(2)

 基本的な考え方
 証券取引所が株式会社化される場合においては、行政当局による規制・監督や自主規制機能の在り方について、どのように考えるべきかという問題がある。
 この点については、証券取引所が証券市場の運営という国民経済上極めて重要な役割を担っていることを考慮すると、これまでと同様に、取引の公正性を担保し、投資者の保護を図っていくための手段が不可欠であり、行政当局による規制・監督や自主規制の仕組みは、基本的にこれを維持することが適当と考えられる。
 また、行政当局の関与と自主規制機能との関係については、市場の運営は、現場の実態に即して適時適切に対応することが求められることから、現在の自主規制機関としての機能を行政当局による規制・監督の強化で代替させていくことは困難であり、かつ適当でもないと考えられる。したがって、証券取引所は、引き続き自主規制機能を適切に果たすべきである。
 しかしながら、株式会社化されると、証券取引所と取引参加者との関係が契約上の関係になるほか、専門家でない者が経営に関与したり、特定少数者に経営が委ねられたりする可能性がある。こうした事態に対処するため、これまで証券取引所が自主規制機関として果たしてきた市場の公正性・信頼性を確保する機能が低下しないよう、適切な対応を図る必要がある。
 さらに、株式会社化に伴い証券取引所が従来よりも幅広い業務を行う可能性があることに起因する問題については、業務の範囲や、財務の健全性を確保するための措置についてどのように考えるべきかという角度からの検討が必要である。

(3)

 具体的な措置の方向性
 まず、株式会社化された場合においても、証券取引所が法令等のルールの遵守を取引参加者に求めるべきであることを法的に明確にすべきである。さらに、その実効性を確保するため、現行制度と同様に、証券取引所が必要な措置をとらないときは行政処分を行うなどの措置を講じるべきである。
 また、これまでと同様に、自主規制機能が適切に発揮されるためには、取引の実態等を十分踏まえてルールの作成が行われることが大切であり、株式会社化された証券取引所で自主的なルールが作成される際において、取引参加者など市場の専門家の意見が反映されることが望ましいと考えられる。
 株式会社化された証券取引所の経営が特定少数者に委ねられるおそれへの対応については、これまで証券取引所の運営が会員組織により適切に担われてきたことをも踏まえ、自主規制機能を担う組織としての公正性・中立性・信頼性を確保する観点から、株式保有割合について一定の制限を設けることが考えられる。
 他方、株式の保有制限は、株式会社制度の特例をなすものであることや、株主構成が極度に分散的である場合には経営に対するチェック機能が低下する可能性もあることに留意する必要がある。そのため、具体的な措置に当たっては、保有割合が過度に制限的にならないよう配慮すべきである。
 証券取引所の業務の範囲については、証券市場の運営という公共性の高い業務を安定的に運営させるため、証券市場の運営に関連するものに制約されることを法律上明示することが考えられる。
 また、財務の健全性を確保する観点から、資本の額の最低限度額を定める等の措置を講じるべきである。
 取引参加者については、証券取引所における取引の公正性・安全性等を確保していく観点から、一定の資格を定めることとし、その資格は原則として証券会社とする現行制度を維持することが現実的である。なお、将来的な課題としては、市場間競争や取引所間の提携の動きなど証券取引所を取り巻く諸環境を踏まえつつ、その在り方につき検討していく必要もあろう。
 証券取引所が自主規制機能を実施していく際には、取引参加者の理解を得ていくためにも、同じく自主規制機関である証券業協会との間において、適切な役割分担を図っていく必要がある。その際、市場の管理・監視については、一義的には市場の運営者が行うことが適当と考えられる。




 株式の自市場への上場
 

 株式会社化された証券取引所の株式を自市場に上場することについては、上場審査の公正性・中立性を確保し、証券取引所の業務に対する信頼を維持する観点から、行政当局の承認制とすべきである。




 その他株式会社化に際して配慮すべき事項
 

 会員組織から株式会社組織への組織変更を円滑に進めるため、所要の規定を整備すべきである。
 従来の会員権のうち取引参加権の取扱いなどの問題については、会員が大きな利害を有する問題であるが、これについては、株式会社化する際の契約上の地位への移行の問題として、関係者間で十分議論されるべきである。




