金融審議会「第一部会」第25回会合議事録



日時:


平成12年6月9日(金)10時02分〜12時04分
場所: 大蔵省本庁舎(4階)第三特別会議室




蝋山部会長 10時を若干過ぎておりますけれども、ただいまから25回金融審議会「第一部会」を開催いたします。
 大変御多用のところ、また足元の悪い中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 議事に先立ちまして、オブザーバーの交代がありましたので、皆様に御紹介申し上げますが、岡田さんから紹介していただきますが、御本人がどっかへ消えちゃっております。岡田さん、お願いします。


岡田企画官
 それでは御紹介申し上げます。
 日本銀行から今回よりオブザーバーとして参加していただきますのは、鮫島正大企画室参事役でございます。ただいまちょっと席をはずしておられますけれども、よろしくお願いいたします。


蝋山部会長 見えましたら、御挨拶していただきます。本日の議事ですけれども、二つあります。初めに、ホールセール・リーテイルに関するワーキンググループにおいて、4月から大変精力的に御検討をいただきました金融関連の裁判外紛争処理制度のあり方について、ワーキンググループから報告をしていただきます。
 もう一つのテーマは、7月に金融庁へ移行するということが目前に控えるというようになりました。この大蔵省金融企画局が所管の金融審議会「第一部会」として、その最後の報告をどういう形で取りまとめるかということについても、御議論をいただきたく思います。この二つの点をきょうの議事とさせていただきます。
 それでは早速、このホールセール・リーテイルに関するワーキンググループから、金融関連の裁判外紛争処理制度のあり方に関する検討についての報告書が提出されましたので、この報告書について事務局から説明をするということにさせていただきます。そして、その後、岩原委員にはこのワーキンググループの進行役をお願いして大変御迷惑をかけましたけれども、その岩原委員から補足的な説明を頂戴するということで、第一の議題を議論させていただきたく思います。
 では、岡田さんよろしくお願いします。


