金融審議会「第一部会」第23回会合議事録



日時:


平成12年4月28日(金)10時02分〜12時08分
場所: 大蔵省本庁舎(4階)第四特別会議室




蝋山部会長 ただいまから第23回金融審議会「第一部会」を開催いたします。
 今日は、いわゆる金融インフラ3法が参議院で採決されるという予定になっておりまして、事務方の方もそちらにかかりっきりで、また出入りが激しくなるかもしれません。その点お断りしておきます。
 審議に先立ちまして、オブザーバーの交代が二人ございましたので、事務局より御紹介いたします。
 岡田さん、どうぞよろしくお願いします。


岡田企画課法規担当企画官
 それでは、今回より新たに御参加いただきますオブザーバーの方々を御紹介申し上げます。株式会社住友銀行常務取締役の奥 正之さんです。


奥オブザーバー 奥でございます。どうぞよろしくお願いいたします。


蝋山部会長 どうぞ、よろしくお願いします。


岡田企画課法規担当企画官 中央三井信託銀行株式会社常務取締役の浜田三平さんです。


浜田オブザーバー 浜田でございます。よろしくお願いいたします。


岡田企画課法規担当企画官 どうぞよろしくお願い申し上げます。


蝋山部会長 ありがとうございました。新しい方々、どうぞよろしくお願いいたします。
 早速、本日の議事に入らせていただきます。
 初めに、現在ワーキンググループの一つであります「ホールセール・リーテイルに関するワーキンググループ」、そこで検討されております裁判外紛争処理制度のあり方の問題についての検討状況について御報告をさせていただきます。これが第1の議題です。
 それから、続きまして、法務省と大蔵省が共同で設置しておりました「CP(コマーシャル・ペーパー)のペーパーレス化に関する研究会」が先般報告書を公表いたしましたので、その内容につきまして御紹介をさせていただきます。
 また、今月18日に「金融サービスの電子取引等と監督行政に関する研究会」という研究会がございまして、そこから公表されました「金融サービスの電子取引の進展と監督行政」という報告書につきましても、金融監督庁から御紹介をさせていただきたく思います。
 以上、主として三つの点についてきょうは議事とさせていただきました。
 初めに、事務局から「ホールセール・リーテイルに関するワーキンググループ」における裁判外紛争処理制度のあり方に関する検討状況につきまして御説明をさせていただきます。
 堀さん、よろしくお願いいたします。