 証券業協会
 

 店頭売買有価証券市場の運営についても、取引所有価証券市場と同様、激しい市場間競争の中に取り込まれており、意思決定の迅速化やシステムの充実が強く求められている。そのため、店頭売買有価証券市場の運営についても、例えば業務委託などの方法により、株式会社組織を活用できるよう途を開くことを検討していくべきである。
 他方、証券業協会は、協会員たる証券会社に対し、証券取引一般の投資勧誘等についての幅広い自主規制機能を有している。この機能は、証券業協会の重要な業務であり、店頭売買有価証券市場の運営につき、株式会社組織を活用する場合であっても、引き続き証券業協会が維持していくべきである。
 また、業務の受託者を証券業協会の子会社とする場合、証券業協会の性格に照らして、利益配当の扱いについては、市場運営の効率化や取引の公正確保等、証券業協会の目的の増進のためにあてるなどの工夫をする必要があろう。




 金融先物取引所
 

 金融先物取引所についても、証券取引所と基本的に同じ状況であり、情報通信技術の発展等を背景に、国際的な市場間競争が激化し、諸外国において、株式会社化の動きがみられる。
 現行法制上、金融先物取引所も、自主規制機関として位置づけられるなど、証券取引所と基本的に同様の仕組みとなっている。したがって、金融先物取引所についても、システム投資の充実等が重要な課題となっていることに鑑み、証券取引所と併せて、株式会社化を可能とする措置を講じることが適当である。
 また、その業務範囲の在り方等、営利性と公共性のバランスに関わる枠組みについては、証券取引所と同様の考え方により対応することが適当である。




 終わりに
 

 金融システム改革により、証券分野においても、証券業の登録制への移行、株式委託手数料の自由化等、着実に自由化、多様化が図られてきた。証券取引所等の組織形態の在り方の見直しは、取引システムの中心である市場の開設者にかかわる問題であり、金融システム改革の流れの中での、残された重要な課題の一つと位置づけることができる。
 証券取引所等の株式会社化は、証券市場等への信認を確保しつつ、証券取引所等が自ら一層の機能強化に向けて主体的に取り組んでいくための基盤整備としての役割を担うものであり、早期の法制度の整備が望まれる。
 しかし、一連の制度改革及び今回の法制度の整備によって、我が国証券市場等の活性化が完了するわけではない。
 証券市場等を取り巻く環境変化のスピードはますます加速していくものと見込まれるが、その中で、我が国証券市場等も国際的な市場として効率的なサービスの提供に引き続き取り組んでいくことが必要である。市場関係者等に対しては、証券取引所等の組織改革に際し、そのメリットを最大限発揮させるとともに、創造的な改革の推進に向けて不断の努力を行っていくことを求めたい。