岡田企画官 企画課で法規担当の企画官をしております岡田でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは皆様のお手元に、右肩に「第一部会25−1」と振っております資料、「金融分野における裁判外紛争処理制度の整備について」というのがございますので、これに沿って要点を御説明するという形にさせていただきたいと思います。
 1枚めくっていただいて、ワーキンググループ委員名簿がございます。さらに1枚めくっていただきますと、ワーキンググループの審議経過というのがございまして、御覧いただきますように、4月14日から計7回にわたって精力的な議論を行って、この報告書が取りまとめられたということでございます。
 その次、1枚めくっていただきますと、報告書の本文に入ってまいります。
 最初に、「はじめに」と書いてあるところがございますけれども、ここでは第2段落目に書いてありますように、このワーキンググループでさまざまな論点について議論を行いましたけれども、第2段落目にありますように、その結果、幾つかの論点については、当面の施策について意見の一致を見たが、さまざまな意見が出て、一つの意見に収束できなかった論点もあるというのが偽らざるところでございます。
 2の裁判外紛争処理制度の機能と期待される役割というところで、ここで民事訴訟制度と裁判外紛争処理制度を比べて、いわば金融分野にどういうふうに裁判外紛争処理制度というのは適しているのかというのを総論的に検討した部分が、この2のところでございます。
 最初、(1)で一般論としての民事訴訟制度と裁判外紛争処理制度について論じております。めくっていただきまして、最初に、民事訴訟制度というのは、そこのイにございますように、いわば厳正中立な手続に基づいた紛争処理を行うということを重視した手続だと、さまざまな意義があるということをまず述べております。
 ロのところで、しかし他方で、こういった民事訴訟手続を金融トラブルに適用する際には幾つか限界が指摘されているということで、最初の段落にマル1からマル6までそれぞれの論点が書いてあります。
 マル1として、費用負担がまず重い。マル2は審理期間が長い。それから3番目に、裁判所ということもあり、敷居の高さがあって心理的な抵抗感がある。マル4として、裁判官が判断される話なので、かなり専門的な話になると、専門性に問題があるかもしれない。それから5番目に、訴訟手続自体が厳格性、中立性を重んじているがゆえに複雑である。これに起因した裁判のわかりづらさというのがあるんじゃないか。マル6というのは、厳正中立な手続の中でやられるが故のことなんですけれども、ともすれば当事者の間での感情的な対立を解消するのがなかなか難しいと、こういうような限界が指摘されております。
 その次にありますように、ただこういった問題点は、慎重性、中立性、強制性といった民事訴訟制度の長所と裏腹に生じている問題であって、金融の領域には限定をされないんだろうと。したがって、それをどういうふうに補完していくのかというのが裁判外紛争処理のあり方なのではないかということで、以下これを整理していくという考え方になっております。
 ハとして、一般論としての裁判外紛争処理制度の特徴とメリットが挙げてございます。一般的に裁判外紛争処理制度を見たときの特徴が、マル1からマル5までまとめてございます。
 マル1として、裁判外紛争処理制度というのは、まず簡易、迅速かつ廉価な処理ができると。これは裁判と違うところである。
 それからマル2として、複雑な手続を要せずにインフォーマルかつ任意の制度というふうになっていることで、一般の人に利用しやすいというメリットがある。
 3番目に、専門家が入っていけるので、そうした専門家のノウハウの活用が可能であるという点。
 それから4番目に、実際の解決案が作成されていく過程において当事者が直接参加できる。要するに、裁判所で裁判官が自分で一人で判決を書くのとは違って、当事者が参加しながら解決案をつくっていけると。また、あっせん人が積極的に当事者の中に入っていって働きかけを行うことによって、必ずしも法に縛られない柔軟な解決を図ることができるだろう。
 5番目として、法的な権利性の有無を厳格に判定することなく紛争の処理を図ることができるということで、いわば感情的な対立があるような場合、そういうものを解きほぐしながら話を進めていって合意形成につなげることができるというようなことで、先ほど申し上げたような、裁判でともすれば限界と言われているようなものを克服できるメリットが裁判外紛争処理にはあるということがまず書かれております。
 その後の段落で、そうは言いながら、しかし限界もあるということで、ここで任意性ゆえの限界というのを挙げております。すなわち、ここに書いてありますように、裁判を受ける権利が憲法で保障されている以上は、制度をどういうふうに強力に組み立てても、憲法の要請である以上は、両当事者が紛争の最終解決を裁判手続に委ねることを法律で禁止することまではできません。したがって、その当事者双方が裁判外紛争処理制度への付託に同意しない場合には、裁判外紛争処理制度ではその案件を扱えなくなってしまうという限界が一つある。ここがイギリスの場合とちょっと違うところなのかなというような議論もございました。
 (2)として、それでは、今のような一般論を金融トラブルに当てはめてみた場合どうなるのかを検討した部分でございます。最初に、金融トラブルというものの特徴をイで挙げております。裁判外紛争処理制度との適合性を軸に考えると、四つの点が指摘できるんじゃないかと。
 まず金額面ですけれども、一般に裁判外紛争処理制度に係るような消費者紛争というのは少額案件が多い。それで処理が容易だということはありますが、金融トラブルの場合、実は高額紛争というのも少なくないだろうというのが指摘されております。
 2番目に事実認定の問題として、金融トラブルには説明に関するトラブルが多くて、いわゆる「言った言わない」、例えば、必ずもうかると言ったとか、損は絶対させないと言ったとか、「言った言わない」が焦点になりやすい。これは契約対象自体が金融ということで目に見えないものであるということとあわせて、事実認定の困難性があるのではないかという指摘がございました。裁判においては、裁判官が自由心証主義のもとで、出てきた材料をもとに判断をしてしまいますので良いのですが、裁判外紛争処理制度の場合には、そこは任意の合意から成り立つ制度なので、そういう点どういうふうに克服していくのかという問題でございます。
 マル3の専門性ですけれども、複雑・多様な金融商品があるということで、解決に当たっては高度な専門性が必要になるだろうと。
 マル4の納得性という点では、誤解や双方の感情的対立によってこじれている事案が多くて、当事者双方が納得した解決というのがかなり重視されるんじゃないだろうかということが挙げられました。
 こうした四つの特徴を裁判外紛争処理制度との関係で整理したものがロのところにございまして、最初の段落で述べているように、一般的に金融分野での消費者トラブルは解決の迅速性や簡易性が求められているものが多く、その点で、裁判ではなくて裁判外紛争処理制度への期待は大きいだろうと。また、その専門性や、あるいは納得性が重要だという点でも、これは裁判外紛争処理制度になじむのではないか。
 しかしながらという次の段落で、しかしながら、逆に問題もあって、一つは金融トラブルには高額紛争が多いという点、これをどう克服していくのか、あるいはそれは事実認定も容易ではないというような問題もある。こういった高額紛争が多く、事実認定もなかなか問題になっているような案件で、それを裁判外紛争処理制度で解決していくためには、やはりそこで解決しようという当事者双方の合意が整う必要があるのではないか。この点が整ってないことが多いのを一体どういうふうにするのかというのが問題であると。したがって、具体的に当事者の合意を可能な限り広く取りつけていくということを重点において裁判外紛争処理制度というものを考えていく必要があるんじゃないかということになっております。
 具体的なプロセスとしては、その下に書いておりますように、「2.(2)のイ.マル4で挙げたとおり」というところですけれども、まず窓口においては苦情処理担当者が中立的な立場で申立者の主張を聞いて、申立者の納得が伴うような形で案件のスクリーニングをまず行う。これによって、誤解や感情対立といった要素が薄らいで、窓口段階で解決されるような案件もふえるんじゃないかと。
 次に、実際にそこから残っていった紛争処理段階に進んだ場合の話でございますけれども、ここでも当事者が自己の権利のみならず、自己の主張の難点であるとか、あるいは落度について、冷静に考える機会をこの場でつくる。そうすることによって初めて対立が和らいでいって、合意を求める意思が醸成できるんじゃないか。そうなったときに初めて、裁判外紛争処理制度のプロセスに乗っかっていくと、こういった合意形成のつくり方をしていったらどうか。
 最後に、こうした段階を踏んでもなお合意形成ができないような場合、これは一定の強制的な裁断権をつけた裁判外の機関で決着が必要なんじゃないかという意見もありました。ただ、それは一種の「第二裁判所」論であるという話もございまして、結局、金融分野にそうしたような準司法機関が必要か否か、必要とすればいかなるものであるべきかというのは、結局今後の検討課題ということになっております。
 次の3のところですけれども、ここの金融分野における裁判外紛争処理制度の整備の方向性(各論)というところで、それぞれ、では具体的にどうしていくべきなのかが議論されております。これはワーキンググループで最初にヒアリングをした際にさまざまな方から出された意見、あるいは委員の皆様方、オブザーバーの皆様方から出されたアイデアを整理をして、それぞれのアイデアについてどうだろうかということを検討した項目でございまして、(1)から(7)まで七つのテーマに分けた形で内容を検討しております。
 最初の(1)が、裁判外紛争処理機関の中立性・公正性の確保というテーマでございます。これについては、一番最初に、中立性・公正性を確保するため最も直接的な方法として、イのところにございますように、業界から切り離したような形で、第三者が運営するような紛争処理機関を創設してはどうかという意見がございました。しかし、逆に、そうした形態をつくらないと、本当に紛争処理機関の中立性・公正性が保てないかという点については、必ずしも意見の一致は見られなかった。それから、具体的に第三者機関の新設を考えた場合に、そういう設立、あるいは運営に伴う費用をだれがどれだけ負担するのか、あるいは具体的な運営方法をどうするのか、あるいは業界から切り離された紛争処理機関で専門性をどうやって維持していくのかといったような個別の論点が幾つか意見として、あるいは指摘として出されましたけれども、具体的に、こうすべきだという具体的な詰めのところまでは残念ながらいかなかったということでございます。
 先ほど申し上げた、では第三者機関をつくる形でなければ紛争処理機関の中立性・公正性が本当に保てないのかということに関して、具体的に、例えば以下のような案はどうだろうかというので出されたものを整理したのがロ以下でございます。
 一つは、独立の委員会による運営状況のチェックということでございまして、これは今ある裁判外紛争処理機関の中に中立・公正な外部者、例えば法曹関係者であるとか、あるいは学識経験者、あるいは消費者代表であるとか、業界の代表の方々等を加えた独立の委員会を設けて、そうした委員会に実際の運営を継続的に監視させる。それで、必要に応じて勧告、あるいは提言を行うというようなアイデアが出ました。
 それからハとして、紛争処理担当者への中立的人材の選任。これは実際に紛争処理を行う、その間に入って紛争処理を行う人に、紛争当事者双方、つまり顧客、業者双方から信認を得やすく、かつ中立性の高い者を選任したらどうか。具体的には、例えばそういった適性を備えたような弁護士の方、あるいは消費者代表の方なんかに入ってきていただいて、そういう方が紛争処理担当者になったらどうか。こうした試みは一部の業界でももう既に進んでいるということで、今後の進展に期待したいという話でございました。
 それから、次のニの窓口への中立的人材の配置ですけれども、先ほどの、実際の紛争処理を担当する人間だけではなくて、最初にその受付を行う役目を担っている人、そういう窓口の担当者についても、消費者問題に通じて顧客の立場を理解できるような人を充てたらどうかという意見がございました。この背景としては、今の窓口のあり方として、ともすれば申立人が本当に金融の素人であるというようなことが余り配慮されてないんじゃないか。「まあ、そういうことは普通の人はみんな御存じですよ。」みたいな形で言われて、配慮されてないんじゃないかという意見がございました。
 それから、ホが苦情・紛争申立人サポート体制の整備でございますけれども、その第1行目に書いてありますように、もともと金融取引というのは専門性の高い分野であって、業者と顧客との間で情報力格差はもともと大きいんだと。したがって、業者と顧客の間に中立的な人間が入る以上に、もっと顧客をサポートしていいんじゃないかと。顧客と意識を共有するような問題探求型の取り組みを行って、それがひいては利用者の納得感、あるいはそうした紛争処理機関への信頼感につながっていくのじゃないかという意見がございました。
 一番最後の、「更に」というところでございますけれども、ここでは、仮に紛争処理が不調に終わった場合のアフターケアとして、一般消費者が次に裁判に行くときに、裁判について、例えば基礎知識を教示する、あるいは手続的にはこうだということで何らかの支援を行うというようなことも、あるいは考えてもいいんではないかという意見もございました。
 それから、第二のテーマが(2)で、紛争処理機能の向上でございます。これは担当者の問題でございますけれども、イとロと二つございます。
 イの方は、能力向上策ということで、金融分野についてはかなり専門性が高いので、今既にさまざまな消費生活相談員の資格等ございますけれども、そういう特殊性にかんがみて独自の検定制度・資格認定制度をつくったらどうだろうか。あるいは、現在いらっしゃる相談員の方々に対して、日々動いていく金融の世界について講習制度みたいなものを設けたらどうかというような提案がございました。ただ、具体的に、それにかかるコストをどうするのかとか、今ある資格認定制度との調整をどうするのかというところはまだ問題として残された形でございます。
 ロの方は、担当者の報酬の適正化という問題でございます。これは現在こういった法律問題を個別に処理するというのは、弁護士法上は弁護士の仕事ということになっておりまして、個別事案の処理に関して報酬を受け取ることは弁護士でなければできないという形になっております。ですから、ともすれば担当者の方は固定給をもらってやっているという形で、苦労した分がなかなか報われていないんじゃないか。だから、能力をつけて努力していって、うまく解決に導くようなことができるのであれば、それなりに報酬が保障されるようなそういう形にしたらどうかという意見もございました。ただ、これについてはまさに弁護士法との関係もございますので、そこのところの関係整理は必要であるということで、その問題は残されたままでございます。
 3番目のテーマは実効性確保。これは一言で申し上げますと、どういうふうにして裁判外紛争処理制度を使ってもらうのか、実際に機能させるのかというのがテーマでございます。
 まず第一にイとして、裁判外紛争処理機関にたくさんの業者に加入してもらいたいが、それをどのように確保するのかという議論でございます。最初に出た話としては、第2段落目にありますように、業者に特定機関への参加を法令で強制してはどうかという意見がございました。ただ、そういうことをやることは、もともと任意、インフォーマルな制度である裁判外紛争処理機関というもの、あるいは処理制度というものに本当になじむのかどうなのか。それから2番目に、そういった法律の強制力を持ったような機関ができることによって、それ以外で任意で、例えば消費者団体等がやっておられるような任意の裁判外紛争処理機関の処理というものが結果的に排除されてしまうようなことはないだろうかというような意見もありました。
 それから、法令で強制するのはいかがかということであれば、インセンティブ、要するに、業者はむしろ自然にそういう制度に入った方がいいと思わせるようなインセンティブを伴った仕組みを工夫した方がいいんじゃないかという意見も代替案としてございました。ここで、「例えば」ということで書いておりますのは、そうした一定の裁判外紛争処理制度、あるいは処理機関に参加している業者については表示を行うと。表示がない業者というのは、要するにマーケットメカニズムの中ではじき出されていくという、そういうものを考えたらどうかという意見がございました。
 それからロですけれども、今度は処理手続への業者の参加義務、つまりテーブルにどうやって着いてもらうのかという話でございます。
 これも、やはり法令による義務付けというのをしてはどうかという意見がございました。しかし紛争当事者の一方が、例えば業者の方が必ず裁判で争いたいと言ってるときに、とにかくテーブルに無理やり着いてもらうというだけで、有効な解決策になるのかという疑問が出されました。そうであれば、むしろ自主規制機関や業界団体の内部ルールの中で業者が手続に参加しなければならない旨を自主的に契約で定めるということをすれば、業者として、契約としてのオブリゲーションを負うはずで、みずからの自発性に基づいてそういうことをやっているんだから、そういうような形は考えられないのかという意見がございましたが、これについても、単に参加を確保すればそれでこの問題は解決するのかというような疑問もございました。
 それから、ハのところですけれども、今度は業者の受諾義務の話でございまして、これは紛争処理機関の中であっせん人からあっせん案が出たときに、それを業者がどうやって受諾するのかどうなのかと、させるのかさせないのかというところでございます。ここで具体的に出されたのは、括弧に書いておりますように、片面的仲裁制度というものでございまして、これは第2段落目にありますように、あっせん案等が出たときに、申立人たる顧客は決定の諾否の判断権を留保する。つまり、出てきたあっせん案を拒否することもできるし、受諾することもできる。しかし業者の側は、出てきたあっせん案については受諾しなければいけないという義務を課す。そういう片面的仲裁制度を導入してはどうかという議論がございました。
 デメリットとして挙げられたのは、この片面的仲裁制度について、これを法律で義務付けるということになると、裁判を受ける権利との調整をする必要があるだろう。特に加入を法的に強制させた上で片面的仲裁制度をまた法律で義務付けると、事実上裁判に行けなくなってしまうので、これは憲法との関係で法制上は難しいんだろうと、こういう意見がございました。
 そうすると、法律による強制ではなくて、これもまた自主ルールに基礎を置くような、つまり契約で結ぶような片面的仲裁制度ということであれば、そうした問題はみずから裁判を受ける権利を放棄するわけですから、そういうことをしてはどうかと。これは評価できる取り組み方なんじゃないかということでございました。
 今申し上げたような片面的仲裁の義務付け以外に受諾義務を間接的にサポートする方法として出されたのが、「ところで」というところから始まっております段落にございますが、例えば、決定をもう受けないというふうに業者が言ったときには、きちんとその理由を相手方に示してもらうと、示す義務を課したらどうかという話、あるいは決定を受諾しないのであれば、ただ単に受諾しないだけではなくて、業者の側から債務不存在確認訴訟を提起してもらうというような形で、間接的にサポートする考え方もあるのではないかという意見が出されました。
 それから、次にニのところですけれども、これはちょっと今の話とはまた違って、裁判外紛争処理機関について事実認定機能を強化すべきではないかという議論がございました。もともと裁判外紛争処理手続は、最初の段落にありますように、両当事者が事実認定それ自体をめぐって真っ向から対立しているような事案処理には性格的にはちょっと向かないところがあって、おのずと限界がある。その限界をうまく克服する手はないのだろうかというのがここの議論のテーマでございます。
 第2段落目にありますように、一つは、情報・証拠徴求権限というものを裁判外紛争処理機関に与えてはどうかという意見、それからまた業者に金融取引をめぐる事実認定に有益な情報となるような証拠書類の保管を義務付けたらどうか、あるいは裁判所に証拠調べの協力を仰ぐというような制度をつくったらどうかというような意見がございました。
 ただ、留意点として挙げられたのは、結局その裁判外紛争処理制度というのは、事実認定について白黒はっきりさせることには向かない制度なので、本来そうした問題をうまく回避しながら解決に導くべきなのではないかという意見、あるいは、そういうことをいろいろ手続的に盛り込んでいくことによって、裁判外紛争処理制度が持っている簡易性とか迅速性というメリットが失われるおそれもあるので、そこはそうしたメリットを減殺しないような形にすべきなんじゃないかという意見がございました。
 (4)、第四のテーマは透明性の確保ということでございます。これは現在ある紛争処理機関が多種多様である上、その仕組みや運営状況が必ずしも十分に周知・公表されていないために、顧客の側から見ると、裁判外紛争処理機関というのに信頼を寄せることができないんじゃないかという問題意識でございます。
 幾つかの案が出されました。まずイのところですけれども、紛争処理手続に関する規則を各裁判外紛争処理機関の方で策定して、かつ公表させるべきなんじゃないか。またさらに、単に公開するだけじゃなくて、できる限り広く一般の人に認識されるように、何らか周知を工夫する必要があるのではないかという意見がございました。
 それから2番目に、紛争処理を行う担当者名簿を公表してはどうかという話でございます。これは利用者の側は自分自身が紛争処理をゆだねるに当たって、どういった属性の人がこれを担当してくれるのかがよくわからないというところがございまして、あらかじめ紛争処理担当者の指名要件であるとか、具体的な人選等を公開して、そういった機関のいわば品格のようなものを顧客に知らしめておくということが必要なのではないかという意見がございました。
 それから、ハは紛争処理結果をデータベース化して公表したらどうかということでございます。これについて幾つかメリットが挙げられておりまして、第2段落にありますように、そうした紛争処理結果をデータベース化して公表することによって、裁判外紛争処理機関の業務運営が外部にさらされる。それによって機関の運営が適正化されていく。それに加えて取り組み姿勢にも前向きな影響が出る。2番目のメリットとして、そうしたデータベースが公表されることによって、言ってみれば事案が蓄積されていって、ルールメイクみたいなものができるのではないか。そうすれば、ある程度紛争をゆだねたときの解決もわかってくるし、あるいは、どういう場合にはある程度面倒を見てもらえるのかとわかってくるので、類似した苦情・紛争事案を抱えた当事者が申し立てしやすくなるんじゃないかというような話がございました。
 ただ他方で、「但し」のところにありますように、関係者のプライバシーには十分に配慮した方がよいという意見がございました。
 (5)といたしまして、裁判外紛争処理機関の統一化・包括化の話でございます。
 これは中立性・公正性のところでも第三者機関という話が出ましたが、ここで話されたテーマとしては、中立性・公正性以外でもやっぱりそういうものは必要なんじゃないかということで、マル1からマル3まで挙げられております。
 一つは、現在多数の機関が併存している状況で、一般利用者には一体どこに申し出ていいのかもよくわからないということで、利便性を欠くのではないか。
 2番目に、類似の商品が出た場合に、扱う業態が異なるということで、違う紛争処理機関にいってしまうようなこともあって、バランスを欠くのではないか。
 3番目に、それぞれ業態ごとにできていると、言ってみれば「業の谷間」のようなものができてしまうんじゃないか。そういった点からやっぱり統一化・包括化を図るべきではないかという意見がございました。
 それを最も直接に解決する方法として出されたのが、イにありますような業態横断的・包括的な裁判外紛争処理機関を設立してはどうかという意見でございます。これをやることによって、上に掲げたような問題が一挙に解決されるし、また中立性・公正性の確保も容易になる。ただ、次のような問題が指摘されたということで、「第一に」というところから書いてございますけれども、一つは既存、今存在している裁判外紛争処理機関との関係をどうやって整理していくのか。これは統合するという前提で考えると、今ある機関というのは法的根拠があるなし、あるいは制度内容と多様でございまして、こういった多様な民間組織をどういう形で一つの新組織に統合していくのかというかなり難しい問題があります。もう一方で、今の制度は残しながら、別途統一機関を設立するという2階建てのような形になると、結局、新たにできる機関の規模だとか機能は限定されざるを得なくて、メインの部分は従来どおり既存の機関が負うことになってしまうのではないか。
 それから第二の問題点として、設立、あるいは運営の費用をどうするのかという問題が指摘されました。これは現実的な資金拠出者として、例えば業界、あるいは国や地方公共団体というのが挙げられたわけですけれども、業界が出すことについては、今既に存在している機関があるにもかかわらず、また制度新設の費用負担を求められる合理性は一体何なのか、あるいはさまざまな金融商品が入ってまいりますので、各業態ごとの費用分担を一体どうしていくのか。極端な話をすれば、「業の谷間」のように、今どこも何もやってないようなところの分まで全然違う業態がその紛争処理費用を負うことは一体どうなのかという意見もございました。
 それから、国や地方公共団体が資金を拠出するという点については、金融分野についてのみこういう形で公的資金を使って新機関を設立するということの正当性、あるいは国が裁判以外の紛争処理として民事調停というものを用意しているにもかかわらず、それとどうやって棲み分けていくのか。さらには、もう既に存在している国民生活センターのような行政型の裁判外紛争処理機関との関係をどうやって整理していくのかというような点が、まだ問題として残っているのではないか。
 それから、あとは幾つかございますけれども、例えば業者の強制参加をどう考えるのか、あるいは専門性をいかに確保していくのかといったような点でも指摘がございました。
 ただ、以上のような指摘はございましたが、最後の段落にあるように、ワーキンググループの議論では、そういった問題を踏まえても、やはり金融分野に統一的・包括的裁判外紛争処理制度を設立するメリットは少なくないということで、中長期的には一つの理想形として評価すべきなんではないかということでございました。
 それからロとして、そこに至るまでに統一化・包括化に向けた取り組みというのは考えられるのではないかということで、幾つか挙がっております。
 一つは、裁判外紛争処理機関同士の連携、あるいは調整機能を強化していくべきではないか。これは今あるような業態別の枠を超えて、各機関、あるいは消費者団体、弁護士会、それから関係行政機関の参加も得て、紛争処理制度に関する問題把握であるとか、情報・意見交換、またさらには各紛争処理機関の活動状況についての評価を行うような場を設けたらいいのではないかということで、ここの部分については意見の一致を見たということでございます。
 それから、2番目として出されたのが、個別紛争の際における機関連携の強化ということでございます。今申し上げたのは、どちらかというと全体のあり方を考えようということでございますけれども、ここのマル2で言っているのは、個別紛争事案を処理するレベルにおいても、やはりお互い協力していくべきだと。で、自分のところに寄せられた案件がなじまない場合には、適切な機関を紹介するとか、あるいは事実関係の調査につき複数の機関が協力できるような、そういう体制整備というのが求められるのではないか。こうすることによって、各紛争処理機関相互のチェック機能も働くのではないかという意見がございました。
 6番目のテーマとして、コスト負担の問題でございます。
 イとして、個別事案にかかるコストをどうするのかでございますけれども、顧客の負担をどう考えるのかという問題でございまして、一律無料化、お客様の方はお金を払わない無料化が望ましいという意見もございましたけれども、他方で、民事訴訟においても原告側である顧客はお金を払って裁判を受けている、あるいは受益者負担もあるのではないかということで、一律無料化は適切ではないんじゃないかという意見もございました。
 それからロとして、紛争処理機関自体の設立・運営コストをどうするのかということで、一つは業者が当然出すべきだという意見、もう一つは、国や地方公共団体も資金拠出すべきだという意見がございました。
 業者が出すべきではないかという意見については、「但し」のところにございますが、業者への資金面の依存によって、中立性・公正性に影響が出ないのかという心配であるとか、あるいは、結局そういった業者に負担させても、手数料等にはね返って一般顧客に転嫁されてしまうので、本当に得なんでしょうかという意見も出ました。国、地方公共団体の負担については、前と同じですが、公的資金をこういった分野に限って拠出することの適当性、あるいは行政改革の流れの中でどうやってそれを実現していくのかという議論がございました。
 (7)として、その他の論点ということで、二つ掲げてございます。
 一つは、活用促進のためにもっとPR活動を行うべきではないか、あるいは金融商品を販売する際に、業者自身が紛争処理制度についてお客さんの方に周知をさせるという、そういう努力も有効なんじゃないかというような議論、あるいは電子メールによる苦情・紛争申し立ての受付をしたりとか、無料電話回線を設置するといったこともやったらいいのではないかという話でございます。
 ロの、関連するルールの整備の話でございますが、これは先ほどもちょっと触れましたが、業者に一定の証拠の保管、提出義務を義務付けるといったような周辺ルールの整備も重要だと、こういう意見でございます。
 4で、最後のまとめのところでございますけれども、この最初の段落に書いてありますように、統一的・包括的な第三者機関というものをどう考えるのかというのがもともとの問題意識としてあったわけですけれども、これについては、確かにいろいろ諸課題がある。あるいは、ほかの分野で裁判外紛争処理制度についての検討等も進められているし、司法制度改革審議会の中でもいろいろ議論も進んでいる。こういうものを見ながら今後考えていくのであろう。しかし、そうしたものを視野に入れながらも、現時点で取り得る効果的な方法は直ちに実施すべきではないかということが、まとめとして出ました。
 それで、もちろんこれは各機関ごとの、今ある機関ごとのイニシアチブで自主的に改善を図られるもの、例えば中立・公正な人材をどんどん取り入れていくという意味で、例えば弁護士会をもっと活用していくとか、そういうのはあるだろうけれども、少なくとも、以下に掲げたような諸方策については早期に実現するということにしたらどうかということで、意見の一致が見られました。
 細かいことは先ほどから申し上げたので申し上げませんけど、マル1として、個別紛争処理における機関間連携の強化をすべきだと、それからマル2として、苦情・紛争処理手続の透明化を図るべきだ、ルールの作成・公表、あるいは配布・説明等をやるべきだ、それから、紛争処理事案のフォローアップをしていくべきだ、それからマル4として、処理結果の実績に関する積極的な公表。これは詳細な統計であるとか、概要等を定期的に公表すべきだと、マル5として、消費者アクセスの改善ということで、PR活動、あるいは受付窓口の明確化・電子メールの活用等を使って、そういうことをやることによってアクセス改善を実施していくべきだ、それからマル6として、「金融トラブル連絡調整協議会」の設置、これは仮称でございますけれども、先ほど申し上げたような横断的な業態、あるいは業態別機関、あるいは金融当局、消費者行政機関、消費者団体、各種自主規制機関等が入ったような形でこういった調整協議会をつくって、上記のマル1からマル5のような施策が着実に実施されていくということを監視、あるいは担保していくと同時に、業態の枠を超えて実際の苦情・紛争処理のあり方、あるいは実際の処理の仕方、あるいは連携強化のために情報・意見交換をしていくべきだということでございます。
 最後のところで、なお書きとして、こういった施策の実現に当たっては、行政の積極的なリーダーシップを期待したいという意見、それから、当ワーキンググループとして、今申し上げたのは実施状況であるとか、あるいは具体的効果の検証も踏まえ、あるいは司法制度改革等の場における紛争処理制度全般に関する幅広い議論も踏まえたような形で、さらなる検討を望むということで報告を締めくくっております。
 長くなりましたけれども、以上でございます。