堀企画課課長補佐 「ホールセール・リーテイルに関するワーキンググループ」の事務局は企画課が担当させていただいております。本来であれば、担当課長の内藤の方から御説明を申し上げるところですが、先ほど部会長の方からも御説明がございましたように、国会審議の方に内藤出席しておりまして、どうしてもこちらに出てまいれませんので、大変恐縮ではございますが、私が代理で御説明をさせていただきます。
 お手元の資料でございますが、第一部会の23−2から23−4までを見ながら御説明をさせていただきたいと思います。
 ホールセール・リーテイルWGの検討テーマでございますけれども、部会からいただいております課題といいますか、基本的に不適切な勧誘に関する検討の残りの部分、それから裁判外紛争処理制度についてテーマをいただいておりますけれども、前回の部会の御議論の中でも、限られた時間の中で、テーマにある程度プライオリティーをつけながらやるべきであるというお話もございましたので、特に裁判外紛争処理制度について重点を置いて議論をすることにいたしております。
 その関係で、テーマに合わせまして、体制を今までのホールセール・リーテイルからさらに拡充をいたしております。特に裁判外紛争処理をやるということも配慮いたしまして、進行役ですが、今まで神戸大学の山田先生にお願いしておりましたところを、今日御出席でございます第一部会委員の岩原先生に交代をいただきました。山田先生は引き続き委員でいらっしゃいます。それから、民事訴訟法の専門家ということで、一橋大学の山本和彦先生に御参加いただきました。それから消費者法という観点から東京大学の廣瀬久和先生にも御出席をいただくようになりました。さらにテーマに合わせまして、紛争処理、もしくは実際のADR機関という意味で国民生活センター、それから弁護士会から、そういった裁判外紛争処理もしくは仲裁センター関係の仕事を長らくやっておられる弁護士の方をオブザーバーとして御参加いただくようになりました。また問題の性格にかんがみまして、関係省庁からのオブザーバーにつきましても、通産省、農林水産省、建設省を追加をさせていただいております。
 資料の23−2の2枚目にございますけれども、既に4月14日に審議を再開いたしまして、昨日まで既に3回の議論を行っております。そこまでに行った内容でございますが、1回目は基本的に立ち上げということで問題意識のようなものを事務局の方から御報告をさせていただきまして自由討論をいただいたわけですけれども、その後2回を使いまして、ADR(裁判外紛争処理制度)について、もしくは日本の金融関係のトラブルの現状についてのヒアリングを行っております。
 また前回、昨日でございますけれども、山本先生とそれから弁護士会から御出席の高木弁護士から裁判制度と裁判外紛争処理制度の役割分担についてヒアリングをやったところでございます。次回以降、6月の報告をにらみまして、論点の絞り込み等を行う予定にしておりまして、5〜6月上旬であと四、五回は開催をしなければいけない。それで報告書を取りまとめて部会に報告をさせていただくという段取りかというふうに考えております。
 中身に入りますが、ADRに係る従来の議論でございますけれども、少なくとも当審議会もしくは部会報告として公式見解として外に出している言いぶりから最初に紹介をさせていただきますと、資料で言いますと23−3ということになりますけれども、これまでに第一部会の「中間整理(第一次)(第二次)」で裁判外紛争処理制度についてはそれなりの言及をしております。まず基本認識としてルールの整備を、今一方で販売勧誘ルール等の整備を行ったわけですが、それと対としてのエンフォースメントの確保が必要であるという認識が繰り返し述べられております。その中で、事実認識として、司法的解決に使い勝手が悪い面があるという共通認識があるかと思います。当然の帰結として、我々の課題は、司法も含むエンフォースメント体制全体のあり方に関する総合的検討が必要であって、その第1としては、本来司法インフラの充実ということを図ることが最も重要であるということは、これは今までにも報告書の中でも述べております。これは金融審議会のマンデットの中には必ずしも含まれないかもしれませんけれども、それは一つの重要な認識であるということは繰り返し述べております。
 それに合わせまして、司法制度を補完する金融に関する専門性を持った裁判外紛争処理制度が必要であるということを明示的に言っておりまして、それにつきまして具体的な内容として、あるべき紛争処理制度の姿として、中立性、効率性を確保する必要があると。それによって利用者の信頼を確保することが重要であるとか、統一的、包括的な制度、少なくとも窓口段階での一本化が必要であるというような議論。
 また、裁判外紛争処理制度については、事実認定機能を付与したり、もしくは指標制度に準じた権限を与えるべきであるというような意見も述べられております。また、紛争処理実績を公表したり、データベース化することによって紛争解決基準の具体化につなげるようなことが必要ではないかというような議論もなされております。
 ただ、一方で、今までの報告書にも明示的に書いてございますけれども、具体論というものについてはこれからやっていかなければいけないということが指摘をされておりまして、例えば、制度の担い手ですとか、仮に紛争処理制度をやっていくという話にしても、既存制度を活性化していくことがよいのか、新たな制度がそもそも必要なのか、もしくは裁判外紛争処理という観点で言いますと、専門性と中立性の両立をどうやって確保するか、もしくは費用負担をどうするかといった具体論については、まだ全く詰めが行われていないという状況であります。
 中間整理(第一次)はそういう見解が述べられておったわけですが、中間整理(第二次)の中では、先ほどと同様に、司法的解決に使い勝手が悪い部分があるということを明示的に述べた上で、中立かつ公平で、簡易・迅速な裁判外紛争処理制度の整備を図り、ルールの実効性を確保する必要があると述べておりまして、そのもとで、一つには業界の自主的な取り組みを評価をしようと、それは銀行協会、信託協会等が弁護士仲裁センターとの提携を始めたような話を挙げて、そういう自主性を評価するという一つの指摘を行っております。
 もう一方で、当部会として、本問題について最終報告の取りまとめを受け、さらに検討を深めていくこととしたいと述べておりまして、これがワーキングでの活動、もしくは本日以降の裁判外紛争処理に関する議論を行っていただく根拠の規定になっております。
 それに対してパブリック・コメント、もしくは部会等で述べられた意見についてリビューもできるように資料をつけておりますけれども、その中で明らかに示されている認識は、まずとにかく裁判外紛争処理機関というのが必要であるということについてはさまざまな意見が寄せられておりまして、典型的な例として、具体的手段はともかく苦情処理・紛争処理のための制度を早急に整備すべきというような形で、その必要性について強く主張がされているところでございます。また、金融サービス関連のトラブルのすべてが訴訟になじむわけではないのでADRが必要であるとか、もしくは英国の自主規制機関、オンブズマン制度の導入を検討すべきというような必要性についての主張がなされておるところであります。
 一方で、司法インフラ整備によって司法を活用しやすくすることも大切であるというようなことが言われております。また、その寄せられた意見を見ますと、裁判外紛争処理制度のあり方に関してさまざまなこうあるべきであるというような意見が多数寄せられておりまして、列挙いたしますと、例えば、中立・公正な第三者機関、独立機関であることが必要であるというような話、もしくはスタッフのスキル向上、利用者の問題意識が共有できる苦情処理委員の必要性ですとか、統一的・包括的制度、少なくとも窓口の一本化が必要であるという意見があると。
 一方で、実は一本化については不要であるというような意見もパブリック・コメントの中では寄せられた例もございました。また、強制加入の自主規制機関による紛争処理制度をつくるべきであるという意見が寄せられておりますが、一方では裁判を受ける権利との慎重な整理が必要であって、むしろ自主性を重視すべきであるというような議論もなされておるところであります。
 また、その具体例を並べますけれども、事実認定機能を付与すべきであるとか、もしくは紛争処理事例公表データベース化による活用を図るべきであると。また、利用者の負担は原則としてなしとすべきであるというような意見、もしくは業者側が決定に拘束される制度が望ましいというような意見が述べられておるところであります。
 また、今のは、具体的な制度をつくる場合にどういう制度にしてほしいという希望でございますけれども、制度の仕組み方についても、裁判外紛争処理制度を法定する、金融サービス法の中に書いてくれというような意見があります。一方で、業界の自主性を重視すべきという意見もありまして、紛争処理の如何が金融サービスのクオリティーの一つとして認識をされて、そこに競争が働くような環境整備をすることが重要なんだという意見がありました。また、より広い意味での意見として、紛争処理機関の整備では、個別案件の処理ができるというだけではなくて、それによって構造的改善につながるようなフィードバック機能が必要であるという意見が出ております。
 以上、そういう過去の公式的見解、それからそれなりに寄せられた意見というのはいろいろあるわけですけれども、それを踏まえてワーキングで検討するに当たって、事務局の方で考えを整理をさせていただきまして、まずどういう現状にあるのかという認識が必要であると考えました。それで明らかに言えることは、コンセンサスとして司法制度を含むエンフォースメント機能に不全な部分があって、その事態を是正するための何らかの方策が必要であるという点については、これはもうコンセンサスであろうと。
 一方で、これまでの議論を見てみますと、紛争処理の現場での多様な軋轢をすべて一括して解決したいという、悪く言えば漠然とした願望に基づいて希望の陳述にとどまっている面もやや見られるのではないか。そういたしますと、裁判制度が不具合だからADRをつくれという主張については、そもそも司法制度とADRの役割分担論というのがまず十分できていない現状であり、そのために議論がやや混乱している。それから、英国のオンブズマン制度をつくれという主張がございますけれども、それについて参考とすべきところが多々あるところは事実ですが、一方で、我が国の紛争解決の風土ですとか、もしくは司法制度、もしくは法制度という観点からそういったものがなじむかという検討は全然なされていない。それから、裁判外紛争処理機能の満たすべき属性、例えば、中立性とか、横断性とか、さまざま言われているわけですけれども、それについても、認識の共有がおくれていることから、具体化方策のみならず、方向性、どちらの方向で片づけるかと、整理をすべきかという点についても対立がかなりまだ残されているという現状がございます。そういう意味で、ワーキング・グループの課題としては議論すべき内容に関するコンセンサスを形成することから始めなければいけないというのが現状でございます。
 そのために、以下の事項について認識の共有が必要であると考えておりまして、まず我が国の現行の紛争処理制度にどういう問題点があるのかということを認識する必要がある。次に、そうした問題の解決にどういう形で対応することが本筋なのか。これはまさに裁判外紛争処理制度の充実で果たすべき事案と、さらに司法制度改革のようなもので対処すべき事案とが、やはりこれは截然と分かれるはずであって、そこの議論がなされないままにすべてを解決する裁判外紛争処理制度という話ではないだろうと。
 それから、我々の議論の場は金融審議会でございますので、金融サービスにおける紛争の特性というものを十分に踏まえた上で、どういう点で他の消費者紛争と異質であって、それが裁判外での処理になじむのかどうかというような議論が必要ではないか。さらに我が国の法制度、既存のADRの多様性ですね。例えば、今回配付している資料の23−3の後ろの3枚は、現行の我が国の業態別の紛争処理機関の状況について簡単に御紹介しておりますけれども、法律的根拠があるものないもの、それから紛争処理機能を備えているもの、苦情処理機能だけであるもの、その他さまざまな多様性を持っておりまして、そういう状況を前提に、どういう方向性での改革を考えることが現実的かつ効率的なのか。また、その場合に長期的な意味での改革とそれから今我々としてできることというものをちゃんと識別するというか、分けるということが必要ではないかということが言えるかと思います。
 そうした問題意識を踏まえまして、ワーキングでは早速ヒアリング作業を始めたわけです。意図は、まずいろいろな意見、多様な意見をお伺いした上でコンセンサスを形成しなくてはいけない。少なくとも何を議論するかということでありますが、今までにお話を伺ったのは、国民生活センターの調査役でいらっしゃいますけれども、清水オブザーバーという方をお願いしておりますけれども、そこで金融商品に係る消費者トラブル問題に関する調査結果というのを先日取りまとめられましたので、それの御報告をいただきまして、まさに消費者紛争を現場で扱っている観点から紛争処理機関についてどういうことを望んでおられるのかというお話をお伺いしました。
 それから一方で、実際に業者の側で、今紛争処理機関をやっておられる現場の方に同じ問題を業者サイドから見た場合にどういうふうにとらえられるのかというお話を伺いました。このお話は銀行協会、それから生保協会、それから証券協会の各業界のまさにそういうよろず相談所ですとか、もしくは苦情処理室ですか。そういったところの担当者の方もお呼びいたしましてお話を伺いました。
 それからもう一つ、より客観的な観点からということで、「裁判制度とADRの役割分担について」というテーマで、一橋大学の山本先生と弁護士会代表の高木先生からお話を伺っております。その資料全体は23−4というちょっと厚めの資料がございまして、もうワーキングに出されたもの、さすがに全部ですと膨大になりますけれども、かなりの部分ここにそのままのものを配付させていただいております。
 報告の内容について逐一細かく御説明できる時間は到底ございませんが、簡単に概要だけお話をさせていただきますと、清水オブザーバーからの報告でございますけれども、これは国民生活センターのPIO−NETの登録事例に基づく金融のトラブルの分析ですけれども、そこでの提言事項には、既に私どもの法案の中で取り扱いました説明義務の話ですとか、さらに適合性原則、不招請勧誘の話までいろいろと指摘がなされているわけですが、それと並んで、紛争処理機関について消費者生活センター等の消費者相談機関の金融トラブル解決機能を強化してほしいという要望がございます。それから、証券業協会あっせん制度の利用に関する証券業協会の会員の指導をしてくれという、その場合において特に清水オブザーバーが重視しておられたのは、業者をテーブルにつかせるための制度整備が必要であるというような提案がなされておりました。
 それが消費者側からの提案・意見でございますけれども、一方で、各業界からお話を伺った中では、例えば銀行協会では、協会の取り組みについて御紹介いただいたわけですけれども、既によろず相談所の周知についてはかなり努めているが、具体的にはパンフレットをつくったり、駅、電車の中にステッカーを張って周知に努めていいらっしゃいます。さらに会員銀行、会員協会の銀行の中で苦情処理体制に関するチェックリストを作成するようにしているとのことでございました。また、苦情を顧客サービス向上に生かす仕組みを構築するという意味で、顧客サービス検討部会を銀行協会の中に今設置をしつつあるという話でした。さらに外部諸団体との連携強化が必要で、それについて金融、例えば先ほどの消費者相談機関、もしくは行政機関、もしくは銀行協会、もしくはメンバーの銀行まで含めた金融関係苦情連絡協議会というのを設置してはどうかという具体的な提案、これは個人的な提案ということでございましたけれども、なされております。
 また、生保協会からも同様に制度の周知徹底をしているというお話のほかに、現行ある裁定委員会については、苦情紛争処理制度方針全般の審議のための機能充実を図る一方、個別裁定については仲裁センターとの提携等、これは銀行協会と同じスタイルということかと思いますけれども、外部専門家の活用についてもこれから検討していく可能性があると考えているというようなお話がありました。
 また、証券業協会においては、協会内の法律に基づく苦情処理制度についての説明がございまして、少なくとも業者は正当な理由なくその扱いを拒めないという旨の御説明がございました。また、制度周知についても、そのホームページの活用等で積極的に行っているところであるという御説明があったところであります。
 次に、山本委員からの民商法の観点から見た裁判制度と裁判外紛争処理制度の役割分担ですけれども、山本委員の見解では、ADR自体は裁判制度の負担の過重にも対応して多様な紛争解決ルートを与えるものであるけれども、ADRでの処理に適合する紛争は、まず規範面でいくと、時によって法規範から乖離する社会規範、社会的規範のくみ上げが望ましいような紛争処理、例えば家庭内、家事の紛争ですとか、近隣の紛争ですとか、そういうたぐいのもの、もしくは提携的な紛争であって、裁判で設定されたルールを波及すればよいような紛争の多数の件数の処理、例えば交通事故の案件等、そういったものについては裁判外紛争処理に適している。もしくは手続面でいうと、迅速な簡易な解決が必要な事件、これは少額事件等がそれに当たるという話でした。それから秘密保護を要するような事件、これは特許関係ですとか、あと個人的私事にわたるような案件ですね。それから専門性のある案件、これについては医療過誤、建築紛争という例が挙がっておりましたけれども、金融の場合、もし当てはまる部分等の一つとしてここが考えられるのかなということがございました。それから、さらにADRについては人間関係を維持する必要があるような案件についても向いているというような御説明がございました。
 一方で、ADRに欠けている部分、これは長所の裏側という話もございましたけれども、手続の慎重性ですとか、もしくは結論の公式性、もしくは強制力、事実認定の能力、透明性といった点を挙げておられました。
 一方、次に高木オブザーバー、これは弁護士会の仲裁センターの観点から、過去の取り組みの経験からのADRについての御報告でございましたけれども、仲裁センター自体は、歴史的に考えると、司法制度全体への不満を解消する社会的な実験として取り組みで始められて、ある程度の機能を果たしている、そういう話がございました。また、仲裁センターに適する紛争という意味では、単なる黒か白かというような話には余り適していないけれども、アナログ的な、量的な紛争事案について向いているようである。例えば、損害賠償の額をどれぐらいにするかというような話ですね。ですから、事実認定の部分についてはある程度なされていて、あとはそこのアナログ的な解決についてやる場合については、少額事件であるとか近隣紛争、もしくは法律的な公正が難しいような事件、秘密保持を要するような事件について仲裁センターが非常にうまく機能をしているという話がございました。最後に仲裁センターは、裁判所との競争的な共存をしつつ役割分担をしていく必要があるのではないかという御報告があったところであります。
 以上がワーキングでのさまざまな御報告の概要でございますけれども、その後質疑等も行いまして、現段階で、まだ当然議論を始めたばかりでございまして、何らその方向性なりが打ち出せる段階ではございませんけれども、少なくとも改めて確認された点を繰り返させていただきますと、紛争処理について一定の改善が必要というコンセンサスはもうあるわけですけれども、それにもかかわらず、個別論については単なる消費者対業者というような対立の構図でとらえられるような簡単な話ではなくて、消費者内であっても、もしくは業者の内部であっても、そういうさまざまな見解の隔たりなりばらつきが見られる。それについて、ADRの整備のあり方について、制度の仕組み方についても、例えば法的な裏づけを求める主張がある一方で、ADRというものが社会的に果たす機能の特性に鑑みると、むしろ業者なりの自主性が重要であって、その下で業者がADRを利用するインセンティブを付与するような制度構築が必要であるというような議論もございました。また、今の、例えば法律的な仕組みをつくるか、もしくは自主的にやるべきかという対立の中でも、法制度については法律に尽きると単純に言われるわけですが、我が国の現在の紛争処理の実情、もしくは法制度、司法制度を踏まえたときに、法律に基づいてやるという話が、我が国のそういった風土にそもそもなじむのか、もしくは法律でそういうことを規定するのが可能なのか不可能なのか、何が可能で何が不可能なのかということについてもまだ整理が十分ではないということが言えるかと思います。
 また、自主性を重視するという意見に関しては、自主性に基づくADRという、現状でも既に存在するわけですけれども、それについてうまくいっているものとうまくいっていないものがあるということは明らかにあります。その際に、うまくいっていない方の観点については、企業法務の観点でいうと、ADRに公式性というかオーソライゼーションがないために、企業の観点からは、内部決裁等を考えると、その公式性がないことがネックになる、つまり、ADRで簡単に自分の非を認めてしまうと、企業内の処理の段階、もしくは株主総会などで説明ができなくなってしまうというような事情があって、最終的に企業として裁判に依拠せざるを得ないような側面がある。そういうことから、現実論として、ADRにすべてを任すということは無理で、その前に司法制度改革が必要であるというような意見がございました。
 一方で、そのADRのインセンティブ付与という観点に関しては、企業が、今御説明申し上げましたような公の裁判結果だけを気にするのではなくて、市場のレピュテーションを気にするように、環境整備なり企業の意識が変わることによって、そういうADRを仕組むことができるのではないかというような意見がございました。
 また、今個別論の隔たりの多さを幾つか事例を挙げて御説明をしているところですけれども、今、まず法律と自主性という話を申し上げましたが、さらにADRに関しては、ADRの整備によってどういういった事案をそもそも解決をしようとしているのかについても、どうもコンセンサスがないように議論の中で見受けられました。
 具体的に申し上げますと、ADRが裁判に近い裁定機能を持つことを期待すると思われる意見、例えば、もう何千万円というような金額──まあそれは大げさかもしれませんが、何百万に及ぶような高額の紛争についてもADRで解決をすること、しかも、それを裁定をさせて、業者側にそれに従う義務を負わせるというような議論をされる方もいらっしゃれば、一方で、やはりそうではなくて、ADRには固有の機能があって、裁判にはそぐわない事例に関する紛争処理、例えば少額の話ですとか、そういったものを期待していると思われる見解があります。さらには、紛争処理ではなくて、ADRというものが苦情処理ですとか、もしくは顧客代理機能、もしくは金融紛争補助サービス、論点整理サービスといったものを提供することがまさに重要ではないか、まさにそういう部分が今欠けているのではないか、というような見解もございました。
 そういう意味で、ADR(裁判外紛争処理制度)を整備をしろということは一般には言われているわけですけれども、やはり議論をされている論者によって、そのうちのどういう部分をまさに今やるべきか、それは最終的には全部やるべきということになるのかもしれませんが、まず段取りとしてどれからやっていくのかということについても、やはり整理をしておくことが必要である。また、今のは総論的な話ばかり申し上げましたけれども、具体論につきましても、例えば一例として横断的なADRをつくるべきであるという議論については、横断性というのが利用者利便の観点、それから今業態別にある紛争機関に質のばらつきがかなりございますので、その平準化の観点から、またハイブリッド商品のようなものがこれから出てくることを考えれば、そういう観点から重要であるという意見があった一方で、やはり金融なども考えますと、もしくはADRという特性を考えますと、専門性ということが非常に重要になっているのでないか。そうであるとすれば、専門性と自主性というものを重視してやっていくべきであるという意見がございまして、そういう場合には、横断化というのを単に外からお仕着せでやるのではなくて、むしろ企業が自主的な連携の中からそういうものが生まれてくればいいのではないか。専門性という観点からは、しょせん横断化をしても、それは窓口だけの話であって、最後の処理については、やはり一個一個のプロがやることが重要であるというような話がございました。
 今のような話は割と業者対利用者といった観点から捉えられがちなわけですが、一方で消費者的な視点に立つ御意見の中でも、窓口の一本化というような話がなされているようだけれども、むしろ問題なのは、紛争処理のプロセスが今決め手を欠いているということであって、これは一つの見解でございますけれども、業者の非協力的な態度が問題になっていて、そういった状況の解決なしに単純に窓口を一本化するというような話では、かえって消費者相談機関のようなものが、今機能しているところが排除されてうまくいかなくなる可能性もあるので、単純な一本化というような議論をすべきではないというような話もございました。
 今、御説明申し上げましたように、最後になりますが、詰めなければいけない議論は膨大に残っておりまして、残された期間でどこまでいけるかということは非常に難しいところなんですが、今後少なくとも検討を深めていかなければいけない。少なくともこのワーキング・グループとして共通認識を醸成をしていかなければいけないと思われる事項として次のものがあるかと考えております。
 まず、我が国の紛争処理制度の全般のうち、どういう点が特に問題になっているのか。現状でうまく機能している司法制度の部分もそうですし、もしくはADRについてもうまくいっている部分もあるわけで、もしくはうまくいっていないところもある。そこで、うまくいっているものとうまくいっていないものが何が違って、それがどういうふうに整理すればうまくいくようにつくれるのかということについて、まず皆さんで議論をいただくということが必要であり、その上で、裁判外紛争処理制度の拡充によって、そうした問題のうちのどういった点に応えようとしているのかという点についてコンセンサスをある程度つくる必要があるのではないか。特にADRの特性、さらには金融紛争の特性ということを整理して、どういう形で我々として、金融審議会としての意見としてそのADRの活用を提言をしていくのか。また、ADRの特徴を生かして、有効な紛争処理制度を提供する上では、どのようにしてADR制度を仕組むべきかという点については、先ほども御説明申し上げましたように、やはり法律をつくるべきだという議論から、それはそもそも法制的に無理だというような議論、もしくは、やはりADRという特徴から考えて自主性というのがやはり重要であるというような議論もございますので、そこについても議論をしていく。
 さらには、これは最後の整理のあり方にも係る問題ですけれども、長期的に考えられる、その紛争処理に関する理想的な姿というものと、当面の対応として、我々として金融界の中で、その紛争処理についてどういう対応が可能かということについても、まず話を切り分けた上でコンセンサスを形成をしていく努力をしなければいけないのかなということでございます。
 現状ワーキング・グループは始まったばかりでございまして、いろいろ難しい問題が山積しているということがわかっているという状況でございますけれども、とりあえず事務局の方からワーキング・グループの活動の現状について御報告をさせていただきました。