蝋山部会長 以上、ワーキング・グループからの御提案がありました、この第一部会で審議すべき報告でありますが、神田さん、補足の説明をお願いできますか。


神田委員 今読み上げていただきました中に全部入っておりますので、それほどつけ加える点もないんですが、手短に2点ほど補足というか、感想めいたことを申し上げたいと思います。
 まず第1点ですけれども、もともとこの株式会社だとか何とかだというのは、法律上の組織形態であります。現在は証券取引所は会員組織という組織形態でなければならないということになっているわけですけれども、証券取引所の法律上の組織形態は一つでなければならない。それも会員組織でなければならないという論理的必然性というのは、必ずしも出てこないであろうという考え方で書かれているわけであります。すなわち諸外国等の状況もありますけれども、株式会社という形態にメリットを見いだす、そういう取引所があるのであれば、それは株式会社形態を選択してもいいだろうと。もちろん会員組織形態でやっていこうと思うところは、会員組織形態でもいいでしょうということであります。つまり組織形態はそういう自由度を認めながらも、法律によるいわば介入というんでしょうか、そういうものが必要なところは、そこは機能的に考えて、どちらの組織でも必要なところは守っていただきますという形で、法制度上は整理が可能であるのではないかということであります。
 ただ、そのように必要なところは機能的に考えるというふうに申しましたことをもう少し具体的に言いますと、株式会社形態というのは、私法上株式会社は営利法人というふうに位置づけられておりますので、今読み上げていただきましたところの言葉で言うと、営利性と公共性のバランスという形でこの問題が出てくるわけであります。
 具体的に言いますと、証券取引所に求められる公共性というものを確保するための手当てをきちんとしようという、その上で組織形態としては株式会社形態への選択を認めてよろしいのではないかということであります。
 それは基本的なトーンですけれども、もう一点、ただ公共性というか、パブリック・インタレストというか、それだけでは何か組織論としても、ちょっと短く入っているんですけれども、株式会社形態は組織論としても万能だという立証が学会においてもなされているわけではありませんで、ですから組織論としても株式会社形態に会員組織のメリットをちょっと盛り込んだような部分はあるでしょうと。
 具体的に申しすまと、公共性からだけではなく、組織論からも証券取引所のようなところが株式会社になる場合には、100%世の中にある典型的な株式会社とはちょっと違った形があるんではないか、そういうことに配意して、制度づくりとしては法制を整備してはどうかということであります。
 第2点ですけれども、以上のようなことがなぜ今求められているかと申しますと、言うまでもありませんが、証券市場の今後の発展、あるいは市場間競争というものにとって、このような制度整備というものを行うことが、そしてまたこの時点で行うことが、世界的にも、そしてまた日本の状況にかんがみても望ましいという判断がございます。これは政策的な判断ということではないかと思います。
 ただ、これはワーキングでも多々御指摘いただいた点ですが、今回行うことが望ましいのではないかということで御提案しております制度整備というのは、多分おそらく必要条件であって、それがいわば十分条件ではないという点には留意する必要があるということではないかと思います。すなわち取引所の中にこういう法制整備が実現いたしますと、株式会社形態になるところが仮に出てきたといたしましても、ただ株式会社になれば全てうまくいくと、そういうものでは決してありませんで、それをどう生かしていくのか、株式会社形態になってそういう取引所がどう競争力を発揮し、また証券市場の発展に寄与していくのかというのは、例えばコーポレート・ガバナンスの問題を含めて実際の運用に委ねられているところが大きい。
 そういう意味で今回のレポートは、主として制度の改正なり整備のところに焦点を当てた提案になっておりますけれども、あくまで目的というか、究極の目的であります、その結果日本の証券市場、日本の取引所市場、そして世界の中での市場間競争激化の中での取引所のあり方、あるいはその役割の発揮ということは、この制度整備プラス、さらにその関係者の努力という言い方でいいのかどうかわかりませんが、そのもとでの運用にかかっているという点が重要なことだと思います。


蝋山部会長 ありがとうございました。
 それでは、証券取引所の株式会社化につきましての御質問なり御意見を頂戴したいというふうに思います。いかがでございましょうか。
 上柳さん、どうぞ。


上柳委員 消費者なり一般利用者というか、証券を買ったり、資金調達をする一般利用者の立場から見ると、証券取引所というのは少し遠いところにあるような気がして、関心も薄かったんですけれども、今回ペーパーをいただきまして考えてみて、おそらく会員組織のままでも構わないし、株式会社にもなれるということで選択の余地が広まる、それで究極的にはそれこそ、私は余りお金を持っておりませんが、東証上場の株を買うのか、それともシンガポール上場の株を買うのか、あるいは自分の株をどこで売るのかということが選択できるというのは、大変いいことだろうと思います。特に世の中が変わる中で、意思決定が迅速にできるという意味では、株式会社化というのは一つの経験のある知恵ですので、自分は弁護士会におるんですけれども、弁護士会のような会員組織に比べればやはりいい。ちょっと例が極めて不適当でしたけれども、株式会社というのは大変有意性があるんだというふうに思っています。かつ株主さんにはもちろんディスクロージャーするわけですし、それから潜在的な株主、これから株を買ってくださる方に対しての継続開始ということで、ディスクロージャーも進むということ、恐らく歓迎されるべきことだと思うんです。
 ただ、心配はというか、一方で公共性の確保という問題がありまして、これはいろいろ工夫をされるということで、よろしくというふうに言うしかないんですが、ただ一つ私思いましたのは、これから証券取引所なり、こういう市場が究極的なエンドユーザーの方を見るためには、例えばアメリカのニューヨーク証券取引所なんかと比べましたら、私の目から見ると、ニューヨーク証券取引所では業者さんの公益性、それなり日本ではやっておられる。それからもっと言えば、一番末端のお客さんについての紛争処理なんかについても工夫をされている。ですから、紛争処理であるとか、情報開示、消費者の方を向いた、そういうことをやるかやらないかは、まさに神田先生がおっしゃったように運用の問題かもわかりませんが、少なくとも今回7ページのところで、証券取引所の業務の範囲についてあるの程度制限は必要なことだと思うんですが、そのときにそういうことができないようなことにはならないように、目的の制限を工夫していただきたい。逆に、監督、これはどこがやられるのかわかりませんが、行政当局の監督もこれにあわせて、場合によっては見直しをされるということだと思いますので、消費者への情報提供、あるいは場合によっては紛争処理なんかについても考えてみてはどうかというような方向に、監督のあり方というか、どういうことを目的にして監督をするのかと、単に健全性なり、齟齬、争い事がないようにということも大変大事ですけれども、加えて消費者への情報提供等についても考えていただければなというふうに思いました。