蝋山部会長 大変ありがとうございました。
 それでは、ただいまの岡田企画官の説明を補足する形で岩原さんからございませんか。


岩原委員 ホールセール・リーテイルのワーキンググループにおきましては、先ほど岡田さんからお話のございましたように、4月半ばからわずか1カ月半ばかりの間に7回という大変例を見ないスケジュールで御審議をいただきまして、大変熱心に御討議くださいましたわけであります。ワーキンググループの委員、オブザーバーの皆様にまず厚く御礼を申し上げたいというふうに思います。
 ホールセール・リーテイルワーキンググループにおきましては、委員、オブザーバーの間に大きい見解の違いも見られまして、相当白熱した議論が展開されたわけであります。その結果、意見の一致が見られない点もあったわけでございまして、限られた時間の審議の中では結局、問題点を分析し、とりあえず可能な措置を提言するという、いわば中間報告的なものにこれはとどまっておりますので、その点をまずおわび申し上げたいというふうに思います。
 しかし、それにもかかわらず、大筋の方向観については、それぞれの立場の方々を含めてかなりの一致を見ることができたのではないかと、私個人としては思っております。個々の論点につきましては、各委員、あるいはオブザーバーの方の中に、もっとこういうふうに書いてほしかった等、いろいろ御要望はあると思います。後で、ここに出席されている委員の方などにその点、御指摘いただければと思いますが、しかし、それにもかかわらずこのような報告書としてまとめることができましたことは、私としては大変喜びに思っているところでございます。
 報告書の具体的な内容につきましては、岡田さんから非常にわかりやすく詳細に御報告いただきましたので、それで結構かと思います。
 最大の論点は、中立的・統一的・包括的な裁判外紛争処理機関の問題でございました。13ページに書いてございますように、大きい方向観としては、中長期的な理想形としては、そういったものをつくり上げていくことは望ましいという見方がなされたというふうに理解しております。
 しかし、問題は具体的にそれをいかなるものとして、またそれをいかに築き上げていくかということでありまして、コストをセーブする必要もございますし、行政改革という現在の政府の方針を前提にいたしますと、当面は既存の裁判外紛争処理機関を活用するという方向で、そういった機関の形成を考えざるを得ないというふうに思われます。ワーキンググループにおきましては、そこで非常に現実的にそういうことを実現していくにはどうしたらいいかということを検討したわけでございます。
 そして、いろいろな具体的な改善措置、あるいは改革のための提言をさせていただいたわけでありますが、その中でも特に注目すべきなのは、最後の当面の措置の中のマル6の「金融トラブル連絡調整協議会」の設置という点だろうと考えております。金融トラブルの問題にかかわる全ての関係者の方々がこのような組織をつくって、将来に向かっての改善に協力をしていこうということでございまして、「上記マル1マル5の着実な実施を担保する」という表現が17ページの一番上にございまして、そしてさらに先ほど岡田企画官もおっしゃいましたように、なお書きのところで「行政の積極的なリーダーシップが期待される」という一文が入っておりますことは、着実に改革を実施し、改革の実績を上げていくことへの行政当局の並み並みならぬ御覚悟もうかがえるものというふうに私は理解しております。
 本報告書を受けまして、新たに発足されます金融庁が真摯にこれを受けとめていただきまして、本格的な裁判外紛争処理制度の整備に向かって努力していただくということを切に願いたいと思っております。
 以上でございます。