蝋山部会長 ありがとうございました。これからワーキング・グループ、あと何回やるんでしょうか。


堀企画課課長補佐 最低、来月3回で、6月に一、二回という予定です。


蝋山部会長 という膨大な回数をこなしていただかなきゃならないわけですが、その進行役を岩原さんにお願いしておりまして、大変御苦労さまです。ありがとうございます。そこで、ただいまの事務局の説明につきまして、岩原さんの方から何か補足することがございましたら御発言いただきたく思いますが、いかがでしょうか。


岩原委員 大変見事に議論、あるいは問題点をまとめていただきまして、ああ、そういう問題だったのかと今得心しているところでありますが、皆様も今の堀さんからの御説明を伺って恐らく、膨大なお話で、一体これが果して実質あと1カ月余りで、しかもその間に連休が挟まっているわけでありまして、実質作業時間としては1カ月もあるのかなというところで、どれだけのことができるのかという、多分御心配をいただいていると思います。私自身一番心配しているんでありますが、皆様に大変熱心に御討議いただきまして、その点では進行役としては大変ありがたいと思っておりま2すが、ただ、どうしても今までの審議は、まず現場の率直な問題点をお話しいただこうということで議論をいたしましたので、どうしても議論は個々の紛争ですとか、あるいは個別の業態、あるいは個別のADR機関における問題点の議論が中心になってしまいまして、まさに混沌とした議論の状態というところであります。
 しかし、当然審議会といたしましては、そういった個別の問題をいわば抽象化する、あるいは一般化することによりまして、抽象的、一般的な制度としてADR制度を構築していかなければならないという課題を負っているわけであります。そのためには当然時間が必要なわけですけれども、さっき申しましたように、あと四、五回、1カ月足らずという中でどれだけのことができるかと言われますと本当に心配であります。
 そこで、私個人の考えといたしましては、確かに理想論を言えばこれはもう幾らでも不満が出てくる問題でありまして、先ほどの御説明にありましたように、それぞれの立場からかなりの問題といいますか、深刻な論点が提起されたわけでありますが、しかし、少しでも現在の現実から一歩でも良くしていこうというふうに考えれば、道は開けてくるのではないかと思います。
 まず第1に、現在既に存在しておりますADRを前提にしまして、それを少しでも改善するために可能な当面の措置は何かということを考えてみたいと思っております。
 そして第2には、今後中長期的に取り組んでいくべきADR制度の改善に必要な検討すべき事項を明らかにし、それを整理することによりまして、この7月以降に発足します金融庁における新しい審議機関にその検討をしっかり引き継いでいただけるようなレールを引くということが我々の大きい課題ではないかと思っております。その際には、まさに今後の検討すべき要点を抑えていくということが必要でありますので、その際には、かなり視点だけは幅広に持つ必要があるのではないかというのが私の印象であります。
 具体的な問題点、いろいろと本当に指摘していただいたんですが、それをよく考えていきますと、ある意味でいうと、狭いADRの紛争解決の制度というところにおさまらないいろいろな問題が出てきている。例えば、そういった紛争解決機関がうまく機能するためには、何よりも証拠等がきちんとそういうADRに停止されるような仕組みを考えなければいけないんですけれども、そのためには単にADRそのものの制度だけでなくて、それの前提になっております取引ルールや業者ルール、あるいは市場ルールといった中にそういった証拠の跡が出やすい、あるいは紛争がこじれにくいような仕組みをいろいろビルトインしていく必要があるわけでありまして、そういった点も含めて、短い期間ではありますが、なるべく広い視野から将来の議論をしやすくするような論点を詰めて、次のまさに我々の跡を引き継ぐ機関に引き継いでいきたいというふうに考えております。
 以上でございます。


蝋山部会長 ありがとうございました。本当に再度申し上げますが、御苦労をかけますが、どうかよろしくお願いしたいというふうに思います。
 ただいま、事務局並びに岩原進行役からまとめとそれから御意見を頂戴いたしましたけれども、これらの点につきましていろいろございましょうが、ぜひワーキング・グループの趣旨を生かした形で、この場で御披瀝いただく御意見がございましたらちょうだいしたいというふうに思います。
 京藤委員、ございますか。


京藤委員 この裁判外紛争処理制度で、前からこういうことを考えてもらえたらということが一つありますので少しお話ししたいと思うんですけれども、実は、裁判外紛争処理制度をする場合に、専門的な知識を持った人がやはり間に介在しないとなかなか問題解決しえなくて、そういうものとして業界の団体というのが、これがどんなに中立性を保ってやるんだと言っても、そうなかなか見えにくいところがあってなかなか使えない。そうすると一つの選択肢として、例えば消費者法やいろいろな問題について知識がある人を、資格として付与して、そういうある一定の知識を持った人はそういうことに関われるというような一種の資格をつくって、その資格の付与、剥奪という形で質をコントロールするという形でやって、一種の裁判における弁護士と言いますか、議論が感情的にならなくて論点を整理して、そして冷静に交渉できるような整理をする人がいると問題がこじれなくて済むことがあると思うんですけれども、そういう問題が消費者と企業の間にやはり人が介在をして整理をするといったような仕組みというのがあると、これはどうやって人員を調達して、だれが負担するかという問題にも多少解決の糸口が見えるかもしれないので、もちろん中長期的な展望ですけれども、そのような制度というのが特に消費者紛争については必要になってくるのではないか、ということを前から感じておりまして、そういった可能性についても検討してくださればということを申し上げたいと思います。