蝋山部会長 神田さんの2番目に言われたことをもう少しエラボレーズされたと、上柳さん的にエラボレーズされたというふうに理解します。ありがとうございました。
 ほかに御意見ございませんか。柳川さん、どうぞ。


柳川委員 私も今後の金融市場の変化を考えますと、このよう改革が行われるということは、非常に有意義なことで、重要なことだと思っています。
 一つ御質問は、こういう場合にはどういう形で移行するかというのが重要になってくると思うんですけれども、株式会社化へ移行する場合に、何か考えていらっしゃることがあるのか。一つは株式の保有に関しては少し検討したいということが書かれていましたけれども、その辺は運用がやられるのか、少し法的にいろいろ考えていらっしゃるのか、その辺のところをもし何か御議論をされたことがあれば教えていただきたい。


松川市場課長 まず、移行の際の法的な手当てでございますが、株式保有につきましては、ワーキングの結論は保有制限を課するべきであるという結論でございましたので、そういった結論と、諸外国でも保有制限の例はございまして、例えば一昨年にオーストラリアで5%まで特定のものを所有することは認めますけれども、5%を超えてはいけないという制限がございますので、それらの例も参考にしながら、法的なものとして位置づけるべく検討してまいりたいと思っております。
 それから、移行の手続に際しては、移行手続を整備すべきという御意見でございますので、これも保険の相互会社から保険の株式会社化に移行する際のいろいろ関係者間の利害関係の調整の手続がございますので、それなどを参考にして検討してまいりたいと考えております。


蝋山部会長 ほかにございませんか。今後逆のことも考えられるのでしょうか。一亘株式会社になったけれども、やっぱり会員の方がいいと。


松川市場課長 それは情勢の変化ですから、それをあらかじめ否定することは適当ではないと思いますけれども、大体の流れとしては、会員組織から株式会社化に流れる方が多いんではないかと思います。あと法的にどう整理した方がいいのかという観点から整理したいと思っております。