蝋山部会長 ありがとうございました。
 ただいま岡田企画官から報告書の内容の説明と、岩原委員からの補足的な、まとめ的な御意見もちょうだいしたわけでありますけれども、この点につきまして、この報告書につきまして、何か御意見なり、あるいは御感想なり、御注文なりというものがありましたらちょうだいしたいというふうに思います。いかがでございましょうか。どうぞオブザーバーの方も、委員の方も。
 京藤さん、どうぞ。


京藤委員 最初にやれば次の人が話しやすくなると思いますので発言させていただきます。
 裁判外紛争処理手続について、一つの基本的な考え方についてちょっとお伺いしたいんですけれども、こういう議論があると、こういう考え方もあるんじゃないかということで、つい反対のことを考えるのが癖なんですけれども、民事訴訟手続を使わないで裁判外紛争手続で利用しようといった場合に、参加するときに一番不安に思うのは、そこで当事者が納得を得て解決できればいいですけれども、その後、そこで調整がうまくいかないときに、あのときにこう認めたじゃないかということで、そこでの事実認定や、確認した事柄が後で自分に不利な形で裁判に使われると、とても同意しにくいし、ここの部分についてはここを譲りましょうというふうに、答えにくいところがあるんじゃないかと。
 そんな点では、こういう裁判外紛争処理手続というのは、むしろ後の裁判に使って、一切拘束性がないというんですかね、そこで言ったことについて、あるいは合意できたことについて、拘束性がないからこそ、これを使って個別に解決するということが解決につながるということもあるんではないかと、そういうようなアイデアと、それからもう一つは、多分このワーキンググループの考え方というのは、できるだけ事実認定みたいなものをできるようにして、そこで専門性を持った観点からいろんな細かなルールをつくっていって、それが一般の社会に共有されて、窓口の段階で、この場合にはこういうふうに解決される、こういうルールができているからということで納得してもらってお引き取り願うと、それも一つの考え方だと思うんですけれども、前者のように、むしろそのトラブった問題について問題を解決するといった場合には、結局争点があって、事実の誤認とか、了解の仕方が食い違ってる。そういった場合、白黒つけるという形で、あるいは、とても拘束的な形で問題を解決していくと、かえって紛争について合意をしにくいんじゃないか。
 そんな点で基本的なアイデアなんですけれども、この二つのアイデア、どちらがいいというような考え方が議論されたのか、あるいは、むしろそういうようなものについて多少ぼかしてお考えになったのかということについて、ちょっと伺いたい。できればと思いまして。


岡田企画官 私からというよりも、委員の方々からも補足していただいた方がいいと思うんですけれども、最初の話は、裁判に使われると、そういった裁判外紛争処理手続の過程の話を使われると不利になるケースがあるんではないかというのは、それは御指摘のとおりだと思います。ですけれども、ワーキンググループの場ではまた逆の意見もあって、むしろ裁判外紛争処理手続で行われたやりとりというもの、あるいはその場で例えば業者側が認めた非があるとか、そういう場合があれば、それをうまく裁判に引き継げないかという、そういう意見も他方でございました。
 こういう意見がさまざまに出てくるのは、ひとえに裁判外紛争処理制度というのはかなり任意かつインフォーマルな制度であるがゆえだと思うんです。ですから、ここはこれを使う人の受け取り方の問題なんじゃないかと思うんですよね。ですから、本当に裁判外紛争処理手続を裁判の前の仮の口頭弁論手続みたいにとらえて、相手がいかに証拠をどう出してくるのか、どう防戦するのかを確かめる場のように使うというような使い方もできれば、本当に解決を目指して本音で話し合うというような使い方もできて、これは制度で縛るというよりも、もうひとえに当事者の意識、あるいは使い方の問題なんじゃないかなというふうに思います。
 それでもう一点、裁断的にできるのかどうなのかという話ですけれども、もともと裁判外紛争処理制度なるものは、やっぱりどこまでいってもインフォーマルな手続にしかならない。合意も真実を見極める合意ではなくて、お互いが納得できればそれでいいというような合意の仕方というのはよく使われる。まあ今現在、金融に限らず裁判外紛争処理で使われている合意のやり方なんだと思いますし、それをあたかも裁判と全く同じような形にできるかと。事実認定もそこでやって裁断をするというような、本当の裁判タイプの裁判外紛争処理というのはできるかというと、それは余り一般的ではないのではないかと思います。ワーキンググループの意見の中でもそういう裁断型のものを、という意見も出ましたけど、現実に考えると、それは例えば行政裁判所のようなものがあれば別ですけれども、ちょっとやや例外的な存在ではないのか。基本はやはりインフォーマル、合意型というその枠の中でどうやって使うのかを考えていくしかないのではないかなというふうに思いますけど、委員の方々から補足があれば。


蝋山部会長 ただいま京藤さんの御質問された点につきまして、もしも御意見があれば御紹介していただきたいと思いますが、岩原さん何かありますか。


岩原委員 大体、岡田企画官の御説明で尽きてるかと思いますけれども、裁判外紛争処理制度にもいろんなものがあると思っていまして、非常に幅の広いものであると思います。いわば苦情処理に近いものから、それから、この報告書の中にありますように第二裁判所的なものまで、いろんなものがあり得るわけで、確かに裁判所に近いような拘束力もあるようなものにしていけば、その裏側として、さっき京藤さんが御指摘のような問題も出てくると思いますけれども、ただ、それは物事には必ず両面あるわけでありまして、それぞれの場合に応じて、いろんな幅広い可能性のあるものを用意しておく方がよろしいのではないでしょうか。そういう意味では、非常に緩やかな、完全に当事者の同意をベースにしたようなもので、後で余り拘束されないというようなものも当然あってしかるべきでしょうし、それから、場合によっては金融におけるこういった紛争のいろんな状況を考えて、準司法機関的なものがあってもいいという場合もあり得ると思います、私個人としてはですね。イギリスの金融サービスマーケット法などはそういったものの設立を考えているわけでありまして、場合によってはそういったものもあり得るのではないでしょうか。
 どういったのが本当にいいのか、あるいは、場合に応じてそういったものを用意していくかといったことについては、今後の検討にゆだねたということだと私は理解しております。


蝋山部会長 京藤さん、よろしいでしょうか。議論の雰囲気は御理解いただけたのではないでしょうか。結論は、まだということのようです。


京藤委員 もう一点だけ、少しコメントさせていただきますと、こういう場合に合意がなされたとした場合に、結局、結論以外のものがいろいろ出てくると、マスコミなどでは、あ、この業者がこの言い分を認めた、という形で報道されて、そういった意味では、そういうふうに報道されることがいやで、なかなか合意しにくいという問題も起こってくるかもしれないなということを感じて、問題はいろいろあるだろうなということを感じました。


蝋山部会長 ありがとうございます。
 ほかに。関さん、どうぞ。


関オブザーバー きょう御紹介いただきましたこの取りまとめでございますけれども、私は今、短い時間で非常に有益で立派な作業が行われたというふうに評価をしております。特に4ページ、5ページの途中までの2という総論の部分でございますが、ここは大変よくこの問題のいろいろな総論というか、制度的な面を処理をしていただいたというふうに思っています。
 それから各論に入りますと、それぞれの箇所の表現とか細かいところについては、私は幾つか意見がありますが、それにしましても、それぞれの部分について、相当書き方にいろんな意味で工夫をされて、最大限いろいろな主張が入って現時点を客観的に表現されるということ、それからまた、最後のまとめのところがああいうふうにまとめられたということも結構ではなかったかと、こういうふうに思います。
 ただ、私この全体を今伺っておりまして、一つだけ重要じゃないかと思うので申し上げたいわけでありますけれども、裁判外処理制度でそこに何らかの強制力を持たせると、そこで、ある両方の言い分を聞いて裁定をするということが必要なわけでありますけれども、その裁定をする人の中立性・公正性ということについては、業者側からの中立性・公正性ということを非常に議論をされておりますけれども、一方において消費者、利用者、あるいは顧客側からの中立性・公正性ということも絶対に必要だと思うんです。いかなる統一的な制度をつくりましても、それに強制力を持たせるといっても、先ほどのように総論で整理していただいていますように、裁判制度を利用したいということを無視するわけにはいきませんから、あくまでその制度は補完的であって、当事者の同意に基づく補完的な制度だということは残るわけでありますから、もし裁定そのものが消費者とか顧客側に肩入れをする裁定をする機関だと、そういう性格であれば、これはそもそも問題が違うんじゃないかというふうに思うというのが1点です。
 しかし、同時に、ここで非常に苦労されているのは、その前処理、紛争処理を利用するまでのいろいろな過程について、いろいろ消費者とか顧客の方の知識が少ないとか、そういったことを加味して支援、サポートをする必要があるんじゃないかということが強調されて、それはある程度必要だと思います。
 ただ、そういったことをやりながら、どこかにスクリーニングという言葉を使われておりましたけれども、問題の所在をだんだん浮き彫りにしていって、その結果、裁定の手続に結びつけていくという一連のプロセスになるんだと思うんです。これも考え方によって、支援、サポートの方の組織はこっちと、裁定をする組織はこっちということで完全に分けるという考え方もあると思いますが、多分この分野ではそれが一連の流れとして、支援、サポートも含めた前処理からスクリーニングをやって裁定のところに結びつくと、そういう制度だと思うんですね。ですから、そこの部分に何がしか消費者の方に支えるような機能、あるいはもっとそれを親切にするというようなことも必要だというところは完全に否定しませんけれども、そこの二つは区別をして議論をする必要があるんじゃないかということを申し上げておきたいわけであります。
 それは意見でありますが、全体で5ページから6ページにかけたところで、ちょっとこれはむしろ御返事なり御意見を伺いたいわけですけれども、まず下から5行目のところに(1)というところがありますが、その前になお書きがついております。そこには、業態別制度、民間型の横断的制度、これには弁護士会が入っています。行政型の横断的制度等の類型があるとした上で、「以下では、特定類型に限定せず、裁判外紛争処理制度全般について幅広に検討を行っている」と、こういうふうになっております。それで、すぐ下に参りまして5ページの一番下に、「なお、以下で検討対象とする制度問題とは離れるが、既存機関への不信は制度のあり方に加え、制度の具体的運営方法に由来する面も少なくない。各機関には、金融市場の健全な発展の観点から、今後一層、顧客の信頼につながる運営を行う意識変革が求められていることを注記しておく」と、こう書いてあるわけですね。そこで、まず5ページの一番下の「既存機関」と書いてあるこの既存機関は、弁護士会仲裁センターとか、消費生活センターも含めて既存機関と書いてあるということをまず確認していただきたいということであります。
 それから、そういう意味との関係では、次のページの6ページの2行の「顧客」という表現は、むしろそのすぐ下に、イ.第三者機関の設置というのがありますが、「利用者」というふうに書いてありますから、最低「利用者」というふうに直すべきじゃないかと、こう思うわけです。
 それで何よりも私言いたいことは、ここに書いてあることは、制度だけじゃなくて組織運営が非常に大事ですよということを書きたいことだと思うんですね。注記したいというのもそれだと思うんです。なぜ「既存機関への不信は」という言葉を主語にしなきゃならないかということが、私は非常に疑問に思います。要するに、この紛争処理制度というものがうまくワークするためには、制度だけじゃなくて運用についても非常に重要なんだということを書けばいいわけでありまして、何か不信が今現存するからということを、これはいろいろな立場で不信があるという方もあるでしょうし、不信がないということだってあるわけでありますし、少なくとも第一部会で不信があるかどうかということを議論をしたというふうには私は思ってないし、それについてコンセンサスがあったとも思わない、こういうことであります。
 それで、もう一つその各論で、特に紛争を処理する、あっせん処理をする方について、いろいろ書いてある箇所がございます。6ページ、紛争処理担当者への中立的人材の選任と、こう書いてありまして、「既存制度下の紛争処理担当者に、紛争当事者双方の信認を得やすく、かつ中立性の高い者を選任することが考えられる。具体的には、そうした適性を備えた弁護士や消費者代表等の活用が考えられる」と、こう書いてあります。「等」がついておりますから、いろいろな読み方もできますが、そうした適性を備えたということであれば、消費者代表だけでなくて、業界関係者とか、業界の経験者とか、そういうものをちゃんと書くべきであるんじゃないかと、こういうふうに思うわけであります。
 そこはそういうことでありますが、もう一つだけ申し上げておきたいのは、ここでいろいろな工夫をしてあって、こういう意見がある、こういうことがある、例えば実効性確保にこういうことをしたらどうかということを書いてありますが、既にこのワーキンググループでも、この部会でも報告してありますように、今、仲裁的な機能まで踏まえて現実に動いている、金融の分野で動いているのは、多分私どもの協会のあっせん制度だけだと思うんですね。それで、あっせん制度の制度については、総論に書かれているようないろいろな限界の中、目いっぱいいろんな制度を織り込んでありまして、しかもこれは証券取引法の法律に基づく制度として、自主規制の規則において規制を持つような制度になってあるということだけはぜひ御認識いただきたいわけであります。もちろん、何度も私申し上げていますように、協会のいろいろな仕組みについて、直すべきところはどんどん直していきたいと、こういうふうに思っています。
 それから、これこそ本当に最後にしますが、実は前回の議論で消費者教育の議論があったと思うんですね。それで最近その関連で入手した資料で、5月23日に消費者教育に関する経済企画庁の委託調査が一つ発表されておりまして、「消費者契約教育指針」という題がついておりますが、この中に、消費者教育が重要であるということを掲げてまして、今後、消費者契約教育では、今まで行われている内容にプラスして、消費者と事業者間の情報量や情報処理能力の格差を多少なりとも埋めて、合理的な選択のできる消費者を育成することと、みずから紛争を解決したり、紛争処理機関を適切に利用する能力を持つことができるような教育を推進することを目指すべきであると、こういう提言になっております。
 これはどこに置くかは別としまして、消費者教育問題というのが話題になっておりますから、両方の問題を結びつけて、何ほどかこういった要素も入れたらいいんじゃないかと思いますので、つけ加えさせていただきます。
 以上であります。