蝋山部会長 ありがとうございます。大変具体的な中長期を受けての御提案をちょうだいしましたが、他に、関さん、いかがですか。


関オブザーバー この問題につきましては、私は第一部会で大分前になりますけれども、協会の状況を踏まえて、またアメリカの状況とも比較しながら、こういうところに問題点があるんじゃないかということもお話をさせていただきましたし、今度のワーキング・グループでも、協会の方からも参加をさせていただいております。
 それでまた、最初、堀さんの方から非常にきちんと整理されたお話がありましたし、また岩原委員もそれをお受けになって今後の課題を明確にされまして、私は岩原委員のそういう路線でおまとめになるというのを、それだけでもなかなか大変だと思いますけれども、非常に結構ではないかというふうに思っております。
 ただ、今度のワーキング・グループの今までの作業の一つに、現在動いているADR、私の方は自主規制機関の一つでありますけれども、そういったものを利用した人がどういう気持ちを持っているかということをきちんと把握をして、それで考えようというのが一つテーマになっていたようであります。協会は前に申しましたように、平成10年の証取法改正で、自主規制の一つとして、あっせん制度、要するに仲裁機能を持った制度を整備しろということが法律上義務づけられております。その前からそういう機能を果しておりましたけれども、それ以後さらに拍車をかけて法的整備、法律に基づくいろいろな整備に、これは真剣に取り組んできているわけです。それで、今お話もありましたけれども、あっせんの個別事案の判定を行うのはすべて専門の弁護士さんにあっせん委員としてお願いしておりまして、その独立性は十分担保される対応になっています。そういう制度をつくりましたけれども、なかなか初め利用されなかったという面があります。ただ、これも御報告してありますように、ここのところ非常に利用されるようになりつつあります。
 その一つの原因は何かというと、これは私も何度も申し上げていたわけですけれども、証取法上の行政手続の事故確認という制度があるわけですが、裁判上の和解ということをすれば、この事故確認を要しないということになっています。この事故確認の目的は、大変大きな問題になりました損失補てんについて、違法なものと損害賠償とをきちんと区分けをする。そのために損害賠償であっても、それが損失補てんではないんだということを行政的に確認しなければならないという制度です。それを法律でがちっと決めたわけでありまして、裁判上の和解であればこれは裁判官がおやりになっているから事故確認は要らない。しかし、証券業協会のあっせん制度では、事故確認が要るという制度にしてありました。これは、そこで専門の弁護士さんが両方の話を聞いて一定の仲裁案を出して決めたとしても、それが今度は行政にかくかくしかじかで、これこれこういう理由で損害賠償額として正当ですということをきちんと説明しなければならないと、こういう制度にしてあったものですから、これはほとんど動かないということになっていたわけですね。それは変ではないかということを再三私は申し上げたわけでありまして、裁判官による裁判上の民事上の和解、これは専門家の皆さんはお分りですけれども、これが客観的な真実であるから和解するというのではなくて、両方の弁護士さんが手を握ればそれで決まるという制度でありますから、そこは違うんじゃないかということを何度も申し上げて、それはどちらも平等に扱うという趣旨の法律改正がやっと平成10年12月にできて、その結果、協会のあっせん制度が次第に使われるようになったわけです。
 それからまた、先ほどお話のあった最近の消費者センターの方でおまとめになった紛争処理制度のいろいろな問題点の調査報告、こういったものを私どもの会員にすべて流しまして、こういったところが問題になっているんで、これは紛争処理ではなくて、紛争処理の原因になるようなことにならないように十分注意をしてほしいということを徹底する、こういった努力はいろいろしているわけであります。
 ただ、残念なことに、この部会のこれまでの議論を通じてでありますが、やや私のひがみもあるのかもしれませんけれども、日本証券業協会のこういった制度というのはうまく動いてないんじゃないか、なかんずく、私は非常に気になりますのは、どうせ業者の団体である証券業協会がやっている紛争処理なんていうのは、中立性とかそういった面に非常に問題があるんじゃないかという、何かバイアスみたいなのがあるのではないかという気がするわけであります。私どもはそういうつもりではなくて、これは真剣に取り組んでいるということはぜひ理解していただきたいということを、まず総論的に申し上げたいわけであります。
 それで、この前のワーキング・グループのいろいろな御議論の中から、今後とも重要なポイントとして出てくる点を三つほど申し上げさせていただきたいんですが、そもそも証券業協会自体があっせん制度を利用してもうまくいきませんよということを相談に来た人に言っているんじゃないかと、こういう指摘があったわけであります。そんなことは絶対ありませんが、そもそもあっせんというのは、独立に発生するというのはもちろんないわけではありませんが、多くのケースは、まず苦情とか相談から始まるわけです。相談としていろいろお話を聞いて、そのプロセスの中で業者の方にも「こういう苦情が来ていますけれどもどうですか」というようなことを苦情処理、相談という分野で処理をして、その上で解決できるものは解決していくわけでありますから、それで済んでいるものはそれでおさまっているわけであります。それでうまくいかないものについて、あっせん制度というのはこういう制度ですよということを今度は正確に相談に来た人にお知らせをしなくてはならないわけです。そこに何か透明性が欠けているというような御指摘があったようでありますが、すべて規則化されておりまして、あっせん制度を利用するならこういう仕組みになっていますということを一つの紙にして必ずお渡しをするということになっています。その中には、例えば、紛争発生から3年過ぎていればあっせんには乗りませんとか、そういったようなことが全部書いてあるわけです。そういったことでありますから、あっせん制度を利用しないように協会が指導しているというふうにおとりいただくというのは大変困ったことじゃないかと思っているというのが第1点であります。
 それから第2点は、これは今後の問題としても非常に大事なんですが、証券会社がなかなか協力してこないではないかという問題があります。これは確かにあると思います。顧客から協会にあっせんの申し立てがあれば、その申し立てにきちんと応答してくるようにという義務はかけておりますけれども、その後、すべてこのあっせん手続にずっとのってきなさいという義務は証券会社にはかかっておりません。それは事実でありますけれども、いわゆる参加義務というものはきちんと規則化しておりますし、なるべくあっせん手続で解決されるような仕組みは、これは縷々説明いたしませんが、入っているわけであります。ただ、先ほど事務局の御説明、会社としてのオーソリゼーションの問題があるということが御指摘ありましたけれども、これまた企業としては当然でありますし、先ほどいろいろな苦情処理があっせん申し立てからスタートするものばかりではないと申し上げましたように、協会に持ち込まれる苦情処理も、さらにその前に業者との間にこういう問題についての折衝があって、そこでコンプライアンス部門での問題にもなって、それでもうまくいかなくて上がってくるという問題も随分あるわけであります。その段階でも解決されたケースというのは幾らでもあるわけなんですが、そういう問題が上がってきますから、例えば協会が、こういった問題に対する苦情処理の段階でいろいろ業者に聞きますと、業者の方の姿勢というのも、その事案についてかなり方針が固まっている場合もあるわけです。これは裁判で、自分の方は落ち度がないんで徹底的に裁判で争うと、こういう姿勢になっているというケースだってあり得るわけです。そういったいろいろな問題があるわけでありまして、一概にあっせん申し立て手続にのってこようとしないから、すべて証券会社がこういう制度に協力していないんではないかと、こういうふうにいうのはなかなか無理だろうと思います。
 つまり、もっと極論しますと、今御存じのように、証券会社はコンプライアンスというものを非常に強化しようということでみんな真剣に取り組んでいると思うんです。コンプライアンス体制を充実させ、かつ、それに自信がある会社ほどそこのところは厳しくなるわけです。つまり、非常に何か問題があって非があるということになれば、それは自分たちの会社の中で苦情処理の問題として処理をする、それから、絶対に非がないということであれば、それは裁判で徹底的に争うという、こういうふうに振り分けをそれぞれの会社でするという体制になってくるわけでありまして、容易にすべてあっせんで処理しましょうというようなこと、これは一般論ですけれども、必ずそれを持って正しい姿勢だということにはならないんだというふうに思うんですね。
 それからもう一つ、これは実は今まで出ていないわけですが、どうも、先ほど事故確認のお話を申し上げましたけれども、協会のあっせんによる和解については、事故確認は不要になったといたしますと、それによって、金銭支払いの手続は終わるわけですが、その後のいろいろな証券会社の検査とか、あるいは行政のいろいろな御質問とか、そういったときには、なぜこういうことであっせん手続で処理を終えたのか、そこの合理性を説明しろということがございます。こういう姿勢が行政なり検査当局にまだ残っているんじゃないかと、そういうところがあります。ここは非常に私は難しい点だと思うんです。つまり、裁判所の調停も同じだと思いますけれども、判決でもあるいはそうなのかもしれませんが、それでもやっぱりそれは損失補てんの要素があるのではないか、だから、行政として問題にする、検査について問題にする、という姿勢があって悪いということになるかどうかはわかりませんけれども、例えば協会のあっせん制度で、1,000万円の損害があったときに300万円で手を打ちましたとすると、なぜ300万円で決めたのかというところを行政上の問題にするという姿勢がなお残っているというのが事実だと思うんです。そうすると、それが会社の方からすると、うっかりあっせんにのって後で問題になっては困るという懸念が生じるわけで、この行政との関係というのは一つ残っているように思います。だから、そこのところはきちっと整理をしていただきたいと思います。
 それから、最後でありますけれども、これはワーキンググループでも議論になったと思いますが、これは法律上の問題として、何が何でもこの制度で解決をしなさいと義務をかけるというのは無理だと思います。訴訟でどうしても争うということがあれば、それに応じなければならない。それ以上のことは、これは多分どういう制度をつくっても、新しい制度をつくってもそれは無理じゃないかというふうに思います。
 以上、長くなりましたけれども、いずれも私は非常に重要なポイントだと思いますので、あえて発言をさせていただきました。


蝋山部会長 ありがとうございました。井上さんどうぞ。


井上委員 5分ぐらいで発言をしたいと思います。今、お話も伺っていたんですが、日本はこれまでも私は市場経済ではあったとは思います。しかし、黙約というようなことで、殊に労働契約や一般商品については比較的明示的な様々の処理というのができたと思うんですが、やっぱり遅れていたのは金融だろうと思うんです。金融を商品として、しかもリスクのあるもの、しかもグローバライゼーションの中で、起業家精神を持って新しく改革していくということが求められているような時代になったときに、やっぱり今までの金融のあり方というのはかなり基本的に問い直されなきゃならない。つまり、比較的90年代に入って、それまでの日本の経済産業の政策やそのシステムの型が供給者主導というものから、やっぱりある程度拮抗した消費者の立場や利用者の立場、生活者の立場というのを戦略的に生かして拮抗させて初めて透明なルール、市場ルールが成り立つと、こういう考え方に大体定着してきたんだろうと思います。今遅れているのは金融であると思います。例えば、労働契約を例にとりますと、そういう自主規制の問題については、日経連、あるいは経団連というのがありまして、業界内でなかなか適切な、さまざまな処理、自主規制、相談機能を持っております。これは一般の逆に労働者側が提訴の問題を持ち込んでもある程度処理できるような力も持っています。しかし、それにもかかわらず労働組合というのもやっぱり要るわけでして、業者側のある団体というのができて、それはまたその中で相談機能を持ち、処理機能を持つと、つまり、それによって初めて労働市場に共通のルールを立てる前提条件ができて、その上で経営者団体と労働組合が団体交渉をして、バーゲニングしてあるルールが決まる。そのルールが決まらないときには、中央労働委員会や地方労働委員会というのがあって、その問題をさらに扱う。こういう形で市場経済のルールというのは発達してきたんだろうと思うんです。
 そういう点で見ると、恐らくこれまでの多くの一般の国民が感じているのは、金融というのはいろいろな点で今まで雅量を持って、その利用者の立場を考えてきた。そういう日本の特性があったとは、それは認めると思うんです。しかしながら、90年代のこれからのグローバライゼーション以降、21世紀の市場経済の中でそのような、これまでいわばジェントルマンとして行動してきた金融のあり方というのが変わり得るし、ある程度変わらないと世界的な金融のグローバル化に太刀打ちできないと。そうするといろいろな、言ってみれば何でもありというようなことが一たん金融の市場の中に表れるリスクがあると思うんです。そうするとやっぱり金融の供給者側の論理というものと──まあ、供給者といいますか、金融の業界の輪の論理というものと、利用者の側の論理というのは一応やっぱり利益相反があるというものと基本的に分けておいた上で、どういうルールをつくるかということが求められているし、流れ懇以来の議論というのはそういうことになっておったと思うんです。岩原さん大変なことなんですが、基本的にはそういう線で整理を、今日も堀さんも、いただいたんだろうと思うんです。
 したがって、そこで申し上げたいことは、やっぱりこの重要な、今までの日本経済のシステムの中で大きな欠陥があると、構造的な穴があると、それをどうやって見ていくか、特に金融システムについてはどうやって埋めていくかというときに様々な手だてがあるんですが、このADRもその中の重要な手口の一つだという点で、やっぱり自主規制というのは労働組合も自主規制をします。経営者団体も自主規制します。業界団体も自主規制しますが、にもかかわらず、それを超えた中立的なものというのはどうしても必要だというふうに考えざるを得ない。そのときにやっぱり労働の場合は労働組合というのがあって、ある程度の力がありますけれども、消費者の側とか金融の利用者の側はまとまった力というのは持たないものですから、それをどうやって担保するかということになると、公的なものがある程度入ったような、消費者国民生活センター的なものに金融についての相談機能や、そういうものを高めるということも必要だと思いますし、中立性とある程度公的なものが入り、とにかく第三者的な制度というのを比較的早めに、考え方の上では確立しておかないと話が始まらないという点で、少し議論が必ずしも、私は金融が専門ではありませんので具体的なところに入りませんけれども、今事務局と岩原さんがこれからあと一月という非常に限られた中で、本当に大変だと思いますか、ぜひ戦略的に日本の大きな制度の21世紀の未来の自分が足がかりの一つをつくるんだということで頑張っていただきたいということをお願いしたいと思います。