蝋山部会長 関さん、どうぞ。


関オブザーバー 日本証券業協会の方からもこのワーキング・グループに高橋専務理事が出席させていただいて、ある程度私も途中の議論も承知しておりますけれども、今日改めて全体を見せていただきまして、神田座長の補足説明を伺ったわけですが、結局一つの選択肢としてこういう道を開くと。それからまたこれは必要条件であって、目的を達成するためには十分条件にする今後のいろいろな努力が必要だと。そこはそのとおりなんだと思うんですけれども、要するに株式会社化にはこういうメリットがあると。このメリットを生かすためには、株式会社ですから営利性を認めなければならないと。営利性を認めるから、営利性と公共性の調和が必要だと、こういう論理になっているんだと思います。それから選択制についても、選択制で会員組織も認められる、選択してもいいよということになっているんですが、全体を見ますと、これだけ書いてありますから、これはやっぱり株式会社にした方がいいんだよということが、全体からは読み取れる内容になっているんだろうと思うんですが、要するに第一部会としてはその点どうでしょうかということが第1点です。
 第2点は、今言いましたように、株式会社化を選択するから営利性を認めなければならないという論理建てになっていますけれども、私はどうも昨今のいろいろな議論、あるいはこれを第一部会としてオーソライズするときの一番重要なポイントは、要するに証券の価格形成の場、それをオペレートすることが取引所のビジネスであるということです。今まではそれ自体がビジネスであったかどうかということについては、それほどはっきりした確認というのはしなかかったと思うんですが、これでビジネスであるということをオーソライズしたと、こういうふうになるんじゃないかなと思うんですが、そこはいろんなところで営利性との関係を書いてありますが、私の理解のようなところが焦点であるというふうにはどうも書いてないんじゃないかというような気がするんで、そこのところはそれでいいのかなという気がちょっとする。これは別に文章をこの段階で直せということではありませんけれども、その辺はこれでいいのでしょうか。
 第3点は、市場間競争というのは重要だと思います。それを徹底させるためにはビジネスとして認める、市場運営をみんな認めた方がいいんだと、これは一つあるかもしれませんが、仮にそれを前提にして考えるとしても、市場運営においてはそういったことをやるときの前提になるインフラの整備というのと並行してやらなければいけないんじゃないかと私は思うんですね。
 よく知られておりますけれども、1975年にアメリカで手数料自由化メーデーをやったときには、同時にナショナル・マーケット・システムというものをちゃんと打ち出して、いろんな市場間競争もそのときから入っていますが、市場間競争のいろんな情報がインフラとして必ずみんなに伝わるような、それは気配価格であり、売買高であり、企業情報でありと、こういうことだと思いますが、そういったところを前提にしております。それからまた、受渡し決済についても、長年の努力でシステムができている。これは今別のワーキングでやっていますが、そういうものの整備と一緒にやりませんと、市場運営としては、一方のビジネスの場であるということだけ認めていいのかという感じがいたします。これは感想みたいなことでありますが、以上3点を申し上げておきたいと思います。


蝋山部会長 ありがとうございました。
 3点出ましたが、第一部会として証券取引所、今ある証券取引所に全て株式会社化にしなさいという干渉をするのかどうかという点は、株式会社化しても、神田座長が強調されたように、プラスアルファの部分があるわけですから、そのアルファの部分、仮にいえば、理事長としてはいいかもしれないけれども、いい社長さんになるかどうか、そういうことも含めて総合的に判断していただいて、行政の側もそれに対してある種の判断を下す、こういうことになるんではないかというふうに思いますので、第一部会として株式会社化をお勧めしますということでは必ずしもないんではないかというふうに思います。
 それから、ビジネスだということは、市場間競争というコンセプトが、私は一番初めに、1979年に短い論文を書いて無視されたわけですけれども、市場間競争というコンセプトが出てきているということはもうビジネスだということではないんでしょうか。しかし、これがビジネス化を一層促進する、ちゃんとした流動性を付けて、いい値段を付けるということは、ビジネスになるという一つのチャンスにはなり得る方法、あくまでもそれはプラスアルファの部分がきちんとしているということが前提ですが、そのプラスアルファの部分がマネージアルな点だけでなくて、もう少し制度的なものがあるとなれば、確かにおっしゃるとおとりで、証券取引決済について今議論をお願いしているといったことも含めて、まだまだインフラの整備というのは不十分だろうと、十分でないところがたくさんあるだろうというふうに思います。そういう点は、しかし日本の場合は、おいおい、できるだけ速いスピードでやっていくということでしかないのではないでしょうか。その辺のところを株式会社化することによって日本の証券取引所の幾つかが、ちゃんとビジネスをやるためには、こういう制度整備が必要だよという声を大に出してくるということも、金融審議会を動かすということも期待できるかもしれません。
 どうぞ課長、補足してください。