蝋山部会長 ありがとうございました。
 ただいまの関さんの御意見につきまして、どういうふうに。


岡田企画官 まず簡単な方からちょっと申し上げますと、利用者とか顧客とかいう使い方をされている部分ですが、一応、形の上で申し上げれば、これは一応ワーキンググループの中でつくられたものということなので、これ自体を今直ちに直すというわけにはちょっといかないのかなと思います。
 あと、言葉の使い方として、利用者ということにしたときには、業者と顧客と両方が入ると、こういう理解なんですか。直さなくちゃ、致命的にどこがまずいのか、ちょっとよくわからなかったんですけれども。


関オブザーバー 私は、順番を追って言っているわけですけど、まず「既存機関」の方はどういう趣旨なのですか。既存機関全体にかかっているということでしょうか。


岡田企画官 順番を追って御説明していきますと、まず検討に当たっての前書きのところですけれども、これは一般論として言っているという形です。ですから、業界型の紛争処理機関についてだけ論じるということではなくて、この中で、例えば弁護士仲裁センターの方でも受け入れ体制をもうちょっときちっとしてくれということが書いてあったりとかして、いわば検討の対象というのは、既存機関、既存の業態別機関だけを対象にしているんじゃないという注書きですね。
 で、その後の「既存機関への不信は」というところですけれども、ここに関して不信が述べられたのはどこの点に述べられたのかと言われると、業態別機関だけです。それ以外の弁護士仲裁センター、あるいは消費者団体、あるいは国民生活センターについての不信はワーキンググループでは一切述べられませんでした。じゃ、「業態別機関への不信は」と書くのかというと、それはちょっとまた角の立つ話ではありますし、もともと、もしも仮に一切今の業態別機関に不信もないし問題もないということであれば、もともとこの裁判外紛争処理に関する議論というのは沸き上がってこなかったし、恐らくワーキンググループで検討しなきゃいけないようなことにもなってなかったんだと思うんです。
 で、業態別の機関に言われている不信というのがすべて真実であるかどうかという話になると、それははっきり言うとよくわかりませんでした。ただ、ワーキングの場でさまざまな業態別の機関から来ていただいている方にお話をしていただいたりしたけれども、それによって皆さんの不信が綺麗に拭えたのかと言われると、必ずしもそうでもなかったというのが、もしも私以外の委員の方がいらっしゃるので、言っていただければそれでいいんだと思うんですけど、であるがゆえにこういう記述になっていると、こういうことでございます。


関オブザーバー 要するに、注書きというのは全体について議論をしたと、こういうことですね。それで、ワーキンググループでほかの機関について百点満点だということを保障したわけでは全然ないと思うんですね。単に話題が出なかったと。協会で苦情処理で行ったら、なるべく使わない方がいいですよと言われたという事例が一つ報告されて、それをベースにいろいろな議論をされていると、こういうことだと思うんですね。なぜそこのところをここに注記しておくというのか、こういう書き方をしなきゃいかんのかということを私は問題にしているわけです。
 要するに、趣旨として、運営というのは非常に大事ですよと、運営に僕は弁護士会の方でも、国民生活センター、消費生活センターの方の運営もいろいろな問題があるんだと思うんですね。そういったことをどうして言わないで、動いている協会の部分についてだけこういうことを注記しておくのか。読む人が読めば、それをねらっていると読めるわけですね。
 だから、なぜ不信というのを主語にしなきゃいかんのかというところがあるんです。


岡田企画官 不信をというか、もともと、もしもそれが何の不信もないんだということであれば、そういうふうに説明をしていただければよかったんだと思うんです。
 で、みんながもしもそれで納得すれば、こういう記述はなかったんだと思うんです。


関オブザーバー そうすると、ほかの機関にもいろいろそういった問題を議論すべきであると、こういうことを言えばよかったということですか。


岡田企画官 ほかの機関についてもですか。


関オブザーバー その消費生活センター等にはどういう問題があるとか、弁護士会の紛争処理制度にはどういう問題があると。話題が出なかったということと百点満点だということとは違うはずです。


岡田企画官 別に、ほかの機関が百点満点だというふうに言ってるわけではありません。


貝塚会長 関さん、ほかの機関が百点満点だということを言ってるわけじゃないと思います。それは、ある意味で制度としては必ず不完全性というのはそれなりにみんなあるわけですからね。その点は別に、そこまでここで言ったりはしてないと思うんですけどね。


関オブザーバー 私は全体のまとめ方については高く評価するということをちゃんと言っているわけですけれども、今の私の問題提起に対しては非常に形式的な御説明でありまして、私の真意をつかんでいただいてないというふうに思うんですけどね。


蝋山部会長 それぞれ御担当の、特に業態別の制度を担当されている方から見れば、この点は理解されてないなあという御不満を持つのは、ある面では理解できます。しかし、やはりそこから議論が出発しているという点も御理解いただかなきゃいけない。それがワーキンググループのスタンスだというふうに私は理解しています。
 そういう点では具体的な、現実にワークしている特に業態別のこの制度をもっとよくこの問題を的確に対応していっていただけたらという、そういう感覚からいろいろな問題が出ているということは、私は特に現場に近い方々には御理解いただきたいというふうに私は思います。
 そういう点で、ここはただ単に運営の問題が重要だというふうに強調するのみならず、やはりこういう問題が出てくる根源は一体どこにあるのかと。いわば裁判外紛争処理制度でできるだけ行政は後ろに引っ込みたい。民間の側がいろんな問題を積極的に取り組んで、みんなが信頼していれば、岡田さんが言われるように、もう少し違った形で、こういう形ではない形で議論することができたんじゃないでしょうか。やっぱり問題の出発点はそこにあるけど、そこを非常にマイルドに書かれているという、私はそんなふうに、関さんとは随分受けとめ方は違うんですけどね。
 木村さん、どうぞ。


木村オブザーバー ちょっと、もう少し前向きな意味でここの問題を考える必要があるんじゃないかと思うのは、要するに非常に金融環境が変化してきている、あるいは金融商品とか金融サービスが非常に多様化しているような状況の中で、こういうような既存機関への対応が前向きに、これまで以上に充実していかなければならないという状況にあると。この不信というのは、こういう時代の変化じゃなくて、前からもういろんな不信があるように、規制の時代においてもですが、今までも過去にもいろんな問題が出たときに、金融機関がそういうことへの対応で何か不信を持たれてきている。そうではなくて、環境の変化で既存機関というのはこれから、より変化に対応しなければならない体制整備をすべきであるというような書き方であれば、それはもうちょっと前向きになると思うんですけどね。


蝋山部会長 この文章だけは、まあ、私がワーキンググループの報告書を書いたわけではないんで、ディフェンスするのはなんですけれども、正確にディフェンスすることができるかどうかわかりません。余り私はひっかからなかった。それは全体が極めて前向きだからというふうに思います。


木村オブザーバー それであればいいんですけど、ここだけ取り上げると、何か、ね。


蝋山部会長 だから、ここだけ取り上げれば非常におかしくなりますけれども、全体のトーンとしては大変前向きで、木村さんがおっしゃるような方向に私は沿っているだろうというふうに理解しております。しかし、やや、出発点はどこにあるかということを一番初めに書いたりなんかしたら大変なことになるわけでありまして、こういうところにうまくもぐり込ませたなと、こういうところでワーキンググループの雰囲気が伝わっているんじゃないでしょうか。私も2回ほど出席させていただきましたけれども、全体の雰囲気とは私は矛盾しないというふうに思いました。
 原さん、どうぞ。