蝋山部会長 応援演説だというふうに岩原さん御理解ください。高橋さんどうぞ。


高橋委員 私はワーキング・グループのメンバーでございます。先ほどワーキング・グループの議論を御覧になっているかのような関さんの御発言、大変恐れ入りました。実はワーキング・グループの議論は非常に今熱くなっておりまして、昨日も会議が終了後延長戦を一部委員、オブザーバーでやっていたんですね。それは一番の焦点は、その証券業協会のあっせん制度についての事実確認のことなんですけれども、やはり岩原先生も先ほどおっしゃいましたように、個々の紛争とか個々のADRのものを一般化するためには、今どうしてもみんなが納得しなければいけない問題がございまして、これを4月17日までちょっと持ち越すのはあれなので、今日は、昨日とダブっている委員で出席できておりますのが宮部オブザーバーと私ですので、私の方で代表して、ここの部会の場で確認をさせていただいて一歩進めたいということになっておりますので、その辺御了承の上、少しお話を聞いていただきたいというふうに思います。
 その点と申しますのは、裁判外紛争処理制度について個々のものというのは、やはり我々としては確認をしないと、その短期の問題、長期の問題ともに一歩も今進めないところに来ております。証券業協会の制度は法的根拠のあるということで、一つのケースとして注目しているわけなんですけれども、国民生活センターさんの方から重大な問題提起がされました。一つは、先ほど関さんからお答えがございましたけれども、事業者はあっせんの申し出を法律上は拒めないことになっているんだけれども、現実に拒んでいる会社がかなりある。これはどういうことなんですかと。もちろん監督庁とか協会に御指導は頂きたいんですけれども、まずそういう仕組みになっていることが問題なんじゃないですかということが1点ありました。
 それからもう一つ、実際にあっせんという形で始まっても打ち切りになるケースが結構あって、それが国民生活センターに持ち込まれているということなんです。その打ち切りというのは、先ほど関さんからも御説明がありましたけれども、申し立て、証券業協会の方の相談の窓口に行った人に、「あっせんの申し立てをなさる方に」という用紙が配られているんだけれども、これには非常に丁寧に御説明があるのですけれども、「あっせん申し立ての中の紛争が次のいずれかに該当するときは、そのあっせんを打ち切ることがあります」と、こういう条文があります。それの1というのに、「当事者があっせん中の紛争について訴訟を提起し、または民事調定を申し立てたとき」というのがあるのですけれども、その「訴訟を提起し」ということが、当事者がいわゆる顧客利用者ではなくて、受けて立つ方の証券会社が「これは裁判で争いたい」と言ったときに、もうそこであっせんが打ち切りになってしまう。でも、訴えなければいけないのは顧客の方ですから、これでは消費者はアウトになってしまう。せっかく法律をつくって、証券業協会さんも証券会社もかなりお金を使ってやっているのに、もしこれが抜け道みたいな、抜け穴みたいな形で使っている会社があるとすれば、この制度というのはどういうものなのだろうか。今後その法的根拠のものをつくるときなどに、証券業法では義務があるというふうに謳っているのですけれども、実際の協会の方での紛争処理規則1号にも同じようなことが書かれていて、あっせんが打ち切られるということになっていたら、これは問題ではないかというのが一つ出されておりました。ですので、この件に関しまして、証券業協会自体が利用できないようにしているなんてということは毛頭私ども思っていないのですけれども、制度上そういうふうに悪用といいますか、利用してしまうような余地があるのだとすれば、それは問題としてとらえていきたいと思いますので、証券業界、あるいは協会の方にその点、本当にそういうことがあり得るのかということをお聞きしたいということと、国民生活センターにそういう苦情が来ているということ、あるいは消費生活センターに来ているということなんですけれども、監督庁の方にはそういう苦情というのは来ていないのかどうかということをお聞きしたいと思います。
 それから2点目は、もうこれはちょっと証券と離れた問題で、銀行の方の弁護士会、仲裁センターのことなのですけれども、昨日、弁護士会の仲裁センターの方がおみえになってヒアリングを行って、我々もいろいろお聞きしたのですけれども、銀行協会さんが利用協定を結んでいるということなんですが、昨日お伺いした限りでは、金融サービスの案件の受理、解決というのがほとんどなくて、銀行に関しては東京第二弁護士会がやっているわけですけれども、今まで受理、解決ともにゼロということで、そういうところに実際に出すということで解決していけるのだろうかという疑問を委員、オブザーバーのかなりの人が持っているということなんですね。これは私も昨日御質問しましたけれども、弁護士会の方は、その金融サービスに詳しい弁護士さんというのがなかなかいないということでなかなか難しいというお答えを頂いているのですけれども、そういう個別の問題ではあるんですが、ちょっとこの辺を乗り越えないと次にいけないものですから、関係の方に、これについてもお答えいただきたいと思います。
 以上でございます。


蝋山部会長 宮部さん、何か補足することがありますか。よろしいですか。
 すぐにお答えいただけるようなことであれば、ぜひお願いしたいというふうに思います。関さんどうぞ。


関オブザーバー 今の具体的な問題提起ですけれども、ご指摘になったような規則になっていて、申し立てを希望される方への説明書にもそのように書いてあるわけですが、証券会社はあっせんが申し立てられたときに、これは訴訟で解決したいから訴訟しますと、その権利を、それをしちゃいかんということは今やっていないわけです。それはまた無理だと思うんです。それをもしやるのであれば、私はアメリカの事情を説明したときに申し上げたつもりですけれども、あちらは口座を設定するときに、これにトラブルが発生したらまずADRを使って処理することにしましょうということを顧客と契約をするという制度まであるわけですね。それはさすがに向こうも、最初それは合法かどうかという議論になったそうですけれども、今は合法だということになってそれで動いているということなんですが、そこまでやるかどうかということは、今後の問題としてあると思います。しかし、これは今度はADRの方が大変きちんとした制度にしていないとそれは無理だと思います。ADRの今後の整備状況如何と、先ほど岩原先生がおっしゃった、ほかのいろいろなルールとの関係もきちんと整理する必要がありますよと言われた問題点だと思うんですね。
 今の制度で、唯一私は気になるのは、お客さんの方があっせん申し立てをしてあっせん手続が始まった段階で証券業者がこれは訴訟でやりますからと、自分の方から訴訟を訴えますとこう言ってきてあっせん手続が終わったが、現実にはそれは口実であって、実際には訴訟を起こしていないというケースがあるのかというところはちょっと気になりますけれども、私どもはそういうものはないと思いますけれども、それは後で確認して御報告いたします。


高橋委員 ただ、委員の中にその認識の差がありまして、訴訟をするというのが、証券会社自体から裁判をする、訴訟をしますということがあり得るのかどうか。センターの職員の方はそうではなくて、もう訴訟しますという段階でノーという形になってしまうのではないかという御認識であったので、じゃあこの場で確認しましょうということになっているんですが。


関オブザーバー ですから、今申し上げましたように……。


高橋委員 はい、訴訟をしますということですね。


関オブザーバー そういうケースはないと思っていますけれども、もう一回全部調べてみます。過去の例はわかっていますから。


蝋山部会長 岩村さんどうぞ。


岩村委員 余り僕この制度知らなかったんで、今聞いていて気がついたんですが、ワーキング・グループで議論していただきたいと思う点なんですが、やはりこの裁判外紛争処理制度というのは「裁判外」なんですね。下級審ではないので、何らかの理由で裁判よりはこの方が合理的だと思ってこの手続に持ち込まれるんだろうと思います。それでどうして合理的だと考えるかというと、やはり裁判というのは、特に資力のない消費者、利用者側にとっては大きな財産上のコストをかけることになるし、それから時間も業として営業している人間ではないですから、それの不利益というのも大きいと、それでこの手続に入るという意思決定をするのに対して、いつでも裁判を起こせるんだよというカードをゲームの反対側が握っていて、今の御議論は、握っているのが実際にアンフェアなゲームのプレーの仕方に使われているかどうかという点についての認識の議論だったと思うんですが、それ以前にゲームのルールとして、私は、恐らく今の関さんのお話を聞いていると、証券業協会さんはアンフェアなプレーの仕方はしていないとおっしゃっていると思うんですよ。ただ、そうなんですが、ただ見ている、伺っていると、ゲームのルールそのものはどうもアンフェアな──アンフェアというか、制度上はフェアなんです。合法なんですけれども、アンフェアないわばプレーをゲームができるという仕掛けを内包しているような気がするんですが、その辺は実態の問題とは別に、理論上の問題といったらおかしいですけれども、いわばゲームの問題として分析される必要があると思います。


蝋山部会長 その点は十分ワーキンググループで御認識をいただきたく思いますし、また関さんの方から実態のケースというものをいずれの機会にか、WGの横山さんがメンバーになっておられるわけですから、お願いしたいというふうに思います。
 もう一つ、第二弁護士会の仲裁センターの受理件数ゼロですか、そういう点につきまして、もしも今おわかりでしたらお願いしたいというふうに思いますが、奥さん。


奥オブザーバー この制度が始まりましたのが、昨年の10月でございまして、一応その紛争といいますか、苦情なのか紛争かというのはいろいろとあるんですけれども、弁護士の裁定に持ち込むまでは、3カ月間、各銀行とそれから紛争、クレーム者との間での議論といいますか、それを経た上で来てくださいと、そこからあっせんいたしましょうと、こういう制度でございまして、6カ月はたっておりますが、まだそういう制度自体が新しいということと、3カ月ルールというのがございますので、そういう状態になっているので、今のところゼロということでございますけれども、まだ熟成といいますか、それが周知徹底していくという部分についてのまだ移行期間ではないかというふうに推定をしております。
 現状につきましては、再度よく把握をしてまいりますけれども、片方で銀行に対するいわゆる苦情とかクレームという件数は多いわけですけれども、それがいわゆる紛争の処理としてそういうものになるものなのか、単に例えば一般的な貸し渋りの問題とか、そういう銀行批判的なクレームも全部これは入っておりますので、そこから具体的に何か出てくる。例えば、レンダーズ・ライアビリティーとしての貸金の先ほどちょっとありましたけれども、黙示的な受諾をした、しないとか、そういうようなものが具体的なものとして出てきているかどうかということについていいますと、それがまだ紛争の処理の問題としては今のところ具体的には出てきていないということではないかと思います。


関オブザーバー ちょっと大事な点なんで、先ほどの岩村さんの御発言で、協会はアンフェアにはやっていないとおっしゃっているがという前置きで言われまして、その結論はおっしゃってないんですが、岩村先生は、つまり協会の紛争処理制度はアンフェアなものが状態が残っていると、そういう御認識なのか、もしそうであるのならば、私どももいろいろ欠陥があると、あるいはもうちょっと改善を要するという点はいろいろと努力をするということを何度も申し上げているわけです。今後ともやりますが、そもそも証券業協会は自主規制というものの一部として紛争処理、あるいはあっせん、仲裁機能を持つということをやらせるべきじゃないんだと、こういう御議論をおっしゃっているのか、それとも具体的に、どうもよくわからないんですよね。アンフェアではないと言っているがという前提は何となくアンフェアが残っているという……。


蝋山部会長 岩村さん特有の言い方でフォローできない面がおありになったかもしれませんが、もう少しストレートにきちっと。


岩村委員 私の認識が間違っていなければ、今の協会の制度というのは、例えて言えば、殿様相手の将棋のような状態になっていて、いつでも協会の側は紛争処理を打ち切ることができる。片側は消費者側は紛争処理にとどまっていたいのに打ち切ることのオプションを持ってしまっていると。しかし、それを殿様が将棋の盤を急にやめるような状態でやめるような処理をしていないというのが関さんのおっしゃっている認識だと思うので、現状のやり方がいい悪いという話ではないが、ただ、制度の仕掛けのつくり方として、紛争処理制度というのは本来両方がその制度に入りたいからやるか、それともそうでなければ入らせるという強制が必要なのですが、私はそういう意味では今の制度というのはまだ重要な要素が一つ欠けているような気がするので、制度的な補足が必要であろうと思います。


蝋山部会長 制度のルールが問題があると。


岩村委員 そうです。


蝋山部会長 関さん、一言。


関オブザーバー よろしいですか。つまり、うちの規則を読んでいただきたいんですが、当事者が、これは証券会社と申立人と両方ですが、あっせん中の紛争について訴訟を提起し、または民事調停を申し立てたときは打ち切ることができると、こういうことになっているわけです。


蝋山部会長 ですから、岩村さんがそこを問題にしているわけでしょう。


関オブザーバー ですが、片方が訴訟をやりますと、あるいは民事調停、裁判所の社会的に信頼されている手続に移りますと言っているときに、こちらでやろうと言ったって、それはまとまるはずがないじゃないですかというのがこの制度の趣旨です。
 仮にこういう規定を置かないADRなんていうのは、制度上僕は無理だと思います。それはもう一つは、制度として井上先生がおっしゃった労働争議みたいな特殊な要件について特別な行政委員会とかそういうものをつくって、それを前置主義を法律でつくるというようなことなら、そこまでいくなら別ですけれども、そうでない範囲であれば、それは無理だと思います。


蝋山部会長 結論を少し、ここでは問題を、岩村さんは問題を提起されたと。


関オブザーバー 岩村さんに対する不満は、それをもって殿様の制度だというのは、それはいかにも法律的な理解が不足していると思いますね。


蝋山部会長 私としてはどちらがどういうふうに是であり、認識が正しくてどちらが間違えているかとか、どちらの認識をとるべきだということをこの場で申し上げるつもりはありませんし、その必要もないというふうに思います。そういうルール自体がどういうルールであることが望ましいのか、ADRとして、その点をワーキンググループで検討いただきたいという問題を証券業協会のケースが提示したという理解を私はさせていただきまして、それでよろしいのではないかというふうに思います。証券業協会が悪いとか、そういうことを言ってるわけじゃ決してないということも御理解いただきたいというふうに思います。そしてそういう問題提起をして、これからの日本のADRがどういうルールを持つべきなのかという点について、ぜひワーキンググループとしての真摯な議論をお願いしたいというふうに思いますし、またそこに一つの結論が出てくれば、それはそれとして望ましいというふうに思います。
 では、ありがとうございました。


高橋委員 よろしいですか。先ほどの銀行のケースなんですが、私の説明が悪かったと思うんですが、弁護士仲裁センター自体が平成2年3月からスタートして全国に広がっているんですけれども、そこで見てゼロということでございまして、ですから、そういうゼロという実績がない団体と利用提携をしていくというその選別の問題に問題があったのではないか、あるいは、それを気にしておりますのは、この審議会の第二次の整理のときに、そういう弁護士の仲裁センターに出すような方法が公正・中立性があっていいのではないかというふうなことが書かれておりますので、まあそういう面はあるのでしょうけれども、金融のトラブルに対応できないとしたら絵にかいたもちになってしまいますので、その辺のことをお聞きしたかったんです。