松川市場課長 ただいまの部会長の発言に加えることはほとんどありませんで、ワーキングでも大体そのような意見が出ていたように私は記憶いたしております。


蝋山部会長 時間もありますので、それではほかに御意見ございませんか。
 大多数の方々、この提出いただきました報告書案を、第一部会の報告として採用することに御賛成をいただけるというふうに思います。しかし、神田委員が強調された特に第2点ということは、十分我々としても留意し、この制度をマネージする大蔵省にもその点テイク・ノートしていただきたいというふうに思います。
 報告書案をこのままの形で部会報告といたしまして、本日会議後の記者会見で公開させていただきますので、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
 時間がもう7分しかありませんが、本日の最後の議題「その他」であります。これは石原新税についてでありますが、もしかしたら5分程度延びるかもしれません。もっと延びないように、内藤さん、よろしくお願いいたします。我が国の金融という点、税、地方自治と、こういう点からいろいろ議論は起きていると思いますが、しかし、金融のあり方ということについても影響する重要な問題ですので、ここて簡単に触れておく必要があるのではないかというふうに思います。「5分程度」と資料にありますけれども、もう少しそれをはしょって、内藤さん、よろしくお願いします。


内藤企画課長 お配りしている資料でございますけれども、今日お配りしておりますのは、まず銀行業等に対する東京都の外形標準課税についての本日付の閣議口頭了解の文書、それから2月7日付で発表された東京都の文書、それから2月10日の全国銀行協会のこれについての反論といったものについて、簡単に御紹介をさせていただきます。特に全銀協のところについては、野田常務の方から何か補足的なコメントがございましたら、よろしくお願いいたします。
 まず、東京都の発表、2月7日の文書でございますが、今回の発表につきまして、私ども、先ほど部会長のお話がございましたように、地方自治の問題、あるいは税制の問題、これらについては、別途の観点から検討が必要ですけれども、特に金融システムの安定化策を推進しているという状況、公的資金を導入をしている。そしてまた、金融システム改革を一段といろいろと進めておるということでの東京金融市場への影響といったような観点から関心を、懸念を持っておりまして、その点について御紹介をさせていただきたいと思います。
 まず、東京都の発表でございますが、これは現在、法人の事業税といったものについては、基本的には課税所得といったようなものについてかかっているわけでございます。これの3枚目を御覧いただきますと、主要19行の業務粗利益、業務純益等の推移がございまして、要は業務粗利益、これは非常に外形的な、いわば金融機関の売上高といったようなものでございますが、これは非常に安定しているのに比べて、現在の法人事業税の課税ベースになっている業務純益は、非常にフラクチェートしているというような議論がございまして、これについての税の安定という問題意識でございます。
 次の紙を御覧いただきますと、よりそこが明快になっておりますが、主要銀行につきましては、非常に法人事業税の変化が変動している。全法人に比べても、平均的な動きよりはこういった動きを示しておる。
 次の紙が主要19行と日銀、合わせた法人事業税の税収実績及び平均でございますが、過去15年の平均で考えますと、1,040億ということに対して、最近は非常に低迷をしておりまして、そうしたところから東京都の財政といった、再建という観点から考えますと、これについての手当てをしていく必要があるということでございます。
 一番最後の紙を御覧いただきますと、今回はそういうことで法人事業税につきましては、所得というベースではなくて、業務粗利益という概念、これを課税ベースにしようという考えでございまして、業務粗利益の中には御覧のようなもので、業務純益に経費、人件費、物件費を引く前のものですから大体売上高に相当するようなものでございますが、そういったものを念頭に考えられているようでございます。
 1ページ目に戻っていただきますが、今回の決定は、ここに書いてございますが、第3点で納税義務者ですが、銀行業というものを対象にしまして、かつ資金量の残高が5兆円以上の法人に限るということで、大手金融機関というものを想定して課税をする。
 課税標準は申し上げたとおりでございまして、税率は3%というふうにされていますが、これは大体1,000億円ぐらいを税収を確保するということで、逆算いたしますと、大体こういった税率が出てくるということのようでございます。