原委員 今の議論ともかかわると思うんですが、ワーキングの全体的な雰囲気としては、やはり今というかしら、現状でいいとする人は少なかったと思います。だから、何らかの改善、それから方向性を出すべきだというふうな意見が強くて、後段のところにも書かれていますけれども、将来的にはこうしていこうというところの今は通過点であろう。最後のところに6項目ありましたけれど、具体的にこういうことをやっていこうということで、将来の検討をしたいというふうに議論は残したつもりです。
 ここの5ページから6ページの書き方なんですけれども、ここの書き方も、現状、統一的な第三者機関をつくろうというふうな議論ももちろんありましたけれども、今、業態別で持っていらっしゃるADRというものを決して否定するものではないので、そこの努力をしてみてほしいと。努力をして、この連絡協議会で問題点を煮詰めてみて将来的な姿を描こうということなので、現在のいろんな業態別、それから既存の機関の努力ということをここには書きたかったということです。
 特にいろんな組織的なこととか制度的なものというのは、それぞれ立派なものを持っていらっしゃるというふうにも思いましたので、恐らく運用のところでかなり改善されるものもあるのではないかというふうに思って、それで注記をするというふうな書き方をいたしました。
 それから、あとその「既存機関への不信は」という、これがなぜ主語になるかということですけれども、少なくとも業態別の既存機関というふうには書かずに、ほかのいろんな既存機関についてはまだ議論は不十分なところもありましたので、全体的な言葉でくくってあるということで私は妥当だというふうに考えます。
 以上です。


蝋山部会長 石橋さん、どうぞ。


石橋オブザーバー 私も業界側の一員でございますけれども、確かに私ども、特に生保の場合におきましては裁定委員会というもの、それから生命保険相談所、そして年間、相談としては2万5,000件、あるいは苦情だけでも2,000件ぐらいを受けていただいているんですけれども、ワークグループ、あるいはここの部会での議論を聞かせていただく中で、我々も箱だけではなくて運営として改善をすべき点、そしてもっと利用していただく点、あるいはPRをしていかなければいけない点という、反省すべき点は我々自身にも持っているつもりですし、そういう面ではこの報告書ということについて、いきなりそうラジカルにセットアップをするんではなくて、今ある制度をフルに活用しながら前進をしてほしいという思いは我々業界の立場からしましても、真摯に真正面から受けとめて、改善すべきところを改善してまいりたいという気持ちを十分に、これをもって受けとめさせていただければというふうに思っております。
 したがって、我々自身だけかもしれませんけれども、意識改革の努力はしていきたいと思っているところに、意識改革と言われるところが多少、関さんにはカチンとくるところかもしれませんけれども、業界としては、どの業界もすべてみな将来の中期的な、あるいは将来的な理想像としてはこういうふうに考えるけれども、今まずやるべきことは何だろうというところの立脚点についてのレポートという形では、我々はこういうふうな形で書いていただければいただいただけ、より具体的な努力を示していかなければいけないかなというようなつもりでもございます。


関オブザーバー 今、原さんが説明していただいたことはわかるわけですが、少なくとも既存機関ということについては、別に特定をしてないということを前提に書いているということであれば、さっき私の申しました、顧客と書かないで利用者と書くべきだと、そこはぜひそうしていただきたいと思います。


蝋山部会長 手続論的には、これはワーキンググループの報告書であって、そこを部会としてはこれを報告としていただいて、部会として、部会の報告の中に取り入れるときに、いわば今の御意見を考慮するということだというふうに思います。ワーキンググループの報告書としてこれはけしからんということであれば、ワーキンググループに御参加のいわば証券業協会からもオブザーバーとして御参加があるわけでありまして、そこから御意見を、形式的な話で申しわけありませんけれども、出していただきたかったなというふうに思いますが、岩原さん、どうぞ。


岩原委員 先ほどから関さんからいろいろ御指摘いただいているわけでございますが、「不信」という言葉、ちょっと強い表現かもしれませんけれども、確かにワーキンググループでいろいろ現場の方からの御報告なんかをいただいていると、それが合理的な不信かどうかわかりませんけれども、とにかく利用者、さらに言えば、むしろまさに顧客ですね、証券なら証券のサービスを受けようという顧客の人、あるいはそれ以外の金融の業態のサービスを受けようという人が、一般的に何かどうも信頼できないというような若干の不信を持っていらっしゃるという現実があるということは問題点として出てきたわけですね。
 それが本当に合理的な不信かどうかという、これはさっき岡田さんがおっしゃったように、必ずしも詰め切れるところではなかったんですけど、そういう不信があるということ自体が、金融サービス、あるいは当該業界にとって非常に大きいマイナスである。それを改善していく。まず、ある意味で言えばイメージの問題でありまして、本当にそういった公正な紛争処理機関がちゃんとつくられていて、そのサービスを利用することが顧客の人にとって安心して利用できるというふうに持っていくことが非常に重要ではないかということを我々は議論したわけであります。
 したがって、ここは単に狭い意味の利用者ということでなくて、本当に証券なら証券のサービスを受けようという顧客の人にも安心してもらえるという意味での信頼につながる運営をしていただきたいということで、この一文を書いたつもりでありまして、本当にその不信を根拠づけるようなことがあるかどうかということ、これは我々は詰めてないわけで、むしろ不信を除いていくことそのものが大事だということで、この一文を書いたつもりであります。そういうものとして、関さんにも受け取っていただきたいと思っております。


蝋山部会長 部会として、この報告書を部会の報告書にどういうふうな形で盛り込むかという点は、またそれなりに考えさせていただくといたしまして、今の岩原委員、このワーキンググループの進行役をお願いしていた方からの今の御趣旨をやはり我々もきちんと重く表面から受けとめておきたいというふうに思います。
 ほかにも御質問はございますか。吉野さん、福間さん、高橋さん、その順で。


吉野委員 では、簡潔に言います。データベース化とか、あるいは連絡協議会のお話があったんですけれども、紛争処理をいかにこれからきちんとデータベース化して、それをインターネットに乗せながらやるかというフォーマットですね。こういうのをやはり具体的に決めていただいて、各業界のそれぞれのところがどういう問題点があり、そこからどういう解決になったかというのが一覧表にでもなれば、国民の、先ほどの不信といいますか、そういうことも信頼の回復になると思いますので。
 それからもう一つは、じゃ、データベースをだれがどこで管理するかという、例えば金融庁なら金融庁のどこの局なり、あるいは消費者団体のどこがやるかというのも具体的に決めていただければと思います。
 以上です。


福間委員 感想でございますけど、非常によくまとまっていると思います。今ありましたポイントも、市場を拡大するあるいは各業界にとっても商売を拡大する上でも、今の制度に自己満足せずに、前向きにとらえて、とりあえずここに書いてある当面の措置を進めることによって、次の展開を考えるということだと思います。今必要なアクションだろうと思うんですね。そういう面で、私はこういう中間点として当面の措置を具体的にお出しになったことは非常に評価できるんではないかなと思っています。


蝋山部会長 高橋さん。


高橋委員 私はワーキングのメンバーでもございましたけれども、先ほどいろんな議論がありましたけれども、この報告書をつくるに当たっては、業界側のオブザーバーの方、また消費者側の委員も含め、非常に合意に向けてそれぞれ譲り合って努力をした結果であるということは、つけ加えさせていただきたいと思います。
 先ほど、顧客の側の味方をする裁定処理という前提にしたというような御不信があったんですが、そういうふうな議論は一切なかったということも述べさせていただきたいと思います。
 この金融トラブルに関するADRの検討というのは、「流れ懇」のときからのテーマで、非常に長く検討してきたものですけれども、今回一つの方向性が示されたということは大変意義深いと思っています。
 この諸施策の一刻も早い実現ということが報告書に盛り込まれておりますけれども、金融の世界では1年を超えると長期ということになってしまいますので、少なくとも1から6のことに関しましては、もう1年以内という実現をめどに、特に業界の関係の方にはお願いしたいというふうに思っております。
 それから、長くて恐縮なんですが、6月4日付の日経新聞に、きょう公表する最終報告案として、誤報が出ているんですね。具体的には相談窓口の一本化ということで、16ページの1にあるような連携強化とか、6の連絡協議会ということの役割について、取次窓口であるとか、総合的相談窓口の新設であるとかという表現が出て、消費者に多大な誤解を与えているのではないかと思います。この取次窓口、相談の移送であるとか、総合的な相談窓口ということに関しては、非常に議論をしてやはり問題がある表現だという、あるいは制度的にももっと検討が必要だということで取り下げられたわけでございますので、新聞社からオブザーバーの参加があったにもかかわらず、その会社からそれが出たということで、非常に不本意で不信を持ってしまっているんですけれども。
 まあ、そのねらいがどこにあるのかは別にしまして、本日、多分記者会見があると思うんですが、そこのところも含めて正しい情報、訂正情報が必要なのだと思うのですけれども、当局及び部会長の方によろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。


蝋山部会長 今の高橋さんの件は大変、まあ、どれだけあの記事をまともに読むかということですが、その新聞社の過去のステータスを考えるならば、あそこは大変誤報するんですけれども、ある程度の影響力がある。それを前提にしてきょう記者会見をしなくちゃいけないという、私は個人的には大変憂うつです。しかし、今高橋さんからの御注意は十分踏まえて、事務局にも協力していただきまして、このワーキンググループの報告書の本当に言わんとしているところをきちんと報道していただけるよう努めたいというふうに思います。
 ほかにもいろいろ。木村さん、どうしても。


木村オブザーバー ちょっと小さな質問なんですけど、業者、業者という言葉が出てくるんですけど、その業者の範囲とか定義というのは、これはもっと先にいろいろ議論するということなんですね。ここでは、業者の強制加入とかそういうような表現がございますけれども、そのいわゆる業者というのは、金融商品とか金融サービスを提供する業者のことだと思いますが、いろんな業者が今ございますけど、その定義とか範囲については、これはここの問題ではないと、その先で考えると、こういうことですね。


岡田企画官 具体的にどこまでを取り込み対象とするのかという議論はございませんでした。一般論として金融商品を販売している者というようなイメージでやっていたかと思います。


木村オブザーバー それともう一点、実はこんな金融トラブルの苦情処理とか、あるいは紛争処理について、実は非常に行政当局は現時点でもいろいろかかわっている部分がございますよね。いろんな個別案件について、行政当局に苦情とかが来ると。そうすると、現在果たしている行政当局の苦情・紛争処理の現状とか課題というものと、ここで述べられている民間団体との関係というものを今後どういうふうに整理するかという問題もあるし、あるいは紛争が生じた場合のいわゆる監督・検査のあり方との関係ですね。その辺のところも、この紛争は法令違反であるというような事態が発生したときに、行政当局はどういうふうに絡んでいくんだろうかというようなこともいろいろ問題になってくると思いますが、その辺のところについて、何か整理しておくという必要性というのはあるんではないかと思いますが、いかがでしょうか。


岡田企画官 今回は時間の制約もありまして、どちらかというと、今ある既存の紛争処理機関というものに焦点を当てて、それの今いろいろ出されている問題点と解決策について検討したということで、行政がそれにどうかかわっていくのかというのは、まあ、最後の方でリーダーシップをという話はありましたけど、それ以上の議論をするまでには至らなかったということでございまして、それは今後の検討かとは思います。
 あと、実際の話を言えば、もともと行政がそういう個別の私人間の紛争処理に国がかかわるのは普通裁判所がかかわるというのが憲法の前提でございますので、本当の意味でのミクロレベルの私人と私人との間の争いにどこまで行政が立ち入っていくのかというのは一つの大きなテーマなんだと思います。特に民事調停との境をどうするのかとか、そういうのは大きなテーマであって、今のところは確たるあれはないということですね。


木村オブザーバー 現実には個別案件の苦情なんかが相当程度、行政当局に持ち込まれている現実があるというのは事実ですね。


岡田企画官 実際どの程度かという正確な統計はございませんけれども、例えば財務局であるとか、あるいは金融監督庁、昔で言えば銀行局、証券局といったところには、個別ベースでかなりの件数の電話がかかってきて、担当者がそれに張りつきになってしまっていたような現状もございました。ただ、そのときに、じゃ、実際に行政があっせん案を出すようなことができるかというと、それはできないわけでございまして、通常、話を聞いた上で、今ある既存の紛争処理機関というようなものを、証券業協会であるとか、全銀協であるとかというのを御紹介するというような形だったかと思います。