蝋山部会長 その点も認識の問題ですので、新しい認識をさせていただいたということで、ありがとうございます。
 よろしゅうございますでしょうか。まだまだ議論は詰めなければいけない。そうするとワーキンググループの議論をこの場でやるということになりますので、十分に詰められたものをここで議論させていただきたい。次回なり次々回にというふうに思いますので、ADR、裁判外紛争処理の問題につきましては、これできょうは打ち切らせていただきたいというふうに思います。
 もう時間が余りありませんが、20分ほど予定を超過していますけれども、続きまして第2の問題のCPのペーパーレス化に関する研究会の報告書につきまして、松川さんの方から手短にお願いしたいというふうに思います。


松川市場課長 それでは、お手元の資料、第一部会23−5及び23−6に基づきまして「CPのペーパーレス化に関する研究会の報告書」について御説明申し上げます。
 この研究会は、昨年の4月から法務省の民事局と大蔵省の金融企画局と共同で、学識経験者や市場関係者からなる研究会を構成いたしまして開催してきているものでございます。
 背景としましては、コマーシャル・ペーパー(CP)が昭和62年に創設されまして、順調に拡大してきておりますが、現行のCPは約束手形とされ、権利の発生、移転等について券面を必要とする。ペーパーを必要とするということで、発行会社等から発行段階における券面作成事務の負担が大きいとか、あるいは発行、償還、流通について資金の受け入れ等が即日にできない等の使い勝手の悪さが指摘されておりまして、券面を必要としないCPのあり方についてぜひ検討してほしいという要望があったことを受けたものでございます。
 お手元の資料の23−6が報告書そのものでございますが、時間の関係上、23−5に従いまして骨子を説明させていただきたいと存じます。
 まず1では、法制度の整備の必要性ということでまとめられております。研究会の結論といたしましては、現行のCPのさまざまな問題を解消するためには、券面を必要としない、これは言葉の矛盾がありますけれども、券面を必要としないCPの実現を図る必要ということで検討してきておりまして、そこで券面にかわる電子的な記録を基礎として、その権利の発生、移転、消滅等の効果を付与する新たな法制度の整備が必要であるという見解に達したということでございます。この新たな法制度の整備及びそれに関連する電子システムの構築に際しましては、現在金融審議会当部会及びその下のワーキングで検討されている証券決済システムの改革の動向に配慮することが必要であるとされております。
 2番目は、新たな電子的な商品についての商品性についての見解でございまして、基本的に現行の商品性、すなわち額面が1億円以上、期間1年未満という考え方を踏襲すべきであると。また、証券取引法上の有価証券としては取り扱うべきであるとされております。しかしながら、この電子的な記録を基礎として、権利の発生、移転、効果を付与するという仕組み自体についてはCPだけではなくて、法人の資金調達の手段一般に応用し得る性格を帯びているということから、現実の法制化の際には、その範囲をどうするかということを含めて検討する必要があるわけですけれども、その際に、この法人の資金調達のための諸制度、特に社債制度等の整合性等について十分検討されるべきであるとしております。
 なお、現在のCPとの関係につきましては、現在の紙の形のものもニーズが引き続きあろうということで、両者併用ということで、現在のCPについては存続させることが望ましいとされております。
 法制度の枠組みでございますが、電子証券方式ということで、電子署名を付して送信するという形でする方式と一定のもの、電子登録機関にファイルを設けて、そこにデータを記録することによって権利が発生、移転するという電子登録方式の二つを検討したわけでありますけれども、国際的には集中的な補完機構による振替、いわゆるブックエントリーシステムという形で権利の移転を行う仕組みがグローバルスタンダードになっているということなどを踏まえまして、電子登録方式を基本として立法措置を講ずることが適当ではないかという結論になりました。
 法案に盛り込むべき主要な事項としまして、まず電子登録機関でございますが、これは当然といいますか、電子登録機関についての業務の性格上からして、主務大臣が登録機関を指定して、その監督についての所要の規定を設けるべきであるとしております。ただ、具体的に登録機関の組織や監督のあり方等については、結論が具体的には出ておりませんで、その業務の構成性、中立性、安全性等を確保する観点から、法制化の際に十分検討するということにされております。背景としては、公共性を重んじて、財団法人的なものに限るべきなのか、あるいはもう少し株式会社的なものにも広げていくのか、株式会社的なものを広げる場合には、どういった要件なり規制を加えていくかというのが背景にございましたけれども、結論としては、こういった観点から十分法制度の際検討してくださいということでございました。
 あとは法律上の効果の点でございますが、(2)、2ページ目でございますけれども、民法の特例ということで、法人の申出によりまして、電子登録機関がファイル、参加者口座ファイルを設けまして、そこに所要事項を記録したときには、その記録に従って法人が支払い債務を負い、そこにファイルに記載されたものが権利を取得すると、そういう形でございます。移転の場合も同じでございまして、その口座ファイルにその帳簿の振替、電子的な帳簿の振替の記録がされたときに効力を生じる。したがって、その振替を受けたものは、そのファイルに記録されている限りは債権も適法に有するものと推定されるという扱いでございます。
 それから、そういったことで電子的な記録の基礎に効力を持たせるということでございますので、やはりその正確性を担保しないといけないということでございますので、登録機関についてもし過去等において真実と異なるような記録をして、過大に電子債権の記録をした等によりまして、参加者等に損害が生じた場合には損害賠償責任を負うということを明確にしております。なお、この電子的な記録については、国際的な動向等を考えまして、階層型にしまして、参加者の下にさらに顧客がぶら下がるという形も想定されているところでございます。
 以上が、CP研究会の報告書の骨子でございます。


蝋山部会長 ありがとうございました。この点につきまして、ただいま松川課長から説明があった点につきまして御質問なり御意見ございませんか。
 岩村さんは委員なんですね。委員としては何かありますか。


岩村委員 今までの登録制度とか振替決済制度という枠組みもあったわけですけれども、それからあえて離れて、新しいペーパーレスの方法論というものが模索できたというのは大変有益だったと思います。ほかにもいろいろな方法があろうかと私は思いますが、この中で出てきた点の中で非常に斬新な点というのは、今松川課長からもお話があったとおり、登録機関というもののいわば性質ですね。公共性・中立性ということで、財団法人なのか、それとも株式会社というようないわば決済業務に競争という概念を持ち込むことも可能なのかどうかということについて、それ相当の議論があったというところが重要であろうかと思います。その点はこれからの立法作業で生かしていただけると伺っております。


蝋山部会長 私から、これは一見したところ以上に重要な問題だと思いますので、この報告書の2ページのところに、報告書本文の2ページ、1ページから続いている注の一番最後に、この金融審議会の第一部会で議論しております証券決済システムの動きと直になっているわけですね。しかし、どうもこの議論は必ずしも全体の証券決済システムを今後どういうふうに電子化の中で位置づけるかという議論はどの程度考えて、そしてその先導役としてこのコマーシャル・ペーパーのペーパーレス化というもの、新しいコマーシャル・ペーパー、有価証券としての電子登録方式によるコマーシャル・ペーパーの発行ということを考えていくのか。その辺のところをスタンスを非常に大事だと思うんですが、いかがですか。


松川市場課長 今、証券決済システムの改革の議論はかなり、昨年秋以来やってきておりますが、必ずしも方向性がはっきりしてきているわけではありませんが、御指摘のようなペーパーレス化といいますか、権利の発生、移転等自体について券面を必要としない方式についても視野に入れて考えるべきだという意見も出てきておりますので、さらに今回そういう形でコマーシャル・ペーパーについては少なくともそういう形のものを法制度を整備する必要があるという研究会の指摘を受けておりますので、そういうことも含めてあわせていきながら、今後ワーキングで審議が進められていくものと理解をいたしております。


蝋山部会長 今の理解は当然だと思うんですが、ごく常識的だと思うんですが、もう一つ踏み込んで、ユニークな点というふうに岩村さんが強調された証券集中補完機構というものを新たに設けて、もしかしたら振決がそれにかわるのかもしれないし、いろいろな方向が、日本銀行がそれをやるということだって考えられないわけではないし、まあいろいろな具体的なイメージが出てくるわけですが、そういうものまでが、それがアイデアとして出てきたとすると、全体の証券について、こういうことを考えるんだということをインプライすると考えるのがごく素直な読み方だろうと思うんですね。そういう点では、どういうふうにお考えなんでしょうか。
 ペーパーレスというのはもう券面に基づかないで債権、権利の発生云々というのは、これは当たり前の話でしょう。それをどういうふうにうまく法律的に、法律家の点では当たり前じゃないかもしれないけれども、当たり前だと思うんで、それをどういうふうに法律的に技術的に処理していくかと。これは当然いろいろなやり方があると思うんで、それはそれとしていいと思うんです。流れとして考えると、これはもう一歩、それを集中的に電子登録方式でやりますと、こういうふうに一歩進んでいるわけですね。それをほかの証券全体、CP以外の証券とどういうふうに考えているのか。大変重要な問題を僕は意味しているのではないかというふうに思いますので、お考えを。


松川市場課長 今の点は証券決済のワーキングでも今後非常に重要なテーマになってくると思います。まだそこについては詰めた議論までは至っておりませんが、CPのペーパーレスの研究会の段階でも、やはり証券決済全体の改革の動向をにらむべきだという意見もございましたし、あるいは商品の特性に応じて、とりあえずCPだけは早くできるようにしてほしいということも両方ありました。したがって、それらの点について十分な方向性を、CPのペーパーレス化の研究会の方では出ておりません。したがって、その証券決済のワーキングの方で今後蝋山先生のような問題意識も含めて今後検討されることになっております。


蝋山部会長 どうも、座長がいろいろ言い過ぎても……。どうぞ。


岩村委員 証券決済も一緒にやらせていただいております。
 やはり今考えていかなければいけない、恐らく事務局も含めてコンセンサスになりつつあるだろうと思うのは、今までの証券決済とか、あるいは集中補完制度のあり方というのは紙をブックに持っていくという形式にのみ注目して、その限りでの合理性をねらっていたんだと思うんです。ただ、やはりこのCPもその意味では同じ路線の中にいると思いますけれども、やはり技術進歩、非常に早い技術進歩を見て、そういう動きをできるだけ、単なる形式だけではなくて、証券決済制度、あるいは証券決済サービスと言った方がいいかもしれません。それのいわばそこにおける民の役割とか、あるいは競争の役割というものを注目した議論がワーキングの中では随分活発になされていると思いますので、CPの議論もそこは相当の部分インプライされていると理解しております。


蝋山部会長 ぜひそういう方向で。柳川さん、どうぞ。


柳川委員 私はこのCPの方は出ていなくて、証券決済の方に出ているものですからちょっと御議論をお伺いしたいんですけれども、2点短くなんですが、電子債券登録機関は、集中、まあ一機関でなくても本当はいいんだと思うので、その辺の御議論があったのかどうかということと、それから必要なデータを記録するわけですけれども、これは送受信を電子登録機関を通してやるという意味なのか、送受信したデータをそこに転送してそこで記録するということなのか、その辺の御議論をちょっと教えていただきたいと思います。


松川市場課長 前半の部分について言えば、岩村先生からもありましたように、意見としては、その機関というのは複数の可能性はあっていいんじゃないかという意見はございました。ただ、実際上の効率性という観点から見た場合に、そういう複数のものがあった方がいいのかどうか、それはまさに市場関係者のニーズによるのかなという感じの意見もあったかと思いますけれども。
 それから後段のところは、やはり電子的な送られたデータの記録に基づいてやるということでございますので、送る手法そのものは、まさに民間の中で関係者が考える手法ではないかと思っております。