 その他、7番のところで、5年間の時限措置ということで、その後については必ずしも明確な状況ではない。こういったものについての条例案を、明日都議会が、定例会が始まりますので、そこに上程をしたいということでございます。
 1枚めくっていただきまして2ページでございますが、この根拠でございますが、地方税法に事業税の課税標準の特例、72条の19というのがございます。この中で課税標準については、基本的には所得課税ということなんですが、電気、ガスとか、生保、損保、こういったものについては、いわゆる純益というものではベースにするのは適当ではないということで、所得によらないで、いろいろ書いてございます。資本金だとか、土地の面積あるいは従業員数等と。今回は東京都におきましては、この「等」の中で粗利益というものをベースにして考えたというようなことでございます。
 これについてはどういう課税標準をしても、あるいはどういうふうな課税をしてもいいのかという点でございますが、これについては72条の22の9項というのがございまして、下の左のところにアンダーラインを引いておりますが、これについては現在の所得課税というものの負担と著しく均衡を失することのないようにしなければならないという点でございます。
 まさに現在の税法では、手続的には今回の東京都条例案といったものについて提案するということについての問題はないようでございますが、問題は、第9項の不均衡を失することのないようにということについてどう考えるか。それから、より基本的には銀行というものを、いわばねらい打ちにした課税というものに対して、大きくいえば憲法の問題等から法律上の問題はないかどうかというようなことがいろいろ議論されております。それにあわせて金融上の問題がございます。
 そこで、今回、東京都の案につきまして政府として考え方を早急にまとめる必要があるというふうな問題意識が持ち上がりまして、自治省、大蔵省、金融再生委員会、金融監督庁等と相談の上、こうした閣議了解を今日まとめて発表したというわけでございます。
 1枚めくっていただきまして、「記」というところで御説明いたします。
 まず1.は、今回の5兆円以上、それから銀行業等に対象を限定したというところの問題、これは基本的には憲法上の法の下の平等といった問題もあろうかと思います。あるいは財産権の侵害的な問題を含めて憲法上の問題にもかかわってくる問題としての疑問といったものが、政府の立場から表明をされたというわけでございます。
 第2点が先ほど申し上げた、著しく均衡を失することのないようにしなければならないということのバランスの問題でございますが、今回、1,000億引き上げるというようなことでございまして、バランスとの関係においては、いきなり大きな負担ということもございますので、東京都案には疑問がある。
 3.につきましては、東京都案を実行いたしますと、今度は東京都以外の地方団体については、法人事業税の負担は即損金算入ということになりますので、所得減少いたしまして、法人事業税、あるいは地方交付税の原資といったような形で、他の地方団体に対しては減収というような影響が出てまいります。
 4.は、基本的には外形標準課税につきましては、長年、政府税制調査会でも議論をしてまいった点でございまして、東京都だけが銀行業に粗利を対象にしたということについての妥当性に問題があるということで、基本的には政府税制調査会の議論というものを今後考えていく必要があるのではないかというふうな点でございます。
 5.が金融の問題でございます。金融システム改革、特に金融システムの安定化策をとっておる。平成9年には拓銀、山一の破綻ということでもって30兆円、長銀の一昨年の破綻ということでもって60兆円ということでの公的資金の注入策が講じられてきたわけでございまして、次のページを御覧いただきますと、こうした金融安定化策と整合性を欠くということと言わざるを得ない。
 そうなりますと、仮に東京都条例案が実行されますと、それがそのままコストとしてはね返ってまいりますので、銀行等の自己資本の減少、不良債権処理の遅延等々、ここに書いてございますような影響が出てまいります。したがって、現在の金融不安が辛うじて安定しつつあるという状況の中での懸念というものを表明せざるを得ないという考え方でございます。
 「また、」のところでございますが、金融システム改革を様々にやっておる中で、東京金融市場というものがいきなりこういった形で課税が強化されるということで、一説では、途上国の課税方法ではないかというふうな指摘もございまして、やはりこういったことについての手順といいますか、そうした課税の問題についての協議、審議といいますか、そうしたことが必要ではないかということで、市場に対する信頼性を非常に損なうのではないか、こういうふうな指摘も行われたということでございます。