蝋山部会長 私も今まで、受けたというだけから言えば十何件あります。受けたというだけであれば。証取審の委員だから、この証券会社はこうだっていう、そういう意味では受けたことはあります。しかし、それは全然コミットしたことの件数ではありませんね。ゼロです、コミットした件数は。
 ほかにもまだ御質問なり御意見いろいろあろうかと思いますが、岩原委員を進行役といたしましたホールセール・リーテイルに関するワーキンググループのメンバー、オブザーバーの皆さんには大変私は感謝したいというふうに思います。福間さん、おられなくなりましたけれども、私も福間委員の先ほど述べられた感想と同じとらえ方をしておりまして、特に最後の具体的に1から6までの御提案をちょうだいしたということで、部会長としては御依頼したかいがあったなというふうに心から感謝したいと思います。改めてこのワーキンググループの皆様方に、岩原さんを先頭に皆さん方に対して改めて感謝を申し上げたく思います。
 また誤解のないよう、この後に開かれます記者会見で十分な説明をさせていただきたく思います。実際に本当にどういうふうにその新聞社がちゃんとした、誤解を解くような記事にしてもらえるかどうか、私の何も担保がありませんけれども。
 で、紛争処理的な可能性を含んだ問題を非常にうまく処理していただきました岩原さんに特にもう一度感謝したいというふうに思います。
 次の議題、もう時間が余りありませんけれども、6月の末をめどにこの審議会の報告を取りまとめる。その方向について、まず、今日は第二の議題としてお諮りしたかったわけであります。
 くだくだ申しませんが、要するに、7月にこの審議会が金融庁へ移り、大蔵省金融企画局の所管の審議会ではなくなるわけでありまして、ともかく一つの節目でありますので、その節目に当たりまして、この審議会、あるいは第一部会としてきちんとした報告書をまとめて、次の行政の側の検討の参考にしていただきたい、場合によってはその検討を縛りたい、こういうようなことであります。
 そこで、きょうは事務局と相談しました上で、報告書の骨格となることをイメージした、いわゆる「日本版金融サービス法」への取り組みと題する論点ペーパー、及びその参考資料を用意いたしました。
 初めに、これらにつきまして課長の方から説明をお願いいたします。資料の25−2、25−3であります。


内藤企画課長 それでは、御説明いたします。
 次回に金融審議会「第一部会」としての報告書の素案を全体を整理をいたしまして、それでまた改めて御審議いただきたいんですが、きょうは、特にこのいわゆる「日本版金融サービス法」というものの取り組み、これまでどういうふうな取り組みを行ってきたのかと、それから今後どういう方向でどういう形、どういう方法でそれを目指していくのかということのいわば大筋の御議論といいますか、そういったことをしていただくがための材料というもので事務局で整理したものでございます。
 25−2を御覧をいただきたいと思います。
 まず、これまでの取り組みの背景でございますが、経緯といたしましては、平成9年の6月、金融システム改革、この金制答申、証取審報告書が出まして、そこでいわば金融サービスを幅広くとらえて、これを整合的に対応し得る新しい法的な枠組みということで、いわゆる金融サービス法の検討の必要性というものが指摘されたわけでございます。
 これを受けて、「新しい金融の流れに関する懇談会」という場で検討が行われまして、10年6月には「論点整理」が取りまとめられております。その後、この金融審議会に検討が引き継がれたという経緯でございます。
 このいわゆる「日本版金融サービス法」の必要性でございますが、これについては次のように整理されるのではないかということで、いわば我が国の金融法制というのは業法中心の枠組みになっておりまして、金融商品、サービス、それぞれの関係業法に基づいて縦割りで規制が行われていると。で、その規制のいわば目指すべき方向性としましては、主として業者に対して行為規制をかける、あるいは健全性規制といったところで、監督当局による監督・是正措置を通じまして、金融取引の円滑化、あるいは利用者保護といったような目的を達成する、こういう仕組みでございます。
 ただ、これについては幾つかの問題点が指摘されておりまして、まず第一が利用者保護の観点から申し上げますと、マル1でございますが、適用される業法が異なっているということでの規制内容に不整合が生じやすいという問題がまずあろうかと思います。また、この行政当局の監督というものは、業者に対する制裁・抑止力といったような機能ではございますけれども、利用者等の私法上の救済、直接的な救済という面においては不十分だという指摘がございました。また、新しい金融商品・サービス等、業法の適用がないような場合には、十分利用者保護が図られないというような問題点も指摘されておりました。
 業者の立場から申し上げますと、業法の枠組みを超えた新しい商品・サービスを開発するというような場合に、例えば出資法の問題、あるいは刑法の問題等から禁止扱いというふうに解釈されかねないというふうな問題、それから金融商品が異なりますと、それに応じて業法も異なってくる。取り扱い主体もそれに応じて異なってまいりますので、実質的に業態を超えた競争が阻害されるというような問題、ひいては金融商品の間の公正な競争が阻害される。実質的な参入が十分行い得ないという問題がございますと、こういった公正な競争が阻害される問題がございました。
 あるいはまた仕組み商品、まあ市場型間接金融とも言われております集団投資スキームでございますけれども、これも投資対象が特定された縦割り法制ということで、利用者利便の向上につながるような自由なイノベーションというのは困難である。こういったことでの規制緩和という方向で、より横断的な法制というものは必要であるというような観点が業者の立場からも主張をされてきたというふうな経緯がございます。
 ルールの基本的な枠組みでございますが、これは昨年の中間整理(第一次)でも整理された点でございまして、大きくルールと、横断的なルールと一口に言いますけれども、これを類型化をいたしますと、この丸にございますように、金融取引の当事者間の私法的な権利義務関係の明確化を行うという「取引ルール」、それから、業者に対する行為ルールということでの「業者ルール」、それから、ディスクロージャーでありますとか、あるいは公正取引確保といったような観点で、市場取引参加者すべてに適用される「市場ルール」、こういった三つの類型化が行い得るのではないかということで、これらについて以下の視点に立って、透明性というものに留意をしながら整備をしていくということが基本だという考え方になっております。
 この取引ルールでございますが、特に一般民商法というものを強化していく。特則等を設けながら強化をし、金融商品というものに横断的に一つのルールをかけていくというような考え方でございまして、特に利用者の救済といったようなものも含めた考え方に立ったルールの整備ということでございます。
 第二が業者ルールでございまして、業者ルールにつきましては、特に特徴としまして、やはり取引ルールというものを補完していくようなことで、業者に対する行為ルールというものを義務付けていくという考え方でございます。利用者被害の予防、あるいは公正取引の確保といった観点での整備でございまして、各業法間でそれぞれ業者ルールは当然ございますけれども、これの整合性を図る、あるいはルールの横断化を進めていくという考え方でございます。
 それから市場ルールにつきましては、市場の健全な発展という観点で、特に市場の成熟度等を見ながら、そうした商品については適切な市場ルールを横断的に整備していくという考え方でございます。
 3ページに参りますが、それでは、そういった基本的な考え方に基づいてどういうふうな整備がなされてきたのかという点でございます。
 まず第一が金融システム改革でございますけれども、金融システム改革は、縦割りの法体系は残しておりますが、以下のように、利用者利便の観点から、特に大きな課題とされてきましたのが業者の参入ルールの大幅な緩和を図る。それで市場ルールを含めた包括的なルールを整備していくということが行われたわけでございまして、特に証取法の活用によってルールの横断化が図られたというふうに考えられるのではないかと思います。
 まずマル1でございますが、銀行、信託銀行、保険会社、証券会社の間におきまして、持ち株会社、子会社形態で相互参入を促進し、業態間の競争を促進していく。とりわけ証券会社については登録制への移行、兼業規制の緩和といった形での新規参入を容易にするということでございまして、10年12月以降の、このシステム改革の施行以降、証券会社が登録件数で45件ということで、急増しておるのが実態でございます。
 それから第二に、証取法が対象とする金融商品の拡大といったことで、例えばSPC法に基づくSPCの証券というものを有価証券に指定していくといったようなことも含めて、商品の範囲を拡大をするということ。それから、銀行等に対して証券取引法を一部適用しながら投信の窓販を認める。投信の窓販を行う場合には、銀行法ではなくて証券取引法というものの行為規制をかけていくという形での横断的なルールに持っていく、こういう努力が図られたわけでございます。
 第二が中間整理(第二次)、昨年の12月の方向を踏まえました法整備でございます。これはもうこの場でも御議論いただいた点でございますが、まず第一が販売・勧誘ルールということで、金融商品販売法が先般成立をいたしました。この金融商品販売法におきましては、全ての金融商品を横断的に対象にするという基本的な考え方に立っておりまして、今後登場が予想される新商品については、政令指定を行うことによりまして、その対象とし得る、そういう仕組みを導入をしたということでございます。それから、業法の適用の有無にかかわらず、販売業者等の説明義務違反に対しては損害賠償責任といった取引ルールを定めまして、同時に制定されました消費者契約法というものとあわせまして、利用者の民事上の救済の充実を図っていくと、そういうふうな動きでございます。
 それから、適合性の原則とか不招請勧誘等の不適切な勧誘への対応でございますが、これについては、業者に勧誘方針の策定・公表を義務付けるということでの業者による自主的な取り組みを促す、こういう仕組みを導入したわけでございます。
 次に4ページでございますが、集団投資スキームの点でございますが、集団投資スキームについては、これもそれまではSPC法におきましては、指名金銭債権でありますとか、あるいは不動産といった対象資産というのは限定されておりましたが、これを幅広い資産を対象にした一般的な仕組みという形での導入が行われたわけでございます。同時に、投資信託及び投資法人に関する法律の改正におきましては、資金の運用を業とする運用業者に対し行為規制、あるいは民事責任の明確化といったようなことでの一般的な規定を導入いたしまして、縦割りでない機能別の規制というような考え方を導入をしております。
 それから、このスキームによりまして発行される証券、あるいは信託受益権につきましては、証取法の業者ルール・市場ルールというものが適用されるということで、これらについては有価証券指定をすることによって、証券取引法に定められております業者ルールとか市場ルールが適用されるというような形で、ルールの横断化が進められてきているということでございます。
 これらの金融制度の諸改革でございますけれども、整理をいたしますと、横断的・機能別法制に向かっての努力であるという位置づけができるのではないかと。特に今回の法整備におきましては、民事法制の特則として位置づけられる取引ルールというものを制定をし、それから、一般的な集団投資スキーム法制を整備をしまして、資産運用業者への行為規制を定めると同時に、証取法において規定されている業者ルール・市場ルールの適用によって、ルールの横断化を図ったというようなところに特徴があるのではなかろうかというふうに考えております。
 最後に5ページでございます。実は5ページにつきましては、今後の取り組みというところはまだ十分書き込んでおりません。この基本的な考え方、あるいは今後の課題というところで、ごく簡単に書いておりまして、まさにこのあたりがいろいろ御議論があろうかと思いますが、これにつきましては、少し私どもの事務局としての整理といいますか、そうしたことを申し上げながら、また御議論をいただければと思います。
 基本的な考え方でございますが、今申し上げたように、今回の法整備で取引ルールの整備、あるいはこの証券取引法というものが一つの手段といいますか、一つの方法としてルールの取引ルール、あるいは業者ルール、あるいは市場ルールの横断化といったものが図られてきたというふうな流れがございます。
 で、いわゆる「日本版金融サービス法」の第一歩がしるされたところであるが、21世紀の金融を支える新しいルールの枠組みとして、取引ルール・業者ルール・市場ルールについての横断的・機能別法制の整備・拡充を図ることが引き続き重要であるという基本的な考え方を述べた上で、このいわゆる「日本版金融サービス法」の理念型ということで、この議論を最終的に推し進めていきますと、いわば最終的な姿ということになりますと、当然ながら全ての金融商品に横断的な、もちろんその中でのさまざまな性質による差もあろうかと思いますけれども、横断的な取引ルール・業者ルール・市場ルールが整備されるということになろうかと思います。これに向かっての着実に努力を進めていくということが必要であります。
 他方、最近のIT革命とか、あるいは金融再編、あるいはグローバル化による金融環境の急速な変化といったようなものがございまして、そういったものにも迅速かつ現実的に対応していくという必要があるのではないかというもう一つの観点があろうかと思います。
 そこで、今回この制定された取引ルールというものもございますが、これについては、さらに今後の新たな金融商品の登場とか取引実態等を踏まえながら、適切に対応していくということが必要であろうと考えておりますし、なお、この縦割りの法制が残っているということも事実でございます。こういう業者ルール、あるいは市場ルールについては、さらなる横断化の努力というものを継続していくことが必要であろうかと思います。
 そこで、まず取引ルールでございますが、取引ルールについては、今申し上げたような新しい商品、基本的にはすべての金融商品をカバーするというのが考え方でございまして、新しい商品の登場、あるいは環境の変化といったものに踏まえながら、この本法の枠組みを活用しながら、適時に整理をしていくということであろうと思います。
 それから、適合性の原則でありますとか、不招請の勧誘等の不適切な勧誘への対応については、これまでの法制化の議論の中で勧誘方針というものの策定・公表を通じまして、市場メカニズムによって、業者の自主的な取り組みを促していくというような考え方でございます。
 さらに、こうした法律が来年の4月には施行されますので、それまでにはもちろん政令等の御議論もこれからしていく必要がございますけれども、そうした制度も踏まえまして、状況を見ながら、さらなる適切な見直しといったものも当然視野に入ってくるのではないかと思います。
 それから、第二が業者ルール・市場ルールの問題でございますが、これにつきましては、まずは各業法で定められておりますそれぞれのルールがございます。これが利用者保護等に照らして十分なのかどうか。必要な場合には各業法の整合的な整備というものが当然求められてくる。
 第二に、今度はそうした業者ルール・市場ルールの横断化といったような場合に、これまでの整備、法整備の流れということから考えますと、例えば最も包括的にそのルールが整備されております証券取引法を活用しながら、このルールの横断化にさらに進んでいくということではなかろうかと思っております。当然、証券取引法を活用していく場合におきましても、業者ルールとか市場ルールそのものが十分であるかどうかといったことを含めた検討もあわせて必要ではないか。また、金融商品の種類にかかわらず、機能別規制と言われております。例えばそういう投資商品の販売業、それから資産運用業、あるいは資産管理業等のそれぞれの機能に着目して、商品の縦割りではなくて、横断的にルールを課していくという考え方が既に打ち出されておりますが、そうした考え方に立った整備というものが必要になってくるということで、私どもとしては、今回の集団投資スキーム法制というのはその大きな第一歩であるというふうに考えております。
 それから、特に当面の課題でございますが、銀行における異業者の参入とか、新たな形態での銀行業の参入という議論、これからそうした検討が求められてまいります。保険業についても参入促進というのは検討課題になっております。そうしたときに、やはり横断的・機能別規制といいますか、つまり銀行とか保険会社が例えば投資商品を扱うというようなときには、この従来型の監督的な業法といったようなものという側面ではなくて、投資関連業務にかかわる行為規制といった観点での機能別規制のあり方といったようなもの、そういった考え方に立った整理というものが必要になってくるのではないかなというふうに考えております。
 それから、個人信用情報保護法制といったものが、これは現在、内閣官房内政審議室で一般的な個人情報保護法という観点で議論がされておりますし、ワーキンググループでかねがね第二部会で議論されてきたテーマでございます。これにつきましても、今後金融持株会社、あるいは子会社等々の業態間の相互参入というものを考えますと、金融グループ内における情報の共有、あるいは是非とかあり方とかいったものの観点での議論ということで、これもある意味で、ある種、横断的な観点での整理が必要になってくるというふうなテーマでございます。
 いろいろ本日は少しそうした私どもとしての整理を申し上げましたけれども、この点についてはまだきょうのところはあんまり書き込んでおりませんので、ぜひ何か御意見ございましたらよろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。