蝋山部会長 英語の報告書だと複数になっているかどうかすぐわかるよね。
 いろいろまだおありになるかと思いますが、この部会としてはCPのペーパーレス化に関する問題というのは、私からも指摘させていただきましたように、証券決済の問題と非常に密接に関係しておりますので、ぜひこの点にもCPのペーパーレス化もお読みいただきまして、御関心を持ち、全体のこれからの日本の市場、証券を中心とした決済制度のあり方というものの方向性をこの部会でいずれは議論していかなければいけないというふうに思っております。どうもありがとうございました。
 残された時間、最後の問題でありますが、やはりエレクトロニックの問題でありまして、「金融サービスの電子取引等と監督行政に関する研究会」が「金融サービスの電子取引の進展と監督行政」についてという報告書を書かれましたので、それにつきまして金融監督庁長官官房企画課の河野課長に来ていただきまして、御説明をお願いしたいというふうに思います。
 どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。


河野金融監督庁長官官房企画課長 河野でございます。いつも大変お世話になっております。着席で失礼いたします。
 お手元に資料の23−7と23−8というものがございますのでごらんいただければと思いますが、まず本日このような機会を与えていただきまして、まことにありがとうございました。これは実は、監督庁の中でいわば非公式の研究会として設けさせていただきました金融サービスの電子取引に関します研究会でございまして、そういう位置づけでございますので、監督行政上の論点についていろいろ委員の皆様に御議論いただいて報告書という格好でまとめさせていただいたものでございますが、23−8の方の2枚目に、表紙の次でございますけれども、委員のメンバーのリストがございまして、本日御出席の岩村委員にも御参加いただきましたけれども、当部会のワーキングの方でおなじみでいらっしゃいます神作先生や山田先生にも御参加いただいております。
 それから注の方にございますように、オブザーバーといたしまして大蔵省、金融再生委員会及び監督庁から実務者が参加をいたしましたが、議論の過程で銀行、証券、生損保、それから経済界、さらには宮部オブザーバーを初めとしまして、消費者団体の皆様からも御意見をちょうだいしております。そのような格好で、昨年の9月以来10回にわたりましていろいろ御議論をいただきましたその内容がこの報告書の中に盛られておるわけでございますけれども、ちょっと時間の関係もございますので、この23−7の要旨の方に沿いまして簡単に御説明申し上げたいと思います。なお、この要旨は、実は事務局の責任におきましてまとめましたものでございますので、いろいろ至らない点がございました場合には、あくまでこれは事務局の方の責任でございます。
 それでは、まず最初に検討の目的というように書いておりますけれども、この目的は申すまでもございませんけれども、近年非常に銀、証、保、あるいはそれ以外のあらゆる金融サービス分野におきまして、電子取引と書いてはおりますけれども、主としてインターネットを想定しておりますが、こういう対顧客取引が電子的に行われるということが広がってまいりましたけれども、これはやはり適正に運営し、またその円滑な発展を図るという観点から、監督当局としてはどういうことを考えなければいけないだろうか、あるいはこれまでの規制のあり方や監督手法を電子取引の特性に対応したものにやはり適応させていく必要があるのではないかということで、いろいろ御議論をいただいたということになります。1の2番目の丸に3点ほど、非常に簡略な形で議論の出発点のようなものが書いてございますけれども、電子金融取引を利用者にとって「安心で便利な」ものとする、監督行政の対応がその発達を阻害したり、その普及を過度に抑制するようなものとなってはいけない、また、常に実情に則した行政となるように不断に見直す柔軟性を持つことが必要であるというようなことを御指摘いただいております。
 三つ目の丸のところで、またこれは一国のみの対応にはおのずから限界がございます。やはり越境取引が非常に容易にできるという特性がございますので、こういうものにも十分配慮して、その国際的な場における監督原則、フレームワークの構築といったことが必要であって、我が国としても積極的に寄与していく必要があるということでございます。
 なお、本文の方に詳しく書いてございますけれども、ここで対象といたしましたのは、銀行、証券、保険などあらゆる金融サービス全体的に念頭に置いたということが一方でございますが、他方で電子取引にはビジネス対ビジネス(B to B)というようなものも今非常に発達をしてきておりますし、またそれに伴う固有の問題もある。あるいは証券取引所の取引の電子化のようなそれぞれのまた組織のあり方にも及ぶような議論もございますし、また電子マネーといったように法制的な整備が必要となってくるような場面もございますけれども、ここで御検討いただいた点は、いわゆる対顧客取引、B to Cという場面において、特に監督行政としてどういう点に留意したらよいかというふうにちょっと問題を絞っていただきました。
 基本的な視点のところでは、非常にこういう問題を監督当局が考えるときに4点ほどやはり、非常に基本的なところで考え方として持つべきであるということだと思いますが、1点目は、先ほどちょっと申しましたけれども、電子取引の発達を阻害せずその長所が生かされるようにすることと、その長所ができるだけ発揮されるようにその規制の点検、見直しを行うべきである。
 2点目としまして、さはさりながら、やはり電子取引の特性というものは、非対面で、利用者にとってはいろいろな手続が電子的にきちんと行われる必要がありますので、そういった点に配慮して、利用者保護をきちん図るといった点が重要であるということで、現行の利用者保護のためのさまざまな規制について、これは業法上の規制という意味ではございますけれども、これを見直して電子取引の実態に則した内容に改めていくべきである。
 3点目としましては、これも先ほどちょっと申しましたが、国際的側面に配慮する必要がございますので、規制の整備と国際的な整合性の確保と、あるいは監督当局間の連携の強化といったことを挙げていただいています。
 最後に、行政全般にまたがる観点とか、あるいは他の行政分野との整合性ということで、これは2ページ目にまいりますけれども、犯罪対策はもとより、個人情報保護とか、あるいは競争政策等との整合性というものが重要であるということを御指摘いただいています。
 以上が基本的な考え方ではございますが、より具体的に今度はどういう点に留意をしながらいろいろな今までペーパーで行われてきたものを電子化していくか、あるいは電子的な取引を主とする業者にどう対応していくかというような点を次の3の検討結果のところで8項目にわたりまして御提言をいただいております。
 この8項目はこれですべて尽きているという趣旨ではございませんで、優先的に対応が必要と考えられる分野ということで挙げていただきました。これは問題の広がりに比べますと、議論の時間が限られておりましたので、かなりのスピードで御議論をいただいたわけでございますけれども、ここにその結果をまとめていただいております。
 まず1点目は顧客への書面交付の電子化ということで、これは現行業法上取引過程で書面が要求されている場面がいろいろございますけれども、それぞれの書面の果たしている機能というものをもう一度よく考えてみて、それに則して電子媒体による代替を検討するということで、そのときにどういう要件が満たされれば、そういう電子的な代替可能性があるか、あるいは問題がないかといった点を本文の方でかなり詳しく整理をしていただいていますけれども、ここでは、1から4にわたりまして、基本的な留意点というものを挙げておりまして、まず第一に顧客の包括的同意を得ているか、あるいは情報保存手段というものが確認できているかということです。これは同意なしに、書面を使わずにいきなり電子メールをよこしてそれで済んだというふうにもいきませんので、基本的にまずこの点が挙がっております。
 2番目には、非電子的手段による連絡手段の明示ということでございますけれども、これもネットワークがダウンをすることもございますし、混雑してなかなかつながらないということもありますので、やはりいざという場合には電話で連絡がとれるとか、非電子的手段による連絡手段の明示とかいうようなこともございます。また3番目に、紙形態での書面交付を求められた場合にはきちんと対応すると。これは特にお年寄りなどで、やはり紙がないと不安だという方はおられると思いますので、そういうときの対応もきちんとできないといけないということがあります。
 最後の点は顧客が情報が受領したことの確認。例えば証券の目論見書などを念頭に置きますと、これはきちんと交付されないといけませんので、電子的に交付をするということにつきましては、今国会にも法律案が出ておりますけれども、その場合にやはりダウンロードを確認しませんと取引ができないという格好にしませんと、なかなかきちんと交付できたと言えないのではないかというような趣旨が書いてございます。
 2番目の点はディスクロージャーでございまして、これは当たり前のことですけれども、紙媒体を、例えば銀行であれば店舗に備え置くことによって開示されているのと同等の内容の情報を同じタイミングでホームページに掲載すべきである、これが基本ではございます一方で電子媒体を使いますと、今まで以上にいろいろな可能性が開けてくるということで、つまり24時間利用ができるとか、あるいはタイムリーな開示が可能となる。ディスクロージャー誌であれば、年1回印刷をするものを、こういう電子的手段を使えばもっと頻繁にいろいろな情報が開示できるではないかというような点も御指摘をいただきました。あとその場合には2番目の丸のところになりますが、レイアウト、操作性等の工夫とか、開示の時期、頻度は今申し上げましたけれども、内容の充実といった点を考慮すべきであるというような御指摘でございます。
 三つ目の丸では、現在ディスクロージャーの電子化に向けまして、業界であるいは業者の皆様の取り組みが見られておりますけれども、今後さらに一層の充実ということも必要でございますし、また法制面の整備といったような点につきましても、これは実は監督庁の権限を若干超えてはおりますけれども、そういうことも考えられるというような御指摘をいただいております。
 3点目は販売・勧誘時の説明・情報提供ということでございますけれども、これもまた当たり前でございますが、電子金融取引であっても、利用者保護の必要性の程度は一般の取引と異なるものではない、その業法上の説明義務は等しく適用されるということでございます。ただその際に、非対面性という特殊性を踏まえまして、電子メール等により顧客が説明を受けたことを確認すること及び顧客に質問する機会を与えることによって、実質的な説明が確保される、このことは、ひいては顧客が安心して電子取引に参加する環境整備に資するものと考えられるということです。念頭にございますのは、顧客が安心して取引ができる環境をつくりませんと、なかなかこういったものは結局は普及していかないのではないかということで、別途お話を伺いました際に、証券業協会の方からもアンケート調査の結果などの御紹介もいただきましたけれども、そのアンケートでやはり、電子取引を利用しようと思っているが利用しないでいるとすると、その理由はやはりまだセキュリティについて安心でないというような回答もあるようでございますので、ともかく安心して利用できるような環境整備というものを重視しております。
 なお、3番目の丸ではマネー・ロンダリングの防止等の観点から行われております顧客の本人確認等につきましては、これは技術的にオンラインだけで本人確認が確実にできるような技術というものも、これから開発され普及していくこととは思いますけれども、現状におきましては、やはりこれは非電子的手段を用いることを含め、その実効性を確保することが必要ではないかということです。この非電子的手段と申します場合には、今現に行われておりますけれども、その顧客が画面上で登録した住所へその申し込み用紙でございますとか、キャッシュカードを送付するとか、あるいはお客様の方から本人確認書の写しを銀行等にお送りをする、そういうような手段を用いることを含めて実効性を確保しなければならないということを申しております。
 4番目はトラブル対応等でございますけれども、ここではやはりシステム障害に基づくトラブルにつきましては、そのような場合の責任分担のあり方や連絡方法等についてあらかじめ利用者にきちんとお知らせをしておく必要がある。それから、幅広い利用者が正しい知識に基づいてこういう取引の利便性を享受できますように、知識の普及を図る必要があるとともに、電子金融取引に伴うリスクやトラブルが生じた場合の連絡先等を利用者に周知することが望ましい。その方法としては、監督当局のホームページを活用することも有用であるということで、実は私どもも今監督庁を今度は7月以降は金融庁でございますけれども、そのホームページをどのように充実できるかといった点について今検討しております。
 5番目の越境取引への対応でございますが、これは外国の業者が国内利用者と電子的に取引ができる、これはもう容易にできるという状況になってまいりますので、やはり適切な情報提供ということが必要であるということで、まず業者におきましては、そのホームページ上に所在地、免許取得国・地域等、等の中にはどういう業務を行う認可を得ているかとか、あるいは連絡先はどこであるか等の利用者のための情報が必要であるということでございます。ただ、これはやはり我が国だけではその実効性はなかなか確保されませんので、国際的な協力といったものが不可欠になってまいります。ちょっとその点は三つ目の丸のところにございますので一つ飛んでしまいましたが、我が国としても国際的なルールづくりに積極的に参加していくことが望ましいということになります。
 2番目の丸のところは、監督当局としましても、先ほどのホームページの充実の延長でございますけれども、情報を提供すべきでございますし、また外国業者に向けまして、どのような行為が我が国の規制に抵触するかといったような点についても示すことを検討すべきであるということと議論いただいております。
 6番目の第三者の関与のところは、これまでもいろいろなアウトソーシングが進んでおりましたんですけれども、インターネット取引等になりますと、ますますインターネット・サービス・プロバイダーのような第三者、あるいはいろいろなシステム関係などのアウトソーシングが一層拡大してまいりますので、そういう中で、やはり業者のサイドでは十分なリスク管理対策を講じていただく。顧客に対してもそのリスクの存在について情報提供をしていただく。あるいは監督当局としてはやはり検査監督においていろいろな対策の実施状況をチェックする必要がある。業者の管理体制などについても把握するようにしなければならないというような点を述べていただいております。
 7番目は、新たな金融情報サービスと金融サービス業ということで、これはいろいろ新聞にも毎日のように出ておりますけれども、ホームページのリンクを使いまして、いろいろな商品のメニューをそろえて提供してくるというような業者が出てまいります。それでリンクを設けるにしましても、そこはやはり利用者による誤認が生じることを防止する手だてが必要ではないかと。あるいはホームページ上の幅広い情報提供等、それ自体は業務を営んでいるとは言えない範囲で行われていれば、業法上の他業禁止規定には当たらないかもしれませんけれども、いずれにしてもやはりそこは誤認のないようにしていかなければならないという点があろうかと思います。
 2番目の丸のところで、インターネット上においてリンクや検索を活用した新たなタイプの金融情報サービス、こういったものにつきまして、実はまだまだこの先、このあたりはどういうものが出てくるかわからない部分もございますので、従来の制度の枠組みは想定していなかったようなものについても視野に入れていくことが不可欠である。このあたりは今後の問題として、いわゆる抽象的ではございますけれども、挙げていただいているということになります。
 最後に、店舗・営業所の役割と電子化ということで、ここには余り詳しく書いてございませんが、本文の方では店舗・営業所の機能というものをもう一度5項目ほどに整理をしまして、その金融商品サービスの販売機能でございますとか、情報提供、ディスクロージャーの機能、あるいは現金の払い出し収受機能、アフターサービス、トラブル対応機能、それからその他の機能ということで、集客機能、あるいは広告宣伝のような機能、そういったものを一応列記をいたしました上で、どういうふうにしていけばこういった機能が電子的なものによって代替されるか、あるいはその代替されるようにするためにはどういうルールが必要かといったようなことに言及していただいていまして、結論的にはその適正なルール及び体制の整備等を行えば他の手段で代替可能であるということです。したがって、営業店舗を有しない業者に免許登録を認めることにつきましては、店舗・営業所の役割という観点からは基本的な問題はなく、その可否はより総合的な判断によるべきである。まあ、総合的の中身はやはり健全かつ効率的な業務の遂行がそういった営業形態できちんとできるかどうかなどの確認を指しておりますけれども、そういったものによるべきだということです。なお、電子取引以外にも、電話等のチャンネルの重要性が増すなど、その銀行等の店舗・営業所の役割をめぐる状況は大変今変化をしておりますので、これに対応して営業所という概念に基本を置いた現状の規制を見直すことが望ましいという形で締めくくっていただいております。
 事務局からは以上でございます。