蝋山部会長 状況の説明をしていただいたわけですが、野田さん、いろいろ御活躍といか、御苦労をなさっているわけで、繰り返されるのは大変でしょうけれども、ポイントだけを。


野田オブザーバー このような場所で、金融審議会の場でタイムリーに本問題をお取り上げいただくことに対しまして、まず感謝申し上げる次第でございます。
 私ども2月7日の都の発表以来、全銀協といたしましては、一番最後にお配りいただきました反対意見書のとおり、絶対反対という立場で反対活動を行ってきたところでございます。
 ただいま内藤課長より御説明がございましたように、本日、いわゆる政府見解というものをお示しいただきましたけれども、その内容というものは、手前どもの主張と基本的に機を一にするものでございまして、私どもにとりまして極めて重要な意味を持つものでございまして、非常に心強く思っているという次第でございます。
 私どもの考え方の詳細につきましては、後ほど意見書を御覧いただきたいというふうに存じますが、要すれば、そもそも外形標準課税というものについては、これまでも政府の税調などの場で様々議論がなされて、問題点も整理されてきております。こうした論点を無視するような形で、現在金融システムの回復、安定化、さらには経済の再生というのが第一命題である現時点において、十分な議論がなされないままに、また私どもを狙い打ちするような形で導入しようとしていることについては、重大な疑問があるというふうに考えている次第でございます。
 また、昨日は私ども全銀協の場で東京都との意見交換会を開催いたしましたけれども、その場での東京都側の説明、あるいは私どもからの問題点の指摘、反論に対する都の説明というものは、決して納得性を持っているものとは言いがたく、これは条例案作成の過程において、様々な角度からのきちんとした検討、吟味が十分になされていないのではないかという疑問を抱かざるを得ないものでございました。
 こうした条例案が私ども納税者に何の説明もないままに、唐突に発表された上に、しかも条例の公表前に都議会の主要会派が賛成の決定をするというようなこともございまして、これまでのプロセスについても極めて遺憾に思っており、またこのプロセスそのものが本問題の、言葉はちょっと悪いんですけれども、いかがわしさというものを示しているのではないかとすら考えている次第でございます。
 私どもといたしましては、この場の金融審議会の委員の皆様はじめ各層に今後幅広くさらに御理解をいただくよう努めてまいります。この場の皆さんにおかれましても、ぜひ私どもの考え方等につきまして御理解を賜りまして、御支援をいたけければというふうに考える次第でございます。
 ありがとうございました。


蝋山部会長 昨日の朝日新聞ですか、石原さんは国民のルサンチマンに非常にうまく乗ったと、これは非常に課税の是非を別にして、我々として考えておかなければならない点だというふうに思います。金融サービス法を考える場合でも、いろんな金融に関する問題を考える場合でも、銀行というもののいわば受けとめられ方がどうであるかということを頭の中にちゃんと置かないと、いろんな試み、よかれと思う試みも逆になるし、おかしな試みも大拍手喝采ということになるし、その辺のところをよく考えて、それぞれきちんと認識して考えておかなければいけないんじゃないかという印象を私は持ちました。
 どうなんですか、東京都をやめて大阪へ移るとか、そういうことを考えませんか。ボーキング・オフという言葉があるんですが。どうぞ。


野田オブザーバー 部会長御指摘のとおりでございまして、私ども今回の都のこういう措置発表に関しまして、世間の皆様の反応というものにつきましては、改めてその厳しい眼差しについて心を新たにしなくちゃいかんと、真摯に受けとめなければならないということを改めて痛感いたした次第でございます。
 東京都に対しましていろんな私どもの今後のとり得る手段というのは考えられるわけですけれども、私ども、一方で皆様の御議論をまつまでもなく、公共性というものの具備しておるわけでございますので、にわかに事業所を云々するとか、従業員はどうするというようなこと、よく言われる報復というようなことはなかなか手段としてどうかと。私どもとしては当面は冷静かつ公正な議論というものを広くお願いして、地道な活動というものを心がけてまいりたいというふうに考えている次第でございます。


蝋山部会長 何か御意見はございませんでしょうか。
 なければ、時間も超過しておりますので、ただいまの東京都の外形標準課税につきましては、どういう内容のものであるかということと、それに対する課税者と擬せられた銀行の側からの御意見というものを伺ったということでおひらきにしたいというふうに思います。ありがとうございました。
 今日は大変盛りだくさんで、司会も余りスムーズではなかったんですが、とりあえず11分ちょっとの遅れで何とか最後まで来ました。ありがとうございました。
 最後に、事務局から次回の日程等を御連絡いただきます。


内藤企画課長 次回の日程でございますが、いまだ流動的でございますが、3月の中旬、今国会の提出を予定しております第一部会関係の、先ほど経過報告をさせていただきました2法案につきまして、より詳細を御紹介、御説明をするということを予定しております。


蝋山部会長 以上であります。どうもありがとうございました。
 これをもちまして散会いたします。

(以 上)