蝋山部会長 ありがとうございました。
 皆さん、事務局のスタンスが御理解いただけましたでしょうか。上柳さん、どうぞ。


上柳委員 一言だけにしますけれども、ぜひ、これは恐らくこの審議会は6月末までとしても、その後この議論が続くようにというのがその第一の獲得目標だと思いますので、そういう意味で、まとめがあること自体が大変重要だということだと思うんですが、一つだけ、やっぱり総論的なところで思いますのは、そういう意味では金融についての自由化なり、あるいはいわゆるビッグバンの中で国民なり利用者を、私の言葉で言うと、どう実効的に保護していくのかということで、やはりビッグバンとの関係でこれが必要なんだということを、この「日本版金融サービス法」の必要性、これ当然前提だということで、改めて指摘するまでもないのかもわかりませんけれども、踏まえる必要があるんじゃないかと思うんですね。
 それが、同時に利用者ということだけではなくて、そういう安心感が利用者一般、あるいは潜在的利用者に生まれることによって市場が円滑化していくということで、全体としての利益になっていくんじゃないかということを踏まえた上で、さらにもう一つの視点として、アメリカなり、あるいはヨーロッパなり、それなりに今のことを実現するために工夫をしているわけですから、何も同じことをやれというわけではありませんけれども、同じ問題意識で日本なりの取り組みを進めるということがやはり総論として必要なのではないかというふうに思いました。
 それで、もう一つだけですけれども、そういう意味で言うと、取引ルールというふうなことで説明されるのかもわかりませんが、やはりその販売が適正に行われ、説明もきっちりして、利用者の状況に適したポートフォリオが形成できるように、私の場合は、場合によっては説明の状況だけではなくて、勧めてはいけないものもあるだろうし、あるいは勧め方についても工夫が必要だと、そういうことで、本当に各利用者の個人の投資判断がきちんと形成されるようなルールが取引ルールであろう。
 それから業者ルールの関係で言いますと、やはりプロダクトをつくるのはとりあえず業者さんですので、それをつくるときの考え方、適正化、あるいはどういうプロダクトをつくったのかということを開示していくということが業者ルールではないかと。
 さらに、市場ルールということになるのかもわかりませんが、そういう商品が市場に出ていったときに、一つはその取引が迅速というのは投資家の、あるいは利用者の意思が的確に市場に反映されるようにということで迅速、スピード化ということと、かつ価額形成が公正になるというようなことで、やはり金融商品が自由化されていく中で、どう利用者を保護していくのか。利用者全体の安心感をどう実効的に確保していくのかということを今後よく考えていきましょうと。そういう、言わずもがななんですけれども、あれだけ言わせていただきます。
 以上です。


蝋山部会長 恐らく今の上柳さんのは、きょうの課長の説明は、やや法的・制度的コンシステンシーというところを強調する余り、現実との対比ということが少し抜けているんじゃないか。もう少し現実的との対比のスタンスを入れてほしいと、そういうコメントだったんではないかというふうに私は理解しました。
 ほかに。原さん、どうぞ。


原委員 第一部会で残された課題として、不適切な勧誘を一回設けて議論をするということだったんですが、ここまでもまた時間切れのような感じがしております。で、上柳さんの方からちょっとオブラートに包んだような言い方でされたんですけれども、私としては勧誘方針の策定、それから義務付けのところまで来ましたけれど、これもやはり通過点、中間点のように思っておりますので、そこのところも議論をきちんと継続をしていくということを明記していただきたいと思います。


蝋山部会長 裁判外紛争処理制度のケースと同じように、一体それを具体化すると、上からやるのか、もう少しマーケットという、そういう点では内藤さんの説明は当面はマーケットで始めるけれども、プロセスを見ながら、見直しがあり得べしという表現になっているけど、それをもう少しはっきり書けということですな。
 高橋さん、どうぞ。


高橋委員 今、原さんと全く同感の意見でございます。ワーキンググループにおりていたんですが、ワーキンググループの方から今回報告という形になっていませんので、その辺を少しお願いします。


蝋山部会長 お二人は、上から定めることができる、枠をはめることができるとお考えですか。


原委員 上からはめることができるかどうかは、私はまだ自分の中でも検討途中ですね。ですから、上からの法律でいいのか、それとも全体的な、必ずこの項目を盛り込むべきというガイドライン的な策定になるのか、それとも監督庁によるチェックみたいなところをもうちょっと強化するのかという、私の中でもまだ考え方は分かれております。


蝋山部会長 ほかに全体についてのご意見はございますか。石戸谷さん、どうぞ。


石戸谷オブザーバー かなりいろいろ議論してきていることなので、手短に結論だけ言いますけど、店頭デリバティブの解禁以降、新しい商品がどんどん出てきて、それに伴う相談とか苦情みたいなものも実務現場ではいろいろ挙がってきているわけでして、そういう意味では、まあ、業者ルールになるのか取引ルールになるのか、不適切勧誘もいろいろ振り分けがあると思いますけれども、早急に検討を取り入れるべきであると思います。ワーキンググループの方も関連するルールの整備ということで、取引ルール・市場ルール・業者ルールの早急な整備が重要だというふうにまとめてありますので、ぜひ具体化を急いでやるべきだというスタンスでまとめていただきたい。


蝋山部会長 急ぐということを入れろというのが石戸谷さんの御意見ですね。
 恐らく、きょうの内藤さんの基本的ないわば最終報告書のアウトラインについての説明というのは、恐らくそのアウトライン自体が、文章そのものが出てきたときには、いろんな形で御注文を受け、議論が出てくるのではないかというふうに思います。したがいまして、問題は文章化の作業でありまして、今日の論点ペーパーを基に、また非常に短い期間で申しわけありませんでしたけれども、いただいた御意見を頭の中に入れて、早急に、あるいは早速、報告書案というものの作成にかかり、次回、16日の会合ではその文案をお示しできるようにしたいというふうに思っております。
 以上が、特に前半で、しかし重要な問題ですので、時間を余り制約されずにとりました結果、後半の第二の議題については十分にこの段階で議論ができませんでした。議事進行について申しわけなく思いますけれども、しかし、前半の裁判外紛争処理制度についてのやや白熱した議論は、私は生産的だったというふうに個人的には思っております。
 それでは、次回の日程等の連絡を岡田さんの方からよろしくお願いします。


岡田企画官 次回は6月16日(金曜日)の午前10時からの開催を予定しております。場所はこの建物の3階の第二特別会議室となっております。
 テーマといたしましては、証券決済システムの改革に関するワーキンググループからの検討の成果の報告。それに加えて、今回に引き続きまして当部会としての報告書取りまとめに向けての討議を行うということを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上です。


蝋山部会長 当初、三田の共用会議所という御案内を差し上げていたんではないかと思います。こちらの方で場所がとれましたので、御注意いただきますようお願い申し上げます。
 以上であります。それでは散会といたします。ありがとうございました。

(以 上)