蝋山部会長 どうもありがとうございました。いろいろ議論をし始めるとこの議題として切りがないとは思いますけれども、ただいま御説明を受けた点につきましてありましらたらどうぞ。吉野さん。


吉野委員 ちょっと教えていただきたいんですけれども、現行のこういうインターネットの取引にどれくらい取引の補足ができているのか。特に国際的なところとの関係をひとつ教えていただきたいことと、それからもしおわかりでしたら、EMUが今度同じカレンシーになるので、こういう電子商取引に対してはOECDなんかはいろいろ勉強されていると聞いたんですけれども、大体同じような方向なんでしょうか。もしおわかりになったら教えていただきたいんですけれども。


蝋山部会長 河野さん、どうぞ。


河野金融監督庁企画課長 補足の点につきましては、ちょっと定量的に申し上げることは難しいかもしれませんけれども、例えば私どもの証券取引等監視委員会でも非常に不正な取引につきましては今心配もしておりますし、それをウォッチするように検索などをやっておるということでございますけれども、次々新しいものがまた外国に本拠を置いてやられたような場合には、その補足は難しいといったようなことは技術的にございます。いずれにしましても当局としては問題があるようなものについては次々と発見する都度対応していかなければならないということかと思います。
 2点目でございますけれども、この研究会におきまして、外国のルール、あるいは国際機関での検討状況なども事務局からも御報告をさせていただきましたし、委員の皆様からも御指摘をいただきまして、いろいろと参考にしております。例えば、この報告書の後ろの方にもSECの解釈通達などもちょっと引用しておりますし、それぞれ本文の中の注でもいろいろな外国のものにつきまして言及をしておりますので、そういう意味では今一通り申し上げましたような対応の方向というものは、これはもし私の認識が間違っておりましたら岩村委員にぜひ訂正していただきたいんですが、現段階でのグローバル・スタンダードには一応のっとっておるというふうに考えております。


蝋山部会長 岩村さん、イエス・オア・ノーで答えるとどっちなんですか。


岩村委員 のっとっていると思います。


蝋山部会長 そうですか。安心しました。ほかにございませんでしょうか。京藤さんどうぞ。


京藤委員 ちょっと1点だけ、マネー・ロンダリング関係のことで少し検討されたかどうかお伺いしたいのですが、ここでは本人確認については新聞なんかでも載っておりまして割と簡単な論点だと思うんですけれども、組織犯罪対策法の中には犯罪収益の蔵匿とか収受、あるいはそれで株券を買ったり債券を買ったりした場合に犯罪になるという規定が盛り込まれて、そうなってくると、これを使ってもある収益というのは、やってもそれを今度そういうことに当てはまるとなると、没収も可能になるんですよね。通常、これまでの犯罪というのは、こういう行為は犯罪でこれは排除できるということだったんですけれども、ある意味で色がついているお金を使った場合に、それを犯罪とするというような制度が、刑罰法規が導入されたので、とてもこういう制度をさらに進めていくときに、特に電子取引なんかの場合には深刻な問題をはらんでいるんじゃないかということで、犯罪対策の問題では、本人確認の部分だけじゃなくて、それ以外の犯罪となって没収という、その対象になるようなあたりについても十分に整合性を検討していただく必要があるんじゃないかなと思います。


蝋山部会長 今の点は、河野さん、イエスですか、ノーですか。検討されたんですかということですね。


河野金融監督庁企画課長 もちろんここで具体的に御検討いただいていますのは、まずもって我が国のいろいろな業法に基づきます監督行政上の対応でございますので、犯罪対策の具体的な中身につきましては、直接御議論いただいたということではございませんけれども、ただ、先ほど申し上げました基本的な視点の中で、そういったものとの整合性にきちんと配慮するようにということをまず御指摘いただいておりますのと、あとやはりまずもって本人確認等につきましても、これは私どもマネー・ロンダリング対策等の担当部局からも意見を聞いた上で、適切な方法でやらなければならない実効性を確保せよというような内容にしていただいておりますので、そのあたりはもちろん、この先またいろいろ考えていかなければならないという点かと思いますけれども、あとこれは余計なことかもしれませんけれども、電子取引になるから大変になる部分というのもあるかもしれませんけれども、その一方で、電子取引でなくても存在する問題も多々ありますし、またその電子取引になると逆に今度は取引の記録が残りやすいという部分もあったりいたしますので、そこはまた電子取引になるから一概に危ないんだということも申せないという部分がございますので、多々そういった要素も考えながら、適切に対応させていただきたいと思っております。


蝋山部会長 ありがとうございました。関さんどうぞ。


関オブザーバー 2点簡単なことだけ教えていただきたいんですが、これの中でこれから検討を続けなきゃならない問題、場合によっては立法もしなきゃならないという項目もあるかもしれませんが、そのあたりの今後のタイミングですね。これはどんなふうにお考えになっているのかということを一つと、それからこの問題は国際的にも非常に関心が持たれているテーマですし、我が国でも行政ベースでこれだけまとめて取り入れたというのは恐らく初めてでしょうから、日本もこういう検討が進んでいるよというのを国際的に発信していく必要があるように思うんですが、この内容について英訳とかそういうことをする御予定があるかどうか、そういったことだけ教えてください。


蝋山部会長 河野さん、よろしくお願いします。


河野金融監督庁企画課長 1点目でございますけれども、まさにこれは、例えば店頭での情報提供のようなものを念頭に置いております銀行法施行規則などの規定がございますので、こういったものはできるだけ早く改正をさせていただく方向で今考えております。できるだけ早くという意味は、今いろいろこれから案文の検討、あるいはパブリック・コメントなどの手続もございますので、そういったものを順次、できるだけ早期に進めたいという部分がこの省令などの手当ての部分でございます。
 それから同時に行政上の手当てといたしまして、先ほど申し上げましたような当局のホームページの改善といったものは、やはりこれは今既に案を検討しております。また、いろいろなホームページ上のディスクロージャーなどの問題につきましても、どういう格好で対応していけるか、今早急に検討しております。そういう意味では、できる部分につきましては、早急にということで考えております。
 一方で、この報告書の中には将来的に法令改正、あるいは法改正のようなものも考えてはどうかといった御指摘の部分がございますけれども、これにつきましては、現段階では金融監督庁としてはそういった法律の企画・立案機能はございませんので、また金融庁になった段階でこういった点も踏まえながら対応していただけるものと考えておりますけれども、いずれにしましてもそういった点は、例えば法律上のディスクロージャーの規定でございますとか、取引報告書類の電子化なども、あるいはそういったものに該当するかもしれません。
 2点目でございますけれども、実はこの報告書自体はかなり国内法令に基づいた議論が含まれておりまして、そこはそこで国内的には非常に私ども参考にさせていただく上では重要なんでございますけれども、そのまま英語にいたしますと、ちょっとなかなか外国人にかえって理解していただけないんじゃないかという部分がございますので、むしろこれをやや縮めましたものの英文を現在用意しておりまして、それはいろいろこれから国際会議などの場でも御紹介をしていきたいと考えております。
 以上でございます。


蝋山部会長 ありがとうございました。最後にそれでは岩村さん。


岩村委員 河野さんのおっしゃったことで、一緒に議論をさせていただきましたので、例えば今の京藤先生の御指摘の話もそうですけれども、犯罪に関連した金融であるかどうかで没収になるかというと没収になるんだという前提でこの研究会は議論を進めたわけだろうと思います。というのは、やっぱりここで最初の問題意識として共有しましょうと言ったのは、結局今の監督体制というものを電子的な金融にアプライしたときに、さしあたっていびつになってしまうものがあるかないか。あるいは紙の体制と著しく不均衡なってしまうものがあるかないかという観点から議論をしていたと思います。もちろん電子的な取引であるがゆえに、新しい利害対立を生んだり、全く新しい問題を発生させてしまうということはたくさんあるんだろうと思いますが、それを何もかも一緒に議論することはできないだろうというふうに考えて、研究会に出席している者も、それから私の伺っているところでは監督庁の皆さんの方も問題は認識しておられながら、さしあたりはこの範囲で議論をまとめたということであろうかと思うので、先々の問題はたくさん残っていると。またそれを議論する必要はあろうかと思っております。


蝋山部会長 岩村さんのを受ければ、今の監督行政はどういうふうに影響を受けるかと、どう対応したらいいかということで、これからの監督行政はどういう枠組みの中でどういうルールでどういうということは考えていないということですね。余り考えていないということですね。


岩村委員 そうですね。これからの金融法制についても、考える場としては、問題意識は持っているけれども、この報告書としてまとめるときにはアプライの問題であると。あるいはエンフォースの問題であるということに集中した、あるいは集中せざるを得なかっただろうと思っております。


蝋山部会長 どうもありがとうございました。河野さんわざわざおいでいただきまして、いつもお世話になっております。ありがとうございます。
 今日は時間を7分近く延長することになってしまいまして、進行の不手際をおわびしたいというふうに思います。
 以上で本日用意しておりました議事は終了いたしました。最後に次回の日程について岡田さんの方から御紹介いただきたく思います。


岡田企画課法規担当企画官 次回は5月19日(金曜日)の午後4時からの開催を予定しております。場所は第四特別会議室となっております。
 テーマといたしましては、高橋委員及び貯蓄広報中央委員会事務局より、消費者教育に関するプレゼンテーションを行っていただくことを予定しております。
 以上でございます。


蝋山部会長 よろしく御参集ください。それでは散会いたします。ありがとうございました。

(以 上)